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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B |
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管理番号 | 1131778 |
審判番号 | 不服2004-19123 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-07-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-16 |
確定日 | 2006-02-16 |
事件の表示 | 特願2001-345509「空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月10日出願公開、特開2002-195689〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年9月11日に出願した特願平8-240146号の一部を平成13年11月12日に新たな特許出願としたものであって、平成16年8月11日付け(発送日:同月17日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月16日に審判請求がなされるとともに、同年10月13日に手続補正がなされたものである。 2.本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。) 平成16年10月13日になされた手続補正は、特許請求の範囲から請求項2を削除するものであり、その目的は、特許法第17条の2第4項第1号に該当する。したがって、この補正を採用する。 そうすると、本願発明は、上記手続補正等により補正された明細書又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる。 「除湿運転の際に加熱器となり二系統以上の冷媒流路を有する第1の熱交換器と、除湿運転の際に冷却器となり二系統以上の冷媒流路を有する第2の熱交換器と、前記第1の熱交換器と第2の熱交換器との接続配管に設けられ除湿運転時に絞りとして使用する絞り手段と、前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器の空気流れ方向下流に設けられ除湿運転時に前記第1の熱交換器により加熱された空気と前記第2の熱交換器により冷却された空気とを混合して吹出させる室内ファンとを有する室内機を備え、冷房運転及び除湿運転時前記第1の熱交換器から前記第2の熱交換器に冷媒が通流し、暖房運転時前記第2の熱交換器から前記第1の熱交換器に冷媒が通流する空気調和機において、除湿運転時の冷媒流路における前記第1の熱交換器の上流に接続され、かつ前記第1の熱交換器若しくは前記第2の熱交換器の風上に配置され、前記第1の熱交換器及び前記第2の熱交換器のフィンピッチよりフィンピッチが大きく冷媒流路を一系統とした補助熱交換器を備えた空気調和機。」 3.引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用した特開平7-139848号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 ・「【0101】次に、暖房運転においては、暖房能力や動作係数といった性能を向上するためには、凝縮器として作用する室内熱交換器において、その入口での高温のガス冷媒流が流れる熱交換器部分を、その風下側で熱交換する熱交換器部分のない位置で空気流と熱交換させ、さらに冷媒流の出口にあたる熱交換器部分を十分にサブクールがとれるように、比較的低温の風上側の空気流と熱交換させる必要がある。このように構成した例を図11に示す。図11において、60aは点E、点Fで結合した二系統の冷媒配管61、62からなる室内熱交換器、60bはG点で結合した二系統の冷媒配管63、64からなる室内熱交換器、60cは暖房運転時には冷媒流が室内熱交換器60bの上流側で、かつ空気流15が室内熱交換器60b通過後の風下側になる位置に設けたH点で結合した二系統の冷媒配管66、67からなる室内熱交換器、60dは暖房運転時には冷媒流が室内熱交換器60aの下流側で、かつ空気流15が直接当たりしかも室内熱交換器60bの上方になる位置に設けた冷媒の流れを一系統にした冷媒配管65を有する室内熱交換器であり、基本的には図9に示す実施例に対して、さらに室内熱交換器60c、60dを設けた構成としたものである。」 ・「【0102】以上のように構成されたものにおいては、暖房運転時には冷媒が二方弁8を介して室内熱交換器を60c、60b、60a、60dの順に流れ、破線の矢印で示したように高温のガス冷媒流は、室内熱交換器60cで室内熱交換器60bと熱交換した後の空気流15aと熱交換し、さらに室内熱交換器60bで比較的温度の低い空気流15と熱交換して、室内熱交換器60aで室内熱交換器60bと熱交換した後の空気流15aと熱交換されることによって放熱、冷却され、室内熱交換器60aの出口で十分に凝縮される。次に、この凝縮した液冷媒流は、一系統の室内熱交換器60dに流入して高速となり、管内熱伝達率が十分高くなるとともに、比較的低温の空気流15と熱交換して、サブクールが十分にとれた状態になる。この場合、室内熱交換器60cから60bへかけての冷媒流は、空気流15及び空気流15aと対向流となり、さらに室内熱交換器60aから室内熱交換器60dに流れる冷媒流も空気流15及び15aと対向流となり、いずれの場合も効率のよい熱交換状態となっている。」 ・「【0103】又、冷房運転時には、冷媒が実線の矢印で示すように、室内熱交換器60d、室内熱交換器60a、二方弁8、室内熱交換器60b、室内熱交換器60cの順に流れ、これら全ての室内熱交換器が蒸発器として作用する。」 ・「【0104】除湿運転時には、冷媒が一点鎖線の矢印で示すように、室内熱交換器60d、室内熱交換器60a、除湿湿絞り装置7、室内熱交換器60b、室内熱交換器60cの順に流れ、室内熱交換器60d、室内熱交換器60aが加熱器として、室内熱交換器60b、室内熱交換器60cが冷却・除湿器として作用する。この場合、冷却・除湿器として作用する室内熱交換器60cは、加熱器として作用する室内熱交換器60aの下方に位置するため、室内熱交換器60cで生じた除湿水が、室内熱交換器60aで加熱されて再び蒸発することはない。また、加熱器として作用する室内熱交換器60dは冷却・除湿器となる室内熱交換器60bの上方に位置しているため、室内熱交換器60bで生じた除湿水が室内熱交換器60dで加熱されて再び蒸発することもない。」 ・「【0105】これまで述べたことから分かるように、図11において、室内熱交換器60cは、必ずしも室内熱交換器60aの下にある必要はなく、68の一点鎖線で示す位置であって室内熱交換器60bの下方あるいは68aの一点鎖線で示す位置であって室内熱交換器60aの風下側等も含め、風下側に室内熱交換器部分がないような位置で除湿運転時に室内熱交換器60cで生じた除湿水が加熱器となる室内熱交換器に垂れない位置なら任意の位置におくことができる。また、室内熱交換器60dは、必ずしも室内熱交換器60bの上にある必要はなく、69の二点鎖線で示す位置であって室内熱交換器60aの上方あるいは69aの二点鎖線で示す位置であって室内熱交換器60bの前方等も含め、比較的低温の空気流15が直接当り除湿運転時に除湿水がかからない位置なら任意の位置におくことができる。」 これらの記載及び特に図11を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明」という。)。 「除湿運転の際に加熱器となり二系統以上の冷媒流路を有する室内熱交換器60aと、除湿運転の際に冷却器となり二系統以上の冷媒流路を有する室内熱交換器60bと、前記第1の熱交換器と第2の熱交換器との接続配管に設けられ除湿運転時に絞りとして使用する除湿絞り装置7とを有する室内機を備え、冷房運転及び除湿運転時前記室内熱交換器60aから前記室内熱交換器60bに冷媒が通流し、暖房運転時前記室内熱交換器60bから前記室内熱交換器60aに冷媒が通流する空気調和機において、除湿運転時の冷媒流路における前記室内熱交換器60aの上流に接続され、かつ前記室内熱交換器60a若しくは前記室内熱交換器60bの風上に配置され、冷媒流路を一系統とした室内熱交換器60dを備えた空気調和機。」 (2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用した特開平7-139747号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 ・「【産業上の利用分野】本発明は暖房機に係り、更に詳しくは分離形温水暖房機を自然対流による暖房機として利用するためのファンコンベクタの熱交換器と筐体の形状に関するものである。」 ・「【0006】【実施例】本発明の一実施例を図1〜図3に基づいて説明する。図2と図3に示すように、ファンコンベクタは、筐体1内に熱交換機5の上部を前方に傾斜させて設置している。熱交換機5を傾斜させて設置することによってできた隙間に、図1に示すように、熱交換器5の上部に熱交換器5と直列に配管して補助熱交換器7を並行して水平に設置している。一方、補助熱交換器7の上方に対応する個所に通気口となる開口部8を設け、上方への空気の上昇を容易にしている。また、補助熱交換器7のフィンピッチは熱交換機2のフィンピッチより数倍大きく形成している。」 ・「【0007】このような構成において、ファンコンベクタの筐体1内で、温水を循環しながら送風機6を停止して自然対流による補助暖房を行うために、熱交換器5を傾斜して設置することによって、空気の通過経路が短くなって流路抵抗が減り、熱交換器5のフィン5a内を空気が通り易くなる。熱交換器5を傾斜してできた筐体1の上部の隙間に、補助熱交換器7を設置し、対向する筐体上部に開口部8を設けることによって、筐体1内に熱が滞留することなく温度上昇した空気をさらに加熱して上昇速度を上げることができる。また、追加して設置した補助熱交換器7のフィン7aのフィンピッチを大きくしたことにより、送風機による強制通気運転の際に熱交換器への流路障害になることなく運転できる。」 3.対比 本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「室内熱交換器60a」は本願発明の「第1の熱交換器」に相当し、以下同様に、「室内熱交換器60b」は「第2の熱交換器」に、また、「除湿絞り装置7」は「絞り手段」にそれぞれ相当し、また、引用例1発明の「室内熱交換器60d」と本願発明の「補助熱交換器」とは、ともに「第3の熱交換器」といえる。 したがつて、両者は、「除湿運転の際に加熱器となり二系統以上の冷媒流路を有する第1の熱交換器と、除湿運転の際に冷却器となり二系統以上の冷媒流路を有する第2の熱交換器と、前記第1の熱交換器と第2の熱交換器との接続配管に設けられ除湿運転時に絞りとして使用する絞り手段とを有する室内機を備え、冷房運転及び除湿運転時前記第1の熱交換器から前記第2の熱交換器に冷媒が通流し、暖房運転時前記第2の熱交換器から前記第1の熱交換器に冷媒が通流する空気調和機において、除湿運転時の冷媒流路における前記第1の熱交換器の上流に接続され、かつ前記第1の熱交換器若しくは前記第2の熱交換器の風上に配置され、冷媒流路を一系統とした第3の熱交換器を備えた空気調和機。」の点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明では、「前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器の空気流れ方向下流に設けられ除湿運転時に前記第1の熱交換器により加熱された空気と前記第2の熱交換器により冷却された空気とを混合して吹出させる室内ファンを有する」のに対して、引用例1発明では、このような室内ファンを有するとの限定がない点。 [相違点2] 本願発明では、第3の熱交換器が、「第1の熱交換器及び前記第2の熱交換器のフィンピッチよりフィンピッチが大きく」された「補助熱交換器」であるのに対して、引用例1発明では、第3の熱交換器が、「室内熱交換器60d」であり、フィンピッチについての限定がない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 相違点1について、 引用例1発明の空気調和機が、上記相違点1に係る室内ファンを有することは、当業者にとって明らかなことである。 相違点2について、 上記「3.(1)」で述べたように、引用例1の第0101段落には、「暖房運転においては、暖房能力や動作係数といった性能を向上するためには、凝縮器として作用する室内熱交換器において、その入口での高温のガス冷媒流が流れる熱交換器部分を、その風下側で熱交換する熱交換器部分のない位置で空気流と熱交換させ、さらに冷媒流の出口にあたる熱交換器部分を十分にサブクールがとれるように、比較的低温の風上側の空気流と熱交換させる必要がある。(中略)60dは暖房運転時には冷媒流が室内熱交換器60aの下流側で、かつ空気流15が直接当たりしかも室内熱交換器60bの上方になる位置に設けた冷媒の流れを一系統にした冷媒配管65を有する室内熱交換器であり、基本的には図9に示す実施例に対して、さらに室内熱交換器60c、60dを設けた構成としたものである。」と記載され、また、第0102段落には、「次に、この凝縮した液冷媒流は、一系統の室内熱交換器60dに流入して高速となり、管内熱伝達率が十分高くなるとともに、比較的低温の空気流15と熱交換して、サブクールが十分にとれた状態になる。」と記載されている。 したがって、引用例1発明の室内熱交換器60dは、補助熱交換器といえるものである。 また、引用例2に、送風機による強制通気運転の際に、熱交換器への流路障害になることなく運転できるようにするために、補助熱交換器のフィンピッチを熱交換機のフィンピッチより数倍大きく形成した点が記載されている。そして、引用例1発明の室内熱交換器60dは、引用例1の図11又は第0105段落に記載されるように、第1の熱交換器(室内熱交換器60a)又は第2の熱交換器(室内熱交換器60b)の上流側に設けられるものである。 したがって、引用例1発明において、室内熱交換器60dが、第1の熱交換器(室内熱交換器60a)又は第2の熱交換器(室内熱交換器60b)への流路障害とならないように、室内熱交換器60dのフィンピッチをこれらの熱交換器のフィンピッチより大きくすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用例1、引用例2の記載及び周知技術から当業者が予測できた範囲内のものである。 5.むすび 本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-12-15 |
結審通知日 | 2005-12-20 |
審決日 | 2006-01-05 |
出願番号 | 特願2001-345509(P2001-345509) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清水 富夫 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
東 勝之 原 慧 |
発明の名称 | 空気調和機 |
代理人 | 作田 康夫 |