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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1131872
審判番号 不服2002-5081  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-25 
確定日 2006-02-20 
事件の表示 平成 7年特許願第231572号「複合文書を作成し最新表示するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 4月16日出願公開、特開平 8-101830〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成7年9月8日(パリ条約による優先権主張1994年9月20日、米国)の出願であって、その請求項27に係る発明は、平成14年3月25日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項27に記載されたとおりの次のものと認める。(以下「本願発明」という。)

「【請求項27】
複数の独立したデータ処理アプリケーションを実行し、かつ複合文書を支援する計算プラットフォームを含む計算機環境において、複合文書と共に使用されるパーツを有する前記計算プラットフォームを含むシステムであって、
前記パーツは、
前記複数の独立アプリケーションのうちの選択された1つのアプリケーションから、前記複合文書に含められるべきデータを受け取るためのインターフェースを確立する手段と、
前記選択されたデータ処理アプリケーションがインターフェースを介してデータを送るよう要求する手段と、
インターフェースを介して送られた前記データを前記複合文書に組込む手段と、
を備える、前記システム。」

2 引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成5年11月5日に頒布された特開平5-289871号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

(1) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、あるアプリケーションから他のアプリケーションで定義された手続きを利用するためのアプリケーション結合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ワードプロセッサで文書を作成する時、文書中に作画ソフトで作成した図やスプレッドシートで作成した表やグラフを埋め込みたいという要求がある。これを実現するには、ワードプロセッサが作画ソフトやスプレッドシートで扱うデータのデータ形式を理解し、文書中に図、表またはグラフを書き込む。あるいは、ワードプロセッサが作画ソフトやスプレッドシートを起動して、それらのアプリケーションに図、表またはグラフを書き込ませる。
【0003】このようなアプリケーションの結合、すなわち、あるアプリケーションから他のアプリケーションで定義された手続きを呼び出すことを容易にするために、データと処理アプリケーションを一体化して管理する技術が注目されている。例えば、”ピーター.S.ショーマン他著:統合操作環境NewWave,日経バイト,1990年5月号,pp279-305”、”ファイル管理方式,特願平1-105699”で述べられているように、NewWaveではデータと処理アプリケーションを一体化したものをオブジェクトと呼び、あるデータを操作するのにどのアプリケーションが適当かを管理し、データを指定するだけで自動的に対応するアプリケーションを起動する。また、メッセージを利用してオブジェクト間の通信を行う。これにより、相手側のオブジェクトがサポートする操作を知ることができ、さらに、そのオブジェクトに対して、それがサポートする操作を実行するように依頼することができる。
【0004】また、NewWaveではオブジェクト同士をリンクで結び、ワードプロセッサで作成した文書中にスプレッドシートで作成した表やグラフ等を合成することができる。この時、リンク元のオブジェクトは、自身のアプリケーションを使用してリンク先のオブジェクトを表示するのではなく、要求した表示部分にデータを表示するようにリンク先のオブジェクトに指示するだけである。リンク先のオブジェクトは、指示された位置に自分のデータを表示する責任を負っている。」(第2頁左欄42行〜右欄31行)
(2) 「【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、クライアントオブジェクトとサーバオブジェクトの間にリンクを張る機能を提供する。また、そのリンクにサーバオブジェクトの手続きを呼びだすための手続き名と引数のリストとを書き込む機能を提供する。この書き込みは、アプリケーションの実行時に、リンクを張ったオブジェクトとは別のオブジェクトでも可能とする。さらに、手続きの実行は、クライアントで手続き名や引数を直接指定するのではなく、リンクの識別子のみを指定して手続き名や引き数を検索して手続きを呼び出すこと、即ち、リンクを参照し、そこに書かれた手続き名と引数のリストとをメッセージとしてサーバオブジェクトに送ることを可能にする。
【0012】リンクを張る機能、リンクと共に手続き名及び引数を保持する機能、手続き名や引き数を検索して手続きを呼び出す機能を提供するために、リンクの識別子(以下、リンクidと呼ぶ),クライアントオブジェクト,サーバオブジェクト,手続き名,及び手続きを呼び出すための引数リスト(リンクidから引き数リストまでの情報をリンク管理レコードと呼ぶ)を、複数のオブジェクトから参照あるいは更新できる領域(リンク管理テーブルと呼ぶ)に保持する。また、クライアントがリンク管理レコードを検索するために、クライアントで識別可能なリンクの名前とリンクidとの組を保持する。さらに、サーバが手続き名に対応する機能を実行するために、手続き名とその手続き名に対応する手続きへのポインタの組を保持する。手続きは、クライアントからその手続きに対応する手続き名が書かれたメッセージが送られた時に実行される。」(第3頁左欄36行〜右欄15行)
(3) 「【0031】次に、あるアプリケーションから他のアプリケーションで定義された手続きを利用する場合のサーバ及びクライアントの処理フローを図1を用いて説明する。なお、リンクを呼んだ時に実行する手続き1つに対応して、その手続き名と引数をリンクに設定する別の手続きが1つ存在する。
【0032】まず、クライアントとそれが呼び出すサーバとの間にリンクをはる(111)、すなわち、クライアントの識別子とサーバの識別子をリンク管理テーブル13に書き込み、そのリンクの識別子を得る。次に、手続きを呼び出す時に必要な引き数のうちクライアント側で得られるものをリンク管理レコードに書き込み(112)、サーバに対してステップ111で張ったリンクに対応するリンク管理レコードに手続きの呼出し方を書き込むようメッセージによって依頼する(113)。サーバは、メッセージを受け取ってメッセージに書かれた手続きを実行する(114)、すなわち、手続きの呼出し方と必要な引き数をリンク管理テーブル13中のリンク管理レコードに書き込む。また、クライアントがサーバに手続きの実行を依頼する場合は、リンク管理テーブル13から呼び出したい手続きの呼び出し方法を保持するリンク管理レコードを検索し、その内容をメッセージとしてサーバに送信する(115)。サーバは、メッセージを受け取ってそのメッセージに書かれた手続き名に対応する手続きを実行する(116)。」(第5頁左欄48行〜右欄22行)
(4) 「【0034】クライアントからメッセージを受け取ってそれを処理する手順を詳細に説明する。まず、サーバのアプリケーションを終了するか否かを判定し(211)、終了するのであればサーバの処理を終了する(212)。そうでなければ、メッセージ受信可能か否かをメッセージ送受信ルーチン44の機能613で判定し(213)、受信可能でなければステップ211に戻る。受信可能であればメッセージ送受信ルーチン34の機能612でメッセージを受信し、クライアントのオブジェクトid、手続き名、及び引数リストを得る(214)。次に、手続き検索ルーチン423の機能631によって手続き管理テーブル424を検索し、手続き名521に対応する手続きへのポインタ522を得(215)、その手続きを実行し(216)、その結果をメッセージ送受信ルーチン44の機能614によってクライアントに返し(217)、ステップ211に戻る。」(第5頁右欄32行〜47行)
(5) 「【0040】例えば、ワードプロセッサに編集された文書内にスプレッドシートで作成された表を埋め込んで表示する場合、ワードプロセッサをクライアントとし、スプレッドシートをサーバとしてそれぞれのプログラムを作成する。ワードプロセッサオブジェクトはスプレッドシートオブジェクトとリンクを張り、そのリンクidを引き数として、リンク管理レコードに表示手続きの呼出し方を書き込むよう依頼するメッセージをスプレッドシートに送る。スプレッドシートは、表示に必要な表示範囲と表示手続きの手続き名をリンク管理テーブルに登録する。ワードプロセッサは、表を表示する必要が生じる度にリンク管理テーブルを検索し、表示方法を参照して表を表示するためのメッセージをスプレッドシートに送る。新たに、作画ソフトで作成した図形を文書に埋め込んで表示するという要求が出た場合、スプレッドシートとワードプロセッサ間でのやり取りと同様の処理をワードプロセッサと作画ソフト間で行う。この時、処理の違いはリンク管理テーブルに登録される内容のみであり、ワードプロセッサの処理手順は全く同じである。即ち、ワードプロセッサの処理プログラムを一行も変更せずに新たなサーバの手続きを利用できる。本実施例では、アプリケーションとデータを一体としてオブジェクトとして扱ったが、ここで説明した手続き呼び出しの方法は、オブジェクト指向言語におけるオブジェクト及びメソッド呼び出しに対しても同様に適用できる。」(第5頁右欄14行〜38行)

この記載事項によると、引用例には、
「ワードプロセッサをクライアントとし、スプレッドシートをサーバとしてワードプロセッサで編集された文書内にスプレッドシートで作成された表を埋め込んで表示するシステムであって、
スプレッドシートから前記文書に含められるべきデータを受け取るためにワードプロセッサオブジェクトとスプレッドシートオブジェクトとの間にリンクを張る手段と、
ワードプロセッサが、リンク管理レコードに表示手続きの呼出し方を書き込むよう依頼するメッセージをスプレッドシートに送る手段と、
スプレッドシートは、手続きを実行し、その結果をワードプロセッサに返す手段と、
を備える、システム」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「ワードプロセッサ」、「スプレッドシート」などのアプリケーションは、本願発明の複数の「アプリケーション」に相当する。
引用発明は、ワードプロセッサで編集された文書内にスプレッドシートで作成された表を埋め込んだ文書(本願発明の「複合文書」に相当することは明らか。)を表示することから、ワードプロセッサ等のアプリケーションを実行し、かつ当該文書を支援する計算プラットフォームを含む計算機環境が存在することは明らかである。
また、引用発明では、ワードプロセッサ及びスプレッドシートなどのアプリケーションを、それぞれワードプロセッサオブジェクト及びスプレッドシートオブジェクトとして扱って複合文書を作成するものであることから、複合文書と共に使用される「オブジェクト」を有する計算プラットフォームを含むシステムであることは明らかである。
引用発明は、ワードプロセッサの文書内にスプレッドシートで作成された表を埋め込むことから、「スプレッドシート」アプリケーションは本願発明の「選択された1つのアプリケーション」若しくは「選択されたデータ処理アプリケーション」に相当する。
さらに、スプレッドシートが所定手続きを実行した後その結果をワードプロセッサに返し、結果的に複合文書が完成されることから、スプレッドシートからのデータを複合文書に組込む手段を有することは明らかである。
したがって両者は、
「複数の独立したデータ処理アプリケーションを実行し、かつ複合文書を支援する計算プラットフォームを含む計算機環境において、複合文書と共に使用されるものを有する前記計算プラットフォームを含むシステムであって、
前記のものは、
前記複数の独立アプリケーションのうちの選択された1つのアプリケーションから、前記複合文書に含められるべきデータを受け取るための機構と、
所定機構を介して送られた前記データを前記複合文書に組込む手段と、
を備える、前記システム」である点で一致し、以下の相違点を有する。

(相違点1)
本願発明が、複合文書と共に使用されるものが「パーツ」であるのに対し、引用発明は「オブジェクト」である点。
(相違点2)
本願発明では、選択された1つのアプリケーションから、複合文書に含められるべきデータを受け取るために、「インターフェースを確立する手段」を有しているのに対し、引用発明は、「リンクを張る手段」を有している点。
(相違点3)
本願発明は、「前記選択されたデータ処理アプリケーションがインターフェースを介してデータを送るよう要求する手段」を有するのに対し、引用発明では、「ワードプロセッサが、リンク管理レコードに表示手続きの呼出し方を書き込むよう依頼するメッセージをスプレッドシートに送る手段」を有する点。

4 当審の判断
(相違点1)
本願発明の「パーツ」に関する本願明細書の記載によると、「照会パーツ」ないし「照会テキストパーツ」なる語として説明されているが、その他「照会テキストパーツオブジェクト」(段落【0042】)、「照会テキストパーツ(の)インスタンス」(段落【0033】)などの記載も散見されることから、本願発明の「パーツ」は、一般に「オブジェクト」ないしはオブジェクトの実体としての「インスタンス」として認識できるものと認められ、引用発明の「オブジェクト」と実質的に相違するものとは認められない。

(相違点2)
本願発明のインターフェースを確立する手段に関し、本願明細書には、「通常、独立した各データ処理アプリケーションは、オペレーティング・システム28とインターフェースをとる。」(段落【0022】)とのみ記載されており、具体的にどのようなものを指すものかは必ずしも明確ではない。
一方、引用発明において、ワードプロセッサ(クライアント)とスプレッドシート(サーバ)との間でリンクがはられることによって、所定手続きの後、データのやりとりが行われること、及び当該データのやりとりに関しては、当然これを実現するオペレーティング・システム等の計算プラットフォームにおいてインターフェースを確立するものであることに照らせば、引用発明の「リンクを張る手段」が、本願発明の「インターフェースを確立する手段」に相当するものであることは当業者に明らかである。したがって、実質的に相違するものではない。

(相違点3)
引用発明においても、ワードプロセッサがリンク管理レコードに表示手続きの呼び出し方を書き込むよう依頼するメッセージをスプレッドシートに送ると、当該送付先のスプレッドシートから送付元のワードプロセッサ宛にデータが返送されることから(摘記事項(3)、(4)参照。)、引用発明において選択されたデータ処理アプリケーション(スプレッドシート)がインターフェースを介してデータを送るよう要求する手段を有するよう構成することは、当業者が容易になし得ることである。

また、本願発明の作用効果も、引用例に基づいて当業者が普通に想起し得る範囲内のものである。

5 むすび
したがって本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-27 
結審通知日 2005-09-28 
審決日 2005-10-12 
出願番号 特願平7-231572
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠原 功一  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 竹井 文雄
山崎 慎一
発明の名称 複合文書を作成し最新表示するためのシステムおよび方法  
復代理人 松井 光夫  
代理人 坂口 博  
代理人 市位 嘉宏  
復代理人 五十嵐 裕子  

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