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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1131917
審判番号 不服2001-20155  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-06-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-09 
確定日 2006-02-23 
事件の表示 平成 9年特許願第322901号「積層防曇フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月 8日出願公開、特開平11-151788〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成9年11月25日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成13年8月24日に補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「下記組成分布変動係数Cxが0.5以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体を主成分とする層(A層)と防曇層とを有する積層フィルムであって、A層が少なくとも該積層フィルムの片面側の最表層であって、かつ防曇層が反対面側の最表層である積層防曇フィルム。
Cx=σ/SCBave. (1)
(ただし、σは温度上昇カラム分別法により、各溶出温度における溶出量とその溶出成分の分岐度から求めた組成分布の標準偏差を表わし、SCBave.は炭素数1000個当たりの短鎖分岐の平均値をあらわす)」

2.原査定の拒絶の理由となった平成13年6月15日付で通知した拒絶理由の内容
本願発明1は、その出願前に日本国内において頒布された下記刊行物1〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
刊行物1.特開平7-53747号公報
刊行物2.特開平7-266518号公報
刊行物3.特開平8-90732号公報
刊行物4.特開平7-62031号公報
刊行物5.特開平6-340045号公報
刊行物6.特開平9-249774号公報
刊行物7.特開平8-276542号公報

3.刊行物の記載
刊行物1(特開平7-53747号公報):
(1-ア)「【請求項1】熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、コロイド状アルミナおよびシリカの重量比(コロイド状アルミナ/コロイド状シリカ)が(90/10)〜(60/40)である混合コロイド溶液、およびアニオン性界面活性剤からなる溶液を塗布、乾燥してなる防曇性被膜を有することを特徴とする農業用フィルム。
【請求項5】熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の農業用フィルム。」(特許請求の範囲請求項)
(1-イ)「【従来の技術】従来、・・・、農業用フィルムの表面に防曇性を付与するため、・・・防曇性被膜のコーティング法が研究され種々の試みがなされてきた。例えば、・・・を主成分とする被膜を形成することが知られている。」(2頁左欄27〜46行)
(1-ウ)「上記ポリオレフィン系樹脂としては、・・・などのエチレン-α-オレフィン共重合体、・・・などを挙げることができる。これらの樹脂の中では、密度が・・・以下の低密度ポリエチレンやエチレン-α-オレフィン共重合体、および酢酸ビニル含有量が・・・以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体が透明性や柔軟性に優れ、かつ安価なフィルムが得られる点で特に好ましい。」(3頁右欄49行〜4頁左欄14行)
(1-エ)「本発明の熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に防曇性に優れた被膜を形成した農業用フィルムを例えば、ハウスの外張りとして用いると、多湿条件下でもフィルム内面が水滴で曇ったり、水滴がボタ落ちして作物を痛めることがない。また、流滴が速やかであるためフィルムの乾燥が速く湿度が低くなり、作物の病気の発生を抑えることができる。また、農業用フィルムの用途としては、外張りのほか二重被覆に用いるカーテンや小型のトンネルなどがあるが、塗布が可能であればいずれの形態に用いても優れた防曇性を発揮し、外張りの場合と同様の効果が得られる。」(4頁左欄29〜39行)

刊行物2(特開平7-266518号公報):
(2-ア)「【請求項1】ポリオレフィン系樹脂100重量部に無機フィラーを0.1〜30重量部配合してなるフィルム層を少なくとも一層含む基体ポリオレフィン系樹脂フィルムの片面又は両面に、シリカゾル及び/又はアルミナゾルを疎水性熱可塑性樹脂からなるバインダーを主成分とする防曇剤組成物に由来する被膜層が形成されてなる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。」(特許請求の範囲)
(2-イ)「近年、・・・農業用被覆材による被覆下に有用作物を栽培する、いわゆるハウス栽培やトンネル栽培が盛んに行われている。・・・。ハウスまたはトンネルの被覆資材として使用されるフィルムには、フィルムの内側表面に付着した凝縮水を、栽培作物に落下させることなく、フィルム内面に沿って流下させるといういわゆる「防曇性」を有することが要求される。従来、農業用途において、ポリオレフィン系フィルムに防曇性を付与する方法として、液状の防曇剤または防曇剤を含有する溶液を塗布する方法、あるいは防曇剤を練り込む方法などが提案されており、実用化されている。」(2頁左欄50〜20行)
(2-ウ)「本発明におけるポリオレフィン系樹脂としては、・・・エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、・・・等があげられる。これらのうち、密度が・・・の低密度ポリエチレンやエチレン-α-オレフィン共重合体および酢酸ビニル含有量が・・・以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体が、透明性や耐候性および価格の点から農業用フィルムとして好ましい。」(2頁右欄44行〜3頁左欄5行)
(2-エ)「本発明に係る農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、・・・防曇持続効果が飛躍的に向上するので、農業用被覆資材としての利用価値は極めて大きい。」(5頁左欄36〜41行)

刊行物3(特開平8-90732号公報):
(3-ア)「【請求項1】3層構造のポリオレフィン系積層フィルムにおいて、(A)外層が低密度ポリエチレン、エチレン‐α‐オレフィン共重合体及びエチレン‐酢酸ビニル共重合体の中から選ばれた少なくとも1種から成り、・・・、(B)中間層がエチレン‐酢酸ビニル共重合体を主材とし、・・・を配合した樹脂組成物及び(C)内層がエチレン‐酢酸ビニル共重合体、又はエチレン‐酢酸ビニル共重合体と低密度ポリエチレン若しくはエチレン‐α‐オレフィン共重合体あるいはその両方との樹脂混合物から成り、・・・、かつ内層表面に熱可塑性樹脂バインダーと無機質コロイドゾルとから成る防曇性塗膜を設けたことを特徴とする農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。」(特許請求の範囲)
(3-イ)「本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムは、・・・透明性を低下させることなく、長期間にわたって防曇性を持続し、かつ優れた保温性、防塵性、耐候性を有し、ハウス栽培用やトンネル栽培用として好適に用いられる。」(6頁左欄12〜17行)

刊行物4(特開平7-62031号公報):
(4-ア)「【請求項1】(A)密度が0.870〜0.945g/cm3 、(B)溶融状態の少なくとも3点の温度下における動的粘弾性測定から求めた流動の活性化エネルギーEa(J/mol K)とメルトフローレートMFR(g/10分)との関係が下記式1の条件を充足し、(C)下記式2に示す組成分布変動係数Cxが0.40〜0.80であり、(D)重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が3〜20であることを特徴とするエチレン-αオレフィン共重合体。
logEa≧4.6-0.04×logMFR 式1
Cx=σ/SCBave 式2
σ:組成分布の標準偏差(1/1000C)
SCBave :1000C当りの短鎖分岐の平均値(1/1000C)
【請求項3】請求項1または2記載のエチレン-αオレフィン共重合体から成形されてなることを特徴とする成形体。」(特許請求の範囲)
(4-イ)「本発明は、・・・フィルム、中空容器、射出成形品などに要求される透明性、光沢が極めて優れ、強度特性も良好であり、また溶融張力が高いために優れた加工性を示す、エチレン-αオレフィン共重合体に関する。」(2頁左欄19〜24行)
(4-ウ)「本発明のエチレン-αオレフィン共重合体は、光学的性質、成形加工性に優れ、また良好な耐衝撃性、引張強度、剛性等の機械的性質を有しているので、特にインフレーションフィルム成形、Tダイ成形等によって加工される種々の包装用フィルム、或いは農業用フィルムやラミネート用原反等のフィルム成形体として好適である。・・・。さらに、・・・他のフィルムあるいはシートとの各種積層フィルム、積層シートなどに加工して用いることもできる。」(12頁左欄11〜45行)
(4-エ)「実施例1 ・・・[エチレンの重合]・・・下記に示す反応条件によりエチレンとブテン-1の共重合を行った。・・・得られた共重合体の物性並びに、フィルム成形時のスクリュー回転数、・・・フィルムのHAZEを表1にそれぞれ示す。」(14頁左欄19行〜同頁右欄27行)
(4-オ)実施例1で得られた共重合体のCxが0.46であること(15頁表1)

刊行物5〜7の記載内容は省略。

4.比較・検討
刊行物4には、前記(4-ア)〜(4-オ)から、「式(1)で示される組成分布変動係数Cxが0.46であるエチレン-ブテン-1共重合体から成形されてなるフィルム
Cx=σ/SCBave. (1)
(ただし、σは温度上昇カラム分別法により、各溶出温度における溶出量とその溶出成分の分岐度から求めた組成分布の標準偏差を表わし、SCBave.は炭素数1000個当たりの短鎖分岐の平均値をあらわす)。」に係る発明(以下、「刊行物4発明」という。)が記載されている。
そこで、本願発明1と刊行物4発明とを比較すると、後者の「エチレン-ブテン-1共重合体」および「組成分布変動係数Cxが0.46」は、それぞれ、前者の「エチレン-α-オレフィン共重合体」および「組成分布変動係数Cxが0.5以下」に該当するものであり、後者の「エチレン-ブテン-1共重合体から成形されてなる」は「エチレン-α-オレフィン共重合体を主成分とする」に相当するから、両者は次の(ア)の点で共通し、(イ)の点で相違する。
(ア)式(1)で示される組成分布変動係数Cxが0.5以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体を主成分とするフィルムを使用する点。
Cx=σ/SCBave.・・・(1)(ただし、σは温度上昇カラム分別法により、各溶出温度における溶出量とその溶出成分の分岐度から求めた組成分布の標準偏差を表わし、SCBave.は炭素数1000個当たりの短鎖分岐の平均値をあらわす)
(イ)本願発明は、「防曇層を有する積層フィルムであって、前記エチレン-α-オレフィン共重合体を主成分とする層が少なくとも該積層フィルムの片面側の最表層であって、かつ防曇層が反対面側の最表層である積層防曇フィルム」であるのに対して、刊行物4発明のフィルムは、(ア)のフィルム層を最表層とする積層フィルムであること及び反対面側の最表層に防曇層を有することが記載されていない点で相違する。

そこで、前記相違点について検討するに、本願発明における「前記エチレン-α-オレフィン共重合体を主成分とする層が少なくとも該積層フィルムの片面側の最表層であって、かつ防曇層が反対面側の最表層である積層防曇フィルム」は、その内容として「前記エチレン-α-オレフィン共重合体の層の片面に防曇層を積層した防曇フィルム」を含むものであるところ、刊行物4発明のフィルムにおいて、その片面側に防曇層を積層させることは、次のとおり、当業者が容易に想到できることである。
すなわち、刊行物4発明のフィルムは農業用フィルムとして好適なフィルムであることから((4-ウ)参照)、そのフィルムの用途として農業用フィルムは当然に選択されるものである。
そして、該農業用フィルムにおいては、その表面に防曇層を積層することが通常行われており、刊行物4発明のフィルムは積層フィルムとしても使用できるものである((4-ウ)参照)。
そのことは、刊行物1〜3にも、刊行物4発明におけると同様のエチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂を使用した農業用フィルムにおいて、その片面側に防曇層を積層することが好ましい結果をもたらす旨記載されていることからも明らかである((1-ア)〜(1-エ)、(2-ア)〜(2-エ)、(3-ア)〜(3-イ)参照)。
したがって、当該刊行物1〜3の記載を参考にすれば、刊行物4発明のフィルムを農業用フィルムに用いた場合、その片面側に防曇層を積層すれば、農業用フィルムとして好ましいものが得られるであろうことは、当業者が容易に想到できることである。
そして、本願発明1の奏する効果について、本願明細書には、防曇性だけでなく、特定範囲の組成分布変動係数を選択したことによるフィルム強度、開口性、防塵性の効果についても記載されている(段落0008)。
しかし、刊行物4のフィルムも本願発明1で規定されている範囲の組成分布変動係数を有する以上、本願発明1と同等の効果を奏するはずであり、本願発明1の効果が刊行物4発明に比べ格別顕著なものともいえない。
よって、本願発明1は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願発明1はその出願前に頒布された刊行物1〜4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-21 
結審通知日 2005-12-27 
審決日 2006-01-10 
出願番号 特願平9-322901
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 野村 康秀
芦原 ゆりか
発明の名称 積層防曇フィルム  
代理人 榎本 雅之  
代理人 中山 亨  
代理人 久保山 隆  
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