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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1131952
審判番号 不服2004-23722  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-08-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-18 
確定日 2006-02-23 
事件の表示 特願2001- 13479「通信端末装置及び通信制御プログラムを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 2日出願公開、特開2002-218191〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年1月22日の出願であって、平成16年10月29日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年11月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年11月18日付の手続補正
平成16年11月18日付の手続補正は、平成16年3月18日付手続補正書で補正された特許請求の範囲(以下、「旧請求項」という。)について、旧請求項1を削除し、旧請求項2及び3を請求項1及び2に繰り上げる補正であり、特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。

3.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成16年11月18日付手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項1】 ITU-T勧告のV.8モードに基づくファクシミリ通信機能を有する受信側の通信端末装置において、
送信側の通信端末装置に対してANSam信号を送出し所定時間内にCM信号を検出できない場合に、V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットしたDIS信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出した後上記送信側の通信端末装置からCI信号を受信したとき、ANSam信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出して上記送信側の通信端末装置からのCM信号を検出することなく上記送信側の通信端末装置からのCI信号を所定回数検出した場合、V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットせずにDIS信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出する通信制御手段を備え、
上記通信制御手段は、上記送信側の通信端末装置からCI信号を受信しANSam信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出して上記送信側の通信端末装置からのCM信号を検出することがないときに上記送信側の通信端末装置からのCI信号を所定回数検出する場合以外の場合において、V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットしたDIS信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出することを特徴とする通信端末装置。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-271301号公報(以下「引用例」という。)には、特に【図1】、【図15】及び【図16】を参照して、以下の事項が記載されている。(摘記箇所は段落番号を表記。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信端末装置に係り、より詳しくは、ITU-T勧告V.8及びT.30に準じた通信手順に基づいて通信することが可能な通信端末装置に関する。」
「【0087】
次に、本形態の作用を、図15及び図16を参照して説明する。
本形態に係るファクシミリ装置(応答局)10は、発呼局のダイヤルトーンに応答して着呼した(ステップ112;Y、図16Connect 参照)後、ステップ114で、CI信号を受信した回数をカウントするCI受信カウンタを0にセットし、ステップ116で、ANSam信号を送出する。
【0088】
次のステップ118で、CM信号を受信したか否かを判断し、CM信号を受信した場合には、ステップ130で、通常のITU-T勧告V.8の通信手順の続き(ステップ310〜ステップ318、図8参照)を行う。
【0089】
図16に示すように、ANSam信号が発呼局で検知されず、発呼局からCM信号が送出されないと、ステップ118で、CM信号を受信していないと判断し、この場合には、ステップ120で、NSF/DIS信号を発呼局へ送出する。なお、DIS信号には、応答局にV.8能力があることを示す情報を含める。
【0090】
次のステップ122で、プリアンブルを受信したか否かを判断し、プリアンブルを受信した場合には、ステップ134で、通常のITU-T勧告T.30の通信手順を行う。
【0091】
ステップ122で、プリアンブルを受信していないと判断した場合には、ステップ124で、CI信号を受信したか否かを判断する。CI信号を受信していないと判断した場合には、ステップ120に戻って、以上の処理(ステップ120〜ステップ124)を実行する。
【0092】
ステップ124で、CI信号を受信したと判断した場合には、ステップ126で、CI受信カウンタの値が、CI信号を受信する回数の上限値に到達したか否かを判断する。ステップ126で、CI受信カウンタの値が、CI信号を受信する回数の上限値に到達していない判断した場合には、ステップ128で、CI受信カウンタを1インクリメントして、ステップ116に戻る。一方、ステップ126で、CI受信カウンタの値が、CI信号を受信する回数の上限値に到達したと判断した場合には、ステップ136で、NSF/DIS信号を発呼局へ送出する。この場合、DIS信号には、応答局にV.8能力がないことを示す情報を含める。これにより、発呼局は、応答局がV.8能力がないと判断する。よって、発呼局と応答局との間で、通常のITU-T勧告T.30の通信手順で通信が続行される(ステップ138)。
【0093】
このように、図16にも示すように、送出したANSam信号が発呼局で検知されず、CM信号でなくCI信号を受信し、このCI信号の受信回数が上限値となったか否かを判断することにより、V.8通信手順を継続することができるか否かを判断し、V.8通信手順を継続することができないと判断した場合、応答局にV.8能力がないことを示す情報を含めたDIS信号を発呼局へ送出することにより、ITU-T勧告T.30の通信手順で通信を続行するようにしているので、送出したANSam信号が発呼局で検知されない場合でも、通信エラーとなることなく、通常のITU-T勧告T.30の通信手順で通信を続行することができる。」

5.対比
本願発明と、引用例記載の発明を比較する。
引用例の段落【0001】には「ITU-T勧告V.8及びT.30に準じた通信手順に基づいて通信することが可能な通信端末装置に関する。」と記載されており、同【0087】ないし【0093】には応答局(受信側)の処理が記載されているので、両者は「ITU-T勧告のV.8モードに基づくファクシミリ通信機能を有する受信側の通信端末装置」で一致する。
引用例には「ステップ116で、ANSam信号を送出する。」(段落【0087】)、「ステップ118で、CM信号を受信していないと判断し、この場合には、ステップ120で、NSF/DIS信号を発呼局へ送出する。なお、DIS信号には、応答局にV.8能力があることを示す情報を含める。」(段落【0089】)と記載されている。
ここで、引用例の「DIS信号には、応答局にV.8能力があることを示す情報を含める」ことは、本願発明の「V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットしたDIS信号」に相当するから、両者は「送信側の通信端末装置に対してANSam信号を送出し所定時間内にCM信号を検出できない場合に、V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットしたDIS信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出」している点で一致する。
また、引用例には、「ステップ116で、ANSam信号を送出する。」(段落【0087】)、「ステップ118で、CM信号を受信していないと判断し、」(段落【0089】)、「一方、ステップ126で、CI受信カウンタの値が、CI信号を受信する回数の上限値に到達したと判断した場合には、ステップ136で、NSF/DIS信号を発呼局へ送出する。この場合、DIS信号には、応答局にV.8能力がないことを示す情報を含める。」(段落【0092】)と記載されている。
ここで、引用例の「DIS信号には、応答局にV.8能力がないことを示す情報を含める」ことは、本願発明で「V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットしないDIS信号」に相当するから、両者は「上記送信側の通信端末装置からCI信号を受信したとき、ANSam信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出して上記送信側の通信端末装置からのCM信号を検出することなく上記送信側の通信端末装置からのCI信号を所定回数検出した場合、V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットせずにDIS信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出」している点で一致する。
さらに、引用例には「ステップ126で、CI受信カウンタの値が、CI信号を受信する回数の上限値に到達していないと判断した場合には、ステップ128で、CI受信カウンタを1インクリメントして、ステップ116に戻る。」(段落【0092】)「ステップ120で、NSF/DIS信号を発呼局へ送出する。なお、DIS信号には、応答局にV.8能力があることを示す情報を含める。」(段落【0089】)と記載されている。
したがって、両者は「上記送信側の通信端末装置からCI信号を受信し、上記送信側の通信端末装置からのCI信号を所定回数検出する場合以外の場合において、V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットしたDIS信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出」している点で一致する。
以上を踏まえると、本願発明と引用例記載の発明は、
「ITU-T勧告のV.8モードに基づくファクシミリ通信機能を有する受信側の通信端末装置において、送信側の通信端末装置に対してANSam信号を送出し所定時間内にCM信号を検出できない場合に、V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットしたDIS信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出した後上記送信側の通信端末装置からCI信号を受信したとき、ANSam信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出して上記送信側の通信端末装置からのCM信号を検出することなく上記送信側の通信端末装置からのCI信号を所定回数検出した場合、V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットせずにDIS信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出する通信制御手段を備え、上記通信制御手段は、上記送信側の通信端末装置からCI信号を受信し上記送信側の通信端末装置からのCI信号を所定回数検出する場合以外の場合において、V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットしたDIS信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出することを特徴とする通信端末装置。」で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
本願発明は、「通信制御手段は、送信側の通信端末装置からCI信号を受信しANSam信号を送信側の通信端末装置に対して送出して送信側の通信端末装置からのCM信号を検出することがないときに送信側の通信端末装置からのCI信号を所定回数検出する場合以外の場合」に、「V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットしたDIS信号を上記送信側の通信端末装置に対して送出する」のに対し、
引用例記載の発明では、「CI信号を受信したか判断(ステップ124)」→「CI受信カウンタの値が、CI信号を受信する回数の上限値に到達したか否かを判断(ステップ126)」→「ANSam信号を送出(ステップ116)」→「CM信号を受信していないと判断(ステップ118)」した次のステップで、「NSF/DIS信号(V.8能力有)送出(ステップ120)」している点で相違する。

6.判断
上記相違点について検討する。
両者とも、ITU-T勧告に基づく以上、同じ信号に基づく発明であり、処理手順の順序において相違するものであるが、引用例記載の発明において、重要なことは「CI信号の受信回数が上限値となったか否かを判断することにより、V.8通信手順を継続することができるか否かを判断」(段落【0093】)することであり、「CI信号を受信したか判断(ステップ124)」、「CI受信カウンタの値が、CI信号を受信する回数の上限値に到達したか否かを判断(ステップ126)」、「ANSam信号を送出(ステップ116)」、「CM信号を受信していないと判断(ステップ118)」、「NSF/DIS信号(V.8能力有)送出(ステップ120)」の5つのステップをどのような順序とするかは、「ANSam信号を送出(ステップ116)」→「CM信号を受信していないと判断(ステップ118)」のように、必然的に順序が決定するものを除いて、当業者が適宜決定できる事項であると言わざるを得ない。
したがって、本願発明のように「送信側の通信端末装置からCI信号を受信しANSam信号を送信側の通信端末装置に対して送出して送信側の通信端末装置からのCM信号を検出することがないときに送信側の通信端末装置からのCI信号を所定回数検出する場合以外の場合において、V.8モードに基づく通信手順が可能であることを示すビットをセットしたDIS信号を送信側の通信端末装置に対して送出すること」は、引用例記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。
また、本願発明の効果も、引用例記載の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-21 
結審通知日 2005-12-27 
審決日 2006-01-10 
出願番号 特願2001-13479(P2001-13479)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 努  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 大野 弘
岡本 俊威
発明の名称 通信端末装置及び通信制御プログラムを記録した記録媒体  
代理人 河宮 治  
代理人 石野 正弘  
代理人 青山 葆  

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