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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1132132
審判番号 不服2002-14750  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-05 
確定日 2006-03-01 
事件の表示 平成11年特許願第269840号「ワイルドカード探索のための方法、コンピュータ可読媒体、およびディレクトリ・サービス・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年6月16日出願公開、特開2000-163447〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

この出願は、平成11年9月24日の出願(パリ条約による優先権主張1998年11月19日、米国)であって、平成14年1月8日付の拒絶理由通知に対して、その指定期間内である平成14年3月28日付で意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成14年5月2日付で拒絶査定がなされた。
そして、この拒絶の査定を不服として、平成14年8月5日に審判請求がなされるとともに同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年8月5日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成14年8月5日付の手続補正を却下する。

[理由]

(1)本件手続補正

平成14年8月5日付の手続補正(以下「本件手続補正」という。)は、特許請求の範囲について、以下の補正を行うことを含むものであると認められる。

(A)補正前の請求項1、8及び23について「フィルタ・ベースの照会を生成する軽量ディレクトリ・アクセス・プロトコル(LDAP)ディレクトリ・サービスから関係データベースのワイルドカード探索を実行する方法において」との事項を付加する補正。

(B)補正前の請求項1の「関係データベース内で文字列の属性に関連して文字列の逆方向索引を生成するステップ」を「前記関係データベース内で2進属性を含む文字列を判断し、前記2進属性を含む文字列を除いた文字列の逆方向索引を生成するステップ」と変更する補正。

(C)補正前の請求項8の「前記文字列の属性に関連して前記正方向索引のミラーリングによって逆方向索引を生成するステップ」を「前記関係データベース内で2進属性を含む文字列を判断し、前記2進属性を含む文字列を除いた文字列のミラーリングによって逆方向索引を生成するステップ」と変更する補正。

(D)補正前の請求項13の「前記関係データベースが、その中に、文字列の正方向索引と、前記文字列の属性に関連して前記正方向索引の鏡像である逆方向索引とを格納しており」を「前記関係データベースが、その中に、文字列の正方向索引と、前記関係データベース内で2進属性を含む文字列を判断し、前記2進属性を含む文字列を除いた文字列の正方向索引の鏡像である逆方向索引とを格納しており」と変更する補正。

(E)補正前の請求項14の「階層型フィルタ・ベースの照会を使用して関係データベースを探索するための、コンピュータ可読媒体であって」を「フィルタ・ベースの照会を生成する軽量ディレクトリ・アクセス・プロトコル(LDAP)ディレクトリ・サービスから関係データベースのワイルドカード探索を、階層型フィルタ・ベースの照会を使用して実行するための、コンピュータ可読媒体であって」と変更する補正。

(F)補正前の請求項14の「関係データベース内で文字列の属性に関連して文字列の逆方向索引を生成するための手段」を「前記関係データベース内で2進属性を含む文字列を判断し、前記2進属性を含む文字列を除いた文字列の逆方向索引を生成するための手段」と変更する補正。

(G)補正前の請求項18について「フィルタ・ベースの照会を生成する軽量ディレクトリ・アクセス・プロトコル(LDAP)ディレクトリ・サービスから関係データベースのワイルドカード探索を実行するための、コンピュータ可読媒体であって」との事項を付加する補正。

(H)補正前の請求項18の「関係データベース内で文字列の属性に関連して文字列の正方向索引のミラーリングによって逆方向索引を生成するための手段」を「前記関係データベース内で2進属性を含む文字列を判断し、前記2進属性を含む文字列を除いた文字列のミラーリングによって逆方向索引を生成する手段」と変更する補正。

(I)補正前の請求項19について「フィルタ・ベースの照会を生成する軽量ディレクトリ・アクセス・プロトコル(LDAP)ディレクトリ・サービスから関係データベースのワイルドカード探索を、階層型フィルタ・ベースの照会を使用して実行するための、ディレクトリ・サービス・システムであって」との事項を付加する補正。

(J)補正前の請求項19の「前記関係データベース内の文字列の属性に関連して文字列の正方向索引のミラーリングによって逆方向索引を生成するための手段」を「前記関係データベース内で2進属性を含む文字列を判断し、前記2進属性を含む文字列を除いた文字列のミラーリングによって逆方向索引を生成するための手段」と変更する補正。

(K)補正前の請求項21の「命名階層として編成されたディレクトリを有するディレクトリ・サービス・システムにおいて」を「命名階層として編成されたディレクトリを有し、かつフィルタ・ベースの照会を生成する軽量ディレクトリ・アクセス・プロトコル(LDAP)ディレクトリ・サービスから関係データベースのワイルドカード探索を、階層型フィルタ・ベースの照会を使用して実行するディレクトリ・サービス・システムであって」と変更する補正。

(L)補正前の請求項21の「前記関係データベース内の文字列の属性に関連して文字列の正方向索引をミラーリングすることによって逆方向索引を生成するための手段」を「前記関係データベース内で2進属性を含む文字列を判断し、前記2進属性を含む文字列を除いた文字列のミラーリングによって逆方向索引を生成するための手段」と変更する補正。

(M)補正前の請求項23の「ワイルドカードを含む探索文字列を有する照会の受取時に、データベースの探索に使用されるアルゴリズムの関数として、前記ワイルドカードを強制的に最適探索位置に置くために、前記探索文字列を処理するステップ」を「ワイルドカードを含む探索文字列を有する照会の受取時に、文字列の正方向索引と、2進属性を含む文字列を判断し、前記2進属性を含む文字列を除いた文字列の正方向索引の鏡像である逆方向索引とを格納する前記関連データベースの探索に使用されるアルゴリズムの関数として、前記ワイルドカードを強制的に最適探索位置に置くために、前記探索文字列を処理するステップ」と変更する補正。

(2)当審の判断

請求人は、補正事項(B)に関して、明細書の段落〔0037〕第1〜3行の記載に基づくものであり、新規事項を追加する補正ではない旨主張するが、当該主張に係る「表を作成する時に、属性に2進値を含まないすべての表に対して、追加列を作成することが好ましい。2進属性を含む表は、属性定義の構文列の「bin」によって明瞭に識別できる。」との記載は、補正事項(B)に係る「関係データベース内で2進属性を含む文字列を判断し、前記2進属性を含む文字列を除いた文字列の逆方向索引を生成する」なる事項を、明示的に記載したものではなく、前記主張に係る明細書の記載から、補正事項(B)が自明であるということもできない。また、上記した補正事項(B)は、この出願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の他の部分にも明示的な記載はなく、他の部分の記載から自明な事項であるとも認められない。
したがって、上記した補正事項(B)は、当初明細書等に明示的に記載された事項ではなく、また、当初明細書等の記載から自明な事項であるとも認められない。
上記した補正事項(C)、(D)、(F)、(H)、(J)、(L)及び(M)についても同様である。
したがって、これらの補正事項を含む本件手続補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてなされたものではなく、新規事項を追加するものであるので、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(3)むすび

よって、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明

平成14年8月5日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年3月28日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「関係データベース内で文字列の属性に関連して文字列の逆方向索引を生成するステップと、
ワイルドカードを含む探索文字列を有する階層型フィルタ・ベースの照会を受け取った時に、ワイルドカードが前記探索文字列内の所与の位置にある場合に、関係データベース照会を生成するために前記逆方向索引を使用するステップと、
前記関係データベースへのアクセスに前記関係データベース照会を使用するステップと
を含む、階層型フィルタ・ベース照会を使用して関係データベースのワイルドカード探索を行うための方法。」

(2)引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-37425号公報(以下「引用例」という。)には、「辞書データ検索装置」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。

(a)「本発明の目的は、不定の文字を含んだキーワードに対して、該当する見出し語および該当するデータを、大容量辞書データファイルの中から高速に検索でき、しかも上記事項を小形および小容量のバッファメモリで実現できる辞書データ検索装置を提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、本発明は、大容量辞書データファイルが格納されている記憶手段の物理的最小アクセス単位であるセクタもしくは該セクタの整数倍を1ブロックとし、辞書データファイルの各ブロックの先頭の見出し語のみを集めた正順のサブインデックスファイル、正順のサブインデックスファイルの各ブロックの先頭見出し語のみを集めた1ブロックの正順のマスタインデックスファイル、辞書データファイルの各見出し語文字列の前後順を入れ換えた逆順見出し語とこの逆順見出し語に対応する辞書データファイルのアドレスを示すポインタとが格納された逆順のポインタインデックスファイル、逆順のポインタインデックスファイルの各ブロックの先頭見出し語のみを集めた逆順のサブインデックスファイル、逆順のサブインデックスファイルの各ブロックの先頭見出し語のみを集めた1ブロックの逆順のマスタインデックスファイル、をそれぞれ作成して、不定の文字を含むキーワードに対する大容量辞書データファイルを検索できるようにした。」(公報第2頁左下欄第8行〜右下欄第9行)

(b)「不定の文字を含んだキーワードに対する辞書データ検索は、キーワードの先頭文字から不定の文字直前の文字列Aと不定の文字直後からキーワード最後尾までの文字列Bに分離する。文字列Aについては、正順のインデックスファイルを利用して検索し、文字列Bについては逆順のインデックスファイルを利用して検索する。」(公報第3頁左上欄第13行〜第19行)

(c)「また、不定の文字が、キーワードの先頭にある場合には、逆順のマスタインデックスファイル、逆順のサブインデックスファイル、逆順のポインタインデックスファイルを用い、不定の文字が最後尾にある場合には、逆順のマスタインデックスファイル、逆順のサブインデックスファイル、逆順のポインタインデックスファイルを用いて求める見出し語を得るようにする。」(公報第3頁右下欄第2行〜第9行)

以上から、引用例には、
「辞書データファイル内の文字列について、逆順のインデックスファイルを作成するステップと、
不定の文字を含むキーワードを有する照会を受け取った時に、不定の文字が前記キーワードの先頭にある場合に、前記逆順のインデックスファイルを使用して前記辞書データファイルを検索するステップと、
を含む、辞書データファイルの不定の文字を含むキーワード検索を行うための方法。」
との発明(以下「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。

(3)対比

本願発明(以下「前者」という。)と引用例発明(以下「後者」という。)とを比較すると、後者の「辞書データファイル」と、前者の「関係データベース」とは、いずれも「データベース」を構成する点で共通する。
また、後者の「逆順のインデックスファイル」は、前者の「逆方向索引」に、後者の「キーワード」は、前者の「探索文字列」に、後者の「不定の文字」は、前者の「ワイルドカード」に、後者の「不定の文字を含むキーワード検索」は、前者の「ワイルドカード探索」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「キーワードの先頭」は、前者の「探索文字列内の所与の位置」に含まれることは明らかである。

したがって、両者は、
「データベース内で文字列の逆方向索引を生成するステップと、
ワイルドカードを含む探索文字列を有する照会を受け取った時に、ワイルドカードが前記探索文字列内の所与の位置にある場合に、前記逆方向索引を使用して前記データベースを検索するステップと、
を含むデータベースのワイルドカード探索を行うための方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明のワイルドカード探索は、階層型フィルタ・ベース照会を使用して、関係データベースを対象として行うものであり、ワイルドカードを含む探索文字列を、階層型フィルタ・ベースの照会として受け取り、関係データベース照会を生成して、関係データベースにアクセスするのに対し、引用例発明の不定の文字を含むキーワード検索は、そうでない点。

[相違点2]
本願発明における逆方向索引は、文字列の属性に関連して生成されるのに対し、引用例発明における逆順インデックスファイルは、単に見出し語について作成している点。

(4)判断

[相違点1][相違点2]について
LDAP等の階層型フィルタ・ベース照会を使用して、関係データベースを検索することは、”菊地聡、松岡祐介ほか,基幹システムにおける高信頼ディレクトリ・サーバ ,情報処理学会研究報告(97-DSM-7),社団法人情報処理学会,1997年10月17日,Vol.97,No.97,pp.67-72(以下「周知文献1」という。)”や、”OS/390 Security Server LDAPサーバー 管理および使用の手引き,日本アイ・ビー・エム株式会社,1998年5月,第1刷(以下「周知文献2」という。)”等にも記載のように、当業者の周知技術であり、このような周知技術における文字列検索に対して、文字列検索技術である引用例発明を適用することに、当業者が困難を要するものとは認められない。
また、本願発明でいう「文字列の属性に関連して逆方向索引を生成する」ことは、本願の明細書及び図面の記載(「本発明によれば、ワイルドカードから始まる(またはそれを含む)探索を改善するために、追加の列が追加される。この列の内容は、正方向索引列内の内容の鏡像であることが好ましい。(略)ワイルドカード探索戦略を容易にするのに使用される、いわゆる逆方向索引を生成する。(略)属性に2進値を含まないすべての表に対して、追加列を作成することが好ましい。」〔0036〕〜〔0037〕)を参酌すると、属性が文字列であるデータについては、逆方向索引を生成し、その他の属性(例えば2進値)であるデータについては、逆方向索引を生成しないことを意味するものと解される。
してみると、前記した周知技術のような、文字列データと他の種類のデータとを含むデータベース(周知文献1については、第68頁右欄「3.2属性管理」における「姓名」及び「写真」との記載、同2については、第20頁の属性タイプ「ces」及び「bin」との記載等を参照されたい。)における文字列データの検索に対して引用例発明を適用する際に、データの文字列の属性に関連して逆方向索引を生成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、引用例発明及び周知技術に基づいて、上記した相違点1および2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、上記した引用例の記載及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)むすび

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-27 
結審通知日 2005-10-04 
審決日 2005-10-17 
出願番号 特願平11-269840
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 誠  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 高瀬 勤
篠原 功一
発明の名称 ワイルドカード探索のための方法、コンピュータ可読媒体、およびディレクトリ・サービス・システム  
代理人 坂口 博  
復代理人 間山 進也  
代理人 市位 嘉宏  

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