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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1132451
審判番号 不服2003-9361  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-23 
確定日 2006-03-06 
事件の表示 特願2000- 45012「まろやかさ、後味、うま味が増強された調味料」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月27日出願公開、特開2001- 78702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月22日(優先権主張平成11年7月12日、日本国)の出願であって、平成15年4月23日に拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年5月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年6月23日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年6月23日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年6月23日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「精製魚油または精製魚油を含む油脂とエキス(ただし、該魚油と同一の魚由来のものを除く。)を水中油型に乳化させた調味料であって、エキス中の呈味物質に対する精製魚油の呈味増強効果により、まろやかさ、後味、うま味が増強された調味料。」と補正された。
上記補正は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「エキス」に「エキス(ただし、該魚油と同一の魚由来のものを除く。)」という限定を付加するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「特開平9-173007号公報」(以下、「引用例」という。)には、(a)「魚介類、畜肉類またはそれらを組合わせた食材から加熱抽出した抽出溶液を油分とエキス成分に分別した後、当該油分とエキス成分をそれぞれ別個に加圧加熱処理して得た加圧加熱処理済の油分と加圧加熱処理済のエキス成分と抗酸化剤及びゼラチンを適宜配合し、乳化混合することを特徴とする呈味性を改良したエキス系調味料。」(特許請求の範囲の項の請求項4)、(b)「ゼラチンは油分とエキス成分の間に介在し、油分の分散性を高める。また、抗酸化剤は、油脂の酸化を抑える役割を果す。更に、これらの配合液をホモジナイザー(乳化処理装置)にて乳化処理を行うことによって、混合後の安定性と食味のまろやかさなどを向上させたものである。」(段落【0015】)、(c)「従って、例えば魚介類から抽出したエキス成分と、畜肉類から抽出した油分を配合した、自然界にはないエキス系調味料を具現化することも出来る。つまり、このようなエキス系調味料は、種類および配合を種々吟味することにより、今までになかった新規の味を有する調味料を生み出す可能性もある。また、嗜好上好ましくない成分を有する油分あるいはエキス成分は配合せず、他の原料から分離した油分あるいはエキス成分に置き換えてやることも出来る。すなわち、例えば、用途別に原料の好ましい風味や旨味だけを生かしたエキス系調味料を得ることも可能である。」(段落【0017】)、(d)「<実験例1> 鮭エキス調味料の製法 第1工程:粗砕した鮭の頭部や骨や皮等のガラ材に等倍量の水を加えたうえ、100℃で1時間煮込む。 第2工程:煮込んだ鮭頭部等のガラ材とその煮出し汁を一緒に小型バスケット型遠心分離機にかけてガラ残渣と抽出溶液とに固液分離する。第3工程:前記抽出溶液を遠心分離機にかけて水層と油層とに分別する。 第4工程:油層は、濾して細かい混入物を除去して鮭油として分取し、一方、水層は、加熱濃縮して鮭エキス成分として分取する。 第5工程:前記のように調製分取した鮭油と鮭エキス成分とを、別個に117℃で60分間、加圧加熱処理(レトルト加熱)する。第6工程:加圧加熱処理済の鮭油分と鮭エキス成分を配合して鮭エキス調味料Aとなす。・・・」(段落【0021】)、及び(e)「従って、未加圧加熱の抽出溶液段階のものと、加圧加熱処理後の鮭エキス成分と鮭油を配合した鮭エキス調味料Aとでは、その旨味は明らかに増しており、その呈味が改良されている。さらに、鮭エキス調味料Aと鮭エキス調味料Bとを比較したところ、鮭エキス調味料Bの方が、その風味がまろやかであるうえ、長期保存に耐えるものであった。」(段落【0024】及び【0025】)と記載されている。
上記摘示事項(a)の「ゼラチンを適宜配合し、乳化混合する」ことは、同(b)の「ゼラチンは油分とエキス成分の間に介在し、油分の分散性を高める。」との記載に照らし、水中油型の乳化状態を呈するようにすることであり、また、同(b)及び(d)には、「まろやかさ」や「うま味」が増強されることが言及されているので、引用例には、「魚介類から加熱抽出した抽出溶液を油分とエキス成分に分別した後、当該油分とエキス成分をそれぞれ別個に加圧加熱処理して得た加圧加熱処理済の油分と加圧加熱処理済のエキス成分を適宜配合し、水中油型に乳化混合することを特徴とするまろやかさ、うま味が増強されたエキス系調味料」という発明が記載されているといえる。

(3)対比
本願補正発明と引用例に記載された発明を対比すると、両者は、「魚油とエキスを水中油型に乳化させた調味料であって、まろやかさ、うま味が増強された調味料」の点で一致し、(イ)魚油が、前者では「精製魚油」であるのに対し、後者ではそうでない点、(ロ)エキスが、前者では「(ただし、該魚油と同一の魚由来のものを除く。)」と限定されているのに対し、後者ではそうでない点、(ハ)前者では、魚油とエキスを「加圧加熱処理」することについて記載されていないのに対して、後者では、魚油とエキスが「加圧加熱処理」されている点、及び(ニ)前者では、「エキス中の呈味物質に対する精製魚油の呈味増強効果」により「後味」が増強されているのに対し、後者では、この点について記載されていない点で、両者は相違する。

(4)判断
相違点(イ)について
油脂成分として魚油を用いて油脂含有乳化物を製造する際に、魚油として「精製魚油」を用いることは、本願出願前に当業者において周知であった(必要ならば、特開平8-51928号公報、特開平8-259943号公報、特開平8-259944号公報、特開平10-327753号公報等を参照されたい。)ことから、「エキス」と配合する魚油として「精製魚油」を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。
相違点(ロ)について
引用例の摘示事項(c)には、「このようなエキス系調味料は、種類および配合を種々吟味することにより、今までになかった新規の味を有する調味料を生み出す可能性もある。また、嗜好上好ましくない成分を有する油分あるいはエキス成分は配合せず、他の原料から分離した油分あるいはエキス成分に置き換えてやることも出来る。」との記載があり、魚油とエキスとは、同一の魚由来のものでなくてもよいことが引用例に記載されているといえることから、エキスを「(ただし、該魚油と同一の魚由来のものを除く。)」と限定した点は、両者の実質的な相違点とはならない。
相違点(ハ)について
本願明細書には、「精製魚油」或いは「エキス」の調製法として、「加圧加熱処理」することについて記載されるところはないが、これを積極的に排除している記載もない。そうすると、本願発明に係る「精製魚油」或いは「エキス」は、加圧加熱したものも包含すると解されるから、相違点(ハ)は両者の実質的な相違点とはならない。
相違点(ニ)について
「エキス中の呈味物質に対する精製魚油の呈味増強効果」により「後味」が増強されることは、本願補正発明の効果というべきものであるが、「精製魚油」に関し、本願明細書には、「本発明の調味料で用いる魚油は好ましくは精製魚油である。」(段落【0008】)と記載されているのみで、「好ましい」理由について具体的な説明は何もなく、また、「魚油」に比べて「精製魚油」を用いた方が調味料の「後味」が増強されることを裏付ける実施例もない以上、この点に格別の技術的意義を認めることはできない。
例え「後味の強さ」があるとしても、これは食した当業者が容易に気付く程度のものであって、この効果を明らかにしたことだけで、本願補正発明の進歩性を肯定することはできない。
なお、請求人は、参考文献1ないし3を提出し、本願補正発明の効果を主張しているが、該文献においては、魚油とエキスが同一のマグロ由来のものであるから、該文献に記載されているデータは、本願補正発明の効果を証する根拠とはなり得ない。
以上のとおり、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(5)むすび
したがって、本件補正は平成15年改正前特許法17条の2,5項において準用する同法126条4項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年6月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年7月1日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「精製魚油または精製魚油を含む油脂とエキスを水中油型に乳化させた調味料であって、エキス中の呈味物質に対する精製魚油の呈味増強効果により、まろやかさ、後味、うま味が増強された調味料。」
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりであるから、引用例には、「魚介類から加熱抽出した抽出溶液を油分とエキス成分に分別した後、当該油分とエキス成分をそれぞれ別個に加圧加熱処理して得た加圧加熱処理済の油分と加圧加熱処理済のエキス成分を適宜配合し、水中油型に乳化混合することを特徴とするまろやかさ、うま味が増強されたエキス系調味料」という発明が記載されているといえる。
(2)対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、両者は、「魚油とエキスを水中油型に乳化させた調味料であって、まろやかさ、うま味が増強された調味料」の点で一致し、(い)魚油が、前者では「精製魚油」であるのに対し、後者ではそうでない点、(ろ)前者では、魚油とエキスを「加圧加熱処理」することについて記載されていないのに対して、後者では、魚油とエキスが「加圧加熱処理」されている点、及び(は)前者では、「エキス中の呈味物質に対する精製魚油の呈味増強効果」により「後味」が増強されているのに対し、後者では、この点について記載されていない点で、両者は相違する。
相違点(い)、(ろ)及び(は)は、それぞれ上記「2.(3)」に記載した相違点(イ)、(ロ)、及び(ニ)と同じであることから、相違点(い)、(ろ)及び(は)については、上記「2.(4)」のそれぞれの該当個所に記載した判断のとおりである。
相違点(は)に関し付言すると、平成15年6月23日付手続補正書に記載の「図1」においては、「精製マグロ油添加」のものが「マグロ油添加」のものに比べ、「後味」が若干強いことが示されているが、「マグロ油添加」においても、無添加のものに比べ、後味が増強されるのであるから、魚臭のない「精製マグロ油添加」を用いれば、後味がより増強されて感じるであろうことは、当業者ならば容易に気付くことである。
そして、本願発明は、引用例に記載の発明に比較して格別の効果を奏するものではない。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-10 
結審通知日 2006-01-10 
審決日 2006-01-24 
出願番号 特願2000-45012(P2000-45012)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
P 1 8・ 575- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子内田 俊生  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 鈴木 恵理子
河野 直樹
発明の名称 まろやかさ、後味、うま味が増強された調味料  
代理人 須藤 阿佐子  

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