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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B32B |
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管理番号 | 1132559 |
異議申立番号 | 異議2003-73245 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-04-07 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-25 |
確定日 | 2005-12-21 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3439621号「脂肪族ポリエステル塗工フィルム」の請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3439621号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3439621号の請求項1ないし11に係る発明についての出願は、平成 9年 4月14日(国内優先権主張:平成 8年 4月18日、及び平成 8年 4月25日)に特許出願され、平成13年 6月13日に特許権の設定登録がなされ、その後、その特許に対して、粟原弘(以下、「第1申立人」という。)から特許異議の申立て(以下、「第1異議申立て」という。)がなされ、また、東レ株式会社(以下、「第2申立人」という。)から特許異議の申立て(以下、「第2異議申立て」という。)がされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年 8月 2日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正の内容 本件訂正請求に係る訂正の内容は、下記訂正事項のとおりである。 ・訂正事項1 特許査定時の明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の 「【請求項1】 脂肪族ポリエステル100重量部に対し、滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤0.1〜2重量部を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜を有する脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」との記載を、 「【請求項1】 脂肪族ポリエステル100重量部に対し、滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤0.1〜2重量部を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜を有する脂肪族ポリエステル塗工フィルムであって、帯電防止層の被膜の厚みが、0.05〜1μmであり、又は、防曇層の被膜の厚みが、固形分の重量で0.05〜1g/m2である脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」と訂正する。 ・訂正事項2 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ・訂正事項3 本件特許明細書の特許請求の範囲の 「【請求項3】 脂肪族ポリエステルが乳酸系ポリマーである請求項1記載の脂肪族ポリエステルフィルム。」との記載を、 「【請求項2】 脂肪族ポリエステルが乳酸系ポリマーである請求項1記載の脂肪族ポリエステルフィルム。」と訂正する。 ・訂正事項4 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項4ないし7を削除する。 ・訂正事項5 本件特許明細書の特許請求の範囲の 「【請求項8】 被膜が防曇層であり、脂肪族ポリエステル塗工フィルムが防曇性農業用脂肪族ポリエステルフィルムである請求項3記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」との記載を、 「【請求項3】 被膜が防曇層であり、脂肪族ポリエステル塗工フィルムが防曇性農業用脂肪族ポリエステルフィルムである請求項2記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」と訂正する。 ・訂正事項6 本件特許明細書の特許請求の範囲の 「【請求項9】 防曇層が、無機質コロイドゾル及びバインダーを主成分とする親水性塗工液を塗布して形成され、その単位面積当たりの固形分の重量が0.01〜5g/m2である請求項8記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」との記載を、 「【請求項4】 防曇層が、無機質コロイドゾル及びバインダーを主成分とする親水性塗工液を塗布して形成されたものである請求項3記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」と訂正する。 ・訂正事項7 本件特許明細書の特許請求の範囲の 「【請求項10】 無機質コロイドゾルがシリカゾル及びアルミナゾルからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である請求項9記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」との記載を、 「【請求項5】 無機質コロイドゾルがシリカゾル及びアルミナゾルからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である請求項4記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」と訂正する。 ・訂正事項8 本件特許明細書の特許請求の範囲の 「【請求項11】 脂肪族ポリエステルフィルムが、縦方向に1.3〜5倍、横方向に1.3〜5倍延伸された2軸延伸フィルムである請求項9記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」との記載を、 「【請求項6】 脂肪族ポリエステルフィルムが、縦方向に1.3〜5倍、横方向に1.3〜5倍延伸された2軸延伸フィルムである請求項4記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」と訂正する。 (なお、上記各訂正事項の番号は、整理の都合上、別途、当審が便宜的に定めたものである。また、上記下線は、訂正箇所を明らかにするために当審が便宜上付したものである。 更に、平成17年 8月 2日付け訂正請求書第2頁17〜18行に「請求項11に「請求項9」とあるのを、「請求項4」と訂正して請求項11とする。」と記載されているが、これは、請求項についての訂正の内容及び請求項の対応関係の記載からみて、「請求項11に「請求項9」とあるのを、「請求項4」と訂正して請求項6とする。」の誤記であると認められるから、後者のとおりと解した。) 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の発明特定事項に「帯電防止層の被膜の厚みが、0.05〜1μmであり、又は、防曇層の被膜の厚みが、固形分の重量で0.05〜1g/m2である」との発明特定事項を直列的に追加する訂正をし、被膜の厚み及び固形分の重量を規定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められる。 また、本件特許明細書の段落【0035】「脂肪族ポリエステルフィルムの片面、または両面に形成される被膜の厚さは、0.01〜5μm(固形分の重量で0.01〜5g/m2 )の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1μm(固形分の重量で0.05〜1g/m2 )である。」及び、実施例(段落【0042】ないし段落【0069】)の具体的記載からみて、当該訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2及び4について 訂正事項2及び4は、それぞれ、請求項2及び請求項4ないし7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするもので、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3及び訂正事項5ないし8について 訂正事項3及び訂正事項5ないし8は、それぞれ、訂正前の請求項3及び請求項8ないし11に係る訂正であって、上記訂正事項1並びに訂正事項2及び4のとおり特許請求の範囲を訂正することに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合を図るためにする訂正事項であると認められ、請求項番号、引用請求項番号等を訂正し、整合させるものであるから、当該訂正事項3及び訂正事項5ないし8は、何れも、明りょうでない記載の釈明を目的とするもので、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2-3.むすび 以上のとおりであるから、上記平成17年 8月 2日付け訂正請求に係る訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項において準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件発明 上記2.に記載したとおり、上記訂正が認められることから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に、「本件発明1」、「本件発明2」等という。)は、上記訂正に係る訂正明細書(以下、単に「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲、請求項1ないし6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 脂肪族ポリエステル100重量部に対し、滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤0.1〜2重量部を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜を有する脂肪族ポリエステル塗工フィルムであって、帯電防止層の被膜の厚みが、0.05〜1μmであり、又は、防曇層の被膜の厚みが、固形分の重量で0.05〜1g/m2である脂肪族ポリエステル塗工フィルム。 【請求項2】 脂肪族ポリエステルが乳酸系ポリマーである請求項1記載の脂肪族ポリエステルフィルム。 【請求項3】 被膜が防曇層であり、脂肪族ポリエステル塗工フィルムが防曇性農業用脂肪族ポリエステルフィルムである請求項2記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。 【請求項4】 防曇層が、無機質コロイドゾル及びバインダーを主成分とする親水性塗工液を塗布して形成されたものである請求項3記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。 【請求項5】 無機質コロイドゾルがシリカゾル及びアルミナゾルからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である請求項4記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。 【請求項6】 脂肪族ポリエステルフィルムが、縦方向に1.3〜5倍、横方向に1.3〜5倍延伸された2軸延伸フィルムである請求項4記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。」 4.特許異議申立てについて 4-1.異議申立て理由の概要 (1)第1異議申立て理由について 第1申立人は、証拠として、甲第1号証(特開平8-34913号公報)、甲第2号証(赤松清監修「帯電防止材料の最新技術と応用展開」(1996年4月15日、株式会社シーエムシー発行)第13〜15頁、第47〜49頁、第69〜77頁)、甲第3号証(特公昭50-6867号公報)、甲第4号証(特開平4-28728号公報)、甲第5号証(特開平5-320391号公報)、甲第6号証(特開平5-116216号公報)、甲第7号証(特開平5-310975号公報)、甲第8号証(特開平6-234873号公報)、甲第9号証(特開平7-70556号公報)、甲第10号証(特開平7-304889号公報)、甲第11号証(特開平7-40521号公報)、甲第12号証(特開平5-1162号公報)、甲第13号証(特開平7-53747号公報)、甲第14号証(特開平7-233270号公報)、甲第15号証(特開平7-298791号公報)、甲第16号証(特開平7-82398号公報)、甲第17号証(特開平8-53559号公報)、甲第18号証(特開平5-1216号公報)、甲第19号証(特開平7-157639号公報)、甲第20号証(特開平7-166034号公報)、甲第21号証(特開平7-166035号公報)、甲第22号証(特開平7-196897号公報)、甲第23号証(特開平8-12793号公報)、甲第24号証(特開平8-225663号公報(公開日:平成8年9月3日))、及び甲第25号証(特開平9-95605号公報(公開日:平成9年4月8日))を提出して、 [理由1]本件特許明細書の請求項1ないし11に係る発明は、何れも、甲第1号証ないし甲第25号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨、 [理由2]本件特許明細書の請求項1ないし11に係る発明は、何れも、発明の詳細な説明に記載された発明ではないから、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満足していない旨、 [理由3]本件特許明細書の請求項1ないし11に係る記載では、それらの発明の「外延が不明確な」ものとなっているので、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満足していない旨、及び、 [理由4]本件特許明細書の請求項2に係る「被膜の厚み」は不明であるので、本件特許明細書の記載は、請求項2ないし11に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満足していない旨、 主張し、前記請求項1ないし11に係る発明の特許を取り消すべきと主張している。 (2)第2異議申立て理由について 第2申立人は、証拠として、甲第1号証(特開平6-166763号公報)、甲第2号証(特開平8-34913号公報)、甲第3号証(特開平3-203936号公報)、及び甲第4号証(特開平5-298653号公報)、並びに参考資料1(鐵健司著「品質管理のための統計的方法入門」(1990年3月2日、株式会社日科技連出版社発行)第129頁)を提出して、 [理由5]本件特許明細書の請求項1、3ないし7に係る発明は、何れも、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、また、請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨、及び、 [理由6]本件特許明細書の請求項4ないし7に係る記載は、不明確であるので、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満足していない旨、 主張し、本件請求項1ないし11に係る発明の特許を取り消すべきと主張している。 4-2.異議申立てに係る甲各号証の記載事項 (1)第1異議申立てについて a.甲第1号証(特開平8-34913号公報)の記載事項 (a-1)「L-乳酸比率が75%以上であるL-乳酸ポリマー80〜95重量%と多価アルコールエステル及びヒドロキシ多価カルボン酸エステルからなる群より選ばれた可塑剤5〜20重量%の混合物100重量部に、SiO2を90%以上含有し、平均粒径7〜50nmの耐ブロッキング剤0.1〜5重量部及び滑剤0.1〜2重量部配合したことを特徴とするL-乳酸ポリマー組成物。」(特許請求の範囲、請求項1) (a-2)「本発明において滑剤は、特に限定されないが、炭素数17〜22の脂肪酸アミドが好ましく、ステアルアミド、エルカアミドが特に好ましい。その使用量はL-乳酸ポリマーと可塑剤の混合物100重量部に0.1〜2重量部である。(略)」(段落【0014】) (a-3)「製造例2 ・・・90%L-乳酸10kgを・・・オリゴマー化した。・・・ポリマー粉末・・・L-乳酸ポリマーBを得た。・・・」(段落【0025】) (a-4)「実施例1〜5 〔延伸フィルム〕 製造例1〜5で得られたL-乳酸ポリマーA〜Eに、可塑剤としてアセチルクエン酸トリブチル(以下ATBCと略記する)を、耐ブロッキング剤として、平均粒径7nm・・・、平均粒径12nm・・・、平均粒径16nm・・・、平均粒径40nm・・・を、また滑剤・・・を、各々表-1に示す割合でリボンブレンダーで混合後、2軸押出機により・・・ペレット化した。該ペレットを・・・熱処理し結晶化を進めた。得られたペレットを、押出機により、・・・厚み0.13mmのフィルムを得た。該フィルムを・・・2軸延伸し、・・・厚み0.02mmの熱収縮性延伸フィルムを得た。評価結果を表1に示す。」(段落【0030】) (a-5)段落【0044】「ポリマー組成、可塑剤等による性能評価(フィルム)」と表題が付された表1には、「実施例1」ないし「実施例7」として、ポリマー組成(wt%)、可塑剤(wt%)の添加量の記載があり、乳酸系ポリマー81〜93wt%と可塑剤「ATBC」19〜7wt%との混合物100重量部に対して、「耐ブロッキング剤」0.5〜3重量部及び「滑剤」0.5〜2重量部を配合したものが記載されている。 (a-6)段落【0045】「ポリマー組成、可塑剤等による性能評価(フィルム)」との表題が付された表2の比較例の一覧には、「比較例5」として、可塑剤「ATBC」を用いず、乳酸系ポリマーB(100wt%)100重量部に対して、「耐ブロッキング剤」0.5重量部及び「滑剤」0.5重量部を配合したものが記載されている。 b.甲第2号証(赤松 清監修「帯電防止材料の最新技術と応用展開」、1996年4月15日、株式会社 シーエムシー発行、第13〜15頁、第47〜49頁、第69〜77頁)の記載事項 (b-1)「(1)塗布型帯電防止剤 塗布型帯電防止剤を用いる加工は,水かアルコールなどの適当な溶媒で希釈した帯電防止剤の溶液を用いてプラスチック製品を浸漬させるか,スプレーするかなどの方法で表面を処理し,そして溶媒を乾燥し除去することで表面に帯電防止剤の薄い被膜を形成させる。また,塗布型帯電防止剤として用いられる界面活性剤ではカチオン性のものが最も良好な効果を示し,両性,アニオン性,ノニオン性のものがそれに続く。塗布型帯電防止剤の長所はほとんどのプラスチックに使用できる。」(第14頁下から4行〜第15頁3行) (b-2)第47〜49頁には、「2 界面活性剤のコーティング」の項として、界面活性剤をコーティング剤として用いて帯電防止膜を形成する方法と、その塗布液として、界面活性剤を水やアルコールに溶かした溶液として取り扱うことについて、また、第69〜77頁には、「4 低分子型帯電防止剤」の項として、アニオン系、カチオン系、非イオン系といった種類別の具体的な低分子型帯電防止剤について記載されている。 c.甲第3号証(特公昭50-6867号公報)の記載事項 (c-1)「帯電防止剤を特に水溶液として施すことにより熱可塑性プラスチツクシートに帯電防止仕上げする方法において、シートの表面に帯電防止剤を施す前または施した後にシートを延伸し、引続きクリツプを用いる先細の止持枠にシートを導いて部分的収縮を行わせることを特徴とする熱可塑性プラスチツクシートの帯電防止仕上げ法。」(特許請求の範囲 第1項) (c-2)「帯電防止剤としては例えば第四級アンモニウム化合物、シリコーン、燐酸エステル、ポリビニルアルコール誘導体、ポリアミン等を使用することができる。」(第2頁第3欄27〜30行) (c-3)「例1 2軸に延伸したポリプロピレンシートをアルキル-トリメチルアンモニウムクロリドの2%水溶液で被覆し、引続き160℃で約20%収縮させた。このシートの表面抵抗は7.3×106オームであった。」(第2頁第4欄16〜21行) d.甲第4号証(特開平4-28728号公報)の記載事項 (d-1)「ポリエステルフイルムの少なくとも片面に、 (A)少なくともC10〜C20基を有するアニオン系帯電防止剤 (B)低級エーテルグリコール (C)水 からなり、低級エーテルグリコールを少なくとも10%含む塗布液を塗布したことを特徴とする帯電防止ポリエステルフイルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (d-2)「実施例1 (1)ポリエチレンテレフタレートの製造・・・ (2)アニオン系帯電防止塗布液の調合 ドデシルスルホネート200部に水、6300部を加えて希釈し、さらに、エチレングリコールブチルエーテル3500部を加えて固形分濃度25%の塗布液を得た。 (3)インラインコートフイルムの製造 (1)で製造した、ポリエチレンテレフタレートを・・・溶融押出し、・・・未延伸フィルムを得、この未延伸フイルムを・・・延伸し、前記の塗布液をエアナイフ方式で塗布し、・・・乾燥し、次いで・・・延伸し、さらに・・・熱固定し、厚さ12ミクロンコート量0.01g/m2の二軸延伸コーティングポリエステルフイルムを得た。・・・得られたフイルムは、・・・帯電防止も優れている。」(第3頁左下欄下6行〜第4頁左上欄16行) e.甲第5号証(特開平5-320391号公報)の記載事項 (e-1)「結晶配向が完了する前のポリエステルフイルムの少なくとも片面に(1)易接着性ポリエステル樹脂、(2)分子内にスルホン酸及び/又はその金属塩の基を有する帯電防止剤及び(3)分子内に少なくとも1個の遊離カルボキシル基又はフェニル性水酸基を有する酸性化合物を含む組成物の水性塗液を塗布し、次いで乾燥、延伸、さらに熱処理を施して配向結晶化を完了せしめることを特徴とする帯電性の改良された易接着性ポリエステルフイルムの製造法。」(特許請求の範囲、請求項2) (e-2)「本発明においてポリエステルフイルムを構成するポリエステルとは、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はその形成性誘導体から合成される線状飽和ポリエステルである。」(段落【0009】抜粋) (e-3)「【実施例1〜7及び比較例1〜4】固有粘度が0.65のポリエチレンテレフタレート(滑剤含有)を170℃で3時間乾燥後20℃に維持した回転冷却ドラム上に280℃で溶融押出して厚み150μmの未延伸フイルムを得、次に赤外線ヒーター法で3.8倍縦延伸したのち、表1の水性プライマー液(固形分4wt%)をキスコート法にて縦延伸フイルムの片面にWet2g/m2の割合で塗布した。引続き105℃で横方向に3.9倍延伸し、次いで215℃で6行間熱固定を行った。この時のフイルム厚さは10μmであり、また最終プライマー層の厚さは0.02μmであった。このフイルムの特性を表2に示す。」(段落【0036】) f.甲第6号証(特開平5-116216号公報)の記載事項 (f-1)「未延伸または一軸方向のみに延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止剤と溶融温度100℃〜200℃、ケン化度50%〜90%、重合度500以下の部分ケン化ポリビニルアルコールとを含む水溶液または水分散液を塗布、乾燥し、続いて二軸方向または最初の延伸方向と直角方向に延伸し、熱セットすることを特徴とする帯電防止ポリエステルフィルムの製造方法。」(特許請求の範囲、請求項1) (f-2)「本発明に使用するポリエステルフィルムのポリエステルとは、その構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位より成るポリエチレンテレフタレート、エチレンナフタレート単位より成るポリエチレンナフタレートなどである。本発明のポリエステルは必要に応じて滑り性付与剤、安定剤、顔料などの添加剤を含有していても良い。」(段落【0009】) (f-3)「本発明における帯電防止剤は、水溶液または水分散液として使用されるもので、アニオン性化合物、カチオン性化合物およびノニオン性化合物のいずれでも良いが、ポリエステルフィルムの延伸工程における耐熱性の観点からポリマータイプの帯電防止剤が好ましく、」(段落【0011】抜粋) (f-3)「本発明に使用する帯電防止剤と部分ケン化ポリビニルアルコールを含む水溶液または水分散液の粘度は、塗布斑の発生の点で200センチポイズ(20℃)以下が好ましい。また、前記水溶液または水分散液の固形分の濃度については、通常10重量%以下が適当である。さらに、塗布厚みについては特に限定するものではないが、最終的に得られる被膜の厚みが0.01〜0.5μm程度になるような厚みが適当である。」(段落【0015】) (f-4)「実施例1 ・・・ポリエチレンテレフタレートを・・・溶融押出し、・・・未延伸フィルムを得、続いて・・・延伸した。 一方、帯電防止剤としてELポリマーWS-50(商品名、新中村化学工業 (株) 社製、カチオン系アクリル系ポリマー主成分タイプ)、部分ケン化ポリビニルアルコールとしてUMR-10H(商品名、ユニチカケミカル (株) 社製、溶融温度:170℃、ケン化度:80%、重合度:100)を用い、ELポリマーWS-50 60部(固形分、以下同様)とUMR-10H 40部から成る固形分濃度5重量%の水分散液を塗布液として準備した。 前記の縦延伸ポリエステルフィルムに上記塗布液を塗布、乾燥し、引き続き・・・延伸した後、・・・熱セットを施してポリエステル層の厚さが25μ、塗布層の厚さが0.05μである帯電防止ポリエステルフィルムを得た。・・・」(段落【0027】〜段落【0029】 g.甲第7号証(特開平5-310975号公報)の記載事項 (g-1)「ポリエステルフイルムの少なくとも片面に、(1)水性ポリエステル樹脂、(2)ポリエーテル化合物及び(3)帯電防止剤を含む組成物のプライマー層を設けていることを特徴とする帯電性の改良された易接着性ポリエステルフイルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (g-2)「本発明においてポリエステルフイルムを構成するポリエステルとは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。」(段落【0009】抜粋) (g-3)「本発明おける線状飽和ポリエステルは、フイルム特性を向上する剤例えば滑剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、遮光剤、安定剤、紫外線吸収剤等を含有することができる。」(段落【0010】抜粋) (g-4)「【実施例1〜6及び比較例1,2】固有粘度が0.65のポリエチレンテレフタレート(滑剤含有)を170℃で3時間乾燥後20℃に維持した回転冷却ドラム上に280℃で溶融押出して厚み150μmの未延伸フイルムを得、次に赤外線ヒーター法で3.8倍縦延伸したのち、表1の水性プライマー液(固形分4wt%)をキスコート法にて縦延伸フイルムの片面にWet2g/m2の割合で塗布した。引続き105℃で横方向に3.9倍延伸し、次いで215℃で6秒熱固定を行った。この時のフイルム厚さ 10μmであり、また最終プライマー層の厚さは0.02μmであった。このフイルムの特性を表2に示す。」(段落【0038】) h.甲第8号証(特開平6-234873号公報)の記載事項 (h-1)「【請求項1】 配向結晶化の完了していないポリエステルフイルムの少なくとも片面に、(A)ゼラチン及び/またはその誘導体と(B)ポリエステル、ポリウレタン、アクリルポリマー、ポリエチレンイミン及びそれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種とを含有する水性塗布液を塗布し、次いで乾燥、延伸、熱固定の処理を行ってポリエステルフイルムの配向結晶化を完了せしめることを特徴とする易接着性ポリエステルフイルムの製造方法。 【請求項2】 水性塗布液に帯電防止剤を含有させる請求項1記載の易接着性ポリエステルフイルムの製造方法。」(特許請求の範囲、請求項1、2) (h-2)「本発明においてフイルムを構成するポリエステルとは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから製造される結晶性の線状飽和ポリエステルであり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレート、ポリ(1,4―シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)などが好ましく例示される。・・・ポリエステルフイルムとしては滑剤を含まないフイルムが透明性、表面平坦性の点で好ましいが、表面粗さ制御のため滑剤、例えば炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、酸化チタン等の如き無機微粒子及び/または触媒残渣の析出微粒子等を少量含有させたフイルムであっても良く、またドデシルベンゼンスルホン酸ソーダの如き帯電防止剤、色調調整剤等の如き他の添加剤を含有させたフイルムであってもよい。」(段落【0007】、段落【0008】) i.甲第9号証(特開平7-70556号公報)の記載事項 (i-1)「a)ポリオキシアルキレンアルキルエ―テル硫酸塩と、b)炭素数1〜6のアルコ―ルとを、a成分:b成分の重量比が1:50〜2:1となる割合で含むことを特徴とする塗布型帯電防止剤組成物。」(特許請求の範囲、請求項1) (i-2)「【産業上の利用分野】 本発明は、高分子材料の表面に塗布して帯電防止能を発現させる塗布型帯電防止剤組成物に関するものである。」(段落【0001】) (i-3)「実施例1 a成分としてポリオキシエチレンドデシルエ―テル硫酸ナトリウム〔前記の一般式(I)中、AO=オキシエチレン基、n=4、R=ドデシル基、M=ナトリウム〕を、b成分としてエタノ―ルを、それぞれ用い、a成分:b成分の重量比を1:2として、これらをa成分の水中濃度が2重量%となるように水に溶解させて、塗布型帯電防止剤水溶液を調製した。」(段落【0023】) (i-4)「<帯電防止能> 塗布型帯電防止剤水溶液を、市販のポリエチレンテレフタレ―トフイルム上にデイツピング塗布したのち、温度20℃,相対湿度50%の恒温恒湿環境下で、2時間風乾して、帯電防止処理フイルムを作製した。この処理フイルムにつき、表面固有抵抗測定計を用いて、フイルム表面の表面固有抵抗(Ω)を測定して、帯電防止能を評価した。」(段落【0041】) j.甲第10号証(特開平7-304889号公報)の記載事項 (j-1)「ポリエステルフイルムの少くとも片面に、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩及びトリフルオロ酢酸塩の少くとも1種を含む水性塗液を用いた制電塗膜が設けられている制電性ポリエステルフイルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (j-2)「本発明において、水性塗液はメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩及びトリフルオロ酢酸塩の少くとも1種を帯電防止剤として含む水性塗液である。」(段落【0012】抜粋) (j-3)「本発明における水性塗液は、水溶液、水分散液、乳化液等任意の形態で用いることができる。水性塗液の塗布は未延伸フイルム、一軸延伸フイルム、二軸延伸フイルム等に行うことができるが、縦方向に延伸した一軸延伸フイルムに行うのが好ましい。この縦一軸延伸フイルムは、水性塗液の塗布後乾燥、横方向の延伸に供され、さらに場合によっては再延伸や再横延伸に供される。かくして形成される塗膜の厚さは任意に選定できるが、0.02〜0.3μmが好ましい。」(段落【0018】) (j-4)「[実施例1] 固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレートの未延伸シートを縦方向に3.6倍延伸した後、テレフタル酸―イソフタル酸―5―Naスルホイソフタル酸―エチレングリコール―ネオペンチルグリコール―1,4―ブタンジオール―ビスフェノールAエチレンオキシド付加体の共重合ポリエステル(A―1)48wt%、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(B―1)32wt%、微細シリカ(平均粒径30nm)5wt%及びエチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合体15wt%からなる固形分組成の4wt%水性塗液をロールコーターで片面に塗布した。続いて乾燥しつつ、横方向に3.8倍延伸し、230℃で熱固定してフイルム(厚さ90μm)を得た。塗膜厚みは0.42μmであった。このフイルムの特性を表1に示す。」(段落【0024】) (j-5)段落【0027】【表1】には、「実施例1」ないし「実施例8」として、「バインダー(wt%)」が42〜48、「帯電防止剤(wt%)」が38〜32の「塗剤組成」が記載され、実施例の「膜厚(μm)」として、0.09〜0.66の範囲のものが記載されている。 k.甲第11号証(特開平7-40521号公報)の記載事項 (k-1)「【請求項1】 ポリエステルフイルムの少なくとも片面にスルホン酸塩基を有する帯電防止剤及びHLBが12.0以下の界面活性剤を含有する帯電防止剤を設けてなることを特徴とする帯電防止性ポリエステルフイルム。 【請求項2】 配向結晶化が完了する前のポリエステルフイルムの少なくとも片面にスルホン酸塩基を有する帯電防止剤及びHLBが12.0以下の界面活性剤を含有する帯電防止水性塗液を塗布し、次いで乾燥、延伸、熱固定処理を施してフイルムの配向結晶化を完了させることを特徴とする帯電防止性ポリエステルフイルムの製造方法。」(特許請求の範囲、請求項1、2) (k-2)「本発明においてポリエステルフイルムを構成するポリエステルとは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、例示でき、・・・ 本発明におけるポリエステルには、フイルム特性を向上する剤例えば滑剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、遮光剤、安定剤、紫外線吸収剤等を含有させることができる。・・・挙げることができる。」(段落【0015】、段落【0016】) l.甲第12号証(特開平5-1162号公報)の記載事項 (l-1)「塩化ビニル系樹脂100重量部当り、少なくとも0.5重量部の非イオン系界面活性剤を含有する塩化ビニル系樹脂フィルムの片面に、コロイド状疎水性シリカとバインダーを主成分とする組成物に由来する皮膜が形成されてなる防曇持続性に優れた農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (l-2)「本発明に使用するコロイド状疎水性シリカは、燃焼加水分解によって製造されるコロイド状親水性シリカのシラノール基(Si-OH)をアルキルクロロシランと反応させ、コロイド状親水性シリカのシラノール基の40%以上が反応し、疎水性となったものである。このコロイド状疎水性シリカとバインダーを主成分とする組成物に由来する被膜を形成した透明性合成樹脂フィルムは、被膜形成面が疎水性で、このフィルム表面に水蒸気が凝集した場合には水滴状に付着し、フィルムが曇りガラス状に曇ってしまうものと思われていたが、意外にも、水滴状に凝縮することなく、凝縮した水は流水膜となるものであった。・・・コロイド状疎水性シリカに加えてアルミナゾルを併用することもできるものである。・・・防曇性が悪くなる場合がある。」(段落【0010】〜段落【0011】) (l-3)「【作用】 本発明においては、 塩化ビニル系樹脂100重量部当り、少なくとも0.5重量部の非イオン系界面活性剤を含有する塩化ビニル系樹脂フィルムの片面に、コロイド状疎水性シリカとバインダーを主成分とする組成物に由来する皮膜が形成されているので防曇性に優れることはもとより、優れた防曇性能が長期にわたり維持されるものである。」(段落【0021】抜粋) m.甲第13号証(特開平7-53747号公報)の記載事項 (m-1)「熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、コロイド状アルミナおよびシリカの重量比(コロイド状アルミナ/コロイド状シリカ)が(90/10)〜(60/40)である混合コロイド溶液、およびアニオン性界面活性剤からなる溶液を塗布、乾燥してなる防曇性被膜を有することを特徴とする農業用フィルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (m-2)「本発明で用いるコロイド状アルミナおよびシリカは、農業用フィルムの防曇性付与のため圃場で使われるものであり、環境の安全性を考慮すれば水分散媒が好ましい。」(段落【0007】抜粋) (m-3)「本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-メチルメタクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂など、農業用フィルムとして用いられている熱可塑性樹脂全般が好ましく用いられる。」(段落【0018】) (m-4)「〔実施例1〕 フィルム1:厚み30μmの低密度ポリエチレンフィルム。 塗布液1:コロイド状アルミナ(固形分20重量%)とコロイド状シリカ(固形分20重量%)を重量比(アルミナ/シリカ)が、80/20になるよう混合したものを固形分で2重量部になるよう撹拌しながら水100重量部に加え、続いてアニオン性界面活性剤A、B(後述)をそれぞれ0.08重量%ずつ加えて塗布液1とした。フィルム1をA4の大きさに切りとり、塗布液1を霧吹きを使って噴霧し、室温で風乾した。このときの液の塗布性および塗布膜の防曇性について試験した結果を第1表に示す。」(段落【0030】) n.甲第14号証(特開平7-233270号公報)の記載事項 (n-1)「オレフィン系樹脂を主体として構成され且つ全体が透明である単層乃至多層フィルムの少なくともハウス内面となる面に、アクリル系単量体と重合性シラン系カップリング剤とコロイダルシリカとを乳化重合することによって得られ、且つ、全固形分当たり20乃至70重量%のコロイダルシリカを含むコーティング層を0.5乃至20μmの厚みで設けて成ることを特徴とする防曇性に優れた農業用フィルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (n-2)「コーティング層の厚みも、0.5乃至20μm,特に1乃至15μmの範囲にあるべきであり、上記範囲よりも薄いと、やはり親水性等の付与が十分でなく」(段落【0019】抜粋) (n-3)「コロイダルシリカとしては、水性媒体中にコロイダル状にシリカが分散したものが使用され、特にシリカの分散粒径が一般に3乃至500nm、好ましくは10乃至20nmのものが使用される。」(段落【0033】抜粋) o.甲第15号証(特開平7-298791号公報)の記載事項 (o-1)「合成樹脂フイルムの片面に、コロイド状シリカ粒子を含有する水性アクリル変性ウレタン樹脂塗膜層を設けたことを特徴とする農業用防滴性フイルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (o-2)「本発明の農業用防滴性フイルムにおいて、基材として用いられる合成樹脂フイルムについては特に制限はなく、従来農業用フイルムとして慣用されているもの 、例えばポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリ塩化ビニルフイルム、ポリオレフィン系フイルムなどの中から、任意のものを選択して用いることができる。」(段落【0006】) (o-3)「さらに、水性アクリル変性ウレタン樹脂とコロイド状シリカ粒子は、その合計含有量が組成物全量に対して、10〜40重量%になるように用いるのが望ましい。また、所望により用いられるポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤は、防滴性(防曇性)及びその持続性をさらに向上させる作用を有し、その量が組成物全量に対し、0.1重量%未満では防滴性やその持続性の向上効果が十分に発揮されないし、5重量%を超えると使用量の割には効果の向上は認められず、経済的に不利となる。」(段落【0024】) (o-4)「この塗膜を形成させるには、浸せき法、あるいはグラビアコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーターなどによるコーティング法などを用いて、該組成物を合成樹脂フイルムの片面に塗布したのち、50〜150℃程度の温度で熱風乾燥して、膜厚0.2〜5μm、好ましくは0.5〜2μm程度の塗膜を形成させればよい。(略)」(段落【0026】) p.甲第16号証(特開平7-82398号公報)の記載事項 (p-1)「【請求項5】コロイド状アルミナおよびシリカの固形分重量比(コロイド状アルミナ/コロイド状シリカ)が、(90/10)〜(60/40)の範囲である混合コロイド溶液を固形分で0.1 〜1重量部、アニオン性界面活性剤0.001 〜0.1重量部、有機系電解質0.0001〜0.01重量部、無機層状化合物0.01〜0.5重量部および分散媒100重量部からなる防曇剤を熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布、乾燥してなることを特徴とする農業用フィルム。」(特許請求の範囲、請求項5) (p-2)「本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-メチルメタクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂など、農業用フィルムとして用いられている熱可塑性樹脂全般が好ましく用いられる。」(段落【0028】) q.甲第17号証(特開平8-53559号公報)の記載事項 (q-1)「合成樹脂フィルム片面に、シリコン系界面活性剤を含有する水系防滴処理剤による防滴性被膜を形成してなることを特徴とする農業用合成樹脂フィルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (q-2)「本発明に使用される合成樹脂フィルムとしては、塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、フッ素樹脂フィルム、またはこれらの積層フィルム等の従来より農業用合成樹脂フィルムとして使用されているものであれば、特に限定はされない。」(段落【0007】) (q-3)「本発明に使用される水系防滴処理剤としては、アクリル系樹脂やセルロース系樹脂のエマルジョンや水溶液等の水系型塗料や、必要に応じてシランカップリング剤で処理したコロイダルシリカやコロイダルアルミナ等を含有するものなど、従来より農業用合成樹脂フィルム表面に塗膜を形成するために使用されていた水系防滴処理剤であれば特に限定はされない。 上記水系型塗料としては、樹脂を水やアルコールに乳化、分散または溶解させたもので、・・・ 上記のコロイダルシリカやコロイダルアルミナは、必要に応じて上記の水系型塗料等のバインダーが添加される。また、上記のコロイダルシリカやコロイダルアルミナは、平均粒径が1nm〜100nmの範囲のものが好ましい。平均粒径が100nmを超えると形成された塗膜が白く失透することがあり、また1nm未満では、コロイダルシリカやコロイダルアルミナとバインダーからなる組成物の安定性に欠けることがある。」(段落【0019】〜段落【0021】) (q-4)「上記の防滴処理剤の塗布方法としては、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、リバースロールコート、ディップコート等や、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知の方法を採用することができる。また、防滴処理剤による塗膜の厚みは0.01〜10μmが好ましい。」(段落【0025】抜粋) r.甲第18号証(特開平5-1216号公報)の記載事項 (r-1)「ポリエステル系エラストマーを5〜30重量%配合したポリエチレンテレフタレート系ポリマーに、0.1〜2重量%のアミド系滑剤を添加し成形してなる熱収縮性ポリエステル系フィルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (r-2)「このアミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、・・・ステアリルエルカアミドなどが例示される。なお、本発明のポリマ-組成物には上記成分のほかに、必要に応じて安定剤、着色剤、酸化防止剤、静電気防止剤、ブロッキング防止剤などを添加しても差し支えない。」(段落【0018】) s.甲第19号証(特開平7-157639号公報)の記載事項 (s-1)「板状粒子の厚みが0.25μm以下であり、かつ平均粒径が0.05〜3μmである板状酸化アルミニウム微粒子を滑剤として含有することを特徴とするポリエステルフィルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (s-2)「本発明におけるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。」(段落【0009】) t.甲第20号証(特開平7-166034号公報)の記載事項 (t-1)「【請求項1】 平均粒径が0.05〜0.5μmである酸化クロム微粒子を滑剤として含むことを特徴とするポリエステルフィルム。 【請求項2】 上記酸化クロム微粒子をポリエステルに対して0.05〜1重量%含有する請求項1に記載のポリエステルフィルム。」(特許請求の範囲、請求項1、2) (t-2)「本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。」(段落【0008】) u.甲第21号証(特開平7-166035号公報)の記載事項 (u-1)「【請求項1】 比表面積が50〜150m2/gでありかつ平均粒径が0.05〜0.4μmの酸化アルミニウム微粒子および平均粒径が0.5μm以下の酸化クロム微粒子とを滑剤として含有することを特徴とするポリエステルフィルム。 【請求項2】 酸化アルミニウム微粒子の含有量と酸化クロム微粒子の含有量との合計量がポリエステルに対して0.05〜1.0重量%である請求項1に記載のポリエステルフィルム。」(特許請求の範囲、請求項1、2) (u-2)「本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。」(段落【0008】抜粋) v.甲第22号証(特開平7-196897号公報)の記載事項 (v-1)「【請求項1】 平均アスペクト比が2〜20でありかつ平均粒径が0.05〜3μmである板状酸化アルミニウム微粒子を滑剤として含有することを特徴とするポリエステルフィルム。 【請求項2】 板状酸化アルミニウム微粒子の厚みが0.25μm以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。 【請求項3】 板状酸化アルミニウム微粒子をポリエステルに対して0.05〜2.0重量%含有する請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。」(特許請求の範囲、請求項1〜3) (v-1)「本発明におけるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。」(段落【0009】) w.甲第23号証(特開平8-12793号公報)の記載事項 (w-1)「比表面積が50〜150m2/gでかつ平均粒径が0.05〜0.3μmの、金属成分がAlおよびSiで構成される非晶質の複合酸化物微粒子を、ポリエステルに対して、0.05〜1.0重量%含有していることを特徴とするポリエステルフィルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (w-2)「本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、芳香族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。」(段落【0009】) (2)第2異議申立てについて イ.甲第1号証(特開平6-166763号公報)の記載事項 (イ-1)「ポリ乳酸または乳酸-ヒドロキシカルボン酸コポリマーの未延伸フィルムを、ポリマーのガラス転移点(Tg)〜Tg+50℃の温度範囲で延伸してなることを特徴とするひねり包装用フィルム。」(特許請求の範囲、請求項1) (イ-2)「本発明のひねり包装用フィルムは、主成分であるポリ乳酸系樹脂以外に、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤、帯電防止剤、増核剤、着色防止剤等の添加剤、及び他のポリマー改質剤を添加してもよく、該添加剤の使用は、ひねり包装用フィルムの特性を損なわない範囲で使用すれば、特に制限されない。」(段落【0023】) (イ-3)「なお、必要に応じてコロナ放電処理、界面活性剤の塗布等の表面処理により、印刷性の改良、耐帯電防止性等の二次特性を改良することができる。」(段落【0024】) ロ.甲第2号証(特開平8-34913号公報)の記載事項 該甲第2号証の記載事項は、上記4-2.(1)「第1異議申立てについて」の「a.甲第1号証(特開平8-34913号公報)の記載事項」に記載したとおりである。 ハ.甲第3号証(特開平3-203936号公報)の記載事項 (ハ-1)「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、 (A)炭素数10〜20のアルキル基を有するアニオン系帯電防止剤 (B)炭素数1〜3の低級アルコール (C)水 からなり、低級アルコールを10重量%以上含む塗布液を塗布したことを特徴とする帯電防止ポリエステルフィルム。」(特許請求の範囲、第1項) (ハ-2)「実施例1 (1)ポリエチレンテレフタレートの製造・・・ (2)アニオン系帯電防止塗布液の製造 ドデシルスルホネート200部に水、6300部を加えて希釈し、さらに、イソプロパノール3500部を加えて固形分濃度2%の塗布液を得た。 (3)インラインコートフィルムの製造 (1)で製造した、ポリエチレンテレフタレートを・・・溶融押出し、・・・未延伸フィルムを得、この未延伸フィルムを・・・延伸し、前記の塗布液をコアナイフ方式で塗布し、・・・乾燥し、次いで・・・延伸し、さらに・・・熱固定し、厚さ12ミクロンコート量0.01g/m2の二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを得た。・・・得られたフィルムは、・・・帯電防止も優れている。」(第3頁左下欄13行〜第4頁左上欄16行) ニ.甲第4号証(特開平5-298653号公報)の記載事項 「非磁性支持体上に少なくとも非磁性粉末と結合剤を含む下層非磁性層とその上に少なくとも強磁性粉末と結合剤を含む上層磁性層を設けた少なくとも二層以上の複数の層を有する磁気記録媒体において、前記上層磁性層厚みの平均値dが0.01μmより大きく0.3μm未満であり、かつ前記上層磁性層厚味の標準偏差σと前記上層磁性層の厚味の平均値dが0.05≦σ/d≦0.5の関係にあることを特徴とする磁気記録媒体。」(特許請求の範囲、請求項1) ホ.参考資料1(鐵健司著「品質管理のための統計的方法入門」(1990年3月2日、株式会社日科技連出版社発行)第129頁)の記載事項 参考資料1には、概略、品質管理のための管理図について記載されていると認められる。 5.取消理由の概要 平成17年5月24日付けで当審が通知した取消理由は、概略、本件特許明細書の特許請求の範囲の記載が不備であるので、本件請求項1ないし11に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるというものであり、詳しくは、以下のとおりである。 「1.請求項1、請求項3及び請求項8について 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1、請求項3及び請求項8に係る発明についての記載は、次のとおりである。(略) 一方、本件特許明細書、段落【0057】〜段落【0066】には、「実施例2-1」〜「実施例2-8」として、防曇性被膜が形成された二軸延伸脂肪族ポリエステルフィルムの実施例が記載され、また、段落【0067】には、「比較例2-1〜2-4 ・・・防曇剤組成物の単位面積当たりの固形分の重量が第3表(表4)に記載した重量となるようにした以外、実施例2-1と同様にして二軸延伸フィルムを得、それを実施例2-1と同様にして評価した。・・・」と記載されている。 そして、段落【0069】の「第3表」には、「比較例2-3」の「被膜重量が0.01g/m2」であるものについて、「フィルム面に均一な被膜を形成できなかった」と付記されている。また、「比較例2-4」の「被膜重量が7.0g/m2」であるものについて、「第3表」の記載からみて、「防曇性被膜の密着性」及び「防曇性効果の持続性」が劣る例であると解される。 ところで、上記請求項1に係る発明についての記載には、「防曇剤組成物の単位面積当たりの固形分の重量」(ないし「被膜重量」)について特に規定していないことから、上記請求項1に係る発明についての記載の「脂肪族ポリエステル塗工フィルム」が「防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜を有する」ものである場合、上記請求項1に係る発明は、所定の作用・効果を奏しない上記「比較例2-3」及び「比較例2-4」の態様をも包含することとなる。 よって、上記請求項1に係る発明は、実質上、明確ではない。(略) 2.請求項9、請求項10及び請求項11について 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項9に係る発明についての記載は、次のとおりである。(略) 上記請求項9に係る発明についての、防曇層は、「単位面積当たりの固形分の重量」が0.01〜5g/m2のものであり、被膜重量0.01g/m2のものに相当するものを包含する。一方、上記「第3表」には、本件発明の比較例として「比較例2-3」に、「被膜重量が0.01g/m2」のものが挙げられている。 とすると、上記請求項9に係る発明についての記載の「単位面積当たりの固形分の重量」に係る数値限定は、所定の作用・効果を奏しない態様をも包含していることとなる。 よって、上記請求項9に係る発明は、実質上、明確ではない。(略) 3.請求項2について 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2に係る発明についての記載は、次のとおりである。(略) 請求項2に係る発明についての発明を特定するために必要な事項は、請求項1に係る発明の帯電防止剤または防曇剤を含有する被膜について、被膜の厚み及び被膜の厚みの変動係数を特定範囲に限定したものであるが、「実施例2-1」〜「実施例2-8」として挙げられている、防曇性被膜が形成されたフィルムの実施例には、上記「第3表」によれば、「被膜重量(g/m2)」、「CV(%)」、即ち「被膜厚みの変動係数」について記載されているが、「被膜の厚み」、被膜の厚みを測定した結果から得られる「平均値(X)」(及び「標準偏差(σ)」)についての実データが示されておらず、本件発明の防曇性被膜が形成されたフイルムの実施例であるとする上記「実施例2-1」〜「実施例2-8」の実施例は、請求項2に係る発明の発明特定事項である特定範囲の被膜の厚みを満足するものであるか確認できない。 したがって、請求項1に係る発明が「防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜を有する脂肪族ポリエステル塗工フィルム」である、該請求項1を引用する上記請求項2に係る発明は、実質的に願書に添付した明細書又は図面に記載された発明であるとはいえないとともに、その「被膜の厚み」に係る発明特定事項において実質上、明確ではない。 4.請求項4、請求項5、請求項6及び請求項7について 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項4に係る発明についての記載は、次のとおりである。(略) 上記「非帯電性脂肪族ポリエステルフィルム」との記載において、「非帯電性」とは、文理上、「帯電性ではない性質」を意味すると解されるところ、本件発明では脂肪族ポリエステルフィルム自体がプラスチックフィルムであるため静電気による帯電を受けやすいことを解消するため帯電防止剤を含む水性塗工液からなる帯電防止層を塗工したものであり、帯電防止層を脂肪族ポリエステルフィルムに形成したからといって、上記「脂肪族ポリエステル塗工フィルム」が良導電体であると認めることはできないから、帯電防止性を有するとはいえるものの、前記「非帯電性」を有するとは到底解することはできない。 してみると、脂肪族ポリエステル塗工フィルムが「非帯電性脂肪族ポリエステルフィルム」である発明は、実質的に願書に添付した明細書又は図面に記載された発明ではないとともに、前記「非帯電性」との記載の点において、明確ではない。(略)」 6.当審の判断 6-1.取消理由についての判断 (1)訂正前の請求項1、請求項3及び請求項8、並びに、請求項9ないし11に係る取消理由について 上記2.に記載したとおり、上記訂正が認められるので、本件発明1は、「帯電防止層の被膜の厚みが、0.05〜1μmであり、又は、防曇層の被膜の厚みが、固形分の重量で0.05〜1g/m2である」ことを発明特定事項として具備するものである。そして、前記発明特定事項について検討してみるに、訂正明細書に記載の実施例及び比較例の記載内容と整合しない点はない。また、本件発明2ないし6は、訂正後の請求項1を引用するものである。 したがって、当該取消理由は解消している。 (2)訂正前の請求項2及び請求項4ないし7に係る取消理由について 上記訂正により、訂正前の請求項2及び請求項4ないし7は削除された。そして、訂正後の請求項1ないし6には、「被膜の厚みの変動係数」及び「非帯電性脂肪族ポリエステルフィルム」については記載がない。 したがって、当該取消理由は解消している。 6-2.第1異議申立て理由についての判断 (1)特許法第36条第4項又は第6項について (1-1)[理由2]特許法第36条第6項第1号違反について 第1申立人は、「しかし、実施例1-1〜1-8及び実施例2-1〜2-7の全実施例を通じて、アンチブロッキング剤が添加されているのは、実施例1-4のたった1点(0.5部重量部)のみである。したがって、少なくともアンチブロッキング剤を添加する場合については、添加量0.1〜2重量部の範囲全体にわたる十分な数の具体例が示されているとは到底認められない。」との理由を述べ、「このような点で、本発明1〜11は、発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められず、特許法第36条第6項第1号に違反するものである。」と主張する。 しかしながら、当該プラスチック材料に関する技術分野において添加剤として「滑剤」及び「アンチブロッキング剤」という概念は周知のものであり、しかも、訂正明細書、段落【0020】、【0021】には、「滑剤としては、例えば、流動パラフィン、・・・等の脂肪族炭化水素系滑剤、ステアリン酸、・・・等の脂肪酸系滑剤、・・・が好ましい。アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、チタニア、マイカ、タルク等が挙げられる。(略)滑剤、アンチブロッキング剤、またはそれらの混合物の使用量は、脂肪族ポリエステル100重量部に対し、0.1〜2重量部が好ましい。(略)」と記載され、「滑剤」及び「アンチブロッキング剤」の具体的な材料名を列記しつつ、滑剤とアンチブロッキング剤及びそれらの混合物のいずれでも添加剤として同等のものとして記載され、かつその使用量は「0.1〜2重量部」であると記載され、特許請求の範囲に記載の添加量の範囲と同じ添加量の範囲で使用することも明記されている。さらに、添加量を数値範囲内で変更した滑剤に関する複数の実施例、アンチブロッキング剤を用いた一つの実施例が記載されており、アンチブロッキング剤の実施例が1例しかないからといって、そのことのみをもって、本件発明1ないし6が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。 よって、本件発明1ないし6に係る特許が、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるとはいえない。 (1-2)[理由3]特許法第36条第6項第2号違反について 第1申立人は、「本件特許明細書を読んでも、滑剤及びアンチブロッキング剤については、段落【0020】【0021】において、滑剤及びアンチブロッキング剤の具体例が列挙されているだけで、明確な定義がない。そのため、どのような物質が、滑剤及びアンチブロッキング剤に含まれて、どのような物質が含まれないのか、滑剤及びアンチブロッキング剤の外延が不明確であり、その結果、本発明1-11の外延が不明確なものとなっている。」との理由を述べ、本件発明は明確でない旨主張する。 しかしながら、「滑剤」及び「アンチブロッキング剤」という概念は、何れも、当該技術分野においてプラスチック材料の添加剤として当業者に周知のものであり、また、それぞれ、使用する具体的な材料名も列記されているから、「滑剤」及び「アンチブロッキング剤」の定義が明記されていないからといって、「滑剤」及び「アンチブロッキング剤」の範囲が当業者に不明であるとはいえない。 したがって、訂正明細書の特許請求の範囲の記載が明確でないとはいえないから、本件発明1ないし6に係る特許が、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであるとはいえない。 (1-3)[理由4]特許法第36条第4項違反について 第1申立人は、「本発明2では、被膜の厚みを0.01〜5μmと示し、実施例1-1〜1-8においても、塗膜の厚みを□μmと特定しているが、この厚みが固形重量から換算して求めた値であるのか、それとも透過型電子顕微鏡を用いて平均値から求めた値であるのか不明である。」との理由を述べ、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張している。 これに対して、訂正明細書、段落【0041】には「(8)被膜厚みの変動係数の測定」として、「幅方向の量端部を除去した、表面に被覆を有する幅1100mmのフィルムを試料とする。試料の幅方向に100mm間隔で10ヶ所の測定点を定める。同様の操作をフィルムの長さ方向に10mm間隔で3回繰り返し、合計30点の測定点を定める。各測定点を小片として切出し、その切断断面を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、形式:JEM-2010)を用いて10,000倍に拡大して観察して被膜の厚みを測定する。得られたデータから、平均値(X)と標準偏差(σ)を求め、次の式から被膜の厚みの変動係数(CV)を求める。CV(%)=(σ/X)×100」と記載されており、「実施例1-1」ないし「実施例1-8」に記載の「被膜の厚さ」は、「透過型電子顕微鏡」を用いて測定したものであることが明記されている。 したがって、上記「被膜の厚み」の測定に関し、訂正明細書の発明の詳細な説明が、本件発明1ないし6を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえないから、本件発明1ないし6に係る特許が、特許法第36条第4項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 (2)[理由1]特許法第29条第2項違反について (2-1)証拠の採採否について 第1申立人が提出した甲第1号証ないし甲第25号証のうち、甲第24号証(特開平8-225663号公報(公開日:平成8年9月3日))及び甲第25号証(特開平9-95605号公報(公開日:平成9年4月8日))は、何れも、本件出願の優先権主張日の後に公開・頒布されたものであるから、特許法第29条第2項違反に係る当該[理由1]の是非を検討する必要がある証拠として、前記甲第24号証及び甲第25号証を採用することはできない。 (2-2)本件発明1について (i)甲第1号証記載事項の整理及び本件発明1との対比 (i)-1.甲第1号証には、上記摘示記載(a-1)のとおり、L-乳酸比率が75%以上であるL-乳酸ポリマー80〜95重量%と「可塑剤」5〜20重量%の混合物100重量部に、SiO2を90%以上含有し、平均粒径7〜50nmの耐ブロッキング剤0.1〜5重量部及び滑剤0.1〜2重量部配合したことを特徴とするL-乳酸ポリマー組成物が記載されている。 そして、本件特許の明細書、すなわち、訂正明細書段落【0011】ないし段落【0015】等の使用する脂肪族ポリエステルに関する記載からみて明らかなとおり、甲第1号証に記載の上記「L-乳酸ポリマー」は、本件発明1に係る「脂肪族ポリエステル」に該当する。 また、訂正明細書段落【0020】、【0021】に、「滑剤としては、例えば、流動パラフィン、・・・等の脂肪族炭化水素系滑剤、・・・ステアリン酸アマイド、・・・等の脂肪酸アマイド系滑剤、・・・が好ましい。アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、チタニア、マイカ、タルク等が挙げられる。」と記載され、摘示記載(a-1)、(a-2)に例示された化合物とも一致し、甲第1号証に記載の上記「滑剤」、「耐ブロッキング剤」は、本件発明1に係る「滑剤」、「アンチブロッキング剤」に該当する。 次に、甲第1号証における組成割合の表記法の「重量%」は、本件発明における「重量部」と同義であり、しかも、L-乳酸ポリマーに可塑剤を加えて全体を100としていることから、上記「L-乳酸ポリマー」が100重量部に換算した「滑剤」、「耐ブロッキング剤」、それぞれの使用量は、「耐ブロッキング剤」は、約0.13〜5.3重量部の範囲、「滑剤」は、約0.13〜2.1重量部の範囲にあるから、甲第1号証には、上記「L-乳酸ポリマー」100重量部に対し、上記「滑剤」及び「耐ブロッキング剤」を計約0.26〜7.4重量部の範囲で配合した組成物が記載されていると認めることができる。そして、本件特許の訂正明細書段落【0022】に、「本発明の脂肪族ポリエステルフィルムには、本発明の目的を損なわない範囲において、可塑剤、・・・等の他の添加剤を含有させてもよい。」と記載されているから、甲第1号証に記載の「L-乳酸ポリマー組成物」が「可塑剤」を含む場合であっても、そのことは、本件発明1との実質上の相違点となるものではない。 また、甲第1号証には、上記摘示記載(a-3)ないし(a-6)によれば、上記「L-乳酸ポリマー組成物」から、フィルムを得ること、また、L-乳酸のホモポリマーである「L-乳酸ポリマーB」100重量部に対して、「耐ブロッキング剤」0.5重量部及び「滑剤」0.5重量部、即ち、計1重量部を配合した組成物からフィルムを得たこと(比較例5)が記載されている。 以上のことから、甲第1号証には、「脂肪族ポリエステル100重量部に対し、滑剤、約0.13〜2.1重量部、アンチブロッキング剤、約0.13〜5.3重量部を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルム」の発明が記載されているものと認められる。 (i)-2.ここで、本件発明1(前者)と甲第1号証に記載の発明(後者)とを対比する。 前者と後者とは、「脂肪族ポリエステル100重量部に対し、滑剤及びアンチブロッキング剤からなる添加剤0.26〜2重量部を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルム」の点において一致している。そして、 後者では、塗工処理して塗工フィルムとすることについて記載がなく、ましてや、帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜の厚み又は被膜に施す固形分の重量について何ら記載するところもないから、前者は後者と比較して、以下の点で相違している。 フィルムが、 相違点(α-1):「脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜を有するものである点、及び、 前記した帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜について、 相違点(α-2):「帯電防止層の被膜の厚みが、0.05〜1μm」であり、「防曇層の被膜の厚みが、固形分の重量で0.05〜1g/m2」である点。 (ii)上記相違点についての検討 以下、上記相違点について被覆層として並列的に記載されている帯電防止層又は防曇層、それぞれに分けて検討する。 (ii)-1.相違点(α-1)及び(α-2)の帯電防止層について 甲第2号証ないし第11号証には、摘示記載(b-1)ないし(k-2)のとおり、プラスチックが静電気を帯電しやすく、帯電を防止するため、プラスチックシート又はフィルムの少なくとも片面に帯電防止剤を含む水性塗布液をコーティングする表面処理を行なうことが記載されているとともに、表面処理するプラスチックシート・フィルムとして、甲第2号証では各種熱可塑性樹脂フィルム、甲第3ないし第11号証では、特に、ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを例示とする芳香族系ポリエステルフィルムが開示されている。 また、甲第6号証には、特に、上記摘示記載(f-3)のとおり、帯電防止剤含有被膜の厚みが「0.01〜0.5μm」であり、具体的には、上記摘示記載(f-4)のとおり、0.05μmのもの、また、甲第10号証には、上記摘示記載(j-3)のとおり、水性塗液から形成される塗膜の厚さが「0.02〜0.3μm」であり、具体的には、上記摘示記載(j-4)、(j-5)のとおり、「0.42μm」、「0.09〜0.66μm」のものが記載されている。 上記相違点(α-2)に係る「帯電防止層の被膜の厚みが、0.05〜1μm」であるという点は、甲第6号証及び甲第10号証に記載のものと重複していると認められるが、甲第2号証ないし甲第11号証に記載の塗工フィルムは、芳香族系ポリエステルフィルムであり、本件発明の乳酸系ポリマー等の脂肪族ポリエステルからなるフィルムについて記載されておらず、示唆もない。ましてや、帯電防止層の厚みに着目し、厚みを特定範囲とすることについて記載も示唆もない。 甲第12号証ないし甲第23号証には、摘示記載(l-1)ないし(w-2)のとおり、上記相違点(α-1)及び(α-2)の帯電防止層に関連する技術的事項は、何ら記載されていない。 したがって、帯電防止層についての上記相違点(α-1)及び(α-2)の点は、甲第2ないし第11号証、甲第12ないし第23号証に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。 そして、本件発明1は、訂正明細書、段落【0041】ないし段落【0056】の実施例及び比較例の記載、特に【表1】及び【表2】から明らかなように、「滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を特定量」含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムであること、かつ、そのような特定のフィルムの少なくとも片面に、帯電防止剤を含有する水性塗工液を塗布して帯電防止層の被膜の厚みを特定範囲とすることにより表面抵抗値が低く、十分な帯電防止性を示し、特に、帯電防止効果の持続性に優れた脂肪族ポリエステルフィルムが得られるとの作用・効果を奏するものであり、単に、脂肪族ポリエステルフィルムを開示するだけの甲第1号証と、脂肪族ポリエステルについて何も開示がなく、ポリエステルフィルムに帯電防止層を塗工してなる帯電防止層塗工ポリエステルフィルムを記載若しくは示唆するだけの甲第2号証ないし甲第11号証と組み合わせてみても、本件発明1の脂肪族ポリエステルフィルムに係る上記作用・効果を奏するものと直ちにいうこともできなければ、当業者が容易に想到することができるということもできない。 よって、上記相違点(α-1)及び(α-2)に係る特定の厚みの帯電防止層を形成してなる脂肪族ポリエステルフィルムに関する本件発明1は、甲第1号証ないし甲第11号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 (ii)-2.上記相違点(α-1)及び(α-2)の防曇層について 甲第12号証ないし甲第17号証には、摘示記載(l-1)ないし(w-2)によれば、農業用フィルムに関するものであって、樹脂フィルムの少なくとも片面に、防曇剤(コロイド状シリカ等)水性液のコーティングを施すことが記載され、そして、樹脂フィルムとして、具体的には、甲第13号証では、PVCフィルム、甲第14号証では、ポリオレフィン系フィルム、甲第12、第15ないし第17号証では、合成樹脂のフィルムの例示の1つとしてポリエチレンテレフタレートが挙げられているが、甲第12号証ないし甲第17号証には、乳酸系ポリマー等の脂肪族ポリエステルからなるフィルムについて記載されておらず、示唆もない。 また、形成されたコーティング層について、甲第14号証には「0.5乃至20μm」(上記摘示記載(n-1)及び(n-2))、甲第15号証には「0.2〜5μm」(上記摘示記載(o-3))、また、甲第17号証には「0.01〜10μm」(上記摘示記載(q-4))と防曇層の厚みについて記載されているが、その防曇層の被膜の厚みが、固形分の重量で0.05〜1g/m2の条件を満足するものかについては、記載されておらず、示唆もない。ましてや、防曇剤の固形分の重量に着目して、防曇層として防曇剤の固形分の重量を特定の範囲とすることについて記載も示唆もない。 また、甲第2号証ないし甲第11号証、及び甲第18号証ないし甲第23号証には、上記相違点(α-1)及び(α-2)の防曇層に関連する技術的事項は、何ら記載されていない。 したがって、防曇層についての上記相違点(α-1)及び(α-2)の点は、甲第2ないし第11号証、甲第12ないし第23号証に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。 そして、本件発明1は、訂正明細書、段落【0057】ないし段落【0069】の実施例及び比較例の記載、特に【表4】から明らかなように、本件発明1は、「滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を特定量含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムであること、かつ、そのような特定のフィルムの少なくとも片面に、防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成され被膜の厚みを特定範囲とすることにより、均一な厚みの防曇性被膜が形成でき、防曇性被膜とフィルムとの良好な接着性・密着性を示し、特に、防曇性効果の持続性に優れた脂肪族ポリエステルフィルムが得られるとの作用・効果を奏するものであり、単に、脂肪族ポリエステルフィルムを記載するのみの甲第1号証と、脂肪族ポリエステルについて何も記載がなく、農業用フィルムとして従来から知られている樹脂フィルムに防曇層を塗工してなる防曇層塗工合成樹脂フィルムを記載又は示唆するだけの甲第12号証ないし甲第17号証とを組み合わせてみても、本件発明1の脂肪族ポリエステルフィルムに係る上記作用・効果を奏するものと直ちにいうこともできなければ、当業者が容易に想到することができるということもできない。 よって、上記相違点(α-1)及び(α-2)の固形分の重量が特定の範囲の防曇層を形成してなる脂肪族ポリエステルフィルムに関する本件発明1が、甲第1号証及び甲第12号証ないし甲第17号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 (ii)-3.まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1が、甲第1号証ないし甲第25号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明1に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 (2-3)本件発明2ないし6について 本件発明2ないし6は、実質上、何れも請求項1を引用するものである。 そして、本件発明1については、上記6.(2)(2-2)に記載のとおりであるから、本件発明2ないし6についても、本件発明1について記載した理由と同じ理由により、甲第1号証ないし甲第25号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明2ないし6に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 6-3.第2特許異議申立て理由についての判断 (1)[理由6]特許法第36条第6項第2号違反について 第2申立人は、本件特許明細書の請求項4ないし7における「非帯電性脂肪族ポリエステルフィルム」の定義がなく、明確でなく、記載が不備であると主張する。 この点については、上記「5.(取消理由の概要)」の「4.請求項4、請求項5、請求項6及び請求項7について」に指摘した理由と同趣旨であるから、上記「6-1.(取消理由についての判断)」の(2)に記載したとおり、上記訂正により、訂正前の請求項4ないし7が削除され、訂正後の請求項1ないし6には、「非帯電性脂肪族ポリエステルフィルム」との記載がないことから、当該[理由6]は解消している。 したがって、本件発明1ないし6に係る特許が、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであるとはいえない。 (2)[理由5]特許法第29条第2項違反について 該[理由5]は、本件特許明細書の請求項1ないし7に係る特許を対象とするものであるが、上記「2.訂正の適否についての判断」に記載したとおり、訂正が認められる結果、訂正前の請求項2及び請求項4ないし7は削除され、異議申立ての根拠が失われ、また、訂正前の請求項1、3については、訂正後の本件発明1、2に対応するものであるから、[理由5]については、訂正後の本件発明1及び2を対象として検討する。 (2-1)本件発明1について (i)甲第1号証の記載事項の整理及び本件発明1との対比 (i)-1.甲第1号証には、上記摘示記載(イ-1)のとおり、「ポリ乳酸または乳酸-ヒドロキシカルボン酸コポリマーの未延伸フィルムを延伸して得られたひねり包装用フィルム」の発明が記載されているものと認められる。そして、本件特許明細書の段落【0011】、段落【0036】の記載から、甲第1号証の「ポリ乳酸または乳酸-ヒドロキシカルボン酸コポリマー」、「ひねり包装用フィルム」は、それぞれ、本件発明1の「脂肪族ポリエステル」、「脂肪族ポリエステルフィルム」に相当する。 (i)-2.本件発明1と甲第1号証に係る発明との対比 ここで、本件発明1(前者)と甲第1号証に記載の発明(後者)とを対比すると、 後者の上記摘示記載(イ-2)によれば、添加剤として「ブロッキング防止剤、滑剤」を添加できること、上記摘示記載(イ-3)によれば、「なお、必要に応じて・・・界面活性剤の塗布等の表面処理により、・・・耐帯電防止性等の二次特性を改良することができる。」と記載され、帯電防止性を付与するため塗布等の表面処理を行うことができる記載があるから、前者の脂肪族ポリエステルが「滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を含む」こと、及び、脂肪族ポリエステルフィルムが「帯電防止剤を塗布して形成された被膜を有する」ことが、実質的に記載されているものと認められる。 とすると、前者と後者とは、「脂肪族ポリエステルに対し、滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムに、帯電防止剤を塗布して形成された被膜を有する脂肪族ポリエステル塗工フィルム」で一致するものと認められる。 そして、後者では、帯電防止剤を塗布する記載があるのみで、ブロッキング防止剤、滑剤を特定量添加した脂肪族ポリエステルフィルムについて記載するところがなく、また、塗工処理として帯電防止剤又は防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して被膜を形成するのことについて記載がないから、前者は後者と比較して、以下の点で相違している。 脂肪族ポリエステルフィルムが、特定量の滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤0.1〜2重量部を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなるものであって、 相違点(α-1):「脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜を有する」ものである点、及び、 前記した帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜について、 相違点(α-2):「帯電防止層の被膜の厚みが、0.05〜1μm」であり、又は「防曇層の被膜の厚みが、固形分の重量で0.05〜1g/m2」である点。 (i)-3.上記相違点について 甲第2号証は、第1特許異議申立てに係る甲第1号証と同じ証拠であるから、上記6-2.(2-2)(i)に記載のとおり、本件発明1と対比すると、前記相違点α-1及びα-2、の点で相違している。 また、甲第3号証には、上記摘示記載(ハ-1)及び(ハ-2)のとおり、ポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも片面に、帯電防止剤を含む水性塗布液を塗布することが記載され、相違点(α-1)について記載されていると認められるが、前提となる特定量の「滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤」を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムについて何ら記載するところもなく、また、得られた帯電防止コーティング層は「厚さ12ミクロン」と記載され、相違点(α-2)の被膜の厚みより遥かに厚いものであるから、上記相違点(α-2)に係る「帯電防止層の被膜の厚み」についても記載されていない。 よって、少なくとも上記相違点(α-2)は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件発明1は、特定量の「滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤」を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、帯電防止剤を含有する水性塗工液を塗布して形成され被膜を有する脂肪族ポリエステル塗工フィルムであって、その帯電防止層の被膜の厚みを特定範囲とすることにより、表面抵抗値が低く、十分な帯電防止性を示し、特に、帯電防止効果の持続性に優れた脂肪族ポリエステルフィルムが得られるとの作用・効果を奏するものである。 したがって、脂肪族ポリエステルフィルムに帯電防止層を形成することもあることを示唆するのみで、添加剤の種類及び量が特定された脂肪族ポリエステルフィルムに帯電防止剤を含有する水性塗工液を塗布して特定の膜厚からなる帯電防止層を形成することについて記載のない甲第1号証と、脂肪族ポリエステルフィルムとして添加剤の種類及び量が特定されたものを開示するのみの甲第2号証、及び脂肪族ポリエステルフィルムについて開示がなく、帯電防止層の被膜の厚みについても上記のとおりである甲第3号証と組み合わせて本件発明1とすることを、当業者が容易に想到し得ることとする根拠もなければ、甲第1号証に係る発明に甲第2、第3号証に記載の技術的事項を組み合わせてみても、本件発明1とすることともならず、更に、本件発明1に係る上記作用・効果が、当業者に示唆されるとする根拠もない。 また、防曇層については、甲第1号証ないし甲第3号証には何ら記載されていない。 よって、上記相違点防曇層に係る発明特定事項に関し、本件発明1が、甲第1号証ないし甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 (i)-4.まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1が、甲第1号証ないし甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明1に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 (2-2)本件発明2について 甲第4号証には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートを例示したポリエステル類を非磁性支持体とし、磁性層の厚みとその厚みの標準偏差を特定した磁気記録媒体が記載されているのみで、添加剤の種類及び量が特定された脂肪族ポリエステルフィルムに帯電防止剤又は防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して特定の膜厚からなる帯電防止層又は防曇層を形成すること及びその被膜の厚みの変動係数を規定することについて何ら記載のないものである。また、参考資料1として、「品質管理のための統計的方法入門」の中の「管理図における管理線を決める3シグマ法」についての記載を提示するもので、一般的な工程管理について記載するに止まり、特定の被膜の厚みの変動係数を規定することについて記載するものではない。 そして、本件発明2は、本件発明1を引用するものであって、さらに、被膜の厚みの変動係数を特定したものであり、本件発明1については、前記6-3.(2-1)に記載のとおりであるから、本件発明1について記載した理由と同じ理由により、本件発明2は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明2に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 7.むすび 以上のとおりであるから、第1異議申立ての理由及び証拠、並びに、第2異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1ないし6に係る発明の特許を取り消すことができない。 また、他に本件の請求項1ないし6に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 脂肪族ポリエステル塗工フィルム (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】脂肪族ポリエステル100重量部に対し、滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤0.1〜2重量部を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成された被膜を有する脂肪族ポリエステル塗工フィルムであって、帯電防止層の被膜の厚みが、0.05〜1μmであり、又は、防曇層の被膜の厚みが、固形分の重量で0.05〜1g/m2である脂肪族ポリエステル塗工フィルム。 【請求項2】脂肪族ポリエステルが乳酸系ポリマーである請求項1記載の脂肪族ポリエステルフィルム。 【請求項3】被膜が防曇層であり、脂肪族ポリエステル塗工フィルムが防曇性農業用脂肪族ポリエステルフィルムである請求項2記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。 【請求項4】防曇層が、無機質コロイドゾル及びバインダーを主成分とする親水性塗工液を塗布して形成されたものである請求項3記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。 【請求項5】無機質コロイドゾルがシリカゾル及びアルミナゾルからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である請求項4記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。 【請求項6】脂肪族ポリエステルフィルムが、縦方向に1.3〜5倍、横方向に1.3〜5倍延伸された2軸延伸フィルムである請求項4記載の脂肪族ポリエステル塗工フィルム。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、水性塗工液を塗布して形成される被膜を有する脂肪族ポリエステル塗工フィルムに関する。詳しくは、自然環境下で分解性を有し、耐ブロッキング性が良好で、且つ被膜の厚み変動率が小さいことによる被膜の効果の持続性に優れた脂肪族ポリエステル塗工フィルムに関する。さらに詳しくは、被膜が帯電防止層又は防曇層であり、その効果が速効的に発揮されるとともに持続性の優れた非帯電性脂肪族ポリエステルフィルム又は防曇性脂肪族ポリエステルフィルムに関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、プラスチックの廃棄物問題がクローズアップされている。従来の汎用樹脂から製造された包装材料や農業用フィルムのようなプラスチック類は、使用者が使い終わった後、廃棄され、焼却処理されるか、または埋め立て等により処分されている。しかし、このようなプラスチック廃棄物は焼却処理した場合、燃焼熱が高く、焼却炉の耐久性の問題や、ポリ塩化ビニルのようなものでは有害なガスを発生し、公害問題を引き起こしている。さらに、埋め立てた場合には、プラスチック成形物がそのまま分解せずに、原形のままゴミとして半永久的に残り、自然環境への影響が問題となっている。 【0003】 このような状況の中、自然環境下で、自然的副産物である炭酸ガスや水にまで完全に分解する脂肪族ポリエステルからなる種々の生分解性プラスチックが見いだされ、実用レベルの段階に入っている。これら生分解性の脂肪族ポリエステルは、その機械的強度、透明性、柔軟性に応じて、フィルムやシート等として、包装材料、磁気記録材料、光学用材料、電気絶縁材料、一般工業材料等種々の用途への応用が試みられている。また、脂肪族ポリエステルのうち、分子構造中に乳酸単位を有する乳酸系ポリマーのフィルムは、カビ等の発生がなく、透明性も維持されることから、施設園芸ハウスの外張り用、内張り用等、またはトンネルハウス用、マルチ栽培用フィルム等の農業用フィルムとしても利用することが期待される。 【0004】 しかしながら、脂肪族ポリエステルのフィルムは、電気絶縁性が大きく、静電気による帯電を受けやすいという欠点があり、フィルムの巻き取りやスリット時に作業者が感電したり、印刷等の2次加工時にフィルムの走行が不安定になったり、張りつきによって作業性を著しく低下させ、さらには火花放電による発火事故等をも引き起こしていた。また、製品として使用する時には、ゴミや塵埃の付着が起るといった問題を生じていた。このため、脂肪族ポリエステルのフィルムには、帯電防止性を付与することが求められていた。 【0005】 一般に、プラスチックフィルムに帯電防止性を付与する方法として、界面活性剤のような帯電防止剤を樹脂に練り込む方法がとられているが、本願発明者らが、脂肪族ポリエステルのフィルムに適用したところ、ある種の帯電防止剤については帯電防止性が得られるものの、(1)帯電防止効果が小さく、多量に添加する必要があり、フィルムの機械的強度の低下を招く、(2)帯電防止剤が表面にブリードしにくく、帯電防止効果が発現されるまでに相当の時間がかかる、(3)帯電防止効果の持続性に乏しい等の問題があり、工業製品として満足のできるフィルムは得られていない。 また、従来、野菜類を栽培するに当たってポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン・酢ビの共重合体などの合成樹脂フィルムのハウス内で行うことによって気温の低い時期でも栽培を可能にする方法が採られている。この場合使用する合成樹脂フィルムは太陽光線を常時透過させる必要があることから、合成樹脂フィルム表面の水分による曇りの発生を防止することが必要であった。そのため、あらかじめ樹脂に防曇剤を練り込む方法やフィルム表面に防曇性の被膜を形成する方法が行われてきた。例えば、特開昭61-53038公報には、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に防曇性の被膜を形成した農業用ポリエチレンテレフタレートフィルムが開示されている。しかし、該農業用ポリエチレンテレフタレートフィルムは、防曇性被膜の密着性が充分でなく、長期間展張した場合に剥離、脱落し、その効果が長期間持続しない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、自然環境下で分解性があり、耐ブロッキング性が良好で、且つ被膜の効果の持続性に優れた脂肪族ポリエステル塗工フィルムを提供することを課題とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】 上記問題に鑑み、本発明者らは、鋭意検討した結果、特定量の滑剤又はアンチブロッキング剤を含有した脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、水性塗玉液を塗布して被膜を形成することにより、被膜と脂肪族ポリエステルルフィルムの密着性及び被膜の厚み精度を格段に改善することができ、その結果、被膜が持つ効果を長期にわたって持続的に発揮することができることを見出だし、本発明を完成するに至った。 【0008】 すなわち、本発明は、脂肪族ポリエステル100重量部に対し、滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤0.1〜2重量部を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して形成される被膜を有する脂肪族ポリエステル塗工フィルムである。 また本発明は、被膜が帯電防止層である非帯電性脂肪族ポリエステルフィルムを包含する。また、本発明は、被膜が無機質コロイドゾル及びバインダーを主成分とする組成物から形成された防曇層である防曇性脂肪族ポリエステルフィルム、特に防曇性農業用乳酸系ポリマーフィルムを包含する。 【0009】 本発明の脂肪族ポリエステル塗工フィルムは、自然環境下で分解性を有し、耐ブロッキング性が良好であり、且つ被膜の厚みが均一であることにより被膜の効果の持続性に優れている。例えば、本発明の非帯電性脂肪族ポリエステルフィルムは、優れた帯電防止効果を有し、しかもその効果は速効的であり、長期間にわたってその効果を持続することができる。また、本発明の防曇性農業用乳酸系ポリマーフィルムは、優れた防曇効果を有し、防曇層と乳酸系ポリマーフィルムの密着性が長時間維持され、その結果、長期にわたって防曇効果が維持される。 【0010】 【発明の実施の形態】 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の脂肪族ポリエステル塗工フィルムは、脂肪族ポリエステル100重量部に対し、滑剤及びアンチブロッキング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤0.1〜2重量部を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる脂肪族ポリエステルフィルムの片面又は両面に、帯電防止剤または防曇剤を含有する水性塗工液を塗布して、被膜を形成することにより製造することができる。 【0011】 本発明のフィルムを構成するポリマーは、脂肪族ポリエステルである。具体的には、(1)ポリ乳酸、および乳酸と他のヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(2)乳酸単位、脂肪族多価カルボン酸単位および脂肪族多価アルコール単位からなる脂肪族ポリエステル、(3)乳酸単位および多官能多糖類を含む脂肪族ポリエステル、(4)脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールの脂肪族ポリエステル、及び、(5)上記脂肪族ポリエステルの混合物等が挙げられる。 本発明において、上記脂肪族ポリエステル(1)、(2)および(3)またはそれらの混合物のように、分子構造中に乳酸単位を有する脂肪族ポリエステルを、乳酸系ポリマーといい、(4)のポリエステルにくらべ透明性に優れている。一方、(4)のポリエステルは柔軟性に優れる。 【0012】 本発明の脂肪族ポリエステルを透明性が要求される用途に用いる場合、その使用されるフィルムの厚みにおけるヘイズで表すと2.5%未満であることが好ましい。そのために、施設園芸ハウスの外張り用等の農業用ポリエステルフィルムとして用いる場合、脂肪族ポリエステルは、乳酸系ポリマーが好ましく、乳酸単位の量が少なくとも40モル%以上であることがより好ましい。 【0013】 乳酸にはL-体とD-体とが存在するが、本発明において単に乳酸という場合は、特にことわりがない場合は、L-体、D-体およびその混合物を指すこととする。また、ポリマーの分子量は特にことわりのない場合は重量平均分子量のことを指すものとする。 本発明に用いるポリ乳酸としては、構成単位がL-乳酸のみからなるポリ(L-乳酸)、D-乳酸のみからなるポリ(D-乳酸)、およびL-乳酸単位とD-乳酸単位とが種々の割合で存在するポリ(DL-乳酸)のいずれもが使用できる。 乳酸と他のヒドロキシカルボン酸コポリマーのヒドロキシカルボン酸としては例えば、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。 【0014】 本発明に用いるポリ乳酸は、L-乳酸、D-乳酸、またはDL-乳酸を直接脱水重縮合する方法、例えば、特開平6-065360号に記載の方法により製造することができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチドを開環重合する方法によっても製造することができる。開環重合は、高級アルコール、ヒドロキシカルボン酸等の水酸基を有する化合物の存在下で行ってもよい。 乳酸と他のヒドロキシカルボン酸コポリマーは、乳酸と上記ヒドロキシカルボン酸を脱水重縮合する方法、例えば、特開平6-065360号に記載の方法により製造することができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチドと上記ヒドロキシカルボン酸の環状体を開環共重合する方法によっても製造することができる。何れの方法によって製造されたものでもよい。得られたポリマーに透明性が要求される場合、共重合体に含まれる乳酸単位の量は少なくとも40モル%であることが好ましい。 【0015】 乳酸単位及び多官能多糖類を含む脂肪族ポリエステルの製造に用いる多官能多糖類としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ニトロセルロース、セロハン、ビスコースレーヨン、キュプラ等の再生セルロース、ヘミセルロース、デンプン、アミロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン等及びこれらの混合物及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの内で特に酢酸セルロース、エチルセルロースが好ましい。 乳酸単位及び多官能多糖類を含む脂肪族ポリエステルは、上記多官能多糖類と乳酸またはポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸のコポリマー等を反応する方法、例えば、欧州特許公開公報0732341A2号に記載の方法により製造することができる。また、上記多官能多糖類と乳酸の環状2量体であるラクチドや上記ヒドロキシカルボン酸の環状エステル類等を反応する方法によっても製造することができる。何れの方法によって製造されたものでもよい。得られたポリマーに透明性が要求される場合、この脂肪族ポリエステルに含まれる乳酸単位の量は少なくとも50モル%であることが好ましい。 【0016】 乳酸単位、脂肪族多価カルボン酸単位及び脂肪族多価アルコール単位を含む脂肪族ポリエステルまたは脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールの脂肪族ポリエステルの製造に用いる脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等及びこれらの無水物が挙げられる。これらは、酸無水物であっても、酸無水物との混合物であってもよい。 また、脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。 【0017】 乳酸単位、脂肪族多価カルボン酸単位及び脂肪族多価アルコール単位からなる脂肪族ポリエステルは、上記脂肪族多価カルボン酸及び上記脂肪族多価アルコールと、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸のコポリマー等を反応する方法や上記脂肪族多価カルボン酸及び上記脂肪族多価アルコールと、乳酸を反応する方法、例えば、特開平7-228675号に記載の方法により製造できる。また、上記脂肪族多価カルボン酸及び上記脂肪族多価アルコールと乳酸の環状2量体であるラクチドや上記ヒドロキシカルボン酸の環状エステル類等を反応する方法によっても製造することができる。何れの方法によって製造されたものでもよい。得られたポリマーに透明性が要求される場合、この脂肪族ポリエステルに含まれる乳酸単位の量は少なくとも50モル%であることが好ましい。 【0018】 脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールの脂肪族ポリエステルは、上記脂肪族多価カルボン酸及び上記脂肪族多価アルコールを反応する方法、例えば、特開平7-228675号に記載の方法により製造できる。 脂肪族ポリエステルの分子量は、フィルムの加工性、得られるフィルムの強度および分解性に影響を及ぼす。分子量が低いと得られるフィルムの強度が低下し、使用する際に張力で破断することがある。また、分解速度が速くなる。逆に高いと加工性が低下し、フィルムに製膜することが困難となる。かかる点を考慮すると、本発明に使用する脂肪族ポリエステルの分子量は、約1万〜約100万程度の範囲が好ましい。さらに好ましい範囲は10万〜30万である。 【0019】 本発明の脂肪族ポリエステルフィルムに用いる脂肪族ポリエステルの最適な分子量や共重合体組成は、その使用用途における最長の使用期間に合わせて、既存または公知の脂肪族ポリエステルフィルムに関する加水分解性データから考慮して決定される。 本発明において、水性塗工液を塗布して形成される被膜の効果の持続性を向上するために、脂肪族ポリエステルに滑剤およびアンチブロッキング剤からなる群から選ばれた少なくとも1種の添加剤を混合する必要がある。 【0020】 滑剤としては、例えば、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレン等の脂肪族炭化水素系滑剤、ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油等の脂肪酸系滑剤、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、リシノール酸アマイド、オキシステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド等の脂肪酸アマイド系滑剤、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウム等の炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤、グリセリン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコールの脂肪酸(部分)エステル系滑剤、ステアリン酸ブチルエステル、モンタンワックス等の長鎖エステルワックス等の脂肪酸エステル系滑剤、またはこれらを複合した複合滑剤等が挙げられる。長期にわたる被膜の密着性持続効果を考慮すると、これらの内、脂肪酸系滑剤、脂肪酸アマイド系滑剤及び脂肪酸エステル系滑剤が好ましい。 【0021】 アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、チタニア、マイカ、タルク等が挙げられる。これらの中、成形加工性およびフィルムの透明性の観点から平均粒径7〜50nmのシリカが好ましい。平均粒径が7nm未満の場合は粒子が凝集しやすくなり、作業性が劣り、50nmを超える場合、フィルムの外観が不透明になる。また、シリカは、SiO2を95重量%以上含むことが好ましい。さらに無水シリカであることが好ましい。 滑剤、アンチブロッキング剤、またはそれらの混合物の使用量は、脂肪族ポリエステル100重量部に対し、0.1〜2重量部が好ましい。添加量が0.1重量部未満の場合は、塗工機により形成される被膜が持つ効果の持続性、被膜の厚みの均一性の向上の程度が少なく、また2重量部を超えると、得られるフィルムの厚み精度が低下し、結果として被膜の厚みの均一性も得られなくなり、被膜の持つ効果の持続性が低下する。 【0022】 脂肪族ポリエステルに滑剤およびアンチブロッキング剤を添加、混合する方法としては、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の配合機、混合機を用いる方法、脂肪族ポリエステルをクロロホルム等の溶媒に溶解するか、または脂肪族ポリエステルを100〜280℃に加熱溶融させたところに、所定量の滑剤およびアンチブロッキング剤を添加、混合する方法が挙げられる。 本発明の脂肪族ポリエステルフィルムには、本発明の目的を損なわない範囲において、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、充填剤、防霧剤、着色防止剤、顔料等の他の添加剤を含有させてもよい。 【0023】 このようにして得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物から脂肪族ポリエステルフィルムを製造する方法には特に制限はなく、公知の成形方法が適用できる。例えば、溶液キャスト法は、溶媒としてクロロホルム、塩化メチレン、ベンゼン、アセトニトリル、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン等を用いて溶液とした後、平滑な面上にキャストし、溶媒を除去することにより行われる。 また、溶融押出成型する場合は、公知のTダイ法、インフレーション法等が適用される。Tダイを装着した押出機を用いて、上記脂肪族ポリエステル樹脂組成物を混線、溶融して押出し、キャスティングロールにて冷却することにより未延伸フィルムを成形することができる。押出温度は、好ましくは100〜280℃の範囲、より好ましくは130〜250℃の範囲である。成形温度が低いと成形安定性が得難く、また過負荷に陥り易い。逆に高いと脂肪族ポリエステルが分解することがあり、分子量低下、強度低下、着色等が起こすので好ましくない。 【0024】 2軸延伸フィルムを製造する場合には、未延伸フィルムを、例えば、ロール延伸法により縦方向に延伸し、次いでテンター延伸法により横方向に延伸する逐次2軸延伸法、テンター延伸による縦横同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等が挙げられる。得られるフィルムの均質性、厚み精度、生産性等から逐次2軸延伸法が好ましい。 例えば、ロール延伸法とテンター延伸法による逐次2軸延伸は、以下のように実施される。脂肪族ポリエステルを50〜130℃の温度で熱処理し、乾燥及び結晶化を行う。次に、Tダイを装着した押出機にて130〜250℃の温度で混線、溶融押出した後、60℃以下のキャスティングロールにて急冷し、製膜する。この場合、溶融フィルムをロールに密着させ平板性を良くするため、エアナイフ又は静電印加装置を用いるのが好ましい。次いで、得られた未延伸フィルムを引き続き、引取機に通し、縦延伸機にて30〜80℃の温度で1.3〜5倍、好ましくは2〜4倍に縦延伸した後、テンターにて40〜80℃の温度で1.3〜5倍、好ましくは2〜4倍に横延伸する。延伸フィルムの耐熱性(耐熱収縮性)が必要な場合には、引き続きテンター内にて、緊張下に80〜150℃の温度で3〜120秒間熱固定することが好ましい。 【0025】 機械的強度や耐久性に優れたフィルムを得たい場合は、2軸延伸することが好ましい。その場合、延伸倍率が縦横それぞれ1.3倍未満であると、フィルムの充分な機械的強度や耐久性が得られず、5倍を超えると、フィルムが破れてしまうので好ましくない。また、延伸温度が上記範囲外であると、より低温では延伸されず、フィルムの破断を起こし、より高温では、結晶化が起き、延伸むら、およびフィルムの破断が起きるので好ましくない。 このようにして得られた未延伸または延伸された、滑剤またはアンチブロッキング剤を含有する脂肪族ポリエステルフィルムは、その厚みが均一である特徴を有する。そして、得られたフィルムに、帯電防止性あるいは防曇性を付与するために、そのフィルムの片面または両面に、帯電防止剤または防曇剤を含む水性塗工液を塗布して、被膜を形成させて、均一な被膜を形成させる。 【0026】 フィルムに帯電防止性を付与するために用いる帯電防止剤としては、例えば、アニオン型、カチオン型、ノニオン型、ベタイン型、第4級アンモニウム塩基を有するアクリルポリマー、イオネンポリマー、リン酸塩化合物、リン酸エステル化合物等のイオン伝導性のもの、酸化スズ、酸化アンチモン等の金属酸化物、アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体、コーテッドカーボン、コーテッドシリカ等より選ばれる1種もしくは複数を組み合わせて用いることができる。 【0027】 アニオン型の帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸塩類、硫酸化油、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸エステル塩類、脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、脂肪酸エチルスルフォン酸エステル塩類、アルキルスルフォン酸塩類、アルキルナフタレンスルフォン酸塩類、アルキルベンゼンスルフォン酸塩類等が挙げられる。カチオン型の帯電防止剤としては、例えば、脂肪族アミン塩類、第4級アミン塩類、アルキルピリジリウム塩類等が挙げられる。 【0028】 ノニオン型の帯電防止剤としては、例えば、ソルビタンやペンタエリスリトールのような多価アルコールの部分的脂肪酸エステルおよびそのエチレンオキサイド付加物、脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、アルキルアミンまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。ベタイン型帯電防止剤としては、例えば、アルキルアミノ-カルボン酸ベタイン化合物、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。 【0029】 これらの帯電防止剤を含む水性塗工液は、水に塗工助剤として、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水溶性溶媒を1〜20重量部加えた液に帯電防止剤を溶解または分散させたものを用いる。帯電防止剤の濃度は0.01〜40重量%である。好ましくは0.05〜20重量%である。水性塗工液には、必要に応じて、界面活性剤、紫外線吸収剤、顔料、有機フィラー、無機フィラー、滑剤、アンチブロッキング剤を添加してもよい。 【0030】 フィルムに防曇性を付与するために用いる防曇剤は、無機質コロイドゾルとバインダーからなる。無機質コロイドゾルとしては、例えば、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機質水性コロイド粒子を水または水性媒体中に分散させた水性ゾルが挙げられる。これらの内、シリカゾル及びアルミナゾルが好ましい。これらは単独で用いても、混合併用してもよい。 無機質コロイドゾルは、その平均粒子径が0.005〜0.1μmの範囲の物が好ましい。また、平均粒子径の異なる2種以上のコロイドゾルを組み合わせて用いてもよい。平均粒子径が0.1μmを超えると、外観、特に透明性の点から好ましくない。また0.005μmに満たない時は組成物の安定性に欠けるので好ましくない。 【0031】 バインダー成分としての熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチロール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの内、アクリル系樹脂が好ましい。上記樹脂の水や水性の媒体との親和性をよくするために、通常、これらの樹脂は水エマルジョンとして使用される。 【0032】 脂肪族ポリエステルフィルムの片方の面に防曇性被膜を形成するには、上記無機質コロイドゾルとバインダー成分を共に水または水性媒体中に分散させ、水性塗工液とし、これを脂肪族ポリエステルフィルムの片面に塗布し、媒体を蒸散させればよい。水性塗工液に占める無機質コロイドゾルの割合は、1〜40重量%とするのが好ましい。1重量%未満では防曇性が不十分であり、40重量%を超えると、粘度が高くなり過ぎて好ましくない。防曇性被膜を形成するための水性塗工液に使用されるバインダー成分は、水性塗工液の0.05〜15重量%含有させることが好ましい。水性塗工液中のバインダー成分の量が、0.05重量%未満の場合は水性塗工液の分散安定性が悪く、かつ塗布後の防曇性も向上しないので好ましくない。一方、15重量%を超えると、水性塗工液の分散性が悪く、粘度が高くなることから流動性が悪くなり、また防曇持続性も悪化するので好ましくない。 防曇剤を含む水性塗工液に、無機質コロイドゾルの分散性を助ける目的で、少量の一価の無機酸または有機酸を加えてもよい。また被膜の耐水性を向上させるためにバインダー成分同士を架橋させる架橋性化合物を併用してもよい。また、必要に応じ、消泡剤、滑剤、帯電防止剤、等を混合することができる。 【0033】 次に、脂肪族ポリエステルフィルムの片面、または両面に帯電防止層または防曇層を形成する方法について説明する。帯電防止層または防曇層は、脂肪族ポリエステルフィルムの片面、または両面に上記帯電防止剤または防曇剤を含む水性塗工液を塗布、乾燥することにより形成する。 水性塗工液を塗布する方法は、公知の方法が適用できる。すなわち、スプレーコート法、エアーナイフ法、リバースコート法、キスコート法、グラビアコート法、メタリングバー法、ロールブラッシュ法、ディップコート法、カレンダーコート法、スキーズコート法、ファンテンコート法等が適用できる。例えば、未延伸フィルムの場合には、Tダイを装着した押出機を用いて成形した未延伸フィルムに、水性塗工液を塗布して、乾燥炉に入れて乾燥する。フィルムに直接送風して乾燥してもよい。この場合、塗布後の乾燥温度により、結晶化およびそれによる白化を起こす恐れがあるので、フィルムの温度は、80℃以下に維持することが好ましい。 【0034】 1軸延伸フィルムの場合には、未延伸フィルムに水性塗工液を塗布し、一軸延伸後、未延伸フィルムと同様に乾燥する。 2軸延伸フィルムの場合には、未延伸フィルムに水性塗工液を塗布し、逐次あるいは同時2軸延伸する方法、縦延伸されたフィルムに水性塗工液を塗布し、次いで横方向に延伸する方法、あるいは2軸延伸したフィルムに水性塗工液を塗布し、さらに横および/または縦方向に延伸する方法が挙げられる。 ロール延伸法等により縦延伸したフィルムに水性塗工液を塗布し、40〜80℃で乾燥を行い、あるいは乾燥を行わず、フィルムをただちに横方向に延伸し、上記条件で熱処理を行う方法が好ましい。この方法において水性塗工液を塗布した直後に乾燥を行わない場合は、2軸延伸を行った後の熱処理の際に乾燥を同時に実施する。この方法によれば、横延伸を行うテンター内におけるフィルムの予熱と乾燥が同時に可能となるので、省エネルギーの点で有利である。 尚、水性塗工液のフィルムへの塗布性、被膜のフィルムへの接着性を改善するため、塗布前に、フィルムの表面にコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等を施して表面を活性化させてもよい。 【0035】 脂肪族ポリエステルフィルムの片面、または両面に形成される被膜の厚さは、0.01〜5μm(固形分の重量で0.01〜5g/m2)の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1μm(固形分の重量で0.05〜1g/m2)である。被膜の厚さが0.01μm(固形分の重量で0.01g/m2)未満の場合、被膜が均一に形成されず、厚みにむらを生じやすくなり、本発明の目的である効果の均一性が得られにくくなる。また、被膜の厚さが5μm(固形分の重量で5g/m2)を超えると、フィルムのブロッキングが起こりやすく、被膜密着性の持続効果が発現されず好ましくない。 このようにして得られる本発明の脂肪族ポリエステル塗工フィルムの厚みは、通常、0.01〜2mmであり、用途によって適宜選択される。 【0036】 このようにして得られる本発明の脂肪族ポリエステル塗工フィルムの被膜の厚みは、非常に均一である。被膜の厚みの均一度は、実施例に記載の方法で測定される被膜の厚み変動係数で表され、本発明の方法により得られた被膜の厚み変動係数は130%以下である。厚み変動係数が130%を越えると被膜の効果の持続性の面から好ましくない。 このようにして得られた被膜として帯電防止層を有する非帯電性脂肪族ポリエステルフィルムは、自然環境下で分解するだけでなく、耐ブロッキング性が良好で、且つ帯電防止効果およびその速効性、持続性、均一性に優れたフィルムである。したがって、包装材料、磁気記録材料、光学用材料、電気絶縁材料、一般工業材料等種々の用途に利用できる。また、使用後、自然環境下に廃棄された場合でも比較的速やかに分解するので、廃棄物として蓄積することがない。 【0037】 また、被膜として防曇層を有する防曇性乳酸系ポリマーフィルムは、防曇性被膜と乳酸系ポリマーフィルムの密着性の持続性に優れ、長期にわたる防曇持続性に優れている。そして、耐衝撃性、伸び率等の一般的機械的特性、自然環境下における加水分解性、酵素分解性等については、従来の乳酸系ポリマーフィルムと同等の特性を有し、また、使用後廃棄されても廃棄物として自然環境下に蓄積することがない。従って、例えば、施設園芸ハウス、トンネルハウス等の農業用フィルムとして極めて有用である。 【0038】 本発明の脂肪族ポリエステル塗工フィルムを屋外で使用する場合、特に、施設園芸ハウスの外張り用等の農業用ポリエステルフィルムとして使用する場合、滑剤またはアンチブロッキング剤を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物に、紫外線吸収剤または光安定剤を添加、混合することが好ましい。紫外線吸収剤とは、破壊的な高エネルギーをもつ波長250〜380nmの範囲の紫外線を吸収し、非破壊的な波長に変えて再輻射するものであり、光安定剤とは、必ずしも紫外線を吸収するわけではなく、光劣化開始剤であるヒドロペルオキシドを非ラジカル的に分解したり、光分解で発生するラジカルを捕捉、除去したり等して何らかの機構で材料の光分解を抑制するものである。 【0039】 本発明で使用する紫外線吸収剤及び光安定剤には、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート等のサリチル酸誘導体、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン等のベンゾフェノン類、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール類、商品名SanduvorEPUやSanduvorVSU等で知られる蓚酸アニリド誘導体、2-エトキシ-5-tert-ブチル-2’-エチル蓚酸ビスアニリド、2-エトキシ-2-エチル蓚酸ビスアニリド、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、1,3-ビス(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)-2-プロピルアクリレート、1,3-ビス(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)-2-プロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、オルソ-ベンゾイル安息香酸メチル、エチル 2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ニッケル・チトビスフェノール複合体、ニッケル含有有機光安定剤、バリウム、ナトリウム、リン含有の有機・無機複合体、セミカルバゾン系光安定剤、商品名Sanshade等で知られる酸化亜鉛系紫外線安定剤や相乗効果剤、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-4-{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-ベンジル-7,7,9,9-テトラメチル-3-オクチル-1,2,3-トリアザスピロ[4,5]ウンデカン-2,4-ジオン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチルと1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン類が挙げられる。 【0040】 紫外線吸収剤及び/または光安定剤の含有量は、得られるフィルムの耐候性、透明性等に影響を及ぼす。紫外線吸収剤または光安定剤の含有量が多いと乳酸系ポリマーが本来有する透明性等を低下させることがあるので好ましくない。また、少ないとフィルムを展張した際に分解の促進を抑制する効果が十分に認められないので好ましくない。かかる観点から、紫外線吸収剤および光安定剤の含有量は、乳酸系ポリマー100重量部に対し0.001〜5重量部であることが好ましい。さらに好ましくは0.01〜2重量部である。 【0041】 【実施例】 以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例に限定されるものではない。実施例で示した各特性は、以下の方法により測定した。 (1)表面固有抵抗値(Ω) 固有抵抗計(武田理研社製、形式:TR-8601型)を用いて、23℃、40%RHの雰囲気下で、500Vの電圧を印加し、1分後に表面固有抵抗値を測定する。 (2)帯電圧の半減期(秒) 静電気連続測定器(米国シムコ社製、形式:EVL-3R)を用いて、23℃、40%RHの雰囲気下で測定する。 (3)帯電防止効果の速効性(Ωまたは秒) 試料フィルムを製造後、室内に放置し、1日後、7日後の表面固有抵抗値、および帯電圧の半減期を(1)項及び(2)項の方法で測定する。 (4)帯電防止効果の持続性(Ω) 試料フィルムを製造後、室内に放置し、6ケ月後、1年後の表面固有抵抗値を(1)項の方法で測定する。 (5)帯電防止効果の均一性(Ω) 試料フィルムを製造後、MD方向に50cm間隔、TD方向に30cm間隔で、5×5点ずつ計25点サンプリングし、(1)項の方法で表面抵抗値を測定し、バラツキ(R:最小値〜最大値)で示す。 (6)フィルムの透明性(ヘイズ、%) 直読式ヘイズメーター(東洋整機製作所製、型式206)を用いてASTM-D1003に準拠して測定する。 (7)耐ブロッキング性 試料フィルムの巻物を30cm幅に切断し、フィルムを巻物から剥離させる時の荷重(g)を測定し、次の判定を行う。○:0〜50g、△:50〜200g、×:200g超 (8)被膜厚みの変動係数の測定 幅方向の量端部を除去した、表面に被覆を有する幅1100mmのフィルムを試料とする。試料の幅方向に100mm間隔で10ヶ所の測定点を定める。同様の操作をフィルムの長さ方向に10mm間隔で3回繰り返し、合計30点の測定点を定める。 各測定点を小片として切出し、その切断断面を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、形式:JEM-2010)を用いて10,000倍に拡大して観察して被膜の厚みを測定する。得られたデータから、平均値(X)と標準偏差(σ)を求め、次の式から被膜の厚みの変動係数(CV)を求める。 CV(%)=(σ/X)×100 (9)重量平均分子量(Mw) 脂肪族ポリエステルをクロロホルムに溶解させゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)によりポリスチレン換算の分子量を測定する。 (10)防曇性被膜の密着性 片屋根型ハウス(間口1m、奥行き5m、棟高1.3m、屋根勾配30度)に被膜を設けた面を内側にフィルムを展張し、10日間、1ケ月間、6ケ月間、12ケ月間それぞれ経過した時点で、被膜にセロハンテープを接着し、このセロハンテープをはがしたときの被膜の剥離状況を肉眼で観察する。その評価基準は次の通りである。 4:被膜が全く剥離せず、完全に残ったもの。 3:被膜の2/3以上が剥離せず残ったもの。 2:被膜の2/3以上が剥離したもの。 1:被膜が完全に剥離したもの。 【0042】 実施例1-1 カチオン型帯電防止剤〔花王(株)製、商品名:エレクトロストリッパーQN、有効成分濃度:30重量%〕を水で希釈して、濃度0.1重量%の水性塗工液Aを得た。次に、分子量約120,000のポリ(L-乳酸)(以下、ポリマー(1)と略称する)100重量部に対し、モンタン酸エステル系滑剤〔ヘキストジャパン(株)製、商品名:ホスタルブWE-4〕0.15重量部を配合したペレットを80℃のオーブン中で乾燥、熱処理して、ポリマーを結晶化させた後、Tダイを装着した単軸押出機にて150〜200℃の温度条件で押出し、30℃のキャスティングロールにて冷却し、平均厚さ400μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを60℃の熱ロールにて、縦方向に倍率2.5倍で延伸した後、前記の水性塗工液Aをメタリングバー法でフィルムの両面に塗布し、テンター内にて70℃の温度で乾燥させ、引き続きテンター内で70℃で横方向に倍率2.5倍で延伸し、さらに、緊張下で130℃の温度で30秒間熱固定し、平均厚さ100μmの2軸延伸フィルムを得た。このフィルム上のそれぞれの塗膜の厚さは0.1μmであった。 【0043】 実施例1-2 ノニオン型の帯電防止剤〔丸菱油化工業(株)製、商品名:デノン733、有効成分濃度:100重量%〕を水で希釈して、濃度1重量%の水性塗工液Bを得た。次に、ポリマー(1)80重量%と分子量約100,000のポリブチレンサクシネート(コハク酸と1,4-ブタンジオールの脱水重縮合体)20重量%を反応させたブロックコポリマー(以下、ポリマー(2)と略称する)100重量部に対し、脂肪酸アマイド系滑剤〔日本化成(株)製、商品名:スリパックスE〕0.5重量部を配合したペレットを80℃のオーブン中で乾燥、熱処理して、ポリマーを結晶化させた後、Tダイを装着した単軸押出機にて150〜200℃の温度条件で押出し、30℃のキャスティングロールにて冷却し、平均厚さ400μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを40℃の熱ロールにて、縦方向に倍率2.5倍で延伸した後、前記の水性塗工液Bをメタリングバー法でフィルムの両面に塗布し、テンター内にて50℃の温度で乾燥させ、引き続きテンター内で50℃で横方向に倍率2.5倍で延伸し、さらに、緊張下で120℃の温度で30秒間熱固定し、平均厚さ100μmの2軸延伸フィルムを得た。このフィルム上のそれぞれの塗膜の厚さは0.3μmであった。 【0044】 実施例1-3 ベタイン型の帯電防止剤〔花王(株)製、商品名:エレクトロストリッパーAC、有効成分濃度:25重量%〕を水で希釈して、濃度0.15重量%の水性塗工液Cを得た。ポリマー(1)100重量部に対し、滑剤としてステアリン酸〔新日本理化(株)製、商品名:ステアリン酸#100〕1.0重量部を配合したペレットを80℃のオーブン中で乾燥、熱処理して、ポリマーを結晶化させた後、Tダイを装着した単軸押出機にて150〜200℃の温度条件で押出し、30℃のキャスティングロールにて冷却し、平均厚さ400μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィムを60℃の熱ロールにて、縦方向に倍率2.5倍で延伸した後、前記の水性塗工液Cをメタリングバー法でフィルムの両面に塗布し、テンター内にて70℃の温度で乾燥させ、引き続きテンター内で70℃で横方向に倍率2.5倍で延伸し、さらに、緊張下で130℃の温度で30秒間熱固定し、平均厚さ100μmの2軸延伸フィルムを得た。このフィルム上のそれぞれの塗膜の厚さは0.2μmであった。 【0045】 実施例1-4 滑剤の代わりに、アンチブロッキング剤のシリカ〔日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル200〕0.5部重量部を添加した以外は、実施例1-1と同様にして2軸延伸フィルムを得た。このフィルム上のそれぞれの塗膜の厚さは0.1μmであった。 【0046】 実施例1-5 実施例1-1で得られた未延伸フィルムに、前記水性塗工液Aをメタリングバー法にてフィルムの両面に塗布し、60℃の乾燥炉内を5分間通過させて、巻き取り、帯電防止層が形成された未延伸フィルムを得た。このフィルム上のそれぞれの塗膜の厚さは0.2μmであった。 【0047】 実施例1-6 水性塗工液Aの濃度を10重量%(以下、水性塗工液Dと呼ぶ)にした以外は、実施例1-1と同様にして、帯電防止層が形成された2軸延伸フィルムを得た。このフィルム上のそれぞれの塗膜の厚さは、0.6μmであった。 【0048】 実施例1-7 水性塗工液Aの濃度を20重量%(以下、水性塗工液Eと呼ぶ)にした以外は、実施例1-1と同様にして、帯電防止層が形成された2軸延伸フィルムを得た。このフィルム上のそれぞれの塗膜の厚さは、1.0μmであった。 【0049】 実施例1-8 分子量約10万のポリブチレンサクシネート(コハク酸と1,4-ブタンジオール脱水重縮合体)、以下、ポリマー(3)と略称する)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、2軸延伸フィルムを得た。このフィルム上のそれぞれの被膜の厚さは0.1μmであった。 【0050】 比較例1-1 ポリマー▲1▼100重量部に対し、カチオン型帯電防止剤(エレクトロストリッパーQN)を3重量部配合し、帯電防止剤を含むペレットを使用し、フィルムの表面に帯電防止剤を含む水性塗工液を塗布しなかった以外は、実施例1-1と同様にして帯電防止剤が混線された2軸延伸フィルムを得た。 【0051】 比較例1-2 ポリマー▲2▼100重量部に対し、ノニオン系電防止剤(デノン733)5重量部おおよび滑剤(スリパックスE)0.5重量部を配合し混線したペレットを使用し、フィルムの表面に帯電防止剤を含む水性塗工液を塗布しなかった以外は、実施例1-2と同様にして帯電防止剤及び滑剤が混線された2軸延伸フィルムを得た。 【0052】 比較例1-3 滑剤の添加量を0.05重量部に変更した以外は、実施例1-3と同様にして2軸延伸フィルムを得た。このフィルム上のそれぞれの被膜の厚さは0.2μmであった。 【0053】 比較例1-4 滑剤の添加量を2.5重量部に変更した以外は、実施例1-1と同様にして2軸延伸フィルムを得た。このフィルム上のそれぞれの被膜の厚さは0.1μmであった。以上の実施例及び比較例で得られたフィルムについて、前記方法により各特性を測定した。その測定結果を第1表(表1、2)に示す。 【0054】 第1表(表1、2)に示されるように、本発明の非帯電性脂肪族ポリエステルフィルムは、表面抵抗値が低く、充分な帯電防止効果を有する。フィルム製造1日後でも充分な帯電防止性を示し、その速効性があることがわかる。本発明の非帯電性脂肪族ポリエステルフィルムは、フィルム上に表面抵抗が均一に分布し、バラツキが小さく、被膜の厚みの変動係数が130%以下である。その結果、6ケ月後、1年後でも表面抵抗値を保持しており、帯電防止効果の持続性に優れることがわかる。 【0055】 【表1】 【0056】 【表2】 【0057】 防曇剤組成物の調製例1〜3 四つ口フラスコにポリオキシエチレンラウリルエーテル2重量部及び水80重量部を仕込んで窒素ガス気流下で60℃まで加熱、撹拌し、ここに過硫酸アンモニウム0.5重量部を滴下し、さらに、メタクリル酸メチル60モル%及びメタクリル酸n-ブチル40モル%からなる混合物100重量部を3時間にわたって滴下した。滴下終了後も60〜70℃で2時間保持してから冷却し、アンモニア水で中和してアクリル系樹脂エマルジョンを得た。得られたアクリル系樹脂エマルジョンに第2表(表3)に示した種類及び量の無機質コロイドゾルを配合し、防曇剤組成物A、B及びCを得た。 【0058】 【表3】 【0059】 実施例2-1 分子量約120,000のポリ(L-乳酸)(融点175℃、以下、PLAという)100重量部に対し、紫外線吸収剤〔共同薬品(株)製、バイオソーブ130〕0.05重量部、及び、脂肪酸エステル系滑剤(ホスタルブWE-4)0.3重量部を含むペレットを、180℃においてTダイが装着された押出機を用いて混線、溶融して押出し、厚さ800μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを60℃に加熱した後、長さ方向にロール法によって3倍延伸し、一軸延伸フィルムを得た。そのフィルムの片面にコロナ放電処理を行ない、該処理面に調製例1で得た防曇剤組成物Aをメタリングバー法で単位面積当たりの固形分の重量が表3に記載した重量になるように塗布し、70℃に加熱した後、横方向にテンターを用いて2.5倍延伸を行ない、引き続き緊張下で140℃において2分間熱処理し、厚み0.1mmの防曇性被膜が形成された二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの防曇性被膜の密着性及び透明性を上記方法により測定した。 【0060】 実施例2-2 実施例2-1で使用したPLA90重量%と分子量約100,000のポリブチレンサクシネート10重量%を反応させたコポリマー100重量部に対し、紫外線吸収剤〔共同薬品(株)製、バイオソープ130〕0.05重量部、及び、脂肪酸エステル系滑剤(ホスタルブWE-4)1.0重量部を含むペレットを、180℃においてTダイが装着された押出機を用いて混線、溶融して押出し、厚さ800μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを40℃に加熱した後、長さ方向にロール法によって3倍延伸し、一軸延伸フィルムを得た。そのフィルムの片面にコロナ放電処理を行ない、該処理面に調製例1で得た防曇剤組成物Aをメタリングバー法で単位面積あたりの固形分の重量が表3に記載した重量となるように塗布し、50℃に加熱した後、横方向にテンターを用いて2.5倍延伸を行ない、引き続き緊張下で120℃において2分間熱処理し、厚み0.1mmの防曇性被膜が形成された二軸延伸フィルムを得た。 【0061】 実施例2-3 実施例2-1で使用した滑剤を脂肪酸系滑剤〔川研ファインケミカル(株)製、F-3〕0.5重量部に代えたペレットを用い、防曇剤組成物の単位面積当たりの固形分の重量を変えた以外、実施例2-1と同様にして二軸延伸フィルムを得、それを実施例2-1と同様にして評価した。 【0062】 実施例2-4 実施例2-1で使用した滑剤を脂肪酸アマイド系滑剤〔日本化成(株)製、ダイヤミッド200〕0.5重量部に代えたペレットを用い、防曇剤組成物の単位面積当たりの固形分の重量を変えた以外、実施例2-1と同様にして二軸延伸フィルムを得、それを実施例2-1と同様にして評価した。 【0063】 実施例2-5 実施例2-1で使用した防曇剤組成物を防曇剤組成物Bに代えた以外、実施例2-1と同様にして二軸延伸フィルムを得、それを実施例2-1と同様にして評価した。 【0064】 実施例2-6 実施例1で使用した防曇剤組成物を防曇剤組成物Cに代え、その単位面積当たりの固形分の重量を変えた以外、実施例2-1と同様にして二軸延伸フィルムを得、それを実施例2-1と同様にして評価した。 【0065】 実施例2-7 PLA100重量部に対し、紫外線吸収剤〔共同薬品(株)製、バイオソープ130〕0.05重量部、及び、脂肪酸エステル系滑剤〔ヘキストジャパン(株)製、ホスタルブ-WE4〕0.3重量部を配合したペレットを、180℃においてTダイが装着された押出機を用いて混線、溶融して押出し、厚さ100μmの未延伸フィルムを得た。得られたフィルムの片面にコロナ放電処理を行ない、その面に防曇剤組成物Aをメタリングバー法によって、単位面積当たりの防曇性被膜の重量が表3に記載した重量となるように塗布し、得られたフィルムを実施例2-1と同様にして評価した。 【0066】 実施例2-8 分子量約10万のポリブチレンサクシネート(コハク酸と1,4-ブタンジオール脱水重縮合体)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、2軸延伸フィルムを得た。 【0067】 比較例2-1〜2-4 滑剤を第3表(表4)に記載した重量部配合したペレットを用い、防曇剤組成物の単位面積当たりの固形分の重量が第3表(表4)に記載した重量となるようにした以外、実施例2-1と同様にして二軸延伸フィルムを得、それを実施例2-1と同様にして評価した。 以上の実施例及び比較例で得られたフィルムについて、前記方法により、透明性、滑剤の添加量(重量部)、並びに、単位面積当たりの防曇性被膜の重量、及び防曇性被膜の密着性等の各特性を測定した。その測定結果を第3表(表4)に示す。 【0068】 第3表(表4)に示されるように、本発明の防曇性性脂肪族ポリエステルフィルムは、防曇性被膜とフィルムの優れた接着性を有する。本発明の防曇性性脂肪族ポリエステルフィルムは、均一な厚みの防曇性被膜を有し、防曇性被膜の厚みの変動係数が130%以下である。その結果、防曇性は6ケ月に後および1年後さえ維持されており、防曇性効果の持続性に優れていることがわかる。 【0069】 【表4】 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-11-30 |
出願番号 | 特願平9-95927 |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YA
(B32B)
P 1 651・ 537- YA (B32B) P 1 651・ 121- YA (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 川端 康之 |
特許庁審判長 |
石井 淑久 |
特許庁審判官 |
澤村 茂実 石井 克彦 |
登録日 | 2003-06-13 |
登録番号 | 特許第3439621号(P3439621) |
権利者 | 三井化学株式会社 |
発明の名称 | 脂肪族ポリエステル塗工フィルム |
代理人 | 苗村 新一 |
代理人 | 苗村 新一 |