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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1132570
異議申立番号 異議2003-72165  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-29 
確定日 2005-12-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3382967号「ゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3382967号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 【I】手続きの経緯
特許第3382967号の請求項1に係る発明についての出願は、平成4年6月5日に特許出願され、平成14年12月20日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、山口雅行(以下「特許異議申立人」という。)より、特許異議の申立てがなされ、平成16年2月12日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年6月15日に特許異議意見書とともに訂正請求書が提出され、平成16年10月26日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成17年3月18日に上申書とともに意見書が提出され、再度平成17年6月30日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年7月11日に先の訂正請求が取り下げられるとともに新たな訂正請求書と上申書が提出されたものである。

【II】訂正の適否について
1.訂正の内容
(訂正事項a)
特許請求の範囲の【請求項1】中の「スチレン/オレフィングラフトコポリマー又はスチレン/オレフィンブロックコポリマーを含まず」を、「スチレン/オレフィングラフトコポリマーを含まず、かつスチレン/オレフィンブロックコポリマーを含まず、かつエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を含まず」と訂正する。
(訂正事項b)
特許請求の範囲の【請求項1】中の「組成物がゴム状重合体を1〜15重量%、ポリエチレンを0.5〜5.0重量%、ポリジメチルシロキサンを0.02〜0.5重量%含有する」を、「組成物がゴム状重合体を1〜15重量%、ポリエチレンを0.5〜5.0重量%、ポリジメチルシロキサンを0.02〜0.5重量%含有し、組成物のアイゾット衝撃強度が10kg・cm/cm以上である」と訂正する。

2.訂正の適否
訂正事項aにおいて、「〜又は〜を含まず」を「〜を含まず、かつ〜を含まず」とする訂正は、含まれない成分を明りょうにしたものであるから、願書に添付された明細書の範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、「かつエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を含まず」とする訂正は、元の記載を残したままで特許法第29条第1項第3号に係る先行技術として特公平3-41104号公報に記載された事項を除くものであるから、願書に添付された明細書の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
訂正事項bは、実施例1〜8の組成物のアイゾット衝撃強度に基づいて、組成物のアイゾット衝撃強度を限定するものであるから、願書に添付された明細書の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
そして、訂正事項a〜bは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【III】本件発明
上記の結果、訂正後の本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(a) ゴム変性ポリスチレン、
(b) ポリエチレン、及び
(c) 25℃に於ける粘度が500〜60,000cStであるポリジメチルシロキサン
を必須成分とするゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物であって、
スチレン/オレフィングラフトコポリマーを含まず、かつスチレン/オレフィンブロックコポリマーを含まず、かつエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を含まず、
ゴム変性ポリスチレン中に含まれるゴム状重合体がゴム変性ポリスチレン中に粒子状に分散しておりその分散粒子の平均粒子径が0.1〜1.5μmであり、
組成物がゴム状重合体を1〜15重量%、ポリエチレンを0.5〜5.0重量%、ポリジメチルシロキサンを0.02〜0.5重量%含有し、
組成物のアイゾット衝撃強度が10kg・cm/cm以上である
ことを特徴とするゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物。」

【IV】取消理由の概要
取消理由のうち、理由3の概要は以下のとおりである。
訂正前の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
<記>
刊行物1:特公平3-41104号公報(特許異議申立人提出の甲第1号証)
刊行物2:特開昭63-182361号公報(特許異議申立人提出の甲第2号証)

【V】判断
1.刊行物1〜2に記載された事項
(刊行物1)
ア.「(A)ゴム状重合体を1〜15重量パーセント含有し、該分散ゴム粒子の平均粒子径が0.1〜2.5μであるゴム変性スチレン系樹脂に対して、(B)有機ポリシロキサンをケイ素量として0.01〜0.2重量パーセント、および(C)エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を0.05〜10重量パーセント配合してなることを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物。」(請求項1)
イ.「本発明は、、耐衝撃強度を大巾に改良したゴム変性スチレン系樹脂組成物に関するものであり、更に詳しくは耐衝撃強度を大巾に向上させと同時に、他の物性については悪化をさせないゴム変性スチレン系樹脂組成物に関するものである。」(1頁左欄下から3行〜右欄2行)
ウ.また、実施例6には「ゴム変性ポリスチレン 100重量部、シリコンオイル(東レシリコーンSH-200)0.05重量部、エチレン・メチルアクリレート共重合体 1.0重量部」を含有する樹脂組成物が記載され、ゴム変性ポリスチレン中のゴム状重合体量が8重量%であり、ゴム変性ポリスチレン中のゴム状分散粒子径が0.8μmであることが記載されている。

(刊行物2)
ア.「(a)ゴム変性スチレン樹脂 97.9〜15重量部、
(b)ポリオレフィン系樹脂 1〜60重量部、
(c)スチレン-オレフィングラフト共重合体もしくはスチレン-オレフィンブロック共重合体 1〜20重量部、および、
(d)ジメチルシリコーン 0.1〜5重量部
よりなる摺動性スチレン系樹脂組成物。」(特許請求の範囲第1項)
イ.「本発明に使用するゴム変性スチレン樹脂は、ゴム状エラストマーの存在下にスチレンをグラフト重合した樹脂であり、いわゆる耐衝撃性ポリスチレンとして広く市販されている。」(2頁左上欄13〜16行)
ウ.「本発明に使用するポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン・・・等のエチレン又はプロピレンを主成分とするポリオレフィン系の樹脂である。・・・ポリオレフィン系樹脂の使用量は、樹脂組成物100重量部中1〜60重量部・・・である。」(2頁左上欄17行〜右上欄3行)
エ.「本発明に使用するジメチルシリコーンはジメチルポリシロキサンである。・・・ジメチルシリコーンの30℃における粘度が100〜60,000センチストークスのものが好適に使用できる。・・・ジメチルシリコーンの使用量は樹脂組成物100重量部中0.1〜5重量部である。」(2頁左下欄18行〜右下欄8行)
オ.「耐衝撃性:本発明の樹脂組成物を・・・の試験片に成形し、JIS K-7110に従ってアイゾット衝撃値を測定した。」(3頁右上欄8〜10行)
カ.また、表1及び表2に記載された実施例1〜4のアイゾット衝撃強度は10Kgf-cm/cm2以上であることが記載されている。

2.特許法第29条第2項違反について
刊行物2には、「(a)ゴム変性スチレン樹脂 97.9〜15重量部、
(b)ポリオレフィン系樹脂 1〜60重量部、(c)スチレン-オレフィングラフト共重合体もしくはスチレン-オレフィンブロック共重合体 1〜20重量部、および、(d)ジメチルシリコーン 0.1〜5重量部よりなる摺動性スチレン系樹脂組成物。」(摘示記載ア)が記載され、ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(摘示記載ウ)が記載され、ジメチルシリコーンはジメチルポリシロキサンであること(摘示記載エ)、ジメチルシリコーンの30℃における粘度は100〜60,000センチストークスのものが好適に使用できること(摘示記載エ)および各成分の含有量は樹脂組成物100重量部中の値であること(摘示記載ウ、エ)が記載されているので、刊行物2には、「(a)ゴム変性スチレン樹脂 97.9〜15重量部、(b)低密度ポリエチレン 1〜60重量部、(c)スチレン-オレフィングラフト共重合体もしくはスチレン-オレフィンブロック共重合体 1〜20重量部、および、(d)30℃における粘度が100〜60,000センチストークスのジメチルポリシロキサン 0.1〜5重量部よりなる、スチレン系樹脂組成物」が記載されている。
本件発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載された発明の「低密度ポリエチレン」および「ジメチルポリシロキサン」は、それぞれ本件発明の「ポリエチレン」および「ポリジメチルシロキサン」に相当し、また、刊行物2に記載された発明の「スチレン系樹脂組成物」はゴム変性スチレン樹脂を含んでいることから、「ゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物」であるということができ、刊行物2に記載された発明はエチレン・不飽和カルボンエステル共重合体が必須成分ではないので当該成分を含まないものも包含しているものと認められる。
すると、両発明は、ともに「(a) ゴム変性ポリスチレン、(b) ポリエチレン、及び(c) ポリジメチルシロキサンを必須成分とするゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物であって、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を含まない、ゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物」である点で軌を一にしており、(b) ポリエチレンの含有量は1〜5.0重量%、および、(c) ポリジメチルシロキサンの含有量は0.1〜0.5重量%の範囲で重複しているが、両発明は下記の点において相違点している。
(相違点1)本件発明は、ポリジメチルシロキサンの粘度が25℃で500〜60,000cStであるのに対し、刊行物2に記載された発明は30℃で100〜60,000センチストークス(本件発明の「cSt」に相当)である点。
(相違点2)本件発明は、ゴム変性ポリスチレン中に含まれるゴム状重合体がゴム変性ポリスチレン中に粒子状に分散しておりその分散粒子の平均粒子径が0.1〜1.5μmであり、上記ゴム状重合体は組成物中に1〜15重量%含まれているのに対して、刊行物2には対応する記載はない点。
(相違点3)本件発明は、スチレン/オレフィングラフトコポリマーおよびスチレン/オレフィンブロックコポリマーのいずれも含まずに、かつ、組成物のアイゾット衝撃強度が10kg・cm/cm以上であるのに対し、刊行物2に記載された発明は、スチレン-オレフィングラフト共重合体(本件発明の「スチレン/オレフィングラフトコポリマー」に相当)もしくはスチレン-オレフィンブロック共重合体(本件発明の「スチレン/オレフィンブロックコポリマー」に相当)のいずれかを含んでおり、刊行物2の実施例1〜4の組成物のアイゾット衝撃値は全て10kgf-cm/cm2である点。

(相違点1について)
両発明のポリジメチルポリシロキサンの粘度の測定条件は25℃と30℃と異なってはいるものの近い数値であり、それらの粘度範囲も非常に広く重複している蓋然性が高いので、刊行物2に記載された発明において、25℃で500〜60,000cstの粘度を有するポリジメチルポリシロキサンを選択することは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
(相違点2について)
刊行物2には、「本発明に使用するゴム変性スチレン樹脂は、ゴム状エラストマーの存在下にスチレンをグラフト重合した樹脂であり、いわゆる耐衝撃性ポリスチレンとして広く市販されている。」(摘示記載イ)と記載され、刊行物2と同様に耐衝撃性に優れたゴム変性スチレン系樹脂組成物が記載された刊行物1には、ゴム変性ポリスチレン中の分散ゴム粒子の平均粒子径は0.8μmであり、ゴム変性ポリスチレン中のゴム状重合体含有量が8重量%のゴム変性ポリスチレン(摘示記載ウ)が記載されているので、刊行物2に記載された発明のゴム変性ポリスチレン樹脂として、刊行物1に記載されたものを用いて、その結果として組成物中のゴム状重合体の含有量を7.8〜1.2重量%程度(97.9×0.08〜15×0.08)とし、本件発明の上記相違点2の構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。
(相違点3について)
本件訂正明細書にはアイゾット衝撃強さはJIS K6871に準じて測定されたと記載され(段落【0017】)、JIS K6871におけるアイゾット衝撃強さはJIS K7110を引用しているので、本件発明と刊行物2の実施例におけるJIS K7110により測定したアイゾット衝撃強さの測定方法は実質的に同じであるから、両者のアイゾット衝撃強度は単位の表記の仕方は異なるものの同じものを意味しているものと認められる。
上記相違点2についての項で記載した刊行物1に記載された衝撃強度を改良する成分であるゴム変性ポリスチレンを、刊行物2に記載された発明においてなるべく多く適用することにより、必須とされているグラフトまたはブロックコポリマーを添加しなくてもアイゾット衝撃強度が10kg・cm/cm以上となった場合には、当該グラフトまたはブロックコポリマーを敢えて使用しないことは当業者が通常発揮し得る創作能力の範囲内の事項である。
仮に、上記の手段ではアイゾット衝撃強度が10kg・cm/cm以上とならないとしても、本件発明においてはアイゾット衝撃強度を10kg・cm/cm以上とするために、(a)〜(c)以外の成分を含まないことが特定されているわけではないので、本件出願時より前にアイゾット衝撃強度を向上させる手段として周知の手段であるゴム変性ポリスチレン以外のゴム状成分等の他の成分を添加することにより、アイゾット衝撃強度を10kg・cm/cm以上とすることも当業者であれば容易になし得る事項であるといえる。
そして、本件発明は、当該グラフトまたはブロックコポリマーを用いないことによりはじめてアイゾット衝撃強度が10kg・cm/cm以上となるものでなく、本件発明の(a)〜(c)を特定量含む組成物が全てアイゾット衝撃強度が10kg・cm/cm以上となるものでもなく、単に、(a)〜(c)を特定量含む組成物の中から、特許請求の範囲に記載されていない何らかの条件を有することによりアイゾット衝撃強度が10kg・cm/cm以上となる組成物を選択したものにすぎないので、本件発明において、グラフトまたはブロックコポリマーブロックを含まずにアイゾット衝撃強度が10kg・cm/cm以上であるとしたことに格別の発明力を要したということはできない。
したがって、本件発明は、刊行物1〜2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

なお、平成17年7月11日に提出された上申書を検討しても、上記の理由を覆す根拠は見い出せない。

【VI】むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)ゴム変性ポリスチレン、
(b)ポリエチレン、及び
(c)25℃に於ける粘度が500〜60,000cStであるポリジメチルシロキサン
を必須成分とするゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物であって、
スチレン/オレフィングラフトコポリマーを含まず、かつスチレン/オレフィンブロックコポリマーを含まず、かつエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を含まず、
ゴム変性ポリスチレン中に含まれるゴム状重合体がゴム変性ポリスチレン中に粒子状に分散しておりその分散粒子の平均粒子径が0.1〜1.5μmであり、
組成物がゴム状重合体を1〜15重量%、ポリエチレンを0.5〜5.0重量%、ポリジメチルシロキサンを0.02〜0.5重量%含有し、
組成物のアイゾット衝撃強度が10kg・cm/cm以上である
ことを特徴とするゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、優れた物性バランスを有するゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、スチレン系樹脂の耐衝撃性能を改善する為に樹脂中にゴム状重合体を分散粒子として含有したゴム変性スチレン系樹脂が大量に製造され、その製品は成形加工製品として広く使用されている。近年かかる製品の需要分野が拡大し、また従来以上の耐衝撃性能を要求する需要が高まっている。また更に成形加工製品の省コストの観点より従来より肉薄の製品で高剛性で且つ耐衝撃性能に不足のない製品が要求される様になっている。かかる耐衝撃性能の改善の為の一つの方法として有機ケイ素系添加剤を加える事を要件する方法が開示されている。例えば特開昭57-170950には、特定構造のゴムを使用したゴム変性スチレン系樹脂に有機ポリシロキサンを添加した組成物、特開昭61-85461には特定のゴム分散粒子径のゴム変性スチレン系樹脂に特定粘度のポリジメチルシロキサンを添加した組成物が開示されているが、特開昭57-170950の方法では特殊なゴムの使用という制約、特開昭61-85461の方法では衝撃強度の向上が十分でない。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】
先に述べた、優れた物性バランスを有するゴム変性ポリスチレンに対する市場の要望に合致するには優れた光沢、衝撃強度、耐熱性の物性バランスのゴム変性ポリスチレン樹脂が必要となる。光沢、衝撃強度、耐熱性の物性バランスの優れた安価なゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物を得ることが本発明の目的である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物は特定のゴムの分散粒子径を有するゴム変性ポリスチレンに特定のポリジメチルシロキサンとポリエチレンを組み合わせた添加したものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
即ち本発明は、(a)ゴム変性ポリスチレン、(b)ポリエチレン、及び(c)25℃に於ける粘度が500〜60,000cStであるポリジメチルシロキサンを必須成分とするゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物であって、スチレン/オレフィングラフトコポリマー又はスチレン/オレフィンブロックポリマーを含まず、ゴム変性ポリスチレン中に含まれるゴム状重合体がゴム変性ポリスチレン中に粒子状に分散しておりその分散粒子の平均粒子径が0.1〜1.5μmであり、組成物がゴム状重合体を1〜15重量%、ポリエチレンを0.5〜5.0重量%、ポリジメチルシロキサンを0.02〜0.5重量%含有することを特徴とする、ゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
本発明に用いるゴム変性ポリスチレンは、ゴム状重合体の存在下に芳香族モノビニル単量体を重合せしめる塊状重合法又は塊状懸濁重合法にて製造することができる。本発明に特定されたミクロ構造を有するゴム変性ポリスチレンは、重合工程における撹拌の状態、ゴム粒子生成時の混合状態などをコントロールすることにより製造することができる。芳香族モノビニル単量体としては、スチレン及びo-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等のアルキル置換スチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等のα-アルキル置換スチレンなどが用いられる。また、ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体等であり、ポリブタジエンとしてはシス含有量の高いハイシスポリブタジエン、シス含有量の低いローシスポリブタジエンともに用いることができる。製造されたゴム変性ポリスチレンは特定のミクロ構造を有していることが必要であり、ゴム状重合体が粒子状に分散しており、その平均粒子径が0.1〜1.5ミクロン、好ましくは0.2〜0.7ミクロンの範囲にあることが必要である。平均粒子径が0.1ミクロンより小さくなると衝撃強度が低下し、また1.5ミクロンより大きくなると光沢が低下して物性バランスが得られた樹脂が得られない。
【0007】
ここで云う平均粒子径とはゴム変性ポリスチレンの超薄切片法による透過型電子顕微鏡写真を撮影し、写真中のゴム状重合体粒子5000個の粒子径を測定して次式により算出したものである。
【0008】
【数1】

(ここにniは粒子径Diのゴム状重合体粒子の個数である。)ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、重合時の撹拌強度、用いるゴム状重合体の溶液粘度などにより左右され、これらを変更することにより調節することができる。
【0009】
ゴム状重合体のゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物中の含有量は1〜15重量%であり、1重量%未満では衝撃強度の改良効果が十分でなく、又15重量%を超えると光沢や流動状態が低下して好ましくない。
【0010】
本発明に使用するポリジメチルシロキサンは一般式
【化1】

で表わされる構造単位の繰り返し骨格を含む重合体であり、これらのポリジメチルシロキサンの末端あるいは分子鎖中にエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、フッ素、アルコキシ基、ビニル基;を導入した重合体があげられる。これらのポリジメチルシロキサンは単独であるいは二種以上を混合して用いられる。かかるポリジメチルシロキサンの分子量は特に限定するものではないが100〜30万程度のものが好ましく、液状のポリジメチルシロキサンであれば25℃の温度で500〜60,000cStの粘度のものが好ましく用いられる、低粘度のポリジメチルシロキサンを用いる場合は衝撃強度が低下し、高粘度の場合においては樹脂組成物中に均一に混合するのに問題が生じやすい。
【0011】
本発明に於てポリジメチルシロキサンの添加量はゴム変性スチレン系樹脂組成物の全量に対して0.02〜0.5重量%であることが必要である。ポリジメチルシロキサンの添加量が0.02重量%未満では衝撃強度の改善効果がなく、0.5重量%を越えると物性バランスを低下させる。
【0012】
本発明に使用するポリエチレンは、エチレンの重合体であり、例えば高密度ポリエチレン、超高分子量高密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、密度0.90未満の超低密度ポリエチレンやエチレンとプロピレン、他のα-オレフィン、不飽和カルボン酸またはその誘導体の中から選ばれる2種以上の化合物の共重合体、例えばエチレン/ブテン-1重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン/プロピン(ランダム、ブロック)共重合体、などを挙げることができ、これらの1種のみならず2種以上を併用することができる。これらのポリエチレンの内特に分岐状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0013】
本発明に於けるポリエチレンの添加量はゴム変性スチレン系樹脂組成物の全量に対して0.5〜5.0重量%であることが必要である。ポリエチレンの添加量が0.5重量%未満であれば衝撃強度の改良が十分でなく、5.0重量%を越えると剛性や耐熱性が低下し物性バランスが悪くなる。
【0014】
本発明に於ける有機ポリシロキサンやポリエチレンの添加方法は、任意の時点で行なわれ、重合を行う前の原料に対して添加したり、重合の途中の重合液に添加したり、重合終了後造粒工程で添加したり、混線機を用いて添加したり、成形機において添加したりすることにより本発明の組成物が形成される。
【0015】
また本発明の組成物にはスチレン系樹脂に用いられる熱、光、酸素に対する安定剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等を本発明の要件を満足する範囲において添加混合しても良い。
【0016】
【実施例】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を何等限定するものではない。また、以下の測定方法によって各物性値を測定した。
【0017】
(1)アイゾット衝撃強さ:JIS K6871に準じて測定
(2)表面光沢:JIS Z8741に準じて測定
(3)成形品外観:シリンダー温度250℃なるインラインスクリュー型射出成形機にて、金型温度を60℃として、縦50mm、横50mm、厚さ3mmなる板状の成形品を射出成形せしめることにより、得られる成形品を成形後直ちに恒温室(23℃)に一昼夜静置したのち成形品の外観を目視により、表面光沢の均一性を観察し、表面光沢が不均一と認められたものを「×」印で、均一と認められたものを「○」印で表示した。
【0018】
【実施例および比較例1〜4】
スチレンモノマーにポリブタジエンを溶解した溶液を攪拌下で重合し、その際の攪拌速度をコントロールすることによって得たゴムの分散粒子の平均粒子径が0.3μmで、セルラー構造を有し、樹脂中のポリブタジエン成分の含有量が5重量パーセントであるゴム変性ポリスチレンを得た。ここで得たゴム変性ポリスチレンに、ゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物に対してポリジメチルシロキサンを0.1重量%になるように加え、さらに、分岐状低密度ポリエチレンをゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物に対して1.5重量%になるように表-1に示す如く加え、ゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物を得た。該樹脂組成物のアイゾット衝撃強度、表面光沢、成形品外観を評価し、その結果を表-1に示す。ポリジメチルシロキサンの粘度が、500〜60,000cSt(センチストークス)の範囲にある時好ましいことがわかる。かつ、ポリエチレンの添加により形成品外観に優れ、また、アイゾット衝撃強度、表面光沢が向上することがわかる。
【0019】
【表1】

【0020】
【実施例4〜5および比較例5〜7】
実施例3のゴムの分散粒子の平均粒子径が0.3μmのゴム変性ポリスチレンの代わりに、ゴムの分散粒子の平均粒子径0.05μm、0.1μm、1.5μm、2.5μmのゴム変性ポリスチレンを用いて同様の評価をし、その結果を表-2に示す。ゴムの分散粒子の平均粒子径が0.1μmよりも小さい場合にはアイゾット衝撃強度が低下する。ゴム分散粒子の平均粒子径が1.5μmを超えると光沢が低下して好ましくない。また、ポリエチレンの添加により成形品外観、アイゾット衝撃強度、表面光沢が向上することがわかる。
【0021】
【表2】

【0022】
【実施例6および比較例8〜10】
実施例3のポリジメチルシロキサンを0.1重量パーセント加える代わりに、その添加量を0.01、0.2、1.5重量パーセントにすることによって同様の評価をし、その結果を表-3に示す。有機ポリシロキサンの添加量が0.01重量パーセントと少なくなると、アイゾット衝撃強度が低下して好ましくない。ポリジメチルシロキサンの添加量が、1.5重量パーセントと多くなると、成形品外観が悪くなり好ましくない。また、ポリエチレンの添加により成形品外観、アイゾット衝撃強度、表面光沢が向上することがわかる。
【0023】
【表3】

【0024】
【実施例7〜8および比較例11】
実施例3のポリエチレンの添加量を1.5重量パーセント加える代わりにその添加量を0.1、0.5、5.0重量パーセントにすることによって同様の評価をし、その結果を表-4に示す。ポリエチレンの添加量が0.5重量パーセントよりも少ない場合には、成形品外観が悪く、表面光沢、アイゾット衝撃強度の品質バランスが劣り好ましくない。
【0025】
【表4】

【0026】
【発明の効果】
本発明のゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物は、優れた表面光沢を示し、しかも極めて優れた耐衝撃性を有し、OA機器などの外装材料として要求される性能に優れたスチレン系樹脂組成物を提供することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-07-25 
出願番号 特願平4-145885
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 加賀 直人  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 藤原 浩子
石井 あき子
登録日 2002-12-20 
登録番号 特許第3382967号(P3382967)
権利者 シェブロン フィリップス ケミカル カンパニーエルピー
発明の名称 ゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物  
代理人 池田 幸弘  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 小堀 貞文  
代理人 池田 幸弘  
代理人 小堀 貞文  

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