• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 特123条1項8号訂正、訂正請求の適否  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 発明同一  H01L
管理番号 1132624
異議申立番号 異議2003-71538  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-12-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-13 
確定日 2006-02-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第3356921号「半導体装置およびその製造方法」の請求項1ないし20に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3356921号の請求項1ないし8、10ないし18に係る特許を取り消す。 同請求項9、19、20に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3356921号の発明についての出願は、平成7年10月6日(優先権主張、平成7年3月24日)の出願であって、平成14年10月4日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、重富久夫及び辻本貴士より特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年10月26日に訂正請求がなされ、さらに訂正拒絶理由が通知され、指定期間内である平成17年9月13日に意見書が提出されたものである。

II.訂正の適否について
1.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することであって、そして、訂正請求書の訂正事項a〜wの中には、以下の訂正事項d〜mを含むものである。
(1)訂正事項d
訂正前の請求項10(訂正前の請求項1〜9を引用する)において、訂正前の請求項1を引用する請求項10を独立形式にし、次のとおりに訂正する。
「【請求項10】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、感光性を有する第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、該第1の絶縁皮膜を露光・現像することにより、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、該配線パターン上に、感光性を有する第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、該第2の絶縁皮膜を露光・現像することにより、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されている半導体チップを複数、共通の基板上に搭載して備え、該複数の半導体チップのパッシべーション膜が形成された面上に共通の前記第1の絶縁皮膜が形成され、前記複数の半導体チップの所要の電極同士が前記配線パターンにより接続され、前記配線パターンを含む前記第1の絶縁皮膜の表面に共通の前記第2の絶縁皮膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。」
(2)訂正事項e
訂正前の請求項10において、訂正前の請求項2を引用する請求項10を、新たに請求項11として独立形式にし、次のとおりに訂正する。
「【請求項11】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、感光性を有する絶縁皮膜を介して配線パターンが多層に形成された半導体装置であって、前記各々の絶縁皮膜に、該絶縁皮膜を露光・現像することにより下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記電極を露出する透孔が形成され、該絶縁皮膜に、前記透孔を通して前記下層の配線パターンあるいは電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、最外層の絶縁皮膜に前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記外部接続端子接合部に外部接続端子が形成されている半導体チップを複数、共通の基板上に搭載して備え、該複数の半導体チップのパッシべーション膜が形成された面上に共通の絶縁皮膜が形成され、前記複数の半導体チップの所要の電極同士が前記配線パターンにより接続され、前記配線パターンを含む前記絶縁皮膜の表面に共通の絶縁皮膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。」
(3)訂正事項f
訂正前の請求項10において、訂正後の請求項1または2を引用する請求項10を、新たに請求項12として、次のとおりに訂正する。
「【請求項12】前記半導体チップを複数、共通の基板上に搭載して備え、該複数の半導体チップのパッシべーション膜が形成された面上に共通の絶縁皮膜が形成され、前記複数の半導体チップの所要の電極同士が前記配線パターンにより接続され、前記配線パターンを含む前記絶縁皮膜の表面に共通の絶縁皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。」
(4)訂正事項g
訂正前の請求項10において、請求項3または4を引用する請求項10を、新たに請求項13として、次のとおりに訂正する。
「【請求項13】前記半導体チップを複数、共通の基板上に搭載して備え、該複数の半導体チップのパッシべーション膜が形成された面上に共通の絶縁皮膜が形成され、前記複数の半導体チップの所要の電極同士が前記配線パターンにより接続され、前記配線パターンを含む前記絶縁皮膜の表面に共通の絶縁皮膜が形成されていることを特徴とする請求項3または4記載の半導体装置。」
(5)訂正事項h
訂正前の請求項10において、請求項5または6を引用する請求項10を、新たに請求項14として、次のとおりに訂正する。
「【請求項14】前記半導体チップを複数、共通の基板上に搭載して備え、該複数の半導体チップのパッシべーション膜が形成された面上に共通の絶縁皮膜が形成され、前記複数の半導体チップの所要の電極同士が前記配線パターンにより接続され、前記配線パターンを含む前記絶縁皮膜の表面に共通の絶縁皮膜が形成されていることを特徴とする請求項5または6記載の半導体装置。」
(5)訂正事項i
訂正前の請求項10において、請求項7または8を引用する請求項10を、新たに請求項15として、次のとおりに訂正する。
「【請求項15】前記半導体チップを複数、共通の基板上に搭載して備え、該複数の半導体チップのパッシべーション膜が形成された面上に共通の絶縁皮膜が形成され、前記複数の半導体チップの所要の電極同士が前記配線パターンにより接続され、前記配線パターンを含む前記絶縁皮膜の表面に共通の絶縁皮膜が形成されていることを特徴とする請求項7または8記載の半導体装置。」
(6)訂正事項j
訂正前の請求項10において、請求項9を引用する請求項10を、新たに請求項16として、次のとおりに訂正する。
「【請求項16】前記半導体チップを複数、共通の基板上に搭載して備え、該複数の半導体チップのパッシべーション膜が形成された面上に共通の絶縁皮膜が形成され、前記複数の半導体チップの所要の電極同士が前記配線パターンにより接続され、前記配線パターンを含む前記絶縁皮膜の表面に共通の絶縁皮膜が形成されていることを特徴とする請求項9記載の半導体装置。」
(7)訂正事項k
訂正前の請求項11において、訂正後の請求項1または2を引用する請求項11を、新たに請求項17として、次のとおりに訂正する。
「【請求項17】前記外部接続端子が、絶縁皮膜に形成された透孔の底面、内壁面および周縁部を被覆して形成されたランドを介して外部接続端子接合部に接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。」
(8)訂正事項l
訂正前の請求項11において、請求項3または4を引用する請求項11を、新たに請求項18として、次のとおりに訂正する。
「【請求項18】前記外部接続端子が、絶縁皮膜に形成された透孔の底面、内壁面および周縁部を被覆して形成されたランドを介して外部接続端子接合部に接続されていることを特徴とする請求項3または4記載の半導体装置。」
(9)訂正事項m
訂正前の請求項11において、請求項5〜10を引用する請求項11を、新たに請求項19として、次のとおりに訂正する。
「【請求項19】前記外部接続端子が、絶縁皮膜に形成された透孔の底面、内壁面および周縁部を被覆して形成されたランドを介して外部接続端子接合部に接続されていることを特徴とする請求項5〜16のいずれか一項記載の半導体装置。」

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無の存否について
上記訂正事項d〜mの内、訂正事項f、g〜i、k〜mについて、次に検討する。
(1)訂正事項fについて
本訂正事項は、訂正前の請求項1〜9を引用する請求項10に対して、訂正後の請求項1、2を引用する新たな請求項12とする訂正である。しかし、訂正前の請求項1、2を引用する請求項10は、訂正事項d、eにおいて、独立形式として訂正後の請求項10、11なっているから、本訂正による新たな請求項12は、新たに請求項が生じていることになる。
よって、当該訂正は特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないし、また訂正前の請求項10において、訂正後の発明を記載することが困難または不明りょうとなることから請求項数を増やさざるを得ないものにも該当していない。
(2)訂正事項g〜iについて
訂正事項g〜iは、訂正前の請求項1〜9を引用する請求項10に対して、請求項3、4を引用する新たな請求項13とする訂正(訂正事項g)、請求項5、6を引用する新たな請求項14とする訂正(訂正事項h)、及び請求項7、8を引用する新たな請求項15とする訂正(訂正事項i)であり、訂正事項g〜iにより請求項の数は増加していることになる。
よって、当該訂正は特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないし、また訂正前の請求項10において、訂正後の発明を記載することが困難または不明りょうとなることから請求項数を増やさざるを得ないものにも該当していない。
(3)訂正事項k〜mについて
訂正事項k〜mは、訂正前の請求項1〜10を引用する請求項11に対して、訂正後の請求項1または2を引用する新たな請求項17とする訂正(訂正事項k)、請求項3または4を引用する新たな請求項18とする訂正(訂正事項l)、及び請求項5〜16を引用する新たな請求項19とする訂正(訂正事項m)であり、訂正事項k〜mにより請求項の数は増加していることになる。
よって、当該訂正は特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないし、また訂正前の請求項11において、訂正後の発明を記載することが困難または不明りょうとなることから請求項数を増やさざるを得ないものにも該当していない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書第1号〜第3号の規定に適合しない。
よって、当該訂正は認められない。

III.異議申立について
1.本件発明
平成16年10月26日付の訂正請求は上記のとおり認められないから、本件特許の請求項1〜20に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明20」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜20に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、感光性を有する第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、該第1の絶縁皮膜を露光・現像することにより、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、該配線パターン上に、感光性を有する第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、該第2の絶縁皮膜を露光・現像することにより、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、感光性を有する絶縁皮膜を介して配線パターンが多層に形成された半導体装置であって、
前記各々の絶縁皮膜に、該絶縁皮膜を露光・現像することにより下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記電極を露出する透孔が形成され、該絶縁皮膜に、前記透孔を通して前記下層の配線パターンあるいは電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、最外層の絶縁皮膜に前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記外部接続端子接合部に外部接続端子が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、該配線パターン上に、第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記第2の絶縁皮膜の透孔から露出する外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプが形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、絶縁皮膜を介して配線パターンが多層に形成された半導体装置であって、
前記各々の絶縁皮膜に、下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記電極を露出する透孔が形成され、該絶縁皮膜に、前記透孔を通して前記下層の配線パターンあるいは電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、最外層の絶縁皮膜に前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記最外層の絶縁皮膜の透孔から露出する外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプが形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、ゴム状の弾性を有する第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、該配線パターン上に、ゴム状の弾性を有する第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、ゴム状の弾性を有する絶縁皮膜を介して配線パターンが多層に形成された半導体装置であって、
前記各々の絶縁皮膜に、下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記電極を露出する透孔が形成され、該絶縁皮膜に、前記透孔を通して前記下層の配線パターンあるいは電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、最外層の絶縁皮膜に前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記外部接続端子接合部に外部接続端子が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成されるとともに、コンデンサあるいは抵抗等の回路用素子が形成され、該配線パターン上に、第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、絶縁皮膜を介して配線パターンが多層に形成された半導体装置であって、
前記各々の絶縁皮膜に、下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記電極を露出する透孔が形成され、該絶縁皮膜に、前記透孔を通して前記下層の配線パターンあるいは電極に電気的に接続する配線パターンが形成されるとともに、コンデンサあるいは抵抗等の回路用素子が形成され、最外層の絶縁皮膜に前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面の、該パッシベーション膜の表面に金属層が形成され、該金属層上に、第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に前記電極を露出する透孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の半導体装置。
【請求項10】前記半導体チップを複数備え、該複数の半導体チップ面に共通の絶縁皮膜が形成され、前記複数の半導体チップの所要の電極同士が前記配線パターンにより接続され、前記配線パターンを含む前記絶縁皮膜の表面に共通の絶縁皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載の半導体装置。
【請求項11】前記外部接続端子が、絶縁皮膜に形成された透孔の底面、内壁面および周縁部を被覆して形成されたランドを介して外部接続端子接合部に接続されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項記載の半導体装置。
【請求項12】前記半導体チップの電極が形成された面と反対側の面にヒートシンクまたはヒートスプレッダーが固着されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項記載の半導体装置。
【請求項13】半導体チップが多数作り込まれたウェハーの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、感光性を有する第1の絶縁皮膜を形成し、該第1の絶縁皮膜を露光・現像することにより、第1の絶縁皮膜に前記電極を露出する透孔を形成し、次いで、第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンを形成し、該配線パターン上に、感光性を有する第2の絶縁皮膜を形成し、該第2の絶縁皮膜に、該第2の絶縁皮膜を露光・現像することにより、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔を形成し、該外部接続端子接合部に、外部接続端子を形成し、ウェハーを個片の半導体装置に分離することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】半導体チップが多数作り込まれたウェハーの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、感光性を有する絶縁皮膜を介して配線パターンを多層に形成し、前記配線パターンに電気的に接続して外部接続端子を形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離する半導体装置の製造方法であって、
前記各々の感光性を有する絶縁皮膜を露光・現像することにより下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記電極を露出する透孔を形成し、前記各々の絶縁皮膜に、前記透孔を通して下層の配線パターンあるいは電極に電気的に接続する配線パターンを形成し、最外層の絶縁皮膜に前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔を形成した後、前記外部接続端子接合部に外部接続端子を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】半導体チップが多数作り込まれたウェハーの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、第1の絶縁皮膜を形成し、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔を形成し、次いで、第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンを形成し、該配線パターン上に、第2の絶縁皮膜を形成し、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔を形成し、該第2の絶縁皮膜の透孔から露出する外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプを形成し、前記ウェハーを個片の半導体装置に分離することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】半導体チップが多数作り込まれたウェハーの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、絶縁皮膜を介して配線パターンを多層に形成し、前記配線パターンに電気的に接続して外部接続端子を形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離する半導体装置の製造方法であって、
前記各々の絶縁皮膜に、下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記電極を露出する透孔を形成し、前記絶縁皮膜に、前記透孔を通して下層の配線パターンあるいは電極に電気的に接続する配線パターンを形成し、最外層の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔を形成した後、該絶縁皮膜の透孔から露出する外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】半導体チップが多数作り込まれたウェハーの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、ゴム状の弾性を有する第1の絶縁皮膜を形成し、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔を形成し、次いで、第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンを形成し、該配線パターン上に、ゴム状の弾性を有する第2の絶縁皮膜を形成し、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔を形成し、該外部接続端子接合部に、外部接続端子を形成し、前記ウェハーを個片の半導体装置に分離することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】半導体チップが多数作り込まれたウェハーの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、ゴム状の弾性を有する絶縁皮膜を介して配線パターンを多層に形成し、前記配線パターンに電気的に接続して外部接続端子を形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離する半導体装置の製造方法であって、
前記各々のゴム状の弾性を有する絶縁皮膜に、下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記電極を露出する透孔を形成し、前記各々の絶縁皮膜に、前記透孔を通して下層の配線パターンあるいは電極に電気的に接続する配線パターンを形成し、最外層の絶縁皮膜に前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔を形成した後、前記外部接続端子接合部に外部接続端子を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】半導体チップが多数作り込まれたウェハーの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面の、該パッシベーション膜の表面に金属層を形成し、該金属層上に、第1の絶縁皮膜を形成し、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔を形成し、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンを形成し、該配線パターン上に、第2の絶縁皮膜を形成し、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔を形成し、該外部接続端子接合部に、外部接続端子を形成し、前記ウェハーを個片の半導体装置に分離することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】半導体チップが多数作り込まれたウェハーの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、絶縁皮膜を介して配線パターンを多層に形成し、前記配線パターンに電気的に接続して外部接続端子を形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離する半導体装置の製造方法であって、
前記パッシベーション膜の表面に金属層を形成し、該金属層上に、第1の絶縁皮膜を形成し、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔を形成し前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンを形成した後、該配線パターン上に、層間で配線パターンを電気的に接続して配線パターンを積層して形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。」

2.当審が通知した取消理由において引用した刊行物並びに先願、及びその記載事項
刊行物1:特開平5-218042号公報
(申立人重富久夫(以下、「申立人A」という)の甲第1号証)
刊行物2:特開昭64-61934号公報(申立人Aの甲第2号証)
刊行物3:特開平4-84452号公報(申立人Aの甲第3号証)
刊行物4:特開平1-209746号公報
(申立人A、及び辻本貴士(以下、「申立人B」という)の甲第4号証)刊行物5:特開平7-50280号公報(申立人Aの甲第5号証)
刊行物6:特開平1-196856号公報(申立人Bの甲第2号証)
刊行物7:特開平4-280458号公報(申立人Bの甲第3号証)
刊行物8:「マイクロエレクトロニクス パッケージング ハンドブック」 1991.3.27 日経BP社 (286〜289頁)
(申立人Bの参考資料1)
刊行物9:「VLSIパッケージング技術(下)」1993.5.31、日 経BP社(217頁、234頁)(申立人Bの参考資料2)
刊行物10:「電子材料 4月号」昭54.4.1、(株)工業調査会(1 04〜108頁)(申立人Bの参考資料3)
刊行物11:「VLSIパッケージング技術(下)」1993.5.31、 日経BP社(208〜209頁)(申立人Bの参考資料4)
刊行物12:「TAB技術入門」1990.1.25、(株)工業調査会( 26頁)(申立人Bの参考資料5)
先願:特願平7-49353号(特開平8-250498号公報参照)(申 立人Bの甲第1号証)

(1)刊行物1(特開平5-218042号公報)の記載事項
(1a)「【0008】本発明は、上記事情に対処してなされたもので、半導体装置の熱膨張係数と熱膨張係数が異なる実装用基板に、フリップチップ接続(実装)した場合でも、その後の熱ストレスにより電極バンプ部での破損,破断現象などが全面的に回避され、かつすぐれた放熱性を呈し、信頼性の高い機能を保持・発揮する半導体装置の提供を目的とする。」
(1b)「【0011】【作用】本発明に係る半導体装置においては、図1に要部構成例を断面的に示すごとく、第1のボンディングパッド8が配置された領域よりも内側で、かつ所要の半導体素子領域9aが形成されている領域面の絶縁層10b上に、露出して第2のボンディングパッド11が配置され、これらは前記絶縁層10bおよび層間絶縁層10aを介して、たとえば多層的に配設された配線12で接続されている。つまり、実装用基板7面にフェースダウンで実装・接続される電極バンプ13は、半導体基板9′の半導体素子領域9aが形成されている領域面上に配置された構成を成しているため、実装用基板7面に対する接続に関与する領域面(接続に要する実効面積)が低減された形となる。・・・」
(1c)「【0017】先ず、所要の半導体領域9aが所定面に形設された半導体基板9′を用意し、前記半導体領域9aの各半導体素子を接続する所要の配線,半導体領域9aの外周部への対応する第1ボンディングパッド8形成,パッシベーション膜14の形成を行う。その後、前記パッシベーション膜14上に、たとえばポリイミド前駆体・・・をスピンコートし、選択露光,現像液・・・による現像処理を施して、前記第1ボンディングパッド8面を開口・露出させてから、・・・加熱しポリイミド前駆体・・・をイミド化させて第1の絶縁層10aを形成する(図3)。
【0018】次に、前記形成した第1の絶縁層10a面上に、たとえば蒸着法によってAl/Ti層を全面的に被着・形成してから、この・・層上にエッチングレジスト・・をスピンコートし、・・選択露光,現像処理を施して、前記第1ボンディングパッド8に接続するエッチングレジストパターンを形成する。こうして、所要のエッチングレジストパターンを形成した後、・・・Al層を、・・・Ti層を順次エッチングしてから、エッチングレジストを剥離・除去して配線12を形成する(図4)。
【0019】前記配線12を形成した上に、前記の第1の絶縁層10aを形成する手段に準じて、第2の絶縁層10bを形成する。この第2の絶縁層10b形成に当たっては、前記配線12にそれぞれ接続する形で、所要のスルホールを形成する。しかる後、この第2の絶縁層 10b面上に、前記配線12を形成する手段に準じて、・・・第2の配線パターン12′を形成する(図5)。
【0020】次いで、前記第2の配線パターン12′形成面上に、前記の第1の絶縁層10aを形成する手段に準じて、第3の絶縁層10cを形成する。この第3の絶縁層10c形成に当たっては、前記半導体領域9a面上に位置する領域で、第2の配線パターン12′の少なくとも一部がそれぞれ露出する形に(第2のボンディングパッド11を成す)スルホールを形成する(図6)。
【0021】前記第2のボンディングパッド11面を、・・・露出させて第3の絶縁層10cを設けた後、この第3の絶縁層10c面上に、Cu/Ti層15を蒸着法によって全面的に被着・形成してから(図7)、厚膜レジスト・・・をスピーンコートし、・・・レジスト層を形成して、・・選択露光,現像処理を施して、前記第2のボンディングパッド11面に対応するCu/Ti層15領域を、・・・露出させる(図8)。
【0022】このようにして、第2ボンディングパッド11にに対応する開口領域・・・よりも小さな寸法でレジスト層16を開口・・・させた半導体基板9′を、・・・銅・・・メッキする(バリアメタル層の形成)。
【0023】その後、・・・合金(半田)を・・・連続メッキして電極バンプ13を形成する(図9)。
【0024】上記により第2のボンディングパッド(領域)11面上に、・・電極バンプ13を形成した後、この半導体基板9′面を・・・レジスト層16を除去してから(図10)、・・電極バンプ13をマスクとして、・・・・・・エッチング除去後、・・・、所望の半導体装置9を得ることができる(図11)。」

(2)刊行物2(特開昭64-61934号公報)の記載事項
(2a)「本発明は、・・・フリップチップタイプの半導体装置、及びその半導体装置の・・・製造方法を提供する事を目的としている。」(2頁右下欄6〜11行)
(2b)「まず同図(a)に示すように、従来と同様にして半導体基板1内に半導体素子を形成し、その表面には複数の電極部パッド2、及びパッシべーション膜3を形成してワイヤボンドタイプの半導体装置を構成する。・・・次工程として第1図(b)示すように、そのパッシベーション膜3の表面を平坦化する。・・・そして、ホトエッチング工程により複数の電極部パッド2のうち特定の電極部パッド2上の絶縁膜4を選択的に除去してスルーホール5を開ける。・・・そして、このスルーホール5を介して電極部パッド2と電気接続するようにしてAl等の導体材料による配線層6を・・形成し、引続き、ホトエッチング工程により所定のパターンに形成する。・・・ 次に、同図(c)に示すように、この状態の表面に・・・パッシベーション膜7を堆積し、ホトエッチング工程により配線層6上の所定の位置を開口する。そして、図示はしないが、その開口部を含むようにして、・・・バリヤメタルを蒸着し、引続き、Cu、・・等の半田とのぬれ性の良い金属を蒸着する。その後、レジストを塗布しホトエッチング工程によりそのレジストを選択的に除去する。そうした上でCuのめっきを行いバンプ9を形成する。そして、レジストを剥離し、バリヤメタル及び半田とのぬれ性の良い金属をエッチングすることにより本実施例の半導体装置を構成する。」(3頁右上欄19行〜4頁左上欄7行)

(3)刊行物3(特開平4-84452号公報)の記載事項
「第1図において、31は樹脂基板であり、表面側にはリード電極33が形成されるとともに、リード電極33にワイヤーボンディングされたICチップ35が搭載されている。リード電極33は樹脂基板31を貫通するスルーホール電極34を介して裏面側のリード電極32と電気的に接続されている。樹脂基板31の裏面側には、リード電極32の一部分のみが露呈するようにシート状のレジスト38が設けられている。リード電極32の露呈した部分はコンタクト電極として使用され、このコンタクト電極32にはハンダボールを入れてリフローすることにより電極37が形成されている。」(3頁左上欄18行〜右上欄11行)

(4)刊行物4(特開平1-209746号公報)の記載事項
(4a)「本発明は半導体装置に関し、特にはんだバンプ電極を有するフリップチップ型の半導体装置に関する。」(1頁左下欄14〜16行)
(4b)「第1図は本発明の第1の実施例の断面図である。
半導体装置は、シリコン基板1の表面のAl電極2の上に、第1導電層5と第2ポリイミド層6と第2導電層7の多層配線層を介してはんだバンプ10を接続するバリアメタル層9を形成している。
第1導体層5はAl電極2の上から横の第1ポリイミド層の上に延び、そこで第2導体層7とP面で接続し、Al電極2とバリアメタル層9はジグザグに接続され、機械的にも柔い構造である。
ポリイミドは耐熱性を有し、微細パターン化の可能な樹脂として広く用いられているが、無機材料、金属材料に比較して弾性係数が約2桁低いために発生する応力は小さいものとなる。
また、他から加わる応力を吸収する効果も生じる。
本実施例では、この低応力樹脂であるポリイミド層をはんだバンプ10の下方に厚く形成している。
樹脂層と導体層の層数を増減することにより所望の厚みを設定できる。
ポリイミドの場合、その弾性率と膜厚によって応力が異なってくるが・・・、適度な応力吸収の効果を得、かつポリイミドそのものから発生する応力の影響を受けぬ様にするためには、ポリイミドの膜厚は20〜200μmぐらいが適切である。
通常、ポリイミドの場合、・・・十分な厚みを得るためには本実施例のように多層構造にする必要がある。
また、各導体層は、・・・形成可能な単層又は多層構造とすることができる。」(2頁左上欄18行〜左下欄13行)
(4c)第1図には、シリコン基板1の、Al電極2を露出してパッシべーション膜3が形成された面上に、第1ポリイミド層4、該第1ポリイミド層に、前記電極を露出する開口が形成され、前記開口を通して前記電極に接続する第1導体層5、第2ポリイミド層6、前記第2ポリイミド層の表面に前記第1導体層に接続する第2導体層7、該第2導体層上に、第3ポリイミド層8、前記第3のポリイミド層の開口から露出するハンダバンプ接合部に、ハンダバンプ10が形成されていることが示されている。

(5)刊行物5(特開平7-50280号公報)の記載事項
(5a)「【0009】【実施例】・・・図1は、本発明の第1の実施例の製造工程フローを示す工程断面図である。まず、半導体基板の一主面に素子、配線およびバンプ2を形成したウェハ1を作る〔図1(a)〕。次に、ウェハ1を半導体チップ3に切断する〔図1(b)〕。さらにα線遮蔽用兼表面保護用のシリコン樹脂フィルム4をチップ表面に接着する〔図1(c)〕。・・」
(5b)「【0011】図3は、本発明の第3の実施例の製造工程フローを示す工程断面図である。まず、半導体基板の一主面に素子、配線およびバンプ2が形成されたウェハ1を用意し〔図3(a)〕、ウェハ状態のまま各チップ上に、α線遮蔽用兼表面保護用のシリコン樹脂フィルム4を接着する〔図3(b)〕。次に、このウェハ1の裏面を、間隙zをもつ研削装置にて研削して、トータル厚zのウェハを得る〔図3(c)〕。続いて、ウェハ1をダイシングしてトータル厚zの半導体チップ3を得る〔図3(d)〕。」

(6)刊行物6(特開平1-196856号公報)の記載事項
(6a)「[1]電極(2)および表面安定化膜(3)が形成されてなる半導体ウエーハ(1)上に、高分子化合物よりなる膜(4)を形成し、
半導体ウエーハ(1)をチップに分割するダイシングライン(1D)に沿い、各ダイシングライン(1D)の隣接する交点間の一部領域(16)を除いた領域に形成される十字型のパターン(17)と、前記電極(2)に対接する領域に形成されるパターン(18)とを有する第1のマスク(15)を使用して、前記高分子化合物よりなる膜(4)をパターニングし、前記高分子化合物よりなる膜(4)の前記電極(2)に対応する領域に開口(5)を形成し、前記ダイシングライン(1D)上の一部領域(16)を除く領域において前記高分子化合物よりなる膜(4)を除去して、溝(19)を形成し、
金属膜(6)を形成し、該金属膜(6)をパターニングして前記電極(2)に接する領域からバンプ形成領域に延在する金属膜(6)を残留し、その上に高分子化合物膜(7)を形成し、
前記第1のマスク(15)と同一の十字型のパターン(17)と、バンプ形成領域に対応する領域にパターンを有する第2のマスクを使用して、前記高分子化合物よりなる膜(7)をパターニングし、前記高分子化合物よりなる膜(7)の、前記ダイシングライン(1D)上の一部領域(16)を除く領域に溝(19a)を形成し、また、バンプ形成領域に開口(8)を形成し、
バリアメタル膜(9)と、その上に、レジスト膜(10)を形成し、パターニングしてバンプ形成領域の前記レジスト膜(10)に開口(11)を形成し、
該開口(11)において露出している前記レジスト膜(10)をマスクとしてメッキをなして、前記開口(11)上に前記バリアメタル膜(9)に接触してバンプ(12)を形成し、前記レジスト膜(10)およびバンプ形成領域以外の前記バリアメタル膜(9)を除去する工程を有する
ことを特徴とする、半導体装置用バンプ形成方法。
[2]前記高分子化合物はポリイミド、または、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項第1項記載の半導体装置用バンプ形成方法。」(特許請求の範囲)

(7)刊行物7(特開平4-280458号公報)
(7a)「【0030】図6は、上記パッド7の近傍の断面図である。例えばp形のシリコン単結晶からなるチップ4の主面には、抵抗R、nチャネル形MISFETQ1、pチャネル形MISFETQ2などの回路素子が形成されている。上記抵抗R、nチャネル形MISFETQ1およびpチャネル形MISFETQ2は、例えばメモリLSIの入力回路を構成している。
【0031】上記抵抗Rは、例えばn形半導体領域9aからなる。・・・抵抗Rおよびnチャネル形MISFETQ1の一対のn形半導体領域9bは、p形シリコンの主面にそれぞれ形成され、pチャネル形MISFETQ2の一対のp形半導体領域11は、n形ウエル12の主面に形成されている。
【0032】上記抵抗Rには、絶縁膜13に開孔された接続孔14を通じて一対のAl配線8,8が接続されている。上記一対のAl配線8,8の一方は、パッド7および接続孔5を通じて入力信号用のリード配線3に接続されており、もう一方のAl配線8は、・・・ゲート電極10に接続されている。すなわち、リード配線3は、接続孔5、パッド7、Al配線8および抵抗Rを通じてメモリLSIの入力回路に接続されている。」
(7b)「【0040】このように、本実施例によれば、下記のような効果を得ることができる。
・・・
【0042】(2).パッケージ本体1および突起2をゴム状弾性体で構成したことにより、チップ4と基板17との熱膨張係数差に起因する応力をパッケージ本体1および突起2が吸収、緩和するので、チップ4と基板17との間の接続信頼性が向上する。」

(8)刊行物8(「マイクロエレクトロニクス パッケージング ハンドブック」)の記載事項
(8a)「ベル研究所の手法は,チップのジャンクションを保護するためにチップ上に窒化シリコンのパッシべーション層を使用し,さらに内部接続が腐食しないように金線とビーム・リードを使用することであった。IBM社の手法はガラス・パシベーションの薄い層でチップ表面とアルミニウム系配線部を保護する。チップとパッケージとの接続は,ハンダ・バンプで行なった。」(286頁下から11〜7行)
(8b)図6-3(a)には、Al-Cu配線とハンダバンプとを、Cr,Cr-Cu相、Cu-Sn金属間化合物の3層構造のランドを介して接続することが示されている(288頁)。

(9)刊行物9(「VLSIパッケージング技術(下)」)の記載事項
図16.1.2には、Si基板上に多層配線層を設け、最外層の絶縁層に開口を設けて、開口にハンダ・バンプを設け、さらに信号1層目と信号2層目とが、ビアを通して電気的に接続された構造が示されている(217頁)。

(10)刊行物10(「電子材料 4月号」)の記載事項
図3には、LSIチップと抵抗チップとに亘って共通の樹脂層(絶縁層)を設けた構造が示されている(106頁)。

(11)刊行物11(「VLSIパッケージング技術(下)」の記載事項
図15.3.13には、LSIチップを配線が形成された面とは反対側の面において、Al製放熱フィンに接着した構造が示されている(209頁)。

(12)刊行物12( 「TAB技術入門」)の記載事項
図3.2には、「通常ウエハ」に「バンプ形成」し、その後「プロービング」、「ダイシング」の各工程を経るTAB技術のプロセスが示されている(26頁)。

(13)先願の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)(特開平8-250498号公報)の記載事項
(13a)「【請求項3】パッドを有する半導体素子上に、回路基板と電気的・機械的に接続されるバンプを形成する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体素子上に第一の層間絶縁層を形成し、かつ該第一の層間絶縁層の、前記パッドの直上部を開口して該パッドを露出させる第一工程と、前記第一の層間絶縁層上に、前記パッドより半導体素子上のバンプ形成位置まで延びたパターンの配線部を形成する第二工程と、前記配線部を覆って前記第一の層間絶縁層上に第二の層間絶縁層を形成し、かつ該第二の層間絶縁層の、前記バンプ形成位置の直上部を開口して前記配線部を露出させる第三工程と、前記半導体素子の、第二の層間絶縁層を形成した側の面に導電層を形成する第四工程と、前記導電層上にめっきレジスト層を形成し、かつ前記バンプ形成位置の直上部を開口して前記導電層を露出させる第五工程と、前記半導体素子のめっきレジスト層側を電解液中に浸漬し、通電することによって前記バンプ形成位置の直上部にバンプを形成する第六工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。」(特許請求の範囲)
(13b)「【0024】・・・請求項3記載の製造方法に基づいて説明する。まず、図2(a)に示すように、Al等からなるパッド12を有した半導体素子11を用意する。なお、図2(a)においてはパッド12を一つしか示していないものの、半導体素子11は、前述したように多数のパッド12を有して・・・いる。
【0025】次に、前記半導体素子11の、パッド12を形成した側の面上に、図2(b)に示すように第一の層間絶縁層13を形成し、さらに該第一の層間絶縁層13の、前記パッド12の直上部を開口して該パッド12を露出させる開口部13aを形成する。具体的には、例えば感光性ポリイミド・・・を半導体素子11上にスピンコートして・・絶縁層を得、これを・・・プリベーク処理して第一の層間絶縁層13とする。そして、予め用意した露光マスクを用い、これを通して露光しさらに現像処理することにより、図2(b)中二点鎖線で示す部分を除去してパッド12の上面を露出させる開口部13aを形成する。
【0026】次いで、図2(c)に示すように前記第一の層間絶縁層12上に、パッド10より半導体素子11上のバンプ形成位置まで延びたパターンの配線部14を形成する。・・・・
【0027】次いで、得られた配線部14を覆って前記第一の層間絶縁層13上に、図2(d)に示すように第二の層間絶縁層15を形成し、さらに該第二の層間絶縁層の、前記バンプ形成位置の直上部を開口して前記配線部14を露出させる開口部16を形成する。具体的には、例えば感光性ポリイミド・・・を第一の層間絶縁層13上にスピンコートして厚さ5μm程度の絶縁層を得、これを100℃で2分間プリベーク処理して第二の層間絶縁層15とする。そして、予め用意した露光マスクを用い、これを通して露光しさらに現像処理することにより、・・円状の開口面を有する開口部16を形成する。」

3.当審の判断
(1)本件発明1について
1)特許法第29条第1項違反
上記刊行物1に記載の第1、2の絶縁層は、摘記(1c)によれば、ポリイミド前駆体に選択露光、現像処理を施してスルホールを形成しているから、この第1、2の絶縁層は、感光性を有することは明らかであって、刊行物1の記載事項を総合すると、刊行物1には、「半導体基板の所定面に形設された半導体領域の、第1のボンディングパッドを露出してパッシべーション膜が形成された面上に、感光性を有する第1の絶縁層が形成され、該第1の絶縁層に、該第1の絶縁層を露光・現像することにより、前記第1のボンディングパッドを露出するスルホールが形成され、前記第1の絶縁層の表面に、前記開口を通して前記第1のボンディングパッドに電気的に接続する配線パターンが形成され、該配線パターン上に、感光性を有する第2の絶縁層が形成され、該第2の絶縁層に、該第2の絶縁層を露光・現像することにより、該配線パターンの第2のボンディングパッドを露出するスルホールを形成し、その後、第2のボンディングパッド面上に連続メッキにより電極バンプが形成されているフリップチップ接続の半導体装置」(以下、「刊行物1発明1」という。)が記載されていることになる。

そこで、本件発明1と「刊行物1発明1」とを対比すると、刊行物1発明1の「半導体基板」、「第1の絶縁層」、「第2の絶縁層」、「第1(第2)のボンディングパッド」、「電極バンプ」は、本件発明1の「半導体チップ」、「第1の絶縁皮膜」、「第2の絶縁皮膜」、「電極」、「外部接続端子」に相当しているから、両者は、「半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、感光性を有する第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、該第1の絶縁皮膜を露光・現像することにより、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、該配線パターン上に、感光性を有する第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、該第2の絶縁皮膜を露光・現像することにより、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されている半導体装置」の点で一致し、相違する点はない。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明である。

2)特許法第29条の2違反
上記先願明細書には、摘記(13b)によれば、第一(第二)の層間絶縁層を感光性ポリイミドをスピンコートし、露光、現像処理することが記載されているから、先願明細書の記載事項を総合すると、先願明細書には、「パッドを有する半導体素子上に、回路基板と電気的・機械的に接続されるバンプを形成した半導体装置であって、前記半導体素子上に感光性を有する第一の層間絶縁層を形成し、かつ該第一の層間絶縁層の、前記パッドの直上部を開口して該パッドを露出させ、前記第一の層間絶縁層上に、前記パッドより半導体素子上のバンプ形成位置まで延びたパターンの配線部を形成し、前記配線部を覆って前記第一の層間絶縁層上に感光性を有する第二の層間絶縁層を形成し、かつ該第二の層間絶縁層の、前記バンプ形成位置の直上部を開口して前記配線部を露出させ、前記半導体素子の、第二の層間絶縁層を形成した側の面に導電層を形成し、前記導電層上にめっきレジスト層を形成し、かつ前記バンプ形成位置の直上部を開口して前記導電層を露出させ前記バンプ形成位置の直上部にバンプを形成した半導体装置」(以下、「先願発明」という。)が記載されていることになる。

そこで、本件発明1と「先願発明」とを対比すると、先願発明の「半導体素子」、「第一の層間絶縁層」、「第二の層間絶縁層」、「パターンの配線部」、「バンプ」は、本件発明1の「半導体チップ」、「第1の絶縁皮膜」、「第2の絶縁皮膜」、「配線パターン」、「外部接続端子」に相当し、両者は、「半導体チップの、電極が露出した面上に、感光性を有する第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、該第1の絶縁皮膜を露光・現像することにより、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、該配線パターン上に、感光性を有する第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、該第2の絶縁皮膜を露光・現像することにより、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されている半導体装置」の点で一致するものの、本件発明1は、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、第1の絶縁皮膜が形成されているのに対し、先願発明は、パッシべーション膜が形成されていることが不明である点で相違する。
しかしながら、半導体素子の基板上にパッシべーション膜を形成した後、第1の絶縁皮膜を形成することは周知のことであり、新たな効果を奏するものでもないから、本件発明1は、先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。また、本件発明1の発明者が先願明細書に記載された発明者と同一であるとも、また本件出願の時において、本件出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められない。

(2)本件発明2について
摘記(1c)によれば、上記刊行物1には、第1の絶縁層上に配線、第2の絶縁層、第2の配線パターン、第3の絶縁層が形成されているから、上記刊行物1の記載事項を総合すると、刊行物1には、「半導体基板の所定面に形設された半導体領域の、第1のボンディングパッドを露出してパッシべーション膜が形成された面上に、感光性を有する絶縁層を介して配線パターンが2層に形成された半導体装置であって、前記各々の絶縁層に、絶縁層を露光・現像することにより下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記第1のボンディングパッドを露出するスルホールあるいは開口が形成され、該絶縁層に、前記スルホールあるいは開口を通して前記下層の配線パターンあるいは第1のボンディングパッドに電気的に接続する配線パターンが形成され、第3の絶縁層に前記配線パターンの第2のボンディングパッドを露出するスルホールが形成され、前記第2のボンディングパッドに電極バンプが形成されているフリップチップタイプの半導体装置」(以下、「刊行物1発明2」という。)が記載されていることになる。

本件発明2と「刊行物1発明2」とを対比すると、刊行物1発明2の「2層」、「第3の絶縁層」は、本件発明2の「多層」、「最外層の絶縁皮膜」に相当するものであるから、両者は、相違する点はない。
したがって、本件発明2は、刊行物1に記載された発明である。

(3)本件発明3について
上記刊行物2の記載事項を総合すると、刊行物2には、「半導体素子を形成した半導体基板1の表面に、電極部パッド2を露出してパッシべーション膜3が形成された面上に絶縁膜4が形成され、該絶縁膜に、前記電極部パッドを露出するスルーホール5が形成され、前記絶縁膜の表面に、前記スルーホールを通して前記電極部パッドに電気的に接続する配線層6が形成され、該配線層上にパッシべーション膜7が形成され、該パッシべーション膜に、前記配線層のバンプ接合部を露出する開口が形成され、前記パッシべーション膜の開口から露出するバンプ接合部に、めっきによるバンプ9が形成されているフリップチップタイプの半導体装置」(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていることになる。
また、上記刊行物4の記載事項を総合すると、刊行物4には、「シリコン基板1の、Al電極2を露出してパッシべーション膜3が形成された面上に、第1ポリイミド層4が形成され、該第1ポリイミド層に、前記電極を露出する開口が形成され、前記第1ポリイミド層の表面に、前記開口を通して前記電極に接続する第1導体層5が形成され、該第1導体層が形成された面上に、第2ポリイミド層6が形成され、該第2ポリイミド層に、前記第1導体層を露出する開口が形成され、前記第2ポリイミド層の表面に、前記開口を通して前記第1導体層に接続する第2導体層7が形成され、該第2導体層上に、第3ポリイミド層8が形成され、該第3ポリイミド層に、前記第2導体層のハンダバンプ接合部を露出する開口が形成され、前記第3のポリイミド層の開口から露出するハンダバンプ接合部に、ハンダバンプ10を形成されているフリップチップ型の半導装置」(以下、「刊行物4発明」という。)が記載されていることになる。

1)「刊行物1発明1」、「刊行物2発明」との対比
本件発明3と「刊行物1発明1」又は「刊行物2発明」とを対比すると、刊行物1発明1、刊行物2発明の半導体装置は、いずれもフリップチップ型半導体装置であって、刊行物1発明1、刊行物2発明の半導体基板は本件発明3の半導体チップに相当しているから、両者は、それぞれ「半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、該配線パターン上に、第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記第2の絶縁皮膜の透孔から露出する外部接続端子接合部に、バンプが形成されている半導体装置」の点で一致するものの、次の点で相違する。
相違点1:本件発明3は、外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプが形成されているのに対し、刊行物1発明1、刊行物2発明のバンプはそのようなものではない点。

上記相違点1について検討する。外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプを形成することは、例えば、特開平4-280633号公報(請求項1、図4及びその説明参照。)には、ベアチツプの電極上へのはんだボールを溶融してはんだボールを形成すること、特開昭62-25435号公報(従来技術欄(1頁右欄13行〜2頁右上欄19行参照。)には、シリコンウエハにボンデイング用バンプを金属ボール法で形成することが記載されているように周知のことである。よって、刊行物1発明1、刊行物2発明のバンプを、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローして形成したバンプとすることは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明3は、刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2)「刊行物4発明」との対比
本件発明3と「刊行物4発明」とを対比すると、刊行物4発明の半導体装置はフリップチップ型半導体装置であって、刊行物4発明のシリコン基板は本件発明3の半導体チップに相当しているから、両者は、「半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、該配線パターン上に、第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、第3の絶縁皮膜の透孔から露出する外部接続端子接合部に、バンプが形成されている半導体装置」の点で一致するものの、次の点で相違する。
相違点2:本件発明3は、外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプが形成されているのに対し、刊行物4発明のハンダバンプはそのようなものではない点。
相違点3:本件発明3は、配線パターン上に、第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記第2の絶縁皮膜の透孔から露出する外部接続端子接合部に、バンプが形成されているのに対し、刊行物4発明のポリイミド層は3層構造であり、導体層は2層構造である点。

相違点2については、上記1)の相違点1で判断したと同じであるので、上記相違点3について検討する。
刊行物4発明の3層構造のポリイミド層、2層構造の導体層を、本件発明3と同様に、2層構造のポリイミド層、1層構造の導体層とするようなことは、必要とされる配線構造に応じて容易に設計できる程度の事項にすぎない。
したがって、本件発明3は、刊行物4に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明2において、「感光性を有する絶縁皮膜」を「絶縁皮膜」とすると共に、「絶縁皮膜を感光・露光すること」を省き、「外部接続端子」の形成を「はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプが形成されている」と限定する発明である。
そこで、本件発明4と「刊行物1発明2」又は「刊行物4発明」とを対比すると、刊行物1発明2の半導体装置は3層の絶縁層を介して配線パターンを2層に形成したものであって、多層の半導体装置に相当し、また、刊行物4発明の半導体装置も3層のポリイミド層を介して導体層を2層に形成したものであって、多層の半導体装置に相当するものである。
そうすると、両者は、「半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、絶縁皮膜を介して配線パターンが多層に形成された半導体装置であって、前記各々の絶縁皮膜に、下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記電極を露出する透孔が形成され、該絶縁皮膜に、前記透孔を通して前記下層の配線パターンあるいは電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、最外層の絶縁皮膜に前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記外部接続端子接合部に外部接続端子が形成されている半導体装置」の点で一致するものの、次の点で相違する。
相違点4:本件発明4は、外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプが形成されているのに対し、刊行物1発明2の電極バンプ、刊行物4発明のハンダバンプはそのようなものではない点。

上記相違点4について検討すると、相違点4は、上記「(3)本件発明3について、1)」の相違点1で判断したと同じである。
したがって、本件発明4は、刊行物1、4に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明3において、「第1(第2)の絶縁皮膜」を「ゴム状の弾性を有する第1(第2)の絶縁皮膜」とすると共に、外部接続端子の形成である「はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプが形成されている」を単に「外部接続端子」の形成とする発明である。
そうすると、本件発明5と「刊行物4発明」とを対比すると、両者は、「半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、最外層の絶縁皮膜に配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記外部接続端子接合部に外部接続端子が形成されている半導体装置」の点で一致するものの、次の点で相違する。
相違点5:本件発明5の第1の絶縁皮膜、2の絶縁皮膜はゴム状の弾性を有するのに対し、刊行物4発明のポリイミド層はゴム状の弾性を有することが不明である点。
相違点6:本件発明5は、配線パターン上に、第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されているのに対し、刊行物4発明のポリイミド層は3層構造であり、導体層は2層構造である点。

上記相違点5、6について検討する。
相違点5について:刊行物4には、摘記(4b)によれば、ポリイミドが微細パターン化の可能な樹脂として広く用いられており、無機材料、金属材料に比較して弾性係数が約2桁低いために、発生する応力は小さいものとなり、他から加わる応力を吸収する効果も生じる旨記載されているから、該ポリイミド樹脂を、ゴム状の弾性を有するものとすることは当業者ならば容易に想到し得ることである。
相違点6について:上記「(3)本件発明3について、2)」相違点3の検討において判断したように、2層構造のポリイミド層、1層構造の導体層とするようなことは、必要とされる配線構造に応じて容易に設計できる程度の事項にすぎない。
したがって、本件発明5は、刊行物4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5において、「ゴム状の弾性を有する絶縁皮膜を介して配線パターン」が「多層に形成され」ていることを限定する発明である。
本件発明6と「刊行物4発明」とを対比すると、刊行物4発明の半導体装置も3層のポリイミド層を介して導体層を2層に形成したものであって、多層の半導体装置に相当しているから、両者は、「半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、絶縁皮膜を介して配線パターンが多層に形成された半導体装置であって、前記各々の絶縁被膜に、下層の配線パターンと接続する部位あるいは前記電極を露出する透孔が形成され、該絶縁皮膜に、前記透孔を通して前記下層の配線パターンあるいは電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、最外層の絶縁皮膜に前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記外部接続端子接合部に外部接続端子が形成されている半導体装置」の点で一致するものの、次の点で相違する。
相違点7:本件発明6の第1、2の絶縁皮膜はゴム状の弾性を有するのに対し、刊行物4発明のポリイミド層はゴム状の弾性を有することが不明である点。

上記相違点7について検討すると、上記「(5)本件発明5について」の相違点5おいて判断したように当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明6は、刊行物4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明7について
上記刊行物6の記載事項を総合すると、刊行物6には、「チップに分割される半導体ウエハ(1)の、電極(2)を露出して表面安定化膜(3)が形成された面上に、第1の高分子化合物よりなる膜(4)が形成され、該第1の高分子化合物よりなる膜に、前記電極を露出する開口(5)が形成され、前記第1の高分子化合物よりなる膜の表面に、前記開口を通して前記電極に電気的に接続するパターニングされた金属膜(6)が形成され、該金属膜上に、第2の高分子化合物よりなる膜(7)が形成され、該第2の高分子化合物よりなる膜に、前記金属膜のバンプ形成領域を露出する開口(8)が形成され、該バンプ形成領域に、バンプ(12)が形成されている半導体装置」(以下、「刊行物6発明」という。)が記載されていることになる。

そこで、本件発明7と「刊行物6発明」とを対比すると、刊行物6発明の「表面安定化膜」、「バンプ形成領域」は、本件発明7の「パッシべーション膜」、「外部接続端子接合部」に相当しているから、両者は、「半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に、前記電極を露出する透孔が形成され、前記第1の絶縁皮膜の表面に、前記透孔を通して前記電極に電気的に接続する配線パターンが形成されるとともに、該配線パターン上に、第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されている半導体装置」の点で一致するものの、次の点で相違する。
相違点8:本件発明7は、第1の絶縁皮膜の表面に、コンデンサあるいは抵抗等の回路用素子が形成されるのに対し、刊行物6発明の第1の高分子化合物よりなる膜の表面にはこのような素子は形成されていない点。

上記相違点8について検討すると、半導体チップ表面上に配線を形成したものにおいて、配線内にコンデンサ、抵抗等の回路素子を配置するようなことは、例えば、特開昭63-13371号公報(1頁従来の技術欄参照)、特開平6-37251号公報(従来の技術欄参照)に示されるように周知の技術にすぎないから、刊行物6発明の第1の高分子化合物よりなる膜の表面に、配線パターンとともにコンデンサあるいは抵抗等の回路要素子を形成することは当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明7は、刊行物6に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8)本件発明8について
本件発明8と「刊行物4発明」とを対比すると、刊行物4発明の半導体装置も3層のポリイミド層を介して導体層を2層に形成したものであって、多層の半導体装置に相当しているから、両者は、「半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面上に、絶縁皮膜を介して配線パターンが多層に形成された半導体装置であって、前記各々の絶縁皮膜に、下層の配線パターンと接続する部位あるいは電極に電気的に接続する配線パターンが形成され、最外層の絶縁皮膜に前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に外部接続端子が形成されている半導体装置」の点で一致するものの、次の点で相違する。
相違点9:本件発明8は、絶縁皮膜に、コンデンサあるいは抵抗等の回路用素子が形成されるのに対し、刊行物4発明の第1ポリイミド層の表面にはこのような素子は形成されていない点。

上記相違点9について検討すると、上記「(7)本件発明7」の相違点8において判断したように、配線パターンとともにコンデンサあるいは抵抗等の回路要素子を形成することは当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明8は、刊行物4に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1〜8を引用する発明であって、本件発明1〜8の発明特定事項をすべて含み、さらに、「半導体チップの、電極を露出してパッシベーション膜が形成された面の、該パッシベーション膜の表面に金属層が形成され、該金属層上に、第1の絶縁皮膜が形成され、該第1の絶縁皮膜に前記電極を露出する透孔が形成されている」点を発明特定事項としているので、この点について検討する。

1)「先願発明」との対比
本件発明9と上記「先願発明」とを対比する。上記本件発明9の「金属層」は、半導体チップに形成された回路を紫外線から保護する紫外線遮蔽層として作用するものであって、先願明細書に記載の発明には、上記の点については何も記載されていないし示唆もされていない。また、チップ上のパッシべーション膜の表面に上記金属層を形成することは周知の技術であるとすることもできない(なお、本件発明1と先願発明との対比において例示した、刊行物8に記載のチップ上のパッシべーション膜の表面に形成された金属は、多層配線の一部であって、本件発明9の「金属層」とは認められない。)。
したがって、本件発明9は、先願発明と同一であるとすることはできない。

2)刊行物1、2、4、及び6に記載の発明との対比
本件発明9と上記刊行物1、2、4、及び6に記載の発明とを対比すると、刊行物1、2、4、及び6には、チップ上のパッシべーション膜の表面に金属層を形成することは何も記載されていないし示唆もされていない。また、チップ上のパッシべーション膜の表面に金属層を形成することは周知の技術であるとすることもできないから、上記の点は当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、本件発明9は、上記した点により特許明細書に記載された効果を奏しているものである。
したがって、本件発明9は、刊行物1、2、4、及び6に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(10)本件発明10について
本件発明10は、本件発明1〜9を引用する発明であって、本件発明1〜9のいずれかの発明の特定事項をすべて含み、更に、「半導体チップを複数備え、該複数の半導体チップ面に共通の絶縁皮膜が形成され、前記複数の半導体チップの所要の電極同士が配線パターンにより接続され、前記配線パターンを含む前記絶縁皮膜の表面に共通の絶縁皮膜が形成されている」点を特定事項としているので、この点について検討する。
刊行物10に記載のように、複数の半導体チップ面に共通の絶縁被膜を形成することは周知の技術である。(必要ならば、特開昭62-211988号公報、特開昭63-66499号公報、特開平6-29355号公報も参照されたい。)
そうすると、刊行物1、2に記載の半導体素子、刊行物4に記載のシリコン基板、及び刊行物6に記載のチップに上記周知の技術を適用して、上記の点とすることは当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明1〜8を引用する本件発明10は、刊行物1、2、4、及び6に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(11)本件発明11について
本件発明11は、本件発明1〜10を引用する発明であって、本件発明1〜10のいずれかの発明の特定事項をすべて含み、さらに、「外部接続端子が、絶縁皮膜に形成された透孔の底面、内壁面および周縁部を被覆して形成されたランドを介して外部接続端子接合部に接続されている」点を特定事項としているので、この点について検討する。
刊行物8に記載のように、外部接続端子(ハンダパッド)をランドを介して外部接続端子接合部(電極)に接続することは周知の技術であるから、刊行物1、2に記載の半導体素子、刊行物4に記載のシリコン基板、及び刊行物6に記載のチップに上記周知の技術を適用して、上記の点とすることは当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明1〜8、10を引用する本件発明11は、刊行物1、2、4、並びに6に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(12)本件発明12について
本件発明12は、本件発明1〜11を引用する発明であって、本件発明1〜11のいずれかの発明の特定事項をすべて含み、さらに、「半導体チップの電極が形成された面と反対側の面にヒートシンクまたはヒートスプレッダーが固着されている」点を特定事項としているので、この点について検討する。
刊行物11に記載のように、半導体チップの電極が形成された面と反対側の面にヒートシンク、ヒートスプレッダを接着することは周知の技術であるから、刊行物1、2に記載の半導体素子、刊行物4に記載のシリコン基板、及び刊行物6に記載のチップに上記周知の技術を適用して、上記の点とすることは当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明1〜8、10、11を引用する本件発明12は、刊行物1、2、4、並びに6に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(13)本件発明13について
本件発明13は、本件発明1の半導体装置の製造方法として、本件発明1において「半導体チップが多数作り込まれたウェハー」を用い、外部接続端子を形成した後「ウェハーを個片の半導体装置に分離する」ことを特定する発明である。そこで、本件発明13と「刊行物1発明1」とを対比すると、次の点で相違している。
相違点10:本件発明13は、半導体チップが多数作り込まれたウェハーに、第1、2の絶縁被膜、配線パターン、外部接続端子などを形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離するものであるのに対し、刊行物1発明1は、半導体チップに、第1、2のボンディングパッド、配線パターン、電極バンプなどを形成するものである点。

上記相違点10について検討すると、刊行物6には、半導体ウエハ上にバンプを形成した後、半導体ウエハをダイシングして各半導体チップに分割分離することが開示され、しかも、半導体ウエハを各半導体チップに分割分離してから半導体ウエハに種々の加工を施すか、半導体チップが多数作り込まれた半導体ウエハに種々の加工を施してから各半導体チップに分離分割するかは容易に選択できる程度の事項にすぎないから、刊行物1に記載のように、半導体ウエハを半導体チップに分離分割した後、半導体チップに加工を施すものに替えて、半導体チップが多数作り込まれた半導体ウエハに加工を施した後、ダイシングして、各半導体チップに分離分割することは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明13は、刊行物1、6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(14)本件発明14について
本件発明14は、本件発明2の半導体装置の製造方法として、本件発明2において「半導体チップが多数作り込まれたウェハー」を用い、外部接続端子を形成し後「ウェハーを個片の半導体装置に分離する」ことを特定する発明である。そこで、本件発明13と「刊行物1発明2」とを対比すると、次の点で相違している。
相違点11:本件発明14は、半導体チップが多数作り込まれたウェハーに、第1、2の絶縁被膜、配線パターン、外部接続端子などを形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離するものであるのに対し、刊行物1発明2は、半導体チップに、第1、2のボンディングパッド、配線パターン、電極バンプなどを形成するものである点。

上記相違点11について検討すると、上記「(13)本件発明13について」の相違点10において判断したように、半導体チップが多数作り込まれた半導体ウエハに加工を施した後、ダイシングして、各半導体チップに分離分割することは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明14は、刊行物1、6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(15)本件発明15について
本件発明15は、本件発明3の半導体装置の製造方法として、本件発明3において「半導体チップが多数作り込まれたウェハー」を用い、外部接続端子を形成し後「ウェハーを個片の半導体装置に分離する」ことを特定する発明である。
1)「刊行物1発明1」又は「刊行物2発明」との対比
本件発明15と「刊行物1発明1」又は「刊行物2発明」とを対比すると、次の点で相違している。
相違点12:本件発明15は、外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプを形成したのに対し、刊行物1発明1、刊行物2発明のバンプはそのようなものではない点。
相違点13:本件発明15は、半導体チップが多数作り込まれたウェハーに、第1の絶縁皮膜、第2の絶縁皮膜、配線パターン、外部接続端子などを形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離するものであるのに対し、刊行物1発明1は、半導体チップに、第1、2の絶縁層、配線パターン、電極バンプなどを形成するものであり、刊行物2発明は、半導体チップに、絶縁膜、パッシべーション膜、配線層、バンプなどを形成するものである点。

上記相違点12、13について検討する。
相違点12については、上記「(3)本件発明3について 1)」の相違点1において判断したように、はんだボールをリフローして形成したバンプを採用する程度のことは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
相違点13については、上記「(13)本件発明13について」の相違点10において判断したように、半導体チップが多数作り込まれた半導体ウエハに加工を施した後、ダイシングして、各半導体チップに分離分割することは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明15は、刊行物1、2、並びに6に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2)「刊行物4発明」との対比
本件発明15と「刊行物4発明」とを対比すると、次の点で相違する。
相違点14:本件発明15は、外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプが形成されているのに対し、刊行物4発明のバンプはそのようなものではない点。
相違点15:本件発明15は、配線パターン上に、第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、前記第2の絶縁皮膜の透孔から露出する外部接続端子接合部に、バンプが形成されているのに対し、刊行物4発明のポリイミド層は3層構造であり、導体層は2層構造である点。
相違点16:本件発明15は、半導体チップが多数作り込まれたウェハーに、第1、2の絶縁被膜、配線パターン、外部接続端子などを形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離するものであるのに対し、刊行物4発明は、半導体チップに、絶縁膜、パッシべーション膜、配線層、バンプなどを形成するものである点。

上記相違点14〜16について検討する。
相違点14については、上記「(3)本件発明3について 1)」の相違点1において判断したように、はんだボールをリフローして形成したバンプを採用する程度のことは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
相違点15については、上記「(3)本件発明3について 2)」の相違点3において判断したように、2層構造のポリイミド層、1層構造の導体層とするようなことは、必要とされる配線構造に応じて容易に設計できる程度の事項にすぎない。
相違点16については、上記「(13)本件発明13について」の相違点10において判断したように、半導体チップが多数作り込まれた半導体ウエハに加工を施した後、ダイシングして、各半導体チップに分離分割することは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明15は、刊行物4、6に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(16)本件発明16について
本件発明16は、本件発明3の半導体装置の製造方法として、本件発明4において「半導体チップが多数作り込まれたウェハー」を用い、外部接続端子を形成し後「ウェハーを個片の半導体装置に分離する」ことを特定する発明である。そして、本件発明16と「刊行物1発明2」又は「刊行物4発明」とを対比すると、次の点で相違している。
相違点17:本件発明16は、外部接続端子接合部に、はんだボールを配置し、該はんだボールをリフローすることにより、外部接続端子としてのバンプを形成するのに対し、刊行物1発明2、刊行物4発明のバンプはそのようなものではない点。
相違点18:本件発明16は、半導体チップが多数作り込まれたウェハーに、第1、2の絶縁被膜、配線パターン、外部接続端子などを形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離するものであるのに対し、刊行物1発明2は、半導体チップに、第1、2の絶縁層、配線パターン、電極バンプなどを形成するものであり、刊行物4発明は、半導体チップに、絶縁膜、パッシべーション膜、配線層、バンプなどを形成するものである点。

上記相違点17、18について検討する。
相違点17については、上記「(3)本件発明3について 1)」の相違点1において判断したように、はんだボールをリフローして形成したバンプとすることは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
相違点18については、上記「(13)本件発明13について」の相違点10において判断したように、半導体チップが多数作り込まれた半導体ウエハに加工を施した後、ダイシングして、各半導体チップに分離分割することは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明16は、刊行物1、4、並びに6に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(17)本件発明17について
本件発明17は、本件発明5の半導体装置の製造方法として、本件発明5において「半導体チップが多数作り込まれたウェハー」を用い、外部接続端子を形成し後「ウェハーを個片の半導体装置に分離する」ことを特定する発明である。そして、本件発明17と「刊行物4発明」とを対比すると、次の点で相違している。
相違点19:本件発明17の第1の絶縁皮膜、第2の絶縁皮膜はゴム状の弾性を有するのに対し、刊行物4発明のポリイミド層はゴム状の弾性を有することが不明である点。
相違点20:本件発明17は、配線パターン上に、第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されているのに対し、刊行物4発明のポリイミド層は3層構造であり、導体層は2層構造である点。
相違点21:本件発明17は、半導体チップが多数作り込まれたウェハーに、第1の絶縁皮膜、第2の絶縁皮膜、配線パターン、外部接続端子などを形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離するものであるのに対し、刊行物4発明は、半導体チップに、第1、2、3ポリイミド層、第1、2導体層、ハンダバンプなどを形成するものである点。

上記相違点19〜21について検討する。
相違点19については、上記「(5)本件発明5について」の相違点5おいて判断したように、当業者ならば容易に想到し得ることである。
相違点20については、上記「(3)本件発明3について 2)」の相違点3おいて判断したように、2層構造のポリイミド層、1層構造の導体層とするようなことは、必要とされる配線構造に応じて容易に設計できる程度の事項にすぎない。
相違点21については、上記「(13)本件発明13について」の相違点10において判断したように、半導体チップが多数作り込まれた半導体ウエハに加工を施した後、ダイシングして、各半導体チップに分離分割することは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明17は、刊行物1、4、並びに6に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(18)本件発明18について
本件発明18は、本件発明6の半導体装置の製造方法として、本件発明6において「半導体チップが多数作り込まれたウェハー」を用い、外部接続端子を形成し後「ウェハーを個片の半導体装置に分離する」ことを特定する発明である。そして、本件発明18と「刊行物4発明」とを対比すると、次の点で相違している。
相違点22:本件発明18の第1の絶縁皮膜、第2の絶縁皮膜はゴム状の弾性を有するのに対し、刊行物4発明のポリイミド層はゴム状の弾性を有することが不明である点。
相違点23:本件発明18は、半導体チップが多数作り込まれたウェハーに、第1、2の絶縁被膜、配線パターン、外部接続端子などを形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離するものであるのに対し、刊行物4発明は、半導体チップに、第1、2、3ポリイミド層、第1、2導体層、ハンダバンプなどを形成するものである点。

上記相違点22、23について検討する。
相違点22については、上記「(5)本件発明5について」の相違点5おいて判断したように、当業者ならば容易に想到し得ることである。
相違点23については、上記「(13)本件発明13について」の相違点10において判断したように、半導体チップが多数作り込まれた半導体ウエハに加工を施した後、ダイシングして、各半導体チップに分離分割することは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明18は、刊行物4、6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(19)本件発明19、本件発明20について
本件発明19は、本件発明15の半導体装置の製造方法において、「パッシベーション膜の表面に金属層を形成」することを特定し、はんだボールをリフローすることにより外部接続端子としてのバンプ形成を、単に「外部接続端子を形成し」と特定する発明であり、又本件発明20は、本件発明16の半導体装置の製造方法において、「パッシベーション膜の表面に金属層を形成」することを特定し、はんだボールをリフローすることにより外部接続端子としてのバンプ形成を、単に「外部接続端子を形成し」と特定する発明である。そして、本件発明19と「刊行物4発明」とを対比すると、次の点で相違する。
相違点24:本件発明19は、パッシべーション膜の表面に金属層を形成し、該金属層上に、第1の絶縁皮膜を形成したのに対し、刊行物4発明のパッシべーション膜の表面には、金属層は形成されていない点。
相違点25:本件発明19は、配線パターン上に、第2の絶縁皮膜が形成され、該第2の絶縁皮膜に、前記配線パターンの外部接続端子接合部を露出する透孔が形成され、該外部接続端子接合部に、外部接続端子が形成されているのに対し、刊行物4発明のポリイミド層は3層構造であり、導体層は2層構造である点。
相違点26:本件発明19は、半導体チップが多数作り込まれたウェハーの第1の絶縁皮膜、第2の絶縁皮膜、配線パターン、外部接続端子などを形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離するものであるのに対し、刊行物4発明は、半導体チップに、第1、2、3ポリイミド層、第1、2導体層、ハンダバンプなどを形成するものである点。

又本件発明20と「刊行物4発明」とを対比すると、次の点で相違する。
相違点27:本件発明20は、パッシべーション膜の表面に金属層を形成し、該金属層上に、第1の絶縁皮膜を形成したのに対し、刊行物4発明のパッシべーション膜の表面には金属層は形成されていない点。
相違点28:本件発明20は、半導体チップが多数作り込まれたウェハーに、第1の絶縁皮膜、第2の絶縁皮膜、配線パターン、外部接続端子などを形成した後、ウェハーを個片の半導体装置に分離するものであるのに対し、刊行物4発明は、半導体チップに、第1、2、3ポリイミド層、第1、2導体層、ハンダバンプなどを形成するものである点。

上記相違点の内、相違点24、27について検討すると、上記「(9)本件発明9について 2)」において判断したように、刊行物1、2、4、6には、チップ上のパッシべーション膜の表面に金属層を形成することは何も記載されていないし示唆もされていない、また、チップ上のパッシべーション膜の表面に金属層を形成することは周知の技術であるとすることもできないから、上記の点は当業者が容易に想到し得ることではない。

したがって、本件発明19、20は、他の相違点について検討するまでもなく、刊行物1、2、4、6に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、その他の異議申立の証拠は、本件発明9、19、20を取り消すべき理由として採用することができない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明の特許については、特許法第29条第1項、及び同法第29条の2の規定に違反してされたものであり、また、請求項2に係る発明の特許については、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、さらに、請求項3〜8、10〜18に係る発明の特許については、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項9、19、20に係る発明の特許については、特許異議の申し立ての理由及び証拠によっては取り消すことはできないし、他に請求項9、19、20に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-12-26 
出願番号 特願平7-259861
審決分類 P 1 651・ 161- ZE (H01L)
P 1 651・ 113- ZE (H01L)
P 1 651・ 121- ZE (H01L)
P 1 651・ 831- ZE (H01L)
最終処分 一部取消  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
日比野 隆治
登録日 2002-10-04 
登録番号 特許第3356921号(P3356921)
権利者 新光電気工業株式会社
発明の名称 半導体装置およびその製造方法  
代理人 堀米 和春  
代理人 綿貫 隆夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ