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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1132629
異議申立番号 異議2003-72842  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-11-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-19 
確定日 2006-02-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第3414045号「ハイブリッド燃料電池発電装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3414045号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3414045号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成7年4月28日に特許出願され、平成15年4月4日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1、2に係る発明の特許について、木島睦也により特許異議の申立てがなされ、取消理由(平成17年2月28日付け)が通知されたが、その指定期間内に応答がなかったものである。

2.本件発明
本件請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という)は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載される次のとおりのものである。
「【請求項1】炭化水素系またはアルコール系の原燃料を水素と一酸化炭素を含むガスに改質する改質器と、空気中の酸素等を酸化剤ガスとして供給される第一の酸化剤極と第一の燃料極とを有する第一の燃料電池と、空気中の酸素等を酸化剤ガスとして供給される第二の酸化剤極と第二の燃料極とを有する固体高分子型燃料電池とを備え、前記改質器で改質されたガスが前記第一の燃料極に供給され水素と一酸化炭素の両方を燃料として発電し生成水を排出する前記第一の燃料電池と、前記第一の燃料極からの生成水を含む排出ガスが燃料ガスとして前記第二の燃料極に供給される前記固体高分子型燃料電池とを接続したハイブリッド燃料電池発電装置。
【請求項2】第一の燃料電池の第一の燃料極排出ガスを再度前記第一の燃料電池の第一の燃料極に供給し、利用されずに通り抜けた排出ガスを再供給して一酸化炭素を除去するためのリターン流路を備えた請求項1記載のハイブリッド燃料電池発電装置。」

3.特許異議の申立について
3-1.取消理由の概要
上記「2」に示される本件発明に対する当審の取消理由の概要は、次のとおりである。
「本件発明1、2は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(1)刊行物1:特開平4-87262号公報(異議申立人の提出した甲第2号証と同じ)
(2)刊行物2:特開平6-89735号公報(同甲第1号証と同じ)
(3)刊行物3:特開平4-253166号公報(同甲第3号証と同じ)」
3-2.当審の判断
取消理由において示した当審の判断は、以下のとおりである。
(1)本件発明1について
(i)刊行物1発明
刊行物1には、酸素イオン導電性電解質を用いた第1燃料電池と、この第1燃料電池の燃料側排ガスがガス改質装置を介して導入されるプロトン導電性電解質を用いた第2燃料電池とを具備する燃料電池発電システムが記載されている(特許請求の範囲)。ここで、ガス改質装置とは、PSA及びCOシフトコンバータを総称したものであって(第3頁左上欄第6〜7行参照)、上記燃料電池発電システムは、実施例1では、SOFC(第1燃料電池)に、燃料(例えばメタン)及び空気を夫々導入し、燃料側排ガスを、COシフトコンバータ及びその後流に設けられたPSAに送って水を除去することによりH2分を含む混合ガスとして、SPFC(第2燃料電池)に燃料として供給し、これとは別に導入された空気とによって水素を燃料として発電するものである(第2頁右上欄第11〜12行、右下欄第1行〜第3頁左上欄第5行等参照)。そうすると、上記燃料電池発電システムは、SOFCとSPFCとを接続したハイブリッド燃料電池発電装置といえるものである。さらに、刊行物1には、ガス改質装置は、PSA又はCOシフトコンバータいずれか一方を用いても実施例と同様な効果を有することが記載され(第3頁左上欄第17行〜右上欄第1行)、PSAのみをガス改質装置とした場合として、SOFCにて発生した排ガスに含まれる余剰燃料より水をドレン化又はPSAにて除去し、CO、CO2、H2を後流に設けたSPFCの燃料として導入することも記載されている(第2頁左下欄第1〜4行)。
これら刊行物1に記載される事項を整理すると、SOFC、SPFCはそれぞれ、固体電解質型燃料電池、固体高分子型燃料電池を指すから(要すれば、「OHM10月別冊 燃料電池発電システム」、オーム社、1992年、第156頁、第172頁参照)、刊行物1には、「空気中の酸素を酸化剤ガスとして供給される固体電解質型燃料電池(SOFC)と、空気中の酸素を酸化剤ガスとして供給される固体高分子型燃料電池(SPFC)とを備え、メタンを原燃料とする燃料ガスが燃料極に供給され水素を燃料として発電し生成水を排出する固体電解質型燃料電池と、前記固体電解質型燃料電池の燃料極からの生成水を含む排出ガスから生成水を除去し、この生成水を除去した排出ガスが燃料ガスとして燃料極に供給される固体高分子型燃料電池とを接続したハイブリッド燃料電池発電装置」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

(ii)対比
本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「固体電解質型燃料電池」は、本件発明1の「第一の燃料電池」に相当するし、刊行物1発明の固体電解質型燃料電池及び固体高分子型燃料電池はそれぞれ燃料ガスが供給される「燃料極」と、酸化剤ガスが供給される「酸化剤極」を有することは自明であって、刊行物1発明の固体電解質型燃料電池が有する「燃料極」、「酸化剤極」は、本件発明1の「第一の燃料極」、「第一の酸化剤極」に、また、刊行物1発明の固体高分子型燃料電池が有する「燃料極」、「酸化剤極」は、本件発明1の「第二の燃料極」、「第二の酸化剤極」にそれぞれ相当する。さらに、刊行物1発明における、固体電解質型燃料電池(第一の燃料電池)の燃料極(第一の燃料極)に供給される「メタンを原燃料とする燃料ガス」と、本件発明1における、第一の燃料極に供給される「改質器で改質されたガス」は、ともに燃料ガスといえるものである。
そうすると、両発明は、「空気中の酸素等を酸化剤ガスとして供給される第一の酸化剤極と第一の燃料極とを有する第一の燃料電池と、空気中の酸素等を酸化剤ガスとして供給される第二の酸化剤極と第二の燃料極とを有する固体高分子型燃料電池とを備え、燃料ガスが前記第一の燃料極に供給され水素を燃料として発電し生成水を排出する前記第一の燃料電池と、前記第一の燃料極からの排出ガスが燃料ガスとして前記第二の燃料極に供給される前記固体高分子型燃料電池とを接続したハイブリッド燃料電池発電装置」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、炭化水素系またはアルコール系の原燃料を水素と一酸化炭素を含むガスに改質する改質器を備え、改質器で改質されたガスが第一の燃料極に供給され、水素と一酸化炭素の両方を燃料として発電するのに対し、刊行物1発明は、このような改質器を備えることが明確でなく、第一の燃料極に供給された燃料ガスは水素を燃料とし発電する点。
相違点2:本件発明1は、第一の燃料極からの生成水を含む排出ガスが燃料ガスとして第二の燃料極に供給されるのに対し、刊行物1発明は、第一の燃料極からの生成水を含む排出ガスから生成水を除去し、この生成水を除去した排出ガスが燃料ガスとして第二の燃料極に供給される点。

(iii)相違点についての判断
(iii-1)相違点1について
第一の燃料電池(固体電解質型燃料電池)においては、原燃料(炭化水素系やアルコール系)を改質器により、水素と一酸化炭素とを含むガスに改質して、燃料ガスとして燃料極(アノード、第一の燃料極)に供給し、水素と一酸化炭素の両方を燃料として発電することは刊行物2にも記載されるように周知であるから(請求項1、【0002】、【0010】等参照)、刊行物1発明において、メタンの原燃料(炭化水素系原燃料)を水素と一酸化炭素とを含むガスに改質する改質器を備えたものとし、改質器で改質されたガスが第一の燃料極に供給されて、水素と一酸化炭素の両方を燃料として発電するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。
よって、本件発明1の相違点1に係る構成は、刊行物2の記載事項から当業者が適宜なし得ることである。

(iii-2)相違点2について
例えば、「OHM10月別冊 燃料電池発電システム」、オーム社、1992年、第172〜174頁に記載されるように、固体高分子型燃料電池においては、供給ガスの加湿により水管理を行うことは周知であるから、刊行物1発明において、第一の燃料電池の第一の燃料極からの排出ガス中の水分を除去することなく、固体高分子型燃料電池の燃料極に供給することにより、この水分を固体高分子型燃料電池の燃料ガスの加湿に利用することは、当業者が適宜なし得ることである。
よって、本件発明1の相違点2に係る構成は、周知の事項に基づいて当業者が適宜なし得ることである。

(iv)本件発明1についてのまとめ
以上に検討したように、本件発明1は、刊行物1、2に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において、第一の燃料電池(固体電解質型燃料電池)の第一燃料排出ガスを再度第一の燃料電池の第一の燃料極に供給し、利用されずに通り抜けた排出ガスを再供給して一酸化炭素を除去するためのリターン流路を備えることをさらに限定するものであるが、刊行物3には、固体電解質燃料電池(第一の燃料電池)の燃料極排出ガスを、使用済み燃料ガス再循環チャンネル(リターン流路)により再度燃料極に供給することが記載されており(段落【0013】、【0019】)、このように燃料極排出ガスを再度燃料極に供給することによって、利用されずに通り抜けた排出ガス中の一酸化炭素が除去されることは明らかである。
そうすると、刊行物1発明においても、リターン流路を設けて、本件発明2の上記のさらなる限定事項を備えたものとすることは、刊行物3に記載された事項に基づいて当業者が適宜なし得ることである。
よって、本件発明2は、刊行物1〜3に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである

4.むすび
以上のとおり、上記取消理由は妥当なものであるから、本件発明1、2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1、2についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-12-28 
出願番号 特願平7-105527
審決分類 P 1 652・ 121- Z (H01M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 原 賢一  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 吉水 純子
酒井 美知子
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3414045号(P3414045)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 ハイブリッド燃料電池発電装置  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  

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