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審決分類 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  E01F
審判 全部無効 2項進歩性  E01F
管理番号 1133139
審判番号 無効2005-80145  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-05-11 
確定日 2006-01-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3581645号発明「能動遮音壁及び能動遮音ユニット」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3581645号の請求項1〜12に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3581645号に係る発明は、平成12年10月4日に特許出願され、平成16年7月30日に特許権の設定登録がなされたものであって、その後の平成17年5月11日に阿部達より本件の請求項1〜13に係る発明の特許について特許無効の審判が請求され、これに対して被請求人より平成17年8月8日に答弁書及び訂正請求書が提出され、さらに、請求人より平成17年9月21日に弁駁書が提出されたものである。

2.訂正請求について
(1)訂正事項
本件特許の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、平成17年8月8日付け訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)によると、次の事項をその訂正内容とするものである。
(i)訂正事項a
特許第 3581645 号の特許請求の範囲における請求項1の「を具備する能動遮音壁」の後に、
『において、 前記騒音相殺音演算手段が、消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算するものである能動遮音壁』を加入する。
また、上記訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、本件特許明細書の段落【0009】 の「第2の発明に係る能動防音壁は、騒音相殺音演算手段が、」の後に、
『消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、』を加入する。

(ii)訂正事項b
旧請求項2を削除し、特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項3を請求項2 に繰り上げるとともに、「請求項1又は2に記載」とあるのを、『請求項1に記載』と訂正する。

(iii)訂正事項c
特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項4を請求項3 に繰り上げるとともに、「請求項3に記載」とあるのを、『請求項2に記載』と訂正する。

(iv)訂正事項d
特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項5を請求項4に繰り上げるとともに、「請求項1から4のいずれか」とあるのを、『請求項1から3のいずれか』と訂正する。

(v)訂正事項e
特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項6を請求項5に繰り上げるとともに、「請求項1から4のいずれか」とあるのを、『請求項1から3のいずれか』と訂正する。

(vi)訂正事項f
特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項7 を請求項6 に繰り上げるとともに、「請求項1から6のいずれか」とあるのを、『請求項1から5のいずれか』と訂正する。

(vii)訂正事項g
特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項8を請求項7に繰り上げるとともに、「請求項1から6のいずれか」とあるのを、『請求項1から5のいずれか』と訂正する。

(viii)訂正事項h
特許第 3581645 号の特許請求の範囲における請求項9の「前記騒音相殺音発生手段が、」の前に、
『音源の移動方向に平行に設置される防音壁と、 前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、 前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発生手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音壁において、』を加入する。
また、特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項9を請求項8に繰り上げるとともに、「複数配置される請求項1から 4のいずれか1項に記載の能動遮音壁」とあるのを、『複数配置される能動遮音壁』と訂正する。

(ix)訂正事項i
特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項10の「前記防音壁が、」の前に、
『 音源の移動方向に平行に設置される防音壁と、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、 前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発生手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音壁において、』を加入する。
また、特許第 3581645 号の特許請求の範囲における請求項10を請求項9に繰り上げるとともに、「具備する請求項1から9のいずれか1項に記載の能動遮音壁」とあるのを、『具備する能動遮音壁』と訂正する。

(x)訂正事項j
特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項11の「を具備する能動遮音ユニット」の後に、
『において、 前記騒音相殺音演算手段が、消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算するものである能動遮音ユニット』を加入する。
また、特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項11を請求項10 に繰り上げる。
また、上記訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、本件特許明細書の段落【0013】に「騒音相殺音演算手段と、を具備する。」とあるのを、
『騒音相殺音演算手段と、を具備し、前記騒音相殺音演算手段が、消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算するものである。』と訂正する。

(xi)訂正事項k
特許第 3581645 号の特許請求の範囲における請求項12を請求項11に繰り上げるとともに、「請求項11に記載」とあるのを、『請求項10に記載』と訂正する。

(xii)訂正事項l
特許第3581645号の特許請求の範囲における請求項13を請求項12に繰り上げるとともに、「請求項11に記載」とあるのを、『請求項10に記載』と訂正する。

(xiii)訂正事項m
特許第 3581645号の明細書の段落【0028】に、「放射される騒音相殺音の球面波の曲率は前述の実施形態の場合より大となり」とあるのを、『放射される騒音相殺音の球面波の曲率は前述の実施形態の場合より小となり』と訂正する。

(2)訂正の適否について
(イ)特許請求の範囲の訂正の適否
訂正事項a及び訂正事項jにおける特許請求の範囲の請求項1又は(訂正前の)請求項11についての訂正内容は、いずれも、訂正前の同請求項に記載された事項に、訂正前の請求項2に記載されていた事項に加えて「消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、」という限定事項をさらに加えるものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることが明らかであり、また、上記限定事項は、本件特許明細書の段落【0021】及び図4に関する記載事項から自明な事項であるといえるから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、訂正事項h及び訂正事項iにおける特許請求の範囲の(訂正前の)請求項9又は(訂正前の)請求項10についての訂正内容は、いずれも、訂正前に引用形式の請求項として記載されていたものを、独立形式の請求項として記載するものに変更するものであって、その記載事項を実質的に変更していないものであることが明らかである。
さらに、訂正事項b〜訂正事項lにおける請求項の項番を繰り上げる訂正及び引用する請求項の項番を変更する訂正は、いずれも、上記請求項1の訂正により訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、請求項の項番や引用する請求項の項番を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであることが明らかである。

そして、特許請求の範囲の上記訂正内容は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないといえる。

(ロ)発明の詳細な説明の記載の訂正の適否
訂正事項aの段落【0009】及び訂正事項jの段落【0013】の訂正内容は、上記特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであることが明らかである。
また、訂正事項mの段落【0028】の訂正内容は、技術的に見て明らかな誤記を訂正するものであるから、誤記の訂正を目的としたものといえる。
そして、発明の詳細な説明の上記訂正内容も、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないといえる。

したがって、上記訂正事項a〜mは、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とし、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2ただし書き及び同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.請求人の主張
審判請求人は、本件の請求項1〜13に係る発明は甲第1号証ないし甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件の請求項1〜13に係る発明の特許が特許法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものであると主張する。
(証拠)
甲第1号証:特公平7-82347号公報
甲第2号証:特開平10-268873号公報
甲第3号証:大西慶三、西村正治、「アクティブ・ノイズ・コントロールによる道路交通騒音対策の実情」、騒音制御、社団法人・日本騒音制御工学会、平成11年6月1日発行、第23巻、第3号、P153〜159
甲第4号証:K.Uesaka.H.Ohnishi,K.Hachimine,M.Nishimura,K.Ohnishi:ACTIVE CONTROL OF SOUND FROM A MOVING SOURCE, Proceedings of ACTIVE 97, ,1997 AUGUST 21-23,pp.1125-1134
甲第5号証:特開平9-119114号公報
甲第6号証:特開平9-54593号公報

4.被請求人の主張
被請求人は、答弁書において「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め」(答弁の趣旨)るとともに、同答弁書により、次のように主張する。
(1)訂正後の請求項1〜7及び10〜12に係る発明は、本件訂正により加えられた事項の構成が甲第1号証ないし甲第6号証に記載・示唆されていないから、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正後の請求項8に係る発明は、「前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線を中心に複数配置される」という構成が甲第1号証ないし甲第6号証に記載・示唆されていないから、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)訂正後の請求項9に係る発明は、「前記防音壁が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段より内側に上端を有する騒音回折壁をさらに具備する」という構成が甲第1号証ないし甲第6号証に記載・示唆されていないから、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.本件発明について
上記2.のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1〜12に記載された発明(以下順に、「本件発明1」〜「本件発明12」という。)は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認める。
(本件発明1)
「音源の移動方向に平行に設置される防音壁と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発生手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音壁において、
前記騒音相殺音演算手段が、消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算するものである能動遮音壁。」
(本件発明2)
「前記複数の騒音検出手段のなかの1個の騒音検出手段とそれに対応する前記騒音相殺音発生手段の1個がエンクロージャに格納される請求項1に記載の能動遮音壁。」
(本件発明3)
「前記エンクロージャの幅が、消音すべき騒音の最高周波数の波長の略1/2である請求項2に記載の能動遮音壁。」
(本件発明4)
「前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の少くとも前記防音壁側に騒音相殺音を放射する請求項1から3のいずれか1項に記載の能動遮音壁。」
(本件発明5)
「前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記防音壁外側に背面が向けられたスピーカである請求項1から3のいずれか1項に記載の能動遮音壁。」
(本件発明6)
「前記エンクロージャの奥行きが略500ミリメートル以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の能動遮音壁。」
(本件発明7)
「前記エンクロージャの奥行きが略250ミリメートル以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の能動遮音壁。」
(本件発明8)
「音源の移動方向に平行に設置される防音壁と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発生手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音壁において、
前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線を中心に複数配置される能動遮音壁。」
(本件発明9)
「音源の移動方向に平行に設置される防音壁と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発生手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音壁において、
前記防音壁が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段より内側に上端を有する騒音回折壁をさらに具備する能動遮音壁。」
(本件発明10)
「音源の移動方向に平行に設置される防音壁に取り付けられる騒音検出手段であって、前記音源の発生する騒音を検出するために前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
音源の移動方向に平行に設置される防音壁に取り付けられる騒音相殺音発生手段であって、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射するために前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に前記防音壁に沿って前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段及び前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音ユニットにおいて、
前記騒音相殺音演算手段が、消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算するものである能動遮音ユニット。」
(本件発明11)
「前記騒音相殺音発生手段を前記防音壁に取り付ける取り付け手段をさらに具備する請求項10に記載の能動遮音ユニット。」
(本件発明12)
「前記複数の騒音検出手段の中の1個とそれに対応する前記騒音相殺音発生手段の中の1個を格納する複数のエンクロージャと、
前記エンクロージャを前記防音壁に取り付ける取り付け手段と、をさらに具備する請求項10に記載の能動遮音ユニット。」

6.刊行物記載事項
(1)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第1号証の刊行物である特公平7-82347号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「能動制御型防音装置」の発明に関して、図面の第1図〜第9図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「本発明は変電所、工場、高速鉄道、高速道路などから発生される騒音を防ぐための防音塀又は壁と共に用いられる能動制御型防音装置に関する。」(公報第2頁第3欄第9〜11行)
(ロ)「本発明の目的は防音塀又は壁の新規な能動制御装置を提供するにある。…(中略)…上記目的を達成するため、第1の発明による能動制御型防音装置は、二次元の平面的広がりをもつ塀又は壁の上端エッジ近傍への騒音源からの入射音波を検出する第1の手段と、該手段の検出信号から上記入射音波の振幅及び位相を計算し、その計算値より上記入射音波を消去できる振幅を有する音波信号を生成する第2の手段と、該音波信号に応答して上記入射音波を消去する音波を放射する第3の手段と、を備え、第1及び第3の手段は上記塀又は壁に対し騒音源側に設けられたことを要旨とする。…(中略)…上述した各発明の構成によれば、騒音源からの入射音波による防音塀又は壁の上端エッジでの音場を、消去することができ、防音塀または塀背後での上記入射音波による音場を効果的に低減させることができる。」(公報第2頁第4欄第10〜44行)
(ハ)「第2図はかかる本発明の原理に基づく能動制御型防音装置の一実施例を示す。
同図において、1は防音塀Bの上端エッジ近傍に設置したマイクロホン、2は前置増幅器、3はディジタル・ジグナル・プロセッサー(DPS)、4は電力増幅器、5はスピーカ、6は効果評価用マイクロホン、7は前置増幅器、8は制御用コンピュータである。
また騒音源Sは防音塀Bの上端エッジEからある程度はなれた位置にあるとし、受音点Mは防音塀Bの背後Mにあるものとする。
マイクロホン1は騒音源Sから防音塀Bに対する入射音波を検出し、その検出信号がDPS3に入力される。DPS3はこの検出信号から上記入射音波の振幅と位相を瞬時に計算し、その計算値に基づいて前記式(6)の振幅を有する音波信号を生成し、エッジ近傍に設置されたスピーカ5に送って音波を騒音源Sに向けて放射し、エッジでの騒音ポテンシャルを消去する。
このようにして上述した装置により実時間計算により防音塀Bの上端エッジの騒音源Sからの入射音波を予測し、この予測値に基づいて付加音源から消去用の音波を発生させる訳であるが、更にこの消去の効果はエッジEに設けられた効果評価用マイクロホン6により確認しながら行なわれる。
即ち、マイクロホン6の出力信号は前置増幅器7を介してDPS3に入力され、DPS3ではこの出力信号に基づいて消去の効果を評価し、この効果が不充分の場合には前記音波信号を修正しながらエッジでの騒音ポテンシャルを消去して行く。制御用コンピュータ8はDPS3の動作を制御する。
なお、上記実施例において、付加音源としてのスピーカ5は必ずしもエッジEの近傍に設置する必要はないが、エッジEに近ければ近い程、スピーカ5からの放射音は小さくてよく、従ってその供給電力も少なくてすむことになる。」(公報第4頁第7欄第9〜42行)
(ニ)「実際の道路のように点状騒音源と見なせる車両が線状に並んでいる場合や、変電所のように比較的大きな騒音源がある場合でも、それら騒音源からの合成波を防音塀Bのエッジの近傍で計測し、防音塀B上端エッジでの騒音ポテンシャルを予測し、そのポテンシャルを打ち消す音波をスピーカーから放射すれば良く、基本的には円筒波の場合と同様である。実際には三次元音場であるので防音塀の長さ方向に沿ってある有限長の長さ毎に上記二次元音場での能動制御システムを用意し、エッジの音場を最小にすればよい。そのためには検出用及び評価用マイクロホンも付加音源としてのスピーカと同数必要となり、それらは複数組毎にコンピュータにより連動させ、エッジに沿った音場を消去するようにする。
第3図はかかる概念による実施例で、S1…SK…は線状に並んだ各点状騒音源、1-1,1-2,1-3,…1-k…は入射音波検出用マイクロホン、2-1,2-2,2-3,…2-k…は夫々の前置増幅器、4-1,4-2,4-3,……4-k……は電力増幅器、5-1,5-2,5-3,…5-k…は付加音源としてのスピーカ、6-1,6-2,6-3,…6-kは効果評価用マイクロホン、7-1,7-2,7-3,…7-k…は夫々の前置増幅器で、防音塀Bの上端エッジEの近傍に第2図に示す能動制御システムがエッジに沿って複数組並設される。各組のシステムは制御用コンピュータ8の制御に従って前述した消去動作を行なって各騒音源による防音塀上端エッジの騒音ポテンシャルを消去する。」(公報第4頁第7欄第43行〜第8欄第23行)
(ホ)「なお、上述した第2図及び第3図の実施例は騒音源が可変な場合でも充分対応できる構成であるが、ある程度固定的な場合は予め前記騒音消去用の音波信号を求めておくことができるので、第4図に示す非常に簡易な構成でも実用上かなりな効果が期待できる。
第4図において、10はスイッチ、11は音波信号発生装置で、この装置11はスイッチ10をオンにすると、予め計算された振幅を有する音波信号をスピーカ5に送り、エッジEでの騒音消去用の音波を放射する。この場合、装置11には手動ツマミ12を設けておき、ある程度、音波信号の振幅を可変できるようにしておくのがよい。
あるいは第5図に示す如く、マイクロホン1から出力される入射音波の検出信号をメーター13に表示させ、その表示値に応じて上記ツマミを調整してもよい。」(公報第4頁第8欄第24〜37行)
(ヘ)図面の第2図には、音源Sと防音塀Bの上端エッジEとを結ぶ直線上にマイクロフォン1とスピーカ5とを配置した態様が示されている。

上記記載事項(イ)〜(ホ)並びに図面に示された内容を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「二次元の平面的広がりをもつ防音塀Bの上端エッジE近傍への高速道路などから発生される騒音源Sからの入射音波を検出する防音塀Bの上端エッジ近傍に設置したマイクロホン1と、該マイクロホン1の検出信号から上記入射音波の振幅及び位相を計算し、その計算値より上記入射音波を消去できる振幅を有する音波信号を生成するディジタル・ジグナル・プロセッサー(DPS)3と、該音波信号に応答して上記入射音波を消去する音波を放射するスピーカ5と、上記上端エッジEに設けられた消去の効果を確認するための効果評価用マイクロホン6と備え、上記マイクロホン1及びスピーカ5は、上記騒音源Sと防音塀Bの上端エッジEとを結ぶ直線上に配置されるとともに、上記防音塀Bに対し騒音源S側に設けられた能動制御型防音装置であって、上記マイクロホン1、スピーカ5及び効果評価用マイクロホン6が上端エッジEに沿って複数組並設された能動制御型防音装置。」

(2)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第2号証の刊行物である特開平10-268873号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の能動騒音制御装置付き防音壁では以下の課題があった。図3に従来の防音壁の構成を示す。図でS1のみが騒音減であるときには、防音壁4の音源側の騒音検知用のリファレンスマイクAへの入射音波11を用いて、消音効果を確認するエラーマイクBの位置でS1からの音波21と逆位相の波をつくるため、点AおよびBまでの伝達経路21と11の距離の差などに対応する遅れ時間差と伝達特性差を補正する伝達特性補正回路52にて補正し、逆位相処理回路53で行いスピーカDより音波を放出すれば、点Bでの騒音を低減可能である。一方、高速道路や鉄道に従来の能動騒音制御装置を適用する場合には、図のS1とS2のような異なる位置の複数の騒音源に対して同時に対応することも必要である。このとき、防音壁4の音源側の騒音検知用のリファレンスマイクAでは入射音波11、12が合成された音を用いて、消音効果を確認するエラーマイクBの位置でS1およびS2からの音波21、22と逆位相の波をつくることが必要である。しかし、S1もしくはS2から点AおよびBまでの伝達経路21と11もしくは22と12の遅れ時間差は、S1とS2について一般には同一ではないので、S1とS2からの音波が合成された状態では伝達特性補正回路52で一律の遅れ時間差などの補正はできず、結果としてエラーマイク位置Bでの騒音を低減できないという問題点があった。」(公報第2頁第1〜2欄の段落【0003】)
(ロ)図面の図3には、スピーカの表記態様から見て、スピーカDを防音壁4の上端に向けて配置した態様が示されている。

(3)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第3号証の刊行物である「大西慶三、西村正治、「アクティブ・ノイズ・コントロールによる道路交通騒音対策の実情」、騒音制御、社団法人・日本騒音制御工学会、平成11年6月1日発行、第23巻、第3号、P153〜159」(以下、「刊行物3」という。)には、アクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)による道路交通騒音対策における騒音源が移動する場合の道路交通騒音へのANCの有効性に関して、「多チャンネル」制御によるものものではないシンプルな「単チャンネル制御」による移動音源に対する消音制御を用いたことが記載されている。

(4)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第4号証の刊行物である「K.Uesaka.H.Ohnishi,K.Hachimine,M.Nishimura,K.Ohnishi:Active control of sound from moving source, Proceedings of ACTIVE 97, pp.1125-1134」(以下、「刊行物4」という。)には、移動音源のANCシステム設計に関して、シングルチャンネルANCシステムを用いることが記載されている。

(5)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第5号証の刊行物である特開平9-119114号公報(以下、「刊行物5」という。)には、「能動音響制御装置」の発明に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「【発明の属する技術分野】本発明は高速道路や一般道路、鉄道等、或いは既設のフェンス、防音壁に付設されて騒音を低減する能動音響制御装置に係るものである。」(公報第2頁第2欄の段落【0001】)
(ロ)「【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態の第1例を示す。図1に示すように第1例の能動音響制御装置10は、防音壁9の上端に能動音響制御部7を設置して構成している。能動音響制御部7は、ケーシング6内に、音波発生器1,増幅器2,表面材3,音波検出器4及び制御回路5を一体に組み込んだ構成となっている。」(公報第4頁第5〜6欄の段落【0018】)
(ハ)「能動音響制御部7の幅Wについては制御しようとする音波の最短波長λo に対しW<λo /4程度であれば実用上十分である。また実際の能動音響制御装置10の構成としては図3に示すように、能動音響制御部7を防音壁9の上端長手方向に複数個配置する。各能動音響制御部7の間隔Bは能動音響制御部7の幅W程度とっておけば実用上十分である。各能動音響制御部7の間には互いに隣接する能動音響制御部7の音波発生器1の制御音波が他の能動音響制御部7の音波検出器4に悪影響を及ぼさないように仕切り板(例えば薄い鉄板等)を設けるのが望ましい。」(公報第6頁第9〜10欄の段落【0040】〜【0041】)
(ニ)「図6は本発明の実施の形態の第3例を示し、第1例に対し能動音響制御部7を音波の伝搬方向に対し平行及び直角に複数個配置したものである。なお8は保持具である。図7は第3例の派生型を示し、防音壁9の上端に音波の上流側・下流側の両側に制御部7を配置したものである。図8は第3例の派生型を示し、第1例に示した制御部7の代わりに第2例で示した制御部7を用いるものである。」(公報第7頁第11欄の段落【0043】)

(6)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第6号証の刊行物である特開平9-54593号公報(以下、「刊行物6」という。)には、「回折音抑制スピーカシステム」の発明に関して、スピーカエンクロージャーを用いたことが記載されている。

7.対比・判断
7-1 本件発明1
本件発明1と引用発明とを対比すると、その機能ないし構造からみて、引用発明における「高速道路などから発生される騒音源S」は本件発明1の「音源」に、引用発明の「防音塀B」は本件発明1の「防音壁」に、引用発明における「マイクロホン1」は本件発明1の「騒音検出手段」に、引用発明における「スピーカ5」は本件発明1の「騒音相殺音発生手段」に、引用発明における「ディジタル・ジグナル・プロセッサー(DPS)3」は本件発明1の「騒音相殺音演算手段」に、それぞれ相当するといえる。
また同様に、引用発明の「上記マイクロホン1及びスピーカ5は、上記騒音源Sと防音塀Bの上端エッジEとを結ぶ直線上に配置される」点は、本件発明1における「騒音検出手段」及び「騒音相殺音発生手段」が「前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される」点に相当するといえる。
さらに、引用発明における「マイクロホン1」及び「スピーカ5」を「上端エッジEに沿って複数組並設」した点は、本件発明1における「騒音検出手段」を「前記防音壁に沿って複数個設置」した点及び「騒音相殺音発生手段」を「前記騒音検出手段に対応して複数個設置」した点に相当するといえる。

してみると、両者は、
「音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発生手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音手段。」である点(以下、「一致点」という。)で一致し、次の点で相違するということができる。

(相違点1)
本件発明1は、「騒音検出手段」、「騒音相殺音発生手段」、「騒音相殺音演算手段」に加えて「音源の移動方向に平行に設置される防音壁」をも具備する「能動遮音壁」の発明として構成されているのに対して、引用発明は、このような防音壁までを具備しない「能動制御型防音装置」の発明である点。
(相違点2)
騒音相殺音演算手段に関して、本件発明1が「消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算するものである」のに対して、引用発明は、「上端エッジEに設けられた消去の効果を確認するための効果評価用マイクロホン6」を用いるとともに「マイクロホン1の検出信号から上記入射音波の振幅及び位相を計算し、その計算値より上記入射音波を消去できる振幅を有する音波信号を生成するディジタル・ジグナル・プロセッサー(DPS)3」を用いるものである点。

(相違点の検討)
そこで、上記の相違点1、2につき検討する。
(相違点1について)
ところで、引用発明の「能動制御型防音装置」が「高速道路など」の車輌の音源の移動方向に平行に設置される「防音塀B」に適用されるものであることは明らかである。
してみると、相違点1に係る本件発明1の構成は、引用発明の「能動制御型防音装置」を上述の「防音塀B」に実際に適用して能動遮音壁として構成することにより、当業者が容易に採用し得た実施の態様であるといえる。

(相違点2について)
本件発明1の「前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する」と規定した点は、その「線分内」の1点として「防音壁の上端」が含まれることが明らかである。
一方、引用発明は、「上端エッジEに設けられた消去の効果を確認するための効果評価用マイクロホン6」を備えることから、当該「上端エッジE」において騒音源の発生する騒音を相殺することを想定したものであることが明らかである(ちなみに、このことは、刊行物1の「壁の上端エッジでの音場を、消去することができ」るという記載内容(上記「6.」の(1)(ロ)参照)や「エッジでの騒音ポテンシャルを消去する」という記載内容(上記「6.」の(1)(ハ)参照)とも整合する)。
そうすると、本件発明1と引用発明とは「騒音相殺音演算手段」が、「前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算する」点で実質的な相違がないといえるから、このような演算に際して、本件発明1が「消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、」行うのに対して、引用発明が当該「監視マイクロフォン」に相当する「効果評価用マイクロホン6」を用いている点で両者は実質的に相違するということができる。
(なお、仮に、本件発明1が「防音壁の上端」を除く線分内において、いいかえれば、防音壁上端よりも内側(騒音源)で騒音源の発生する騒音を相殺するとしても、騒音を相殺する位置を防音壁上端位置とするか又はそれより内側の位置とするかは当業者が適宜選択し得る設計的事項であるといわざるを得ない。)
ところで、本件特許明細書の記載を参酌すると、その段落【0021】に「さらに、より効果的に消音するために、破線で示す適応制御を適用してもよい。即ち、実際に消音したい領域の音圧を監視マイクロフォン1244で検出し、適応制御部1245で実際に消音したい領域の音圧と偏差演算部1242で演算された偏差に基づいて制御部1243の制御パラメータを演算する。」との記載があることから、本件発明1の「消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、」と規定した点の技術的意義は、監視マイクロフォンを用いないことにより「より効果的に消音する」という効果は期待し得ないものの、構成をより簡素化できることにあるということができる。
一方、刊行物1には、その騒音源がある程度固定的な場合は予め前記騒音消去用の音波信号を求めておくことができることを前提として、簡易な構成でも実用上かなりな効果が期待できる態様として、その第4図や第5図に、「マイクロホン1」及び「効果評価用マイクロホン6」を共に設けない態様又は「効果評価用マイクロホン6」を設けない態様が示されている。
そうすると、引用発明における「効果評価用マイクロホン6」を用いないものと変更することは、当業者が直ちに想起し得る設計上の変更であるといえるし、また、このような「効果評価用マイクロホン6」を用いないものとする場合には、上述の態様に示されるように予め騒音消去用の音波信号を求めておくことができるのと同様に、そもそも消音のための演算制御における消音目標としていたものが無くなるのであるから、「効果評価用マイクロホン6」から得られる消音目標に代えて別の消音目標を用いるものと変更すれば、同様の演算手段を用いることができることも当業者にとって自明な事項であるといえる。
してみると、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明の「効果評価用マイクロホン6」を用いないものと変更し、当該変更に合わせてその騒音相殺音演算手段を「効果評価用マイクロホン6」を用いない態様のものと単に変更することにより、当業者が容易に想到し得たものといわざるを得ない。

(なお、本件発明1は、「騒音相殺音演算手段」に関して、「前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する」と規定していることから、当該「騒音相殺音演算手段」が「複数個設置される騒音検出手段」や「前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段」と同様に、「複数個」配置されるものであるか否かについて何ら規定していないと解される。仮に、本件発明1が「騒音相殺音演算手段」を複数個配置するものであるとしても、刊行物3(第156頁参照)には、「多チャンネル」制御ではないシンプルな「単チャンネル制御」を用いて移動音源に対する消音制御を行うことが示されていることから、引用発明における(多チャンネル式の)騒音相殺音演算手段を、個々のマイクロホン1及びスピーカ5の組み合わせに合わせた複数個設けるもの(単チャンネル式のもの)と変更することも、当業者が適宜採用し得た設計的事項であるということができる。)

そして、本件発明1が奏する作用効果も刊行物1の記載事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。

以上のことから、本件発明1は、刊行物1の記載事項に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-2 本件発明2
本件発明2は、本件発明1の構成要件を全て含むとともに、さらに、「前記複数の騒音検出手段のなかの1個の騒音検出手段とそれに対応する前記騒音相殺音発生手段の1個がエンクロージャに格納される」という限定事項を加えたものといえる。
本件発明2と引用発明とを対比すると、上記「7-1」に記載した一致点で一致し、相違点1、2で相違するとともに、さらに、次の点(以下、「相違点3」という。)で相違する。

(相違点3)本件発明2が、「前記複数の騒音検出手段のなかの1個の騒音検出手段とそれに対応する前記騒音相殺音発生手段の1個がエンクロージャに格納される」ものであるのに対して、引用発明はこのような構成を具備していない点。
(相違点の検討)
そして、相違点1、2については、上記「7-1」で説示したとおりである。
次に、上記の相違点3につき検討する。
ところで、刊行物5(上記「6.」の(5)(イ)参照)にも示されるように、高速道路等の防音壁に付設されて騒音を低減する能動音響制御装置において、1つのケーシング内に音波発生器とともに音波検出器を一体に組み込んだ構成のものとすることは、従来より周知の技術であったといえる。
してみると、相違点3に係る本件発明2の構成は、引用発明に上記周知の技術を適用することにより、当業者が適宜採用し得た設計的事項であるといえる。

したがって、本件発明2は、刊行物1の記載事項並びに従来より周知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-3 本件発明3
本件発明2を引用する本件発明3は、本件発明2の構成要件を全て含むとともに、さらに、「前記エンクロージャの幅が、消音すべき騒音の最高周波数の波長の略1/2である」という限定事項を加えたものといえる。
本件発明3と引用発明とを対比すると、上記「7-1」に記載した一致点で一致し、上記相違点1〜3で相違するとともに、さらに、次の点(以下、「相違点4」という。)で相違する。

(相違点4)本件発明3が、「前記エンクロージャの幅が、消音すべき騒音の最高周波数の波長の略1/2である」ものであるのに対して、引用発明はこのような構成を具備していない点。

(相違点の検討)
そして、相違点1〜3については、上記「7-1」及び「7-2」で説示したとおりである。
次に、上記の相違点4につき検討する。
上記相違点3について説示したように、刊行物5(上記「6.」の(5)(ロ)、(ハ)参照)には、高速道路等の防音壁に付設されて騒音を低減する能動音響制御装置において、1つのケーシング内に音波発生器とともに音波検出器を一体に組み込んだ構成のものとすることが示されているとともに、併せて、当該ケーシングの幅Wや各能動音響制御装置の間隔Bを音波の最短波長の1/4未満程度、いいかえれば、騒音の最高周波数の波長の1/4未満程度とすることが記載されている。
そして、本件特許明細書の記載(段落【0024】)を参酌してみても、エンクロージャの幅を、消音すべき騒音の最高周波数の波長の略1/2程度とすることが望ましいものであることが記載されているものの、本件発明3において、上記数値を選択することに如何なる技術的意義ないし臨界的意義があるかについての記載を見出し得ない。
してみると、相違点4に係る本件発明3の構成は、上記相違点3につき説示したところの引用発明に上記周知の技術を適用するに際して、そのケーシングの幅を刊行物5に示された騒音の最高周波数の波長の1/4未満程度という数値と同程度の値である同波長の略1/2のものと単に選択することにより、当業者が適宜採用し得た設計的事項であるといわざるを得ない。

そして、本件発明3が奏する作用効果も引用発明並びに従来より周知ないし公知の技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。

したがって、本件発明3は、刊行物1の記載事項並びに従来より周知ないし公知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-4 本件発明4
本件発明3を引用する本件発明4は、本件発明3の構成要件を全て含むとともに、さらに、「前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の少くとも前記防音壁側に騒音相殺音を放射する」という限定事項を加えたものといえる。
本件発明4と引用発明とを対比すると、上記「7-1」に記載した一致点で一致し、相違点1〜4で相違するとともに、さらに、次の点(以下、「相違点5」という。)で相違する。

(相違点5)本件発明4が、「前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の少くとも前記防音壁側に騒音相殺音を放射する」ものであるのに対して、引用発明はこのような構成を具備していない点。

(相違点の検討)
相違点1〜4については、上記「7-1」、「7-2」及び「7-3」で説示したとおりである。
次に、上記の相違点5につき検討する。
ところで、刊行物2(特開平10-268873号公報)における従来技術にも示されるように、高速道路等の防音壁に付設されて騒音を低減する能動音響制御装置において、スピーカを防音壁の上端に向けて配置する態様を用いることは、従来より周知の技術であったといえる。
してみると、相違点5に係る本件発明4の構成は、引用発明に上記周知の技術を適用することにより、当業者が適宜採用し得た設計的事項であるといえる。

したがって、本件発明4は、刊行物1の記載事項並びに従来より周知ないし公知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-5 本件発明5
本件発明3を引用する本件発明5は、本件発明3の構成要件を全て含むとともに、さらに、「前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記防音壁外側に背面が向けられたスピーカである」という限定事項を加えたものといえる。
本件発明5と引用発明とを対比すると、上記「7-1」に記載した一致点で一致し、相違点1〜4で相違するとともに、さらに、次の点(以下、「相違点6」という。)で相違する。

(相違点6)本件発明5が、「前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記防音壁外側に背面が向けられたスピーカである」ものであるのに対して、引用発明はこのような構成を具備していない点。

(相違点の検討)
相違点1〜4については、上記「7-1」、「7-2」及び「7-3」で説示したとおりである。
次に、上記の相違点6につき検討する。
ところで、刊行物1(上記「6.」の(1)(ハ)参照)には、「エッジ近傍に設置されたスピーカ5に送って音波を騒音源Sに向けて放射」する態様が併せて開示されている。
してみると、相違点6に係る本件発明5の構成は、引用発明に刊行物1に併せて示されたところのスピーカの配置態様を採用することにより、当業者が適宜採用し得た設計的事項であるといえる。

したがって、本件発明5は、刊行物1の記載事項並びに従来より周知ないし公知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-6 本件発明6
本件発明4又は5を引用する本件発明6は、本件発明4又は5の構成要件を全て含むとともに、さらに、「前記エンクロージャの奥行きが略500ミリメートル以下である」という限定事項を加えたものといえる。
本件発明6と引用発明とを対比すると、上記「7-1」に記載した一致点で一致し、上記相違点1〜3並びに4又は5で相違するとともに、さらに、次の点(以下、「相違点7」という。)で相違する。

(相違点7)本件発明6が、「前記エンクロージャの奥行きが略500ミリメートル以下である」ものであるのに対して、引用発明はこのような構成を具備していない点。

(相違点の検討)
相違点1〜3並びに4又は5については、上記「7-1」ないし「7-3」並びに「7-4」又は「7-5」で説示したとおりである。
次に、上記の相違点7につき検討する。
ところで、本件特許明細書の記載を参酌すると、その段落【0024】に「仕切り板125の間隔Wは、消音したい騒音の周波数帯域の最高周波数の波長Lの1/2程度とすることが望ましい。例えば、最高周波数を1KHzとすれば、波長は340ミリメートルとなるので、仕切り板の設置間隔は170ミリメートルとなる。また、本発明によれば、検出マイクロフォンとスピーカを近接して設置することが可能であるので、エンクロージャ123の奥行きD(図2参照)を小とすることができる。奥行きDは、遮音壁近傍の日照の劣化、あるいは電波障害の発生を防止するために1000ミリメートル(=1メートル)以下とすることもできる。」との記載がある。
そして、上記相違点3及び4について説示したように、刊行物5(上記「6.」の(5)(ロ)、(ハ)参照)には、高速道路等の防音壁に付設されて騒音を低減する能動音響制御装置において、1つのケーシング内に音波発生器とともに音波検出器を一体に組み込んだ構成のものとすることが示されているとともに、併せて、当該ケーシングの幅Wや各能動音響制御装置の間隔Bを音波の最短波長の1/4未満程度、いいかえれば、騒音の最高周波数の波長の1/4未満程度とすることが記載されている。
してみると、相違点7に係る本件発明6の構成は、上記相違点3及び4につき説示したところの引用発明に上記周知の技術を適用するに際して、そのケーシングの奥行きを刊行物5に示されたケーシングの幅Wや各能動音響制御装置の間隔Bと同程度の寸法値を適宜選択することにより、当業者が容易に採用し得た設計的事項であるといわざるを得ない。

したがって、本件発明6は、刊行物1の記載事項並びに従来より周知ないし公知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-7 本件発明7
本件発明4又は5を引用する本件発明7は、本件発明4又は5の構成要件を全て含むとともに、さらに、「前記エンクロージャの奥行きが略250ミリメートル以下である」という限定事項を加えたものといえる。
本件発明7と引用発明とを対比すると、上記「7-1」に記載した一致点で一致し、上記相違点1〜3並びに4又は5で相違するとともに、さらに、次の点(以下、「相違点8」という。)で相違する。

(相違点8)本件発明7が、「前記エンクロージャの奥行きが略250ミリメートル以下である」ものであるのに対して、引用発明はこのような構成を具備していない点。

(相違点の検討)
相違点1〜3並びに4又は5については、上記「7-1」ないし「7-3」並びに「7-4」又は「7-5」で説示したとおりである。
次に、上記の相違点8につき検討する。
ところで、本件特許明細書の記載を参酌すると、その段落【0024】に「仕切り板125の間隔Wは、消音したい騒音の周波数帯域の最高周波数の波長Lの1/2程度とすることが望ましい。例えば、最高周波数を1KHzとすれば、波長は340ミリメートルとなるので、仕切り板の設置間隔は170ミリメートルとなる。また、本発明によれば、検出マイクロフォンとスピーカを近接して設置することが可能であるので、エンクロージャ123の奥行きD(図2参照)を小とすることができる。奥行きDは、遮音壁近傍の日照の劣化、あるいは電波障害の発生を防止するために1000ミリメートル(=1メートル)以下とすることもできる。」との記載がある。
そして、上記相違点3及び4について説示したように、刊行物5(上記「6.」の(5)(ロ)、(ハ)参照)には、高速道路等の防音壁に付設されて騒音を低減する能動音響制御装置において、1つのケーシング内に音波発生器とともに音波検出器を一体に組み込んだ構成のものとすることが示されているとともに、併せて、当該ケーシングの幅Wや各能動音響制御装置の間隔Bを音波の最短波長の1/4未満程度、いいかえれば、騒音の最高周波数の波長の1/4未満程度とすることが記載されている。
してみると、相違点8に係る本件発明6の構成は、上記相違点3及び4につき説示したところの引用発明に上記周知の技術を適用するに際して、そのケーシングの奥行きを刊行物5に示されたケーシングの幅Wや各能動音響制御装置の間隔Bと同程度の寸法値を適宜選択することにより、当業者が容易に採用し得た設計的事項であるといわざるを得ない。

したがって、本件発明7は、刊行物1の記載事項並びに従来より周知ないし公知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-8 本件発明8
本件発明8と引用発明とを対比すると、その機能ないし構造からみて、引用発明における「高速道路などから発生される騒音源S」は本件発明1の「音源」に、引用発明の「防音塀B」は本件発明1の「防音壁」に、引用発明における「マイクロホン1」は本件発明8の「騒音検出手段」に、引用発明における「スピーカ5」は本件発明8の「騒音相殺音発生手段」に、引用発明における「ディジタル・ジグナル・プロセッサー(DPS)3」は本件発明8の「騒音相殺音演算手段」に、それぞれ相当するといえる。
また同様に、引用発明の「上記マイクロホン1及びスピーカ5は、上記騒音源Sと防音塀Bの上端エッジEとを結ぶ直線上に配置される」点は、本件発明8における「騒音検出手段」及び「騒音相殺音発生手段」が「前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される」点に相当するといえる。
さらに、引用発明における「マイクロホン1」及び「スピーカ5」を「上端エッジEに沿って複数組並設」した点は、本件発明8における「騒音検出手段」を「前記防音壁に沿って複数個設置」した点及び「騒音相殺音発生手段」を「前記騒音検出手段に対応して複数個設置」した点に相当するといえる。

してみると、両者は、
「音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発生手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音手段。」である点で一致し、次の点で相違するということができる。

(相違点1’)
本件発明8は、「騒音検出手段」、「騒音相殺音発生手段」、「騒音相殺音演算手段」に加えて「音源の移動方向に平行に設置される防音壁」をも具備する「能動遮音壁」の発明として構成されているのに対して、引用発明は、このような防音壁までを具備しない「能動制御型防音装置」の発明である点。
(相違点9)
本件発明8が、「前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線を中心に複数配置される」ものであるのに対して、引用発明はこのような構成を具備していない点。

(相違点の検討)
そこで、上記の相違点につき検討する。
相違点1’は、上記「7-1」で既に検討した相違点1と同じであるから、同「7-1」で説示したとおりである。

次に、上記の相違点9につき検討する。
刊行物5(上記「6.」の(5)(ロ)参照)には、高速道路等の防音壁に付設されて騒音を低減する能動音響制御装置において、1つのケーシング内に音波発生器とともに音波検出器を一体に組み込んだ構成のものを1つ配置する態様に加えて、これを音波の伝搬方向に対し平行及び直角に複数個配置した態様のものとすることが併せて記載されている。
してみると、相違点9に係る本件発明8の構成は、引用発明に上述した刊行物5に示された複数の配置態様を採用することにより、当業者が容易に想到し得た設計的事項であるといえる。

そして、本件発明8が奏する作用効果も刊行物1及び刊行物5の記載事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。

以上のことから、本件発明8は、刊行物1及び刊行物5の記載事項に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-9 本件発明9
本件発明9と引用発明とを対比すると、その機能ないし構造からみて、引用発明における「高速道路などから発生される騒音源S」は本件発明1の「音源」に、引用発明の「防音塀B」は本件発明9の「防音壁」に、それぞれ相当することが明らかであるから、引用発明における「マイクロホン1」は本件発明9の「騒音検出手段」に、引用発明における「スピーカ5」は本件発明9の「騒音相殺音発生手段」に、引用発明における「ディジタル・ジグナル・プロセッサー(DPS)3」は本件発明9の「騒音相殺音演算手段」に、それぞれ相当するといえる。
また同様に、引用発明の「上記マイクロホン1及びスピーカ5は、上記騒音源Sと防音塀Bの上端エッジEとを結ぶ直線上に配置される」点は、本件発明9における「騒音検出手段」及び「騒音相殺音発生手段」が「前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される」点に相当するといえる。
さらに、引用発明における「マイクロホン1」及び「スピーカ5」を「上端エッジEに沿って複数組並設」した点は、本件発明9における「騒音検出手段」を「前記防音壁に沿って複数個設置」した点及び「騒音相殺音発生手段」を「前記騒音検出手段に対応して複数個設置」した点に相当するといえる。

してみると、両者は、
「音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発生手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音手段。」である点で一致し、次の点で相違するということができる。

(相違点1’’)
本件発明9は、「騒音検出手段」、「騒音相殺音発生手段」、「騒音相殺音演算手段」に加えて「音源の移動方向に平行に設置される防音壁」をも具備する「能動遮音壁」の発明として構成されているのに対して、引用発明は、このような防音壁までを具備しない「能動制御型防音装置」の発明である点。
(相違点10)
本件発明9が、「前記防音壁が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段より内側に上端を有する騒音回折壁をさらに具備する」ものであるのに対して、引用発明はこのような構成を具備していない点。

(相違点の検討)
そこで、上記の相違点につき検討する。
相違点1’’は、上記「7-1」で既に検討した相違点1と同じであるから、同「7-1」で説示したとおりである。

次に、上記の相違点10につき検討する。
ところで、例えば、特開平9-287114号公報や特開平9-273123号公報にも示されるように、高速道路等の防音壁に、騒音源から放射される騒音を回折するための付加的な防音壁を騒音源側に設けることは、従来より周知の技術であったといえる。
してみると、相違点10に係る本件発明9の構成は、引用発明に上記周知の技術を採用することにより、当業者が容易に想到し得た設計的事項であるといえる。

そして、本件発明9が奏する作用効果も刊行物1の記載事項及び従来より周知の技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。

以上のことから、本件発明9は、刊行物1の記載事項及び従来より周知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-10 本件発明10
本件発明10と引用発明とを対比すると、その機能ないし構造からみて、引用発明における「高速道路などから発生される騒音源S」は本件発明10の「音源」に、引用発明の「防音塀B」は本件発明1の「防音壁」に、それぞれ相当することが明らかであるから、引用発明における「能動制御型防音装置」は本件発明10の「能動遮音ユニット」に、引用発明における「マイクロホン1」は本件発明10の「騒音検出手段」に、引用発明における「スピーカ5」は本件発明1の「騒音相殺音発生手段」に、引用発明における「ディジタル・ジグナル・プロセッサー(DPS)3」は本件発明10の「騒音相殺音演算手段」に、それぞれ相当するといえる。
また同様に、引用発明の「上記マイクロホン1及びスピーカ5は、上記騒音源Sと防音塀Bの上端エッジEとを結ぶ直線上に配置される」点は、本件発明10における「騒音検出手段」及び「騒音相殺音発生手段」が「音源の移動方向に平行に設置される防音壁に取り付けられる」点に相当するといえる。
さらに、引用発明における「マイクロホン1」及び「スピーカ5」を「上端エッジEに沿って複数組並設」した点は、本件発明10における「騒音検出手段」を「前記防音壁に沿って複数個設置」した点及び「騒音相殺音発生手段」を「前記防音壁に沿って前記騒音検出手段に対応して複数個設置」した点に相当するといえる。

してみると、両者は、
「音源の移動方向に平行に設置される防音壁に取り付けられる騒音検出手段であって、前記音源の発生する騒音を検出するために前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
音源の移動方向に平行に設置される防音壁に取り付けられる騒音相殺音発生手段であって、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射するために前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に前記防音壁に沿って前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音ユニット。」である点(以下、「一致点の1」)で一致し、次の点で相違するということができる。

(相違点2’)
騒音相殺音演算手段に関して、本件発明1が「消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算するものである」のに対して、引用発明は、「上端エッジEに設けられた消去の効果を確認するための効果評価用マイクロホン6」を用いるとともに「マイクロホン1の検出信号から上記入射音波の振幅及び位相を計算し、その計算値より上記入射音波を消去できる振幅を有する音波信号を生成するディジタル・ジグナル・プロセッサー(DPS)3」を用いるものである点。

(相違点の検討)
そして、相違点2’については、上記「7-1」で既に検討した相違点2と同じであるから、上記「7-1」で説示したとおりである。

したがって、本件発明10は、刊行物1の記載事項に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-11 本件発明11
本件発明11は、本件発明10の構成要件を全て含むとともに、さらに、「前記騒音相殺音発生手段を前記防音壁に取り付ける取り付け手段をさらに具備する」という限定事項を加えたものといえる。
本件発明11と引用発明とを対比すると、上記「7-10」に記載した「一致点の1」で一致し、相違点2’で相違するとともに、さらに、次の点(以下、「相違点11」という。)で相違する。

(相違点11)本件発明11が、「前記騒音相殺音発生手段を前記防音壁に取り付ける取り付け手段をさらに具備する」ものであるのに対して、引用発明はこのような構成を具備していない点。

(相違点の検討)
そして、相違点2’については、上記「7-10」で説示したとおりである。
次に、上記の相違点11につき検討する。
ところで、引用発明の能動制御型防音装置における騒音相殺音発生手段(マイクロホン1)が防音塀Bの上端エッジ近傍に設置されるものであることは明らかであるから、当該防音塀に設置するに際して必要となるところの従来より周知の取り付け手段を併せて具備するものとして構成することは、当業者が適宜選択し得た設計的事項であるといえる。
してみると、相違点11に係る本件発明11の構成は、引用発明に上記周知の手段を適用することにより、当業者が適宜採用し得た設計的事項であるといえる。

したがって、本件発明11は、刊行物1の記載事項並びに従来より周知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7-12 本件発明12
本件発明12は、本件発明10の構成要件を全て含むとともに、さらに、「前記複数の騒音検出手段の中の1個とそれに対応する前記騒音相殺音発生手段の中の1個を格納する複数のエンクロージャと、前記エンクロージャを前記防音壁に取り付ける取り付け手段と、をさらに具備する」という限定事項を加えたものといえる。
本件発明12と引用発明とを対比すると、上記「7-10」に記載した「一致点の1」で一致し、相違点2’で相違するとともに、さらに、次の点(以下、「相違点12」という。)で相違する。

(相違点12)本件発明12が、「前記複数の騒音検出手段の中の1個とそれに対応する前記騒音相殺音発生手段の中の1個を格納する複数のエンクロージャと、前記エンクロージャを前記防音壁に取り付ける取り付け手段と、をさらに具備する」ものであるのに対して、引用発明はこのような構成を具備していない点。

(相違点の検討)
そして、相違点2’については、上記「7-10」で説示したとおりである。
次に、上記の相違点12につき検討する。
ところで、刊行物5(上記「6.」の(5)(ロ)参照)にも示されるように、高速道路等の防音壁に付設されて騒音を低減する能動音響制御装置において、1つのケーシング内に音波発生器とともに音波検出器を一体に組み込んだ構成のものとすることは、従来より周知の技術であったといえる。
また、引用発明の能動制御型防音装置における騒音相殺音発生手段(マイクロホン1)が防音塀Bの上端エッジ近傍に設置されるものであることは明らかであり、これを防音塀に設置するに際して従来より周知の取り付け手段が必要となることも当業者にとって自明な事項であるといえる。
してみると、相違点12に係る本件発明12の構成は、引用発明に上記周知のケーシング技術を適用し、これを防音塀に設置するに際して必要となるところの取り付け手段を併せて具備するものとして構成することにより、当業者が容易に想到し得たものといえる。

したがって、本件発明12は、刊行物1に記載された事項並びに従来より周知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

8.むすび
したがって、他の証拠を検討するまでもなく、本件発明1〜12の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
能動遮音壁及び能動遮音ユニット
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源の移動方向に平行に設置される防音壁と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発生手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音壁において、
前記騒音相殺音演算手段が、消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算するものである能動遮音壁。
【請求項2】
前記複数の騒音検出手段のなかの1個の騒音検出手段とそれに対応する前記騒音相殺音発生手段の1個がエンクロージャに格納される請求項1に記載の能動遮音壁。
【請求項3】
前記エンクロージャの幅が、消音すべき騒音の最高周波数の波長の略1/2である請求項2に記載の能動遮音壁。
【請求項4】
前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の少くとも前記防音壁側に騒音相殺音を放射する請求項1から3のいずれか1項に記載の能動遮音壁。
【請求項5】
前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記防音壁外側に背面が向けられたスピーカである請求項1から3のいずれか1項に記載の能動遮音壁。
【請求項6】
前記エンクロージャの奥行きが略500ミリメートル以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の能動遮音壁。
【請求項7】
前記エンクロージャの奥行きが略250ミリメートル以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の能動遮音壁。
【請求項8】
音源の移動方向に平行に位置される防音壁と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発射手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音壁において、
前記騒音相殺音発生手段が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線を中心に複数配置される能動遮音壁。
【請求項9】
音源の移動方向に平行に位置される防音壁と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される前記音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって、前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に配置され、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発射手段であって、前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段および前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音壁において、
前記防音壁が、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段より内側に上端を有する騒音回折壁をさらに具備する能動遮音壁。
【請求項10】
音源の移動方向に平行に設置される防音壁に取り付けられる騒音検出手段であって、前記音源の発生する騒音を検出するために前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、
音源の移動方向に平行に設置される防音壁に取り付けられる騒音相殺音発生手段であって、前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射するために前記音源の移動中心と前記防音壁の上端を結ぶ直線上の前記騒音検出手段の設置位置より前記防音壁側に前記防音壁に沿って前記騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、
前記騒音検出手段及び前記騒音相殺音発生手段に対応して設置され、前記騒音検出手段によって検出される前記音源の発生する騒音に基づいて前記騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備する能動遮音ユニットにおいて、
前記騒音相殺音演算手段が、消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算するものである能動遮音ユニット。
【請求項11】
前記騒音相殺音発生手段を前記防音壁に取り付ける取り付け手段をさらに具備する請求項10に記載の能動遮音ユニット。
【請求項12】
前記複数の騒音検出手段の中の1個とそれに対応する前記騒音相殺音発生手段の中の1個を格納する複数のエンクロージャと、
前記エンクロージャを前記防音壁に取り付ける取り付け手段と、をさらに具備する請求項10に記載の能動遮音ユニット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は能動遮音壁及び能動遮音ユニットに係り、特に音源が移動する場合にも遮音効果を有する能動遮音壁及び能動遮音ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
騒音源から放射される騒音を検出マイクロフォンで検出し、騒音発生源からの騒音と逆位相の音をスピーカから出力することによってエラーマイクロフォンの設置位置における騒音音圧を低減するアクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)は周知である。
【0003】
しかし、騒音と逆位相の音を発生するためには騒音源と検出マイクロフォンとの間の距離に関連するパラメータが必要となるため、高速道路の遮音壁にように移動する騒音源から放射される騒音を遮音する必要のある場合には適用が困難であった。
騒音源が移動する場合にも適用可能とすべく、検出マイクロフォン、スピーカおよびエラーマイクロフォンで構成されるユニットを複数並べたユニット群に対してDSP(ディジタル・シグナル・プロセッシング・ユニット)を適用し、騒音源の移動を考慮してスピーカから出力する音を決定するマルチチャンネル型能動制御型防音装置が既に提案されている(特公平7-82347号公報参照)。
【0004】
しかし、マルチチャンネル型能動制御型防音装置は構成が複雑であり、DSPにも高い処理能力が要求されるため高価なものとなることを回避できない。
従って、検出マイクロフォン、スピーカおよびエラーマイクロフォンで構成されるユニットごとに演算部を設けた、いわゆる単自由度能動制御型防音装置を騒音源が移動する場合にも適用できることが望ましい。
【0005】
上記観点から、スピーカを格納したエンクロージャを遮音壁の上端に並べて配置し、スピーカの音波放射開口面を回折波の進行方向へ向けた回折音抑制スピーカシステムがすでに提案されている(特開平9-54593公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案に係る回折音抑制スピーカシステムは、騒音源から放射された直接音が遮音壁上端で回折されて発生する回折音を抑制するために、回折音と逆位相同音圧の音波をスピーカから放射するものであるため、騒音源から放射された直接音の音圧を十分に低減することはできない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、簡易な構成でありながら移動音源が放射する直接音の音圧を十分に低減することのできる単自由度能動制御ユニットを具備する能動遮音壁及び能動遮音ユニットを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る能動遮音壁は、音源の移動方向に平行に設置される防音壁と、音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線上に配置される音源の発生する騒音を検出する騒音検出手段であって防音壁に沿って複数個配置される騒音検出手段と、音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線上の騒音検出手段の設置位置より防音壁側に配置され音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射する騒音相殺音発生手段であって騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、騒音検出手段および騒音相殺音発生手段に対応して設置され騒音検出手段によって検出される音源の発生する騒音に基づいて騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段を具備する。
【0009】
本発明にあっては、音源から放射され、防音壁の上端から防音壁の外側に漏洩する騒音が、騒音相殺音発生手段から放射される騒音相殺音によって直接相殺される。
第2の発明に係る能動防音壁は、騒音相殺音演算手段が、消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、騒音相殺音発生手段から放射される音が騒音相殺音発生手段と防音壁の上端を結ぶ線分内で騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算する。
【0010】
本発明にあっては、騒音相殺音発生手段と防音壁の上端を結ぶ線分内のいずれかの点で騒音と騒音相殺音の合成音圧は最小となる。
第3の発明に係る能動遮音壁は、複数の騒音検出手段のなかの1個の騒音検出手段とそれに対応する騒音相殺音発生手段の1個がエンクロージャに格納される。
【0011】
本発明にあっては、1個の騒音検出手段と1個の騒音相殺音発生手段が1つの能動騒音制御ユニットとしてエンクロージャに格納されるので、騒音相殺音発生手段相互の干渉が低減される。
第4の発明に係る能動遮音壁は、エンクロージャの幅が消音される騒音の最高周波数の波長の略1/2である。
【0012】
本発明にあっては、エンクロージャの幅は消音される騒音の最高周波数の波長の略1/2に設定されるので、より効率的に騒音が消音される。
第5の発明に係る能動遮音壁は、騒音相殺音発生手段が、音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線を中心に複数配置される複数のスピーカである。
本発明にあっては、複数のスピーカが1つの大口径スピーカとして機能するので騒音球面波と騒音相殺波の一致範囲が広くなり、減音ゾーンが大となる。
【0013】
第6の発明に係る能動遮音壁は、音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線上の騒音検出手段より内側に上端を有する騒音回折壁をさらに具備する。
本発明にあっては、音源から放射される雑音が騒音回折壁で回折されて騒音検出手段で検出される。
第7の発明に係る能動遮音ユニットは、音源の移動方向に平行に設置される防音壁に取り付けられる騒音検出手段であって音源の発生する騒音を検出するために音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線上に前記防音壁に沿って複数個設置される騒音検出手段と、音源の移動方向に平行に設置される防音壁に取り付けられる騒音相殺音発生手段であって音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線上に騒音相殺音を放射するために音源の移動中心と防音壁の上端を結ぶ直線上の騒音検出手段の設置位置より防音壁側に防音壁に沿って騒音検出手段に対応して複数個設置される騒音相殺音発生手段と、騒音検出手段及び騒音相殺音発生手段に対応して設置され騒音検出手段によって検出される音源の発生する騒音に基づいて騒音相殺音発生手段から騒音相殺音を発生するための信号を演算する騒音相殺音演算手段と、を具備し、前記騒音相殺音演算手段が、消音したい領域の音圧を検出する監視マイクロフォンを用いずに、前記騒音相殺音発生手段から放射される音が前記騒音相殺音発生手段と前記防音壁の上端を結ぶ線分内で前記騒音源の発生する騒音を相殺する相殺音となる信号を演算するものである。
【0014】
本発明によれば騒音検出手段で検出された騒音を相殺する騒音相殺音が騒音相殺音発生手段から放射される。
第8の発明に係る能動遮音ユニットは、騒音相殺音発生手段を防音壁に取り付ける取り付け手段と、をさらに具備する。
本発明によれば、騒音相殺音発生手段が防音壁に取り付けられる。
【0015】
第9の発明に係る能動遮音ユニットは、複数の騒音検出手段の中の1個とそれに対応する騒音相殺音発生手段の中の1個を格納する複数のエンクロージャと、エンクロージャを防音壁に取り付ける取り付け手段をさらに具備する。
本発明によれば、騒音検出手段及び騒音相殺音発生手段がエンクロージャに格納されて防音壁に取り付けられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第一実施形態に係る能動遮音壁の斜視図であって、例えば自動車である音源10は道路上をX方向に移動するものとする。
道路側端には道路に沿って高さ8〜10メートルの防音壁11が垂直に設置され、防音壁11の内側に道路側に能動遮音ユニット12が設置される。
【0017】
図2は第一実施形態において使用される能動遮音ユニットの断面図であって、能動遮音ユニット12は音源10と防音壁11の上端道路側縁を結ぶ仮想軸Y上に、音源10から放射される騒音を検出する検出マイクロフォン121、および音源10と反対方向に騒音相殺音を放射するスピーカ122が配置される。なお、検出マイクロフォン121およびスピーカ122はエンクロージャ123に収納されている。
【0018】
なお、上記第一実施形態にあっては、スピーカをエンクロージャの前面に設置しているが、音源と遮音壁上端を結ぶ仮想軸Y近傍に騒音相殺音を放射できればスピーカの取り付け方向はエンクロージャ前面に限定されない。
例えば、図3に示すようにエンクロージャ上側面にスピーカを設置してもよい。
【0019】
即ち、エンクロージャ123の音源側は裏板1231で覆われ、音源の反対側はスピーカ122から出力される騒音相殺音を放射するために開口している。なお、裏板1231のほぼ中央には音源10から放射される騒音を検出する検出マイクロフォン121が取り付けられている。また、スピーカ122はバッフル板1232に取付けられて、エンクロージャ123内に格納されている。
【0020】
さらに、マイクロフォン121の出力は演算部124に導かれ、演算部124の出力はスピーカ122に供給される。
図4は能動遮音ユニットの機能線図であって、能動遮音ユニット12の演算部124は、基本的には目標音圧(通常は略零)に比例する電圧を発生する目標音圧設定部1241、目標音圧設定部1241で発生される目標音圧に比例する電圧と検出マイクロフォン121で検出された騒音に比例した電圧との偏差を演算する偏差演算部1242及び偏差演算部1242で演算された偏差に基づいて防音壁11とスピーカ122を結ぶ線分のいずれかの点における騒音の音圧及び位相に対し同音圧で逆位相の騒音相殺音を生成する制御部1243から構成される。騒音相殺音はスピーカ122から放射される。これにより騒音と騒音相殺音の合成音は防音壁11の上端とスピーカ122を結ぶ線分の1点で音圧は略零となり、その点より外側に騒音が伝播することを防止できる。
【0021】
さらに、より効果的に消音するために、破線で示す適応制御を適用してもよい。即ち、実際に消音したい領域の音圧を監視マイクロフォン1244で検出し、適応制御部1245で実際に消音したい領域の音圧と偏差演算部1242で演算された偏差に基づいて制御部1243の制御パラメータを演算する。なお、制御部1243の出力は目標音圧設定部1241に帰還され目標音圧を調整する。
【0022】
図5は本発明に係る能動遮音壁の効果を示すグラフであって、実線は騒音の音圧を、破線は防音壁11に吸音材を貼り付ける等のパッシブ対策後の音圧を示すが、パッシブ対策によれば500Hz以上の高周波成分の音圧を低減できる。
しかし、100〜500Hzの低周波成分の音圧はパッシブ対策では十分に低減されない。低周波成分の音圧は、上記の能動遮音ユニットを使用するというアクティブ対策によって約5デシベル程度低減することができる。
【0023】
なおアクティブ対策によれば補償周波数範囲を100〜500Hzより拡大することも可能である。
また本発明にあってはスピーカ122が防音壁11上端に沿って並べて配置されているが、隣接するスピーカの影響を排除するためにスピーカの間に仕切り板125(図1参照)を設置してもよい。
【0024】
仕切り板125の間隔Wは、消音したい騒音の周波数帯域の最高周波数の波長Lの1/2程度とすることが望ましい。例えば、最高周波数を1KHzとすれば、波長は340ミリメートルとなるので、仕切り板の設置間隔は170ミリメートルとなる。
また、本発明によれば、検出マイクロフォンとスピーカを近接して設置することが可能であるので、エンクロージャ123の奥行きD(図2参照)を小とすることができる。奥行きDは、遮音壁近傍の日照の劣化、あるいは電波障害の発生を防止するために1000ミリメートル(=1メートル)以下とすることもできる。
【0025】
さらに、奥行きをさらに小とするためにバッフル板1232にスピーカ122を逆向きに取り付けてもよい。この場合には、遮音壁の内側(道路側)及び外側(反道路側)の制約を満たすコンパクトな遮音壁とすることが可能となる。
騒音は音源10を中心とする球面波として放射され、騒音相殺音はスピーカ122を中心とする球面波として放射される。従って、音源10と防音壁11の上端道路側縁を結ぶ仮想軸Y上に1つのスピーカ122が配置される第一実施形態においては、仮想軸Y上では騒音球面波と相殺音球面波が一致して騒音が相殺されるものの、仮想軸Yから偏倚した位置においては曲率の相違により騒音球面波と相殺音球面波にずれが生じ騒音相殺能力は低下する。即ち、減音ゾーンZは仮想軸Yを中心とする狭い範囲に限定される(図2参照)。
【0026】
図6は本発明の第二実施形態において使用される能動遮音ユニットの断面図であって、上記課題を解決することを目的とする。
即ち第二実施形態に係る能動遮音ユニット12にあっては、音源10と防音壁11の上端道路側縁を結ぶ仮想軸Yを中心に複数のボックス61i(2≦i)が設置される。
【0027】
そして、各ボックス61iの前面はスピーカ62iが取り付けられたバッフル板63iで覆われ、背面にはマイクロフォン64iが取り付けられた裏板65iで覆われる。
マイクロフォン64iで検出された騒音は演算部66iに導かれ、演算部66iは入力された騒音に基づいて騒音相殺信号を発生してスピーカ62iから騒音相殺音として放射する。
【0028】
第二実施形態にあっては、複数のスピーカ62iは仮想軸Yを中心とする口径Dの1つの大口径スピーカとして機能するため、放射される騒音相殺音の球面波の曲率は前述の実施形態の場合より小となり騒音球面波と一致する範囲は大きくなるので、減音ゾーンZは前述の実施形態の場合より拡大される。
なお、図6は仮想軸Yを中心として上下に2つのスピーカ621及び622並びにマイクロフォン641及び642が配置された場合を図示しているが、仮想軸Yに垂直な平面内の仮想軸Yを中心とする円の円周上に複数のスピーカ及びマイクロフォンを配置してもよい。またマイクロフォンは円周上に配置せず、一ヶ所に集中配置してもよい。
【0029】
上記は複数の演算部66iは同一の周波数特性を有するものとしているが、制御部ごとに異なる周波数帯域を処理することとしてもよい。
第一及び第二実施形態にあっては、音源10である自動車は道路のほぼ中央を走行するとしているが、音源である自動車が防音壁に近づいて走行した場合にはマイクロフォンへの音の入射角が鋭角となり、能動遮音効果が低減するおそれがある。
【0030】
図7は本発明の第三実施形態に係る能動遮音壁の斜視図であって、防音壁11は防音壁11の内側、即ち道路側にマイクロフォン121より内側まで斜め上方に延びる騒音回折壁110を具備する。
そして騒音回折壁110の上端である騒音回折部は、自動車が道路のほぼ中央を走行するとした場合の音源と防音壁11の上端道路側縁を結ぶ仮想軸Y近傍に位置する。即ちエンクロージャ裏板に取り付けられたマイクロフォンは防音壁11と騒音回折壁110の間に位置する。
【0031】
従って、音源である自動車が防音壁11に近づいて走行した場合に騒音回折壁110の上端の回折部で回折された騒音がマイクロフォン121に入射され、マイクロフォン121への入射角は自動車が道路の中央を走行する場合とほぼ同一に維持されるので、騒音を十分に収集することが可能となる。
なお、図7で回折壁は防音壁中ほどからY字型に分岐するものとしたが、マイクロフォンより音源側に存在する騒音回折部で回折した騒音がマイクロフォンの検出範囲に入る構造であれば構造はこれに限られない。例えば騒音回折壁を防音壁の内側に独立に設置してもよい。また図8に示すように、上端に騒音回折部を有する騒音回折壁110を取り付けてもよい。
【0032】
上記第一〜第三実施形態においては、防音壁、エンクロージャに格納されたスピーカ及びマイクロフォン並びに演算部は同時に設置されるものとしているが、既設の防音壁にエンクロージャに格納されたスピーカ及びマイクロフォン並びに演算部からなる能動遮音ユニット12を追設することにより能動遮音壁とすることも本発明の範囲に含まれる。
【0033】
図9及び図10は既設の防音壁への能動遮音ユニットの取り付け方法の説明図であって、図9はフックにより取り付ける場合を、図10は溶接により取り付ける場合を示す。
即ち図9の場合は、通常防音壁11を連結するH型鋼13の鍔に能動遮音ユニット12に取り付けられたフック14をひっかけるとともにフック14の下端141をH型鋼にボルト締めすることにより能動遮音ユニット12を防音壁11に固定する。
【0034】
又図10の場合はH型鋼13の底面に能動遮音ユニット12に取り付けられた鋼板15を溶接又はボルト締めにより固定する。
また、図11に示すように既設の防音壁11の上端にさらに能動遮音ユニット12を取り付けた追設防音壁111をボルト締め等により継ぎ足すこととしてもよい。
【0035】
さらに図12に示すように騒音回折壁110が追設防音壁111と一体に形成されていてもよい。
また本発明は音源が静止している場合にも適用できることは明らかである。
【0036】
【発明の効果】
第1の発明に係る能動遮音壁によれば、防音壁の上端から防音壁の外側に漏洩する音源から放射される騒音を、騒音相殺音発生手段から放射される騒音相殺音によって直接相殺することが可能となる。
第2の発明に係る能動遮音壁によれば、騒音相殺音発生手段と防音壁上端とを結ぶ線分内で騒音を相殺することが可能となるので、防音壁をコンパクトに構成できる。
【0037】
第3の発明に係る能動遮音壁によれば、1個の騒音検出手段と1個の騒音相殺音発生手段が1つの能動騒音制御ユニットとしてエンクロージャに格納されるので、騒音相殺音発生手段相互の干渉が低減されるので、効果的に騒音を相殺することが可能となる。
第4の発明に係る能動遮音壁によれば、エンクロージャの幅は消音すべき騒音の最高周波数の波長の略1/2に設定されるので、より効率的に騒音を抑制することが可能となる。
【0038】
第5の発明に係る能動遮音壁によれば、複数のスピーカが1つの大口径スピーカとして機能するので、減音ゾーンを大とすることが可能となる。
第6の発明に係る能動遮音壁によれば、自動車が防音壁に近づいて走行した場合であっても騒音が騒音回折壁上端で回折されて検出されるので、騒音を確実に低減することが可能となる。
【0039】
第7〜第9の発明に係る能動遮音ユニットによれば、既設の防音壁に能動遮音ユニットを追設することにより、簡易に能動遮音壁を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る能動遮音壁の斜視図である。
【図2】第一実施形態において使用される能動騒音制御ユニットの断面図である。
【図3】第一実施形態において使用される能動騒音制御ユニットの変形例である。
【図4】能動騒音制御ユニットの機能線図である。
【図5】本発明に係る能動遮音壁の効果を示すグラフである。
【図6】第二実施形態において使用される能動騒音制御ユニットの断面図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る能動遮音壁の斜視図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係る能動遮音壁の変形例である。
【図9】防音壁への能動遮音ユニットの取り付け方法の説明図である。
【図10】防音壁への能動遮音ユニットの取り付け方法の説明図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る能動遮音壁の斜視図及び断面図である。
【図12】本発明の第五実施形態に係る能動遮音壁の斜視図及び断面図である。
【符号の説明】
10…音源
11…防音壁
110…騒音回折壁
12…能動遮音ユニット
121…検出マイクロフォン
122…スピーカ
123…エンクロージャ
1231…背板
1232…バッフル板
124…演算部
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る能動遮音壁の斜視図である。
【図2】第一実施形態において使用される能動騒音制御ユニットの断面図である。
【図3】第一実施形態において使用される能動騒音制御ユニットの変形例である。
【図4】能動騒音制御ユニットの機能線図である。
【図5】本発明に係る能動遮音壁の効果を示すグラフである。
【図6】第二実施形態において使用される能動騒音制御ユニットの断面図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る能動遮音壁の斜視図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係る能動遮音壁の変形例である。
【図9】防音壁への能動遮音ユニットの取り付け方法の説明図である。
【図10】防音壁への能動遮音ユニットの取り付け方法の説明図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る能動遮音壁の斜視図及び断面図である。
【図12】本発明の第五実施形態に係る能動遮音壁の斜視図及び断面図である。
【符号の説明】
10…音源
11…防音壁
110…騒音回折壁
12…能動遮音ユニット
121…検出マイクロフォン
122…スピーカ
123…エンクロージャ
1231…背板
1232…バッフル板
124…演算部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-11-08 
結審通知日 2005-11-11 
審決日 2005-11-22 
出願番号 特願2000-305382(P2000-305382)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (E01F)
P 1 113・ 832- ZA (E01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大森 伸一深田 高義  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 斎藤 利久
木原 裕
登録日 2004-07-30 
登録番号 特許第3581645号(P3581645)
発明の名称 能動遮音壁及び能動遮音ユニット  
代理人 藤田 考晴  
代理人 玉村 静世  
代理人 上田 邦生  
代理人 川上 美紀  
代理人 上田 邦生  
代理人 藤田 考晴  
代理人 川上 美紀  

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