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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05D |
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管理番号 | 1133309 |
審判番号 | 不服2002-15850 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-11-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-08-20 |
確定日 | 2006-03-16 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第261226号「減圧装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年11月 5日出願公開、特開平 5-289753〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年9月30日(パリ条約による優先権主張1992年3月31日、イギリス国)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「弁体(22)及び弁座(20)よりなる弁(12)を介して互いに連通する入口(6)及び出口(8)を備えたケーシング(2)を有し,前記出口(8)の圧力に応答するよう軸方向に伸縮可能なベローズ(50)を含み作動ロッド(38)を介して弁体(22)に作用する駆動手段(16)により,前記弁(12)の開閉が制御されるようにし,前記弁座(20)は,前記ケーシング(2)に固定された弁座本体(18)に形成され,該弁座本体(18)には,前記作動ロッド(38)を受容する案内通路(36)が設けられる減圧装置において, 前記ベローズ(50)の軸方向伸長により前記作動ロッド(38)が前記弁体(22)の開弁方向に移動し得るように,該ベローズ(50)は,前記ケーシング(2)に対して固定される軸方向一端に支持手段(52)を有し,且つその支持手段(52)と前記弁体(22)との中間に位置させた軸方向他端に,該作動ロッド(38)を係合させる可動壁(54)を有しており, 前記弁座本体(18)は,前記ケーシング(2)に対して前記駆動手段(16)側に取外し可能であり, 前記弁体(22)は,これを前記弁座本体(18)と共に前記ケーシング(2)に対して前記駆動手段(16)側に取外しできるように該弁座本体(18)に捕捉保持されることを特徴とする,減圧装置。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭56-120766号(実開昭58-28312号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、「圧力調整弁の調整機構」に関し、第1〜4図と共に次の事項が記載されている。 a)「弁筐の入口室と出口室の間に形成された弁孔を開閉する弁子と、前記入口室または出口室の室内圧力を感圧室で感知して変形する感圧体と、該感圧体と前記弁子を連係する弁棒とを有する圧力調整弁において、前記弁筐に突設された支持体に弁子ストローク調整ボルトが回転自在に支持され、該ボルトのねじ部に中央壁が螺嵌されたばね座の外周壁断面が非真円形に形成され、該外周壁にその回転を阻止するように外嵌された前記支持体の外周壁断面も非真円形に形成され、前記ばね座と感圧体の外面との間に調整ばねが介設されたことを特徴とする調整機構。」(実用新案登録請求の範囲) b)「以下、本考案を具えた圧力調整弁の実施例を第1,2図に基いて説明する。なお、本実施例はそのベローズが出口室々内圧力(2次側圧力)を感知する型式である。図において1は弁筐、2は入口3に連なる入口室、4は出口5に連なる出口室、6は両室2,4の仕切壁7に螺嵌された弁座で、その中央には弁孔8が穿設される。9は弁孔8の入口側着座端面8aに離着座自在に当接された球形弁子で、ストレーナ10内の復帰ばね11により着座されている。12は感圧体の一例のベローズであり、出口室4の室内圧力を下端開口12aを通して感知して伸縮するもので、その下端鍔12bはガスケツト13,14を介して弁筐1の上部に固定され、またその上端部12cは下記の減積材15により閉塞されている。そして16は弁棒で、その下端は弁孔8を貫通して弁子9に当接され、またその上端は減積材15に当接され、該減積材15を介してベローズ12の上端部12cに連係される。17は弁棒16の上端部に弾着されたEリングである。 前記減積材15は、ベローズ12の受圧面積を変化させることなくベローズ内部の感圧室Aの容積を大きく減少させるためにベローズ内に挿入されたもので、本実施例では皿形状に形成されている。そしてこの減積材15は、その皿形状の下端側中央凹部15aの下面が弁棒16の上端に当接され、また上端側外周鍔15bがベローズ12の上端部12cに固定される。なお、減積材15とベローズ12との一体成形も可能である。 また前記出口室4と感圧室Aとを仕切るオリフイスプレート18がCリング状ロツク部材19により着脱自在に弁筐1の出口室4の上壁に固定され、該プレート18には前記出口室4と感圧室Aとを連通するオリフイス20が穿設され、かつ該プレート18にはガイド孔21が穿設されて該ガイド孔21に前記弁棒16が摺動自在に内嵌されている。また弁筐1に突設された支持体22に弁子ストローク調整ボルト23が回転自在に支持され、該ボルト23のねじ部23aに中央壁が螺嵌されたばね座24の外周壁24aの外面が、多角形に形成され、該外周壁にその回転を阻止するように外嵌された前記支持体22の外周壁22aの内面も多角形に形成され、前記ばね座24と、ベローズ12の上端部に固定された減積材15の中央凹部15aとの間に調整ばね25が介設されている。26は調整ボルト23の上端部にピン27で固定された調整ハンドル、28は、弁筐1に下端部22bを螺嵌された筒形支持体22の周壁に穿設された大気連通孔である。」(明細書3頁3行〜5頁11行) c)「次に作用を説明する。入口室2には蒸気、空気等の制御すべき流体の1次圧が作用する。そこで弁子ストローク調整ハンドル26を回転させることによりばね座24を回転させずに下動して調整ばね25を圧縮してばね力を生じさせ、減積材15、弁棒16を介して弁子9を押し下げるので、該ばね力が弁子9に作用する上向閉弁力より大きくなれば、開弁状態となり、出口室4に流体が流入して2次圧が作用する。更に出口室4に流入した流体はオリフイスプレート18のオリフイス20よりベローズ12内部の感圧室Aへ流入し、ベローズ12の上端閉塞面を形成する減積材15の大気と2次圧の差圧が、調整ばね25に対する上向反力として働き、これがばね力と釣合つた点で弁子9のストロークが決定され、出口室4に流体の所定の2次圧が発生する。更に2次側の流体の消費が大になつた時は、それに応じ感圧室Aの圧力も下がるので、ベローズ12が収縮し、弁子9が下がり弁開度が増し、1次側流体が弁孔8から流入して2次側が所定の2次圧力に復帰しようとする。」(同書5頁12行〜6頁12行) d)「感圧室Aの容積は減積材15で大きく減少されているので、オリフイス20を通した少量の流体の移動により感圧室Aの室圧は出口室4に応答できかつベローズ12は伸縮でき、弁開度の制御の応答性は良い。」(同書6頁18行〜7頁2行) e)また、第1図には、弁子9が弁座6と共に弁筐1に対して調整ばね25と反対側に取外しできるようにされる構成が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「弁子9及び着座端面8aよりなる弁を介して互いに連通する入口3及び出口5を備えた弁筐1を有し,前記出口5の圧力に応答するよう軸方向に伸縮可能なベローズ12を含み弁棒16を介して弁子9に作用する調整ばね25により,前記弁の開度が制御されるようにし,前記着座端面8aは,前記弁筐1に螺嵌された弁座6に形成され,前記弁筐1に固定されたオリフイスプレート18には,前記弁棒16を摺動自在に内嵌するガイド孔21が設けられる圧力調整弁の調整機構において, 前記ベローズ12の軸方向収縮により前記弁棒16が前記弁子9の開弁方向に移動し得るように,該ベローズ12は,前記弁筐1に対して固定される弁筐1の上部にガスケツト13,14を有し,且つ他方端に,該弁棒16を係合させる減積材15を有しており, 前記弁座6は,前記弁筐1に対して前記調整ばね25と反対側に取外し可能であり, 前記弁子9は,これを前記弁座6と共に前記弁筐1に対して前記調整ばね25と反対側に取外しできるようにストレーナ10内の復帰ばね11により着座端面8aに着座される,圧力調整弁の調整機構。」 3.対比 本願発明と引用発明を対比すると、その作用・機能からみて、後者における「弁子9」が前者における「弁体」に相当し、以下同様に、「着座端面8a」が「弁座」に、「弁筐1」が「ケーシング」に、「弁棒16」が「作動ロッド」に、「調整ばね25」が「駆動手段」に、「弁の開度」が「弁の開閉」に、「螺嵌」が「固定」に、「弁座6」が「弁座本体」に、「摺動自在に内嵌」が「受容」に、「ガイド孔21」が「案内通路」に、「圧力調整弁の調整機構」が「減圧装置」に、「弁筐1の上部」が「軸方向一端」に、「ガスケツト13,14」が「支持手段」に、「他方端」が「軸方向他端」に、「減積材15」が「可動壁」に、それぞれ相当している。 また、引用発明における「軸方向収縮」と本願発明における「軸方向伸長」とは、「軸方向変位」との概念で共通する。 したがって、両者は、 「弁体及び弁座よりなる弁を介して互いに連通する入口及び出口を備えたケーシングを有し,前記出口の圧力に応答するよう軸方向に伸縮可能なベローズを含み作動ロッドを介して弁体に作用する駆動手段により,前記弁の開閉が制御されるようにし,前記弁座は,前記ケーシングに固定された弁座本体に形成され、前記作動ロッドを受容する案内通路が設けられる減圧装置において, 前記ベローズの軸方向変位により前記作動ロッドが前記弁体の開弁方向に移動し得るように,該ベローズは,前記ケーシングに対して固定される軸方向一端に支持手段を有し,且つ軸方向他端に,該作動ロッドを係合させる可動壁を有しており, 前記弁座本体は,前記ケーシングに対して取外し可能であり, 前記弁体は,これを前記弁座本体と共に前記ケーシングに対して取外しできるようにされる,減圧装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 作動ロッドを受容する案内通路が設けられる部位に関し、本願発明が、「弁座本体」としているのに対し、引用発明は、弁座本体とは別体の「オリフイスプレート」である点。 (相違点2) 作動ロッドが弁体の開弁方向に移動する際のベローズの軸方向変位に関し、本願発明が「軸方向伸長」としているのに対し、引用発明は「軸方向収縮」である点。 (相違点3) ベローズの軸方向他端に関し、本願発明が「その(軸方向一端の)支持手段と弁体との中間に位置させた」ものであるのに対し、引用発明はそのような位置関係となっていない点。 (相違点4) 弁座本体及び弁体の取外しに関し、本願発明が「駆動手段側に」取外しをするものであるのに対し、引用発明は「駆動手段(調整ばね25)と反対側に」取外しをするようにした点。 (相違点5) 弁体に関し、本願発明が「弁座本体に捕捉保持」されるものであるのに対し、引用発明は、ストレーナ10内の復帰ばね11により弁座(着座端面8a)に着座されるものの、捕捉保持されるか否か明確にされていない点。 4.当審の判断 上記相違点について以下検討する。 (1)相違点1について 例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-148310号公報(第1図、第3図、第5図、第7図及び第8図参照。以下、「文献1」という。)に見られるように、作動ロッド(「伝達棒41」が相当)を受容する案内通路を、オリフィス付きの弁座本体(「弁座板30」が相当)に設けることは、減圧弁の分野における周知技術であるから、かかる周知技術を引用発明において採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。 (2)相違点2及び3について 例えば特開昭63-95510号公報(第2図、第4図及び第6図参照)に見られるように、作動ロッドが弁体の開弁方向に移動する際のベローズの軸方向変位を軸方向伸長とし、かつ、ベローズの軸方向他端を軸方向一端の支持手段と弁体との中間に位置させることは、減圧弁の分野における周知技術であるから、かかる周知技術を引用発明において採用し、相違点2及び3に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。 (3)相違点4について 例えば上記文献1あるいは特開昭59-60518号公報(第6図及び第8図参照。以下、「文献2」という。)に見られるように、弁座本体及び弁体を駆動手段側に取外しできるようにすることは、減圧弁の分野における周知技術であるから、かかる周知技術を引用発明において採用し、相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。 (3)相違点5について 例えば上記文献2に見られるように、弁座本体及び弁体を1個の組立ユニット体とすること、即ち、弁体を弁座本体に捕捉保持することは、減圧弁の分野における周知技術であるから、かかる周知技術を引用発明において採用し、相違点5に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るところである。 そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-10-13 |
結審通知日 | 2005-10-19 |
審決日 | 2005-11-02 |
出願番号 | 特願平4-261226 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G05D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森林 克郎 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
丸山 英行 高木 進 |
発明の名称 | 減圧装置 |
代理人 | 仁木 一明 |
代理人 | 落合 健 |