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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F23G
管理番号 1133363
審判番号 不服2004-9025  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-30 
確定日 2006-03-16 
事件の表示 平成11年特許願第 9102号「廃家電品再資源化処理方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月25日出願公開、特開2000-205528〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年1月18日の出願であって、平成15年11月21日付け(発送日:同年12月2日)で拒絶の理由が通知され、これに対し、平成16年1月30日に意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、その後、同年3月17日付け(発送日:同月30日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月30日に審判請求がなされるとともに、同年5月28日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年5月28日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年5月28日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は、平成16年1月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1について、同項に記載した発明を特定するために必要な事項である「各炭化熱分解室内の温度を各炭化熱分解室室内毎に制御し、」について「廃家電品の搬送に合わせて順に高める」との限定を付加し、更に、「各炭化熱分解室にて炭化熱分解により生ずる分解ガス」について「各炭化熱分解室から気体の状態で各室毎に独立して取出し」との限定を付加することを含むものである。

(2)本件補正の適否
本願の出願当初の明細書又は図面には、上記「各炭化熱分解室内の温度を各炭化熱分解室室内毎に制御し、」について「廃家電品の搬送に合わせて順に高める」こと、また、「各炭化熱分解室にて炭化熱分解により生ずる分解ガス」について「各炭化熱分解室から気体の状態で各室毎に独立して取出」すことは記載されていない。更に、これらのことが、出願当初の明細書又は図面の記載から自明な事項とも認められない。

したがって、本件補正は、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年1月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。

「廃家電品を圧砕する圧砕工程と、該圧砕された廃家電品を無酸素閉鎖密閉雰囲気下において低温間接加熱により炭化熱分解させる熱分解工程と、該熱分解された廃家電品を破砕する破砕工程と、該破砕された廃家電品を分別する分別工程とを備え、前記熱分解工程は複数個の炭化熱分解室を用い、隣り合う各炭化熱分解室を開閉自在な隔壁により独立閉鎖密閉構造にし、各炭化熱分解室内を無酸素閉鎖密閉雰囲気下にした後、各炭化熱分解室内の温度を各炭化熱分解室室内毎に制御し、各炭化熱分解室にて炭化熱分解により生ずる分解ガスの組成成分としての単体成分を分離して取り出す組成成分分離工程を備えてなることを特徴とする廃家電品再資源化処理方法。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した特開昭59-217410号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「本発明は、固形都市廃棄物の分解蒸留に一般に関し、さらに詳しくは固形都市廃棄物が熱分解されるコークス炉のような多数の加熱装置に搬送されて装入されるシステムに関する。」(第3頁右下欄第20行-第4頁左上欄第3行)

・「「固形都市廃棄物」の用語は、回収される厨芥、屑、植物質、金属、ガラスなどを初め産業および居住廃棄物などおよび下水汚泥を包含すると考える。」(第4頁左上欄第10-13行)

・「本発明において用いられる荷造りされた材料には、炉を約1800°Fの程度の温度に予熱することによって高い加熱速度を得ることができる。熱分解サイクルは、1装入材料について約4時間かかる。熱分解は、空気または他の燃焼支持ガス不存在下に起こり、従って間接熱のみを加えることによって得られることに留意されたい。熱分解によって数種の有用な生成物・例示的には、ガス、油、有機液体および炭素質残留物を生成する。」(第6頁左下欄第2-10行)

・「第1図は、固形都市廃棄物の処理システムの基本的要素および一般的操作を示すブロック図である。第1図に示すシステムの基本面には、原料処理10、熱分解12および副生物の回収14のような3個の基本面がある。
簡単には、原料処理系10は破砕機11、流れ分割機13、多数の荷造り機15、ベール移送処理系17、および炉装入装置19を含む。原料固形都市廃業物は、広範な前処理を受けないが、単に破砕機11中で微紛砕されて、平均粒径4インチまたはそれ以下を生成する。」(第8頁左上欄第1-11行)

・「炉20は、気密となるようにシールされ、間接に高温に加熱されて、その中に装入された荷造りされた廃棄物を熱分解する。」(第8頁右上欄第9-11行)

・「装着/排出モジュールは、熱分解室ドアの1つの前部と一直線に合わせ、ドアを外し、このドアにシーラーを調え、次いでラムによってマガジンからベールを炉中に装入し、ドアを閉じ、次いで空マガジンを組み合せドッグにもどす。」(第11頁右上欄第16行-左下欄第1行)

・「第6図を参照して、水平配置レトルトの代表的バッテリー30を示す。バッテリー30はシリカレンガ造りであり、しかも多数の炉室32、33、34を共通の基礎の上に含む。(中略)排気配管36は、発生熱分解ガスが発生したときに、炉室32、33、34からこの発生熱分解ガスを個々のスタンドパイプ37、37′、37"およびつる首38、38′、38"を通して、捕集する。」(第12頁左下欄第9-20行)

・「第4サイクル後、後部ドア40を開放し、次いで装入材料残留物を後部炉アンローダーによって移送車におろす。」(第13頁右上欄第3-5行)

・「生成物回収」(第13頁左下欄第5行)

・「最終工程として、飽和および不飽和脂肪族炭化水素、水素、一酸化炭素およびニ酸化炭素を含有する非凝縮性ガスは、これらのガスが液化を受ける圧縮機26に入る。例示的に浸透分離器および分留塔を含む分離器27は液化ガスをその個々の成分、すなわち二酸化炭素、一酸化炭素、水素、メタン、エタン、プロパン、プロペンおよびブタンに分離する。これらのガスの若干のものは、燃料として炉を下から熱するために使用でき、この割合は、炉配管35(第6図)にもどされる。メタンおよびエタンは天然ガスの補足として地方公益事業に販売できる。二酸化炭素および水素もまた商業用ガスとしての価値を有する。」(第14頁右上欄第13行-左下欄第5行)

・「残留物は、鉄金属および非鉄金属、ガラスおよびチャーを含有する。鉄金属および非鉄金属は、還元性雰囲気の結果として、熱分解法によって未酸化のままで存在する。この鉄金属は、例示的には金属ベールタイを取り出す電磁石および当業界において既知のようにほとんどの他金属を除くベルト磁気分離機を含み得る磁気分離機5において分離される。アルミニウムは、第1図に示すうず電流分離器6を用いてまたは当業界に既知の他の技術によって除かれる。
ガラスは集塊され、しかも混合色のものであるが、本質的に汚染がないものである。ガラス質の大きさはチャーと比較して小さいために、ガラスはチャーをふるい7を通すことによって回収のために除かれる。残存する炭素質チャーは、最初の固形都市廃棄物に比較して容積20:1に減少される。その物性は無煙炭、木炭または活性炭と同様であり、しかもこのチャーは燃料・路床充てん材または埋め立てとして使用できる。」(第14頁左下欄第9行-右下欄第7行)

したがって、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例発明」という。)。

「固形都市廃棄物を破砕する破砕工程と、該破砕された固形都市廃棄物を無酸素閉鎖密閉雰囲気下において低温間接加熱により炭化熱分解させる熱分解工程と、該熱分解された固形都市廃棄物を分別する分別工程とを備え、前記熱分解工程は複数個の炉室を用い、隣り合う各炉室をそれぞれ独立して形成することにより独立閉鎖密閉構造にし、各炉室内を無酸素閉鎖密閉雰囲気下にした後、各炉室にて炭化熱分解により生ずる分解ガスの組成成分としての単体成分を分離して取り出す生成物回収工程を備えてなる固形都市廃棄物再資源化処理方法。」

(3)本願発明と引用例発明との対比
引用例発明の「炉室」は、本願発明の「炭化熱分解室」に、同様に、「生成物回収工程」は、「組成成分分離工程」に相当し、また、固形都市廃棄物と廃家電品とは、ともに廃棄物といえることから、両者は、

「廃棄物を無酸素閉鎖密閉雰囲気下において低温間接加熱により炭化熱分解させる熱分解工程を備え、前記熱分解工程は複数個の炭化熱分解室を用い、隣り合う各炭化熱分解室を独立閉鎖密閉構造にし、各炭化熱分解室内を無酸素閉鎖密閉雰囲気下にした後、各炭化熱分解室にて炭化熱分解により生ずる分解ガスの組成成分としての単体成分を分離して取り出す組成成分分離工程を備えてなる廃棄物再資源化処理方法。」

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、再資源化処理方法の対象である廃棄物を廃家電品とする廃家電品再資源化処理方法に係るものであり、熱分解工程の前に、廃家電品を圧砕する圧砕工程を備え、熱分解工程の後に、熱分解された廃家電品を破砕する破砕工程と、該破砕された廃家電品を分別する分別工程とを備えるのに対して、引用例発明は、再資源化処理方法の対象である廃棄物を固形都市廃棄物とする固形都市廃棄物再資源化処理方法に係るものであり、熱分解工程の前に、固形都市廃棄物を破砕する破砕工程を備え、熱分解工程の後に、該熱分解された固形都市廃棄物を分別する分別工程とを備える点。

[相違点2]
本願発明では、隣り合う各炭化熱分解室を開閉自在な隔壁により独立閉鎖密閉構造とするのに対して、引用例発明では、隣り合う各炭化熱分解室をそれぞれ独立して形成することにより独立閉鎖密閉構造とした点。

[相違点3]
本願発明では、各炭化熱分解室内の温度を各炭化熱分解室室内毎に制御するのに対して、引用例発明では、そのような限定がない点。

(4)相違点についての判断
相違点1について、
引用例発明の固形都市廃棄物再資源化処理方法を、廃家電品に適用して、廃家電品再資源化処理方法とすること、その際、廃家電品の特性に合わせて、熱分解工程の前の破砕工程を圧砕工程とし、かつ、熱分解工程の後の分別工程の前に破砕工程を備えることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点2について、
本件明細書又は図面には、隣り合う各炭化熱分解室を開閉自在な隔壁により独立閉鎖密閉構造とした点について、その第0011段落に「隣り合う各室は開閉自在なし隔壁により独立閉鎖密閉構造に構成され」とのみ記載されているだけであり、そのように構成することの技術的意義は全く記載されていない。

そして、引用例発明においても、各炭化熱分解室の側壁を開閉自在とすれば、例えば、それらの清掃及び廃棄物の投入口から排出口への移動等を容易に行うことができると考えられることから、引用例発明において、隣り合う各炭化熱分解室を独立閉鎖密閉構造とするために、それぞれを独立して形成することに代えて、開閉自在な隔壁を形成することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。

なお、本件については、平成17年12月20日に審判請求人と面接を行った。その結果からすると、各炭化熱分解室を開閉自在な隔壁により独立閉鎖密閉構造とした点の技術的意義は、複数の炭化熱分解室内の温度を順次高く設定し、廃棄物を温度が低く設定された炭化熱分解室から順次搬送し、各炭化熱分解室から単体成分がほぼ特定のものに限られた分解ガスを排出し、したがつて、各炭化熱分解室から排出された分解ガスをそれぞれ独立して取りだすことにより、分解ガスの単体成分を精度よく分離できるということにあるものと解される。そして、このように解することは、上記のとおり却下した本件補正の内容とも一致する。

しかし、上記した技術的意義は、本件当初明細書又は図面には記載されておらず、また、これらの記載から自明な事項とも認められない。したがって、審判請求人は、補正の機会を求めるが、上記した技術的意義が不明確であるとの拒絶の理由を通知したとしても、これに対する補正は、上記本件補正と同様に却下されるものになることが明らかであるから、このような拒絶の理由の通知は行わない。

相違点3について
引用例発明において、各炭化熱分解室において、炭化熱分解を適切に行うために、各炭化熱分解室内の温度を各炭化熱分解室室内毎に制御することは、当業者が適宜なし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例の記載から当業者が予測できた範囲内のものである。

(5)むすび
本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-12 
結審通知日 2006-01-17 
審決日 2006-01-30 
出願番号 特願平11-9102
審決分類 P 1 8・ 561- Z (F23G)
P 1 8・ 121- Z (F23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 克彦永石 哲也  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
発明の名称 廃家電品再資源化処理方法及びその装置  
代理人 後藤 政喜  
代理人 後藤 政喜  

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