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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B09B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B09B |
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管理番号 | 1133412 |
審判番号 | 不服2003-14766 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-12-02 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-31 |
確定日 | 2006-03-20 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第139311号「廃棄物の脱塩素処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月 2日出願公開、特開平10-314697〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年5月15日の特許出願であって、平成15年6月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年7月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月1日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年9月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成15年9月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] 平成15年6月9日付けの手続補正書により補正された本件補正前の請求項2は、「塩素を含む廃棄物を、砂等の加熱媒体粒子あるいは加熱ガスにより加熱して、該廃棄物を熱分解脱塩素して廃棄物に含有する塩素量の約80wt%以上を分離し、脱塩素処理後の固形物を粉砕した後に撹拌翼を有する洗浄槽にて水洗して廃棄物に含まれる水溶性の塩化物を溶解分離し、水洗後の固形物にアルカリ性物質を添加した後、該アルカリ添加した固形物をガス化炉または燃焼炉内に供給し、約700〜1000℃の温度でガス化または燃焼するとともに、該固形物中に残留する不溶解塩素を固定化することを特徴とする廃棄物の脱塩素処理方法。」であり、本件補正後の請求項2は、 「塩素を含む廃棄物を熱分解脱塩素して廃棄物に含有する塩素量の約80wt%以上を分離する熱分解工程と、該熱分解工程で廃棄物が軟化又は溶融することによって発生した残留固形物を水洗して廃棄物に含まれる水溶性の塩化物を溶解分離する溶解分離工程と、 前記水洗後の固形物にアルカリ性物質を添加した後、該アルカリ添加した固形物を加熱媒体粒子とともに流動層炉内に供給し、約700〜1000℃の温度でガス化または燃焼させて、該固形物中に残留する不溶解塩素を固定化する工程とよりなり、前記熱分解工程を構成する熱分解炉の構造が、熱分解容器内に廃棄物を撹拌・混合させる工程、若しくは熱分解容器自体が回転することにより前記廃棄物を撹拌・混合させる構造であるとともに、前記流動層炉内から排出される燃焼排ガスの一部を分岐して前記熱分解工程に供給することを特徴とする廃棄物の脱塩素処理方法。」であり、本件補正により「砂等の加熱媒体粒子あるいは加熱ガスにより加熱して」という要件を削除して熱分解の加熱方法を一般化し、「前記熱分解工程を構成する熱分解炉の構造が、熱分解容器内に廃棄物を撹拌・混合させる工程、若しくは熱分解容器自体が回転することにより前記廃棄物を撹拌・混合させる構造であるとともに、前記流動層炉内から排出される燃焼排ガスの一部を分岐して前記熱分解工程に供給すること」を付加するもので、熱分解工程に燃焼排ガスの一部を供給する構成が付加・限定されるとしても、本件補正後の加熱に補正前の「砂等の加熱媒体粒子あるいは加熱ガス」以外のものも含まれるようになった以上、前記の要件の削除は、請求の範囲を拡張するものであり、特許請求の範囲の減縮に当たらない補正といわざるを得ない。そして、これが請求項の削除、誤記の訂正または明りょうでない記載の釈明に当たらないことは明らかである。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲についてした補正が、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しないものであるから、同法第163条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成15年9月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年6月9日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項に特定される、以下のとおりのものである。 「塩素を含む廃棄物を、砂等の加熱媒体粒子あるいは加熱ガスにより加熱して、該廃棄物を熱分解脱塩素して廃棄物に含有する塩素量の約80wt%以上を分離し、脱塩素処理後の固形物を水洗して廃棄物に含まれる水溶性の塩化物を溶解分離し、水洗後の固形物にアルカリ性物質を添加した後、該アルカリ添加した固形物をガス化炉または燃焼炉内でガス化または燃焼するとともに、該固形物中に残留する不溶解塩素を固定化することを特徴とする廃棄物の脱塩素処理方法。」 (1)引用文献 (ア)原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開平9-38618号公報(以下、「引用文献1」という。)には、シュレッダーダストの処理方法に関し以下の記載がある。 (ア-1)「シュレッダーダストを非酸化性雰囲気において250℃以上350℃以下で乾留する低温乾留工程と、該低温乾留工程により得られた低温乾留残渣に含まれる塩素分を除去する洗浄工程と、該洗浄工程により得られた洗浄残渣を非酸化性雰囲気において450℃以上600℃以下で乾留する高温乾留工程とを有することを特徴とするシュレッダーダストの処理方法。」(請求項1) (ア-2)「低温乾留の温度に関しては、250℃以上350℃以下であることが好ましい。というのは、この温度範囲であると、ポリ塩化ビニルの熱分解が十分に起こり、かつ、システム全体の温度が塩化水素ガスによる装置腐食が起こらない程度に低温に抑えられるからである。乾留温度が250℃に満たないと、ポリ塩化ビニルの熱分解が不十分となるおそれがあり、乾留温度が350℃を超えると、システム全体の温度が高くなりすぎ塩化水素ガスによる装置腐食が発生するおそれがあるので好ましくない。」(段落【0026】) (ア-3)「ガス洗浄工程S3 は、スクラバ50においてなされ、低温乾留ガスに対してアルカリ洗浄、水洗浄等の洗浄が行われることにより、低温乾留ガス中の塩化水素ガスが完全に除去される。」(段落【0029】) (ア-4)「洗浄プロセス(洗浄工程)B’は、低温乾留装置10および集塵器20から得られた低温乾留残渣を対象として、洗浄装置90においてなされるもので、低温乾留残渣中の金属塩化物の大部分が水溶性であることを利用して、例えば水洗により塩素分の除去が行われ、低温乾留残渣は洗浄残渣となる。引き続いて、天日によるあるいは乾燥器による洗浄残渣の乾燥が行われる。」(段落【0031】) (ア-5)「ガス洗浄工程S9 は、スクラバ150においてなされ、凝縮工程S7 において凝縮されなかった高沸点の炭素化合物を含有する高温乾留ガスに対してアルカリ洗浄、水洗浄等の洗浄が行われることにより、高温乾留ガスが清浄化され、再利用に好ましい可燃乾留ガス(燃料)が得られる。」(段落【0039】) (イ)原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開平7-305825号公報(以下、「引用文献2」という。)には、塩素含有プラスチックの処理方法に関し以下の記載がある。 (イ-1) 「 塩素含有プラスチックを主体とする廃棄物にCa化合物を加えることにより廃棄物中の塩素をCaと反応させて処理する廃棄物の熱分解または燃焼またはガス化処理する方法において、Ca源として貝殻粉末を使用することを特徴とする塩素含有プラスチックの処理方法。」(【請求項1】) (イ-2)「【従来の技術】塩素含有プラスチックを主体とする廃棄物は、そのまま焼却するか埋め立て処分をする方法が行われている。最近では、該廃棄物を微粉砕した後、該微粒子の廃棄物にCa化合物を添加して混合・反応させ、その後圧縮して乾燥・中和固化の処理をおこなって固形燃料として焼却している例もある。また、前記廃棄物を燃焼後に発生する燃焼排ガス中にCa化合物の微粉を添加して塩素をCaと反応させて処理する例もある。 【発明が解決しようとする課題】塩素含有プラスチックを熱分解またはガス化または燃焼すると、塩化水素(HCl)が発生し、さらに運転条件によっては有害物質であるダイオキシンを副生する。そこで、対策としてCa化合物を添加しCaCl2 として塩素を生成ガスから分離している。このCa化合物としては、一般に石灰石CaCO3 やこれを焼成して得られる消石灰Ca(OH)2 、生石灰CaOが使用される。」(段落【0002】〜【0003】) 記載事項(ア-1)〜(ア-5)を本願発明の記載に沿って整理すると、引用文献1には、「シュレッダーダストを250℃以上350℃以下で乾留する低温乾留工程と、該低温乾留工程により得られた低温乾留残渣に含まれる塩素分である金属塩化物の大部分が水溶性であることを利用して、例えば水洗により塩素分を除去する洗浄工程と、該洗浄工程により得られた洗浄残渣を非酸化性雰囲気において450℃以上600℃以下で乾留する高温乾留工程と高温乾留ガスに対してアルカリ洗浄等の洗浄が行われることにより、高温乾留ガスを清浄化するガス洗浄工程を有することを特徴とするシュレッダーダストの処理方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (2)対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「シュレッダーダスト」、「低温乾留工程」、「低温乾留残渣に含まれる塩素分である金属塩化物の大部分が水溶性であることを利用して、例えば水洗により塩素分を除去する洗浄工程」及び「洗浄残渣を乾留する高温乾留工程」がそれぞれ、本願発明の「塩素を含む廃棄物」、「熱分解脱塩素」、「脱塩素処理後の固形物」、「脱塩素処理後の固形物を水洗して廃棄物に含まれる水溶性の塩化物を溶解分離」及び「ガス化炉または燃焼炉内でガス化または燃焼する」に相当することは明らかである。 したがって、両発明は、「塩素を含む廃棄物を、熱分解脱塩素して、脱塩素処理後の固形物を水洗して廃棄物に含まれる水溶性の塩化物を溶解分離し、ガス化炉または燃焼炉内でガス化または燃焼する廃棄物の脱塩素処理方法。」で一致し、以下の (a)本願発明は、砂等の加熱媒体粒子あるいは加熱ガスにより加熱して熱分解脱塩素するのに対して、引用発明では、250℃以上350℃以下で乾留する、方法について記載のない点、 (b)本願発明は、廃棄物に含有する塩素量の約80wt%以上を分離するのに対して、引用発明では、低温乾留により除去される塩素量については記載のない点、 (c)本願発明は、水洗後の固形物にアルカリ性物質を添加した後ガス化又は燃焼して該固形物中に残留する不溶解塩素を固定化するのに対して、引用発明では、高温乾留ガスに対してアルカリ洗浄等の洗浄が行われることにより、高温乾留ガスを清浄化するガス洗浄工程を有する点、 で相違する。 (3)判断 相違点(a)について検討する。塩素含有プラスチックを含む廃棄物の熱分解工程において砂等からなる耐熱性粒子を用いることは周知手段にすぎない(例えば、特開平7-316399号公報、特開平9-109149号公報参照。)ものであるから、相違点(a)に係る構成の特定は、当業者であれば適宜なし得る程度のことである。 相違点(b)については、記載事項(ア-2)にも「乾留温度が250℃に満たないと、ポリ塩化ビニルの熱分解が不十分となるおそれがあり」と記載されるように引用発明においても十分に熱分解をおこさせているから、塩素量も80%以上熱分解しているものと認められるので本質的な相違ではない。 さらに、相違点(c)については、上記引用文献2についての記載事項 (イ-2)には「最近では、該廃棄物を微粉砕した後、該微粒子の廃棄物にCa化合物を添加して混合・反応させ、その後圧縮して乾燥・中和固化の処理をおこなって固形燃料として焼却している例もある。また、前記廃棄物を燃焼後に発生する燃焼排ガス中にCa化合物の微粉を添加して塩素をCaと反応させて処理する例もある。」と記載され、廃棄物の燃焼前にCa化合物を添加する方法と燃焼排ガス中に添加する技術事項が慣用されているものと認められ、しかも、引用文献1では、高温乾留ガスに対してアルカリ洗浄等の洗浄が行われることにより、高温乾留ガスを清浄化するガス洗浄工程を有することが記載されているので、引用文献1における燃焼後のアルカリ洗浄に換えてCa化合物、すなわち、アルカリ性物質を水洗後の固形物に添加し、ガス化又は燃焼して残留する塩素を処理することは、当業者であれば容易に推考し得る程度のことにすぎず、このことにより得られる効果も格別のものとすることができない。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1、2に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-01-18 |
結審通知日 | 2006-01-20 |
審決日 | 2006-02-03 |
出願番号 | 特願平9-139311 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(B09B)
P 1 8・ 121- Z (B09B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中野 孝一 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
大黒 浩之 増田 亮子 |
発明の名称 | 廃棄物の脱塩素処理方法 |
代理人 | 高橋 昌久 |
代理人 | 花田 久丸 |