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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24H |
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管理番号 | 1133484 |
審判番号 | 不服2004-13539 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-10-03 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-01 |
確定日 | 2006-03-23 |
事件の表示 | 特願2001- 91710「横置き型給湯器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 3日出願公開、特開2002-286291〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年3月28日の出願であって、平成16年5月24日付け(発送日:同年6月1日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月1日に審判請求がなされ、平成17年10月21日付けで当審から拒絶理由が通知され、これに対して、平成17年12月22日に意見書が提出されると共に手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、平成17年12月22日付け手続補正により補正された請求項1ないし4に記載された次のとおりのものと認められる 【請求項1】 円筒状を呈して筒軸方向が略水平となるように設置された横長の貯湯タンクと、該貯湯タンクの内部下方に配置されて該貯湯タンクに水を供給する給水管と、前記貯湯タンクに貯えられた水を前記貯湯タンクの下部から取り出して加熱し該貯湯タンクの上部に環流させる加熱手段とを備え、 前記給水管の下部に前記筒軸方向に沿って複数の給水孔が形成され、該給水孔から下方に排出された水が前記貯湯タンクの筒壁面に向けて供給される横置き型給湯器において、 前記貯湯タンクの筒壁面に、ほぼ前記給水管の高さで前記筒軸方向に延び、前記筒壁面に向けて供給された水のうち当該筒壁面に沿って上昇する水の流動を阻止するための邪魔板を、前記給水管の両側を挟むように一対設けたことを特徴とする横置き型給湯器。 【請求項2】 前記邪魔板は、自由端が水平方向又は前記貯湯タンクの下方に向かって形成されることを特徴とする請求項1に記載の横置き型給湯器。 【請求項3】 前記給水管は、前記筒軸方向に沿った管状を呈し、前記給水管の管内を通った水が前記給水孔から排出されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の横置き型給湯器。 【請求項4】 前記給水孔は、前記筒軸方向に沿って略等間隔に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の横置き型給湯器。 なお、上記手続補正に係る手続補正書の請求項1における「接地」の記載は、「設置」の誤記であると認められるので、上記のように認定した。 3.引用例 (1)特開平8-136052号公報 当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-136052号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ・「 横長形状をした貯湯タンクと、この貯湯タンクの下部からの水を加熱して貯湯タンクの上部に流す加熱手段とを備え、貯湯タンクと加熱手段とを別に収納した給湯システムにおいて、 長手形状で内部に通水可能な給水具を、貯湯タンク内の下方にかつ貯湯タンクの長手方向に沿って設け、 貯湯タンク内の給水具の端部をふさぎ、 給水具に供給された水を貯湯タンク内に排出する複数の排水孔を、給水具の長手方向に沿って、かつ下方および斜め下方の少なくとも一方に設けたことを特徴とする給湯システム。」(【請求項4】) ・「貯湯タンク30は、高さに比べて横に長い形状つまり横長形状をしている。この形状として、断面が円筒状のものや、角形のものがある。」(段落【0006】) ・「加熱手段の加熱装置10は、貯湯タンク30内の水の層101から小量の水を取り出し、電気ヒータ(図示を省略)で加熱して貯湯タンク30の上部に流す。この加熱装置10の一例を、図3に示す。」(段落【0027】) ・「それぞれの排水孔53から排出される水は、図5に示すように、貯湯タンク30の長手方向の下方の、貯湯タンク30の内壁面50Aに当たって四方に分散される。」(段落【0035】) 上記記載事項及び図面の記載からみて、引用例1には、 「円筒状を呈して長手方向が略水平となるように設置された横長形状の貯湯タンク30と、該貯湯タンク30内の下方にかつ貯湯タンクの長手方向に沿って設けられ、該貯湯タンク30に水を供給する長手形状で内部に通水可能な管である給水具50と、前記貯湯タンクに貯えられた水を前記貯湯タンクの下部から取り出して加熱し該貯湯タンクの上部に流す加熱手段(加熱装置10)とを備え、前記給水具50の下方に前記長手方向に沿って複数の排水孔53が設けられ、該排水孔から下方に排出された水が前記貯湯タンク30の内壁面50Aに向けて供給される横置き型給湯システム」 が記載されている。 (2)特開平4-20745号公報 同じく、当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-20745号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ・「[産業上の利用分野]本発明は貯湯式給湯機に関するものであり、」(1頁左下欄末行〜同頁右下欄1行) ・「[作用]給水口5からタンク1内に流入される流入水は整流板3にて形成された拡散室4内に流入し、続いて開口部6から邪魔板7によって整流板3の上方のタンク1内底部に徐々に流出される。そして、このように流入水は拡散室4内にて流速が減速された後に開口部6及び邪魔板7によってタンク1内の底部に流出されることによってタンク1内の温水を攪拌したりするようなことなくタンク1内に給水されるものであり、タンク1内に貯えられた温水を下方から押しあげて効率的な出湯を行うことができる。 また、拡散室4内において給水口5の下流側に滞留板8を配置し、この滞留板8と整流板3との開にスリット状の開口を有する拡散流出口9を設けるようにしてあると拡散室4内に流入される流入水は拡散室4内において拡散がより一層効果的に行なわれるものとなり、流速の減速が確実に行なわれる。」(2頁右下欄3行〜3頁左上欄1行) ・「減速された流入水は開口部6を通って拡散室4から整流板3の上方に流れるが、このまま上方に流入するとタンク1内の温水を攪拌してしまうため開口部6の上方には邪魔板7を設けてあり、この邪魔板7により流入水は横方向に導かれヒータ2aの下面に沿ってタンク1内に流入し、ヒータ2aによって加熱されて温水になる。このような構成としてあることにより、減速された流入水がタンク1内の温水を攪拌することなくタンク1内の底部のヒータ2a近傍に供給され、ヒータ2aによって加熱されてタンク1内の温水を層状に押しあげて効率的に吐出口15より吐出させるようにしてある。」(3頁左下欄7〜19行) 3.対比・判断 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用例1の発明を対比すると、引用例1に記載された発明における「円筒状を呈して長手方向が略水平となるように設置された横長形状の貯湯タンク30」は、本願発明における「円筒状を呈して筒軸方向が略水平となるように設置された横長の貯湯タンク」に相当し、以下同様に「給水具50」は「給水管」に、「前記貯湯タンクに貯えられた水を前記貯湯タンクの下部から取り出して加熱し該貯湯タンクの上部に流す加熱手段(加熱装置10)」は「前記貯湯タンクに貯えられた水を前記貯湯タンクの下部から取り出して加熱し該貯湯タンクの上部に環流させる加熱手段」に、「排水孔53」は「給水孔」に、「該排水孔から下方に排出された水が前記貯湯タンク30の内壁面50Aに向けて供給される」は「該給水孔から下方に排出された水が前記貯湯タンクの筒壁面に向けて供給される」に、「横置き型給湯システム」は「横置き型給湯器」にそれぞれ相当する。 したがって、両者は、 「円筒状を呈して筒軸方向が略水平となるように設置された横長の貯湯タンクと、該貯湯タンクの内部下方に配置されて該貯湯タンクに水を供給する給水管と、前記貯湯タンクに貯えられた水を前記貯湯タンクの下部から取り出して加熱し該貯湯タンクの上部に環流させる加熱手段とを備え、 前記給水管の下部に前記筒軸方向に沿って複数の給水孔が形成され、該給水孔から下方に排出された水が前記貯湯タンクの筒壁面に向けて供給される横置き型給湯器。」 の点で一致し、次の点で相違する。 〔相違点〕 本願発明が、「貯湯タンクの筒壁面に、ほぼ前記給水管の高さで前記筒軸方向に延び、前記筒壁面に向けて供給された水のうち当該筒壁面に沿って上昇する水の流動を阻止するための邪魔板を、前記給水管の両側を挟むように一対設けた」構成を有するのに対して、引用例1に記載の発明は、かかる構成がない点。 前記の相違点について検討する。 引用例2には、上記2.(2)の摘示事項及び図面の記載からみて、貯湯式給湯機において、給水口5からタンク1内に流入する流水の流速を減速させつつタンクの底壁を沿わせ、さらに側壁に沿って上昇させないために、流入水を横方向に導くようにタンクの側壁に邪魔板7を設け、減速した流水をタンク内の温水を攪拌することがないようにした点が記載されている。 してみると、引用例1に記載されたものにおいて、タンクの壁面に沿って上昇しようとする流入水の流動を阻止し横方向に導くために、引用例2に記載された邪魔板を設けることは、引用例1と引用例2は、共に湯層と冷水層を分離する貯湯式給湯器という技術分野に属する技術として共通しているから、当業者が容易になし得たことである。 さらに、邪魔板を設けるに際し、邪魔板を前記給水管の両側を挟むように一対設けることは、円筒状タンクの形状の左右の対称性を考えれば、当業者が容易に想到し得たことである。 また、邪魔板の位置はタンク下部の水の層をどこまでにするかに応じて当業者が適宜設定することであり、邪魔板の位置を給水管の高さとした点は、当業者が適宜容易になし得た設計事項である。 そして、本願請求項1に係る発明の効果は引用例1および引用例2から予測し得る程度であって格別なものではない。 したがって、本願請求項1に係る発明は引用例1に記載された発明および引用例2に記載の発明基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-01-23 |
結審通知日 | 2006-01-24 |
審決日 | 2006-02-06 |
出願番号 | 特願2001-91710(P2001-91710) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F24H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保 克彦 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
櫻井 康平 長浜 義憲 |
発明の名称 | 横置き型給湯器 |
代理人 | 西脇 民雄 |
代理人 | 西脇 民雄 |