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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A24D
管理番号 1133537
審判番号 不服2003-1245  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-04-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-21 
確定日 2006-03-22 
事件の表示 平成5年特許願第191693号「喫煙物」拒絶査定不服審判事件〔平成6年4月12日出願公開、特開平6-98747〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年7月5日の出願(パリ条約による優先権主張1992年7月4日、英国)であって、その請求項1乃至12に係る発明は、平成15年2月17日付の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「換気手段と煙草充填材ロッドと煙草煙用フィルターエレメントとからなり、このフィルターエレメントは煙草煙の蒸気相成分を減少させる手段からなる部分と該エレメントの長手方向に延びた煙草煙の流路である部分とからなり、前記蒸気相成分減少手段からなる部分は、煙草煙の流路である部分の周囲を環状に延びる喫煙物において、前記換気手段は、喫煙時に煙草煙が前記煙草煙の蒸気相成分減少手段からなる部分から離れて導かれ且つ煙草煙の蒸気相成分が、前記蒸気相成分を減少させるために前記蒸気相成分減少手段からなる部分内に放散し得るように前記フィルターエレメントの上流端又は上流端の方に位置していることを特徴とする喫煙物。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開昭49-133599号公報(以下、「引用例1」という)、特開昭52-079099号公報(以下、「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。

1)引用例1の記載事項
ア:「(1)略フィルターの長さの方向にのびかつ蒸気に対し通気性のある素材から成る隔壁によって煙の通路を提供する部分と、該隔壁に離接しかつ炭素がみたされていてしかもフィルターを通る煙の流れ方向に対してはとざされている部分とにわけられた部分を有することを特徴とする煙草の煙用フィルター。
(2)前記隔壁が管状で上述の部分の1つが他の部分の内部にあり、これらが同軸の2本の管を形成し、内部の隔壁の管は多孔性素材でできており、外部の管は本質的に煙をとうさない素材でできていることを特徴とする上記第1項に記載のフィルター。」(特許請求の範囲)

イ:「このようなフィルターを介して紙巻煙草をすう時は、その場合場合によって煙の中の微粒子は内側の管か環状の空間の煙の通路を通り、炭素の中をとうりぬけない。…(一部省略)…。揮発性成分は内側の管をとおって炭素のみたされた部分へ拡散して、そこで吸着されるのでこのような現象がおこるのである。粒状のものはこの管を通って拡散しない。従って本質的に炭素は煙の粒子によって汚染されることがなく、炭素と粒子間の相互作用もおこらない。」(第2頁左下欄第15行-同頁右下欄第6行)

ウ:「第1図に示されたフィルターは、本発明に従って、口の部分と煙草本体(4)に隣接した部分とにある、酢酸繊維素のフィルタープラッグ部分(2)(3)と、これら両者間にはさまれた部分(1)を含み、これら全体が煙をとうさない外包管(5)の中につつまれている。部分(1)には高度に蒸気に対して多孔性の紙でできた内管(6)があり、これが管(5)の中で同軸状にのびており、中心部の煙通路(7)の境界線を形成し、外包管(5)と内管(6)との間の環状の空間(7’)は炭素粒子でみたされて両端は蒸気をとうさない環状の締切り(8)によって封じられている。これらの締切りは可塑性素材、例えばポリ酢酸ビニル系接着剤を密封用の化合物として使用して形成させてもよいし、あるいは管(6)にあった中心孔をもった煙をとうさない素材よりなる円盤によって形成させてもよい。」(実施例1:第2頁右下欄第20行-第3頁左上欄第15行)

上記「イ」の記載は、煙草を吸う時に、煙は、炭素のみたされた部分を通らず、煙の中の微粒子を通さない内側の管により仕切られた煙の通路を通り、且つ揮発性成分は、内側の管内の煙の通路を通る際、内側の管を通って炭素のみたされた部分へ拡散して吸着されることを意味するから、喫煙時に煙草の煙が前記炭素粒子でみたされた部分から離れて導かれ且つ煙草煙の揮発性成分が、前記揮発性成分を減少させるために前記炭素粒子でみたされた部分内に放散することを意味していると認められる。
したがって、上記記載事項「ア、イ、ウ」及び図面の第1図からみて、引用例1には、
「煙草本体(4)とフィルターとからなり、このフィルターは、外包管(5)と内管(6)との間の環状の炭素粒子でみたされた空間(7’)の部分と、フィルターの長手方向に延びた中心部の煙通路(7)を含む部分とからなり、前記炭素粒子でみたされた部分は、中心部の煙通路(7)の周囲を環状に延びる喫煙物において、喫煙時に煙草の煙が前記炭素粒子でみたされた部分から離れて導かれ且つ煙の揮発性成分が、前記揮発性成分を減少させるために前記炭素粒子でみたされた部分内に拡散し得るように、外包管(5)と内管(6)との両端を蒸気をとおさない環状の締切り(8)によって封じた喫煙物」の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

2)引用例2の記載事項
エ:「この取付けバンドにはその全部域にわたりパーホレーションを設けあるいは一つまたはそれ以上のパーホレーション帯域または環状域を設けることができ、…(一部省略)…。かかるフィルタを通してシガレットを吸うと、その流れ状態は空気の流入により煙がフィルタの中央縦軸線の方へ圧送される如きものとなり、かくして煙自体は存在する炭素粒子のうちの小部分のもの、即ちフィルタの中央区域に存在する炭素粒子のみに接触する。」(第2頁右上欄第14行-同頁右下欄第6行)

オ:「同じフィルタ(1)を、第3図に示す如く0.25×0.25mm寸法の通気孔37個を持つ一つの環状域を周囲に備えた取付けバンド(6)によりシガレットへ取り付けた。この孔の環状域はフィルタの隣接端から2mmの距離(a)だけ離れていた。…(一部省略)…。煙経路の直径は実質的に第3図にしめされた形状(8)の如きもので、タバコ端において3mmに減少していた。フィルタのほぼ中間部および口端において、約2mmであった。煙は味が向上していた。」(第4頁左上欄第4-14行)

上記記載事項「エ、オ」及び図面の第3図からみて、引用例2には、
フィルターの上流端側の取付けバンドに、通気孔の環状域を設けることにより煙を中心部に導くフィルタが記載されていると認められる。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「煙草本体」は、本願発明の「煙草充填材ロッド」に相当し、以下同様に、「フィルター」は「煙草煙用フィルターエレメント」に、「炭素粒子でみたされた空間(7’)の部分」は「煙草煙の蒸気相成分を減少させる手段からなる部分」に、「中心部の煙通路(7)を含む部分」は「煙草煙の流路である部分」に、「揮発性成分」は「蒸気相成分」に、「拡散」は「放散」に、それぞれ相当する。
したがって、両者は、
「煙草充填材ロッドと煙草煙用フィルターエレメントとからなり、このフィルターエレメントは煙草煙の蒸気相成分を減少させる手段からなる部分と該エレメントの長手方向に延びた煙草煙の流路である部分とからなり、前記蒸気相成分減少手段からなる部分は、煙草煙の流路である部分の周囲を環状に延びる喫煙物において、喫煙時に煙草煙が前記煙草煙の蒸気相成分減少手段からなる部分から離れて導かれ且つ煙草煙の蒸気相成分が、前記蒸気相成分を減少させるために前記蒸気相成分減少手段からなる部分内に放散し得るように構成している喫煙物。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]喫煙時に煙草煙が前記煙草煙の蒸気相成分減少手段からなる部分から離れて導かれ且つ煙草煙の蒸気相成分が、前記蒸気相成分を減少させるために前記蒸気相成分減少手段からなる部分内に放散し得るようにするために、本願発明では、換気手段がフィルターエレメントの上流端又は上流端の方に位置しているのに対して、引用発明では、外包管(5)と内管(6)との間の環状の炭素粒子でみたされた空間(7’)の両端を蒸気をとおさない環状の締切り(8)で封じている点。

4.判断
そこで上記相違点について検討する。
引用例2には「通気孔」の環状域をフィルターエレメントの上流端側の取付けバンドに設けることにより煙を中心部に導く技術が記載されており、引用発明の外包管と内管の端部を環状の締切りで封じることと引用例2に記載された通気孔の環状域をフィルターの上流端側の取付けバンドに設けることとは、ともに煙草のフィルターにおいて、煙の流れを中心部に導くという同じ作用を奏するものであるから、引用発明の炭素粒子でみたされた空間の部分の両端を蒸気をとおさない環状の締切りで封じることによって、煙草煙を中心部に導く技術に代えて、引用例2に記載された通気孔の環状域をフィルターの上流端側の取付けバンドに設けることを適用することは、当業者が容易になし得たものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用例1および引用例2から当業者が予測しうる程度のものである。
したがって、本願発明はその出願前に頒布された引用例1および引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明および引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-11 
結審通知日 2005-10-18 
審決日 2005-10-31 
出願番号 特願平5-191693
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
溝渕 良一
発明の名称 喫煙物  
代理人 森田 順之  

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