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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01P
管理番号 1133583
審判番号 不服2003-2828  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-20 
確定日 2006-03-24 
事件の表示 平成 9年特許願第233152号「誘電体導波管線路の接続構造」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月16日出願公開、特開平11- 74701〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成9年8月28日の出願であって,その請求項1〜3に係る発明は,平成14年12月17日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1〜3の各請求項に記載されたとおりのものと認められるところ,その請求項2に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「上面導体層と下面導体層とに挟持された誘電体基板中に前記上面導体層と前記下面導体層間を電気的に接続する2列の貫通導体が形成され,前記上面導体層と前記下面導体層と前記貫通導体とに囲まれた導波管領域によって上下面の導体層をH面としたTE10モードで高周波信号を伝送する第1の誘電体導波管線路と第2の誘電体導波管線路とを,前記誘電体基板の端面に露出した前記導波管領域同士が対向するように互いに当接させるとともに,前記第1の誘電体導波管線路の上面導体層を前記第2の誘電体導波管線路の上面導体層上に延長して上面導体層同士を電気的に接続し,かつ前記第1の誘電体導波管線路の下面導体層を前記第2の誘電体導波管線路の下面導体層下に延長して下面導体層同士を電気的に接続することにより,接続したことを特徴とする誘電体導波管線路の接続構造。」

2.引用文献
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,本件出願前公知の特開平6-53711号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図1とともに,
「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は,導波管線路に係り,特に誘電体基板内に構成されるマイクロ波帯或いはミリ波帯用の導波管線路に関する。」(第2頁第1欄第14〜17行)と,また,
「【0007】
【実施例】
以下,本発明の一実施例を図1に基づいて説明する。この図1において,符号1は誘電体基板を示す。この誘電体基板1の両面には,その全面に導体層2,3が各々面状に装着されている。導体層2,3を含む前記誘電体基板1には,当該導体層2,3および誘電体基板1を貫いて複数個から成る導通穴4,4,・・・・・・が二列にわたって設けられている。この各列の導通穴4は,前述した導体層2,3の相互間を導通する形態をもって加工形成されている。この各列の導通穴4の間隔aは,当該電磁波の波長(遮断波長)よりも小さい間隔に設定されている。更に,これら複数の導通穴4からなる列の間隔Bは,電磁波の周波数により特定されるようになっている。
【0008】このように,遮断波長より小さな間隔で並べられた導通穴4の列によって上下導体層2,3が導通連結され,これにより方形導波管部分7の壁面が近似的に形成されて導波管線路が構成されている。記号Aは導波管線路の長さ方向の一部を示す。これにより,所定周波数の電磁波は,誘電体基板1内を二列にわたって形成された導通穴4,4,・・・・・・に案内されて所定の方向に確実に伝播されるようになっている。
【0009】ここで,導通穴4については,貫通孔をまず形成し,その後に各貫通孔に導電性部材を充填するようにしたものであってもよい。」(第2頁第1欄第46行〜同頁第2欄第23行)と記載されている。
上記記載中の段落番号【0009】によれば,「貫通穴4」には「導電性部材」が「充填」されているから,上導体層2と下導体層3間を電気的に接続する貫通導体ということができ,上記記載中の段落番号【0001】中の「マイクロ波帯或いはミリ波」によれば,使用されるのは高周波信号であるから,図1及び上記摘記事項に係る構成の記載を総合すると,
引用文献1には,
「上導体層2と下導体層3とに挟持された誘電体基板1中に前記上導体層2と前記下導体層3間を電気的に接続する2列の貫通導体が形成され,前記上導体層2と前記下導体層3と前記貫通導体とに囲まれた方形導波管部分7によって高周波信号を伝送する誘電体導波管線路」の発明(以下,「引用発明1」という。)が開示されている。
また,同じく引用された,本件出願前公知の特開昭62-268201号公報(以下,「引用文献2」という。)には,
「〔問題点を解決するだめの手段〕
第1図は本発明の原理を示す要部側断面図である。
同図に示すように,本発明の導波管用コネクタ構造は,凸型テーパ部11を有して成る第1導波管1と,該凸型テーパ部11に適合する凹型テーパ部12を有して成る第2導波管2とで構成され,ユニット20を矢印方向へ移動させることによって,凸型テーパ部11が凹型テーパ部12に挿入されて第1導波管lと第2導波管とが電気的に接続される構成になっている。」(第2頁右上欄第6〜16行)と記載されている。
これらの記載中の「凸型テーパ部11」及び「凹型テーパ部12」は導体であるから,図1を参照することにより,
引用文献2には,
「第2の導波管の導体を第1の導波管の導体上に延長して導体同士を電気的に接続した導波管用コネクタ構造」の発明(以下,「引用発明2」という。)が開示されている。

3.対比
そこで,本願発明と引用発明1を対比検討すると,引用発明1中の「上導体層2」と「下導体層3」はその形状・機能からして本願発明中の「上面導体層」「下面導体層」と同じものであり,引用発明1中の「方形導波管部分7」は「導波管領域」であるから,両者は,「上面導体層と下面導体層とに挟持された誘電体基板中に前記上面導体層と前記下面導体層間を電気的に接続する2列の貫通導体が形成され,前記上面導体層と前記下面導体層と前記貫通導体とに囲まれた導波管領域によって高周波信号を伝送する誘電体導波管線路」の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点1
本願発明では,導波管領域によって伝送される高周波信号が,「上下面の導体層をH面としたTE10モード」と限定されているのに対し,引用発明1では,モードの限定がない。
・相違点2
本願発明では,「第1の誘電体導波管線路と第2の誘電体導波管線路とを,前記誘電体基板の端面に露出した前記導波管領域同士が対向するように互いに当接させるとともに,前記第1の誘電体導波管線路の上面導体層を前記第2の誘電体導波管線路の上面導体層上に延長して上面導体層同士を電気的に接続し,かつ前記第1の誘電体導波管線路の下面導体層を前記第2の誘電体導波管線路の下面導体層下に延長して下面導体層同士を電気的に接続」しているが,引用発明1にそのような構成はない。

4.当審の判断
そこで,上記相違点について検討する。
・相違点1について
「上下面の導体層をH面としたTE10モード」は,導波管線路で使用する基本モードとして,広く利用されている周知のモードであるから,「上下面の導体層をH面としたTE10モード」を採用した点に格別の創意工夫があるものとはいえない。

・相違点2について
同じ構造の導波管線路間を接続すること,及び接続された状態において,高周波が伝搬する部分(管内)は,前記導波管線路におけるそれとほぼ同様な形状・構造を求められることは,本願の発明の詳細な説明中の従来例,引用文献2,あるいは特開平6-45808号公報等から明らかなように,周知事実である。
したがって,引用発明1の誘電体導波管線路間を接続すること自体は当業者であれば当然検討すべき技術的事項であり,その際,導波管線路の接続構造に関した引用発明2を適用しようとすること自体にも特に困難性はない。
そして,引用発明1の誘電体導波管線路間の接続に,引用発明2を適用するに際して,接続された状態において,高周波が伝搬する部分(管内)は,前記導波管線路におけるそれとほぼ同様な形状・構造が要求されるという上記周知事実を考慮すれば,「第1の誘電体導波管線路の上面導体層を前記第2の誘電体導波管線路の上面導体層上に延長して上面導体層同士を電気的に接続し,かつ前記第1の誘電体導波管線路の下面導体層を前記第2の誘電体導波管線路の下面導体層下に延長して下面導体層同士を電気的に接続」するのは,ほとんど自明的に導かれる事項にすぎない。

なお,平成15年3月24日付けで手続補正された審判請求書で,請求人は,「上下面の導体層をH面としたTE10モードで高周波信号を伝送する場合においては,導波管線路の上下の導体層を延長して,上下導波管同士を電気的に接続すれば,側壁の接続を行う必要なく,良好な接続が可能となる」旨,主張しているが,上記周知のモードと引用発明1,2から,当然導かれる程度の自明の効果の主張にすぎない。

5.むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項2に係る発明は,引用文献1,2記載の発明,および周知事項から当業者が容易に発明をすることができたものと認められ,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-25 
結審通知日 2006-01-31 
審決日 2006-02-13 
出願番号 特願平9-233152
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新川 圭二  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 浜野 友茂
小林 紀和
発明の名称 誘電体導波管線路の接続構造  

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