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審決分類 審判 補正却下不服 特29条特許要件(新規)  A63F
審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:2  A63F
管理番号 1133625
審判番号 補正2005-50011  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-16 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2005-03-30 
確定日 2006-03-27 
事件の表示 平成10年特許願第200533号「遊技機」において、平成17年1月17日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原決定を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成5年7月30日に出願した特願平5-208790号の一部を平成10年7月15日に新たな特許出願としたものであって、願書に添付した明細書又は図面について平成17年1月17日付けで手続補正したところ、原審において、平成17年2月21日付けで特許法第53条第1項の規定により、その手続補正が却下されたものである。


【2】補正後の請求項1に係る発明
平成17年1月17日付け手続補正により補正された請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】複数種類の識別情報を可変表示可能な3行3列のマトリクス状に配列された9個の可変表示部を有する可変表示装置を備えるとともに、前記9個の可変表示部には行方向の3つのラインと列方向の3つのラインと斜め対角線上の2つのラインとの8つの当りラインが設定され、前記8つの当りラインのうちのいずれかの当りライン上における可変表示部の表示結果が予め定められた特定の識別情報の組合せになったときに所定の遊技価値が付与可能となる特定遊技状態に制御される遊技機であって、
前記9個の可変表示部を可変表示させた後、停止表示させる制御を行う可変表示制御手段と、
前記識別情報の組合せを前記特定の識別情報の組合せとするか否かを判定するために用いられる特定表示態様判定用数値情報を更新する特定表示態様判定用数値情報更新手段と、
所定の始動条件が成立したときに前記特定表示態様判定用数値情報更新手段によって更新される前記特定表示態様判定用数値情報を抽出して数値情報格納領域に格納する数値情報格納手段と、
成立した前記始動条件のうち前記複数種類の識別情報の可変表示に未だ用いられていない始動条件の数である貯留数を記憶する貯留数記憶手段と、
前記8つの当りラインのうちいずれの当りライン上の可変表示部の表示結果を前記特定の識別情報の組合せにするかを決定するために用いられる当りライン数値情報を更新する当りライン数値情報更新手段と、
前記9個の可変表示部の表示結果を各々独立して設定するために用いられる表示結果用数値情報を更新する表示結果用数値情報更新手段と、を含み、
前記数値情報格納領域は、格納している前記特定表示態様判定用数値情報を判定するための判定領域と、未だ判定に用いない前記特定表示態様判定用数値情報を格納する格納領域と、から成り、
前記数値情報格納手段は、前記所定の始動条件の成立時に、前記貯留数記憶手段に記憶されている貯留数に対応する前記格納領域に、前記特定表示態様判定用数値情報を格納し、
前記遊技機は、
前記貯留数があるときに、前記9個の可変表示部の可変表示が終わった後、前記複数の格納領域に格納されている最も古い前記特定表示態様判定用数値情報を前記判定領域へ転送し、前記格納領域に格納されている前記特定表示態様判定用数値情報を最も古い前記特定表示態様判定用数値情報を格納する格納領域側に1領域ずつ転送する転送処理を行なうとともに、前記貯留数記憶手段に記憶されている前記貯留数を1つ減算更新する転送手段と、
前記転送手段による前記転送処理後、前記9個の可変表示部の可変表示が開始されるときに、前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する特定遊技状態判定手段と、
前記特定遊技状態判定手段によって前記特定の識別情報の組合せにすることを判定したときに、前記当りライン数値情報に基づいて前記8つの当りラインのうちいずれの当りライン上の可変表示部を前記特定の識別情報の組合せとするかを決定する当りライン決定手段と、
前記当りライン決定手段が前記8つの当りラインのいずれかを前記特定の識別情報の組合せにすることを決定したときに該当りライン決定手段が決定した当りライン上の可変表示部以外の残りの可変表示部について、前記表示結果用数値情報更新手段の表示結果用数値情報に基づいた表示結果を用いるとともに、該当りライン上の可変表示部の表示結果が前記特定の識別情報の組合せとなるように当該当りライン上の可変表示部の表示結果を設定する当り表示結果設定手段と、
前記特定遊技状態判定手段が前記特定の識別情報の組合せにしない旨を判定したときに、前記8つの当りライン上の可変表示部の表示結果が前記特定の識別情報の組合せとならないように、前記9個の可変表示部の表示結果を前記表示結果用数値情報に基づいて設定する外れ表示結果設定手段と、を含み、
前記可変表示制御手段は、
前記当り表示結果設定手段、または、前記外れ表示結果設定手段により設定された表示結果となるように、前記9個の可変表示部を停止表示させる停止制御手段を含み、
前記遊技機は、
前記転送手段により前記格納領域から前記判定領域に転送された特定表示態様判定用数値情報が前記特定遊技状態判定手段による判定に用いられた後、前記9個の可変表示部の可変表示が開始される前の段階において、前記判定領域に格納されている該判定済みの特定表示態様判定用数値情報を削除する判定領域格納数値情報削除手段をさらに含むことを特徴とする、遊技機。」


【3】補正の却下の決定の理由
上記平成17年2月21日付け補正の却下の決定の理由は、次のとおりのものである。
「補正後の請求項1には『前記転送手段による前記転送処理後、前記9個の可変表示部の可変表示が開始されるときに、前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する特定遊技状態判定手段』と記載されている。また、出願人は意見書にて、『・・・(前略)・・・図11(a)のメインプログラムが2msec毎に1回実行されるために(段落番号0037)、図15(a)の乱数チェック処理から図柄1〜9変動処理が実行されるまでにかかる時間は、2msec×5=10msecとなり、0.01秒となります。よって、乱数チェック処理と図柄1〜9変動処理とはほとんど同時に実行されることになります。』と、その補正の根拠を主張する。
ここで、『前記9個の可変表示部の可変表示が開始されるときに、前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する』との記載における『ときに』とは、可変表示の開始と『同時に』特定表示態様判定用数値情報判定する、もしくは、可変表示の開始と『間をおかずに』特定表示態様判定用数値情報判定するという意味であると解される。
ところが、本願の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、『当初明細書等』という。)には、可変表示開始後、特定表示態様判定用数値情報判定するまでの間に、4ステップ(具体的には、フルーツ図柄チェック処理、図柄チェック1処理、図柄チェック2処理、はずれ図柄セット処理)を経る必要があると記載されており、可変表示の開始と『同時に』特定表示態様判定用数値情報判定する、もしくは、可変表示の開始と『間をおかずに』特定表示態様判定用数値情報判定するものが、開示されているとは認められない。
したがって、『前記9個の可変表示部の可変表示が開始されるときに、前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する』、という事項に関しては記載されておらず、且つ、当初明細書等の記載及び出願当時技術常識からみて、自明の事項とは認められないので、この補正によって、発明の構成に関する技術的事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でないものとなる。
したがって、この補正は、明細書の要旨を変更するものと認められ、特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。」


【4】当審の判断
〔1〕明細書又は図面の記載
本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、本願発明について、以下のとおり記載されている。
1.「図11(a)はメインプログラムのフローチャートであり、前述のようにたとえば2msec毎に1回実行される。この実行は、図6に示した定期リセット回路20が2msec毎に1回発生するリセットパルスに応答して開始される。まずステップS(単にSという)1により、スタックセット処理がなされ、S2によりRAMエラーがあったか否かの判断が行なわれる。・・・そして前記定期リセット回路20からのリセット信号が入力されるのを待つリセット待ち状態となる。リセット信号が入力されると再度S1からの処理が行なわれ、以降このメインルーチンの実行時には、S2によりYESの判断がなされ、制御は直接S4に進む。」(段落【0037】)

2.「図13(b)は前記S13に示されたプロセス処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。まずS65により、プロセスフラグの値をアドレス変換し、S66により、その変換されたアドレスに制御をジャンプさせる動作が行なわれ、サブルーチンプログラムが終了する。このプロセスフラグの値は、後述するように、遊技状態に応じて要所要所のステップ箇所で値が加算されたり更新されたりし、そのプロセスフラグの値に対応するアドレス部分に記憶されている制御用プログラムに制御がジャンプするのである。その結果、遊技状態に応じた所望の制御順序に従ってパチンコ遊技機が制御される状態となる。このプロセスフラグの値とそれに応じた遊技機制御の内容が(b)に示されている。このプロセスフラグの値は16進数で示されており、たとえば、00Hの場合には通常処理がなされ、01Hの場合には乱数チェック処理がなされ、02Hの場合にはフルーツ図柄チェック処理がなされる。」(段落【0050】)

3.「一方、始動入賞記憶カウンタの値が「0」でない場合にはS70に進み、大当りフラグとライン大当り枠フラグとフルーツ大当り枠フラグとD COM6と開放回数カウンタと入賞個数カウンタとがクリアされる処理が行なわれる。この大当りフラグは、C RNDの抽出値が「4」であった場合に大当りが発生することが事前決定されてその大当りを発生することが事前決定された旨を記憶するためのフラグであり、後述するS76によりセットされる。ライン大当り枠フラグは、ある大当りライン上において「777」が揃うことが事前決定された場合にその大当りライン上に存在する可変表示部の表示領域を枠で囲んで遊技者に示すためのフラグであり、後述するS103によりセットされる。フルーツ大当り枠フラグは、すべての可変表示部2a〜2iにおいてフルーツ図柄が揃うことが事前決定された場合にすべての可変表示部を枠で囲んで遊技者に示すためのフラグであり、後述するS91によりセットされる。D COM6は、ライン大当り枠フラグデータとラインリーチ枠フラグデータとを記憶して液晶表示回路25側にコマンドデータとして出力するためのデータ記憶領域であり、後述するS83,S138,S145,S166,S169,S190,S218によりそれぞれのデータがセットされる。・・・」(段落【0052】)

4.「次にS71により、C RND ZU1,2をD COM1にセットし、CRND ZU3,4をD COM2にセットし、C RND ZU5,6をDCOM3にセットし、C RND ZU7をD COM7にセットし、C RND ZU8をD COM4にセットし、C RND ZU9をD COM5にセットする処理が行なわれる。このD COM1〜7は、各予定停止図柄のソフト上のシンボル(図柄)ナンバーである各C RND ZU1〜9の抽出値を記憶して液晶表示回路25に送信するための記憶領域である。次にS72により、プロセスフラグを「1」加算する処理が行なわれてサブルーチンプログラムが終了する。その結果、プロセスフラグの値は「01H」となり、次回の実行に際しては乱数チェック処理のサブルーチンプログラムが行なわれる。」(段落【0053】)

5.「乱数チェック処理のサブルーチンプログラムは図15(a)に示されている。まずS73により、表示プロセスフラグを「12H」にする処理が行なわれる。この表示プロセスフラグとは、電気的可変表示装置1を所望の順序に従って表示制御するためのフラグであり、図27(c)にその内容が示されている。表示プロセスフラグがセットされるとD COM Oに一旦記憶された後サブCPU34に送信され、サブCPU34では後述するように、送られてきた表示プロセスフラグの種類に従って電気的可変表示装置1の表示制御を行なう。なお、12Hの場合には全リール回転開始の制御が行なわれる。S74に進み、入賞記憶カウンタ0に対応するアドレスに格納されている乱数値を読出す処理が行なわれる。この入賞記憶カウンタは、パチンコ玉の始動入賞を古い始動入賞から順に記憶しているものであり、始動入賞ごとに抽出されたC RNDの値が古い順に記憶されている(S63参照)。そして一番古い記憶領域である入賞記憶カウンタ0に対応するアドレスに格納されているC RNDの抽出値(乱数値)が読出される。そしてその読出された値がS75により「4」に等しいか否かの判断が行なわれ、等しい場合には大当りを発生させることを事前に決定するS76以降の処理が行なわれ、等しくない場合にはS81以降の処理が行なわれて、はずれにすることが事前に決定される。乱数値=4と判断された場合にはS76により、大当りフラグがセットされ、次にS77によりC RND LINEの値を読出し、その値に応じて大当りラインを決定する処理が行なわれる。C RND LINEの値に応じた大当りラインは、図5のように定められており、この図5に従って大当りラインが決定される。次にS78に進み、フルーツ大当りとなるように決定されたか否かの判断がなされる。C RND LINEの値が、7,15,23,31,39,47,55の場合にはフルーツ大当りと決定され(図5参照)、その場合にはS79に進み、フルーツ図柄をセットする処理が行なわれる。一方、フルーツ大当りと決定されなかった場合には、S80に進み、決定された大当りラインに「7」が揃うようにD COM1〜5に「7」の図柄データをセットする処理が行なわれる。次にS81では、入賞記憶カウンタ0に対応するアドレスに格納されている乱数値をクリアする処理が行なわれる。次にS82に進み、プロセスフラグを「1」加算する処理が行なわれる。」(段落【0054】)

6.「図柄1〜9変動処理のサブルーチンプログラムは図17(c)に示されている。まずS129には、表示プロセスフラグを「12H」にセットする処理がなされ、S130に進み、プロセスタイマが作動中であるか否かの判断が行なわれる。このプロセスタイマは前記S109によりセットされた時間であり、このプロセスタイマ作動中にはS131Aによりプロセスタイマを「1」減算する処理がなされてサブルーチンが終了する。その結果、2200×2msec=4.4秒となり、4.4秒経過すればS130によりNOの判断がなされてS131により、プロセスフラグを「1」加算する処理がなされてその値が「07H」となり、以降図柄1,2停止処理のサブルーチンプログラムが実行される。」(段落【0069】)

7.「大当りチェック処理のサブルーチンプログラムは図20(a)に示されている。まずS190により、ライン大当り枠フラグデータをD COM6にセットする処理がなされ、S191により、枠点滅速度指定データをD COM7にセットする処理がなされ、S192により、プロセスタイマが作動中であるか否かの判断がなされる。この場合には、NOの判断がなされてS193に進み、プロセスタイマに350をセットする処理がなされ、S195では、表示プロセスフラグを「02H」にセットする処理がなされ、次にS196に進み、プロセスタイマが終了したか否かの判断がなされる。この場合にはNOの判断がなされてそのままサブルーチンプログラムが終了する。この大当りチェック処理のサブルーチンプログラムを・・・、350回実行された段階でプロセスタイマが0となるために、その段階でS196によりYESの判断がなされてS197に進み、プロセスフラグを「1」加算する処理がなされ、さらにS198により、大当りフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、セットされている場合にはS199によりプロセスフラグをさらに「1」加算する処理がなされる。その結果、大当りフラグがセットされていない場合すなわちはずれが事前決定されている場合にはプロセスフラグの値が「0CH」となり、大当りフラグがセットされている場合には「0DH」となる。」(段落【0082】)

8.「その結果、大当りフラグがセットされていない場合には図20(b)に示すはずれ待ち処理のサブルーチンプログラムが実行され、大当りフラグがセットされている場合には図21に示す大入賞口開放前処理のサブルーチンプログラムが実行される。まずはずれ待ち処理のサブルーチンプログラムを説明する。S200により、プロセスタイマが作動中であるか否かの判断がなされ、作動中でない場合にはS201により、プロセスタイマに250をセットする処理がなされ、S203により、表示プロセスフラグを「02H」すなわち全リール停止、リール9停止開始(通常)にセットする処理がなされ、S204により、プロセスタイマが終了したか否かの判断がなされる。この場合にはNOの判断がなされてそのままサブルーチンプログラムが終了する。このはずれ待ち処理のサブルーチンプログラムを・・・250回実行されてプロセスタイマの値が0となるために、S204によりYESの判断がなされてS205に進み、プロセスタイマに30000をセットする処理がなされ、S206によりプロセスフラグをクリアする処理がなされてプロセスフラグの値が「00H」となり、以降通常処理のサブルーチンプログラムが実行されることとなる。そして、S207に進み、C RND格納エリアをシフトするとともに、入賞記憶カウンタの値を「1」減算する処理がなされてサブルーチンプログラムが終了する。このはずれ待ち処理のサブルーチンプログラムが実行された後図14(a)に示す通常処理のサブルーチンプログラムが実行される際に、S205でセットされたプロセスタイマが終了するのを待ってS68によりNOの判断がなされてS69の処理がなされ、電気的可変表示装置1の表示状態がデモ表示用図柄に切換制御される。さらに、S207の処理の結果、C RND抽出値の記憶エリアが入賞記憶カウンタのカウント値「0」方向に1つずつシフトされ、その結果、入賞記憶カウンタ1に相当するエリアに格納されているC RND抽出値が入賞記憶カウンタ0に相当するエリアにシフトされて格納され、入賞記憶カウンタ2に相当するエリアに記憶されていたC RND抽出値が入賞記憶カウンタ1に相当するエリアにシフトされて格納され、他のエリアにおける抽出値も同様に1ずつシフトされて格納される。」(段落【0083】)


〔2〕検討・判断
1.そこで、補正発明における、「前記転送手段による前記転送処理後、前記9個の可変表示部の可変表示が開始されるときに、前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する特定遊技状態判定手段」との事項が、当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであるのか否かについて検討する。

2.補正発明における、上記「9個の可変表示部の可変表示が開始されるとき」との構成に関連して、補正の却下の決定の理由においては、「・・・4ステップ(具体的には、フルーツ図柄チェック処理、図柄チェック1処理、図柄チェック2処理、はずれ図柄セット処理)を経る必要がある」と指摘し、また、審判請求人の「要旨変更でない理由の詳細」の項(審判請求書(3)(ロ))の主張においては、「そして、転送手段による転送処理が、図20(b)のS207または図23のS258により実行されます。それらのステップS207、S258の1つ前のステップS206、S257により、プロセスフラグがクリアされるために、制御が始めの通常処理に戻ります。図14(a)の通常処理におけるS72により、プロセスフラグが「1」加算更新されるために、次に制御が乱数チェック処理に移行し、図15(a)の乱数チェック処理のサブルーチンプログラムにより、特定遊技状態判定手段による判定処理が実行されることとなります。この乱数チェック処理のサブルーチンプログラムにおけるS82によりプロセスフラグが「1」加算更新されるために、次にフルーツ図柄チェック処理がなされ、次に、図柄チェック1処理、図柄チェック2処理、外れ図柄セット処理がなされた後、図柄1〜9変動処理が実行されて可変表示が開始されます。」と指摘しており、このような指摘、及び、上記〔1〕1.〜8.の記載を参照すると、補正発明が、「転送手段による転送処理」が実行され、「乱数チェック処理」が実行された後、「図柄1〜9変動処理」が実行されるまでには、「フルーツ図柄チェック処理」,「図柄チェック1処理」,「図柄チェック2処理」、「はずれ図柄セット処理」がなされるものであることは明らかである。

3.ところで、補正の却下の決定の理由においては、「ところが、本願の願書に最初に添付された明細書及び図面・・・には、可変表示開始後、特定表示態様判定用数値情報判定するまでの間に、4ステップ(具体的には、フルーツ図柄チェック処理、図柄チェック1処理、図柄チェック2処理、はずれ図柄セット処理)を経る必要があると記載されており、可変表示の開始と『同時に』特定表示態様判定用数値情報判定する、もしくは、可変表示の開始と『間をおかずに』特定表示態様判定用数値情報判定するものが、開示されているとは認められない。」と指摘しているところ、当該指摘によれば、「可変表示開始後、特定表示態様判定用数値情報判定する」とのことであるが、補正発明における、上記1.に摘示した事項に関して、その技術的特徴とするところは、上記2.において認定したところによれば、「可変表示」の開始は、「特定表示態様判定用数値情報」を判定した後に行われることであるから、補正の却下の決定の理由における、上記「可変表示開始後、特定表示態様判定用数値情報判定する」との指摘は誤りというほかない。

4.また、補正の却下の決定の理由においては、「ここで、『前記9個の可変表示部の可変表示が開始されるときに、前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する』との記載における『ときに』とは、可変表示の開始と『同時に』特定表示態様判定用数値情報判定する、もしくは、可変表示の開始と『間をおかずに』特定表示態様判定用数値情報判定するという意味であると解される。」とも指摘しているところ、「とき」という用語については、広辞苑(第三版,1990年1月8日第八刷発行。)によれば、「かなり長い期間。おり。ころ。時分。時期。・・・定められた期間。期限。・・・その場合。その折。当座。・・・大切な時機。重大な時期。・・・よい機会。好機。・・・その場限り。一時。臨時。・・・」等と記載されていることからみて、その意味は、例えば、「その折」(その際)に代表されるような言葉の持つ意味に近似したもの、即ち、審判請求人の主張のとおり、概して、時間幅のない一瞬の時を意味するものではなく、ある程度の幅を持った時間の概念を意味するものであるということができ、このことは、補正発明においても、例外ではないものと認められ、上記のように、「同時に」や「間をおかずに」等の意味に限定されないものであることは明らかである。

5.而して、補正発明において、「転送手段による転送処理」が実行され、「乱数チェック処理」が実行された後、「図柄1〜9変動処理」が実行されるまでの間に、「フルーツ図柄チェック処理」,「図柄チェック1処理」,「図柄チェック2処理」、「はずれ図柄セット処理」がなされるものであるとしても、それらの処理に係る時間が短時間であることも併せ考えると、「9個の可変表示部の可変表示が開始されるときに」と表現すること自体、何らの問題のないものであって、当初明細書等の開示内容に則した表現であるということができるから、上記1.に摘示した事項に関して、これを、当初明細書等に記載された事項の範囲内のものでないとすることはできない。


【5】むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正が、明細書の要旨を変更するものとして、これを却下した、原審の補正の却下の決定は、妥当なものではなく、取り消しを免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2006-03-10 
出願番号 特願平10-200533
審決分類 P 1 7・ 2- W (A63F)
P 1 7・ 1- W (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮本 昭彦
塩崎 進
発明の名称 遊技機  
代理人 森田 俊雄  
代理人 塚本 豊  
代理人 深見 久郎  

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