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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L
管理番号 1133699
審判番号 不服2003-9347  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-07-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-22 
確定日 2006-03-31 
事件の表示 特願2000-402263号「食器皿洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月16日出願公開、特開2002-200022号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年12月28日の出願であって、その請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)である。
「筐体の上面に形成された食器皿の投入口から投入される食器皿が、前記筐体内部で洗浄された後に排出口から排出されるようになっている食器皿洗浄装置であって、
前記投入口から投入される食器皿を前記筐体の内部所定箇所まで案内する筒状体が設けられており、この筒状体の内径は、投入される食器皿の直径よりも大径をなすとともに、その内周面には、内部を通過する前記食器皿を中心方向に案内する内向きの突出部が複数設けられていることを特徴とする食器皿洗浄装置。」

2.引用刊行物
これに対して、当審における拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された、実願昭62-118947号(実開昭64-25060号)のマイクロフィルム(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(a)「積層せる皿を1枚宛落下する皿搬入手段とブラシ,洗浄液による洗浄手段と乾燥手段及び突上げによる皿搬出手段を、皿を間歇移動させるターンテーブルに配設した皿洗い機において、乾燥手段を、ターンテーブルの下面に突出の皿底を受ける高速回転板とターンテーブルの上部に設置の皿抑え板とより形成し、且つ皿搬入手段を、ターンテーブルの間歇回転で1回転する断面C形の平行受杆よりなる落下機構とした皿洗い機。」(実用新案登録請求の範囲第1項)
(b)「1は1/4回転の間歇回転をもつ網枠型ターンテーブルで、該ターンテーブル1には周縁位置の4分割部分に皿2の糸尻部2bを嵌合する受孔3を夫々設けてなる。この4箇所の受孔3中、隣接する2個の受孔3は機体4の上部に形成した洗い筐体部4aの手前側(正面位置)となる外方に露出位置とし、他の2個の受孔3部が洗い筐体部4a内に臨む配置である。この露出位置となる一方(回転方向側)の受孔3の上方には、該受孔3の両側真上位置にターンテーブル1が1/4回転したときに1回転する一対の断面C形を呈す皿受兼繰出用受杆5,5を配し皿搬入手段6とする。この受杆5,5は・・・(中略)・・・対向位置となるC溝部5a、5aに挟んだ皿2を1枚宛落下させる構成であり、且つ該受杆5,5の上部には四方に起立した皿案内支柱11を備えてなる。」(第5頁第9行〜第6頁第9行)
(c)「次に、この作用を説明すると、先ずこの皿搬入手段6と洗浄手段21と乾燥手段22及び皿搬出手段17を、モータ29にて回転するターンテーブル1の周縁部に配置して形成の皿洗い機30の使用に際し、予め使い汚れた皿2群を前処理工程となる湯槽(図示せず)に付けて粗滓を落しておき、これを適宜枚数(例えば、20枚程度)重ねて皿搬入手段6の4本の皿案内支柱11内に収容すれば、最下段の皿2は該皿案内支柱11の下部の皿ストック筒部31の下端両側の皿受兼繰出用受杆5,5の円弧となる背部5b,5b上に接して支持される。・・・(中略)・・・皿2を直接受ける受杆5,5は、C溝部5a,5aが互いに内向きとなるよう回転してきて、背部5b,5b(C溝部5a,5a以外の外周)に接触している皿2の縁部2a,2aが嵌まり込み下方へ移行され、該C溝部5a,5aが下向きとなったとき、この挟まれた皿2の縁部2a,2aが抜けて落下し、真下位置に臨んだターンテーブル1の受孔3部に糸尻部2bが嵌まってセットされる。・・・(中略)・・・次に、このターンテーブル1上に乗った皿2は、該ターンテーブル1の1/4回転にて次工程となる洗浄手段21位置に移動する。・・・(中略)・・・更に、この洗浄工程を経た皿2がターンテーブル1の1/4回転にて乾燥工程へ移動する・・・(中略)・・・最後に、乾燥工程を経た皿2が皿搬出手段17位置に来ると、クランク機構32が駆動し、この作動リンクとなる突上げプランジャー15の上昇で皿プッシャー16にて皿2が突上げられ、・・・(中略)・・・皿2は上方の皿ストック筒部12及びこれに連接の皿案内支柱11内に重ね納められ、回収自在となる。」(第7頁第14行〜第11頁第14行)
(d)第3図には、皿搬入手段6が設けられている箇所の機体の上面に皿2を機体内部に投入するための投入口が形成されていること、皿ストック筒部31が投入口に設けられ皿ストック筒部31の内径が投入される皿2の直径よりも大径をなすこと、皿ストック筒部31の下端両側であって且つ機体の内部には一対の皿受兼繰出用受杆5,5が設けられていること、及び機体内部で皿が洗浄手段21によって洗浄されることが図示されている。
また、第4図Aには、皿2が皿案内支柱11によって皿受兼繰出用受杆5,5付近まで案内されることが図示されている。
また、第6図には、皿搬出手段17が設けられている箇所の機体の上面に洗浄された皿2を機体外部に排出する排出口が形成されていることが図示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物には、
「機体4の上面に形成された皿2の投入口から投入される皿2が、機体4内部で洗浄された後に排出口から排出されるようになっている皿洗い機であって、投入口に皿ストック筒部31が設けられており、皿ストック筒部31の下端両側且つ機体の内部には一対の皿受兼繰出用受杆5,5が設けられており、皿ストック筒部31の内径は、投入される皿2の直径よりも大径をなし、一対の皿受兼繰出用受杆5,5の上部には四方に起立した皿案内支柱11を備えてなる皿洗い機。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「機体4」が、その機能・構造からみて前者における「筐体」に相当し、同様に、「皿2」が「食器皿」に、「皿洗い機」が「食器皿洗浄装置」に、「皿ストック筒部31」が「筒状体」に、それぞれ相当している。
また、後者の「投入口に皿ストック筒部31が設けられており」と前者の「前記投入口から投入される食器皿を前記筐体の内部所定箇所まで案内する筒状体が設けられており」は「投入口に筒状体が設けられており」という概念で共通している。
したがって、両者は、
「筐体の上面に形成された食器皿の投入口から投入される食器皿が、前記筐体内部で洗浄された後に排出口から排出されるようになっている食器皿洗浄装置であって、
投入口に筒状体が設けられており、この筒状体の内径は、投入される食器皿の直径よりも大径をなす食器皿洗浄装置。」の点で一致し、以下の点で一応相違している。

相違点:本願発明では、筒状体は、投入口から投入される食器皿を筐体の内部所定箇所まで案内するものであり、その内周面には、内部を通過する食器皿を中心方向に案内する内向きの突出部が複数設けられているのに対し、引用発明では、皿ストック筒部31は皿2を機体内部に設けられた一対の皿受兼繰出用受杆5,5まで案内するものであるか否かが明確でなく、その内周面に皿を中心方向に案内する内向きの突出部が複数設けられていない点。

4.当審の判断
そこで上記相違点について検討する。
引用発明の一対の皿受兼繰出用受杆5,5は、上部に四方に起立した皿案内支柱11を備えているのであるから、皿案内支柱11は皿2を一対の皿受兼繰出用受杆5,5に案内するためのものといえ、刊行物の第4図Aの、皿2が皿案内支柱11によって皿受兼繰出用受杆5,5付近まで案内されるという図示内容も参酌すると、皿案内支柱11は皿2を一対の皿受兼繰出用受杆5,5付近まで案内するものであるといえる。また、皿案内支柱11は四方に起立して設けられているのであるから、皿2は四方の皿案内支柱11によって中心方向に案内されることは明らかなことである。さらに、一対の皿受兼繰出用受杆5,5は機体内部に設けられているものであるから、皿案内支柱11は皿2を機体4の内部所定箇所まで案内するものであるといえる。
一方、引用発明の皿ストック筒部31は、その下端両側に一対の皿受兼繰出用受杆5,5が設けられているのであるから、皿ストック筒部31の下端は皿受兼繰出用受杆5,5付近の上部に位置していることになる。そうすると、引用発明の皿受兼繰出用受杆5,5付近の上部には、皿ストック筒部31と皿案内支柱11の両方が存在することになるが、皿案内支柱11は皿2を案内するためのものであり、皿案内支柱11が投入される皿2の直径よりも大径をなす皿ストック筒部31の外側に設けられたのでは皿を案内することができないから、皿案内支柱11は皿ストック筒部の内側を通って設けられていると考えるのが妥当である。
そして、上記検討結果からみて、本願発明の筒状体の内周面に設けられた突出部と引用発明の皿案内支柱11とは同様の機能を有する部材であるといえるから、本願発明と引用発明とは、本願発明の突出部が筒状体の内周面に筒状体と一体的に設けられているものであるのに対し、引用発明の皿案内支柱11は皿ストック筒部31とは別部材であるため皿ストック筒部と一体的に設けられているとはいえない点でのみ実質的に相違していることになる。しかし、2つの部材を必要に応じて一体的に形成することは単なる設計的事項にすぎず、引用発明の皿ストック筒部31と四方に起立した皿案内支柱11とを一体的に形成して本願発明のような構成とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、本願発明の効果も格別なものではなく当業者の予測し得る範囲内のものである。
なお、請求人は平成17年12月21日受付の意見書において、刊行物には「皿案内支柱11が皿ストック筒部31の内側を通って受杆5,5付近まで設けられている」といえる明確な記載はない旨主張しているが、上記検討結果より、刊行物には「皿案内支柱11が皿ストック筒部31の内側を通って受杆5,5付近まで設けられている」ことが実質的に記載されていると考えるのが妥当であるから、請求人の上記主張は採用することができない。また、仮に請求人が主張するように「皿案内支柱11が皿ストック筒部31の内側を通って受杆5,5付近まで設けられている」ことが実質的に刊行物に記載されているといえないものであったとしても、刊行物には、受杆5,5の上部には四方に起立した皿案内支柱11を備えていること、皿ストック筒部31の下端両側に皿受兼繰出用受杆5,5が設けられていること、及び皿2が皿案内支柱11によって皿受兼繰出用受杆5,5付近まで案内されること等が記載ないし図示されているのであるから、これらの記載ないし図示内容に基づいて本願発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-19 
結審通知日 2006-01-24 
審決日 2006-02-07 
出願番号 特願2000-402263(P2000-402263)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小谷 一郎  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 柳 五三
北川 清伸
発明の名称 食器皿洗浄装置  
代理人 日高 一樹  
代理人 重信 和男  
代理人 渡邉 知子  

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