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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1133700
審判番号 不服2003-13783  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-17 
確定日 2006-03-31 
事件の表示 平成 8年特許願第 65725号「車両の発電制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月30日出願公開、特開平 9-256885〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年3月22日の出願であって、平成15年6月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月18日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年8月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年8月18日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1、請求項2は、
「【請求項1】 車両の減速状態を検出する減速状態検出手段(M1)と、エンジン(E)により駆動される発電機(5)の発電状態を制御する発電制御手段(M2)と、エンジン(E)の吸気通路(1)に設けたスロットルバルブ(2)の開度をアクチュエータ(3)で制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を制御するブレーキ力制御手段(M3)とを備えてなり、
前記減速状態検出手段(M1)が車両の減速状態を検出したときに、前記発電制御手段(M2)は発電機(5)に発電を行わせるとともに、前記ブレーキ力制御手段(M3)は発電機(5)の発電量に応じて前記アクチュエータ(3)を作動させて前記スロットルバルブ(2)を開弁制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を低減させて、該発電機(5)の駆動に伴うエンジン負荷の増加によっても車両のトータルのブレーキ力が増加しないようにし、そのときにエンジン(E)の燃料噴射弁(6)をフュエルカット状態に維持することを特徴とする、車両の発電制御装置。
【請求項2】 車両の減速状態を検出する減速状態検出手段(M1)と、エンジン(E)により駆動される発電機(5)の発電状態を制御する発電制御手段(M2)と、エンジン(E)の排気通路(1′)に設けた排気バルブ(2′)の開度をアクチュエータ(3′)で制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を制御するブレーキ力制御手段(M3)とを備えてなり、
前記減速状態検出手段(M1)が車両の減速状態を検出したときに、前記発電制御手段(M2)は発電機(5)に発電を行わせるとともに、前記ブレーキ力制御手段(M3)は発電機(5)の発電量に応じて前記アクチュエータ(3′)を作動させて前記排気バルブ(2′)を開弁制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を低減させて、該発電機(5)の駆動に伴うエンジン負荷の増加によっても車両のトータルのブレーキ力が増加しないようにすることを特徴とする、車両の発電制御装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「ブレーキ力制御手段(M3)」について「該発電機(5)の駆動に伴うエンジン負荷の増加によっても車両のトータルのブレーキ力が増加しないように」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1、請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明1」、「本願補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-104129号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「[発明の技術分野]
本発明は、電子制御装置の制御方法、特に自動車の減速時に無駄に捨てられていたエネルギーを回収すると同時に、スムースな減速感が得られる電子制御装置の制御方法に関するものである。」(第1頁右下欄11〜15行)

イ.「[発明の基本的な考え方]
先ず、実施例の説明に先立って本発明の基本的な考え方を説明する。第5図はエンジンの減速時におけるポンピングによるトルクとエンジン回転数との関係を示した図であり、横軸にエンジン回転数(rpm)を、又、縦軸に減速時のポンピングによるトルクを示し、この関係をスロットル開度をパラメータとして示している。第5図からわかる如く、スロットル開度5°、10°、15°によって減速感、即ち、エンジンブレーキのかかり具合が異なると言うことである。
ここでエンジンのポンピングによるトルクをTq、発電機のトルクをTo、エンジンの減速時の理想的なトータルトルクをTとした時、下記の関係式となるように制御すれば、
T=Tq+To
発電機のトルクToに相当したエネルギーを回収することが出来る。第6図はエンジン回転数とエンジンブレーキ時のエネルギーとの関係を示した図である。この場合、消費されるエネルギーPSを、PS∝NTqとして示してある。
従って減速時のエネルギーをバッテリの充電量が小さい場合は、発電機を介したバッテリの充電電流として消費し、又、バッテリが過充電の場合は T=Tq となるようスロットル開度を制御することによって、理想的な減速感を得ることが出来る。」(第2頁右上欄8行〜同頁左下欄14行)

ウ.「[発明の実施例]
以下図面を参照して実施例を説明するる。第1図は本発明による電子制御装置の制御方法を説明する一実施例構成図である。第1図において、発電機1は回転子コイル11、界磁コイル12、各相に設けたダイオード13からなっている。2はバッテリ、3はマイクロコンピュータ(MPU)、4は界磁電流制御用トランジスタである。そしてMPU3はエンジン回転数とアクセルペダル位置信号とを入力して後述する所定の演算を行ない、その結果により界磁電流制御用トランジスタ4を介して発電機1の界磁コイル12へ界磁電流を流すと共に、スロットル開度を制御するように構成されている。
第2図は演算部における動作説明のためのフローチャートである。
ステップ21ではアクセルペダルがアイドリング・ポジションであるか否かを判断する。ここでアイドリング・ポジションであれば、ステップ22へ移って現在のエンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大きいか否かを判断する。もし現在の回転数が燃料カット回転数より小さければステップ23へ移って走行モード(DRM)が通常走行(NORMAL)であると判断し、ステップ24へ移ってバッテリ2の内部抵抗RBより通常の目標電圧(バッテリの充電目標電圧)を計算する。・・・。
ステップ25においては現在のバッテリ電圧VBと、通常走行モードにおける充電目標電圧VBOとの差によって、発電機の界磁電流IFを設定して出力する。ステップ26では走行モード(DRM)が燃料カットか否かを判断し、走行モードであれば処理を終る。
一方、ステップ22において現在のエンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大であれば、この状態はアクセルペダル位置がアイドリング・ポイントにあり、かつエンジンの回転数が燃料カット回転数より大であることは、運転者としては減速を求めていることであるため、ステップ30に移って走行モード(DRM)を減速モードとし、ステップ31にてバッテリ2の充電目標電圧VBO′を計算し、ステップ25へ移って前記同様の演算を繰返す。この場合は運転者は減速を求めているにも拘らず、現在のエンジン回転数(N)が燃料カット回転数(F・C・N)より大であるため、減速に必要とするトータルトルクTを発生させなければならない。これをエネルギーの面から見ると回収できるエネルギーがあることになる。従ってこの場合は回収エネルギーを大きく設定する必要がある。そこで、バッテリ2の内部抵抗RBから充電目標電圧VBO′を計算するに際して、この充電目標電圧VBO′を前記した走行モードの充電目標電圧VBOよりも大きく設定して発電機の分担分を大としてやることにより、減速時の無駄なエネルギーを回収する。
次にステップ26に移り、燃料カットモードであるのでステップ27へ移り、エンジンの回転数よりエンジンの減速時におけるトータルトルクTを計算すると同時に、前記設定された界磁電流IFより発電機に分担させるトルクToを計算する。そしてステップ28にて減速時のトータルトルクTから発電機に分担させたトルクToを差し引いてポンピングによるロスTqを求め、前記エンジン回転数Nをポンピング・ロスTqよりスロットル開度を計算して出力する。従って無駄なエネルギーの回収ができるために、スムースな減速フィーリングを得るものである。」(第2頁左下欄15行〜第3頁左下欄4行。「説明するる。」は「説明する。」の誤り。「走行モードであれば処理を終る。」は「通常走行モードであれば処理を終る。」の誤り。)

エ.第2図のフローチャートの29と表示された枠内には、「回転数とTqよりスロットル開度を計算して出力」、30、26と表示された枠内には、「DRM=FUELCT」、「DRM=FUELCTか」と記載されている。(第2図)

上記記載事項ア.〜エ.、第1〜6図によると、引用例には、
「アクセルペダルがアイドリング・ポジションであるか否かを判断するステップ21、エンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大きいか否かを判断するステップ22と、バッテリ2の充電目標電圧VBO′を計算するステップ31、バッテリ電圧VBと充電目標電圧VBO′との差によって発電機1の界磁電流IFを設定して出力するステップ25と、エンジン回転数Nよりエンジンの減速時における理想的なトータルトルクTを計算すると同時に前記設定された界磁電流IFより発電機1に分担させるトルクToを計算するステップ27、減速時の理想的なトータルトルクTから発電機1に分担させたトルクToを差し引いてポンピング・トルクTqを求めるステップ28、前記エンジン回転数Nとポンピング・トルクTqよりスロットル開度を計算して出力するステップ29とを備えてなり、
アクセルペダルがアイドリング・ポジションにあってエンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大きいとき、すなわち走行モードDRMが減速モードFUELCT(燃料カットモード)であるときに、発電機1の界磁電流IFを設定して出力するとともに、スロットル開度を計算して出力する、自動車の電子制御装置。」
なる発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比・判断
<本願補正発明1について>
本願補正発明1と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「自動車の電子制御装置」は、その技術的意義からみて、本願補正発明1の「車両の発電制御装置」に相当し、
以下同様に、「アクセルペダルがアイドリング・ポジションであるか否かを判断するステップ21、エンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大きいか否かを判断するステップ22」は、「車両の減速状態を検出する減速状態検出手段(M1)」に、
「バッテリ2の充電目標電圧VBO′を計算するステップ31、バッテリ電圧VBと充電目標電圧VBO′との差によって発電機1の界磁電流IFを設定して出力するステップ25」は、「エンジン(E)により駆動される発電機(5)の発電状態を制御する発電制御手段(M2)」に、
「アクセルペダルがアイドリング・ポジションにあってエンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大きいとき、すなわち走行モードDRMが減速モードFUELCT(燃料カットモード)であるとき」は、「減速状態検出手段(M1)が車両の減速状態を検出したとき」に、
「(アクセルペダルがアイドリング・ポジションにあってエンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大きいとき、すなわち走行モードDRMが減速モードFUELCT(燃料カットモード)であるときに、)発電機1の界磁電流IFを設定して出力する」は、「(減速状態検出手段(M1)が車両の減速状態を検出したときに、)発電制御手段(M2)は発電機(5)に発電を行わせる」に、それぞれ、相当する。

また、引用例記載の発明の「エンジン回転数Nよりエンジンの減速時における理想的なトータルトルクTを計算すると同時に前記設定された界磁電流IFより発電機1に分担させるトルクToを計算するステップ27、減速時の理想的なトータルトルクTから発電機1に分担させたトルクToを差し引いてポンピング・トルクTqを求めるステップ28、前記エンジン回転数Nとポンピング・トルクTqよりスロットル開度を計算して出力するステップ29」なる構成(以下、この構成を「構成A」とする。)は、
本願補正発明1の「エンジン(E)の吸気通路(1)に設けたスロットルバルブ(2)の開度をアクチュエータ(3)で制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を制御するブレーキ力制御手段(M3)」なる構成に、この構成の限りにおいて相当する。

そして、引用例記載の発明の構成Aのもとで「(アクセルペダルがアイドリング・ポジションにあってエンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大きいとき、すなわち走行モードDRMが減速モードFUELCT(燃料カットモード)であるときに、)スロットル開度を計算して出力する」ことは、
減速状態検出手段が車両の減速状態を検出したときに、ブレーキ力制御手段はアクチュエータを作動させてスロットルバルブの開度を制御する限りにおいて、
本願補正発明1の「(減速状態検出手段(M1)が車両の減速状態を検出したときに、)前記ブレーキ力制御手段(M3)は発電機(5)の発電量に応じて前記アクチュエータ(3)を作動させて前記スロットルバルブ(2)を開弁制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を低減させて、該発電機(5)の駆動に伴うエンジン負荷の増加によっても車両のトータルのブレーキ力が増加しないように」することに相当する。

してみると、両者は、
「車両の減速状態を検出する減速状態検出手段と、エンジンにより駆動される発電機の発電状態を制御する発電制御手段と、エンジンの吸気通路に設けたスロットルバルブの開度をアクチュエータで制御することにより、エンジンのポンピング負荷により発生するブレーキ力を制御するブレーキ力制御手段とを備えてなり、
前記減速状態検出手段が車両の減速状態を検出したときに、前記発電制御手段は発電機に発電を行わせるとともに、前記ブレーキ力制御手段は前記アクチュエータを作動させて前記スロットルバルブの開度を制御する、車両の発電制御装置。」
の点で一致し、次の相違点1、2で相違する。

[相違点1]
本願補正発明1においては、減速状態検出手段(M1)が車両の減速状態を検出したときに、「前記ブレーキ力制御手段(M3)は発電機(5)の発電量に応じて前記アクチュエータ(3)を作動させて前記スロットルバルブ(2)を開弁制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を低減させて、該発電機(5)の駆動に伴うエンジン負荷の増加によっても車両のトータルのブレーキ力が増加しないように」したのに対して、
引用例記載の発明においては、構成Aのもとでアクセルペダルがアイドリング・ポジションにあってエンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大きいとき、すなわち走行モードDRMが減速モードFUELCT(燃料カットモード)であるときに、スロットル開度を計算して出力した点。

[相違点2]
本願補正発明1においては、「そのときにエンジン(E)の燃料噴射弁(6)をフュエルカット状態に維持する」(なお、「そのとき」とは、「前記減速状態検出手段が車両の減速状態を検出したとき」を指す。)のに対し、引用例記載の発明においては、減速モードにあるときにエンジンの燃料噴射弁をフュエルカット状態に維持するのか一応明らかでない点。

上記[相違点1][相違点2]について検討する。
[相違点1]について
引用例記載の発明は、エンジンのポンピングによるトルクをTq、発電機のトルクをTo、エンジンの減速時の理想的なトータルトルクをTとした時、T=Tq+Toとなるように制御することで理想的な減速感を得るというものである。すなわち、発電機の駆動に伴うエンジン負荷の増加をエンジンのポンピング負荷により発生するブレーキ力を低減させることで相殺し、車両のトータルのブレーキ力がエンジンの減速時の理想的なトータルトルクTとなるように制御するものである。そうすると、引用例記載の発明は、本願補正発明1の上記[相違点1]に係る構成を備えているものと認められる。
また、「車両のトータルのブレーキ力」の基準となるものが、スロットル全閉時におけるエンジンブレーキによるブレーキ力であると解釈したとしても、そのような基準を採用することは当業者が適宜なし得る設計的事項と認められる。

[相違点2]について
スロットル開度を可変に制御することでエンジンによる減速度合いを調整可能とするものにおいて、減速中もフュエルカット状態を維持することは、周知技術[特開昭63-235635号公報、実願昭61-191822号(実開昭63-96257号)のマイクロフィルム、特開平4-135936号公報2頁左上欄11〜13行等。]である。また、省燃費を目的としてフュエルカット領域をできるだけ拡大したいということは、ごく一般的な技術課題である。そうすると、引用例記載の発明において、スロットルバルブを開弁制御することにより、エンジンのポンピング負荷により発生するブレーキ力を低減させて、発電機の駆動に伴うエンジン負荷の増加によっても車両のトータルのブレーキ力が増加しないようにするに際し、フュエルカット状態を維持するものとすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。
また、引用例の上記記載事項ウ.には、「ステップ26では走行モード(DRM)が燃料カットか否かを判断し、」、「ステップ22において現在のエンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大であれば、この状態はアクセルペダル位置がアイドリング・ポイントにあり、かつエンジンの回転数が燃料カット回転数より大であることは、運転者としては減速を求めていることであるため、ステップ30に移って走行モード(DRM)を減速モードとし」、「次にステップ26に移り、燃料カットモードであるのでステップ27へ移り、エンジンの回転数よりエンジンの減速時におけるトータルトルクTを計算すると同時に、前記設定された界磁電流IFより発電機に分担させるトルクToを計算する。」との記載があり、第2図のステップ26、ステップ30には、DRM=FUELCTとの記載がある。そうすると、引用例記載の発明は、ステップ27〜29で燃料カットの状態であるから、本願補正発明1の「そのときにエンジンの燃料噴射弁をフュエルカット状態に維持する」構成を備えていることがわかる。

また、本願補正発明1の効果についてみても、引用例記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明1は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

<本願補正発明2について>
本願補正発明2と引用例記載の発明とを対比すると、両者は、
「車両の減速状態を検出する減速状態検出手段と、エンジンにより駆動される発電機の発電状態を制御する発電制御手段と、エンジンのポンピング負荷により発生するブレーキ力を制御するブレーキ力制御手段とを備えてなり、
前記減速状態検出手段が車両の減速状態を検出したときに、前記発電制御手段は発電機に発電を行わせる、車両の発電制御装置。」
の点で一致し、次の相違点3で相違する。

[相違点3]
本願補正発明2においては、「エンジン(E)の排気通路(1′)に設けた排気バルブ(2′)の開度をアクチュエータ(3′)で制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を制御するブレーキ力制御手段(M3)とを備え」、「前記減速状態検出手段(M1)が車両の減速状態を検出したときに、前記発電制御手段(M2)は発電機(5)に発電を行わせるとともに、前記ブレーキ力制御手段(M3)は発電機(5)の発電量に応じて前記アクチュエータ(3′)を作動させて前記排気バルブ(2′)を開弁制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を低減させて、該発電機(5)の駆動に伴うエンジン負荷の増加によっても車両のトータルのブレーキ力が増加しないようにする」のに対して、
引用例記載の発明においては、構成Aのもとでアクセルペダルがアイドリング・ポジションにあってエンジン回転数Nが燃料カット回転数F・C・Nより大きいとき、すなわち走行モードDRMが減速モードFUELCT(燃料カットモード)であるときに、スロットル開度を計算して出力した点。

上記[相違点3]について検討する。
[相違点3]について
減速度合いを調整可能な排気ブレーキ制御は周知技術[特開昭61-92936号公報、特開平1-224415号公報、特開昭60-222330号公報]である。そうすると、引用例記載の発明において、スロットル制御による減速度合いの制御に代えて、排気ブレーキによる減速度合いの制御を採用することは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。

また、本願補正発明2の効果についてみても、引用例記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明2は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年8月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、請求項2に係る発明(以下、「本願発明1]、「本願発明2」という。)は、平成14年7月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 車両の減速状態を検出する減速状態検出手段(M1)と、エンジン(E)により駆動される発電機(5)の発電状態を制御する発電制御手段(M2)と、エンジン(E)の吸気通路(1)に設けたスロットルバルブ(2)の開度をアクチュエータ(3)で制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を制御するブレーキ力制御手段(M3)とを備えてなり、
前記減速状態検出手段(M1)が車両の減速状態を検出したときに、前記発電制御手段(M2)は発電機(5)に発電を行わせるとともに、前記ブレーキ力制御手段(M3)は発電機(5)の発電量に応じて前記アクチュエータ(3)を作動させて前記スロットルバルブ(2)を開弁制御することによりブレーキ力を低減し、そのときにエンジン(E)の燃料噴射弁(6)をフュエルカット状態に維持することを特徴とする、車両の発電制御装置。
【請求項2】 車両の減速状態を検出する減速状態検出手段(M1)と、エンジン(E)により駆動される発電機(5)の発電状態を制御する発電制御手段(M2)と、エンジン(E)の排気通路(1′)に設けた排気バルブ(2′)の開度をアクチュエータ(3′)で制御することにより、エンジン(E)のポンピング負荷により発生するブレーキ力を制御するブレーキ力制御手段(M3)とを備えてなり、
前記減速状態検出手段(M1)が車両の減速状態を検出したときに、前記発電制御手段(M2)は発電機(5)に発電を行わせるとともに、前記ブレーキ力制御手段(M3)は発電機(5)の発電量に応じて前記アクチュエータ(3′)を作動させて前記排気バルブ(2′)を開弁制御することによりブレーキ力を低減することを特徴とする、車両の発電制御装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
<本願発明1について>
本願発明1は、前記2.で検討した本願補正発明1から「ブレーキ力制御手段(M3)」の限定事項である「該発電機(5)の駆動に伴うエンジン負荷の増加によっても車両のトータルのブレーキ力が増加しないように」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

<本願発明2について>
本願発明2は、前記2.で検討した本願補正発明2から「ブレーキ力制御手段(M3)」の限定事項である「該発電機(5)の駆動に伴うエンジン負荷の増加によっても車両のトータルのブレーキ力が増加しないように」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明2の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明2が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明2も、同様の理由により、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明1、本願発明2は、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-26 
結審通知日 2006-02-01 
審決日 2006-02-14 
出願番号 特願平8-65725
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 義彦  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 清田 栄章
長馬 望
発明の名称 車両の発電制御装置  
代理人 落合 健  
代理人 仁木 一明  

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