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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1133769
審判番号 不服2002-691  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-15 
確定日 2006-03-29 
事件の表示 平成11年特許願第339894号「超音波高さセンサーを備えた化学物質供給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月20日出願公開、特開2000-167381〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成11年11月30日(優先権主張1998年11月30日、米国)にした特許出願であって、平成13年10月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年1月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月14日付けで手続補正がなされたものである。
2.平成14年2月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成14年2月14日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正により、平成13年8月27日付けで提出された手続補正書により補正された請求項1は、本件補正前の請求項1の「アンプル又は直接液体注入装置によって化学物質を、この化学物質を使用する処理機器に提供し、この処理機器が、超高純度化学物質を保持及び分配するための供給貯蔵容器とアンプル又は直接液体注入装置である少なくとも1つの受器を具備し、この受器が、前記貯蔵容器から配管を経由して移動する前記化学物質を受け取り、この配管が、前記化学物質を前記貯蔵容器から前記受器に移動させる、化学物質供給装置であって、少なくとも1つの複数高さ超音波プローブが、前記受器に挿入され又は前記受器の外側表面に配置され、前記受器が満たされたこと示す第1の高さまで前記受器が前記化学物質を保持したときに、このプローブが第1の信号を発生させ、第2の高さでは前記受器が部分的に満たされたことを示し、及び第3の高さでは前記受器が前記貯蔵容器からの追加の前記化学物質の移動を必要とすることを示し、且つ前記貯蔵容器の前記化学物質の高さを、この貯蔵容器に挿入された別の複数高さ超音波プローブによって監視することを特徴とする化学物質供給装置。」について、「処理機器」を「半導体製造装置の処理機器」とし、また、「処理機器に提供し、この処理機器が」を「処理機器に提供する化学物質供給装置であり」とすることによって、「アンプル又は直接液体注入装置によって化学物質を、この化学物質を使用する半導体製造装置の処理機器に提供する化学物質供給装置であり、超高純度化学物質を保持及び分配するための供給貯蔵容器とアンプル又は直接液体注入装置である少なくとも1つの受器を具備し、この受器が、前記貯蔵容器から配管を経由して移動する前記化学物質を受け取り、この配管が、前記化学物質を前記貯蔵容器から前記受器に移動させる、化学物質供給装置であって、少なくとも1つの複数高さ超音波プローブが、前記受器に挿入され又は前記受器の外側表面に配置され、前記受器が満たされたこと示す第1の高さまで前記受器が前記化学物質を保持したときに、このプローブが第1の信号を発生させ、第2の高さでは前記受器が部分的に満たされたことを示し、及び第3の高さでは前記受器が前記貯蔵容器からの追加の前記化学物質の移動を必要とすることを示し、且つ前記貯蔵容器の前記化学物質の高さを、この貯蔵容器に挿入された別の複数高さ超音波プローブによって監視することを特徴とする化学物質供給装置。」と補正された。
そして、上記の補正のうちの「処理機器」を「半導体製造装置の処理機器」とする点は処理装置に「半導体製造装置」という限定を付加するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、「処理機器に提供し、この処理機器が」を「処理機器に提供する化学物質供給装置であり」とする点は文を整理して本願請求項1に係る発明の構成を明りょうにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(2)そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。
(i)引用文献
(ア)原査定の拒絶の理由に引用した特表昭63-500030号公報(以下、「引用文献1」という。」には、次の事項が記載されている。
(ア-1)「化学的に反応性のある蒸気をシリコンウエハ処理炉等に与えるためのシステムであって:
(a)超高純度の非常に化学的に反応性のある試薬を含みかつ分配するための補給貯蔵槽102と:
(b)試薬貯蔵槽と、不活性気体を試薬の表面の下の貯蔵槽に導入し前記気体が試薬を介して内部で泡立つことを引き起こすインレット管172と、バブラーから試薬蒸気で少なくとも部分的に飽和された不活性気体を運ぶためのアウトレット管174とを含む少なくとも1個のバブラー170と:さらに
(c)定期的に(I)補給貯蔵槽から導管システムを介してバブラーに試薬を移送し、そして(II)導管システムから試薬を流し不活性気体で導管システムを満たすための導管システムを含む手段(104-108、120-168)とを組み合わせて含む、システム。」(【請求項1】)、
(ア-2)「この発明は半導体産業で典型的に用いられる型の蒸気送り出しシステムに関するものであって、特にこの型の蒸気送り出しシステムを補給するためのシステムに関するものである。」(第3頁右下欄第4〜7行)、
(ア-3)「バブラーは最小レベルと最大レベルの間で自動的に維持される。これらすべては独特かつ意義深い処理段階および装置を用いる補給貯蔵槽から達成され、汚染を防ぎ安全性を確実にする。こうして、この発明の一局面は、蒸気送り出しシステムとして用いられるバブラーまたはその類似物を自動的に補給するためのシステムを提供することである。」(第4頁左下欄第2〜8行)、
(ア-4)「この発明は化学的に反応性のある蒸気をシリコンウエハ処理炉およびその類似物に提供するためのシステムとして説明されてもよく、高純度の非常に化学的に反応性のある試薬を含みかつ分配するための補給貯蔵槽と、試薬で不活性気体の流れを少なくとも部分的に飽和させるための少なくとも1つのバブラーと、さらに導管システムを介して補給貯蔵槽からコンタクタに試薬を周期的に移送し、移送手段から試薬を流し、不活性気体で移送手段を満し、試薬液の周期的な移送の間不活性気体との圧力のもとで移送手段を維持し、そして貯蔵槽とバブラーとの液体レベルをモニタするための手段と、バブラーから貯蔵槽へ残余の化学薬品を戻すための手段とを含む。」(第4頁左下欄第10〜21行)、
(ア-5)「システムは試薬のレベルを連続的またはバブラーの予め定められたレベルで感知し、試薬が予め定められたレベルの上にあるときのみ試薬移送手段と不活性気体をコンタクタに供給するための不活性気体の流れを供給する手段とを制御し、コンタクタの試薬が予め定められたレベルまたはそれ以下であるときのみ試薬をバブラーに移送するための手段を含んでもよい。」(第5頁左上欄第4〜10行)、
(ア-6)「いかなるレベルの感知装置も用いられ得る一方で、1つの好ましい感知装置は連続的なレベルの信号がいかなる所与の時間でもバブラー内の液体レベルを表示して発生される光感知システムを含む。・・・別のレベル感知装置は典型的にはレベル感知ウェル内でまたはバブラーの壁上でバブラーに隣接して固定される電気的に導電性の複数個のストリップを含む容量センサを含む。・・・さらに別の方法は、そこに貯蔵槽が挿入されるキャビネットの土台に置かれる負荷セルを用いて計量することである。」(第5頁右下欄第3〜22行)、
(ア-7)「レベルセンサの適切な実施例は第2図および第3図と関連して説明される。・・・示されているレベルセンサは204でスリーブの第1のゾーンと熱的に接触をしているスリーブの第1の電気ヒータと、スリーブの第2のゾーンと熱的に接触しているスリーブの第1の温度センサ206とを含む。ヒータおよびセンサはその間隔は204で示されているが互いにスリーブに沿って縦に間隔があけられている。ヒータおよび温度センサは実質的にスリーブのみを通ってお互い熱的な連通になるようにスリーブに構成および装設されている。すなわち空間208にわたる温度の伝導がほとんどないのでそのようなヒータ204から温度センサ206に移送される熱はスリーブ202の壁を通って完全にまたは実質的に完全に流れる。スリーブの空間208の縦の位置はバブラーの上限を規定する。低いレベルの感知アセンブリはスリーブの第3のゾーンと熱的な接触をしている第2の電気ヒータ210と、スリーブの第4のゾーンと熱的な接触をしている第2の温度センサ212を含み、第2のヒータおよび第2のセンサは互いにスリーブに沿って縦に空間があけられその空間は214で示され実質的にスリーブのみを介して互いに熱的な連通であるようにスリーブ内に構成および装設される。こうして最小のレベルは空間214の位置によって規定される。付加のセンサ216が警告信号を与えるためにまたは所望されるような他の制御の目的のためにセンサアセンブリの底に設けられてもよい。」(第11頁左上欄第15行〜同右上欄第21行)、
(ア-8)「いかなる液体レベル感知システムもこの発明の全体のシステム内に用いられてもよい。流体を液体の本体に強制するのに必要な圧力が測定される従来の圧力作動センサがたとえば用いられてもよい。以前に説明された熱センサが有利に用いられてもよい。有利な使用がまた第4図に示されるフォトダイオードセンサでなされてもよくこれはここで参照される。」(第11頁右下欄第4〜10行)、
(ア-9)「第4図はここで説明されるのと同じセンサが貯蔵槽に用いられるかもしれないが、バブラー170の一部を示し、そこではセンサウェル176が置かれる。上部の液体レベルから少なくとも下部のすなわち最小の液体レベルに延在する長手のフォトダイオードセンサ240はウェルの中に配置され、」(第11頁右下欄第11〜16行)、
(ア-10)第1図(第15頁)にはバブラー(170)にレベルセンサ(202)がウェル(176)を介して挿入され、また、補給貯蔵槽(102)にも、バブラー(170)に挿入されたものとは別体の液体の複数高さを感知するレベルセンサ(200)がセンサウェル(103)内に固定されているものが示されている。
(ア-11)第2図(第16頁)には第1の温度センサ(206)と、第2の温度センサ(212)と、付加のセンサ(216)の3つのセンサがレベルセンサ(202)の上下方向の異なる位置に設けられているものが示されている。
(ア-12)第4図(第16頁)にはウェル内に設けられるセンサとしてフォトダイオードセンサを用いる例が記載されている。
(ア-13)第5図(第16頁)にはウェル内に設けられるセンサとして電気容量原理で動作するセンサを用いる例が記載されている。
引用文献1の記載事項(ア-1)には「化学的に反応性のある蒸気をシリコンウエハ処理炉等に与えるためのシステムであって:
(a)超高純度の非常に化学的に反応性のある試薬を含みかつ分配するための補給貯蔵槽102と:
(b)試薬貯蔵槽と、不活性気体を試薬の表面の下の貯蔵槽に導入し前記気体が試薬を介して内部で泡立つことを引き起こすインレット管172と、バブラーから試薬蒸気で少なくとも部分的に飽和された不活性気体を運ぶためのアウトレット管174とを含む少なくとも1個のバブラー170と:さらに
(c)定期的に(I)補給貯蔵槽から導管システムを介してバブラーに試薬を移送し、そして(II)導管システムから試薬を流し不活性気体で導管システムを満たすための導管システムを含む手段(104-108、120-168)とを組み合わせて含む、システム。」が記載され、この記載中の「バブラー」は、記載事項(ア-3)に記載されるように「バブラーは最小レベルと最大レベルの間で自動的に維持され」、「蒸気送り出しシステムとして用いられる」ものである。そして、記載事項(ア-6)および(ア-10)に記載されるように「レベル感知装置は典型的にはレベル感知ウェル内でまたはバブラーの壁上でバブラーに隣接して固定され」ており、記載事項(ア-7)には、レベルセンサは「バブラーの上限」である「最大レベル」および「最小レベル」を規定し「付加のセンサ216が警告信号を与えるためにまたは所望されるような他の制御の目的のためにセンサアセンブリの底に設けられてもよい」と記載され、記載事項(アー8)には、「いかなるレベルの感知システムも」用いられることが記載され、記載事項(ア-11)および(ア-12)には、ウェル内に設けられるセンサとしてフォトダイオードセンサや電気容量原理を用いるセンサの例が記載され、さらに、記載事項(ア-4)には「貯蔵槽とバブラーとの液体レベルをモニタするための手段」が設けられることが記載されている。また、記載事項(ア-10)には「同じセンサが貯蔵槽に用いられる」ることが記載され、記載事項(ア-10)には「バブラー(170)にレベルセンサ(202)がウェル(176)を介して挿入されていることが記載されている。これら記載事項を総合すると、引用文献には「化学的に反応性のある蒸気をシリコンウエハ処理炉等に与えるためのシステムであって:
(a)超高純度の非常に化学的に反応性のある試薬を含みかつ分配するための補給貯蔵槽と:
(b)少なくとも1個の蒸気送り出しシステムとして用いられるバブラーと:さらに
(c)定期的に(I)補給貯蔵槽から導管システムを介してバブラーに試薬を移送し、そして(II)導管システムから試薬を流し不活性気体で導管システムを満たすための導管システムを含む手段とを組み合わせて含み、さらに、バブラーにセンサがレベル感知ウェルを介して挿入され、液体試薬の最大レベルと最小レベルを監視し警告信号を与え、いかなるレベルの感知システムも用いられるレベルセンサによりバブラーは最小レベルと最大レベルの間で自動的に維持され、さらに、付加のセンサが警告信号を与えるためにまたは所望されるような他の制御の目的のためにセンサアセンブリの底に設けられ、バブラーと同じセンサが貯蔵槽に用いられる構成からなる化学的に反応性のある蒸気をシリコンウエハ処理炉等に与えるためのシステム」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(イ)平成16年7月9日付けでなされた審尋通知に挙げられた引用文献2:特開平10-15379号公報には、次の事項が記載されている。
(イ-1)「本発明は、半導体製造に用いて好適な強酸の希釈装置に係り、特にフッ酸のように極めて腐蝕力の強い強酸を高い精度の希釈率で希釈する装置に関する。」(第2頁左欄第14〜17行)、
(イ-2)「上記実施例においては、液位を検出するセンサとして、近接スイッチを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、液面の上側に取り付けられる超音波式の測距儀や、液面の底面に取り付けられる圧力計を用いて液位を測定してもよい。」(第4頁左欄第7〜11行)。
(ii)対比・判断
そこで、本願補正発明と引用発明を対比すると、「シリコンウエハ処理炉」が本願補正発明の「半導体製造装置の処理機器」に相当することは明らかであり、引用発明の「超高純度の非常に化学的に反応性のある試薬を含みかつ分配するための補給貯蔵槽」、「蒸気送り出しシステムとして用いられるバブラー」および「補給貯蔵槽から導管システムを介してバブラーに試薬を移送」することがそれぞれ、本願補正発明の「超高純度化学物質を保持及び分配するための供給貯蔵容器」、「アンプル又は液体注入装置である少なくとも1つの受器」および「受器が、前記貯蔵容器から配管を経由して移動する前記化学物質を受け取り、この配管が、前記化学物質を前記貯蔵容器から前記受器に移動させる」に相当し、引用発明の「レベルセンサが最大および最小の複数のレベルを検知し」、「付加のセンサが底部に設けられ」、「バブラーと同じセンサが貯蔵槽に用いられる」ことは、本願補正発明の「液体の複数高さを感知するレベルセンサが受器に挿入され」、「貯蔵容器の前記化学物質の高さを、この貯蔵容器に挿入された別の複数高さを感知するレベルセンサによって監視すること」に他ならない。
したがって、両者は、
「アンプル又は直接液体注入装置によって化学物質を、この化学物質を使用する半導体製造装置の処理機器に提供する化学物質供給装置であり、超高純度化学物質を保持及び分配するための供給貯蔵容器とアンプル又は直接液体注入装置である少なくとも1つの受器を具備し、この受器が、前記貯蔵容器から配管を経由して移動する前記化学物質を受け取り、この配管が、前記化学物質を前記貯蔵容器から前記受器に移動させる、化学物質供給装置であって、少なくとも1つの液体の複数高さを感知するレベルセンサが、前記受器に挿入され、前記受器の前記化学物質の高さを監視し、且つ前記貯蔵容器の前記化学物質の高さを、この貯蔵容器に挿入された別の液体の複数高さを感知するレベルセンサによって監視することを特徴とする化学物質供給装置」で一致し、以下の点で相違する。
(a)本願補正発明では「レベルセンサ」が「プローブ」であるのに対して、引用発明では、レベルセンサが「ウェル」を介して挿入されたものである点、
(b)本願補正発明では化学物質の高さを監視するためにが「超音波」を利用するのに対して、引用発明では「いかなる液体レベル感知システム」が用いられるとされ、種類は特定されていない点、
(c)液体化学物質の高さの監視手段が、本願補正発明では「受器が満たされたことを示す第1の高さまで受器が化学物質を保持したときに、このプローブが第1の信号を発生させ、第2の高さでは受器が部分的に満たされたことを示し、及び第3の高さでは受器が貯蔵容器からの追加の前記化学物質の移動を必要とすることを示す」という3つのレベルを感知して監視するものであるのに対して、引用発明では「バブラーは最小レベルと最大レベルの間で自動的に維持され」、「付加のセンサが警告信号を与えるためにまたは所望されるような他の制御の目的のためにセンサアセンブリの底に設けられる」という3つのレベルを感知して監視するものである点
そこで、上記の相違点について検討する。
(相違点(a)について)
引用文献1の第2図に示されるレベルセンサは、ウェル内に挿入されるが、ウェルの形状は、記載事項(ア-8)に記載されるようにスリーブ状であり、細長く、針状であるといえる。したがって、これを「探針型」すなわち「プローブ型」と称することは、単なる表現の微差にすぎないものである。
(相違点(b)について)
引用発明では、「いかなる液体レベル感知システムもこの発明の全体のシステム内に用いられてもよい」(記載事項(ア-8))ことが記載されており、記載事項(ア-12)および(ア-13)には、ウェル内に設けられるセンサとしてフォトダイオードセンサや電気容量原理で動作するセンサを用いる例が記載されている。また、引用文献2の記載事項(イー1)および(イ-2)に記載されるように半導体製造技術分野において、液体レベル感知システムとして近接スイッチや圧力計と共に超音波を利用するものを選択できることが本願出願前から周知であり、引用発明に対して「レベルセンサとして超音波を利用したものを採用する」ことは単なる周知手段の置換にすぎないものである。
(相違点(c)について)
記載事項(ア-12)には、第1の温度センサ(206)と、第2の温度センサ(212)と、付加のセンサ(216)の3つのセンサがレベルセンサ(202)の上下方向の異なる位置に設けられているものが記載されており、また、記載事項(ア-8)によると上記の第1温度センサ(206)は「上限」の感知用であり、第2の温度センサ(212)は「低いレベルの感知」用であり、「センサアセンブリの底に設けられ」た付加のセンサ(216)は「警告信号を与えるまたは所望されるような他の制御」用である。
そして、引用発明において、液体化学物質の高さの監視手段の「上限」を、「受器内の化学物質が満たされたことを示す」とし、「低いレベル」を「受器が部分的に満たされたことを示す」とし、「センサアセンブリの底」に達したときに「所望されるような他の制御の目的」として「受器が供給貯蔵容器からの追加の化学物質の補給を必要とすることを示す」という3つのレベルを感知して監視するという設定に替えることは、当業者にとって容易になし得ることといえる。
そして、上記相違点b、cの構成を採用することにより奏される「高さ感知装置に含まれる動く部分による化学物質への危険性がなく、光学的なプローブよりも信頼可能であり、また、受器内に利用できる化学物質が十分にあることを常に把握することができる」等の効果も、上記の「相違点bについて」で述べたとおり「液体レベル感知システムとして超音波を利用するものが本願出願前から周知」であり、また、引用文献1に「上限」の感知用、「低いレベルの感知」用、及び「警告信号を与えるまたは所望されるような他の制御」用の3つのセンサがレベルセンサの上下方向の異なる位置に設けられているレベルセンサを使用して液体化学物質の高さの制御をすることが記載されているといえることからみて、当業者であれば予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
そうすると、平成14年2月14日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、特許法第17条の2の第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反してなされたものであるから、同補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
(3)むすび
上記(2)の理由により、平成14年2月14日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3.本願発明について
平成14年2月14日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。」は平成13年8月27日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「アンプル又は直接液体注入装置によって化学物質を、この化学物質を使用する処理機器に提供し、この処理機器が、超高純度化学物質を保持及び分配するための供給貯蔵容器とアンプル又は直接液体注入装置である少なくとも1つの受器を具備し、この受器が、前記貯蔵容器から配管を経由して移動する前記化学物質を受け取り、この配管が、前記化学物質を前記貯蔵容器から前記受器に移動させる、化学物質供給装置であって、少なくとも1つの複数高さ超音波プローブが、前記受器に挿入され又は前記受器の外側表面に配置され、前記受器が満たされたことを示す第1の高さまで前記受器が前記化学物質を保持したときに、このプローブが第1の信号を発生させ、第2の高さでは前記受器が部分的に満たされたことを示し、及び第3の高さでは前記受器が前記貯蔵容器からの追加の前記化学物質の移動を必要とすることを示し、且つ前記貯蔵容器の前記化学物質の高さを、この貯蔵容器に挿入された別の複数高さ超音波プローブによって監視することを特徴とする化学物質供給装置。」
4.引用文献
原査定の拒絶の理由に挙げられた引用文献1の記載事項は上記「2.(2)(i)(ア)」に記載したとおりである。そして、上記「2.(2)(ii)」における周知技術である平成16年7月9日付けでなされた審尋通知に挙げられた上記引用文献2の記載事項は上記「2.(2)(i)(イ)」に記載したとおりである。
5.対比・判断
本願発明は、上記「2.(2)(ii)」で検討した本願補正発明からみると、「処理機器」についての「半導体製造装置の」いう限定をなくし、また、「処理機器に提供する化学物質供給装置であり」を「処理機器に提供し、この処理機器が」とするものである。
そして、前者の補正は、本願補正発明の処理機器の用途限定を削除し、後者の補正は、実質的に同じ内容のことを表現を変えたものにすぎないといえる。
してみると、本願補正発明が上記「2.(2)(ii)」で述べたとおり引用文献1に記載された発明及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明も特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-25 
結審通知日 2005-11-01 
審決日 2005-11-14 
出願番号 特願平11-339894
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
P 1 8・ 575- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 板橋 一隆
大黒 浩之
発明の名称 超音波高さセンサーを備えた化学物質供給装置  
代理人 福本 積  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 樋口 外治  
代理人 鶴田 準一  

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