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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1133795
審判番号 不服2004-3529  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-23 
確定日 2006-03-29 
事件の表示 平成 7年特許願第154026号「電子計算器」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月 1日出願公開、特開平 8-255138〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年5月29日(優先権主張平成7年1月5日、平成7年1月20日)の出願であって、平成16年1月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月23日に審判請求がなされたものであり、その請求項2に係る発明は、特許請求の範囲の請求項2に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「数値及び計算実行命令等の入力ための入力操作キーと、前記入力操作キーに対するキー押し操作に応答して加減乗除及び平方根等の計算を処理する計算処理手段と、前記入力操作キーによる入力及び前記計算の処理結果を数値等として表示可能な表示画面と、前記入力操作キーの操作及び前記計算処理に応答して前記表示画面上に数値等を表示する表示制御手段とを少なくとも有する電子計算器であって、
前記表示画面に表示された数値を記憶させるべくキー押し操作を行うための記憶キーと、
前記表示画面に表示された数値を記憶可能な記憶部を含み、前記記憶キーのキー押し操作に応答して、前記表示画面に表示された数値を該記憶部に記憶させる記憶手段と、
前記表示画面に表示された数値と前記記憶部内に記憶されている数値とが一致するか否かを判断するべくキー押し操作を行うための積算合計キー及び等号キーと、
前記積算合計キー及び等号キーのキー押し操作に応答して、前記表示画面に表示された数値と前記記憶部内に記憶されている数値とが一致するか否かを判断する比較手段と、
前記比較の結果を認知させる標識と、
前記記憶キーのキー押し操作に連動して、前記表示画面の表示状態を初期化して初期表示とする初期表示手段とを有することを特徴とする
電子計算器。」

ただし、上記のうち、「入力ための」は「入力のための」の誤記と認められる。

2.引用発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である昭和53年7月1日に頒布された刊行物である特公昭53-21259号公報(以下「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、以降において、””で挟まれたフアンクシヨンキーを表す記号列は、実際は、四角(□)で囲まれた記号列であり、[]で挟まれたカタカナは、実際は、丸囲みされたカタカナであり、_(アンダーライン)が付された記号列は、実際は、アッパーラインが付された記号列である。

(ア)「テンキー及びフアンクシヨンキーを有するキー入力装置と演算用レジスタを有し該レジスタの内容が表示されるように制御される演算処理装置とマイクロオーダを発生するプログラム装置と数字表示装置とを備えた電子卓上計算機において、第1の演算結果を記憶するための照合用レジスタ(メモリ)と、実質的に制御信号を発生しない第1のスイツチ状態(Vn)および制御信号を発生する第2のスイッチ状態(Vin)並びに第3のスイツチ状態(Vout)にそれぞれ切り換えることができる照合用スイツチと、上記第2のスイツチ状態(Vin)で上記演算用レジスタの内容を上記照合用レジスタに転移させる信号を発生すると共に上記第3のスイツチ状態(Vout)で上記照合用レジスタの内容を上記演算用レジスタに転移させる信号を発生する制御回路と、上記演算用レジスタの内容(第2の演算結果)と上記照合用レジスタの内容(第1の演算結果)の一致・不一致を検出する照合回路と、上記照合回路の出力に基づいて照合結果を知らせる報知装置とを有するキー制御式の照合機能装置を備えた電子卓上計算機。」
(特許請求の範囲)

(イ)「本発明は同一演算を2度繰返えした場合両演算結果の一致、不一致を検出する機能を備えた電子式卓上計算機を提供しようとするものであつて、特に照合用キースイツチとスイツチ操作に対応する照合レジスタの情報制御に特徴を有するものである。」
(第1頁右欄第9-14行)

(ウ)「第1図は本発明のブロック図である。
この発明の中心となるのは、3つのレジスタX,Y,VMで、これらは適当なゲート手段で接続され、プログラム装置PGから発生するマイクロオーダなる信号によって制御されている。」
(第1頁右欄第16-20行)

(エ)「数値キーTK、フアンクシヨンキーFKを備えたキーボードKBからの信号はそれぞれレジスタX、プログラム装置PGに導入される。」
(第1頁右欄第24-26行)

(オ)「今、A”×”B”=”Cなる演算を行う場合には、まず数値AかレジスタXに記憶され、乗算指示はフアンクションキー”×”の押圧でプログラム装置PGに記憶される。続いて数値Bを数値キーにて導入すると数値AはゲートG4を介してレジスタYに導入され、レジスタXに数値Bが記憶される。この状態で演算開始キー”=”を押圧するとプログラム装置は演算状態NOに入り、マイクロオーダが発生してゲートG2〜G6を適当に開閉し加算器FAにてA×Bを行い、答えCをレジスタXに、被演算数AをレジスタYに導入して処理動作を終了し非演算状態NOに入る。」
(第1頁右欄第30行-第2頁左欄第4行)

(カ)「上記プログラム装置PGにはフアンクシヨキー各種に対するプログラムが設定され、キーの押圧に従つて指定された動作を行う。」
(第2頁左欄第14-16行)

(キ)以下第2図の各レジスタの状態移行図を参照しながら説明する。尚第1回目の演算はA”×”B”=”C,第2回目の演算はA0”×”B0”=”C0とする。第1回目の演算終了時[ニ]は記述した通りである。ここで、特定スイツチSSを押圧する。このスイツチSSは照合準備端子Vinと中立端子Nと呼び出し端子Voutを有し、スイツチ片SWをいずれの端子に接触させても端子Nに復帰するようになつている。このスイツチ片SWを端子Vinに接触させることによつてPなる1語長信号を発生させ、レジスタ”X”の内容CをゲートG7を介して照合メモリVMに導入する。第2回目の演算もA0”×”B0までは全く同様である。”=”キーを指示すると[リ]の状態に移り演算は終了する。この終了状態NOに於て、レジスタXと照合用メモリーVMの内容を比較一致、不一致を検出する。この実施例では不一致検出回路GAで不一致の検出を、ゲートG8で検出時間を制御している。」
(第2頁左欄第26-43行)

(ク)「上記した演算終了状態で前の演算結果と比較するには、次のような構成が考えられる。即ち、演算状態NOは一般には”=”キー操作の直後のみであるから、演算状態NOから非演算状態NOに変化する過度状態をQ1,Q2なるフリツプフロツプで検出しこの検出をフリツプフロツプF2にて記憶して、この間に不一致検出するような構成にするわけである。例えば演算、非演算状態をNOFというアドレスフリツプフロツプで記憶しているとすれば第3図タイムチャートの如くNOFがリセット状態(非演算状態)なつた時だけゲートGBが出力してフリツプフロツプF2の出力によつて上述した照合動作をするようにプログラム装置PG構成する。尚フリツプフロツプF2はキー出力でリセツトするようにしておく。」
(第2頁左欄第44行-右欄第14行)

(ケ)「又、第4図に示す如く”=”キーの押圧にてセットされるフリツプフロツプBを設けこのセツト出力と非演算状態を示すPとのアンド出力をゲートG8に与えるようにして、一致、不一致を検出するようにしてもよい。このようにすれば”=R”キー(減算指示キー)、”MR”キー(メモリーの呼び出しキー)、”RC”キー(リコール指示キー)の指示の場合にも検出が極めて容易に制御できる。…(中略)…このセツト出力は警報ランプLを駆動して点灯し、不一致を操作者に知らせる。」
(第2頁右欄第15-31行)

(コ)この時メモリーVMの内容(即ち’C’)を確認したい時は上記特定スイツチSSの接片SWを呼び出し端子Voutに触させる。…(中略)…この時、メモリVMの内容は消去されずに残つている。レジスタXは表示用レジスタを兼ねているから、メモリーVMの内容(即ち’C’)は視覚的に確認できる。」
(第2頁右欄第42行-第3頁左欄第8行)

(サ)第2図の記載からは、ホの段階で、キー操作SSVinすなわち接片SWを照合準備端子Vinに接触させるようにスイツチSSを操作すると、ニの段階の演算結果であるレジスタXの内容’C’を照合用レジスタVMに移すのと連動して、レジスタXとレジスタYの内容を0に初期化していることが見て取れる。

上記(ア)において、「数値表示装置」の具体的な構成は示されていないが、表示画面とその表示を制御する表示制御手段とから構成されていることは計算機の分野における技術常識である。
上記(オ)の如く、引用文献には、加算機FAにより乗算を行う例しか記載されていないが、電子卓上計算機(いわゆる電卓)が加減乗除の機能を有していることは技術常識であるから、引用文献1に記載の電子卓上計算機が加減乗除の機能を有していることは、明記されていなくとも自明である。
上記(キ)及び(コ)からして、特定スイツチSSの接片SWを照合準備端子Vinに接触させる操作は、表示用レジスタを兼ねているレジスタ”X”を照合用メモリVMに記憶するものであるから、実質的に当該操作は、表示された数値を記憶させるものである。
また、上記(サ)からして、レジスタXの内容を0にすることは、表示状態を初期化して初期表示とすることに等しく、かつ、引用文献1に記載の電子卓上計算機は、そのための初期表示手段を有していることは自明である。
よって、上記(ア)乃至(サ)及び技術常識からして、引用文献(特に、第4図に対応した実施例)には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

数値キーTK及びフアンクションキーFKを備えたキーボードKBと、前記キーボードKBに対するキー押し操作に応答して加減乗除を処理するプログラム装置PGと、前記キーボードKBによる入力及び前記計算の処理結果を数値等として表示可能な表示画面と、前記キーボードKBの操作及び前記計算処理に応答して前記表示画面上に数値等を表示する表示制御手段を少なくとも有する電子卓上計算機であって、
前記表示画面に表示された数値を記憶させるべく接片を照合準備端子Vinに接触させるための操作を行うための特定スイツチSSと、
前記表示画面に表示された数値を記憶可能な照合用メモリVMを含み、前記特定スイツチSSの操作に応答して、Pなる一語長信号を発生し、当該信号Pにより、前記表示画面に表示された数値をゲートG7を介して該照合用メモリVMに記憶させるプログラム装置PGと、
前記表示画面に表示された数値と前記照合用メモリ内に記憶されている数値とが一致するか否かを判断するべくキー押し操作を行うための”MR”キー及び”=”キーと、
前記”MR”キー及び”=”キーのキー押し操作に応答して、前記表示画面に表示された数値と前記照合用メモリ内に記憶されている数値とが一致するか否かを判断する不一致検出回路GAの出力をフリツプフロツプF1に出力するゲートG8と、
前記比較の結果を認知させる警報ランプLと、
前記特定スイツチSSの操作に連動して、前記表示画面の表示状態を初期化して初期表示とする初期表示手段とを有することを特徴とする
電子卓上計算機。

3.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「数値キーTK及びフアンクションキーFKを備えたキーボードKB」、「電子卓上計算機」、「照合用メモリVM」、「”MR”キー」、「”=”キー」及び「警報ランプL」は、それぞれ本願発明の「数値及び計算実行命令等の入力のための入力操作キー」、「電子計算器」、「記憶部」、「積算合計キー」、「等号キー」及び「標識」に対応している。
引用発明の「プログラム装置PG」は、少なくとも加減乗除の計算を処理する計算手段である点で、本願発明の「計算処理手段」と共通している。
引用発明の「特定スイツチSS」は、照合用メモリVM(記憶部)に表示された数値を記憶するために操作される操作手段である点で、本願発明の「記憶キー」と共通している。
引用発明では、プログラム装置PGとゲートG7とは、前記操作手段の操作に応答して、表示画面に表示された数値を照合用メモリVMに記憶させる機能を実現しているから、この点において、本願発明の「記憶手段」と共通している。
引用発明の「不一致検出回路GA」は、表示画面に表示された数値と記憶部内に記憶されている数値とが一致するか否かを判断する機能を有している点で、本願発明の「比較手段」と共通している。

よって、両者は、

「数値及び計算実行命令等の入力ための入力操作キーと、前記入力操作キーに対するキー押し操作に応答して少なくとも加減乗除の計算を処理する計算手段と、前記入力操作キーによる入力及び前記計算の処理結果を数値等として表示可能な表示画面と、前記入力操作キーの操作及び前記計算処理に応答して前記表示画面上に数値等を表示する表示制御手段とを少なくとも有する電子計算器であって、
前記表示画面に表示された数値を記憶させるべく操作を行うための操作手段と、
前記表示画面に表示された数値を記憶可能な記憶部を含み、前記操作手段の操作に応答して、前記表示画面に表示された数値を該記憶部に記憶させる記憶手段と、
前記表示画面に表示された数値と前記記憶部内に記憶されている数値とが一致するか否かを判断するべくキー押し操作を行うための積算合計キー及び等号キーと、
前記表示画面に表示された数値と前記記憶部内に記憶されている数値とが一致するか否かを判断する比較手段と、
前記比較の結果を認知させる標識と、
前記操作手段の操作に連動して、前記表示画面の表示状態を初期化して初期表示とする初期表示手段とを有することを特徴とする
電子計算器。

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「操作手段」が、本願発明は、キー押し操作により操作される「記憶キー」であるのに対し、引用発明は、接片SWを照合準備端子Vinに接触させる操作により操作される「特定スイツチSS」である点。

[相違点2]
本願発明は、積算合計キー及び等号キーのキー押し操作に応答して比較手段が比較判断を行うのに対し、引用発明は、積算合計キー及び等号キーのキー押し操作に応答して比較手段による比較結果が出力される点。

[相違点3]
本願発明は、加減乗除の他に「平方根等」の計算をも処理するのに対し、引用発明は、該「平方根等」について記載がない点。

4.当審の判断
上記相違点について、以下検討する。

[相違点1について]
引用文献の第1図に記載されているように、特定スイツチSSはキーボード上に存在するから、特定スイツチSSの接片SWを照合準備端子Vinに接触させる操作に対応する機能を、他のフアンクシヨンキーと同様に一つのキー、すなわち記憶キーとして構成し、当該記憶キーの押し操作により記憶部への記憶と表示状態の初期化を制御するようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2について]
上記2.(ク)で挙げたように、引用文献には、「例えば演算、非演算状態をNOFというアドレスフリツプフロツプで記憶しているとすれば第3図タイムチャートの如くNOFがリセット状態(非演算状態)なつた時だけゲートGBが出力してフリツプフロツプF2の出力によつて上述した照合動作をするようにプログラム装置PG構成する。」(第2頁右欄第7-13行)と記載されているように、特定の状態になったことに応じて比較判断をするように制御することが開示されているから、引用発明(引用文献1の第4図の構成)においても、積算合計キー及び等号キーのキー押し操作による信号により比較手段が比較判断を行うように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3について]
加減乗除のみならず平方根等を計算する機能を有した多機能の電子計算器は、本願の優先日においては周知であったから、引用発明において、平方根等を計算する機能を付加することに格別な困難性はない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲内のものである。

なお、請求人は、請求の理由において、引用文献(周知慣用技術2)に記載のものは、答えの表示の後、さらに特定SSVoutキーにより合否判定表示をするものと認定しているが、上記2.(コ)で挙げたように、引用文献に記載の電子卓上計算機においては、特定スイツチSSの接片SWを呼び出し端子Voutに接触させる操作(請求人がいうところの「特定SSVoutキー」)は、表示レジスタの内容を表示確認するためのものであって、合否判定表示を行うためのものではないから、請求人の前記認定は誤りである。
また、請求人は、本願発明は、記憶キー以外にACキーを有していない点で周知慣用技術2と異なる旨主張しているが、本願の請求項2の記載においては、「入力操作キー」として有しているキーがすべて特定されているわけではないから、本願発明は、「記憶キー」以外にACキーを有していないとは限定していないから、請求人の当該主張は、請求項2の記載に基づいたものではない。また、請求項2の記載においては、「記憶キー」による「初期化」は、「表示画面の表示状態を初期化」にとどまるため、引用発明における特定スイツチSSによるレジスタXの初期化と差異はない。
更に言うならば、引用文献では、上記2.(サ)で挙げたように、特定スイッチSSの操作により、表示用レジスタを兼ねたレジスタXのみならず被演算子を格納するレジスタYをも初期化しており、クリアキー(CLキー)を用いなくても、特定スイツチSSを操作することにより次の演算を初期状態から開始すること可能であるので、特定スイツチSSは実質的にACキーを兼ねたものであり、クリアキーは計算に必須の構成とはいえない。つまり、仮に、請求項2における「記憶キー」がACキーを兼ねたものであったと仮定しても、それだけでは引用文献に記載されたものと差異はない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-18 
結審通知日 2006-01-24 
審決日 2006-02-07 
出願番号 特願平7-154026
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲はま▼中 信行  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 林 毅
彦田 克文
発明の名称 電子計算器  
代理人 小島 高城郎  

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