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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1133841
審判番号 不服2001-18400  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-11 
確定日 2006-03-30 
事件の表示 平成10年特許願第107114号「化粧シート」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月26日出願公開、特開平11-291412〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年4月3日を出願日とする出願であって、平成13年5月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月16日に意見書が提出されたが、同年9月3日付けで拒絶査定がなされた。
その後、同年10月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月6日に本願明細書を補正する手続補正書(平成14年2月4日付けで方式補正)が提出されたものである。

2.平成13年11月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成13年11月6日付けの手続補正(以下、本件補正という)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、本願明細書の特許請求の範囲についての以下の補正を含むものである。
特許請求の範囲「【請求項1】 アクリル樹脂からなる基材シートに、バインダーの樹脂がアクリル樹脂とウレタン樹脂との混合樹脂系からなるインキによる印刷層が形成されて成る、化粧シート。」を
「【請求項1】 アクリル樹脂からなる基材シートに、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と熱可塑性ウレタン樹脂との混合樹脂系であって、その重量比が、5:5〜9:1であるインキによる印刷層が形成されて成る、化粧シート。」と補正する。

(2)補正内容の検討
補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1の発明において、ウレタン樹脂を熱可塑性ウレタン樹脂と限定すると同時に、アクリル樹脂と熱可塑性ウレタン樹脂との混合樹脂系における各樹脂の重量比を限定するものである。
したがって、本件補正は、補正前の請求項1に記載した、発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、補正前と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
次に、本件補正によって補正された請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(3)補正後発明
補正後の請求項1に係る発明は、上記「(1)補正の内容」に記載した、平成13年11月6日付手続補正書(平成14年2月4日に方式補正)で補正された明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。

(4)本願の出願前に頒布された刊行物の記載
a.特開平8-48014号公報(拒絶理由で引用した刊行物1):
(a-1)「【請求項1】 カレンダー法により製膜された着色熱可塑性樹脂シートの表面に印刷模様層及び透明熱可塑性樹脂シートが順次積層され、この透明熱可塑性樹脂シートの表面に凹陥模様が施されていることを特徴とする化粧シート。
【請求項3】 前記着色熱可塑性樹脂シートがアクリルシートであることを特徴とする請求項1記載の化粧シート。」(特許請求の範囲)、

(a-2)「上記の着色熱可塑性樹脂シート及び透明熱可塑性樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系合成紙、ポリエステル合成紙が使用される。或いは、カレンダー法により製膜されたアクリルシートを使用してもよい。」(2頁右欄33行〜37行)、

(a-3)「上記印刷模様層は、…グラビア印刷、フレキソ印刷、シルク印刷等の方法で印刷する。印刷に使用するインキとしては公知のもの、例えば、ビヒクルに…等の公知の添加剤を任意に添加して、溶剤、希釈剤等で充分混練してなるインキ組成物等を使用することができる。また、このインキ組成物においてビヒクルとしては、公知のもの、例えば、…等の天然樹脂及び加工樹脂類、ロジン変成フェノール樹脂、100%フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキッド樹脂、石油系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキッド樹脂等の合成樹脂類、…等の固体バインダーと溶剤とよりなるビヒクルを使用することができる。」(3頁左欄2〜22行)。

b.特開昭63-57680号公報(拒絶理由で引用した刊行物2):
(b-1)「1 高分子ポリオール、ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤を反応させてえられるポリウレタン樹脂(A)と、第4級アンモニウム塩基、ピリジウム塩基、スルホン酸基およびスルホン酸塩基からなる群よりえらばれた少なくとも1種の官能基を分子内に含有するアクリル系樹脂(B)とを混合してなる印刷インキ用バインダー。
2 前記ポリウレタン樹脂(A)と前記アクリル系樹脂(B)とが重量比((A)/(B))で1/1〜20/1である特許請求の範囲第1項記載の印刷インキ用バインダー。」(1頁左下欄、特許請求の範囲)

(b-2)「本発明は、印刷インキ用バインダーに関する。さらに詳しくは、被印刷物としてプラスチック、とくにポリプロピレン、ポリエステルおよびナイロンフィルムのいずれのフィルムに対しても優れた密着性および印刷適性を呈する印刷インキ用バインダーに関する。」(1頁右下欄、[産業上の利用分野])、

(b-3)「いずれのプラスチックフィルムに対しても優れた密着性および印刷適正を有する汎用性に富む印刷インキ用バインダーが切望されている。
そこで、ポリウレタン樹脂とアクリル系樹脂の利害得失を考慮するに、ポリウレタン樹脂とアクリル系樹脂を混合することにより密着性および印刷適正の両性能が高められたものが期待されている。
しかしながら、単にアクリル系樹脂をポリウレタン樹脂に添加混合するだけでは相溶性に乏しく、えられるインキの安定性が低下する結果、インキが分離したりするばかりではなくプラスチックフィルムへの密着性が低下する傾向があり好ましくない。」(2頁右上欄9行〜同頁左下欄3行)、

(b-4)「本発明者らは、上記のような従来技術では解決しえなかった問題点、すなわち、被印刷物としてのポリプロピレン、ポリエステルおよびナイロンフィルムのいずれのフィルムに対しても優れた密着性および印刷適正を有する印刷インキ用バインダーを開発するべく鋭意研究を行った結果、ポリウレタン樹脂に対し、分子内に特殊な官能基を含有するアクリル系樹脂を特定割合で配合してえられる樹脂混合物をバインダーとして用いたばあいには前記問題点をことごとく解決しうるという全く新しい事実を見出した。」(2頁左下欄5〜16行)、

(b-5)「前記ポリウレタン樹脂(A)の構成成分である高分子ポリオール成分としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体またはこれらの共重合体などのポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、1,2-プロバンジオール、1,3-プロバンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブテンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの飽和または不飽和の低分子グリコール類ならびに・・・などの二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物を脱水縮合せしめてえられるポリエステルポリオール類;・・・が例示される。」(3頁左上欄4行〜同頁右上欄9行)、

(b-6)「前記ポリウレタン樹脂(A)の構成成分であるジイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族および脂環族のジイソシアネート類があげられる。たとえば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどがその代表例としてあげることができる。」(3頁左下欄18行〜同頁右下欄19行)

(b-7)「本発明に用いられるもうひとつのバインダー成分であるアクリル系樹脂(B)は、・・・・。該アクリル系樹脂(B)の主成分としては一般に印刷適性面に優れた効果を示すアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを使用することができる。・・・。なお、該アクリル系樹脂(B)成分の全単量体100部(重量部、以下同様)中にスチレン単量体を0〜50部の範囲で添加し、共重合させてもよい。」(4頁右下欄2行〜5頁左上欄15行)、

(b-8)「ポリウレタン樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)とを重量比(A)/(B)で1/1〜20/1となるように混合するのが好ましく、そのまままたはさらに希釈して印刷インキ用バインダーとする。該重量比が1/1未満のばあいには密着性が低下し、また20/1をこえると印刷適性面に効果が認められなくなるため好ましくない。」(5頁右下欄20行〜6頁左上欄7行)、

(b-9)「このようにして調製された印刷インキは各種プラスチックフィルムに対してすぐれた接着性を有し、かつ印刷時の再溶解性にすぐれ、いわゆる「版詰まり」、「版かぶり」などのトラブルを生じず鮮明な印刷仕上がりがえられる。さらに耐ブロッキング性、顔料分散性などにすぐれた性能を示すものである。」(6頁左上欄13〜19行)、

(b-10)「製造例3
メチルエチルケトン75部とイソプロピルアルコール25部、メチルメタクリレート97部、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド3部、アゾビスイソブチロニトリル1部からなる混合液を重合容器に入れ攪拌しながら加熱し、70℃で5時間反応させた。かくしてえられた該アクリル系樹脂溶液は、樹脂固形分濃度が50%、粘度が4200cP(25℃)、Tgが99℃であった。
製造例4
メチルエチルケトン75部とイソプロピルアルコール16部、メチルアクリレート99部、2-アクリロイルアミノ-2-メチル-1-プロパンスルホン酸の10%水溶液10部、アゾビスイソブチロニトリル1部からなる混合液を重合容器に入れ攪拌しながら加熱し、70℃で5時間反応させた。かくしてえられたアクリル系樹脂溶液は、樹脂固形分濃度が50%、粘度が1100cP(25℃)、Tgが8℃であった。」(6頁左下欄2行〜同頁右下欄1行)、

(b-11)「本発明の印刷インキ用バインダーは各種プラスチックフィルムに対して優れた密着性および印刷適性に富むので、汎用性に優れた印刷インキ用バインダーとして種々の用途に適用することができる。」(8頁右上欄6〜10行)。

(5)補正後発明と刊行物に記載の発明との比較・検討
(5-1)刊行物1記載の発明との比較
刊行物1には、カレンダー法により製膜されたアクリルシートの表面に印刷模様層を形成した化粧シートの発明(以下、刊行物1発明という。)が記載され((a-1)、(a-2)参照)、前記印刷には公知のインキを使用すること、および、当該インキ用ビヒクルにはアクリル系樹脂などのバインダーと溶剤よりなる公知のものを使用することが記載されている((a-3)参照)。
そして、前記「印刷模様層」は、インキによる印刷層であり、アクリルシート」は、アクリル樹脂をシート状にしたものである。
してみると、補正後発明と刊行物1発明とは、次の(ア)の点で共通し、(イ)の点で相違する。
(ア)アクリル樹脂からなる基材シートに、インキによる印刷層が形成されて成る、化粧シートである点、
(イ)前記インキについて、補正後発明は「バインダーの樹脂がアクリル樹脂と熱可塑性ウレタン樹脂との混合樹脂系であって、その重量比が、5:5〜9:1である」としているのに対し、刊行物1発明は、その点の明示がない点。

(5-2)相違点の検討
刊行物1発明は、前記したように、印刷インキについては、公知のものを使用するとし、インキ用ビヒクルのバインダーについては、アクリル系樹脂などの公知のものを使用するとしているところ、公知の刊行物である刊行物2には、次の(1)〜(5)の内容が記載されている。
(1)プラスチックフィルムの印刷インキ用バインダーには、密着性、印刷適性、耐ブロッキング性などの特性に優れることが望まれること((b-2)、(b-3)参照)、
(2)アクリル系樹脂とポリウレタン樹脂とを混合したバインダーが、前記特性を満足するものであること((b-1)、(b-3)、(b-4)、(b-9)、(b-11)参照)、
(3)前記アクリル系樹脂は、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを主成分として重合したものであり、アクリル樹脂が製造例として具体的に示されている態様であること((b-7)、(b-10)参照)、
(4)前記ポリウレタン樹脂は、ジオールおよびジイソシアネートを原料とするものであること((b-5)、(b-6)参照)、
(5)前記バインダーにおけるアクリル系樹脂とポリウレタン樹脂の混合割合は、重量比で1/1の場合をも含むものであること((b-8)参照)。
したがって、刊行物2には、公知の印刷インキが記載され、バインダーとしてアクリル系樹脂を含む公知のバインダーが記載されているうえに、プラスチックを印刷基材とする点で刊行物1発明と共通し、印刷において望まれる密着性、印刷適性、耐ブロッキング性等の特性を満足させうるという優れた特性をも有するとされる印刷インキが記載されている。
また、刊行物2に記載のアクリル系樹脂は刊行物1発明で印刷基材とするアクリルシートと同種のものであり、他の樹脂をバインダーとする場合に比して相互になじみやすいと考えられる。
してみると、刊行物1発明において、印刷インキ用バインダーとして、刊行物2に記載されたアクリル樹脂とポリウレタン樹脂との混合物を採用することは当業者にとって容易なことである。
そして、刊行物2に記載されたポリウレタン樹脂は、上記(4)に記載したとおり、ジオールおよびジイソシアネートを原料とするものであり、このウレタン樹脂は、本願明細書の段落(0012)の記載からみて、補正後発明における「熱可塑性ウレタン樹脂」に相当するものである。
よって、刊行物1発明における印刷インキ用バインダーとして、刊行物2に記載されたアクリル樹脂と熱可塑性ウレタン樹脂の混合物を用い、その際に、混合割合を重量比で1/1とすること、すなわち、相違点(イ)に係る補正後発明の特定事項を採用することは、刊行物1,2の記載に基づいて当業者が容易に想到できることである。
また、バインダー中のアクリル樹脂の混合割合を前記1/1よりもアクリル樹脂が多くなるようにすることも、バインダーの種類は基材シートの種類や、密着性、耐ブロッキング性等の要求の程度に応じて適宜選定されるものであること、化学構造が相互に類似しなじみ易い樹脂は密着性もよいと考えられること及び基材シートがアクリルシートであることを併せ考えれば、当業者が容易に想到できることである。
そして、補正後発明の、印刷層の密着性、耐ブロッキング性に優れるという効果は、刊行物2の記載から、また、耐候性に優れるという効果は、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂を使用するという構成から、当業者が容易に予想できることであるうえに、本願の明細書中には、前記効果の程度を具体的に示す記載がなく、補正後発明が格別の効果を奏するものであるとすることはできない。

(5-3)補正後発明に対する結論
以上のとおりであるから、補正後発明は、本出願前に頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記結論のとおり決定する。

3.本願発明について
上記2.で述べたとおり、平成13年11月6日付けの手続補正(平成14年2月4日付けで方式補正)は却下されたので、本願発明は、出願時の明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】アクリル樹脂からなる基材シートに、バインダーの樹脂がアクリル樹脂とウレタン樹脂との混合樹脂系からなるインキによる印刷層が形成されて成る、化粧シート。
【請求項2】基材シートの印刷層形成面の他方の面に、凹凸模様が形成されて成る、請求項1に記載の化粧シート。」

しかし、請求項1に係る発明は、前記補正却下の対象となった補正後発明を包含するものである。
してみると、請求項1に係る発明は、前記補正後発明に対するのと同様の理由で、本出願前に頒布された前記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-26 
結審通知日 2006-01-31 
審決日 2006-02-13 
出願番号 特願平10-107114
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B32B)
P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 川端 康之
芦原 ゆりか
発明の名称 化粧シート  
代理人 金山 聡  

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