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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1133851
審判番号 不服2003-4538  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-11-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-20 
確定日 2006-03-30 
事件の表示 平成 4年特許願第 88810号「親水性を付与した多孔質シートを用いた吸収性物品」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年11月 2日出願公開、特開平 5-285171〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明の特定
本願は、平成4年4月9日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成15年4月9日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「液透過性の表面材と、液不透過性の裏面材と、それらの間に設けられた吸収体とからなる吸収性物品において、
上記表面材として複数の液透過開孔を有する疎水性の多孔質シートを用い、且つ該多孔質シートの液透過開孔の内壁面及び上記吸収体側のシート面に界面活性剤を付着させることにより親水性処理を施したことを特徴とする多孔質シートを用いた吸収性物品。」

2 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願平2-26936号(実開平3-118722号)マイクロフィルム(以下、「第1引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(a)「シート基材が疎水性フィルム層および該フィルム層の上面に接合されている繊維層からなり、前記シート基材には開口が所定間隔で配列されているとともに、該開口の周縁に連続して該シート基材の下面から下方向へ延出し内周表面に前記繊維層が位置する液導入管が形成されている衛生物品用表面シート構造において、前記液導入管の内周表面が親水性を有し、前記液導入管を除く非開口域における表面が疎水性を有することを特徴とする前記シート構造。」(実用新案登録請求の範囲)
(b)「本考案は、衛生物品用表面シート構造に関し、さらに詳しくは、生理用ナプキン、使い捨てオムツなどの衛生物品の着用時に、着用者の肌が当接する該物品の表面を形成するシート構造に関する。」(第1頁第17行〜第2頁第1行)
(c)「前記構成を有する表面シートは、内部に吸液性コアを有する衛生物品の表面を形成するために使用される。…疎水性フィルム層は吸液性コアに吸収された体液の繊維層への逆流を阻止する機能を発揮する。
液導入管の表面である内周表面に親水性である繊維層が位置しているから、その繊維による毛細管現象が一層促進され、コアへの体液浸透ないし吸引効果が充分に発揮され、非開口域に体液が滞留して着用者のじめじめした不快な湿潤感を与えることが少ない。」(第4頁第5行〜第5頁第1行)
(d)「表面シート1の基材は、疎水性かつ熱可塑性フィルム層2と、熱可塑性繊維を含有する繊維層3とからなり、平面の拡がり方向に所定間隔で開口4が配列されているとともに、開口4の周縁に連続して下方向へ液導入管5が延出している。」(第5頁第8行〜第13行)
(e)「液導入管5における繊維層3の少なくとも表面に親水性を付与し、かつ、液導入管5を除く非開口域7における繊維層3の少なくとも表面に疎水性を付与してある。このようにするには、例えば、繊維層3として疎水性繊維を活性剤で処理したものを使用し、この繊維層3をフィルム層2に接合して液導入管5を形成したのち、非開口域7をシリコンなどの撥水性樹脂で処理すればよい。」(第6頁第8行〜第15行)
また、第1図により、表面シートを構成する熱可塑性フィルム層及び繊維層からなる基材は、複数の液導入管5を有することが認められ、さらに、表面シートは液導入用の開口4を有することから、液透過性であることは明らかである。
そして、上記(b)に記載の「衛生物品」が液不透過性の裏面材を備え、上記(c)に記載の「吸液性コア」が前記表面シートと前記液不透過性の裏面材の間に設けられていることは技術常識である。
以上の記載を総合すると、第1引用例には、
「液透過性の表面材と、液不透過性の裏面材と、それらの間に設けられた吸液性コアとからなる生理用ナプキン、使い捨てオムツなどの衛生物品において、表面シートとして複数の液導入管を有する疎水性の熱可塑性フィルム層及び繊維層からなる基材を用い、該基材の液導入管の内周表面を活性剤で処理して親水性を付与した前記衛生物品。」の発明が記載されているものと認める。
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭63-238861号公報(以下、「第2引用例」という。)には、次の記載がある。
(g)「本発明は、包帯、おむつ、生理用品等の流体吸収物品に関し、これらの物品の、改良されたトップシートを提供するものである。」(公報第2頁上右欄第7行〜第9行)
(h)「本発明は、表面親水性物品を提供するものである、この表面親水性物品は、流体が通過する多数の穴または管を有し、流体側のおもて面とその反対側の裏面とを有する流体透過性の疎水性シートを含んでなるものであり…非常に好ましい態様は、シートの裏面が上記の親水性ゴム質材料で塗被され、これによりこのシートのおもて面が疎水性のまま残り、裏面が親水性とされた物品である。」(公報第3頁上左欄第12行〜同頁上右欄第3行)
(i)「この様なシートを用いた吸収性物品としての製品においては、シートの裏面のみが親水性表面となるようにし、その結果、シートの穴を流体が逆流することによる、いわゆる戻り漏れをおこさずに、流体はシートの疎水性のおもて面を透過して、穴を通り、流体保持吸収芯部に至るようにするのが好ましい。」(公報第4頁上左欄第1行〜第7行)」
上記(g)〜(i)の記載を総合すると、第2引用例には、「流体吸収物品のトップシートにおいて、おもて面を疎水性とし、裏面を親水性として、シートの穴を流体が逆流する、戻り漏れを防止する」技術的事項が記載されているものと認める。

3 対比
本願発明と第1引用例に記載された発明とを対比すると、後者の「表面シート」、「吸液性コア」、「生理用ナプキン、使い捨てオムツなどの衛生物品」及び「液導入管」は、前者の「表面材」、「吸収体」、「吸収性物品」及び「液透過開孔」に相当する。
また、後者の「熱可塑性フィルム層及び繊維層からなる基材」は開口を有することから多孔質シートに他ならない。
さらに、後者の「活性剤」は、疎水性繊維に親水性を付与するものであるから、このような目的で通常使用される界面活性剤を意味するものであると認められるので、後者の「該基材の液導入管の表面を活性剤で処理して親水性を付与した」は、前者の「該多孔質シートの液透過開孔の内壁面に界面活性剤を付着させることにより親水性処理を施した」に相当する。
してみると、両者は、本願発明の表記にならえば、
「液透過性の表面材と、液不透過性の裏面材と、それらの間に設けられた吸収体とからなる吸収性物品において、
上記表面材として複数の液透過開孔を有する疎水性の多孔質シートを用い、且つ該多孔質シートの液透過開孔の内壁面に界面活性剤を付着させることにより親水性処理を施した多孔質シートを用いた吸収性物品。」
である点で一致し、次の点で相違している。
〈相違点〉
本願発明は、「該多孔質シートの液透過開孔の内壁面及び上記吸収体側のシート面に界面活性剤を付着させることにより親水性処理を施した」としているのに対し、第1引用例に記載された発明は、該多孔質シートの液透過開孔の内壁面に界面活性剤を付着させることにより親水性処理を施しているものの、該多孔質シートの吸収体側のシート面に界面活性剤を付着させることにより親水性処理を施していない点。

4 相違点の判断
第2引用例には上述した如く「流体吸収物品のトップシートにおいて、おもて面を疎水性とし、裏面を親水性として、シートの穴を流体が逆流する、戻り漏れを防止する」技術的事項が記載されているものと認める。
第2引用例における親水性を付与する手段は、ゴム質表面親水性材料によるもので、界面活性剤を用いてはいないものの、親水性を付与する手段として界面活性剤を用いることは第1引用例にも記載されているように、特段の例示をするまでもなく周知技術である。
してみると、上記相違点に係る構成は、第2引用例及び前記周知技術に示唆されているものと認める。
そして、第1引用例に記載のものに第2引用例に記載の技術的事項を適用することを妨げる特段の事情も見受けられない以上、前記周知技術を考慮し、第1引用例に記載のものに第2引用例に記載の技術的事項を適用して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものと認める。
そして、本願発明の効果は、第1、2引用例に記載された発明、及び前記周知技術から、当業者であれば予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。

5 むすび
したがって、本願発明は、第1、2引用例に記載された発明、及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、特許請求の範囲の請求項2に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-30 
結審通知日 2006-01-31 
審決日 2006-02-13 
出願番号 特願平4-88810
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子福井 美穂  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
溝渕 良一
発明の名称 親水性を付与した多孔質シートを用いた吸収性物品  
代理人 羽鳥 修  

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