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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1133853
審判番号 不服2003-7002  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-24 
確定日 2006-03-30 
事件の表示 平成 6年特許願第177368号「印刷機の刷版装着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月13日出願公開、特開平 8- 39779〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年7月29日の出願であって、平成15年3月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月24日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年1月16日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「版胴周面の切欠き部にくわえ側クランプとくわえ尻側クランプとを設ける刷版装着装置において、
前記くわえ側クランプは、その下刃に固定され、かつ、該くわえ側クランプの上刃を貫通して突き出る刷版位置決めピンを有することを特徴とする刷版装着装置。」

3.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願平4-77562号(実開平6-34946号)のCD-ROM(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
イ.【請求項1】 万力台と、この万力台との間で版くわえ面を形成するくわえ板と、このくわえ板の反万力台側へ出没自在に前記万力台に支持された基準ピンと、前記くわえ板の反万力台側に支持されこのくわえ板との間で版くわえ面を形成する押え板とを設けたことを特徴とする印刷機の版万力装置。
ロ.【0007】 ところで、このような版万力装置においては、多色刷印刷機の場合、各印刷ユニットにおける版の装着位置が互いに天地方向または左右方向にわずかでもずれていると、高品質の印刷物が得られないので、あらかじめ版の端縁に切欠きを設けておき、この切欠きを、版胴のくわえ側版万力に設けた基準ピンと係合させて位置決めしながら版万力のくわえ面にくわえさせることが行われている。
ハ.【0019】 万力台6のねじ孔に螺入されたボルト7の頭部には、全長が万力台6とほゞ同長で軸線方向に2分割されたくわえ板8が、ボルト7の頭部と円弧面同士の嵌合により揺動自在に支持されており
ニ.【0024】 こうすることにより基準ピン15は、図2に示すように常時は圧縮コイルばね16の弾発力で付勢されてその上端部をくわえ板8のピン孔13からわずかに突出させており、鍔15cをピン孔12の上側段部12aと係合させることにより上昇端限を規制されている。
ホ.【0026】 さらに、くわえ板8の反万力台側の面である上面には、弾性を有する薄い板材でくわえ板8とほゞ同幅同長に形成された押え板17が、弾性により下面をくわえ板8の上面に圧接させて止めねじ18で固定されており、この押え板17には前記基準ピン15の上端部を係入させる孔が設けられている。こうすることにより、押え板17とくわえ板8との間へ紙版19等を挿入すると、紙版19は、その切欠きを基準ピン15と嵌合させながら押え板17とくわえ板8との間でくわえられるように構成されている。
ヘ.【図2】から、版胴1周面の切欠き2にくわえ側版万力5と尻側版万力20とが設けられることが看取できる。

上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「版胴1周面の切欠き2にくわえ側版万力5と尻側版万力20とを設ける印刷機の版万力装置において、
前記くわえ側版万力5は、その万力台6に出没自在に支持され、かつ、該くわえ側版万力5のくわえ板8のピン孔13から突出する基準ピン15を有する印刷機の版万力装置。」

4.対比
そこで、本願発明と刊行物記載の発明とを比較すると、刊行物記載の発明の「版胴1」、「切欠き2」、「くわえ側版万力5」、「尻側版万力20」、「印刷機の版万力装置」、「万力台6」、「くわえ板8」、「ピン孔13から突出する」及び「基準ピン15」は、それぞれ本願発明の「版胴」、「切欠き部」、「くわえ側クランプ」、「くわえ尻側クランプ」、「刷版装着装置」、「下刃」、「上刃」、「貫通して突き出る」及び「刷版位置決めピン」に相当し、刊行物記載の発明の「出没自在に支持され」と本願発明の「固定され」は、いずれも「支持され」ている点で共通しているから、両者は、
「版胴周面の切欠き部にくわえ側クランプとくわえ尻側クランプとを設ける刷版装着装置において、
前記くわえ側クランプは、その下刃に支持され、かつ、該くわえ側クランプの上刃を貫通して突き出る刷版位置決めピンを有する刷版装着装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]刷版位置決めピンの支持について、本願発明は、下刃に固定されるのに対し、刊行物記載の発明は、下刃に出没自在に支持される点。

5.判断
上記相違点について検討する。
刊行物記載の発明は、版をくわえさせるときの作業性の向上や押え板への無理な力の排除を計り、基準ピン15を出没自在に支持するものであり、基準ピン15を出没自在にするためには、基準ピン15と万力台6間には、動きを許容するためのクリアランスが必要であることは明らかである。
しかしながら、刊行物の上記記載ロ.のように、基準ピンは、元来、版の位置決めを目的とするものであり、位置決めを重視すれば、基準ピンと万力台との間のクリアランスをなくし、動かないように、つまり、固定すれば良いことは、当業者が容易に想到し得る程度のことであり、刷版位置決めピンと下刃とを固定することは、本願出願前周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-19458号公報、実願昭61-170179号(実開昭63-75335号)のマイクロフィルム参照。)でもあるから、該周知技術を刊行物記載の発明に適用し、本願発明の上記相違点のような構成とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-26 
結審通知日 2006-01-31 
審決日 2006-02-14 
出願番号 特願平6-177368
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 一畑井 順一  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 長島 和子
藤井 勲
発明の名称 印刷機の刷版装着装置  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 来間 清志  
代理人 来間 清志  
代理人 杉村 興作  
代理人 杉村 興作  
代理人 藤谷 史朗  

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