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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1133854 |
審判番号 | 不服2003-7300 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-12-07 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-04-28 |
確定日 | 2006-03-30 |
事件の表示 | 特願2000-160684「保守監視システムおよび保守監視方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月 7日出願公開、特開2001-339338〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成12年5月30日の出願であって、その請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月6日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項6に記載されたとおりの次のものと認める。 「CDMA移動機の保守監視を行う保守監視方法であって、 前記CDMA移動機とCDMA無線基地局システムとをCDMA無線回線で接続し、 前記CDMA無線基地局システムとネットワークとを有線で接続し、 前記CDMA移動機の保守監視を行う保守監視手段を前記ネットワークに接続し、 前記CDMA移動機から前記保守監視手段へのアクセスを前記CDMA無線基地局システムと前記ネットワークとを介して受け付け、 前記CDMA移動機から前記CDMA無線基地局システムへの第1接続要求に基づいて、前記CDMA移動機と前記CDMA無線基地局システムとの間で第1認証チェックを行うことを特徴とする保守監視方法。」 2. 引用例 これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開2000-91982号公報(平成12年3月31日特許庁発行、以下「引用例1」という。)、及び特開2000-23230号公報(平成12年1月21日特許庁発行、以下「引用例2」という。)には、それぞれ、次の事項が記載されている。[引用例1] A.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、CDMA移動無線通信システムにおいて、特にシステム運用中にパワーコントロール機能が故障した移動機を検出、強制通信停止することによるCDMA移動無線通信システムにおける無線品質劣化防止方法及びCDMA移動無線通信システムに属する。」 B.「【0005】本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無線送信出力最適制御機能が故障した移動機がシステム内に存在するかを常に監視し、存在した場合には故障移動機の送信出力を基地局が強制停止させ、システム内の無線品質の劣化を防止するCDMA移動無線通信システムの無線品質劣化防止方法及びCDMA移動無線通信システムを提供する点にある。」 C.「【0010】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態に係るCDMA移動無線通信システムは、基地局制御装置13と基地局12a〜12nと基地局保守制御装置14a〜14kと移動機11a〜11mと基地局位置情報データサーバ16と障害記録データサーバ17と加入者固有識別情報データサーバ18と統合保守監視装置19とで概略構成される。 【0011】移動機11a〜11mは基地局12a〜12nと無線回線で接続されており、CDMA無線方式による信号の送受信が行われる。各基地局12a〜12nは基地局制御装置13に接続されている。また、このシステム内には複数の基地局制御装置13を有し、各々の基地局制御装置13には、基地局保守制御装置14a〜14kが接続されており各基地局に対する保守制御を行う。 【0012】基地局保守制御装置14a〜14kは、LocalAreaNetwork15(以下LANと称す)によって代表されるネットワークに接続され、このLAN15上には、基地局位置情報データサーバ16と障害記録データサーバ17と加入者固有識別情報データサーバ18と統合保守監視装置19とが接続されており、各情報の記録手段と記録された前記情報の検索手段となる。統合保守監視装置19には、保守者用操作卓20が接続されており、必要な保守監視制御を行ったり、本システム内の各種保守情報を得ることが可能である。 【0013】基地局位置情報データサーバ16は、CDMA移動無線通信システム内にて稼働している全基地局の位置をデータベース化し所有しており、LAN15上の別装置から個別に要求された指定基地局の位置情報を提供することができる。 【0014】障害記録データサーバ17は、基地局障害情報や移動機障害情報を記録するためのデータサーバであり、本発明においては故障した移動機の加入者情報や位置情報などを記録する装置である。加入者固有識別情報データサーバ18は、各加入者の個人情報が移動機固有識別情報とリンクされたデータベースであり、別装置から個別に要求された指定固有識別情報から個人情報(住所、氏名、連絡先、電話番号等)を提供することができる。 【0015】統合保守監視装置19は、LAN15に接続されているすべての装置を適切に制御し、本発明の目的である「無線送信出力最適制御(パワーコントロール)機能が故障した移動機がシステム内に存在するかを常に監視し、存在した場合に-は故障移動機の送信出力を停止させ、システム内の無線品質の劣化を防止する」ことを実現するための中央指令制御装置である。 【0016】保守者20は、保守者用操作卓20を必要により操作し、障害記録データサーバ17に記録された障害情報を検索することができる。」 上記A,Bの記載によれば、引用例1には、CDMA移動無線通信システムにおいて、特定の機能が故障した移動機がシステム内に存在するかを否かを監視し、存在した場合には、システム内の無線品質の劣化という不具合が生じないように対処する方法、すなわちCDMA移動無線通信システムにおいて移動機の保守監視を行う保守監視方法が記載されているものと認められる。 さらに、上記Cの記載によれば、基地局と基地局制御装置との間、前記基地局制御装置と基地局保守制御装置との間、及び前記基地局保守制御装置とLANとの間は、単に「接続され」と記載されているので、これら間の接続は通常、有線で接続されていることは当業者にとって自明と認められる。 よって、上記A〜Cの記載事項、及び図1を参照すると、引用例1には、全体として、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「CDMA移動無線通信システムにおいて、移動機の保守監視を行う保守監視方法であって、 前記移動機と、基地局制御装置に接続された基地局とを無線回線で接続し、前記基地局制御装置とLANとを、基地局保守制御装置を介して有線で接続し、前記移動機の保守監視を行うための、基地局位置情報データサーバと障害記録データサーバと加入者固有識別情報データサーバと統合保守監視装置とを前記ネットワークに接続するようにしたことを特徴とする保守監視方法。」 [引用例2] D.「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、携帯電話機等の無線通信端末装置の遠隔保守を行う遠隔保守システム及び遠隔保守方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】図6は例えば特開平8-237187号公報に開示された従来の遠隔保守システムを示す構成図であり、図において、10は携帯電話器等の無線通信端末装置、50は無線通信端末装置10と無線通信を行う基地局、40は基地局50を介して無線通信端末装置10の保守に必要なデータを無線通信端末装置10との間で遣り取りする情報蓄積装置である。 【0003】次に動作について説明する。通常の交信においては、無線通信端末装置10は基地局50を介して他の無線通信端末装置と交信を行う。無線通信端末装置10に障害が発生した場合など、無線通信端末装置10の保守が必要とされる場合には、無線通信端末装置10は基地局50を介して無線通信で保守に必要なデータを情報蓄積装置40と遣り取りして保守を行う。」 E.「【0005】また、無線通信端末装置10と情報蓄積装置40の接続には接続の相手を確認する手段が存在しないため、第三者が情報蓄積装置40から容易に保守情報を読み出すことができ、保守情報の秘匿性が十分でないという課題もあった。」 F.「【0008】また、この発明は、無線通信端末装置10と情報蓄積装置40との間で認証動作を行い、第3者に保守データが漏洩するのを防止することができる遠隔保守システム及び遠隔保守方法を得ることを目的とする。」 G.「【0011】この発明に係る遠隔保守システムは、無線通信端末装置が、遠隔保守装置を介して情報蓄積装置から保守情報を取得するものである。」 H.「【0014】この発明に係る遠隔保守方法は、遠隔保守装置と情報蓄積装置との間の保守情報の交信を有線ネットワークを介して行い、情報蓄積部及び遠隔保守装置との間で、相互間の通信を許可するための認証を行い、相互間の認証が確認された場合に情報蓄積部と遠隔保守装置との間で有線ネットワークを介して無線通信端末装置を保守するための保守情報を送受信するものである。」 I.「【0019】次に動作について説明する。図5は、図1に示した遠隔保守システムの動作を示すフローチャートである。無線通信端末装置10の遠隔保守を行う場合、無線通信端末装置10は遠隔保守装置20に接続される。続いて、無線通信端末装置10の表示処理部14を操作することによって、無線通信端末装置10は内部の保守管理部17、遠隔保守インタフェース18を用いて、遠隔保守装置20に対してコマンドデータおよび保守データを送信する。 【0020】無線通信端末装置10から送出されたデータは遠隔保守装置20内の遠隔保守インタフェース21および保守管理部22を介して遠隔保守装置内20に受信される。遠隔保守装置20では有線通信インタフェース25を用い、有線ネットワーク30を介して情報蓄積装置40に発呼する。 【0021】情報蓄積装置40では常時着呼の有無を検出しており(ステップST61)、有線ネットワーク30及び有線通信インタフェース41を介して、遠隔保守装置20からの着呼を検出すると、情報蓄積装置40内の認証制御管理部42と遠隔保守装置20内の認証制御管理部24との間で認証データのやり取りを行い、着呼を発信した遠隔保守装置20が通信可能な遠隔保守装置であるか否かの確認を行う(ステップST62)。」 上記D及び図6の記載によれば、引用例2には、無線通信端末装置が、無線基地局に接続にされた保守に関わる装置であるところの情報蓄積装置に、無線基地局を介して接続し、保守に必要なデータを遣り取りすること、つまり、無線通信端末装置が、無線基地局を介して保守に関わる装置にアクセスするという遠隔保守方法が開示されている。 また、上記G、H及び図1の記載によれば、引用例2には、無線通信端末装置が、遠隔保守装置と有線ネットワークとを介して、保守に関わる装置であるところの情報蓄積装置から保守情報を取得すること、つまり無線通信端末装置が、遠隔保守装置と有線ネットワークとを介して、保守に関わる装置にアクセスするという遠隔保守方法が開示されている。 さらに、上記E、F、H及びIの記載によれば、引用例2には、 携帯電話機等の無線通信端末装置の遠隔保守方法であって、互いに接続し保守情報を遣り取りする二つに装置間において、保守情報の秘匿性を十分にして第3者に保守データが漏洩するのを防止するために、前記二つの装置間で相互間の通信を許可するための認証を、一方の装置から他方の装置に対する発呼、すなわち接続要求に基づいて行うという遠隔保守方法が開示されている。 3. 対比 本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、 両者は、共に、CDMA移動無線通信システムにおける移動機の保守監視を行う保守監視方法であって、 引用例1記載の発明における「移動機」、「基地局とこの基地局に接続された基地局制御装置と基地局保守制御装置」、「LAN」、及び「基地局位置情報データサーバと障害記録データサーバと加入者固有識別情報データサーバと統合保守監視装置」は、それぞれ、本願発明における「CDMA移動機」、「CDMA無線基地局システム」、「ネットワーク」、及び「保守監視手段」に相当する。 したがって、本願発明と引用例1記載の発明とは、 <一致点> 「CDMA移動機の保守監視を行う保守監視方法であって、 前記CDMA移動機とCDMA無線基地局システムとをCDMA無線回線で接続し、 前記CDMA無線基地局システムとネットワークとを有線で接続し、 前記CDMA移動機の保守監視を行う保守監視手段を前記ネットワークに接続することを特徴とする保守監視方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 本願発明においては、CDMA移動機から保守監視手段へのアクセスをCDMA無線基地局システムとネットワークとを介して受け付け、前記CDMA移動機から前記CDMA無線基地局システムへの第1接続要求に基づいて、前記CDMA移動機と前記CDMA無線基地局システムとの間で第1認証チェックを行うのに対して、引用例1記載の発明では、このような構成を備えていない点。 4. 当審の判断 上記相違点について検討する。 移動通信システムにおいて、移動機から保守監視手段へのアクセスを基地局及び基地局に付随するネットワークとを介して受け付けることは、上記引用例2、特開平8-237187号公報(特に、段落【0051】〜【0053】及び図5の記載を参照。)、及び特開平10-145841号公報(特に、第1頁左下欄【要約】、及び図1の記載を参照。)に開示されているごとく周知であり、また、移動無線端末と無線基地局との間など、互いに接続し情報を遣り取りする二つに装置間において、遣り取りする情報の秘匿性を十分にして第3者に遣り取りする情報が漏洩するのを防止するために、前記二つの装置間で相互間の通信を許可するための認証を、一方の装置から他方の装置に対する接続要求に基づいて行うことは、上記引用例2、特開平5-336108号公報(特に、図5の記載を参照。)、特開2000-32560号公報(特に、図2,4の記載を参照。)、及び齋藤忠夫、立川敬二編「移動通信ハンドブック」p.147-152、平成7年11月15日、オーム社(特に、図10・5 相手(端末)認証の手順、を参照。)に開示されているごとく周知あるので、 引用例1記載のCDMA移動無線通信システムにおける保守監視方法において、本願発明のごとく、CDMA移動機から保守監視手段へのアクセスをCDMA無線基地局システムとネットワークとを介して受け付け、前記CDMA移動機から前記CDMA無線基地局システムへの第1接続要求に基づいて、前記CDMA移動機と前記CDMA無線基地局システムとの間で第1認証チェックを行うように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1、2に記載の発明及び上記周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1、2に記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件出願は、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-01-26 |
結審通知日 | 2006-01-31 |
審決日 | 2006-02-13 |
出願番号 | 特願2000-160684(P2000-160684) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大日方 和幸、山本 春樹 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
長島 孝志 堀江 義隆 |
発明の名称 | 保守監視システムおよび保守監視方法 |
代理人 | 工藤 雅司 |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 机 昌彦 |