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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1133872
審判番号 不服2003-17010  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-03 
確定日 2006-03-30 
事件の表示 平成 6年特許願第181018号「粉体化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月13日出願公開、特開平 8- 40829〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成 6年 8月 2日の出願であって、平成15年 8月 5日付で拒絶査定がされ、これに対し、平成15年 9月 3日拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年10月 3日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年10月 3日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月 3日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成15年10月 3日付の手続補正により、特許請求の範囲第1項は、
「(A)微粒子酸化チタン含有の板状二酸化ケイ素粉体を粉体化粧料全体中1〜60重量%及び(B)球状粉体を粉体化粧料全体中0.3〜50重量%含有し、上記微粒子酸化チタンは、その平均粒径が10〜1000nmであり且つ上記板状二酸化ケイ素粉体中に1〜60重量%含有されており、上記板状二酸化ケイ素粉体は、その粒径が1〜100μmであり、その厚みが0.03〜3μmであり、上記球状粉体は、ポリメタクリル酸メチル、12ナイロン、6ナイロン及びポリメチルシルセスキオキサンからなる群から選ばれた樹脂からなる球状の樹脂粉末又はシリカからなる球状の無機粉体であって、その平均粒径が1〜50μmであり、上記(A)成分と上記(B)成分との重量比(A)/(B)が0.5/1〜30/1である粉体化粧料。」(以下「補正後発明」という。)
と補正された。

(2)補正の適否
この補正は、粉体化粧料に含有される「微粒子酸化チタン含有の板状二酸化ケイ素粉体」の量及び大きさを、それぞれ「1〜60重量%」、「粒径1〜100μm、厚み0.03〜3μm」に限定するとともに、同じく粉体化粧料に含有される「球状粉体」を「ポリメタクリル酸メチル、12ナイロン、6ナイロン及びポリメチルシルセスキオサンからなる群から選ばれた樹脂からなる球状の樹脂粉末又はシリカからなる球状の無機粉体」に特定し、その量を「0.3〜50重量%」に限定するものであって、特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、次に補正後発明が特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に適合するものであるか否かを検討する。

(2-1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前である平成 6年 4月26日に頒布された特開平6-116119号(以下「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。
1a.「実施例-1 市販のシリコンテトラメトキシド、エタノール、および0.1規定硝酸を、体積比でそれぞれ1:2:1の割合で混合し、更に微粒子チタニア(平均粒径35nm)を最終的に得られる酸化物の量の10重量%になるように混合し、…(略)…このフレーク状物質はルチル型チタニアを包含したガラスであることが確認された。なお、このチタニア-シリカ系のフレーク状ガラスの平均厚さは、電子顕微鏡で測定したところ、0.64ミクロンであった。これを粉砕分級して、平均粒径4.5ミクロン(粒径の実測:1.2〜20ミクロン)にした。またこのフレーク状ガラスを化学分析したところ、チタニアを9.5重量%、シリカを90.5重量%含有していた。」(第3頁第4欄第4-28行)
1b.「一方、次の配合でパウダーファンデーションを作製した。 成分-1…(略)…これに、上記方法で作製した本発明のフレークを、成分-1の粉体100部にたいし、3部添加し、アルミナ製ボールミルで2時間混合攪拌を行った。」(第3頁第4欄第29-44行)
1c.「本発明でいう化粧料には、チタニア-シリカ系のフレーク状ガラスのほか、必要に応じ、通常用いられる顔料等を併用して用いてもなんら差し支えない。例えば、…(略)…、シリカビーズ、ナイロン、アクリル等のプラスチックビーズ等の粉体、…(略)…等が例示される。」(第3頁第3欄第17-28行)
1d.「また本発明の化粧料は皮膚に対する刺激が少なく、のびが良く、色あせしにくいことが確認された。」(第4頁第6欄第1-3行)
1e.「本発明のチタニア-シリカ系のフレーク状ガラスを配合した化粧料は、フレーク状ガラスの透明性が高く、水分や油分の吸収がほとんどなくて色がくすまないため、化粧料製造工程において、着色顔料を添加し、混合粉砕後、非常に発色性のよい化粧料となる。」(第3頁第3欄第12-16行)

また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前である1988年に頒布された「色材、第61巻、第8号、第438-446頁」(以下「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。
2a.「球状粉体を配合することで化粧品を肌へののびの滑らかさ、ポイントメーク料をブラシで塗布する際のぼかしやすさ等を大きく改善することが可能である」(第439頁左欄第21-24行)
2b.「表-2 化粧品における粉体利用の目的
目的 効果 使用される粉体の例
(略)
感触 肌上でのなめらかな広がり ナイロン球状粉体、シリカ球状粉体」
(第439頁表-2)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前である1990年に頒布された「ファインケミカル、第19巻、第11号、第13-18頁」(以下「引用例3」という)には、以下の事項が記載されている。
3a.「化粧品において肌上での伸びや使用時の感触等を指す使用性は非常に重要な要素であり、球状有機粉末を導入することにより製品の使用性が大幅に向上されるようになった。」(第14頁左欄下から第5-2行)
3b.「肌上でのなめらかな感触や伸びの軽さを最も良く与えるには5〜20μm程度の平均粒子径を持つものが有効なようである。」(第14頁右欄第1-3行)
3c.「球状ナイロン12が初めて化粧品に導入されて以来、化粧品原料としてかなりの数の合成ポリマー粉末が開発されている。ナイロン12やナイロン6に代表されるポリアミド、ポリメチルメタクリレートやその共重合体に代表されるアクリル系ポリマー、…(略)…などが代表的なものである。」(第15頁右欄下から第8-1行)
3d.「本題からはずれるが、化粧品用粉末に球状有機粉末が多数応用されていると同時に無機粉末を球形化したものもかなり見うけられるようになった。…(略)…。代表的なものに…(略)…、二酸化ケイ素などがあげられる。」(第18頁左欄第11-18行)

(2-2)対比
引用例1の1aおよび1bの記載からは、「粉体100部に対し、微粒子チタニア(35nm)を9.5重量%包含し、シリカを90.5重量%含有する、平均粒径が4.5ミクロンであり厚みが0.64ミクロンであるフレーク状ガラスを3部配合したパウダーファンデーション」が開示されていると認めることができる。
そこで、補正後発明と引用例1に記載されたパウダーファンデーションを対比する。
引用例1に記載されたパウダーファンデーションの「微粒子チタニアを包含し、シリカを含有するフレーク状ガラス」は、補正後発明の「微粒子酸化チタン含有の板状二酸化ケイ素粉体」に相当する。
また、引用例1の1bの記載からすると、フレーク状ガラスは、パウダーファンデーション中に、2.9重量%(3/(100+3)×100)配合されているものと認められる。
してみれば、補正後発明と引用例1に記載されたパウダーファウンデーションとは、
「微粒子酸化チタン含有の板状二酸化ケイ素粉体を粉体化粧料中2.9重量%含有し、上記微粒子酸化チタンは、その平均粒径が35nmであり且つ上記板状二酸化ケイ素粉体中に9.5重量%含有されており、上記板状二酸化ケイ素粉体は、その粒径が4.5μmであり、その厚みが0.64μmである粉体化粧料。」
である点で一致し、
(a)補正後発明がポリメタクリル酸メチル、12ナイロン、6ナイロン及びポリメチルシルセスキオサンからなる群から選ばれた樹脂からなる球状の樹脂粉末又はシリカからなる球状の無機粉体であって、その平均粒径が1〜50μmである球状粉体を含有するものであるのに対し、引用例1には、球状粉体を実際に配合した粉体化粧料について記載のない点、及び
(b)補正後発明が球状粉体を粉体化粧料全体中0.3〜50重量%含有し、微粒子酸化チタン含有の板状二酸化ケイ素粉体と球状粉体との重量比が0.5/1〜30/1であるのに対し、引用例1にはこれらについて記載のない点、
の二点で相違する。

(2-3)判断
相違点(a)について検討する。
まず、引用例1の1cには、微粒子酸化チタン含有の板状二酸化ケイ素粉体とともに、シリカビーズ、ナイロン、アクリル等のプラスチックビーズ等の粉体を併用できる旨教示されており、また、「水分や油分の吸収がほとんどなくて色がくすまない(引用例1の1e)」微粒子酸化チタン含有の板状二酸化ケイ素を配合した「引用例1に記載されたパウダーファンデーション」はのびが良いものである(引用例1の1d)。
そして、球状粉体を化粧料に配合すると肌上での伸びが向上すること(引用例2の2a、2b、引用例3の3a)、肌上での伸びを最も良く与えるには5〜20μm程度の平均粒子径を持つ球状粉体が有効であること(引用例3の3b)、及び球状粉末として、ナイロン12、ナイロン6、ポリメチルメタクリレート、シリカ粉末等が用いられること(引用例2の2b、引用例3の3c、3d)、は、粉体化粧料分野の当業者にはよく知られていたことである。
しかも、化粧品において肌上での伸びや使用時の感触等を指す使用性は非常に重要な要素(引用例3の3a)であり、また、仕上げ化粧品は塗布後、経時的に色が変化しないことが求められるから、これらの性能を考慮して粉体成分の組成・配合割合を検討・変更することは当業者が通常行うことといえる。
してみれば、のびの良さ等を考慮し、引用例1の教示に従って、同引用例に記載されたパウダーファンデーションに、当業者に周知であった5〜20μm程度の平均粒子径を持つナイロン12、ナイロン6、ポリメチルメタクリレート、シリカ粉末等の球状粉末を併用することは当業者が容易に着想し得たことである。
次に相違点(b)について検討する。
すでに述べたように、化粧品の粉体成分の配合割合を検討・変更することも当業者が通常行うことであるから、くすみ抑制、のび等の好適な性能を与える球状粉体の配合割合を検討して0.3〜50重量%に設定すること及び微粒子酸化チタン含有の板状二酸化ケイ素粉体との重量比を0.5/1〜30/1に設定すること、も当業者には特段困難なことではない。
そして、相違点(a)、(b)に基づく補正後発明の効果(くすみ抑制、のび、取れ等)も当業者が予測し得ないほど格別顕著なものでもない。
したがって、補正後発明は、引用例1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易にすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、平成15年10月 3日付の手続補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に適合しないものであるから、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年10月 3日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年4月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載される以下のとおりのものである。
「(A)微粒子酸化チタン含有の板状二酸化ケイ素粉体及び(B)球状粉体を含有し、上記微粒子酸化チタンは、その平均粒径が10〜100nmであり且つ上記板状二酸化ケイ素粉体中に1〜60重量%含有されており、上記球状粉体はその平均粒径が1〜50μmであり、上記(A)成分と上記(B)成分との重量比(A)/(B)が0.5/1〜30/1である粉体化粧料。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は2.(2-1)に記載したとおりである。

(2)対比判断
本願発明は、補正後発明から「微粒子酸化チタン含有の板状二酸化ケイ素粉体」の限定事項である粉体化粧料全体中の量「1〜60重量%」及び大きさ「粒径1〜100μm、厚み0.03〜3μm」を省き、そして「球状粉体」の限定事項である当該粉体の種類「ポリメタクリル酸メチル、12ナイロン、6ナイロン及びポリメチルシルセスキオサンからなる群から選ばれた樹脂からなる球状の樹脂粉末又はシリカからなる球状の無機粉体」及び粉体化粧料全体中の量「0.3〜50重量%」を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する補正後発明が2.(2-3)に記載したとおり、引用例1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易にすることができたものである以上、本願発明も同様の理由により、引用例1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易にすることができたものといえる。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-25 
結審通知日 2006-01-31 
審決日 2006-02-13 
出願番号 特願平6-181018
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 典之胡田 尚則  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 中野 孝一
吉住 和之
発明の名称 粉体化粧料  
代理人 羽鳥 修  

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