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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1133878
審判番号 不服2003-19345  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-02 
確定日 2006-03-30 
事件の表示 平成 7年特許願第283411号「磁気処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月16日出願公開、特開平 9-128909〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年10月31日の出願であって、平成14年11月25日付け及び平成15年7月25日付けで手続補正がなされた。その後、平成15年7月25日付けの手続補正は、平成15年8月25日付けの補正の却下の決定により却下され、本願は、平成15年8月25日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年10月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月29日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年10月29日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年10月29日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「シート状磁気記録媒体を搬送する搬送路に沿って配置した駆動・押圧ローラと、この駆動・押圧ローラに対向して配置し、前記搬送路に対し出し入れ自在に支持した磁気ヘッドと、前記シート状磁気記録媒体の先端が前記磁気ヘッドの位置にさしかかったことを検知するセンサと、制御手段とを備えた磁気処理装置であって、
前記制御手段は、磁気処理の動作モードにおいて、前記駆動・押圧ローラを駆動回転中に前記センサにより前記シート状磁気記録媒体の先端が前記磁気ヘッドの位置にさしかかったことを検知したとき、前記磁気ヘッドを前記搬送路に出すように制御するものであることを特徴とする磁気処理装置。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ローラ」について「駆動・押圧ローラ」との限定を付加し、同じく「動作モードにおいて、前記駆動・押圧ローラを駆動回転中に」との限定を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(2)引用例
(2)-1
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭55-52560号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、磁気ストライプ装置について、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
a.
「印字媒体に設けられた磁気記録媒体に接触させ、該磁気記録媒体と相対的に移動させることにより情報の読み取りまたは記録を行なう磁気ヘッドを有する磁気ストライプ装置において、前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体と接触または離隔させる磁気ヘッドリトラクション機構と、前記印字媒体と前記磁気ヘッドとの相対移動により前記磁気記録媒体の有無を連続的に示す磁気記録媒体検出信号を発生させる手段とを有し、該磁気記録媒体検出信号の特定条件により、前記磁気ヘッドリトラクション機構を作動させ前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体に接触させるとともに前記磁気記録媒体との情報授受を開始または停止せしめることを特徴とする磁気ストライプ装置。」(第1頁左下欄第5行〜同第20行「特許請求の範囲」)
b.
「第2図は、本発明の一実施例のブロック線図である。第2図において、磁気記録媒体19を設けた印字媒体18が矢印方向Bに沿って移動し印字媒体18の端部が光学センサ12の位置まで来ると、この光学式センサ12により検知され、検出回路13において磁気記録媒体有を検出する。ここで検出信号回路13において検出された検出信号はアンド回路11に伝えられ、アンド回路11は本図に示されない条件で主制御部17より既に出力されている許可信号aとの条件を取って磁気ヘッド接触許可信号をオア回路9を通って磁気ヘッド駆動回路8に伝えるので磁気ヘッド駆動回路8は磁気ヘッド7を磁気記録媒体19に接触させる。ここで磁気ヘッド7と光学式センサ12および1との距離l1,l2は本発明の実施設計においてハードウェア条件によって決定されるものであり本発明からは省く。」(第2頁右下欄第8行〜第3頁左上欄第4行)
c.
「ここで印字媒体上に磁気記録媒体がない場合は磁気ヘッド7は、印字媒体と接触せずに読み取り動作を開始しないことは前記説明より明らかである。」(第3頁右上欄第3行〜第3頁右上欄第6行)
d.
「本実施例では磁気記録媒体の検出に光学式センサを用いたが、その他磁気記録媒体そのものを検出できるものであれば使用可能である。また第2図においてアンド回路4,5,10,11,14とオア回路9を全て取り除き主制御部17のプログラム動作によって同様の制御を行なわせることも可能である。」(第3頁右上欄第17行〜同左下欄第3行)
e.
「本発明は以上説明したように磁気記録媒体の有無を示す検出信号によって磁気ヘッドを印字媒体と接触、離隔させるともに情報授受動作の開始,停止を行わせることにより磁気ヘッドの不要な磨耗を防止するとともに正確に情報を授受する効果がある。」(第3頁左下欄第4行〜同第9行)
f.
第2図には、光学式センサ1,12及び磁気ヘッド7が実線と波線で図示されている。

上記aの記載及び上記b、d、fの磁気記録媒体有を検知するセンサ(光学式センサ)の記載を参照すると、引用例1には、
「印字媒体に設けられた磁気記録媒体に接触させ、該磁気記録媒体と相対的に移動させることにより情報の読み取りまたは記録を行なう磁気ヘッドを有する磁気ストライプ装置において、
前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体と接触または離隔させる磁気ヘッドリトラクション機構と、
前記印字媒体と前記磁気ヘッドとの相対移動により磁気記録媒体を光学式センサが検知し前記磁気記録媒体の有無を連続的に示す磁気記録媒体検出信号を発生させる手段を有し、
該磁気記録媒体検出信号の特定条件により、前記磁気ヘッドリトラクション機構を作動させ前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体に接触させる磁気ストライプ装置。」の発明(以下「引用例1の発明」という。)が記載されている。

(2)-2.
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-119669号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、磁気カード・リーダ・ライタ装置について、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
g.
「また、本発明装置においては、送りローラ16の駆動軸14に、複数トラック磁気ヘッド25と略等しい幅広状のゴムローラ30を設けているから、ガイドレール3,3に案内されて走行する磁気カードXは、更に磁気ヘッド25上を走行中に、上記ゴムローラ30の押圧面31,31・・・によつて複数トラックの磁気コード37面上を均等に押圧されて走行するので、カード走行中に磁気カードに位置ずれを生ずることなく、磁気カードの磁気軌道のずれを防止するので、磁気コートの各トラック面に正確な書込み記録をすると共に、カード読出し時には読出しエラーが生ずることなく、正確なデータの読出しを行なう。」(第5頁右上欄第9行〜同左下欄1行)

(2)-3.
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-106067号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面と共に、磁気ヘッドを備えたカード記録再生装置について、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した)。
h.
「 第1図に従来の磁気カードリーダの一例を示す。図において、案内部材1にガイドされてカードリーダ本体内に挿入されたカードは、駆動モータ2により駆動されるプーリ4、プーリ4と丸ベルト6により駆動されるプーリ5、さらにアイドルプーリ7,8,9,10,11,12、および丸ベルト13により、磁気ヘッド14へと搬送される。カード搬送路をはさんで、磁気ヘッド14と反対側には、主搬送ローラ3がある。主搬送ローラ3は、駆動モータ2により、軸15を中心に回転する。軸15はレバー16に取りつけてあり、レバー16は軸17を中心として回動自在である。またレバー16の他端にはバネ18がかけてあり、レバー16を反時計方向へ付勢している。
カード搬送前における、磁気ヘッド14と、主搬送ローラ3の外周面とのクリアランスは、主搬送ローラ3の回動範囲調整ネジ19により、カード厚みよりわずかに小さく設定されている。
カードが磁気ヘッド14まで搬送されると、カードの厚みにより、主搬送ローラ3は軸17を中心として時計方向に回転すると同時に、磁気ヘッド14との間でカードを搬送する。」(第1頁左下欄第20行〜第2頁左上欄第1行)

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1の発明とを比較する。
引用例1の発明と本願補正発明における「磁気ヘッド」は一致し、引用例1の発明の「磁気ヘッドを磁気記録媒体と接触または離隔させる磁気ヘッドリトラクション機構」は、磁気ヘッドを磁気記録媒体に接触または離隔させるように、磁気ヘッドを出し入れ自在に支持する機構であるから、引用例1の発明の「磁気ヘッド」は、本願補正発明における、「出し入れ自在に支持した」構成を備えている。
引用例1の発明の「磁気ストライプ装置」は、磁気情報の読み取りまたは記録を行う装置である点において、本願補正発明の「磁気処理装置」といえる。また、引用例1の発明の「磁気ヘッド」が、情報の読み取りまたは記録を行う動作は、磁気処理にともなうモードであるから、本願補正発明の「磁気処理の動作モード」に相当する。
引用例1の発明の、印字媒体に設けた「磁気記録媒体」は、磁気記録媒体である点において、本願補正発明の「シート状磁気記録媒体」に相当する。
引用例1の発明の、印字媒体に設けた「磁気記録媒体」を検知するセンサ(光学式センサ)(上記b、d、f参照)は、磁気記録媒体を検知する点において、本願補正発明の、シート状磁気記録媒体を検知する「センサ」に相当する。
引用例1の発明の「磁気ストライプ装置」は、当然に制御手段を有していることは明らかであり、引用例1の発明の「磁気記録媒体検出信号の特定条件により、磁気ヘッドリトラクション機構を作動させ磁気ヘッドを磁気記録媒体に接触させる」は、情報の読み取りまたは記録を行うための動作において、センサが磁気記録媒体を検知したとき、制御手段が磁気ヘッドリトラクション機構を作動させて磁気ヘッドを出すように制御しているから、本願補正発明の、「磁気処理の動作モードにおいて」、「センサにより」「磁気記録媒体を」「検知したとき、磁気ヘッドを」「出すように」制御手段が制御することに相当する。

してみると、両者は、
「出し入れ自在に支持した磁気ヘッドと、磁気記録媒体を検知するセンサと、制御手段とを備えた磁気処理装置であって、
前記制御手段は、磁気処理の動作モードにおいて、前記センサにより前記磁気記録媒体を検知したとき、前記磁気ヘッドを出すように制御するものである磁気処理装置。」の点で一致し、

以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明では、「磁気記録媒体を搬送する搬送路に沿って配置した駆動・押圧ローラ」と、「この駆動・押圧ローラに対向して配置し、前記搬送路に対し」出し入れ自在に支持した磁気ヘッドとを備え、磁気処理モードにおいて、「前記駆動・押圧ローラ」を「駆動回転中」とする構成を備えるのに対して、引用例1の発明ではかかる構成を備えていない点。
[相違点2]
磁気記録媒体が、本願補正発明では、「シート状磁気記録媒体」であるのに対して、引用例1の発明では、「印字媒体」に設けられた「磁気記録媒体」である点。
[相違点3]
本願補正発明では、「センサによりシート状磁気記録媒体の先端が前記磁気ヘッドの位置にさしかかったことを検知する」ことにより磁気ヘッドを出すように制御するのに対して、引用例1の発明ではかかる記載がない点。

(4)判断
[相違点1]について検討する。
媒体を搬送する搬送路に沿って配置した駆動・押圧ローラと、この駆動・押圧ローラに対向して配置し、前記搬送路に配置した磁気ヘッドとを備え、磁気処理モードにおいて、前記駆動・押圧ローラを駆動回転中とする構成は、引用例2,3に記載されているが、特公昭52-364号公報(ローラ8a〜8c、磁気ヘッド5,6,7)や、特開平6-333070号公報(搬送ローラ27、磁気ヘッド26)等にも記載されているように周知である。
したがって、引用例1の発明において、磁気記録媒体の設けられた印字媒体と磁気ヘッドを相対的に移動させる際に、上記引用例2,3に記載されているように、磁気記録媒体の設けられた印字媒体が移動する搬送路を構成することにより、該印字媒体を搬送する搬送路に沿って配置した駆動・押圧ローラと、この駆動・押圧ローラに対向して磁気ヘッドを配置し、情報読み取り動作のモードにおいて、前記駆動・押圧ローラを駆動回転中の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認める。

[相違点2」について検討する。
シート状磁気記録媒体は、例えば磁気乗車券、磁気駐車券、定期券等のように周知であり、上記特開平6-333070号公報(乗車券)や、特公昭54-25806号公報(定期乗車券、普通乗車券)に記載されている。
してみれば、引用例1の発明において、印字媒体に設けられた磁気記録媒体を、シート状磁気記録媒体とすることは、当業者が適宜になし得ることである。

[相違点3]について検討する。
引用例1の発明では、「磁気記録媒体がない場合は磁気ヘッド7は、印字媒体と接触せずに読み取り動作を開始しない」(上記c参照)と、磁気記録媒体のみに磁気ヘッドを接触させて、磁気ヘッドの磨耗を防止する(上記e参照)というものである。そうすると、引用例1の発明において、印字媒体に設けられた磁気記録媒体を周知のシート状磁気記録媒体とする際に、シート状磁気記録媒体のみに、磁気ヘッドが接触するように磁気ヘッドを制御することは、当然のことであるから、磁気ヘッドを出して、シート状磁気記録媒体に接触させるタイミングを、シート状磁気記録媒体の先端が磁気ヘッドの位置にさしかかったことを検知することにより、制御することは、当業者が容易に想到し得たものである。

結局、前記相違点は、格別なものではなく、そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1乃至3及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。

したがって、本願補正発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年10月29日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年11月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「シート状磁気記録媒体を搬送する搬送路に沿って配置したローラと、このローラに対向して配置し、前記搬送路に対し出し入れ自在に支持した磁気ヘッドと、前記シート状磁気記録媒体の先端が前記磁気ヘッドの位置にさしかかったことを検知するセンサと、制御手段とを備えた磁気処理装置であって、
前記制御手段は、磁気処理の動作モードにあり、かつ前記センサにより前記シート状磁気記録媒体の先端が前記磁気ヘッドの位置にさしかかったことを検知したとき、前記磁気ヘッドを前記搬送路に出すように制御するものであることを特徴とする磁気処理装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「ローラ」について、発明を特定するために必要な限定事項である「駆動・押圧ローラ」との構成を省き、「動作モードにおいて、前記駆動・押圧ローラを駆動回転中に」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例1乃至3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1乃至3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項を検討するまでもなく、本願は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-27 
結審通知日 2006-01-31 
審決日 2006-02-13 
出願番号 特願平7-283411
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅岡 信幸岩井 健二  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 相馬 多美子
川上 美秀
発明の名称 磁気処理装置  
代理人 野口 忠夫  
代理人 丹羽 宏之  

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