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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1133938 |
審判番号 | 不服2003-20052 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-14 |
確定日 | 2006-03-27 |
事件の表示 | 特願2001-101360「ポイント及び懸賞付与支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月31日出願公開,特開2002-318877〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は,平成13年3月30日(優先権主張平成13年2月13日)の出願であって,本願の発明は,平成15年8月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 商品のID表示部を集めた消費者に対する景品類の付与を支援するシステムであって, 各商品のIDに対して消費者が獲得できる内容を記憶した商品データベースと, 商品のID情報を,消費者側クライアントからネットワークを通じて受信する受信手段と, 前記受信した商品ID情報をもとに前記商品データベースを参照し,当該商品IDに対して消費者が獲得できる内容に関する情報を取得する情報取得手段と, 各商品のID表示部の貼付欄を含む貼付フォーマットと,前記消費者が獲得できる内容に関する情報とを,前記消費者側クライアントに送信する情報送信手段と, 前記消費者側クライアントを識別する識別手段と,を備え, 前記商品IDに対して前記消費者が獲得できる内容に関する情報は,前記商品IDに基いて消費者に付与される懸賞が当選したか否かに関する情報であり, 前記商品データベースは,前記商品IDが実在するか否かに関する情報を更に記憶し, 前記当選判定手段は,前記受信した商品のID情報をもとに前記商品データベースを参照し,前記受信した商品ID情報が実在のものか否かを判定し, 前記情報送信手段は,前記当選判定手段が前記受信した商品ID情報は実在のものでないと判断した場合に,前記識別された消費者側クライアントからの応募を以後受け付けないようにした景品類付与支援システム。」 2 引用例 これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,情報提供システムと題する特開平10-254796号公報(以下,「引用例」という。)には次の事項が記載されている。(摘記箇所は段落番号で表示) (1) 「【0010】第二の目的は,インターネット上のくじにおいて,発券ページのリロードによる同一発券番号での複数回の抽選への参加を認めないくじシステムを提供することを目的とする。」 (2) 「【0038】第13図は,くじの正当性を判定する動作を説明するフローチャートである。第13図は,第9図S17の続きである。パソコン1のブラウザは,第12図左上部の画面が表示し,利用者に対して,発券番号の入力を求めている。 (S21)利用者は,その求めに応じて,ブラウザが表示する発券番号(イメージデータ)と同じ番号「75823」(コードデータ)を入力する。パソコン1のブラウザは,利用者から入力された当該発券番号を,セッションIDと共に,サーバ4に対し送信する。管理ソフト44は,当該発券番号を受信する。 【0039】(S22)管理ソフト44は,当該受信した時刻を,サーバ4のシステム時刻から取得し,セッションIDと共に管理する(第10図)。第10図は,セッションID「680075」の発券番号入力時刻は,「1996年12月28日17時42分17秒」であることを示している。」 (3) 「【0040】(S23)管理ソフト44は,セッションID「680075」から受信した発券番号が,第9図S15で付与した発券番号と同じであるか否かを判定する。具体的には,管理ソフト44は,第13図S21で受信した発券番号が,データベース(第10図)の発券番号と一致するか否かを判定する。 【0041】(S24)一致しない場合,管理ソフト44は,それに対応したhtmlソースを,要求元に対して,送信する。 (S25)一致する場合,管理ソフト44は,第13図S22で取得した入力時刻に基づき,アタリかハズレかを決定する。」 (4) 「【0044】当該データベースは,サーバ4内のハードディスク45内にある。第15図は,管理ソフト44による,アタリか否かを判定する動作を説明するフローチャートを示す。第14図および第15図を用いて,管理ソフト44の動作を説明する。 (S31)管理ソフト44は,当選番号データベース(第14図)のうち,入力日に対応する当選データベースを検索する。管理ソフト44は,該当するデータベースのフラグが「未」である最初のレコードを参照する。この場合,管理ソフト44は,フラグが「未」の最初のレコード,管理番号「0003」を参照する。 【0045】・・・具体的には,管理ソフト44は,以下の動作を行なう。管理ソフト44は,データベース(第10図)からセッションID「680075」の入力時刻「1996年12月28日17時42分17秒」を取り出す。管理ソフト44は,当該入力時刻が,S31で参照するレコードの当選時刻より大きいか否かを判定する。 【0046】・・・同図の例では,ハズレた者に対して所定事項を記入してポストすれば,さらに,プレゼントをもらえるチャンスが残っていることを示している。利用者は,所定事項を記入した後,サブミットボタンのクリックにより,記入事項を,サーバ4に対して送信する。 【0047】・・・セッションID「680075」の場合,入力時刻「17時42分17秒」は,当選時刻「17時42分16秒」より大きいため,管理ソフト44は,セッションID「680075」で特定されるパソコン1に対して,アタリに対応するhtmlソースを送信する。 【0048】第17図は,くじのアタリを示すと共に,対して,アタリのプレゼントの送付先等の入力を求める画面を示している。利用者は,所定事項を記入した後,サブミットボタンのクリックにより,記入事項を,サーバ4に対して送信する。」 (5) 「【0050】第二の効果は,インターネット上のくじにおいて,発券ページのリロードによる同一発券番号での複数回の抽選への参加を認めないため,インターネット上のくじに関して不正を防止できる。」 3 対比・判断 (1) 懸賞応募に関連し,本件出願時点の技術水準として拒絶の査定で引用された特開2001-22741号公報(平成13年1月26日公開)には,次の記載がある。 ア 「【0002】 【従来の技術】従来,一つの定型フォームに入力項目群を複数パターン記入することにより得られる,同一フォームに則った複数の出力項目群を管理・印刷する方法として,以下のようなものがある。 【0003】懸賞ハガキや懸賞応募用紙等を使う,商品やサービスの購入を条件として行われる懸賞がある。一般に,懸賞広告主が作成した専用の応募ハガキ等が店頭などに備えられ,応募者(消費者)はこれを用いて応募する。応募者は,商品に貼られた応募シール等を応募用紙に貼りつけ,その他アンケート項目等を記入して広告主に郵送する。」 イ 「【0057】上述の実施形態の他に次の形態を実施できる。 ・・・ 5)上述の実施形態ではスキャナから定型フォームイメージを読み取っているが,上記定型フォームイメージはビットマップ等のいわゆるイメージファイルに限らず,そのイメージを印刷可能な情報が格納されていれば形態を問わない。よって,その定型フォームイメージファイルは,スキャナに代えて,フロッピー・ディスク・ドライブ28で駆動されるフロッピー・ディスクや光ディスク装置24で駆動されるCD/MO/PD/DVDおよびその他記憶媒体から読み取られるものでも良い。さらに上記ファイルは,モデム22やネット・ワーク・アダプタ26およびその他を介しての他コンピュータから読み取られるものでも良い・・・」 ウ この記載によると,「応募者は,商品に貼られた応募シール等を懸賞広告主が作成した専用の応募用紙に貼りつけ,広告主に郵送する」ことが従来から行われていること,及び「応募用紙の定型フォームはネットワークを介しても入手できる」ことが認められる。 そして,従来から行われているシステムをコンピュータやネットワークを用いて電子化することは,当業者の通常の創作能力の発揮に当たり,通常,進歩性は認められない。 (2) 本願発明と引用例記載の発明(以下「引用発明」という。)とを対比するに,引用例記載のパソコンの所有者は,インターネット上の企業の広告を閲覧し,商品を獲得することができるから,本願発明が対象とする消費者に対応し,そのパソコンは消費者側クライアントに対応する。 そして,パソコンの所有者は,正当に入手した発券番号をサーバに対して送信している(図12左図及び図13)から,発券番号は,消費者からの情報として,本願発明の商品ID情報と対応していることが認められる。 また,引用例の図17には,「アタリに対応したhtmlソースをブラウザを介して見た図」が示され,その図中に「おめでとうございます。商品FFが当選しました。」とあることから,引用発明には消費者が獲得できる内容を記憶した商品データベースを備え,この商品データベースを参照して,商品FFのデータを取得し,消費者が獲得できる内容に関する情報を消費者側クライアントであるパソコンの所有者に送信していることが認められる。 (3) 一致点・相違点 以上を踏まえると,本願発明と引用発明とは次の一致点及び相違点を有する。 ア 一致点 消費者に対する景品類の付与を支援するシステムであって,消費者が獲得できる内容を記憶した商品データベースと,情報を,消費者側クライアントからネットワークを通じて受信する受信手段と,前記受信した情報をもとに前記商品データベースを参照し,消費者が獲得できる内容に関する情報を取得する情報取得手段と,前記消費者が獲得できる内容に関する情報とを,前記消費者側クライアントに送信する情報送信手段と,前記消費者側クライアントを識別する識別手段と,を備え,前記消費者が獲得できる内容に関する情報は,消費者に付与される懸賞が当選したか否かに関する情報であり,前記商品データベースは,消費者からの情報が実在するか否かに関する情報を更に記憶し,前記当選判定手段は,前記受信した情報をもとに前記商品データベースを参照し,前記受信した情報が実在のものか否かを判定し,前記情報送信手段は,前記当選判定手段が前記受信した情報は実在のものでないと判断した場合に,前記識別された消費者側クライアントからの応募を受け付けないようにした景品類付与支援システム。 イ 相違点 (ア) 本願発明が商品のID表示部を集めた消費者を対象とし,商品IDに基づいて懸賞の当落を判定しているのに対し,引用発明では,広告を閲覧した消費者を対象とし,その消費者が取得した発券番号に基づいて懸賞の当落を判定している点。 (イ) 本願発明が各商品のID表示部の貼付欄を含む貼付フォーマットを当選者に送信しているのに対し,引用発明では,名前や住所等を記入するフォーマットを当選者に送信している点。 (ウ) 本願発明が,商品ID情報は実在のものでないと判断した場合,消費者側クライアントからの応募を以後受け付けないのに対し,引用発明では,発券番号が正当に入手したものでない場合「それに対応したhtmlソースを,要求元に対して,送信する」ことは示されているが,以後の応募を受け付けないことまで示されていない点。 (4) 相違点の判断 ア 懸賞に参加する条件として種々のものが発案され運用されており,どのような条件とするかは当業者が任意に選定できる事項である。 そして,「応募者が,商品に貼られた応募シール等を懸賞広告主が作成した専用の応募用紙に貼りつけ,広告主に郵送する」ことが従来から行われていることであり,従来から行われているシステムをコンピュータやネットワークを用いて電子化することは,当業者の通常の創作能力の発揮に当たることから,応募シールを電子化した商品ID表示部に変更し,このID表示部を懸賞の条件とすることは必然的に発生する変更にすぎず,引用発明の広告を閲覧した後に発行される発券番号と比して,格別な技術的相違とは認められない。 イ 商品のID表示部の貼付欄を含む貼付フォーマットの入手方法として,種々の方法が当業者であれば容易に類推できるものであり,商店での応募用紙の入手だけでなく,引用発明において名前や住所等を記入するフォーマットが当選者に送信されるように,ネットワークを介して必要なフォーマットを入手することも当業者が容易に想到し得る事項である。 ウ ネットワークに接続されたコンピュータを用いたシステムでは,セキュリティーの観点から,種々の不正利用対策を含む安全策を講ずることは,本願出願時点において既に常識となっている。 IDやパスワードの入力が正当でない場合,所定回数までの再入力を許容し,それを超える場合は,入力を拒否したり,IDカードの場合はカード自体を使用不能にすることやカードを回収することも普通に知られた安全策である。 引用発明においても,正当に入手した発券番号が入力されない場合,それに対応したhtmlソースを要求元に対して送信することにより,安全策を講じており,本願発明のように消費者側クライアントからの応募を以後受け付けないとすることも,安全策の一つとして当業者であれば容易に想到し得る事項である。 そして,本願発明については,相違点全体としても格別なものとはいえず,効果についても当業者が予測し得ない格別顕著なものは認められない。 4 むすび したがって,本願発明は,引用例記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,他の請求項について検討するまでもなく,本願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-01-19 |
結審通知日 | 2006-01-24 |
審決日 | 2006-02-06 |
出願番号 | 特願2001-101360(P2001-101360) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 竹中 辰利 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
田中幸雄 佐藤敬介 |
発明の名称 | ポイント及び懸賞付与支援システム |
代理人 | 保坂 延寿 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 大賀 眞司 |