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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1133993 |
審判番号 | 不服2003-23637 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-01-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-05 |
確定日 | 2006-04-07 |
事件の表示 | 平成10年特許願第183583号「磁気ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月21日出願公開、特開2000- 20911〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成10年6月30日の出願であって、平成15年6月9日付けで手続補正がなされ、その後平成15年10月31日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成15年12月5日に審判請求がされるとともに、平成15年12月26日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成15年12月26日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成15年12月26日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前の (a) 「【請求項1】 フェライト材からなる所定容量のフロッピーディスク用の第1の記録再生用コアと、前記フロッピーディスクに比して高容量である高容量フロッピーディスク用の第2の記録再生用コアとを有し、前記第1、第2の記録再生用コアを、それぞれの記録再生用ギャップが略矩形の非磁性材からなるスライダの一面側に位置するようにして該スライダに設けた磁気ヘッドであって、 前記スライダの一面側に2本のレールを設け、一方のレールには前記第1の記録再生用コアを配設し、他方のレールには前記第2の記録再生用コアを配設し、前記第1の記録再生用コアにおける前記記録再生用ギャップを形成する対面部のうち少なくとも一方の面部にフェライト材よりも飽和磁束密度が大きい合金からなる磁性膜を備えたことを特徴とする磁気ヘッド。」を、 (b) 「【請求項1】 フェライト材からなる所定容量のフロッピーディスク用の第1の記録再生用コアと、前記フロッピーディスクに比して高容量である高容量フロッピーディスク用の第2の記録再生用コアとを有し、前記第1、第2の記録再生用コアを、それぞれの記録再生用ギャップが略矩形の非磁性材からなるスライダの一面側に位置するようにして該スライダに設けた磁気ヘッドであって、 前記スライダの一面側に前記高容量フロッピーディスク上で浮上力を発生させるための2本のレールを設け、一方のレールの空気流入対向端から空気流入端側に延びる溝の中には前記第1の記録再生用コアを配設し、他方のレールの空気流入対向端から空気流入端側に延びる溝の中には前記第2の記録再生用コアを配設し、前記第1の記録再生用コアにおける前記記録再生用ギャップを形成する対面部のうち少なくとも一方の面部にフェライト材よりも飽和磁束密度が大きい合金からなる磁性膜を備えたことを特徴とする磁気ヘッド。」 と補正するものである。 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の「2本のレール」について、「前記高容量フロッピーディスク上で浮上力を発生させるための」との限定を付加し、「一方のレールには」について、「一方のレールの空気流入対向端から空気流入端側に延びる溝の中には」との限定を付加し、「他方のレールには」について、「他方のレールの空気流入対向端から空気流入端側に延びる溝の中には」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「補正後の発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 2.引用例 (1) 原査定の拒絶の理由に引用された実願平2-28393号(実開平3-121507号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、「磁気ヘッド」に関し、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与したものである。) (ア)「強磁性体の複数のコアを接合一体化して、その上面に磁気ギャップを形成した薄板状で、記録密度が異なる複数のコアチップと、所定間隔で平行に対向配置された前記複数のコアチップを挟んで一体化する複数の非磁性体のスライダと、複数のコアチップのコアの下面に接合一体化されて、コアとで複数の閉磁路を形成する複数の強磁性体のバックコアと、この複数のバックコアのそれぞれに挿入された複数のコイルとを具えたものであつて、 前記バックコアは、前記コアチップのコアの下面に垂直方向に、かつ、端面の長手方向をコアに直交させて接合一体化される長方形角柱状の脚片部を有し、この脚片部に、長方形角柱状の前記複数のコイルをその長手方向の側面をコアチップと直交させて挿入したことを特徴とする磁気ヘッド。」(実用新案登録請求の範囲) (イ)「[産業上の利用分野] 本考案は、FDD装置(フロッピーディスクドライブ装置)に使用される磁気ヘッドで、詳しくは記録密度の異なる複数のコアチップを平行に配置した磁気ヘッドに関する。」(明細書2頁2行〜6行) (ウ)「第9図及び第10図に示す磁気ヘッドは、一対のフェライト等からなる強磁性体の第1コアチップ(1)と第2コアチップ(2)を平行に対向配置して、それぞれの両側面にセラミック等の非磁性体のスライダ(3)(4)(5)を接着固定し、第1コアチップ(1)の下方に一対のコイル(6)(7)を装着し、第2コアチップ(2)の下方にコイル(8)を装着した構造である。」(明細書2頁18行〜3頁5行、従来の技術の項) (エ)「第1図乃至第3図に示す磁気ヘッドは、1〜2メガバイトの低記録密度用の第1コアチップ(10)と、10〜12メガバイトの高記録密度用の第2コアチップ(11)と、両コアチップ(10)(11)の側面に接合一体化された3つの非磁性体のスライダ(12)(13)(14)と、第1コアチップ(10)の下面に接合されて2つの閉磁路を形成する第1バックコア(15)と、第2コアチップ(11)の下面に接合されて1つの閉磁路を形成する第2バックコア(16)と、第1バックコア(15)の両側に装着された2つのコイル(17)(18)と、第2バックコア(16)に装着された1つのコイル(19)と、有底のスライダケース(20)とを有し、以下、各部分の具体例を説明する。 第1コアチップ(10)は、第4図に示すように、4つの強磁性体のコア(10a)〜(10d)を直線状に接合一体化した薄板状のもので、上面の略中央部に低記録密度のリード/ライト磁気ギャップg1とイレーズ磁気ギャップg2を有し、両側のコア(10a)(10b)の下面には一体にコア接合用凸部(10e)(10f)が形成される。第2コアチップ(11)は一対の強磁性体のコア(11a)(11b)を直線状に接合一体化したもので、上面の略中央部に高記録密度の磁気ギャップg3を有し、両コア(11a)(11b)の下面にコア接合用凸部(11c)(11d)が形成される。3つのスライダ(12)(13)(14)は同一厚さであり、中央のスライダ(13)は角棒状でその両側面に一対のコアチップ(10)(11)が接合され、両側のスライダ(12)(14)は矩形板状でコアチップ(10)(11)の外側面に接合されて、第3図に示すように、1枚の矩形平板状の媒体摺動板(21)が組み立てられ、その上面にフロッピーディスクを摺動する媒体摺動面nが形成される。」(明細書9頁末行〜11頁13行) (2) 同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-229609号公報(以下「引用例2」という。)には、「両面型磁気ヘッド」に関し、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与したものである。) (カ)「【特許請求の範囲】非磁性スライダ内に取り付けられ主コアを第1の強磁性体で形成されたリードライトコアと、このフェライトコアのギャップの側面に設けられた第2の強磁性体で形成したギャップ近傍コアを具備し、磁気記録媒体を介して両面にそれぞれ配置されたとき、一方の上記リードライトコアから発生される磁束が他方の上記リードライトコアに伝播する通路上の位置であって、上記非磁性スライダ内に取り付けられた磁性スライダとを備えた両面型磁気ヘッド。」(公報1頁左下欄5行〜14行) (キ)「本発明は、コンピュータの記憶装置等で使用するフレキシブルディスク装置等に使用する両面型磁気ヘッドに関する。」(公報1頁左下欄17行〜19行、産業上の利用分野の項) (ク)「本発明は上記問題点を解決するために、フェライトで構成されたリードライトコアのキャップ近傍にパーマロイ等の強磁性体を用い、スライダーを構成する部材の一部に、高透磁率の磁性材料を取り付けるという構成にしたものである。」(公報2頁左上欄1行〜5行、問題点を解決するための手段の項) (ケ)「第1図〜第4図において、1はトンネルイレース形磁気ヘッドのリードライトコアであり、リードライトギャップ3と、ギャップ3の側面にギャップ近傍コア2が設けられている。このギャップ近傍コア2は飽和磁束密度(Bs)の大きいセンダスト、アモルファス磁性体およびパーマロイ等の強磁性材料で構成されている。5a、5bは消去コアであり、消去ギャップ4が設けられている。」(公報2頁左上欄20行〜右上欄7行) (コ)「第1図〜第4図において、一般に主コア材(リード・ライトコア1)はフェライトを使用しているので高周波特性および耐摩耗性が良く、しかもリードライトギャップ近傍コア3にパーマロイ等の強磁性材料を使用しているので飽和磁束密度(Bs)が大きくとれることとなり、抗磁力(Hc)の高い記録媒体や磁性膜の厚い記録媒体にも十分に書き込み、読み出しができることとなる。」(公報2頁右上欄17行〜左下欄4行) 3.対比判断 (1)対比 補正後の発明と引用例1に記載された発明とを対比する。 上記2で摘示した記載事項、特に(ア)(イ)(エ)(下線部参照)によれば、引用例1には、 「強磁性体の複数のコアを接合一体化して、その上面に磁気ギャップを形成した、記録密度が異なる複数のコアチップと、所定間隔で平行に対向配置された前記複数のコアチップを挟んで一体化する複数の非磁性体のスライダを備えた磁気ヘッドであって、 フロッピーディスクドライブ装置に使用され、 記録密度が異なる複数のコアチップは、低記録密度用の第1コアチップと高記録密度用の第2コアチップである磁気ヘッド。」 の発明が記載されている。 引用例1に記載された発明の「低記録密度用の第1コアチップ」「高記録密度用の第2コアチップ」は、それぞれ補正後の発明の「所定容量のフロッピーディスク用の第1の記録再生用コア」「前記フロッピーディスクに比して高容量である高容量フロッピーディスク用の第2の記録再生用コア」「に相当している。 引用例1に記載された発明の「磁気ギャップ」は、「低記録密度のリード/ライト磁気ギャップ」「高記録密度の磁気ギャップ」(上記(エ)参照)と記載されていることから、記録再生用ギャップであることが明らかである。 引用例1に記載された発明において、「強磁性体のコア」は、引用例1の従来の技術において「フェライト等からなる強磁性体」と例示されている(上記(ウ)参照)ので、フェライト等からなる強磁性体であることが明らかである。 引用例1に記載された発明において、「所定間隔で平行に対向配置された前記複数のコアチップを挟んで一体化する複数の非磁性体のスライダを備えた磁気ヘッド」は、補正後の発明の「第1、第2の記録再生用コアを、それぞれの記録再生用ギャップが略矩形の非磁性材からなるスライダの一面側に位置するようにして該スライダに設けた磁気ヘッド」に相当する構成を備えているといえる。 よって、補正後の発明と引用例1に記載された発明は、 「フェライト材からなる所定容量のフロッピーディスク用の第1の記録再生用コアと、前記フロッピーディスクに比して高容量である高容量フロッピーディスク用の第2の記録再生用コアとを有し、前記第1、第2の記録再生用コアを、それぞれの記録再生用ギャップが略矩形の非磁性材からなるスライダの一面側に位置するようにして該スライダに設けた磁気ヘッド。」 である点で共通し、以下の点で相違している。 (相違点1) 補正後の発明では、「スライダの一面側に高容量フロッピーディスク上で浮上力を発生させるための2本のレールを設け、一方のレールの空気流入対向端から空気流入端側に延びる溝の中には第1の記録再生用コアを配設し、他方のレールの空気流入対向端から空気流入端側に延びる溝の中には第2の記録再生用コアを配設し」と特定されているのに対して、引用例1に記載された発明では、2本のレールについて記載されていない点。 (相違点2) 補正後の発明では、「第1の記録再生用コアにおける記録再生用ギャップを形成する対面部のうち少なくとも一方の面部にフェライト材よりも飽和磁束密度が大きい合金からなる磁性膜を備えたこと」と特定されているのに対して、引用例1に記載された発明では、そのように特定されていない点。 (2)判断 (相違点1について) フロッピーディスクドライブ装置に用いられる磁気ヘッドにおいて、スライダの一面側に2本のレールを設け、一方のレールに所定容量のフロッピーディスク用の第1の記録再生用コアを配設し、他方のレールには高容量フロッピーディスク用の第2の記録再生用コアを配設することは、周知であって、例えば原審で示された特開平3-119507号公報、特開平4-295664号公報に記載されている。 そして、第1及び第2の記録再生用コアをスライダのレールに設けた溝に埋め込むことにより一体化させる構造、すなわち、スライダの一面側に高容量フロッピーディスク上で浮上力を発生させるための2本のレールを設け、一方のレールの空気流入対向端から空気流入端側に延びる溝の中に、所定容量のフロッピーディスク用の記録再生用コアを配設し、他方のレールの空気流入対向端から空気流入端側に延びる溝の中に、高容量フロッピーディスク用の記録再生用コアを配設することも、周知の事項であって、例えば特開平9-212818号公報、特開平9-231537号公報等に記載されているので、参照されたい。 してみると、引用例1に記載された発明において、記録再生用コアをスライダに配設して一体化にする構造として、上記周知の事項を採用することは、当業者が必要に応じ適宜なし得ることである。 (相違点2について) コアのギャップ近傍の飽和を改良する目的等で、フェライトより飽和磁束密度の大きい合金からなる磁性膜をフェライトコアのギャップ対面部に設けることは、MIG(メタルインギャップ)として常套手段であり、FDD装置に用いられるスライダに一体に配設される普通のフェライト記録再生用コアにおいても、そのギャップ対面部のうち少なくとも一方の面部にフェライト材よりも飽和磁束密度が大きい合金からなる磁性膜を設けることが引用例2に記載されているのであるから、引用例1に記載された発明において、通常の容量であるフロッピーディスク用の第1の記録再生用コアのギャップ対向面に、上記磁性膜を設けることは、当業者が容易に想到しうることである。 そして、上記相違点を総合的に検討しても、補正後の発明の効果は、引用例1、2に記載された発明及び周知の事項から当業者であれば予測される範囲内であるので、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものである。 なお、請求人は、「第1の記録再生用コアのギャップ深さの寸法にバラツキが発生しやすいことにより歩留まりが低下する虞れがあった」という着想に基いて、磁性膜の構成を採用したことを根拠に、相違点2の困難性を主張している。しかしながら、MIGの技術は極めて一般的であり、また引用例2の技術が、FDD装置の高容量用のギャップに採用されるものに限らず、普通の所定容量用のギャップにも採用されるものであることは当業者にとって明らかであって、何ら阻害要因がないものである。 4.むすび 以上のとおり、補正後の発明は、上記引用例1、2に記載された発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 平成15年12月26日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年6月9日付け手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】上記「第2の1の(a)」のとおり。」 1.引用例 原審の拒絶の理由に引用された引用例1乃至2の記載事項は、上記「第2の2」に記載されたとおりである。 2.対比判断 本願発明は、上記「第2」で検討した補正後の発明から、「2本のレール」についての限定事項である「前記高容量フロッピーディスク上で浮上力を発生させるための」という構成を省き、「一方のレールには」についての限定事項である「一方のレールの空気流入対向端から空気流入端側に延びる溝の中には」という構成を省き、「他方のレールには」についての限定事項である「他方のレールの空気流入対向端から空気流入端側に延びる溝の中には」という構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後の発明が、上記「第2の3」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-06 |
結審通知日 | 2006-02-08 |
審決日 | 2006-02-22 |
出願番号 | 特願平10-183583 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 富澤 哲生 |
特許庁審判長 |
小林 秀美 |
特許庁審判官 |
片岡 栄一 相馬 多美子 |
発明の名称 | 磁気ヘッド |
代理人 | 宮崎 嘉夫 |
代理人 | 萼 経夫 |
代理人 | 中村 壽夫 |
代理人 | 小野塚 薫 |