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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1134073
審判番号 不服2005-282  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-06-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-06 
確定日 2006-04-06 
事件の表示 特願2001-371943「電動シャッター兼用電動防火ダンパ付きウェザーカバー」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月14日出願公開、特開2002-168492〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年9月12日に出願した特願平7-233887号の一部を平成13年12月5日に新たな特許出願としたものであって、平成16年11月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年1月28日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年1月28日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年1月28日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 通風路内に回動可能に設けられた複数枚のダンパと、
各ダンパの背面に直接あるいはリンク機構を介して取り付けられ前記通風路を閉じる方向に前記ダンパを付勢するバネと、
前記通風路を開閉するために最下段のダンパの背面と巻上げモータとを連結するワイヤまたはリンク機構と、
最下段のダンパの回動に連動させて他のダンパを回動させるように前記最下段のダンパと各ダンパとを連結するリンクと、
開口部の室外側の壁に固定された枠体と、を有し、
更に、各ダンパの重心位置には支点が設けられ、前記ダンパは前記支点で回動可能に支持され、
前記バネは、それぞれ一端が各ダンパの背面に直接あるいはリンク機構を介して取り付けられ、他端が枠体(26)に取り付けられ、
前記ワイヤ又はリンク機構は、前記通風路が一定温度以上になると溶断する温度ヒューズを介して接続されている2本のワイヤまたはリンク機構からなることを特徴とする電動シャッター兼用電動防火ダンパ付きウェザーカバー。」
と補正された。

上記請求項1の補正は、原請求項1に記載した発明の構成要件である「バネ」の取付について、バネの一端が各ダンパの背面に直接あるいはリンク機構を介して取り付けられ他端が枠体に取り付けられ、さらに、該枠体は開口部の室外側の壁に固定されているとの限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
本願の出願前国内において頒布された刊行物である、実願昭55-71912号(実開昭56-172628号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

「この考案では、これ等の欠点を解消せんとするものであり、その要旨は一個のダンパーにて防火、換気の機能を生起させんとするもので、具体的には、相互間をリンク機構にて連動する状態としている所要数のシャッター(1),(1)’…中より、一個のシャッター(1)を選択してその一部にモータ軸(2)を直接関係しない状態のもとに取付け、次に同モータ軸とこの選択されたシャッターとを所要形状の連結片(3)にて連結し、この連結片によってモータ軸の動きをシャッターに伝達させる状態とし、かつ同連結片の一部に所定の温度にて溶解するヒューズ部分(4)を設けてなる防火機能も併有する換気用ダンパーの構造にある。
なお、図面において(5)はヒューズ部分(4)の溶解消失により、シャッター(1)とモータ軸(2)との連係が解消された場合、各シャッター(1),(1)’…を復元させ「閉」とする為のスプリングであり、通常はシャッターに固定され、機枠(6)に対しシャッターを枢着状態としている軸体(7)のいずれかに組込まれている。
・・・・・
この考案では、まず必要時間換気を行う場合にはモータ(図示せず)を始動させればモータ軸(2)は一定範囲回動し、その結果同軸の動きは連結片(3)を通してシャッター(1)に伝達されて連動され、その後リンク機構によって各シャッターの同行して引き上げられダンパーは「開」となって通気の流通を促すものである。
次にもしこの換気中に室内に火災が発生した場合には、その火災は当然最も吸気側に位置しているこのダンパーに接触しやすく、従ってシャッター(1)とモータ軸(2)を連結している連結片(3)の一部を70℃前後の熱にて溶解するヒューズ部分(4)としておけば、火災発生時における熱感知は上記理由により最も早く、その結果このヒューズ部分は短時間に消失し、シャッター(1)とモータ軸(2)との連結を解消する為、各シャッター(1),(1)’…は復元用スプリング(5)の作用により又は自重によって瞬時下降し、ダンパーを「閉」とし火炎及び煙の外部、他所への流出を完全に遮断できるものである。」(明細書第2頁7行〜第4頁14行)

上記記載および図面より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。

「通風路内に回動可能に設けられた複数枚のシャッター(1),(1)’…と、
シャッターに取り付けられ前記通風路を閉じる方向に前記シャッターを付勢するスプリング(5)と、
前記通風路を開閉するために最下段のダンパの背面とモータ軸(2)とを連結する連結片(3)と、
最下段のシャッターの回動に連動させて他のシャッターを回動させるように前記最下段のシャッターと各シャッターとを連結するリンク機構と、
機枠(6)と、を有し、
更に、各シャッターは、シャッターに固定された軸体(7)を支点として機枠に回動可能に支持され、
前記スプリングは最下段のシャッターの軸体に組み込まれ、
前記連結片(3)は、前記通風路が一定温度以上になると溶断するヒューズ部分(4)を介してシャッターに接続されてなる防火機能も併有する換気用ダンパー。」

同じく、本願の出願前国内において頒布された刊行物である、実願昭53-88260号(実開昭55-5080号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

「第2図は本考案のダンパーを示すもので、遮断板(2)の内面側周部にフレーム(9)を取付けて外形が形成され、遮断板(2)には3カ所通気開口(3)が開口せしめてある。各通気開口(3)の内面側周縁部には軸受(10)が固設してあって、この軸受(10)に軸(5)が挿着してある。
開閉板(4)は通気開口(3)よりもやや大きい相似形状に形成され、軸(5)に溶接などで端部を固着してある。(8)はねじりばねのようなスプリングで、軸(5)に挿着してあり、その一端を遮断板(2)内面に他端を開閉板(4)内面に圧接せしめてある。従って開閉板(4)を引張る力が働かないときには開閉板(4)はスプリンク(8)で通気開口(3)を閉塞することになる。
(6)は開保持機構で、開閉リンク(11)、連結リンク(12)、ヒューズメタル板(7)及びアーム(13)とにより構成される。開閉リンク(11)は各開閉板(4)の内面基部に固設した取付板片(14)に回動自在に軸着してあり、開閉リンク(11)中央部付近に連結リンク(12)の一端が枢着してある。アーム(13)はフレーム(9)内に固設した支持ブラケツト(15)に中央部をピン(16)で軸支されており、アーム(13)の端部と連結リンク(12)端部とにヒユーズメタル板(7)の両端部が蝶ボルト・ナツト(17)(17)で軸着してある。(18)はアジヤストボルトで、フレーム(9)内周に固設したねじブラケツト(19)の雌ねじ部(20)に螺入してある。このアジヤストボルト(18)を螺進せしめることによりアジヤストボルト(18)の先端でアーム(13)端部の受片(21)を押圧し、ピン(16)を中心にアーム(13)を回動させるとヒユーズメタル板(7)と連結リンク(12)とを介して開閉リンク(11)が引っ張られ、開閉リンク(11)の移動に伴って第2図(a)の想像線で示すようにスプリング(8)に抗して開閉板(4)を軸(5)を中心に回動せしめ、通気開口(3)を開くものである。」(明細書第3頁15行〜第5頁7行)

「今、厨房器具(28)上などで火炎が吹き上げられると、火炎はフアン(26)の吸引力にて排煙路(1)内に吸い込まれるが、火炎にてヒユーズメタル板(7)が加熱され、ヒユーズメタル板(7)が溶融切断されて連結リンク(12)の引つ張りが解除され、開閉板(4)はスプリング(8)の弾発力によって閉方向へ回動され、通気開口(3)が開開板(4)によつて閉鎖される。」(明細書第6頁2〜8行)

(3)対比・判断
本願補正発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「シャッター(1),(1)’…」は、本願補正発明の「ダンパ」に相当し、以下同様に、「スプリング(5)」は「バネ」に、「モータ」は「巻上げモータ」に、「リンク機構」は「リンク」に、「機枠(6)」は「枠体」に、「ヒューズ部分(4)」は「温度ヒューズ」に、「防火機能も併有する換気用ダンパー」は「電動シャッター兼用電動防火ダンパー」に、それぞれ相当するとともに、引用例発明の「連結片(3)」及び、本願補正発明の「ワイヤ又はリンク機構」はいずれもモータからのダンパ開方向付勢力をダンパに伝達するモータ駆動力伝達部材であるから、
両者は、
「通風路内に回動可能に設けられた複数枚のダンパと、
ダンパ取り付けられ前記通風路を閉じる方向に前記ダンパを付勢するバネと、
前記通風路を開閉するために最下段のダンパの背面と巻上げモータとを連結するモータ駆動力伝達部材と、
最下段のダンパの回動に連動させて他のダンパを回動させるように前記最下段のダンパと各ダンパとを連結するリンクと、
枠体と、を有し、
更に、各ダンパには支点が設けられ、前記ダンパは前記支点で回動可能に支持され、
前記モータ駆動力伝達部材は、前記通風路が一定温度以上になると溶断する温度ヒューズを介してダンパに接続されていることを特徴とする電動シャッター兼用電動防火ダンパ。」
である点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1]バネに関して、本願補正発明では、バネの一端が各ダンパの背面に直接あるいはリンク機構を介して取り付けられ、他端が枠体に取り付けられているのに対して、引用例発明では、最下段のシャッターに固定され、機枠に対しシャッターを枢着状態としている軸体に組み込まれている点。

[相違点2]モータ駆動力伝達部材が、本願補正発明では、ダンパ背面と巻上げモータとを連結するワイヤ又はリンク機構であって、該ワイヤ又はリンク機構は、温度ヒューズを介して接続されている2本のワイヤまたはリンク機構からなるのに対して、引用例発明では、一端がモータ軸に連結されるとともに他端がダンパ背面と温度ヒューズを介して接続される連結片である点。

[相違点3]枠体が、本願補正発明では、開口部の室外側の壁に固定されるのに対して、引用例発明では、どこに固定されるのか限定がない点。

[相違点4]ダンパの支点が、本願補正発明では、ダンパの重心位置に設けられるのに対して、引用例発明では、ダンパの重心位置に設けられていない点。

[相違点5]本願補正発明は、電動シャッター兼用電動防火ダンパとウェザーカバーとを組み合わせて電動シャッター兼用電動防火ダンパ付きウェザーカバーと称しているのに対して、引用文献には、ウェザーカバーについての記載がなく、引用例発明は、電動シャッター兼用電動防火ダンパである点。

上記相違点について検討する。

相違点1について、引用文献2には、複数枚のダンパを有するダンパにおいて、各ダンパに閉方向に付勢するバネを設けたものが記載されているし、ダンパを閉方向に付勢するバネの一端をダンパの背面に直接取り付け、他端を枠体に取り付けたダンパは従来周知である(例えば、実公昭52-12395号公報、実公昭51-46354号公報参照。)から、引用例発明において、ダンパに閉方向に付勢するバネを各ダンパに設けるとともに、それらのバネの一端をダンパの背面に直接取り付け、他端を枠体に取り付けて、相違点1における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点2については、引用文献2に、駆動源(アジャストボルト(18))からの開方向付勢力をダンパに伝達する駆動力伝達部材を開閉リンク(11)、連結リンク(12)、ヒューズメタル板(7)及びアーム(13)等の部材により構成されるリンク機構とするとともに、該リンク機構の一部を温度ヒューズ(ヒューズメタル板(7))としたものが記載されているから、引用例発明において、モータ駆動力伝達部材を、ダンパ背面と巻き上げモータとを連結するリンク機構であって、該リンク機構が、温度ヒューズを介して接続されているものに変更して相違点2における本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点3については、枠体を壁に設けた開口部に対してどのような位置に設けるかは当業者が適宜選択し得る設計事項であるし、防火ダンパの枠体を開口部の室外側の壁に固定したものは従来周知である(例えば、特開平6-193927号公報、実願昭56-168079号(実開昭58-73266号)のマイクロフィルム参照。)から、引用例発明において、枠体を開口部の室外側の壁に固定して相違点3における本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点4については、複数のダンパを有するダンパにおいて、各ダンパの支点をダンパの先端と後端との中間位置、すなわち重心位置としたものは従来周知である(例えば、引用文献2の第1図、実公昭35-28158号公報、実願平4-77579号(実開平6-35857号)のCD-ROM参照。)から、引用例発明のダンパの支点をダンパの重心位置とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点5については、防火ダンパにウェザーカバーを設けたものは従来周知ある(例えば、先の相違点3の検討で挙げた特開平6-193927号公報、実願昭56-168079号(実開昭58-73266号)のマイクロフィルム参照。)から、引用例発明にウェザーカバーを設けて、電動シャッター兼用電動防火ダンパ付きウェザーカバーとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用文献1、2に記載された発明および周知の事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。
よって、本願補正発明は、本願の出願前に国内において頒布された引用文献1、2に記載された発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反してなされたものであり、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年1月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「通風路内に回動可能に設けられた複数枚のダンパと、
各ダンパの背面に直接あるいはリンク機構を介して取り付けられ前記通風路を閉じる方向に前記ダンパを付勢するバネと、
前記通風路を開閉するために最下段のダンパの背面と巻上げモータとを連結するワイヤまたはリンク機構と、
最下段のダンパの回動に連動させて他のダンパを回動させるように前記最下段のダンパと各ダンパとを連結するリンクと、を有し、
更に、各ダンパの重心位置には支点が設けられ、前記ダンパは前記支点で回動可能に支持され、
前記ワイヤ又はリンク機構は、前記通風路が一定温度以上になると溶断する温度ヒューズを介して接続されている2本のワイヤまたはリンク機構からなることを特徴とする電動シャッター兼用電動防火ダンパ付きウェザーカバー。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「バネ」の取付についての限定事項である、一端が各ダンパの背面に直接あるいはリンク機構を介して取り付けられ、他端が枠体に取り付けられ、さらに、該枠体は開口部の室外側の壁に固定されているとの構成を省いたたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用文献1、2に記載された発明および周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1、2に記載された発明および周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1、2に記載された発明および周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-01 
結審通知日 2006-02-07 
審決日 2006-02-20 
出願番号 特願2001-371943(P2001-371943)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大熊 雄治  
特許庁審判長 小椋 正幸
特許庁審判官 櫻井 康平
原 慧
発明の名称 電動シャッター兼用電動防火ダンパ付きウェザーカバー  
代理人 吉田 研二  
代理人 石田 純  

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