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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B23Q
管理番号 1134074
審判番号 不服2005-6319  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-08 
確定日 2006-04-06 
事件の表示 平成6年特許願第321254号「パレットの着座装置」拒絶査定不服審判事件〔平成8年6月18日出願公開、特開平8-155770〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年11月30日の出願であって、平成16年7月26日付けで拒絶理由が通知され、平成16年9月28日に明細書の記載を補正する手続補正と意見書の提出がなされ、平成17年3月3日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成17年4月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで再度明細書の記載を補正する手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正前後の特許請求の範囲の請求項1を、補正箇所に下線付して示すと、以下のとおりである。
(1-1)補正前の請求項1
「パレット下面にテーパソケットとプルスタットを取付け、パレット位置決め台には上記テーパソケットと相似形のテーパコーン及び上記プルスタットを把持するコレットとを設けたパレットの着座装置において、上記テーパソケットとテーパコーンには各々円錐当面を設けるほか相互に端面密着させる当接面を各々の大径側端面に設け、上記テーパソケットとプルスタットとを相互に円錐当面で嵌着させ、更に、テーパコーンにはその内空部を設けてこの円錐当面がテーパソケットの円錐当面との嵌着時に弾性変位するようにしたことを特徴とするパレットの着座装置。」

(1-2)補正後の請求項1
「パレット下面にテーパソケットとプルスタットを取付け、パレット位置決め台には上記テーパソケットと相似形のテーパコーン及び上記プルスタットを把持するコレットとを設けたパレットの着座装置において、
上記テーパソケットとテーパコーンには各々円錐当面を設けるほか相互に端面密着させる当接面を各々の大径側端面に設け、
上記テーパソケットとテーパコーンとを相互に円錐当面で嵌着させ、テーパコーンにはその内空部を設けてこの円錐当面がテーパソケットの円錐当面との嵌着時に内側に弾性変位するようにし、 テーパソケットとテーパコーンとの端面密着の当接面間にエアー式の密着確認センサを付設したことを特徴とするパレットの着座装置。」

(2)補正の目的の適否
上記補正は、「テーパソケットとテーパコーンとの端面密着の当接面間にエアー式の密着確認センサを付設した」との事項を付加して、「パレットの着座装置」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかである。
しかしながら、上記補正が、特許法第17条の2第3項第2号に該当するためには、さらに、(イ)補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項の限定であること、及び、(ロ)補正前と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることを要する。
そこで、上記(イ)の要件について検討するに、補正前の請求項1は、「テーパソケットとテーパコーンとの端面密着の当接面間にエアー式の密着確認センサを付設した」との事項に対応する発明特定事項を有していない。
そうすると、上記補正は、上記(ロ)の要件について検討するまでもなく、特許法第17条の2第3項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮に該当しない。そして、当該補正が、請求項の削除、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正のいずれにも該当しないことが明らかである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項各号のいずれにも該当しないから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年9月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、以下のとおりのものと認められる。
「パレット下面にテーパソケットとプルスタットを取付け、パレット位置決め台には上記テーパソケットと相似形のテーパコーン及び上記プルスタットを把持するコレットとを設けたパレットの着座装置において、上記テーパソケットとテーパコーンには各々円錐当面を設けるほか相互に端面密着させる当接面を各々の大径側端面に設け、上記テーパソケットとテーパコーンとを相互に円錐当面で嵌着させ、更に、テーパコーンにはその内空部を設けてこの円錐当面がテーパソケットの円錐当面との嵌着時に弾性変位するようにしたことを特徴とするパレットの着座装置。」
なお、請求項1には、下線を付した「テーパコーン」に換えて「プルスタット」と記載されているが、上記請求項1中の「テーパソケットとテーパコーンには各々円錐当面を設けるほか相互に端面密着させる当接面を各々の大径側端面に設け」との記載及び図1の記載からみて、テーパソケットの円錐当面と相互に嵌着するのは、プルスタットではなく「テーパコーン」の円錐当面であることが明らかであるから、「プルスタット」は「テーパコーン」の誤記と認め、本願発明を上記のとおり認定した。

(2)刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由で引用され本願の出願前に国内で頒布された刊行物である、実願平2-405816号(実開平5-26241号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)及び実願昭62-84763号(実開昭63-193632号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(2-1)刊行物1
(イ)段落【0007】〜【0010】
「【実施例】
図1は、本考案によるパレットクランプ装置の構成を示す垂直断面図、図2はパレットクランプ装置の全体構成を示す説明図、である。
図2に示すように、パレット1は、油圧回路2によりクランプ作動させられるパレットクランプ装置3によりテーブル4に取付けられるようになっている。・・・
図1に示すように、パレット1の下面には、プルスタッド5が植設されており、これを中心とした位置決めブッシュ6がねじ止め固定されている。
テーブル4上には、パレット1に植設したプルスタッド5に対面した位置に、パレットクランプ装置3が設けられており、・・・
次にプルスタッド5を把持、牽引固定するためのシリンダ機構Aについて説明する。
テーブル4にパレット1をクランプする際に、パレット1の下面に設けたプルスタッド5に対面するテーブル4上面位置に、該プルスタッド5を把持、牽引固定するためのコレット付ピストン7が、パレットクランプ装置3のシリンダ部材8のシリンダ9内を油圧により上下移動可能に設けられており、コレット付ピストン7上端部はボール7a を備えたボール式コレット部10となっている。・・・
コレット付ピストン7のシリンダ軸7b 上部は中空軸となっていて、その内部には内蔵バネ12により上方に付勢されたキャップ状体13が設けられ、また、中空軸壁にはパレット下面のプルスタッド5の拡大頭部5a と係合するボール7a が嵌め込まれている。このボール7a はいわゆるボール式コレットチャックとして作用するもので、シリンダ部材8上面より突出するピストン軸7b 上部に嵌合する位置決めコーンブッシュ14内径面に形成された環状凹部15で外方に退避し、コレット作用を解除するよう構成されている。なお、位置決めコーンブッシュ14はシリンダ部材8に取付ネジで固定されていて、テーブル4へのパレット1取付時には、パレットの位置決めブッシュ6と係合して、テーブルとパレットとの係合位置決め案内作用を行い、プルスタッド5のコレット中空軸内への挿入時には、コレット付ピストン7のボール7a は位置決めコーンブッシュ14の環状凹部15位置にあるので、ボール7a は環状凹部15内に退避し、プルスタッド5のコレット付ピストン7のコレット部10内への挿入が行われる。・・・」
(ロ)図1から
「位置決めブッシュ6と位置決めコーンブッシュ14には各々互いに相似形の円錐当面を設け、上記位置決めブッシュ6と位置決めコーンブッシュ14とを相互に円錐当面で嵌着させること」が看取し得る。

上記(イ)、(ロ)の記載事項からみて、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「パレット1下面に位置決めブッシュ6とプルスタッド5を取付け、テーブル4には上記位置決めブッシュ6と相似形の位置決めコーンブッシュ14及び上記プルスタッド5を把持するボール式コレット部10とを設けたパレットクランプ装置において、上記位置決めブッシュ6と位置決めコーンブッシュ14には各々円錐当面を設けるほか相互に端面密着させる当接面を各々の大径側端面に設け、上記位置決めブッシュ6と位置決めコーンブッシュ14とを相互に円錐当面で嵌着させる、パレットクランプ装置。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

(2-2)刊行物2
(ハ)明細書第1頁13行〜16行
「《産業上の利用分野》
本考案は工作機械、例えば、NCロータリーテーブルのワークを把持するグリップホルダーの取付構造に関するものである。」
(ニ)明細書第3頁16行〜第4頁13行
「本考案は、グリップホルダー(1)の後方に延設し、取付面(4)の取付凹部内壁(5)と嵌合する挿入テーパー部(2)が内外方向に弾性を有し、グリップホルダー(1)の後面(9)が取付面(4)に当接して挿入テーパー部(2)が取付凹部内壁(5)に嵌合する構造としたものである。
《作用》
本考案はグリップホルダー(1)の挿入テーパー部(2)が内外方向に弾性を有するため、取付凹部内壁(5)に挿入する際、取付凹部内壁(5)の傾斜とに誤差があっても、弾性により密着し、微間隙の発生を防止する。
一方、グリップホルダー(1)の後面(9)が取付面(4)と当接するから、グリップホルダー(1)は挿入テーパー部(2)と後面(9)との二つの面で取付部材に接着して取り付けられるため、上下左右の揺動に対して充分に対抗することができるのである。」
(ホ)明細書第4頁14行〜第5頁19行
「《実施例》
第1図は本考案の一実施例を示す断面図であり、グリップホルダー(1)の後方には延設した挿入テーパー部(2)を有し、挿入テーパー部(2)はグリップホルダー(1)に設けた座部(1a)より突出し、挿入テーパー部(2)の基部内外周には逃げ溝(10)が穿設してある。
従って、挿入テーパー部(2)は基部の逃げ溝(10)により内外方向に弾性を有し、内方向への押圧力に対して外方向への付勢力が生じつつ内方へ傾くことができる。
取付面(4)の取付凹部内壁(5)は、挿入テーパー部(2)の当接する傾斜と同一又はやや強く成っていると共に、奥行きは挿入テーパー部(2)の突出長より長くしてあり、この取付凹部内壁(5)に挿入テーパー部(2)を挿入すると、テーパー部(2)はやや内方へ傾斜を増して取付凹部内壁(5)へ当圧して挿入されると共に嵌合する。
・・・
故に、グリップホルダー(1)は挿入テーパー部(2)の斜面と後面(9)が取付凹部内壁(5)と取付面(4)に当圧して挿入されて嵌合する。」
上記(ハ)〜(ホ)の記載事項からみて、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。
「例えば、NCロータリーテーブルの取付凹部内壁(5)の斜面とグリップホルダー(1)の挿入テーパー部(2)の斜面との嵌合、及び、テーブルの取付面(4)とグリップホルダー(1)の後面(9)との当接と、テーブルとグリップホルダー(1)とを二つの面で接着させるために、挿入テーパー部(2)の基部内外周に逃げ溝(10)を穿設して、挿入テーパー部(2)を内外方向に弾性を有するものとすること。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)

(3)対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「パレット1」は前者の「パレット」に相当し、以下同様にして、後者の「位置決めブッシュ6」は前者の「テーパソケット」に、後者の「プルスタッド5」は前者の「プルスタット」に、後者の「テーブル4」は前者の「パレット位置決め台」に、後者の「位置決めコーンブッシュ14」は前者の「テーパソケット」に、後者の「ボール式コレット部10」は前者の「コレット」に、それぞれ相当することが明らかである。
そして、後者の「パレットクランプ装置」は、その機能からみて、「パレットの着座装置」とも言い得るものである。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「パレット下面にテーパソケットとプルスタットを取付け、パレット位置決め台には上記テーパソケットと相似形のテーパコーン及び上記プルスタットを把持するコレットとを設けたパレットの着座装置において、上記テーパソケットとテーパコーンには各々円錐当面を設けるほか相互に端面密着させる当接面を各々の大径側端面に設け、上記テーパソケットとテーパコーンとを相互に円錐当面で嵌着させ」る点。
〈相違点〉
前者は、テーパコーンに内空部を設けてテーパコーンの円錐当面がテーパソケットの円錐当面との嵌着時に弾性変位するようにしたものであるのに対して、後者は、テーパコーンがそのような構造を有していない点。

(4)当審の判断
上記相違点について、以下検討する。
本願発明が上記相違点に係る構成、すなわち、「テーパコーンに内空部を設けてテーパコーンの円錐当面がテーパソケットの円錐当面との嵌着時に弾性変位するようにした」ことに関して、本願明細書には次のとおり記載されている。
(イ)段落【0001】
「【産業上の利用分野】
本発明は、工作機械のパレット等の着座装置に関し、テーパコーンの円錐面の他、フラットな端面をも密着させて高精密なクランプを可能としたものに係わる。」
(ロ)段落【0011】
「更に、テーパコーンに内空間を設けてこの円錐当たり面がテーパソケットの円錐当面との嵌着時に弾性変位するで、パレット位置決め台上にパレットをより一層強固で且つ高精度な着座がなされる。」
(ハ)段落【0015】
「上記テーパソケット2とテーパコーン5には、各々円錐当面2A,5Aを設けるほか相互に端面密着させる当接面2B,5Bを各々の大径側端面2C,5Cに設けている。これにより、各々円錐当面2A,5Aの密着でパレット1の水平前後左右方向の位置決めをするほか、端面密着させる当接面2B,5Bでパレット1の上下位置及び水平状態を位置決めすることができる構成になっている。更に、テーパコーン5には、その内空部Sを設け、この円錐当面5Aがテーパソケット2の円錐当面2Aとの嵌着時に内側へ微小量だけ弾性変位するような関係に構成されている。・・・」
(ニ)段落【0018】
「次に、パレット1等のクランプ時は、先ず皿バネ8で押し上げたアンクランプ状態にてパレット1等のプルスタット3をコレット6の孔内へ差し入れる。ここで、図2に示すように、コレットピストン7に油圧を付与する。これにより、降下するコレットピストン7のコレット6は、その上部のボール9・・・がテーパコーン5の絞り部5Dにより中心側へ寄せられ、プルスタット3の首部3Aを掴んでクランプする。これにより、各々円錐当面2A,5Aの密着でパレット1の水平前後左右方向が位置決めされるほか、端面密着する当接面2B,5Bでパレット1の上下位置及び水平状態が位置決めされる。更に、このクランプ動作時にテーパコーン5は、その内空部Sによって作られた薄肉部の円錐当面5Aがテーパソケット2の円錐当面2Aとの強力な嵌着時に、内側へ働く作用力Fにより微小量だけ弾性変位する。このテーパコーン5の弾性変位による弾発力により、パレット1等のテーパソケット2をテーパコーン5に対して一層高精密で強固なクランプ状態に保持する。」
これら(イ)〜(ニ)の記載からみると、本願発明において、「テーパコーンにはその内空部を設けてこの円錐当面がテーパソケットの円錐当面との嵌着時に弾性変位するようにした」ことの技術的意義は、パレットとパレット位置決め台とを、テーパソケットの円錐当面とテーパーコーンの円錐当面とのテーパ係合、及び、パレット端面と位置決め台端面との当接密着という二面係合によって、高精密で強固なクランプ状態を達成することにあると認められる。
ところで、刊行物2には、例えば、NCロータリーテーブルの取付凹部内壁(5)の斜面とグリップホルダー(1)の挿入テーパー部(2)の斜面との嵌合、及び、テーブルの取付面(4)とグリップホルダー(1)の後面(9)との当接と、テーブルとグリップホルダー(1)とを二つの面で接着させるために、挿入テーパー部(2)の基部内外周に逃げ溝(10)を穿設して、挿入テーパー部(2)を内外方向に弾性を有するものとするとの発明が記載されており、ここで、取付凹部内壁(5)の斜面と挿入テーパー部(2)の斜面との嵌合は、「テーパ係合」に相当し、取付面(4)と後面(9)との当接は、「端面間の当接密着」に相当するものである。
また、刊行物2記載の発明では、挿入テーパー部(2)を内外方向に弾性を有するものとするために、挿入テーパー部(2)の基部内外周に逃げ溝(10)を穿設しているが、挿入テーパー部(2)に内空部を設けても、挿入テーパー部(2)を内外方向に弾性を有するものとできることは、当業者にとって自明である。
そして、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の事項が、「工作機械」という技術分野及び「二つの部材を位置決めクランプする」という課題で共通することから、刊行物1記載の発明に刊行物1記載の発明を組み合わせること、また、その際、テーパコーンに内空部を設けて、内外方向に弾性を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明の作用効果は、刊行物1、2記載の発明から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-09 
結審通知日 2006-02-09 
審決日 2006-02-21 
出願番号 特願平6-321254
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23Q)
P 1 8・ 572- Z (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 泰二郎田村 嘉章  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 菅澤 洋二
佐々木 正章
発明の名称 パレットの着座装置  

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