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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1134102
審判番号 不服2003-22532  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-20 
確定日 2006-04-03 
事件の表示 特願2000-286111「1対1スクリーニングを採用するハーフトーン方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月27日出願公開、特開2001-119580〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成12年9月20日(パリ条約による優先権主張1999年9月20日、米国)の出願であって、平成15年8月12日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年11月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の発明は、平成15年7月10日付けで補正された明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されたものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 階調を有するソース画素を複数含むソース画素画像部分から解像度を上げてハーフトーニング処理された画素画像を生成する方法であって、
(a)解像度を上げることにより各ソース画素に対応するマトリクスの集合を生成するステップと、
(b)該解像度を上げられたマトリクスの集合中のそれぞれのマトリクスの閾値と、対応するソース画素の階調出力値とを関連付けて、該マトリクスを構成するハーフトーンセルのそれぞれにハーフトーンドットを入れるか入れないかを前記ソース画素の階調出力値により決めるステップであって、隣接するソース画素間において前記ソース画素の境界からの距離関係によって優先度値を決定し、該優先度値に従う画素値を前記ハーフトーンセルのそれぞれに割当てるステップと、
(c)前記マトリクスの集合を用い、前記マトリクスを前記ソース画素のそれぞれに対して配置し、前記ソース画素のそれぞれに対してステップ(b)を繰返すステップであって、前記ソース画素のそれぞれに前記解像度を上げられたマトリクスの集合を使用して、結果的に得られる画素の階調誤差を低減するように、前記解像度を上げられた画素の集合を生成するステップとを含むことを特徴とする方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-37081号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)
「【請求項1】 1画素当たりn階調の画像情報を1画素当たりm階調のA×B倍に画素数を増加した画像情報に変換する画像処理装置であって(n、mは、n>m≧2を満足する自然数)、
n階調の画像情報を、各画素毎に、p階調(ただし、n>p>m)の画像情報にスカラー量子化する量子化手段と、
前記量子化手段からのp階調の画像情報をC画素単位(C≧2)で、pのC乗未満の符号に圧縮して符号化する符号化手段と、
前記符号化手段からの符号を送信する送信手段と、
前記送信手段により送信された符号をC画素単位で復号化する復号化手段と、
前記復号化手段により復号された復号信号を基に、各画素m階調のパターンを出力する濃度パターン法を実行する濃度パターン手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 前記符号化手段は、
ブロック内の量子化値の量子化係数をC画素分加算して第1の符号を作成する加算符号化手段と、
ブロック内のC画素分の、量子化係数のベクトル情報を量子化して第2の符号を割り当てるベクトル符号化手段と、により成ることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】 量子化係数の特徴量を評価する評価手段と、
前記評価結果を基に、第1の符号化、もしくは、第2の符号化のどちらか一方を選択する選択手段を有し、
第1の符号を、第2の符号を混在して送信することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】 前記濃度パターン手段は、
第1の符号の復号値とA×B×C画素の配置マトリクスの各閾値とを比較する第1の比較手段と、
第2の符号のC画素分の復号値を基に、C画素分の各画素をA×B画素の配置マトリクスの各閾値とを比較する第2の比較手段と、により成ることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。」(2頁左欄2行〜38行)

(イ)
「1画素当たりn階調の画像情報を入力して、1画素当たりm階調の(A×B)倍に画素数を増加した画像情報に変換する画像処理方法であって(n、mは、n>m≧2を満足する自然数)、n階調情報を、各画素毎に、p階調(ただし、n>p>m)の画像情報にスカラー量子化する量子化ステップと、p階調の画像情報をC画素単位(C≧2)で、pのC乗未満の符号に圧縮して符号化する符号化ステップと、符号化された画像情報をC画素単位で復号化する復号化ステップと、復号信号を基に、各画素m階調のパターンを出力する濃度パターン法を実行する出力ステップと、を有する画像処理方法を提供するものである。」(4頁左欄16行〜28行)

(ウ)
「【0030】濃度パターン法は、入力された値に応じて、所定のドットの数だけ、予め設定された配置においてドットを配していく方法である。この配置方法は、ディザ法と同様に、中心値からドットを配していく集中型、また、空間周波数が高くなるように分散してドットを配していく分散型等がある。
【0031】そして、ディザ法と異なる点は、入力信号に対する閾値信号が1対1ではなく、ひとつの入力に対して2値化された複数画素が出力される。その為、解像度変換と2値化が一度に実現できる。いま、拡大率を横A倍、縦B倍と仮定する。濃度パターン法により、作成された2値情報はプリンタエンジン113に送信され、出力される。
【0032】図7を基に、本実施例の符号化、及び2値化の様子を説明する。
【0033】図7において、拡大率A、BはA=B=4、パッキング画素数Cは、C=4とする。最終的な出力情報が2値であるならば、スカラー量子化の階調数pはA×B+1に設定するのが好ましい為、p=17とする。
【0034】図中、701は多階調の画像情報の一部分を示している。702は、ブロック情報であり、画像情報701をスカラー量子化して4画素にてパッキングした量子化係数を示している。各画素の量子化係数は0〜16まで取り得る。
【0035】いま、評価部104により、このパッキングしたブロックがその量子化係数により平坦部であると判断される。従って、加算符号化部106かスイッチ105により選択される。703は、この4画素の量子化係数を加算符号化部106にて加算して符号を割り当てた結果である(11+10+10+10=41)。
【0036】量子化係数は0〜16であるため、加算符号した結果は、0〜64までである。その為、いま、送信する符号量が、入力4画素で1バイトと仮定すると、図11に示した様に、0〜64までが加算符号化による符号、65〜255までをベクトル符号化による符号に割り振ることができる。
【0037】さて、図7の符号703において“41”と符号を割り当てられたパッキングの情報は、プリンタドライバからプリンタ側に送信され、濃度パターン変換部112にて2値化される。前述したように加算符号化のパッキングの2値化は、パッキングしたC画素単位(この場合は4画素単位)で、濃度パターン法を行なう。濃度パターン法は拡大率分の配置マトリクスが必要な為、704に示したような、A×B×C画素による濃度パターンの配置マトリクスを用いることになる。この配置マトリクス704は集中型の例を示しているが、これに限るわけではない。
【0038】この配置マトリクス704の情報と、“41”という符号から、濃度パターン変換部112は、705に示したドットパターンの2値情報を作成する。濃度パターンの実行は、拡大率が小さい場合には、全てLUT(ルックアップテーブル)にてパターンを作成できるが、拡大率が大きい場合には、配置マトリクスの各画素を閾値として各々“41”の信号と比較すれば、ディザ法と同様に、ドットがONかOFFかが判断でき、容易に2値情報が作成できる。」(5頁左欄26行〜同頁右欄32行)

したがって、(ア)、(イ)、(ウ)の記載及び図7から、引用例1には
「多階調の画像情報を2値の4×4倍に画素数を増加した画像情報に変換する画像処理方法において、多階調の4画素分の画像情報をスカラー量子化して4画素にてパッキングしたブロック情報702を得、このブロック情報を加算符号化して符号を得、符号を8×8画素による集中型の濃度パターンの配置マトリクスに設定された閾値と比較して2値情報を作成することにより、解像度変換と2値化を実現する画像処理方法」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

4.対比
引用発明1の「多階調の画像情報」は、本願発明の「ソース画素」に相当する。

引用発明1は、2×2のソース画素を8×8画素の2値情報に変換してプリンタに出力するものであり、ソース画素に比して2値情報の解像度が上げられている。また、引用発明1は、画素の階調を表す情報を集中型の濃度パターンの配置マトリクスに設定された閾値と比較して2値情報を作成するものであるが、この手法は擬似中間調処理として知られる手法である。本願発明の「ハーフトーニング処理」は擬似中間調処理を意味するから、引用発明1は「階調を有するソース画像を複数含むソース画素画像部分から解像度を上げてハーフトーニング処理された画素画像を生成する方法」であると認められる。
また、引用発明1は、2×2のソース画素のそれぞれについて8×8の2値情報が対応づけられており、2値情報からなる画像を8×8画素のマトリクスの集合とみることができるから、引用発明1は「解像度を上げることによりソース画素に対応する8×8画素のマトリクスの集合を生成」していると認められる。

引用発明1の「2値情報を作成する」ことは1画素が黒であるか白であるかの決定を行う処理であるから、本願発明の「ハーフトーンドットを入れるか入れないか」を決定することに相当する。
本願発明の「マトリクスを構成するハーフトーンセル」は、出願当初の明細書の【0017】の、「ハーフトーンセルは、ハーフトーンの基本的な繰り返しパターンを完全に表す画素の最小領域である」という記載からみて、ハーフトーニング処理された画素画像の1画素が格納される箇所であるといえる。デジタル画像処理の分野において、画像を画素のマトリクスとして格納し、取り扱うことは技術常識であるから、引用発明1においても2値情報がマトリクスの形で格納されているとするのが相当であり、2値情報の各画素が格納される箇所が本願発明の「ハーフトーンセル」に相当するといえる。

したがって、本願発明と引用発明1とを比較すると、
「階調を有するソース画素を複数含むソース画素画像部分から解像度を上げてハーフトーニング処理された画素画像を生成する方法であって、解像度を上げることにより各ソース画素に対応するハーフトーンセルにより構成されたマトリクスの集合を生成する」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明が「解像度を上げられたマトリクスの集合中のそれぞれのマトリクスの閾値と、対応するソース画素の階調出力値とを関連付けて、該マトリクスを構成するハーフトーンセルのそれぞれにハーフトーンドットを入れるか入れないかを前記ソース画素の階調出力値により決める」処理を行うのに対して、引用発明1は、2×2画素分のソース画素の階調出力値をスカラー量子化して2×2画素にてパッキングしたブロック情報を得、このブロック情報を加算量子化して符号を得、符号を8×8画素による集中型の濃度パターンの配置マトリクスに設定された閾値と比較して、ハーフトーンドットを入れるか入れないかを決定する点。

(相違点2)
本願発明が「隣接するソース画素間において前記ソース画素の境界からの距離関係によって優先度値を決定し、該優先度値に従う画素値を前記ハーフトーンセルのそれぞれに割り当てる」のに対して、引用発明1は「集中型の濃度パターンの配置マトリクスに設定された閾値」を用いて2値化処理を行う点。

5.判断
上記相違点について検討する。

(相違点1)について
ブロックを構成する各画素の階調出力値をそのまま閾値マトリクスの対応する閾値と比較して2値化処理を行うことは、原審で示された特開平11-8766号公報に記載されているように周知な事項である。すなわち、同公報3頁左欄11行から17行に「3倍密画像技術を用いたレーザプリンタ等では、3倍の階調数を得るために、図12(b)に示すように、1画素(ピクセル)を3つに分割した閾値マトリクス55を導入し、まず、図12(a)に示したドットマトリクス状に展開された階調データ54の各画素の濃度を、1ピクセルあたり3回、閾値マトリクス55の対応する各閾値と比較」することが記載されている。
してみると、引用発明1において、ソース画素の階調出力値を閾値マトリクスの対応する閾値と比較してハーフトーンセルのそれぞれにハーフトーンドットを入れるか入れないかを決定するよう構成することは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2)について
引用発明1の8×8画素からなる配置マトリクス704は、2×2画素からなるソース画素に対応づけられており、配置マトリクス704の中心は2×2画素からなるソース画素の境界に位置している。図7の配置マトリクス704に具体的に示される閾値はこの中心からの距離が小さいものほど小さい値となっており、閾値を設定する際に中心からの距離に応じて順序づけられて設定されたとみることができる。
よって、この「順序」は本願発明の優先度値に相当する。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明1から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-09 
結審通知日 2005-11-11 
審決日 2005-11-22 
出願番号 特願2000-286111(P2000-286111)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加内 慎也  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 岡本 俊威
田中 幸雄
発明の名称 1対1スクリーニングを採用するハーフトーン方法  
代理人 有原 幸一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  

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