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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1134230
審判番号 不服2003-19032  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-29 
確定日 2006-04-10 
事件の表示 平成 9年特許願第 32860号「情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月21日出願公開、特開平10-222573〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年1月31日の出願であって、平成15年8月26日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年9月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月29日付で手続補正書が提出されている。
これに対し、当審において平成17年11月28日付で審尋が行われ、平成18年1月30日付で回答書が提出されたものである。

2.平成15年10月29日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月29日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1) 本件手続補正
平成15年10月29日付の手続補正は、平成15年6月2日付手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)について、次のとおり(以下、「補正後の請求項1」という。)補正すること(以下、「本件補正」という。)を含むものである。
(補正前の請求項1)
「電子メールの作成支援を行ない、その電子メールにユーザー個人の行動予約内容を識別可能な属性情報を付与して送受信する電子メール処理手段と、
前記ユーザー個人の行動予約内容を含むスケジュールデータを記憶し、そのスケジュールデータの行動予約内容を行動予約リストとして表示可能に管理するスケジュール管理手段と、
前記電子メール処理手段の処理動作に対応して前記スケジュール管理手段のスケジュールデータの内容を操作するデータ制御手段と、を具備し、
前記データ制御手段は、前記電子メール処理手段により前記電子メールが送受信された場合、その電子メールに前記属性情報が付与されていれば該属性情報で識別される前記行動予約内容を前記スケジュール管理手段のスケジュールデータとして前記行動予約リストに登録する手段を有することを特徴とする情報処理装置。」

(補正後の請求項1)
「電子メールの作成支援を行ない、その電子メールのデータにユーザー個人の行動予約内容を識別可能な属性情報を付与して送受信する電子メール処理手段と、
前記ユーザー個人の行動予約内容を含むスケジュールデータを記憶し、そのスケジュールデータの行動予約内容を行動予約リストとして表示可能に管理するスケジュール管理手段と、
前記電子メール処理手段の処理動作に対応して前記スケジュール管理手段のスケジュールデータの内容を操作するデータ制御手段と、を具備し、
前記データ制御手段は、
前記電子メール処理手段により前記電子メールが送受信された場合、その電子メールのデータに前記属性情報が付与されていれば該属性情報で識別される前記行動予約内容を前記スケジュール管理手段のスケジュールデータとして前記電子メールのデータに対応付けて前記行動予約リストに登録する手段と、
前記電子メール処理手段により前記スケジュールデータの行動予約内容で示される行動の実行に応じた処理が行われた場合、前記電子メールのデータとこれに対応付けて登録された前記スケジュールデータとに基づいて、該行動予約内容で示される行動が実行済みである旨の識別情報を前記スケジュールデータに付与して前記行動予約リストを更新する手段とを有することを特徴とする情報処理装置。」

(2) 本件補正が、特許法第17条の2第4項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。))に規定される事項を目的とするものでないことは明らかである。

(3) 本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項である、特許請求の範囲の減縮(同法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものであるか否かについて検討する。
本件補正は、補正前の請求項1に「前記電子メール処理手段により前記スケジュールデータの行動予約内容で示される行動の実行に応じた処理が行われた場合、前記電子メールのデータとこれに対応付けて登録された前記スケジュールデータとに基づいて、該行動予約内容で示される行動が実行済みである旨の識別情報を前記スケジュールデータに付与して前記行動予約リストを更新する手段」という「発明を特定するために必要な事項」を追加する補正を含むものであり、これは、「発明を特定するために必要な事項」をさらに「限定」するための補正(請求項の限定的減縮)には該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項である、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。

(4) 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年10月29日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年6月2日付手続補正書により補正された、前記「2.(1)(補正前の請求項1)」に記載されたとおりのものである。

4.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された、特開平4-172835号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に下記(ア)ないし(カ)の事項が記載されている。

(ア) 「本発明は、電子メールシステムに係り、例えば往復メールに対して返答をだす場合のように、特にある期日に、あるいは期日までに応答を行う必要がある場合のスケジュール管理に好適な電子メールシステムに関する。」(1ページ右下欄15〜19行目)

(イ) 「第2図は本発明により電子メールに付加されるスケジュール情報のフォーマット例である。第2図において、201には『your-action』『my-action』の別(受能動の別)を記入する。」(3ページ左下欄11〜14行目)

(ウ) 「第4図は記憶装置113内に用意されるスケジュールカレンダーの構成例を示したものである。第4図において、400-1は『my-actionスケジュールカレンダー』、400-2は『your-action スケジュールカレンダー』である。スケジュールカレンダー400-1、400-2の1つのローは電子メールにおける1つのスケジュール情報に対応する。」(3ページ右下欄13〜20行目)

(エ) 「第5図は電子メール受信時のスケジュールカレンダー登録手順のフローチャートである。受信メールにスケジュール情報が含まれているか判定し(ステップ501)、含まれていない場合には、該受信メールを単に蓄積するなどして終了となる。受信メールにスケジュール情報が含まれている場合は、まず、1つ目のスケジュール情報を取り出し(ステップ502)、そのaction別の欄が『my-action』か『your-action』か判定し(ステップ503)、『my-action』の場合は該スケジュール情報を『your-actionスケジュールカレンダー』に登録し(ステップ504)、『your-action』の場合は、該スケジュール情報を『my-actionスケジュールカレンダー』に登録する(ステップ505)。その後、受信メールに更にスケジュール情報が含まれているかどうか判定し(ステップ506)、含まれている場合は次のスケジュール情報を取り出し(ステップ507)、ステップ503以降の処理を繰り返すこととなる。」(4ページ右上欄4行目〜左下欄2行目)

(オ) 「第8図は電子メール発信時のスケジュールカレンダー登録手順のフローチャートである。発信メールにスケジュール情報が含まれているか判定し(ステップ801)、含まれていない場合には、該当録処理を行わない。発信メールにスケジュール情報が含まれている場合には、まず、1つ目のスケジュール情報を取り出し(ステップ802)、そのaction別の欄が『my-action』か『your-action』か判定し(ステップ803)、『my-action』の場合は該スケジュール情報を『my-actionスケジュールカレンダー』に登録し(ステップ804)、『your-action』の場合は該スケジュール情報を『your-actionスケジュールカレンダー』に登録する(ステップ805)。その後、発信メールに更にスケジュール情報が含まれているかどうか判定し(ステップ806)、含まれている場合は次のスケジュール情報を取り出し(ステップ807)、ステップ803以降の処理を繰り返すこととなる。」(4ページ右下欄19行目〜5ページ左上欄16行目)

5.対比
本願発明と、引用例に記載された発明を対比する。
前記「4.(ア)」で引用したように、引用例には「電子メールシステム」であると記載されており、引用例に記載された発明は、本願発明と同様、「電子メールの作成支援」を行う発明である。
前記「4.(イ)」で引用したように、引用例には「第2図は本発明により電子メールに付加されるスケジュール情報のフォーマット例である。第2図において、201には『your-action』『my-action』の別(受能動の別)を記入する。」と記載されている。
引用例の第2図の「スケジュール情報」のフォーマットにおける「your-action」「my-action」の別(受能動の別)は、本願発明の「ユーザー個人の行動予約内容を識別可能な属性情報」に相当するので、引用例で「電子メールにスケジュール情報として、『your-action』『my-action』の別を付加すること」は、本願発明の「その電子メールのデータにユーザー個人の行動予約内容を識別可能な属性情報を付与して送受信する」ことに相当する。
前記「4.(ウ)」で引用したように、引用例には「第4図は記憶装置113内に用意されるスケジュールカレンダーの構成例を示したものである。第4図において、400-1は『my-actionスケジュールカレンダー』、400-2は『your-action スケジュールカレンダー』である。スケジュールカレンダー400-1、400-2の1つのローは電子メールにおける1つのスケジュール情報に対応する。」と記載されている。
引用例の第4図の「スケジュールカレンダー400-1、400-2」における「1つのスケジュール情報に対応する1つのロー」は、本願発明の「スケジュールデータの行動予約内容」に相当するので、引用例の「スケジュールカレンダー400-1、400-2」が、本願発明の「行動予約リスト」に相当し、引用例の「スケジュールカレンダー400-1、400-2」を記憶する「記憶装置113」は、本願発明の「ユーザー個人の行動予約内容を含むスケジュールデータを記憶し、そのスケジュールデータの行動予約内容を行動予約リストとして管理するスケジュール管理手段」に相当する。
前記「4.(エ)」で引用したように、引用例には「電子メール受信時のスケジュールカレンダー登録手順のフローチャート(第5図)」が記載されている。これは、本願発明の「電子メール処理手段により電子メールが受信された場合、その電子メールに属性情報が付与されていれば該属性情報で識別される行動予約内容をスケジュール管理手段のスケジュールデータとして行動予約リストに登録する」ことに相当する。
また、前記「4.(オ)」で引用したように、引用例には「電子メール発信時のスケジュールカレンダー登録手順のフローチャート(第8図)」が記載されている。これは、本願発明の「電子メール処理手段により電子メールが送信された場合、その電子メールに属性情報が付与されていれば該属性情報で識別される行動予約内容をスケジュール管理手段のスケジュールデータとして行動予約リストに登録する」ことに相当する。
したがって、本願発明と引用例記載の発明は
「電子メールの作成支援を行ない、その電子メールにユーザー個人の行動予約内容を識別可能な属性情報を付与して送受信する電子メール処理手段と、前記ユーザー個人の行動予約内容を含むスケジュールデータを記憶し、そのスケジュールデータの行動予約内容を行動予約リストとして管理するスケジュール管理手段と、前記電子メール処理手段の処理動作に対応して前記スケジュール管理手段のスケジュールデータの内容を操作するデータ制御手段と、を具備し、前記データ制御手段は、前記電子メール処理手段により前記電子メールが送受信された場合、その電子メールに前記属性情報が付与されていれば該属性情報で識別される前記行動予約内容を前記スケジュール管理手段のスケジュールデータとして前記行動予約リストに登録する手段を有することを特徴とする情報処理装置。」で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
本願発明は「スケジュール管理手段」が「スケジュールデータの行動予約内容を行動予約リストとして表示可能に管理する」のに対し、引用例には、「my-actionスケジュールカレンダー(400-1)」、「your-action スケジュールカレンダー(400-2)」を「表示可能」にすることが記載されていない点。

6.当審の判断
前記相違点について検討する。
前記「4.(ア)」で引用したように、引用例は「スケジュール管理に好適な電子メールシステム」に関する発明であり、「my-actionスケジュールカレンダー(400-1)」、「your-action スケジュールカレンダー(400-2)」を表示することは、自明であるといえる。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.審尋に対する回答書について
最後に、回答書の内容について、検討しておく。
審判請求人は、回答書の「3-a)特許請求の範囲の補正案」において、特許請求の範囲の補正案を提示し、「3-c)本願発明と引用文献との対比」において、「たとえば、引用文献1(注:本審決中の「引用例」と同じ文献。)では、スケジュールカレンダーからスケジュール情報を自動削除する場合、復メールの作成後、スケジュールカレンダーから対応するスケジュール情報を指定した上で、発信要求を行う操作が必須である(185頁右下欄第3行〜10行)。 これに対し、本願発明では、電子メール処理のみで行動予約リストのスケジュールデータの内容を登録及び更新するようにしているため、スケジュールデータをわざわざ指定しなくても、電子メール処理のみで行動予約リストの対応するスケジュールデータの内容を更新することが可能である。したがって、本願発明は、引用文献1から容易に想到し得るものではないと思料する。」旨主張している。
確かに、引用例5ページ右下欄7〜17行目には「復メールを作成したユーザは、『my-actionスケジュールカレンダー』からその復メールに対応するスケジュール情報を指定し、発信要求を行う。…中略…。その後、『my-actionスケジュールカレンダー』内から指定されたスケジュール情報を削除する(ステップ1203)。」と記載されている。
このことから、引用例には、復メールを発信する際、ユーザが「my-actionスケジュールカレンダー」から、その復メールに対応するスケジュール情報指定することで、対応するメールのスケジュール情報を削除する発明、が開示されているといえる。
しかしながら、引用例5ページ右下欄18行目〜6ページ左上欄9行目には「第13図は、この復信メールの受信時のスケジュール情報の削除処理手順を示したものである。受信要求により起動されると、受信メールのイベント識別領域からIDを取出し(ステップ1301)、『your-action スケジュールカレンダー』内から受信したメールに対応するスケジュール情報を探し出す(ステップ1302)。そして、なかった場合は…中略…、あった場合は、そのスケジュール情報を『your-action スケジュールカレンダー』から削除する(ステップ1303)」と記載されているように、復信メールの受信時に、「your-action スケジュールカレンダー」から、対応するメールのスケジュール情報を自動的に削除する発明、も開示されている。
一般的に、システムの自動化は、当業者であれば、当然考えることであり、引用例記載の発明において、復信メールの受信時のみならず、復メールの発信時にも、「my-actionスケジュールカレンダー」から、対応するメールのスケジュール情報を自動的に削除するように構成することは、当業者であれば、容易に実施できる程度のものにすぎない。
したがって、仮に、回答書の「3-a)特許請求の範囲の補正案」における補正案のとおり特許請求の範囲が補正されたとしても、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである点に変わりはなく、審決の結論に変更はない。

8.むすび
以上のとおり、本願発明は引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-16 
結審通知日 2006-02-17 
審決日 2006-02-28 
出願番号 特願平9-32860
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 幸一  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 鈴木 明
岡本 俊威
発明の名称 情報処理装置  
代理人 山下 穣平  

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