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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B02B |
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管理番号 | 1134256 |
審判番号 | 不服2001-5043 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-10-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-04-03 |
確定日 | 2006-04-12 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 67203号「無人籾摺精米施設」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月 8日出願公開、特開平 8-257422〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯及び本願発明 本願は、平成7年3月27日の出願であって、平成13年2月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年4月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年4月27日付けで手続補正がなされたものである。 【2】平成13年4月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成13年4月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成13年4月27日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「一対の籾摺ロールを有する籾摺装置と、玄米を精白処理する精米装置と、籾摺精米作業又は玄米精米作業を選択する作業選択手段とを備え、籾摺装置と精米装置とを直列に接続し、籾又は玄米を上記籾摺装置を通過して精米装置に供給すべく構成するものであって、上記作業選択手段が籾摺精米作業を選択するときは籾摺モータの検出負荷電流値と設定電流値との比較によりロール間隙制御モータを正逆転しながら籾摺ロールの一方を他方に対して遠近に移動させて籾摺ロールの間隙を籾摺作業に適した所定の間隙に設定する一方、前記作業選択手段が玄米精米作業を選択するときは当該ロール間隙制御モータにより籾摺ロール間隙を開いて籾摺ロールの間隙を前記籾摺作業用の間隙よりも広い間隙となし籾摺されない状態に拡開調節すべく制御手段を設けてなる無人籾摺精米施設。」(以下、「補正発明」という。) と補正された。 2.補正の適否の検討 前記本件補正の請求項1に関する補正は、【請求項1】に記載された発明を特定する事項である「一対の籾摺ロールを有する籾摺装置と、玄米を精白処理する精米装置と、籾摺精米作業又は玄米精米作業を選択する作業選択手段とを備え」の事項を、「一対の籾摺ロールを有する籾摺装置と、玄米を精白処理する精米装置と、籾摺精米作業又は玄米精米作業を選択する作業選択手段とを備え、籾摺装置と精米装置とを直列に接続し、籾又は玄米を上記籾摺装置を通過して精米装置に供給すべく構成するものであって」と限定的に特定するものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年改正前特許法第17条の2第4項の規定において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。 【3】引用例に記載の発明 1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された実願昭60-123007号(実開昭62-31939号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。 「この考案は、籾の場合には、籾摺りしてから精穀部に玄米を供給し、玄米の場合には籾摺りしないで精穀部に供給することによって、精穀部の精穀処理の能率を高めようとするものであって、・・・・ 即ち、精穀屋(1)内に、籾摺部(2)と精穀部(3)と籾・玄米を判別する判別センサ(4)を設けてなる穀粒供給部(5)とを設け、該判別センサ(4)が供給穀粒を籾と判断したときは籾摺部(2)で籾摺りしてから精穀部(3)へ穀粒を搬送し、玄米と判断したときは籾摺りしないで精穀部(3)へ穀粒を搬送するべく構成してなる精穀装置の構成とする。」(第2頁第6〜18行) 「該機械室(9)内には、回転可能に架設した一対の脱ぷロール(15)(16)を上部に備え、・・・・風選室(18)を下部に備えてなる籾摺部(2)を設けている。なお、該脱ぷロール(16)は他ロール(15)に対してロール間隙をモータ(23)で調節可能に設けている。すなわち、判別センサ(4)が籾と判別したときは、ロール間隙を狭く、玄米と判別したときは籾摺出来ないロール間隔に開ける。」(第4頁第8〜16行) 「穀粒供給部(5)に穀粒を供給すると、判別センサ(4)はこの穀粒が籾か玄米か判別する。この穀粒が籾であると判別された場合には、・・・・ホッパ(19)内に供給され、そして、籾摺部(2)の脱ぷロール(15)(16)で籾摺りされてから・・・・回収された摺落米は、一側に送られてからスロワ(21)でもって揚穀されホッパ(22)内に供給される。そして、精穀部(3)の精穀筒(12)内に落下し、ここで、回転する精穀ロール(13)で精穀処理を受けた後、回収漏斗(31)内に排出される。」(第6頁第5〜19行) 「玄米と判別された場合には、マイクロコンピュータから駆動指令信号を受けたモータ(23)は駆動して、脱ぷロール(16)を籾摺処理が出来ない所まで移動させ・・・・ホッパ(19)内に送り込まれた玄米は、脱ぷロール(15)(16)間を素通りして風選室(18)内に落下し、・・・・スロワ(21)でもってホッパ(22)内に供給されて精穀筒(12)内に落下し、ここで精穀ロール(13)で精穀処理を受け」(第7頁第4〜16行) 以上の記載から、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1に記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 <引用例1に記載の発明> 「脱ぷロール15、16を有する籾摺部2と玄米を精穀処理する精穀部3と、判別センサ4及びマイクロコンピュータとを備え、判別センサ4が籾か玄米か判別し、籾の場合は、マイクロコンピュータからの駆動指令信号でモータ23を駆動し、脱ぷロール16を他ロール15に対しロール間隙を狭くするように移動して籾摺処理を行い、玄米の場合は、マイクロコンピュータからの駆動指令信号でモータ23を駆動し、脱ぷロール16を他ロール15に対しロール間隙を籾摺処理が出来ない所まで移動してロール間を素通りさせ、その後、籾摺部2からスロワ21でもって精穀部3に供給されて精穀処理を行うようにした、精穀装置。」 2.また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開平5-245399号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。 「【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】無人の籾摺精米装置が近年普及しつつあり、この形態では利用者が所定の籾を持込み、装置に組み込むコイン投入口に所定金額のコインを投入することによって一定時間籾摺精米各部が自動的に運転開始するとともに当該金額に見合う時間だけ運転継続すると停止する構成である。 この発明は、上記の無人籾摺精米装置における設置面積を極力小さくし敷地の有効利用をはかる。」(段落【0002】〜【0003】) 「・・・・これら脱ぷロール24,25は異なる周速差で回転し、うち一方のロール24が他方のロール25に対して遠近に移動可能の構成であり、脱ぷロール24は揺動部材26に支持されこの揺動部材26先端側に螺合する調節螺杆27を制御モータ28の正逆転によって固定側ロール25に対して遠近移動しそれとの間隔を広狭に変更できる構成としている。・・・・」(段落【0008】) 「・・・・前記操作室3側操作盤6は、その盤面に、・・・・もみ・こめ選択ボタン43a・43b、・・・・等を配設し、・・・・、この操作盤6の内部には各部駆動モータの駆動制御を行なうマイクロコンピュータを備えている。 上記マイクロコンピュータの演算制御部(CPU)49には、・・・・もみ・こめ選択情報、籾摺機10の駆動モータ34の負荷電流検出器50の検出情報信号、クロック信号等が入力される。一方出力情報としては・・・・ロールール間隙制御モータ28の正逆転指令信号等がある。」(段落【0011】〜【0012】) 【4】対比・判断 1.補正発明と引用例1に記載の発明との対比 補正発明と引用例1に記載の発明とを対比すると、引用例1に記載の発明の「脱ぷロール15、16を有する籾摺部2」、「玄米を精穀処理する精穀部3」、「モータ23」が、補正発明の「一対の籾摺ロールを有する籾摺装置」、「玄米を精白処理する精米装置」、「ロール間隙制御モータ」にそれぞれ相当する。 また、引用例1に記載の発明の「判別センサ4」は、籾か玄米かを判別し、籾摺処理するか籾摺処理出来ないようにするかを選択し、籾摺部2でいずれかの作業を行った後、精穀部3に送られ精穀処理を行うようにしたものであるから、補正発明の「籾摺精米作業又は玄米精米作業を選択する作業選択手段」に相当し、引用例1に記載の発明の「籾の場合は、マイクロコンピュータからの駆動指令信号でモータ23を駆動し、脱ぷロール16を他ロール15に対しロール間隙を狭くするように移動して籾摺処理を行」う点、及び「玄米の場合は、マイクロコンピュータからの駆動指令信号でモータ23を駆動し、脱ぷロール16を他ロール15に対しロール間隙を籾摺処理が出来ない所まで移動し」が、補正発明の「籾摺精米作業を選択するときは・・・ロール間隙制御モータ・・・籾摺ロールの一方を他方に対して・・・移動させて籾摺ロールの間隙を・・・所定の間隙に設定する」点、及び「玄米精米作業を選択するときは当該ロール間隙制御モータにより籾摺ロール間隙を開いて籾摺ロールの間隙を前記籾摺作業用の間隙よりも広い間隙となし籾摺されない状態に拡開調節」する点に相当し、引用例1に記載の発明の[マイクロコンピュータ]は、「脱ぷロール16」と「他ロール15」とを籾摺処理を行う間隙と籾摺処理が出来ない間隙とに制御を行う点で、補正発明の「制御手段」に相当する。 さらに、引用例1に記載の発明の「籾」や「玄米」を「籾摺部2からスロワ21でもって精穀部3に供給」するから、補正発明と同様「籾摺装置と精米装置とを直列に接続」し「籾又は玄米を上記籾摺装置を通過して精米装置に供給すべく構成」するものである。 そして、引用例1に記載の発明の「精穀装置」の各機器は精穀屋内に設けられ、自動で籾摺処理や精穀処理が行われるから、補正発明と同じく「無人籾摺精米施設」を構成している。 してみると、引用例1に記載の発明と補正発明とは 「一対の籾摺ロールを有する籾摺装置と、玄米を精白処理する精米装置と、籾摺精米作業又は玄米精米作業を選択する作業選択手段とを備え、籾摺装置と精米装置とを直列に接続し、籾又は玄米を上記籾摺装置を通過して精米装置に供給すべく構成するものであって、上記作業選択手段が籾摺精米作業を選択するときはロール間隙制御モータで籾摺ロールの一方を他方に対して移動させて籾摺ロールの間隙を所定の間隙に設定する一方、前記作業選択手段が玄米精米作業を選択するときは当該ロール間隙制御モータにより籾摺ロール間隙を開いて籾摺ロールの間隙を前記籾摺作業用の間隙よりも広い間隙となし籾摺されない状態に拡開調節すべく制御手段を設けてなる無人籾摺精米施設。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 籾摺精米作業を行う場合、補正発明は、制御手段が籾摺モータの検出負荷電流値と設定電流値とを比較して、ロール間隙制御モータを正逆転しながら籾摺ロールの間隙を籾摺作業に適した所定の間隔に設定するように制御を行うのに対し、引用例1に記載の発明は、制御手段がそのような機能を備えているか否か定かでない点。 2.相違点についての検討 <相違点について> 籾摺精米作業を行う際、籾摺モータの検出負荷電流値と設定電流値との比較により正逆転しながら籾摺ロールの間隙を籾摺作業に適した所定の間隙に制御を行う点は、当該技術分野において、特開昭63-232858号公報、特開平7-16478号公報、特開平6-154626号公報、特開平2-122835号公報にも記載されているように、従来周知の技術である。 そうすると、引用例1に記載の発明の、ロール間隙制御モータに籾摺精米作業、玄米精米作業の作業選択の制御を行う制御手段に、上記周知技術を適用し、補正発明の相違点に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。 ところで、引用例1に記載の発明の作業選択手段が籾か玄米かの判別をする判別センサ4である点で、補正発明の作業選択手段(発明の詳細な説明によれば、籾選択ボタン43a,玄米選択ボタン43b)との間に構成の相違があるとしても、補正発明のような選択ボタンによる作業選択手段は上記引用例2に記載されているところであるから、この点において補正発明が引用例1に記載の発明に比して格別なものであるということができない。 3.作用効果・判断 そして、補正発明における作用効果は、引用例1、2に記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。 したがって、補正発明は、引用例1、2に記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 【4】むすび 以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第4項の規定において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記「補正の却下の決定の結論」のとおり決定する。 【5】本願発明について 1.本願発明 平成13年4月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年8月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「一対の籾摺ロールを有する籾摺装置と、玄米を精白処理する精米装置と、籾摺精米作業又は玄米精米作業を選択する作業選択手段とを備え、該作業選択手段が籾摺精米作業を選択するときは籾摺モータの検出負荷電流値と設定電流値との比較によりロール間隙制御モータを正逆転しながら籾摺ロールの一方を他方に対して遠近に移動させて籾摺ロールの間隙を籾摺作業に適した所定の間隙に設定する一方、前記作業選択手段が玄米精米作業を選択するときは当該ロール間隙制御モータにより籾摺ロール間隙を開いて籾摺ロールの間隙を前記籾摺作業用の間隙よりも広い間隙となし籾摺されない状態に拡開調節すべく制御手段を設けてなる無人精米籾摺精米施設。」 2.引用例に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記【3】に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、補正発明から前記「【2】2.」で検討した限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに、上記限定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「【4】2.」に記載したとおり、引用例1、2に記載の発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 【6】むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載の発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-11-04 |
結審通知日 | 2005-11-29 |
審決日 | 2006-02-03 |
出願番号 | 特願平7-67203 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B02B)
P 1 8・ 121- Z (B02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 一ノ瀬 薫、鳥居 稔、氏原 康宏 |
特許庁審判長 |
伊波 猛 |
特許庁審判官 |
林 晴男 辻野 安人 |
発明の名称 | 無人籾摺精米施設 |