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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1134259
審判番号 不服2002-3  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-04 
確定日 2006-04-12 
事件の表示 平成10年特許願第145186号「遊技機における監視システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月24日出願公開、特開平11-319281〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年5月12日の出願であって、平成13年11月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年1月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年1月30日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年1月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年1月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。
「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示装置と、遊技球の入賞が可能、または、不可能に変換される可変入賞装置と、前記複数の図柄が変動停止し、確定したときの図柄組み合わせに予め定められた大当り図柄が得られた場合、前記可変入賞装置を入賞が可能となるように制御する制御基板とを備えた遊技機において、
確率変動中を除いて、大当りが、図柄の変動確定回数が所定回数以下で得られた場合を不正行為により得られた大当りの可能性が高いと判断する不正行為判断手段を設けて、該不正行為判断手段が不正行為と判断したときに制御基板から情報出力端子を経由してホールコンピュータに報知するように構成したことを特徴とする遊技機における監視システム。」
上記補正は、補正前の請求項1に係る発明を更に限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。

(2)特許法第29条の2について
(2-1)先願明細書記載の発明
本願の出願の日前の他の特許出願であつて当該特許出願後に発行された特願平9-226465号(特開平11-57185号参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下のことが記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、パチンコ遊技機などの遊技機において、連続して大当たりが出ている場合や、大当たりでないのに出玉が多い場合に、店員や周囲の客にその旨を知らせるようにした遊技機の不正判定方法及び不正判定装置に関する。」、
「【0002】
【従来の技術】昨今のパチンコ遊技機にあって、特にデジパチと称されるものでは、大当たりが設定されていて、大当たりになると、一気に多数の出玉を得ることができるようになっている。大当たりの確率は、各機種によってその設定が異なるが、1/200から1/250が主流となっている。例えば1/200の機種では、電源ON後に0から199までの数字を付した図柄確定回数カウンタがグルグルと回っていて、その内のある数字、例えば「7」が大当たりに設定されているとする。そして、パチンコ玉が回転入賞に入ったた瞬間に、図柄確定回数カウンタから一つの数値が取得される。その取得された数値が、上記の「7」と一致すれば、大当たりとなる。
【0003】さらにパチンコ遊技機には、特定の図柄で大当たりすると、次の大当たりまで大当たりの確率が増大変動する確率変動機と称されるものがある。確率変動機には、回転入賞口である始動用チューリップが備えられ、大当たりをすると、確率変動状態となって始動用チューリップがよく開くようになる。
【0004】このようなパチンコ遊技機にあっては、ホールコンピュータとの間でパチンコ玉の補給信号と回収信号とが入出力され、パチンコ玉の発射状況を店側がチェックすることができるようにされている。大当たりが続出していたり、大当たりでないのに出玉の数が多すぎるなど異常な出方をしていれば、不正行為が行われている可能性が高いと判断することができる。」、
「【0010】
【課題を解決するための手段】・・・第1の遊技機の不正判定方法は、大当たりの確率値と、大当たりと大当たりとの間に図柄確定回数カウンタが回った回数とを比較し、図柄確定回数カウンタの回転数が上記の大当たりの確率値よりも高い値となる回転数で大当たりが連続しているときに、不正行為が行われていると推定することを特徴とするものである。
【0011】上記の遊技機の不正判定方法によれば、所定の時間内で大当たりが出てから大当たりが出るまでの間に図柄確定回数カウンタが回った回数が、予め設定された通常時もしくは確率変動時の確率よりも高い値となる回転数で多く出ていれば、確率異常として不正行為が行われていると推定することができる。」、
「【0021】
【発明の実施の形態】この発明にかかる遊技機の不正判定装置及び不正判定方法を図1から図3を参照しながら説明する。遊技機の不正判定装置は図1に示すように、遊技機(図示せず)から出力されるパチンコ玉等の回収信号S1、パチンコ玉等の補給信号S2、図柄確定信号S3、大当たり信号S4及び確率変動信号S5をそれぞれ分岐器1によってワンチップマイクロコンピュータのような比較判定手段2に入力し、比較判定手段2が確率異常又は補給異常であるかどうかを判定し、異常であるときに店員やその遊技機の周囲の客に、異常であることを知らせるようにしたものである。上記の各信号S1,S2,S3,S4,S5は遊技機と出玉管理用のコンピュータ(図示せず)との間で入出力される。
【0022】比較判定手段2は、予め設定された大当たりの確率値と、大当たりと大当たりとの間に図柄確定回数カウンタが回った回数とを比較演算し、図柄確定回数カウンタの回転数が大当たりの確率値よりも高い値となる回転数で大当たりが連続して発生していないかによって確率異常を判定する。・・・
【0024】比較判定手段2には上記のような各種の信号に基づいて、不正行為が行われていると判定したときに、異常又は警報の信号を出力する出力制御部9を接続する。出力制御部9には警報手段10を接続する。」、
【0025】つぎに第1の遊技機の不正判定方法について図2を参照しながら説明する。第1の遊戯の不正判定方法は、大当たりが出ている確率異常であるかどうかを判定するものである。
【0026】予め、確率設定用のロータリースイッチ5によって大当たりの確率値Yが、例えば1/200と設定されているとする(ステップ1)。その後、大当たりが出たかどうかを判定する(ステップ2)。ここで、第1回目の大当たりX(1)から第2回目の大当たりX(2)までに図柄確定回数カウンタが回った回数、第2回目の大当たりX(2)から第3回目の大当たりX(3)までに図柄確定回数カウンタが回った回数というように、5回分の図柄確定回数カウンタが回った回数をカウントする(ステップ3)。この図柄確定回数カウンタが回った回数が、上記の確率値Yよりも小さな(Y未満の)頻度Nを算出する(ステップ4)。そして、この頻度Nが4以上であるかどうかを判定する(ステップ5)。・・・
【0028】そこで頻度Nが4以上であれば、確率異常表示灯14を点灯させ(ステップ6)、続けて第2の出力12によって警報を出す(ステップ7)。このように確率異常表示LEDが点灯され、注意を促す第2の出力12によって警報が出されると、大当たりが連続していることが店員及びその遊技機の周囲の客に知られる。」。

上記記載及び図面の記載及び技術常識からみて、上記先願明細書には、
「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示装置と、パチンコ玉の入賞が可能、または、不可能に変換される可変入賞装置と、前記複数の図柄が変動停止し、確定したときの図柄組み合わせに予め定められた大当り図柄が得られた場合、前記可変入賞装置を入賞が可能となるように制御する制御基板とを備える遊技機、及び、
所定の時間内で大当たりが出てから大当たりが出るまでの間に図柄確定回数カウンタが回った回数が、予め設定された通常時もしくは確率変動時の確率よりも高い値となる回転数で多く出る場合、不正行為が行われていると判定し、該比較判定手段2から出力制御部9を経由して警報手段10に報知するように構成した不正判定装置からなる不正判定方法」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

(2-2)対比・判断
そこで、本願補正発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「パチンコ玉」、「図柄確定回数カウンタが回った回数」、「比較判定手段2」、「出力制御部9」、「不正判定方法」が、それぞれ、補正発明1の「遊技球」、「図柄の変動確定回数」、「不正行為判断手段」、「情報出力端子」、「監視システム」に相当し、先願発明の「所定の時間内で大当たりが出てから大当たりが出るまでの間に図柄確定回数カウンタが回った回数が、予め設定された通常時または確率変動時の確率よりも高い値となる回転数で多く出る場合」とは、結局のところ、「大当りが、図柄の変動確定回数が所定回数以下で得られた場合」を意味するから、両者は、
「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示装置と、遊技球の入賞が可能、または、不可能に変換される可変入賞装置と、前記複数の図柄が変動停止し、確定したときの図柄組み合わせに予め定められた大当り図柄が得られた場合、前記可変入賞装置を入賞が可能となるように制御する制御基板とを備えた遊技機において、
大当りが、図柄の変動確定回数が所定回数以下で得られた場合を不正行為により得られた大当りの可能性が高いと判断する不正行為判断手段を設けて、該不正行為判断手段が不正行為と判断したときに制御基板から情報出力端子を経由して報知するように構成した遊技機における監視システム。」である点で一致し、次の点で一応相違する。
(相違点1)
不正行為判断手段が不正行為と判断し報知するのは、本願補正発明は「確率変動中を除いて」行うのに対し、先願発明は「通常時もしくは確率変動時」に行う点。
(相違点2)
不正行為判断手段が不正行為と判断したとき、本願補正発明が、「ホールコンピュータ」に報知するのに対し、先願発明は、警報手段10に出力する点。

上記相違点1を検討すると、先願明細書の【0011】に記載されているように、先願発明が不正行為と判断し報知するのは、通常時もしくは確率変動時のどちらかであるから、そのうち、一方の「通常時」すなわち「確率変動中を除いて」、不正行為と判断し報知することは、先願明細書に事実上記載されていることになる。

上記相違点2を検討すると、遊技機からの不正情報をホールコンピュータに報知することは一般に周知慣用であって、不正行為判断手段が不正行為と判断したとき、ホールコンピュータに報知することは設計上の微差にすぎず、先願明細書に記載されているに等しい事項である。

したがって、本願補正発明は、その出願の日前の他の特許出願であつて当該特許出願後に発行された先願発明と実質的に同一であり、しかも、その発明をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一でなく、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願の出願人とが同一の者でもないから、その発明については、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)特許法第29条第2項について
(3-1)刊行物の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-196722号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次のことが記載されている。
「【0002】
【従来技術】従来の遊技機の監視手段としては、各店舗が任意に各遊技機の回収玉数と補給玉数をカウントしておき、その状態をホールコンピュータで監視する方法が採られている。」、
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・さらに、プログラム作成時点において特殊プログラム(判断出来なかったバグ)が存在し、ある所定の条件下で大当たりを連続させるという不具合には対処できないでいた。ここである所定の条件下としては、互換部品によるプログラム起動タイミングのずれ、図柄変動開始の入賞タイミングによる大当り抽選の誤動作、大当たり時の大入賞口への入賞個数によるプログラムの暴走等が挙げられる。そこで、本発明はかかる従来技術の不都合に鑑みなされたもので、専用CPUによる制御だけではなく、抽選機による乱数発生が正規分布に従って正しく行われているか否かを大当たりの発生から次の大当たりの発生までに何回抽選が行われているか(大当り間隔)を監視することにより、大当たりの起こる確率が予め設定されたものから著しく逸脱していないかをチェックできるようにした。」、
「【0004】・・・(大当たりの間隔)不正改造等が施されている可能性のある遊技機は、極端に短い間隔で大当たりが連続する時や大当たりの間隔が極端に長い状態で連続する時が挙げられる。・・・本発明では、図柄停止することは抽選が行われたことを意味するので、大当たりの間隔をデータとして監視する数値は図柄停止回数を採用する。」、
「【0013】
【作用】本発明にかかる監視装置では、大当たり検知手段が遊技機の大当たりを検知してから次の大当たりの検知までの間に遊技機内において抽選される回数を監視用CPUでカウントしており、次の大当たりを検知した時点においてその数値(抽選回数)がRAMに格納される。そしてかかる大当たりが10回以上試行された時点において、RAMに格納された各事象毎の基準度数データと、実際に試行された後のRAMに格納された抽選回数データを各事象毎の頻度数に算出したものとが比較され、該頻度数データの少なくとも一つがRAMに格納された補正値データよりオーバーしている時に監視用CPUは遊技機を異常機と判断し、警報手段に対して警報表示したり装置を停止させたりする。」、
「【0014】
【実施例】以下に本発明を図示された実施例に従って詳細に説明する。図1及び図2において1は本発明にかかる遊技機監視装置であり、該装置は監視用CPU2と、該CPU2と接続された遊技機監視制御用プログラムが格納されたROM3と、前記CPU2と接続され遊技機に装着された抽選回数検知手段からの検知データ及び制御のための各確率事象毎の基準度数値が格納されるRAM4と、遊技機10の抽選回数のデータを監視用CPU2に入力するためのインターフェース8と、前記監視用CPU2と接続され遊技機の異常を表示器14に表示させるためのLEDドライバ16と、遊技機専用CPU6と通信信号のアイソレーションを行うためのフォトカプラーインターフェース18及びドライバ・レシーバ20とが接続されている。・・・」、
「【0015】・・・大当り監視回数Nを10回として計算したが、これに限定されるものではなく・・・」、
「【0022】大当たり監視処理は、図6に示すように遊技機の大当たりの発生時期をチェックすると共に本実施例では、前回の大当たりの発生から今回の大当たりの発生までの抽選信号を毎回遊技機専用CPUから送信される停止信号をCPU2が加算していき、RAM4に格納している。そして大当たりが発生した時点において、その抽選回数データをRAM4にメモリーさせる。本実施例では、RAM4には監視回数N(10)回分のデータを格納すると共に11回目のデータが入力される時に最も古い抽選回数データを消去した後に書き込むように設計されており、常にRAM4には10回分のデータが格納されることになる。
【0023】RAM4に10回分のデータが格納された状態で監視用CPU2は予め設定された10分割した事象に併せてヒストグラム若しくは頻度数を算出し、このデータが表1又は表2に示すように予め設定された整合表に記載されたRAM4の基準度数データ(補正値)よりも少ないか否か比較検討する(補正された2項分布のグラフより下方に位置すること)。その結果、ある監視状態の一つの事象において頻度数が補正値を越える時には、遊技機の抽選確率は異常であると判断し、表示器14の警報ランプ14bを点灯させるなどして遊技者及びパチンコホール側に警告を発する。・・・」、
「【0026】・・・二項分布式から予想される上限回数に所定の余裕を持たせて補正値を設定したものは、不正に抽選機を改造して連続的に大当りの確率を高めた遊技機を有効に監視することができる。」、
「【0028】【効果】以上述べたように本発明にかかる遊技機監視装置は、・・・ホールにとっても遊技者にとっても都合の良いものとなる。」。
【図1】には、図柄表示装置、可変入賞装置(大入賞口)が記載されている。

上記記載及び図面の記載及び技術常識からみて、上記刊行物には、
「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示装置と、遊技球の入賞が可能、または、不可能に変換される可変入賞装置と、前記複数の図柄が変動停止し、確定したときの図柄組み合わせに予め定められた大当り図柄が得られた場合、前記可変入賞装置を入賞が可能となるように制御する遊技機専用CPU6とを備えた遊技機、及び、
遊技機の大当たりを検知してから次の大当たりの検知までの間に遊技機内において抽選される回数を監視用CPUでカウントしており、次の大当たりを検知した時点においてその数値(抽選回数)がRAMに格納され、RAM4に10回分のデータが格納された状態で監視用CPU2は予め設定された10分割した事象に併せてヒストグラム若しくは頻度数を算出し、予め設定された整合表に記載されたRAM4の基準度数データ(補正値)よりも少ないか否か比較検討し(補正された2項分布のグラフより下方に位置すること)、その結果、ある監視状態の一つの事象において頻度数が補正値を越える時には、遊技機の抽選確率は異常であると判断する監視用CPU2を設けて、該監視用CPU2が異常と判断したときに遊技機専用CPU6からLED表示器14に表示するように構成した遊技機監視装置」の発明が記載されていると認められる。

(3-2)対比
そこで、本願補正発明と刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「遊技機専用CPU6」、「監視用CPU2」、「遊技機の抽選確率が異常と判断する」は、それぞれ本願補正発明の「制御基板」、「不正行為判断手段」、「大当りが、不正行為により得られた大当りの可能性が高いと判断する」に相当し、刊行物記載の発明は、遊技機と不正行為判断手段とからなる監視システムということができるから、両者は、
「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示装置と、遊技球の入賞が可能、または、不可能に変換される可変入賞装置と、前記複数の図柄が変動停止し、確定したときの図柄組み合わせに予め定められた大当り図柄が得られた場合、前記可変入賞装置を入賞が可能となるように制御する制御基板とを備えた遊技機において、
大当りが、不正行為により得られた大当りの可能性が高いと判断する不正行為判断手段を設けて、該不正行為判断手段が不正行為と判断したときに制御基板から報知するように構成した遊技機における監視システム。」である点で一致し、次の各点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明が、「大当りが、図柄の変動確定回数が所定回数以下で得られた場合を不正行為により得られた大当りの可能性が高いと判断する不正行為判断手段」を設けているのに対し、刊行物には、遊技機の大当たりを検知してから次の大当たりの検知までの間に遊技機内において抽選される回数を監視用CPUでカウントしており、次の大当たりを検知した時点においてその数値(抽選回数)がRAMに格納され、RAM4に10回分のデータが格納された状態で監視用CPU2は予め設定された10分割した事象に併せてヒストグラム若しくは頻度数を算出し、このデータが表1又は表2に示すように予め設定された整合表に記載されたRAM4の基準度数データ(補正値)よりも少ないか否か比較検討し(補正された2項分布のグラフより下方に位置すること)、その結果、ある監視状態の一つの事象において頻度数が補正値を越える時には、遊技機の抽選確率は異常であると判断する監視用CPU2を設けた点。
(相違点2)
本願補正発明が「確率変動中を除いて、不正行為判断手段が不正行為と判断し報知するように構成」したのに対し、刊行物記載の発明はこの点が明確でない点。
(相違点3)
本願補正発明が「情報出力端子を経由してホールコンピュータに報知する」のに対し、刊行物記載の発明はそのような構成がない点。

(3-3)判断
(相違点1)について
刊行物記載の発明は、遊技機の大当たりを検知してから次の大当たりの検知までの間に遊技機内において抽選される回数(本願発明でいう、図柄の変動確定回数)をカウントしており、一方、本願発明は、「大当りが、図柄の変動確定回数が所定回数以下で得られた場合」を検知していると認められるから、両者共に大当りから次の大当りまでの図柄の変動確定回数を検知している。また、本願明細書を参照して本願補正発明の実施例を検討すると、【0033】及び【0034】に記載されているように、図柄の変動確定回数が100回転以内で、何回、大当りが発生するかをカウントしており、刊行物記載の発明の「遊技機の大当たりを検知してから次の大当たりの検知までの間に遊技機内において抽選される回数(本願発明でいう、図柄の変動確定回数)」をカウントすることと、事実上同等のことを行っている。刊行物記載の発明は、上記カウントした値を更に、予め設定された10分割した事象に併せてヒストグラム若しくは頻度数を算出しているが、両者は、大当りの起こる時間間隔に基づいて不正行為を判断する点で共通している。
また、刊行物には「【0004】・・・(大当たりの間隔)不正改造等が施されている可能性のある遊技機は、極端に短い間隔で大当たりが連続する時や大当たりの間隔が極端に長い状態で連続する時が挙げられる。・・・」、「【0028】【効果】・・・ホールにとっても遊技者にとっても都合の良いものとなる。」との記載から、刊行物記載の発明は、ホール及び遊技者の両者のことに考慮して不正の判断を行っており、大当りの間隔が短ければ直接的には遊技者が得をし、大当りの間隔が長ければ直接的にはホールが得をすることを考えれば、変動確定回数の少ない領域での判断が一義的にはホールのために行われるものであり、変動確定回数の多い領域での判断が一義的には遊技者のために行われるものであることは、当業者にとって自明のことである。そして、刊行物に「【0026】・・・補正値を設定したものは、不正に抽選機を改造して連続的に大当りの確率を高めた遊技機を有効に監視することができる。」との記載があり、遊技メーカーの直接の顧客であるホールにとって大当りの間隔が短くなる不正の発見が重要な課題であることは周知であることに鑑みれば、変動確定回数の少ない領域、つまり、変動確定回数が所定回転数以下で得られた場合のみに着目して、不正行為の判断を行うものを設計することは、当業者であれば容易に想到できることである。
したがって、刊行物記載の発明において本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に発明をすることができたものである。

(相違点2)について
遊技機における監視システムにおいて、通常時の不正行為により得られた大当りの可能性が高いと判断する基準を設けた場合、確率変動時には通常時に比べ大当りになる確率が高くなることから、確率変動時は常に不正行為と判断されてしまう。これを解消するために、確率変動中は判断しないか、または、確率変動中は確率変動時とは別の基準を設けるかは、当業者であれば当然考慮することであって、そのどちらかを選択し、本願補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易に思い付く程度のことにすぎない。

(相違点3)について
遊技機の不正行為をホールコンピュータで監視することは従来から周知慣用である。このことは、上記刊行物に【0002】【従来技術】として記載されていることからも伺える。そして、刊行物記載の発明に該周知技術を適用する際に、遊技機に何らかの接続端子が設けられることは単なる設計的事項であるから、刊行物記載の発明において本願補正発明の相違点3に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

よって、本願補正発明は、刊行物記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするところ、本願補正発明が、その特許出願の際、独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成14年1月30日付けの手続補正が上記のとおり却下されたので、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年5月18日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「複数の図柄を変動表示可能な図柄表示装置と、遊技球の入賞が可能、又は、不可能に変換される可変入賞装置と、前記複数の図柄が変動停止し、確定した時の図柄組み合わせに予め定められた大当り図柄が得られた場合、前記可変入賞装置を入賞が可能となるように制御する制御基板とを備えた遊技機において、 大当りが、図柄の変動確定回数が所定回数以下で得られた場合を不正行為により得られた大当りの可能性が高いと判断する不正行為判断手段を設けて、該不正行為判断手段が不正行為と判断した時に制御基板から情報出力端子を経由してホールコンピュータに報知するように構成したことを特徴とする遊技機における監視システム。」

4.特許法第29条の2について
(1)先願発明
先願発明は、上記「(2-1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記本願補正発明から、「確率変動中を除いて」の構成要件を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をさらに限定して記載した本願発明の下位概念に相当する本願補正発明が前記「(2-2)」で対比・判断したとおり先願発明と同一であるから、本願発明も、同様の理由により先願発明と同一であると認められる。

5.特許法第29条2項について
(1)刊行物
原査定に引用され本願出願前に頒布された刊行物、及び、その記載事項は、前記「(3-1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記本願補正発明から「確率変動中を除いて」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「(3-3)」に記載したとおり、刊行物記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により刊行物記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-02 
結審通知日 2006-02-07 
審決日 2006-02-20 
出願番号 特願平10-145186
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 161- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 年彦澤田 真治  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 宮本 昭彦
林 晴男
発明の名称 遊技機における監視システム  

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