• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1134284
審判番号 不服2005-3469  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-12-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-28 
確定日 2006-04-12 
事件の表示 特願2001-228756「ステイオンタブの蓋を使った缶」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月18日出願公開、特開2002-362553〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成13年6月22日(優先日、平成13年1月5日、平成13年3月27日)の出願であって、平成17年1月26日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、
その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、当審で提出された全文補正明細書及び図面並びに平成16年2月10日付け手続補正書によって補正された図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「【請求項1】 缶蓋に設けられたタブの飲み口に接する部分と持ち上げる部分を、蓋の積層に支障のない範囲までシーソー状の上向きの形状にして、蓋面との間隙を設け、
缶蓋に設けられたタブの引っ掛かり等による回転を確実に制止するために、タブ中央のカシメ部分の横側に穴を設け、蓋面からの凸部をタブ平面よりも支障のない限り高くして、セットし、
蓋面からの凸部をタブにセットし、その凸部上部をリベットした缶において、
缶内の膨脹による蓋の膨れ上がりを制止するために、蓋面に何箇所かのリムを設けたことを特徴とするステイオンタブの蓋を使った缶。」にあるものと認められる。
なお、請求項1には、「タブ中央のカシメ部分」との記載は、
「缶蓋タブの引っ掛かり等による左右水平回転を確実に制止するために、中央カシメ部分の横側板(図7-8)に穴を設けて」(【0010】段落)との記載並びに【図5】及び【図7】の記載より、
タブの幅方向の中央のカシメ部分を意味するものと解釈して、本願発明を上記のように認定した。

2.引用刊行物に記載された発明
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-105870号 公報(以下、「引用例1」という。)には、以下a〜gの点が記載されている。
a.「【請求項1】 持上げ摘み片を缶蓋より上方に突設した支点に上下方向に傾動自在に支持させ・・・該他端を上方にカールさせたことを特徴とする飲料缶の開口装置。」(【特許請求の範囲】)
b.「本発明は、飲料缶の開口装置に関するものであり、特にビール、酒類、茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、乳清飲料等の飲料を詰めた飲料缶の缶蓋に飲み口を開口するための開口装置に係るものである。」(【発明の属する技術分野】)
c.「請求項1の飲料缶の開口装置においては・・・持上げ摘み片の他端を上方にカールさせているため、指先を持上げ摘み片の他端の下側に容易に入れることができる。従って、指先により持上げ摘み片の他端を持上げる作業は極めて容易なものとなる。」(【作用】)
d.「製缶時に巻締前の缶蓋を上下方向に積重ねることができるようにするためである(図5参照)。」(【0010】段落)
e.「【図5】本発明による開口装置を備えた缶蓋を積重ねた状態を示す断面図である。」(【図面の簡単な説明】)
f.図面【図5】には、開口装置を備えた缶蓋を積重ねた状態であって、
持上げ摘み片の他端を、缶蓋を積重ねた状態で、缶蓋の積重ねに支障のない範囲までカールして、缶蓋の上面との間隙を設けことが記載されている。
つまり、a〜fの記載から、
引用例1には、「持上げ摘み片を缶蓋より上方に突設した支点に上下方向に傾動自在に支持させ、持上げ摘み片の他端を上方にカールさせ、
持上げ摘み片の他端を上方にカールさせているため、指先を持上げ摘み片の他端の下側に容易に入れることができ、指先により持上げ摘み片の他端を持上げる作業が極めて容易なものであって、
持上げ摘み片の他端を、缶蓋を積重ねた状態で、缶蓋の積重ねに支障のない範囲までカールして、缶蓋の上面との間隙を設け、飲料缶」が記載されているものと認められる。

そうすると、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「缶蓋に支持させた持上げ摘み片の他端を、缶蓋の積重ねに支障のない範囲までカールして、缶蓋の上面との間隙を設け、
持上げ摘み片中央に缶蓋より上方に支点を突設し、たことを特徴とする持上げ摘み片の缶蓋を使った缶。」(以下、「引用例1発明」という)。

(2)同じく、原査定の拒絶の理由で引用された特開平7-285551号 公報(以下、「引用例2」という。)には、以下g〜nの点が記載されている。
g.「本発明は缶蓋および缶容器に関するものであり、特に、タブの廻り止めを施して開口ミスを防止し得るステイオン・タブ方式の缶蓋、および、それを用いた缶容器に関する。」(【産業上の利用分野】)
h.「ステイオン・タブ方式の缶蓋では、缶蓋本体を成形して軸部を形成することによりタブを缶蓋本体に装着する構造であるため、通常、一つの軸部でタブが缶蓋本体に支持されている。そのため、缶容器の搬送過程などで缶容器同士が接触したり、あるいは、缶に飲料物を装荷した後の製品輸送中や、製品を自動販売機に装荷した時に何かに当たるかなどしてタブに外力が作用すると、軸部を中心としてタブが回転する場合がある。」(【0005】)
i.「本発明は、上述した問題を解決し、陽圧容器を用いた缶においても、タブの回転を一層効果的に防止し、結果的に、開口ミスを回避できる、ステイオン・タブ方式の缶蓋を提供することにある。さらに本発明は、そのようなステイオン・タブ方式の缶蓋を用いた缶容器を提供することにある。」(【0008】)
j.「【0019】図1に示す缶蓋は缶蓋本体(エンド)1と突起としてのタブ3からなり・・・缶蓋本体1のほぼ中央には、タブ3を枢着するための軸部4が、缶蓋本体1の表面側に突出するようにディンプル加工およびコイニング加工によって、一体的に形成され、この軸部4にタブ3の固定部3cに形成された通孔3eを挿通させた後、軸部4の頭部を押し潰すことによりタブ3が缶蓋本体1に装着される。」(【0019】)
k.「例えば、図3(A)、(B)、(C)に示すように固定部3cをほぼ半円形状に切り欠くと共に、この切り欠きのエッジ3dに対面する、例えば、円形のディンプル部(ボス)5Bを形成してもよい。」(【0023】)
l.「図3、図7および図8に示す実施例のようにボスをディンプル部から構成する場合においては、・・・コイニング加工した頂部を押し潰してボス(ディンプル)の側壁5aと缶蓋の表面1aとのなす角度αをエッジ側で実質的に直角以下としているが、図10に図解したように、このディンプル部5をさらに押し潰して、タブの固定部3cを缶蓋の表面1aとの間で挟持するようにしてもよい。この場合には、タブが回転する余地はなく回転防止という意味で最も確実な実施例であると言える。」(【0031】)
m.「【図3】図3(A)は本発明のステイオン・タブ方式の缶蓋の第2実施例の缶蓋を示す平面図、(B)は(A)のB-B線に沿う断面図、(C)はディンプル部の他の実施例を示す要部断面図である。
【図10】本発明の缶蓋に内圧が作用したときの様子を示す断面図である。」(【図面の簡単な説明】)
n.図面【図3】(A)には、ステイオン・タブ方式の缶蓋の第2実施例の缶蓋を示す平面図が記載され、図面【図3】(B)は、図面【図3】(A)のB-B線に沿う断面図が記載され、図面【図3】(C)はディンプル部の他の実施例を示す要部断面図が記載され、図面【図10】には、缶蓋に内圧が作用したときの様子を示す断面図が記載されている。

つまり、g〜nの記載から、引用例2には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「ステイオンタブの蓋を使った缶において、
缶蓋に設けられたタブの回転を確実に制止するために、タブ中央のカシメ部分の横側に穴を設け、蓋面からの凸部をタブ平面よりも高くして、セットし、
蓋面からの凸部をタブにセットし、その凸部上部をリベットしたもの。」(以下、「引用例2発明」という)。

(3)同じく、原査定の拒絶の理由で引用された特開2000-264355号 公報(以下、「引用例3」という。)には、以下o〜の点が記載されている。
o.「この発明は、パネル部と開口片とを区画しているスコア溝を、タブを引き起こすことにより破断するとともに、開口片を缶内部に吊り下げ状態にして開缶(開蓋)する形式の正内圧缶用開口容易缶蓋に関するものである。」(【発明の属する技術分野】)
p.「【従来の技術】コーラやサイダー、ビール等に代表される炭酸含有飲料が封入された正内圧缶の缶胴に固着される缶蓋としては、開口片に固着されているタブを缶体上方に引き起こした後、開口片を上方に引っ張ることによって開蓋するプルタブ式の缶蓋と、タブを引き起こした際の梃子の原理により、開口片を缶体内方に押し込んで開蓋するステイオンタブ式の缶蓋とが例示される。」(【従来の技術】)
q.「つぎにこの発明の実施例を図面を参照して説明する。図2は、この発明の一実施例を示すステイオンタブ式のイージーオープン缶蓋(以下、缶蓋と略記する)1の平面図である。この缶蓋1は、常温で内圧が大気圧以上になる正圧缶に適用される。」(【0023】)
r.「パネル部2には、蓋部1Aのリベット中心A1よりも外側に第1補強ビード5が形成されている。この第1補強ビード5は、パネル部2の一部を厚さ方向に屈曲させて、具体的には、缶胴の内側に向けて突出させて成形したものである。この第1補強ビード5は、リベット中心A1を隔てて配置された大湾曲部6および小湾曲部7を有する。大湾曲部6および小湾曲部7は、リベット中心A1を通過する線分(直線)B1に対応する位置に配置され、大湾曲部6および小湾曲部7は、いずれも缶蓋1の外周に向けて突出する方向に湾曲されている。また、大湾曲部6および小湾曲部7の両端が、直線部8,9により相互に接続されている。」(【0025】)
s.「【図2】 この発明に係る缶蓋の全体的な平面図である。」(【図面の簡単な説明】)
t.【図2】には、缶蓋の全体的な平面図が示されている。

つまり、o〜tの記載から、引用例3には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「ステイオンタブの蓋を使った缶において、
缶内の膨脹による蓋の膨れ上がりを制止するために、蓋面に何箇所かのリムを設けたもの。」(以下、「引用例3発明」という)。

3.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「缶蓋に支持させた」、「持上げ摘み片」、「他端」、「缶蓋の積重ね」、「カールして」、「缶蓋の上面」及び「持上げ摘み片の缶蓋」は、それぞれ、本願発明の「缶蓋に設けられた」、「タブ」、「持ち上げる部分」、「蓋の積層」、「上向きの形状にして」、「蓋面」及び「ステイオンタブの蓋」に相当する。
そうすると両者は、
「缶蓋に設けられたタブの持ち上げる部分を、蓋の積層に支障のない範囲まで上向きの形状にして、蓋面との間隙を設け、たことを特徴とするステイオンタブの蓋を使った缶。」の点で一致し、下記の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、缶蓋に設けられたタブの飲み口に接する部分と持ち上げる部分を、蓋の積層に支障のない範囲までシーソー状の上向きの形状にしているのに対して、
引用例1発明は、缶蓋に設けられた持ち上げる部分を、蓋の積層に支障のない範囲まで上向きの形状にしているだけで、
缶蓋に設けられたタブの飲み口に接する部分は、蓋の積層に支障のない範囲まで上向きの形状にしておらず、
缶蓋に設けられたタブの飲み口に接する部分と持ち上げる部分の両者で、シーソー状の上向きの形状にはなっていない点。
[相違点2]
本願発明は、缶蓋に設けられたタブの引っ掛かり等による回転を確実に制止するために、タブ中央のカシメ部分の横側に穴を設け、蓋面からの凸部をタブ平面よりも支障のない限り高くして、セットし、蓋面からの凸部をタブにセットし、その凸部上部をリベットしているのに対して、
引用例1発明では、タブ中央には、缶蓋より上方に支点を突設しており、カシメ部分になっておらず、
缶蓋に設けられたタブの引っ掛かり等による回転を確実に制止するために、
タブ中央のカシメ部分の横側に穴を設け、蓋面からの凸部をタブ平面よりも支障のない限り高くして、セットし、蓋面からの凸部をタブにセットし、その凸部上部をリベットしていない点。
[相違点3]
本願発明は、缶内の膨脹による蓋の膨れ上がりを制止するために、蓋面に何箇所かのリムを設けているのに対し、
引用例1発明では、そのようなリムを設けていない点。

4.判断
[相違点1]について
引用例1発明の技術分野である「ステイオンタブの蓋を使った缶」の技術分野において、
缶蓋に設けられたタブの飲み口に接する部分と持ち上げる部分を、シーソー状の上向きの形状にすることは、本願出願前周知の技術(原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-321862号公報及び原査定の拒絶の理由で引用された特開平05-305945号 公報)である。
そして、缶蓋に設けられたタブの飲み口に接する部分も、蓋を積層する為には、蓋の積層に支障のない範囲まで上向きの形状にして、蓋面との間隙を設ける必要が当然あるから、
引用例1発明に、本願出願前周知の技術を適用して、缶蓋に設けられたタブの飲み口に接する部分を、蓋の積層に支障のない範囲まで上向きの形状にして、[相違点1]に係る本願発明のような構成となすことは、当業者ならば容易に想到し得たものである。
更に、[相違点1]に基づく、本願発明と引用例1発明との作用効果上の差異は、引用例1発明及び本願出願前周知の技術から当業者が十分予測し得たものに過ぎない。
[相違点2]について
引用例1発明と引用例2発明とは、同様にステイオンタブの蓋を使った缶の技術分野に属するものであるから、
引用例1発明における缶に、引用例2発明を適用して、
引用例1発明における缶蓋より上方に突設している支点をカシメ部分となし、
引用例1発明において、
缶蓋に設けられたタブの引っ掛かり等による回転を確実に制止するために、
タブ中央のカシメ部分の横側に穴を設け、蓋面からの凸部をタブ平面よりも支障のない限り高くして、セットし、蓋面からの凸部をタブにセットし、その凸部上部をリベットして、
[相違点2]に係る本願発明のような構成となすことは、当業者が容易に想到し得たものである。

ここで、引用例1発明に引用例2発明を適用したものにおいて、
イ)缶蓋に設けられたタブの回転を、「引っ掛かり等による回転」と特定することは、
タブに外力の作用する場合が、タブに何かが当たる場合だけでなく、タブに何かが引っ掛かる場合もあることが、当然であるから、
単なる構成の特定にすぎない。
ロ)蓋面からの凸部をタブ平面よりも高くして、セットし、その凸部上部をリベットすることを、
蓋面からの凸部をタブ平面よりも「支障のない限り」高くして、セットし、その凸部上部をリベットすることに特定することは、
凸部をタブ平面よりも「支障のない限り」高くした方が、リベットし易いことは明らかであるから、
単なる設計上の特定である。

更に、[相違点2]に基づく、本願発明と、引用例1発明及び引用例2発明との作用効果上の差異は、引用例1発明及び引用例2発明から当業者が十分予測し得たものに過ぎない。

[相違点3]について
引用例1発明と引用例3発明とは、同様にステイオンタブの蓋を使った缶の技術分野に属するものであるから、
引用例1発明における缶に、引用例3発明を適用して、
引用例1発明の蓋面に、缶内の膨脹による蓋の膨れ上がりを制止するために、何箇所かのリムを設けて、[相違点3]に係る本願発明のような構成となすことは、当業者が容易に想到し得たものである。

更に、[相違点3]に基づく、本願発明と、引用例1発明及び引用例3発明との作用効果上の差異は、引用例1発明及び引用例3発明から当業者が十分予測し得たものに過ぎない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1発明、引用例2発明及び引用例3発明並びに本願出願前周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-23 
結審通知日 2006-01-31 
審決日 2006-02-16 
出願番号 特願2001-228756(P2001-228756)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 嘉章  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 種子 浩明
中西 一友
発明の名称 ステイオンタブの蓋を使った缶  
代理人 長野 光宏  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ