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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1134288
審判番号 不服2004-1594  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-23 
確定日 2006-05-02 
事件の表示 平成 7年特許願第121381号「動き検出回路」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月29日出願公開、特開平 8-317418、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年5月19日の出願であって、平成15年12月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月18日付けで手続補正がなされたものである。

2.補正の適合性
上記手続補正は、特許法第17条の2第2項(同項で準用する同法第17条第2項)、第17条の2第3項及び、第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の各規定に適合する。その理由の概略は以下のとおりである。

[1]補正の範囲(第17条の2第2項)
補正事項は、本件審判の請求理由で釈明しているとおり、願書に最初に添付した明細書の段落【0045】,【0046】及び図27,図28の記載に基づくものであることが認められ、したがって願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

[2]補正の目的(第17条の2第3項)
補正事項は、次のような請求項の補正を含むものである。
(a)旧請求項1の「時間-垂直-水平方向多重色信号成分抽出手段」を限定する。
(b)請求項2ないし9を削除する(これに伴い、請求項10, 11,12の項番号を繰り上げ請求項2,3,4とする)。
上記補正事項(a)は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正、上記補正事項(b)は請求項の削除を目的とする補正に該当する。

[3]独立特許要件(第17条の2第5項)
以下、独立特許要件について検討する。
[3.1]補正後の発明
補正後の請求項1ないし請求項4に係る各発明(以下それぞれ「補正発明1ないし補正発明4」という)は、上記各請求項にそれぞれ記載された事項により特定されるものであって、これら発明のうち補正発明1を示すと次のとおりである。
「色信号を輝度信号の高域周波数領域に周波数多重した複合映像信号の動きを検出する回路において、
水平走査周波数に同期した周波数で標本化された複合映像信号を1ライン分遅延させる複数のライン遅延手段と、
複合映像信号を1フィールド分遅延させる複数のフィールド遅延手段よりなるメモリ回路と、
入力複合映像信号と上記ライン遅延手段あるいは上記フィールド遅延手段により遅延された複合映像信号から、1フレーム間の差分信号を抽出する第一の時間方向差分検出手段と、
入力複合映像信号と上記ライン遅延手段あるいは上記フィールド遅延手段により遅延された複合映像信号から、2フレーム間の差分信号を抽出する第二の時間方向差分検出手段と、
入力複合映像信号と上記ライン遅延手段あるいは上記フィールド遅延手段により遅延された複合映像信号から、色信号が輝度信号に周波数多重された領域成分を抽出する時間-垂直-水平方向多重色信号成分抽出手段と、
上記時間-垂直-水平方向多重色信号成分抽出手段出力の絶対値を算出する第一の絶対値算出手段と、
上記1フレーム間の差分信号の絶対値を算出する第二の絶対値算出手段と、
上記2フレーム間の差分信号の絶対値を算出する第三の絶対値算出手段と、
上記1フレーム間差分信号の絶対値から上記第一の絶対値算出手段出力を減算する減算手段と、」
上記第三の絶対値算出手段出力と上記減算手段出力とを合成して動き検出信号を出力する合成回路と
を備え、
上記時間-垂直-水平方向多重色信号成分抽出手段は、時間周波数-垂直周波数平面の第2及び第4象限において色信号が存在する-15[Hz]、525/4[cph]の領域の成分、及び15[Hz]、-525/4[cph]の領域の成分を抽出し、それ以外の領域の成分を抽出せず、
前記時間周波数-垂直周波数平面の-15[Hz]、525/4[cph]の領域の成分、及び15[Hz]、-525/4[cph]の領域の成分は、前記動き検出信号の一部とはならず、それ以外の領域の成分は、前記動き検出信号の一部となるようにした
ことを特徴とする動き検出回路。」

[3.2]引用例

(a)原査定の拒絶理由に引用された特開平7-123445号公報(以下「引用例1」という)には、テレビジョン信号の動きを検出する検出方法の従来例として、
入力コンポジットビデオ信号から、その1フレーム間の差信号(絶対値)を、水平LPFと垂直LPF(色信号成分の除去フィルタ)を介して取り出すと共に2フレーム間の差信号(絶対値)を取り出し、これら差信号のうちの大きい方を選択して動き検出信号として出力するようにしたものがあること(図10とその説明参照)、 及び上記従来例での問題点(動き検出信号中に色信号成分の一部が混入し、これにより動きの誤検出が生じてしまう)を解決した動き検出回路として「複合カラーテレビジョン信号の信号成分の時間-垂直周波数領域での色信号成分と共役な位置の領域を通過させる第1のフィルタと、上記複合カラーテレビジョン信号の2フレームの間の差から得られる信号成分を通過させる第2のフィルタと、上記第1のフィルタと第2のフィルタとの出力により動き検出量を出力する動き検出出力手段とからなることを特徴とする動き検出回路」(第3頁段落【0011】及び第1頁の【請求項1】参照)が記載されている。

(b)同じく引用された特開平5-268635号公報(以下「引用例2」という)には、複合映像信号により形成された映像の変化を検出する動信号検出回路に関し(第3頁の段落【0001】)、映像信号源から入力される複合映像信号と、これをフレームメモリ102に書き込んで読み出した複合映像信号(1フレーム遅延複合映像信号)とを第1減算器104で減算し、減算出力(1フレーム間の差分信号)を水平高域通過フィルタ200とその後段に接続された垂直高域通過フィルタ202に供給し、これらフィルタを通過した出力(上記減算出力に含まれる色度信号成分)を、第2減算器204によって上記第1減算器104の減算出力から減算し、この減算出力に基づいて動信号を検出するようになすこと(図3とその説明参照)が記載されている。

[3.3]対比、判断

[3.3.1]補正発明1について

(i)補正発明1は、前記請求項1記載の特定事項から明らかなように、入力複合映像信号(色信号を輝度信号の高域周波数領域に周波数多重した映像信号)から抽出した1フレーム間の差分信号と2フレーム間の差分信号(それぞれ第二,第三の絶対値算出手段で絶対値化)とから動き検出信号を合成することを前提に、上記1フレーム間の差分信号に含まれる多重色信号成分(上記輝度信号に周波数多重した色信号成分、第一の絶対値算出手段で絶対値化)を除去するために、
その要件として、「入力複合映像信号と上記ライン遅延手段あるいは上記フィールド遅延手段により遅延された複合映像信号から、色信号が輝度信号に周波数多重された領域成分を抽出する時間-垂直-水平方向多重色信号成分抽出手段」と、「上記1フレーム間差分信号の絶対値から上記第1の絶対値算出手段出力を減算する減算手段」とを設ける、
つまり上記時間-垂直-水平方向多重色信号成分抽出手段によって、入力複合映像信号から直接“色信号が輝度信号に周波数多重された領域成分”(多重色信号成分)を抽出し、その絶対値を上記1フレーム間の差分信号の絶対値から減算するようにし(以下この点を「要件A」という)、
上記時間-垂直-水平方向多重色信号成分抽出手段により「時間周波数-垂直周波数平面の第2及び第4象限において色信号が存在する-15[Hz]、525/4[cph]の領域の成分、及び15[Hz]、-525/4[cph]の領域の成分を抽出し、それ以外の領域の成分を抽出せず、(これを上記1フレーム間の差分信号から減算するので)前記時間周波数-垂直周波数平面の-15[Hz]、525/4[cph]の領域の成分、及び15[Hz]、-525/4[cph]の領域の成分は、前記動き検出信号の一部とはならず、それ以外の領域の成分は、前記動き検出信号の一部となるようにし」ている(以下この点を「要件B」という)ものである。

これに対して、
引用例1に従来例として記載されている動き検出方法は、コンポジットビデオ信号(複合映像信号)から得た1フレーム間の差信号と2フレーム間の差信号から動き検出信号を生成し、その際上記1フレーム間の差信号に含まれる色信号成分を除去している点で補正発明と共通するが、この色信号成分の除去は、上記1フレーム間の差信号を水平LPFとその後段に接続した垂直LPFに通すことによって色信号成分を除去するものであるから、上記補正発明1の要件A,Bを開示もしくは示唆するものとはいえない。
また、引用例1に記載された前記動き検出回路は、上記従来例の問題点の解決のために、従来例で用いている1フレーム間,2フレーム間の各差信号のうち、1フレーム間の差信号を用いるのをやめ、代わりに「複合カラーテレビジョン信号の信号成分の時間-垂直周波数領域での色信号成分と共役な位置の領域を通過させる第1のフィルタ」を用い、その出力と上記2フレーム間の差信号(第2のフィルタ出力)から動き検出信号を得るものであり、したがって、上記のような動き検出回路が1フレーム間差信号の使用を前提とする補正発明1の前記要件Aを示唆するとは認め得ないし、
また、上記動き検出回路における第1のフィルタは、上記のとおり、「複合カラーテレビジョン信号の信号成分の時間-垂直周波数領域での色信号成分と共役な位置の領域」(引用例1の図4に示される領域s)を通過させるもので、この通過領域の周波数成分を動き検出信号の一部とする(動き検出信号として上記2フレーム間差信号と併用する)ものといえるが、引用例1の同周波数成分と、補正発明1の上記要件Bでいう“時間周波数-垂直周波数平面の-15[Hz]、525/4[cph]の領域の成分、及び15[Hz]、-525/4[cph]の領域の成分(時間周波数-垂直周波数平面の第2,第4象限において色信号が存在する領域から抽出した成分)以外の領域の成分”とを比較すると、後者(補正発明1)は前者(引用例1)を含みさらに他の成分も含むより広い領域成分を有していて両者は異なるものであり、したがって上記動き検出回路が補正発明1の上記要件Bを開示もしくは示唆するものであるともいえない。

次に、引用例2の前記記載は、複合映像信号の1フレーム間差分信号から動信号を検出するに際し、上記1フレーム間差分信号から色信号成分を減算して除去するとしている点で補正発明1と共通するが、同記載では、上記減算を行う上での色信号成分の抽出について、専ら上記1フレーム間差分信号から水平,垂直の各高域通過フィルタによって色信号成分を抽出するとしているだけであるから、かかる引用例2の記載からも補正発明1の上記要件A,Bが示唆されるとは認め得ない。

なお、原査定の拒絶理由では、上記引用例1,2の他、特開平2-1108号公報(以下「引用例3」という)、特開平5-191831号公報(以下「引用例4」という)をも引用しているが、これら引用例3,4は、補正発明1での特定事項ではない事項に対して引用されたものであって、補正発明1との関連では、引用例3,4は、いずれも1フレーム間差信号と2フレーム間差信号から動き検出信号を得る前記引用例1記載の従来例と同様の動き検出手法を示しているにすぎず(引用例3の図5,7、引用例4の図9等参照)、補正発明1の上記要件A,Bを示唆するに足るものではない。

(ii)以上のように、補正発明1の上記要件A,Bは、引用例1ないし4のいずれにも開示や示唆がないものであり、同要件を備えることによって、補正発明1は、時間-垂直周波数平面における第2,第4象限に存在する複合映像信号中の色信号成分を抽出して1フレーム間差分信号から引き去ることができるようにすることで1フレーム間差分信号への色信号成分の漏れを減少させることができるという、引用例1ないし4のいずれによっても奏し得ない明細書記載の格別の技術的効果を奏し得るものと認めることができ、したがって、補正発明1が引用例1ないし4の各引用例もしくはそれらの組み合わせから当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。

(iii)本件審判請求に対する前置審査の報告書では、文献1(上記引用例1),文献2(特開平3-175794号公報)及び文献3(特開平4-192786号公報)を引用し、補正発明1は上記文献1と文献2,3に示されるような周知技術から想到容易なものであるとしているので、以下これについて検討する。
上記文献1(引用例1)が補正発明1を開示もしくは示唆するものではないことは前示認定のとおりである。
上記文献3は、動き検出に用いられる複合カラーテレビジョン信号の1フレーム間差信号から色信号成分を抽出して該1フレーム間差信号から減算することで1フレーム間差信号に含まれる色信号成分を除去するという、前記引用例2にも示される動き検出手法を開示しているにすぎず、同じく補正発明1を開示もしくは示唆するものではないことは前示認定のとおりである。
上記文献2は、TV受信機等で用いられる3次元Y/C分離フィルタとして、時間BPFに、水平BPF,垂直BPF,時間-垂直フィルタをこの順に縦続接続し、これにより、時間周波数-垂直周波数平面の第2及び第4象限において色信号が存在する-15[Hz]、525/4[cph]の領域の成分、及び15[Hz]、-525/4[cph]の領域の成分を色信号として抽出することが記載されていて、上記要件Bの一部の構成を開示しているものと認められるものの、動き検出に用いられるものではなく、1フレーム間の差分信号の絶対値からの減算に用いられるものではなく、上記要件Aを示唆するものでもない。
さらに、これらの組み合わせにつき、上記文献3記載の上記色信号成分抽出フィルタを上記引用例1または上記文献2記載の動き検出回路に適用する場合について検討するに、同色信号成分抽出フィルタの適用を入力複合映像信号に直接適用するとの示唆はなく、その適用は複合カラーテレビジョン信号の1フレーム間差信号からの色信号成分の抽出回路に適用することとなり、また、同色信号成分抽出フィルタ出力の絶対値を1フレーム間の差分信号の絶対値から減算する構成ともならず、上記要件Aに至らない。
以上のように、上記文献1〜3からも補正発明1が想到容易なものであるとすることはできない。

(iv)また、他に補正発明1を想到容易とすべき合理的根拠も見出せない。

[3.3.2]補正発明2ないし4について
補正発明2ないし4は、前記補正による補正後の請求項2ないし4の各記載によれば、いずれも、前記補正発明1の要件Aを有し、 加えて「入力映像信号と上記ライン遅延手段あるいは上記フィールド遅延手段により遅延された映像信号から、高精細成分が輝度信号に周波数多重された領域成分を抽出する時間垂直水平方向多重高精細成分抽出手段と、
上記入力映像信号が現行の複合映像信号であるか高精細映像信号であるか、また高精細映像信号であるなら輝度信号の高精細成分が多重されているか否か、を判断する識別制御信号デコーダと、
上記時間垂直水平方向多重色信号成分抽出手段出力と上記時間垂直水平方向多重高精細成分抽出手段出力とを加算する加算手段と、
上記時間垂直水平方向多重高精細成分抽出手段出力を上記時間水平垂直方向多重色信号成分抽出手段出力と加算するか否かを、上記識別制御デコーダの識別結果により、輝度信号の高精細成分が多重されていると判断された場合は加算する側に、輝度信号の高精細成分が多重されていないと判断された場合には加算しない側に、切り替えるスイッチと」を備える点をも要件とするものであって、
原査定でも、これら補正後発明2ないし4については想到容易なものとはしておらず、また他にこれら発明を想到容易なものとすべき理由は見出せない。

[3.3.3]まとめ
以上のように、前記平成16年2月18日付け手続補正では特許請求の範囲の減縮を目的とする補正がなされているところ、補正後の特許請求の範囲における補正発明1ないし4は、いずれも当業者が容易に想到し得たものではなく、またこれら発明につき他に特許を受けることができないとすべき理由も見出せないから、補正発明1ないし4は、いずれも特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3.本願発明
前記2.[1]ないし[3]で認定、判断したとおり、平成16年2月18日付け手続補正は採用し得る適法なものであり、そうすると、本願の請求項1ないし4に係る発明は、補正後の特許請求の範囲における前記補正発明1ないし4である。

4.原査定の理由
原査定の理由は、本願の請求項1(補正前)に係る発明について、拒絶理由で引用された特開平7-123445号公報(前記引用例1)および特開平5-268635号公報(前記引用例2)から当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものである。(なお、原査定では、補正前の請求項2ないし9についても同様の理由により特許を受けることができないとしているが、これら請求項2ないし9は前記のとおり補正により削除されている。)

5.当審の判断
本願の請求項1に係る発明、すなわち前記補正発明1が当業者に想到容易なものではないことは、前記2.[3]で既に判断したとおりである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとする原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2006-04-17 
出願番号 特願平7-121381
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 直樹  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 西谷 憲人
北岡 浩
発明の名称 動き検出回路  
代理人 前田 実  
代理人 山形 洋一  

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