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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
管理番号 1134314
異議申立番号 異議2001-71020  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-01-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-02 
確定日 2006-01-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3094038号「気体および芳香バリア特性を備える包装ラミネート材」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3094038号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3094038号の請求項1ないし9に係る発明についての出願は、平成 6年 6月 1日(優先権主張:平成 5年 6月 3日、スイス国)を国際出願日とする特許出願であって、平成12年 7月28日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 株式会社 ディスク(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年 9月12日付けで特許異議意見書を提出するとともに、訂正請求(平成17年 8月23日付けで取り下げ)がされ、その後、第2回目の訂正拒絶理由を兼ねる取消理由(手交)が通知され、その指定期間内である平成17年 8月23日付けで特許異議意見書を提出するとともに、訂正請求がされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
訂正事項a.
特許査定時の明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1を、
「(1) 液体食品を包装するための包装容器であって、
該包装容器を成形するように形状化された可撓性に富むラミネート材を有し、
該ラミネート材は、xが1.5から2.2の範囲にあるSiOxであり、真空中で気化された有機シリコン化合物と酸素の混合物からプラズマ励起化学蒸着法により形成された第1の層であって、50〜200Åの層厚を有する薄いシリコン酸化物層である第1の層と、該第1の層を直接に担持しかつ可撓性に富む熱可撓性プラスチック材からなる第2の層とを備え、前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出し、 前記ラミネート材は、さらに折り曲げ可能な厚手の芯層を有し、この芯層が紙層、板紙層もしくは可撓性に富む熱可塑性プラスチック層であり、そして
前記ラミネート材は、容器形成のための折り目線を有すると共に、その継ぎ目部を有し、該継ぎ目部間を接合してシール包装容器が形成される
ことを特徴とする包装容器。」と訂正する。
訂正事項b.
請求項3を削除する。
訂正事項c.
請求項4を請求項の項番を繰り上げ、請求項3と訂正する。、
訂正事項d.
請求項5を請求項の項番を繰り上げ、請求項4とし、
「(4) 液体食品を包装するために予め形成された包装容器のブランクであって、
可撓性に富むラミネート材を有し、
該ラミネート材は、xが1.5から2.2の範囲にあるSiOxであり、プラズマ励起化学蒸着法により形成された第1の層と、
第1の層が担持される可撓性に富む熱可塑性プラスチック材からなる第2の層とを備え、前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるように形成され、 前記ラミネート材は、その折り曲げを容易にするための折り目線を有し、前記第1の層は該折り目線で変形されており、前記ラミネート材は、傷み易い液体食品用シール包装容器を成形するために折り曲げられるとき該ラミネート材をシールする手段を包含する
ことを特徴とするブランク。」と訂正する。
訂正事項e.
請求項6を請求項の項番を繰り上げ、請求項5とし、
「(5) 請求項4に記載されたブランクにおいて、前記第1の層が50Åを超えかつ500Å未満の厚みを有することを特徴とするブランク。」と訂正する。
訂正事項f.
請求項7を削除する。
訂正事項g.
請求項8を請求項の項番を繰り上げ、請求項6とし、
「(6) 液体食品を包装し、良好なガスおよび芳香バリア特性を有する包装容器を作るための包装ラミネート材であって、
該ラミネート材は、紙層、板紙層若しくは可撓性に富む熱可塑性プラスチック層である折り曲げ可能な芯層と、プラズマ励起化学蒸着法により形成されたシリコン酸化物であり、50Åを超えかつ500Å未満の厚みを有するバリア性の第1の層とを備え、 前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出するよう形成されることを特徴とする包装ラミネート材。」と訂正する。
訂正事項h.
請求項9を請求項の項番を繰り上げ、請求項7とし、
「(7) 液体食品を包装し、良好なガスおよび芳香バリア特性を有する包装容器を作るための包装ラミネート材であって、
該ラミネート材は、複数の層からなり、
該複数の層の1の層が、プラズマ励起化学蒸着により形成されたシリコン酸化物であるバリア性の第1の層であり、前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出するように形成され、 前記複数の層の他の層が、第1の層を担持する可撓性に富む熱可塑性プラスチック材からなる第2の層であり、
前記ラミネート材の外側の1の層が熱シール可能な熱可塑性プラスチック層であり、
前記ラミネート材が、7.5%までの伸びに対して30[cc/m2・24hr・1.0気圧]以下の酸素透過率を有することを特徴とする包装ラミネート材。」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項a.について
上記訂正事項a.は、訂正前の請求項1に記載の発明の構成に欠くことができない事項(以下、「構成要件」という。)である第1層について「前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出し、」と発明特定事項を直列的に追加する訂正をし、その積層位置を特定したものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。また、本件特許明細書第6頁11欄26〜43行に「第11図はSiOx層がパッケージの内部の製品と直接接触している実施例を示している。・・・SiOxコーティングまたは層84はラミネート材が折り曲げられ、熱シールされて容器を形成する時に同ラミネート材の内側に露出されるので、SiOx層84は容器の中身と直接接触することになる。ラミネート材が食品製品に対して用いられる時には、SiOx層84はこの目的のために許容出来る材質である。何故ならば同層は食品内容物に何らの有害な作用を及ぼさないからである。」との具体的記載からみて、当該訂正事項aに係る訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項b.及びf.について
訂正事項b.及びf.は、それぞれ、請求項3及び請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするもので、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項c.及びe.について
訂正事項c.及びe.は、請求項3及び請求項7を削除したことに伴い、特許請求の範囲の記載を整合させるため請求項の項番を繰り上げるとともに、引用する請求項を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするもので、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項d.、g.及びh.について
訂正事項d.、g.及びh.は、いずれも液体食品を包装するものであること特定するとともに、第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出するように形成されているものであることを特定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。また、請求項3及び請求項7を削除したことに伴い、特許請求の範囲の記載を整合させるため請求項の項番を繰り上げたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、本件特許明細書第6頁11欄26〜43行に「第11図はSiOx層がパッケージの内部の製品と直接接触している実施例を示している。・・・SiOxコーティングまたは層84はラミネート材が折り曲げられ、熱シールされて容器を形成する時に同ラミネート材の内側に露出されるので、SiOx層84は容器の中身と直接接触することになる。ラミネート材が食品製品に対して用いられる時には、SiOx層84はこの目的のために許容出来る材質である。何故ならば同層は食品内容物に何らの有害な作用を及ぼさないからである。」との具体的記載からみて、当該訂正事項d.、g.及びh.に係る訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記の平成17年 8月23日付け訂正請求に係る訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例とされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
上記2.に記載のとおり、上記訂正が認められることから、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に、「本件発明1」、「本件発明2」・・・等という。)は、上記訂正に係る訂正明細書(以下、単に「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲請求項1ないし7に記載された、次のとおりのものである。

「(1)液体食品を包装するための包装容器であって、
該包装容器を成形するように形状化された可撓性に富むラミネート材を有し、
該ラミネート材は、xが1.5から2.2の範囲にあるSiOxであり、真空中で気化された有機シリコン化合物と酸素の混合物からプラズマ励起化学蒸着法により形成された第1の層であって、50〜200Åの層厚を有する薄いシリコン酸化物層である第1の層と、該第1の層を直接に担持しかつ可撓性に富む熱可撓性プラスチック材からなる第2の層とを備え、前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出し、 前記ラミネート材は、さらに折り曲げ可能な厚手の芯層を有し、この芯層が紙層、板紙層もしくは可撓性に富む熱化塑性プラスチック層であり、そして
前記ラミネート材は、容器形成のための折り目線を有すると共に、その継ぎ目部を有し、該継ぎ目部間を接合してシール包装容器が形成される
ことを特徴とする包装容器。
(2)請求項1に記載された包装容器において、前記有機シリコン化合物が、ヘキサメチルジシロキサン又はテトラメチルジシロキサンであることを特徴とする包装容器。
(3)請求項1に記載された包装容器において、前記継ぎ目部間が超音波加熱により接合されていることを特徴とする包装容器。
(4)液体食品を包装するために予め形成された包装容器のブランクであって、
可撓性に富むラミネート材を有し、
該ラミネート材は、xが1.5から2.2の範囲にあるSiOxであり、プラズマ励起化学蒸着法により形成された第1の層と、
第1の層が担持される可撓性に富む熱可塑性プラスチック材からなる第2の層とを備え、前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるように形成され、 前記ラミネート材は、その折り曲げを容易にするための折り目線を有し、前記第1の層は該折り目線で変形されており、前記ラミネート材は、傷み易い液体食品用シール包装容器を成形するために折り曲げられるとき該ラミネート材をシールする手段を包含する
ことを特徴とするブランク。
(5)請求項4に記載されたブランクにおいて、前記第1の層が50Åを超えかつ500Å未満の厚みを有することを特徴とするブランク。
(6)液体食品を包装し、良好なガスおよび芳香バリア特性を有する包装容器を作るための包装ラミネート材であって、
該ラミネート材は、紙層、板紙層若しくは可撓性に富む熱可塑性プラスチック層である折り曲げ可能な芯層と、プラズマ励起化学蒸着法により形成されたシリコン酸化物であり、50Åを超えかつ500Å未満の厚みを有するバリア性の第1の層とを備え、 前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出するよう形成されることを特徴とする包装ラミネート材。
(7)液体食品を包装し、良好なガスおよび芳香バリア特性を有する包装容器を作るための包装ラミネート材であって、
該ラミネート材は、複数の層からなり、
該複数の層の1の層が、プラズマ励起化学蒸着により形成されたシリコン酸化物であるバリア性の第1の層であり、前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出するように形成され、 前記複数の層の他の層が、第1の層を担持する可撓性に富む熱可塑性プラスチック材からなる第2の層であり、
前記ラミネート材の外側の1の層が熱シール可能な熱可塑性プラスチック層であり、
前記ラミネート材が、7.5%までの伸びに対して30[cc/m2・24hr・1.0気圧]以下の酸素透過率を有することを特徴とする包装ラミネート材。」

4.特許異議の申立てについて
4-1.特許異議申立て理由の概要
申立人は、証拠として、下記甲第1号証ないし甲第7号証を提出し、概略、
(1)本件特許の訂正前の請求項1〜請求項3、請求項5〜請求項7、請求項9に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨、
(2)訂正前の請求項4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨、
(2)訂正前の請求項8に係る発明は、甲第3号証ないし甲第5号証、それぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない旨、
(3)訂正前の請求項8に係る発明は、甲第7号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない旨、
主張し、請求項1〜請求項9に係る発明の特許は、特許法第113条第1項第2号の規定により特許を取り消すべきと主張している。



(a)甲第1号証:実願昭63-120745号(実開平2-43228号公報)のマイクロフィルム
(b)甲第2号証:実願平3-32864号(実開平4-120029号公報)のマイクロフィルム
(c)甲第3号証:「PPS Report」、第1巻、第39号、2〜7頁、1991年4月25日、(株)東洋紡 パッケージング プラン サービス発行
(d)甲第4号証:SOCIETY of VACUUM COATERS「34th Annual Technical Conference Proceedings 」March17-22,1991 Philadelphia、99頁〜104頁)、米国フィラデルフィアで、1991年3月17日〜同22日にかけて開催された「SOCIETY of VACUUM COATERS」主催の「34th Annual Technical Conference Proceedings 」における「薄膜気体バリア性に対する膜厚の影響:シリコン系コーティング」と題する論文集
(e)甲第5号証:SOCIETY of VACUUM COATERS「35th Annual Technical Conference Proceedings 」March22-27,1992 Baltimore,MD、75頁〜79頁)、米国ボルチモアで1992年3月22日〜同27日にかけて開催された「SOCIETY of VACUUM COATERS」主催の「35th Annual Technical Conference Proceedings 」における「プラズマ蒸着SiOxガス拡散防止コーティングのスケールアップ」と題する論文集
(f)甲第6号証:紙加工便覧編修委員会編「最新 紙加工便覧」、株式会社テックタイムス、昭和63年8月20日発行、792〜793頁
(g)甲第7号証:特願平3-282334号(特開平6-108255号公報)

4-2.異議申立てに係る甲各号証の記載事項
a.甲第1号証:実願昭63-120745号(実開平2-43228号公報)のマイクロフィルムの記載事項
a1.「(1)紙を主体とした積層構成のマイクロ波透過性のシートより形成した液体紙容器において、前記積層構成中にバリヤー性無機物をコートした耐熱性フィルムを設けたことを特徴とする液体紙容器。」(実用新案登録請求の範囲請求項1)
a2.「バリヤー性が充分であり、しかも流通状態のまま内容物をマイクロ波加熱することのできる液体紙容器を提供する」(第2頁14〜16行)
a3.「第1図は本考案の一実施例を示すものであり、清酒を収納するゲーベルトップ型の液体紙容器(A)であり、一枚のブランクシートより形成されていて、内容物を注出するための合成樹脂性の注出口栓(B)が傾斜屋根部に取着してある。
この液体紙容器(A)は、外側よりPE(1)/紙(2)/ポリエステル(3)(以下、PETという)/SiO2薄膜層(4)/PE(1)の積層構成よりなる。
この実施例において、SiO2薄膜層(4)は通常行なわれている方法により、PET(3)フィルムを基材としてスパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて設けるが、その厚みは100〜3000Åが好ましい。・・・。
ここで、上記実施例において、バリヤー性無機物層にSiO2を用いたが、SiO、Si2O3、Si3O4等の珪素酸化物、珪素を用いてもよい。
次に、SiO2薄膜層(4)の厚みを1000Åとした場合の▲1▼酸素透過度、▲2▼水蒸気透過度・・適性を下記の材質構成のシートを用いて比較したので、そのデータを表-1に示す。
(1)材質構成
1)PET(12μ)/SiO2(1000Å)
・・・
(2)透過度、マイクロ波加熱適性
▲1▼酸素透過度 ・・・CC/m2・24hr・atm・25℃
・・・
表-1 1)の項の▲1▼ 0.2・・・
上記のデータよりも、本考案の液体紙容器は酸素透過度、水蒸気透過度ともに極めて小さい値であり、・・・理解できよう。」(第3頁12行〜第5頁表以下4行)
(なお、丸付き数字は使用が制限されているので、「▲数字▼」は、丸付き数字を表記するために用いたのものである。以下同様。)
b.甲第2号証:実願平3-32864号(実開平4-120029号公報)のマイクロフィルムの記載事項
b1.「【請求項1】熱可塑性合成樹脂層からなる表面外側層と、ヒートシール特性を有する熱可塑性合成樹脂層からなる裏面外側層と、表面外側層と裏面外側層との間に介装されている中間層とを具備し、かつ、前記中間層に、厚紙と、無機酸化物の蒸着層を具備する複合プラスチックフィルムとが積層さている紙容器用積層シートにより、該紙容器用積層シートにおける裏面外側層が容器内周面側となるようにして、熱風の吹き付けによる熱接着手段で製函されていることを特徴とする紙容器。」(実用新案登録請求の範囲請求項1)
b2.「中間層に使用される無機酸化物の蒸着層を具備する複合プラスチックフィルムには、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン系樹脂等による基材フィルムに対して、酸化錫、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化インジウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等による薄膜を、例えば真空蒸着、スパッタリング、化学蒸着等の手段で形成した複合フィルムが利用される。なお、ガスバリヤー性において優れた作用が奏されることから、酸化珪素による蒸着層を有する複合プラスチックフィルムが最も好ましい。」(段落【0010】)
b3.「前記複合プラスチックフィルムにおける無機酸化物の蒸着層の厚さが0.02μ未満になると、本考案の目的としている耐熱性を具備させ得なくなる。すなわち、400℃以上の熱風を利用する内添物の充填、封緘工程を、ピンホールを生成させることなく行い得るような耐熱性を具備させ得なくなるため、複合プラスチックフィルムにおける無機酸化物の蒸着層は、厚さ0.02μ以上に形成される。」(段落【0011】)
b4.「実施例1
[図1]において、中間層をなす坪量270g/m2の板紙2の片側に、厚さ20μのポリエチレン樹脂層からなる表面外側層3を押出しコート法によって形成した後、板紙のもう一方の面に対して複合プラスチックフィルム4、すなわち、厚さ7μの2軸延伸ポリエステルフィルム5と該2軸延伸ポリエステルフィルム5の表面に形成されている厚さ0.05μの酸化珪素の真空蒸着層6とによる複合プラスチックフィルム4をドライラミネート法によって積層し、さらに、複合プラスチックフィルム4面に対して厚さ90μのポリエチレン樹脂層からなる裏面外側層7を押出しコートすることにより、符号1で示される紙容器用積層シートを得た。
さらに、前記各紙容器用積層シートを380mm×360mmの紙容器用のブランク板に打ち抜き成型した後、得られたブランク板の周辺部同士を重畳して熱溶着することにより、紙容器用積層シートの裏面外側層7が内周面層とされている角筒体を成形し、さらに、400℃以上の熱風によって底部を封緘することにより、底部が封緘されている角筒体を得た。
続いて、前記底部が封緘されている角筒体に対して、1800ccの日本酒を充填する工程と、400℃以上の熱風による封緘工程とを実施し、容器頭部が屋根型をなすゲーベルトップ型の紙容器、すなわち、横幅8.5cm、奥行8.5cm、高さ30.0cmのゲーベルトップ型の紙容器を得た。」(段落【0014】〜段落【0016】)
c.甲第3号証:「PPS Report」、第1巻、第39号、2〜7頁、1991年4月25日、(株)東洋紡 パッケージング プラン サービス発行 は、海外パッケージング事情と題する報文であり、「シリカ蒸着PETフィルムの開発状況」として、
c1.「SiOx蒸着PETパッケージはハイバリア性であり、リサイクリング可能であり、しかもマイクロウエーブ加熱ができるという事で注目されているが、日本で数種類の食品に実用化されているにすぎない。」(第2頁左欄下から8行〜同下から5行)
c2.「プラズマによるSiO2のPETフィルムへの蒸着」の項において、
「これに対し最近開発されたSiO2プラズマによるPETフィルム蒸着は次の利点を有する。
▲1▼SiO2プラズマによりPET表面が清浄化され、表面に極性基やフリーラジカルが発生し接着性が向上して、SiO2が蒸着する。
・・・
▲5▼原料は衛生的で安価なオルガノシロキサンが使用でき種類も豊富であり、低温でプラズマにすることができる。
・・・
PET表面に蒸着したSiO2蒸着膜が5%以上の伸度を有すれば、印刷、ラミネート、製袋、充填、配送におけるクラックを生ずることが無くなる。プラズマによるSiO2の蒸着は、SiO2プラズマがPET表面と反応しながら蒸着するので、均一で薄い蒸着膜が出来た時点で最高のバリヤ性が得られるので十分に可能性がある。即ち、蒸着に使用するオルガノシロキサンの種類と蒸着条件を適切に選択することにより、適度の伸度と硬度を有するSiO2蒸着膜をPETフィルム上に形成させることができる。

蒸着源としてオルガノシロキサンを使用すれば、副生成物のスプラッシングによりPETフィルム上のSiO2蒸着膜に穴が開くことがなく、ラインスピードを上げることができる。
Airco社は、SiO2プラズマ蒸着法を更に発展させ、Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition(PECVD)プロセスを開発した。このプロセスによりSiO2を蒸着したハイバリア性無色透明PETフィルムを、QLF(quarz like film)と言う。
一般のSiO2プラズマ蒸着においては、高価でしかも発火しやすいケイ素(Si)を蒸着マテリアルとして使用する。しかし、QLF法では安全なオルガノシロキサンを蒸着マテリアルとして使用する。
QLF法によるPETフィルム上に蒸着されるSiOxのxの値は1.7以上であり、一般のEB法による蒸着のxが1.7以下とは異なる。
QLFフィルムは無色透明であり、蒸着厚みは600Å以下である。」(第5頁左欄下から9行〜第6頁左欄5行)
c3.表1には、QLF蒸着に関して、SiO2蒸着膜厚(Å)が400〜650で酸素透過度(cc/m2・24hrs)が0.3〜0.6であることが表示されている。
d.甲第4号証:SOCIETY of VACUUM COATERS「34th Annual Technical Conference Proceedings」、March17―22,1991 Philadelphia、99〜104頁の記載事項(米国フィラデルフィアで、1991年3月17日〜同22日にかけて開催された「SOCIETY of VACUUM COATERS」主催の「34th Annual Technical Conference Proceedings 」における「薄膜気体バリア性に対する膜厚の影響:シリコン系コーティング」と題する論文集(訳文は、異議申立書中に記載されている訳文による))。
d1.「薄膜透明ガスバリアはプラスチック包装工業の分野で広く議論されている。・・・。本稿は、コーティング膜厚と、蒸着およびプラズマ法によりSiOxをコーティングしたポリエチレンテレフタレートにおける酸素透過率について議論する。」(第99頁左欄「I.イントロダクション」の項)
d2.「 Airco Coatings Technologyで開発されたプラズマCVD法を、QLF(R)バリアコーティング製造のために使用された。QLF蒸着はシランを使用しない、・・・。代わりに有機シリコン源として、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)が使用された。QLFコーティングはSiOx(xは1.7以上)、非晶質、高度に無機質で光学的に透明であり、表面処理することなく接着性であり、600Å以下の膜厚で望ましいガスバリア性が達成される。QLF蒸着は通常のPECVDに比して低圧(0.01〜0.05Torr)で実施される。」(第99頁左欄「II.EXPERIMENTAL」の項)
d3.第99頁右欄8行以降には、プロセス熱負荷は大変低いことが記載されると共に、0.5ミル厚PETにコーティングしたものについて、MOCON Controls,Inc.Ox-Tran装置を使用して酸素透過率が測定されたことが記載されている。
d4.104頁の第10図には、SiOxをコーティングした19μm厚のPETにおいて、xと酸素透過率との関係として、xが1.6〜1.8である時、酸素透過率が2〜6.5cc/m2dayと2次関数的に増加することが示されている。
e.甲第5号証:SOCIETY of VACUUM COATERS「35th Annual Technical Conference Proceedings」、March 22―27,1992 Baltimore,MD、75〜79頁の記載事項(米国ボルチモアで1992年3月22日〜同27日にかけて開催された「SOCIETY of VACUUM COATERS」主催の「35th Annual Technical Conference Proceedings 」における「プラズマ蒸着SiOxガス拡散防止コーティングのスケールアップ」と題する論文集(訳文は、異議申立書中に抽出記載されている訳文による))。
e1.「SiOxガス拡散防止コーティングは食品包装への適用に有望な特性を示している。」(第75頁左欄下から15行〜同下から13行;「I.イントロダクション」の項)
e2.「2つのコーターでのQLFコーティングプロセスにおいて、4〜13Pa(30〜100millitorr)の圧力範囲でテトラエチルジシロキサン、酸素そしてヘリウムのガス状混合物が利用された。」(第75頁右欄下から4行〜同末行)
e3.「このプラズマ法により、10-30nmの膜厚でのSiO2コーティングが製造されたが、12μmPETの酸素透過率を115から1cm3/m2/dayに改善するものであり、未コートのPETに比して酸素透過率を100倍以上増加させる。」(第78頁右欄下から10行〜同下から5行)
f.甲第6号証:紙加工便覧編修委員会編「最新 紙加工便覧」792〜793頁、昭和63年8月20日、株式会社テックタイムス発行 の記載事項。
f1.「シール方法には、外部加熱方式によるヒートシール(熱風による加熱)、・・と内部加熱方式による超音波シール(超音波振動により樹脂を発熱させる)、高周波シール(高周波による誘導電流によりアルミ箔などの金属を発熱させる)などがある(図2.2-5)。」(第793頁2〜5行)
g.甲第7号証:特願平3-282334号(特開平6-108255号公報)の記載事項。
g1.「【請求項1】 蒸気障壁特性を有するシリコン酸化物基薄膜を沈積せしめる方法であって、
揮発した有機シリコン化合物、酸素、及び不活性ガスを含むガス流を準備する段階と、
プラズマ内に取り外しできるように位置決め可能な基材を収納する予め排気した室内に、ガス流から誘導したグロー放電プラズマを確立する段階と、
基材をプラズマ内に位置決めして室内の圧力を約100ミクロン以下に維持し、プラズマ内に流すガス流を制御しながらガス流の反応生成物であるシリコン酸化物の層を約1000オングストローム以下の所定の厚みで基材上に沈積せしめる段階とを具備するすることを特徴とする方法。」(特許請求の範囲 請求項1)
g2.「本発明の別な面である物品は、ある表面を限定する柔軟なポリマ基材と、この表面によって坦持されている薄膜とからなり、ポリマー表面と薄膜とは一緒になって約0.1cc/100in2/日以下の酸素ガス透過率を呈し、また薄膜の厚みは約1000オングストローム以下、より好ましくは約600オングストローム以下であり、最も好ましい約100乃至約400オングストロームにすると被膜した表面の酸素透過率は約0.04cc/100in2/日以下になる。この物品は、医療応用における血清及び血液袋、酸素に極めて鋭敏な食品の包装のように、優れた蒸気及びガス障壁特性を有する不活性で、且つ柔軟な包装を必要とする場合に有用である。」(第3頁4欄28〜40行)
g3.「以下、次のような略語を使用することとする。
PET:ポリエチレンテレフタレート
TMDSO:1,1,3,3-テトラメチルジシルオキサン
・・・。
例1.本発明の実施例を、0.5ミル厚のPET基材上に形成させた。使用した有機シリコンはTMDSOであった。選択したプロセス条件は;
・・・
この薄い、柔軟なプラスチック基材上の本発明の薄膜の被膜の厚みは200オングストロームより薄いかまたはほぼその程度であり、測定された酸素ガス透過率は約0.04cc/100in2/日よりやや低く、水蒸気の透過率は約0.04g/100in2/日であった。シリコン酸化物のO:Si濃度比は約2:1であった。・・・決定した。」(第9頁15欄25行〜同頁16欄20行)
g4.第9頁に記載された表1には、異なる厚みとそれぞれの酸素透過率が示されている。被膜厚(Å)、酸素透過率(cc/100in2/日)として、それぞれ、1969〜0、1.24〜7.00の値の範囲であることが示されている。

5.取消理由について
5-1.第1回取消理由の概要
請求項1、2、4〜6及び8、9に係る発明は、下記刊行物1〜4記載の発明に基づき当業者が容易に想到し得たものであるから、請求項1、2、4〜6及び8、9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、
請求項8に係る発明は、刊行物2、3及び4に記載された発明であるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、及び、
請求項8に係る発明は、先願明細書(=刊行物6)に記載された発明と同一であると認められ、しかも、その発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、本件出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、請求項8に係る発明の特許は、特許法第29条の2第1項の規定に違反してされたものであるから、
いずれも、同法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである。


a.刊行物1:実願昭63-120745号(実開平2-43228号公報)のマイクロフィルム (特許異議申立人・株式会社ディスク提出の甲第1号)
b.刊行物2:「PPS Report」、第1巻第39号、(株)東洋紡パッケージングプランサービス(1991年4月25日発行)、2〜7頁 (同甲第3号証)
c.刊行物3:SOCIETY of VACUUM COATERS「34th Annual Technical Conference Proceedings」、March17―22,1991 Philadelphia、99〜104頁 (同甲第4号証)
d.刊行物4:SOCIETY of VACUUM COATERS「35th Annual Technical Conference Proceedings」、March 22―27,1992 Baltimore,MD、75〜79頁 (同甲第5号証)
e.刊行物5:紙加工便覧編集委員会編「最新 紙加工便覧」株式会社テックタイムス(昭和63年8月20日発行)、792〜793頁 (同甲第6号証)
f.刊行物6:ザ ビーオーシー グループ インコーポレイテッドにより平成3年8月2日(優先権主張 1990年8月3日米国)に出願され、平成6年4月19日に出願公開された特願平3-282334号の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)の内容を示す特開平6-108255号公報 (同甲第7号証)

5-2.第2回取消理由の概要
本件特許の出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

6.当審の判断
6-1.取消理由についての判断
上記2.に記載のとおり、上記訂正が認められ、訂正前の請求項3及び7が削除されるとともに、第1の層が「包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるように形成され」ていることを特定することを含む訂正をしたことにより、請求項に係る発明は明確となり、第2回取消理由通知で指摘した事項に関する取消理由は既に解消している。
第1回取消理由通知で指摘した取消理由については、本件特許異議の申立ての取消理由と重複するところであるから、以下の「6-2.特許異議の申立ての理由についての判断」で述べる。

6-2.特許異議申立ての理由についての判断
6-2-1.特許法第29条第2項違反について
(1)本件発明1について
甲第1号証には、摘示a1ないしa3の記載から、「ゲーベルトップ型の液体紙容器であって、外側よりPE(1)/紙(2)/ポリエステル(3)(以下、PETという)/SiO2薄膜層(4)/PE(1)の積層構成よりなり、SiO2薄膜層(4)としてはスパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて、厚み100〜3000Åのものであり、また、バリヤー性無機物層として「SiO2」の外に「SiO」、「Si2O3」、「Si3O4」などの珪素酸化物を用いてもよい液体紙容器」の発明が記載されているものと認められる。
本件発明1と甲第1号証に記載の発明(以下、「後者」ということもある。)とを対比する。
後者は、摘示a3によれば、SiO2薄膜層はバリアー性無機物層であり、「SiO2」の外に「SiO」、「Si2O3」、「Si3O4」などの珪素酸化物を用いてもよいことから、本件発明の「xが1.5から2.2の範囲にあるSiOxである第1の層」に相当し、また、後者の「SiO2薄膜層」はPETフィルムを基材として各種蒸着法により蒸着して形成されるもので、「ポリエステル/「SiO2薄膜層」は一体の積層体、すなわち、「ラミネート材」であるといえる。さらに、摘示a1、a3の記載によれば、後者の液体紙容器は、PE/紙/ポリエステル/SiO2薄膜層/PEの積層構成からなるブランクシートを折り曲げて、ゲーベルトップ型の容器を形成するものであるから、後者の「液体紙容器のブランクシート」は折り曲げ可能なものといえるので、ブランクシートを構成する「紙」、「ポリエステル」は折り曲げ可能なもので、かつ「ポリエステル」は可撓性に富む熱可塑性プラスチック材であると解することができる。また、本件発明1のラミネート材は、「さらに折り曲げ可能な厚手の芯層を有し、この芯層が紙層、板紙層若しくは可撓性に富む熱可塑性プラスチック層である」と記載されており、他方、後者における「ポリエステル/SiO2薄膜層」がさらに「紙」に積層されていることからみて、当該「紙」が、本件発明1の「芯層」に対応するといえる。
そして、本件発明の「可撓性に富むラミネート材」は、シリコン酸化物層である第1の層を直接担持した熱可塑性プラスチック材からなる第2の層とを備えるものであるので、後者の「ポリエステル/SiO2薄膜層」は、上記のとおりであるから、本件発明1の「包装容器を成形するように形状化された可撓性に富むラミネート材」に相当する。
しかも、当該技術分野においてゲーベルトップ型容器のブランクシートは、折り目線が設けられるとともに、折り曲げ加工され、継ぎ目部間が接合されてシール包装容器状に形成されるものであり、後者の液体紙容器のブランクシートも明記されてはいないものの、当然に、折り目線が設けられるとともに、シールして包装容器が形成されるものと解されることから、後者の「ポリエステル/SiO2薄膜層」は、明記されてないが、容器形成のための折り目線を有すると共に、その継ぎ目部を有するものと認められる。さらに、摘示a1、a3によれば、液体紙容器の内外層としてPE層が設けられていることからみて、後者の包装容器は継ぎ目部間が接合されてシール包装容器が形成されるものであると認められる。
したがって、後者の「ポリエステル」、「SiO2薄膜層」、「SiO2」、「ポリエステル/SiO2薄膜層」、「紙」及び「液体紙容器」は、それぞれ、本件発明の「第1の層が担持される可撓性に富む熱可撓性プラスチック材からなる第2の層」、「シリコン酸化物層であるバリア性の第1の層」、「ラミネート材」、「さらに折り曲げ可能な厚手の芯層であって、紙層、板紙層もしくは可撓性に富む熱可塑性プラスチック層」及び「包装容器」に相当する。
両者は、「液体食品を包装するための包装容器であって、該包装容器を成形するように形状化された可撓性に富むラミネート材を有し、該ラミネート材は、シリコン酸化物層である第1の層と、該第1の層を直接に担持しかつ可撓性に富む熱可撓性プラスチック材からなる第2の層とを備え、
前記ラミネート材は、さらに折り曲げ可能な厚手の芯層を有し、この芯層が紙層、板紙層もしくは可撓性に富む熱可塑性プラスチック層であり、前記ラミネート材は、容器形成のための折り目線を有すると共に、その継ぎ目部を有し、該継ぎ目部間を接合してシール包装容器が形成されることを特徴とする包装容器。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:シリコン酸化物層が、本件発明1では、「真空中で気化された有機シリコン化合物と酸素の混合物からプラズマ励起化学蒸着法により形成されたものであって、50〜200Åの層厚を有する」ものであるのに対し、甲第1号証に記載の発明では、「スパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて、厚み100〜3000Åのもの」である点、
相違点2:ラミネート材の第1の層のシリコン酸化物層が、本件発明1では、「包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるように形成され」るのに対し、甲第1号証に記載の発明では、最内側となるポリエチレン層が積層されている点。
そこで、先ず、相違点2について検討する。
(a)相違点2について
摘示b1ないしb4によれば、甲第2号証には,液状の飲料等を封入するための紙容器において、中間層に紙容器用積層シートの主体となる厚紙とポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムに対して酸化珪素の蒸着層を有する複合プラスチックフィルムとが積層された積層シートによって製函されたものが記載されているが、酸化珪素の蒸着層の表面にはポリエチレン樹脂のようなヒートシール特性を有する熱可塑性合成樹脂層からなる裏面外側層が積層されている積層構造のものであって、相違点2の珪素酸化物層が封入される液状の内容物と直接接触するように露出させ、用いることは何ら記載も示唆もされていない。
同様に、甲第3ないし第5号証には、摘示c2、d1及びe1によれば、製袋、又は包装用に用いる珪素酸化物の蒸着層とプラスチックフィルムとの積層シートが開示されているだけで、当該蒸着シートをそのまま包装等に直接用いるのか、また、珪素酸化物蒸着層を液体食品と直接接触するように液体紙容器の内側に露出させ、用いることについて何ら記載も示唆もされていない。
このように、珪素酸化物蒸着層を液体紙容器の内側に液体食品と直接接触するように露出させ用いるような技術思想は甲各号証のいずれにも示されておらず、この点が本件特許の出願日以前から食品包装分野において自明であったとする又は周知であったとするだけの証拠も根拠もないから、相違点2は甲第1ないし第5号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
そして、本件発明1は、上記相違点により本件特許明細書に記載された作用効果を奏するものである。

(b)まとめ
以上のとおりであるから、外の相違点について検討するまでもなく、本件発明1が、甲第1号証ないし甲第5号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

(2)訂正後の本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであって、有機シリコン化合物をへキサメチルジシロキサンまたはテトラメチルジシロキサンであると特定するものである。
そして、本件発明2は、本件発明1を引用するもので、上記本件発明2において特定した点に加え、上記6-2-1.(1)において本件発明1について記載したとおりの相違点1、2を有するものであるから、上記したとおり、本件発明1が甲第1ないし第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明1と同様の理由により本件発明2は、甲第1号証ないし第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明2に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

(3)訂正後の本件発明3について
本件発明3は、本件発明1における継ぎ目部が超音波加熱により接合されている点を特定し、新たな発明の構成に欠くことができない事項とするものである。
そして、本件発明3は、本件発明1を引用するもので、上記本件発明3において特定した点に加え、上記6-2-1.(1)において本件発明1について記載したとおりの相違点1、2を有するものであり、そして、甲第6号証は、紙容器におけるシール法について記載するのみで、珪素酸化物の蒸着層とプラスチックフィルムとの積層シートについて記載するところも、ましてや、珪素酸化物層が封入される液状の内容物と直接接触するように露出させ、用いることは何ら記載も示唆もされていないことから、上記したとおり、本件発明1が甲第1ないし第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明1と同様の理由により本件発明3は、甲第1号証ないし第6号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明3に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

(4)訂正後の本件発明4について
本件発明4は、本件発明1である液体食品を包装するための包装容器を形成するためのブランクの発明である。
一方、甲第1号証には、「6-2-1.(1)本件発明1について」において記載したとおりの液体紙容器の発明が記載されている。
そして、摘示a3によれば、甲第1号証に記載のゲーベルトップ型の液体紙容器は一枚のブランクシートより形成されるものであることが記載されている。
してみると、甲第1号証には、「外側よりPE(1)/紙(2)/ポリエステル(3)(以下、PETという)/SiO2薄膜層(4)/PE(1)」の積層構成よりなり、SiO2薄膜層としてはスパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて、厚み100〜3000Åのものであり、また、バリヤー性無機物層として「SiO2」の外に「SiO」、「Si2O3」、「Si3O4」などの珪素酸化物を用いてもよい液体紙容器のブランクシート」の発明が記載されているものと認められる。
本件発明4と甲第1号証記載の発明(以下、「後者」ということもある。)とを対比する。
摘示a3によれば、後者の「SiO2薄膜層」はバリアー性無機物層であり、「SiO2」の外に「SiO」、「Si2O3」、「Si3O4」などの珪素酸化物を用いてもよいことから、本件発明の「xが1.5から2.2の範囲にあるSiOxである第1の層」に相当し、また、後者の「SiO2薄膜層」はPETフィルムを基材として各種蒸着法により蒸着して形成されるもので、「ポリエステル/SiO2薄膜層」は一体の積層体、すなわち、「ラミネート材」であるといえる。さらに、摘示a1、a3の記載から、後者の液体紙容器は、「PE/紙/PET/SiO2薄膜層/PE」の積層構成よりなるブランクシートを折り曲げて、ゲーベルトップ型の容器を形成するものであるから、後者の「液体紙容器のブランクシート」は折り曲げ可能なものといえる。このことから、ブランクシートを構成する「ポリエステル」もまた折り曲げ可能な層であり、可撓性に富む熱可塑性プラスチック材であると解することができる。
そして、本件発明4の「可撓性に富むラミネート材」は、シリコン酸化物層である第1の層を直接担持した熱可塑性プラスチック材からなる第2の層とを備えるものであるので、後者の「ポリエステル/SiO2薄膜層」は、上記のとおりであるから、本件発明4の「ラミネート材」に相当する。
したがって、後者の「ポリエステル」、「SiO2薄膜層」、「ポリエステル(3)/SiO2薄膜層」及び「ブランクシート」は、それぞれ、本件発明4の「第1の層が担持される可撓性に富む熱可撓性プラスチック材からなる第2の層」、「シリコン酸化物層であるバリア性の第1の層」、「ラミネート材」及び「包装容器のブランク」に相当する。
しかも、当該技術分野においてゲーベルトップ型容器のブランクシートは、折り目線を設けられるものであり、折り曲げ加工され、継ぎ目部間が接合されてシール包装容器状に形成されるものであることは周知のことである。したがって、後者の液体紙容器のブランクシートも明記されてはいないものの、折り目線を設けるとともに、シールする手段を有しているものと解され、さらに、折れ目線を施されることから、薄膜層も折り曲げ線で変形されるものであると解される。すなわち、後者の紙に「ポリエステル/SiO2薄膜層」を積層したラミネート材は、明記されてないが、容器形成のための折り目線を有するとともに、シール包装容器にするためのシールする手段を包含するものであって、「ポリエステル/SiO2」のシリコン酸化物層は折り曲げ線で変形されているものと認められる。
よって、両者は、「液体食品を包装するために予め形成された包装容器のブランクであって、
可撓性に富むラミネート材を有し、
該ラミネート材は、xが1.5から2.2の範囲にあるSiOxである第1の層と、
第1の層が担持される可撓性に富む熱可撓性プラスチック材からなる第2の層とを備え、 前記ラミネート材は、その折り曲げを容易にするための折り目線を有し、第1の層は折り曲げ線で変形されており、液体食品用シール包装容器を成形するために折り曲げられるとき該ラミネート材をシールする手段を包含することを特徴とする液体紙容器のブランク。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:第1の層のシリコン酸化物層が、本件発明4では、「真空中で気化された有機シリコン化合物と酸素の混合物からプラズマ励起化学蒸着法により形成されたものであって、50〜200Åの層厚を有する」ものであるのに対し、甲第1号証に記載の発明では、「スパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて、厚み100〜3000Åのもの」である点、
相違点2:ラミネート材の第1の層のシリコン酸化物層が、本件発明4では、「包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるように形成され」るのに対し、甲第1号証に記載の発明では、最内側となるポリエチレン層が積層されている点。
しかしながら、本件発明4の上記相違点2については、すでに「6-2-1.(1)本件発明1について」の(a)において記載したとおりの理由により甲第1ないし第5号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
したがって、本件発明4は、外の相違点について検討するまでもなく、甲第1ないし第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明4に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

(5)訂正後の本件発明5について
本件発明5は、本件発明4において、その第1の層が50Åを超えかつ500Å未満の厚みを有する点を規定するものである。
しかしながら、本件発明5は、本件発明4を引用するもので、上記本件発明5において特定した点に加え、上記6-2-1.(4)において本件発明4について記載したとおりの相違点1、2を有するものであるから、上記したとおり、本件発明4が甲第1ないし第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明4と同様の理由により本件発明5は、甲第1号証ないし第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明5に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

(6)訂正後の本件発明6について
本件発明6は、本件発明1である液体食品を包装するための包装容器を形成するための包装ラミネート材の発明である。
一方、甲第1号証には、「6-2-1.(1)本件発明1について」において記載したとおりの液体紙容器の発明が記載されている。
そして、摘示a3によれば、甲第1号証に記載のゲーベルトップ型の液体紙容器は一枚のブランクシートより形成されるものであることが記載されていることから、実質的に包装ラミネート材が記載されているといえる。
してみると、甲第1号証には、「外側よりPE(1)/紙(2)/ポリエステル(3)(以下、PETという)/SiO2薄膜層(4)/PE(1)の積層構成よりなり、SiO2薄膜層(4)としてはスパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて、厚み100〜3000Åのものであり、また、バリヤー性無機物層として「SiO2」の外に「SiO」、「Si2O3」、「Si3O4」などの珪素酸化物を用いてもよい液体紙容器を作るためのブランクシート」の発明が記載されているものと認められる。
本件発明6と甲第1号証記載の発明(以下、「後者」ということもある。)とを対比する。
摘示a3によれば、後者の「SiO2薄膜層」はバリアー性無機物層であり、本件発明と同じシリコン酸化物層からなることから、本件発明6と同じように芳香バリヤ性も内在するものと解することができ、また、PETフィルムを基材として蒸着して形成されるもので、「ポリエステル/SiO2薄膜層」は一体の積層体、すなわち、「ラミネート材」であるといえる。さらに、摘示a1、a3の記載によれば、後者の液体紙容器は、PE/紙/PET/SiO2薄膜層/PEの積層構成からなるブランクシートより形成され、後者における「ポリエステル/SiO2薄膜層」がさらにブランクシートを構成する「紙」に積層され、さらに、後者の「液体紙容器のブランクシート」は折り曲げてゲーベルトップ型の容器を形成するものであるから、後者の「液体紙容器のブランクシート」は、言うなれば、「包装ラミネート材」であって、折り曲げ可能なものといえる。そして、後者のブランクシートを構成する「紙」が、本件発明6の「芯層」に対応し、折り曲げ可能であり、可撓性の層であると解することができる。
したがって、後者の「SiO2薄膜層」、「紙」及び「ブランクシート」は、それぞれ、本件発明の「シリコン酸化物層であるバリア性の第1の層」、「紙層、板紙層若しくは可撓性に富む熱可撓性プラスチック層である折り曲げ可能な芯層」及び「包装ラミネート材」に相当する。
よって、両者は、「液体食品を包装し、ガス及び芳香バリヤ特性を有する包装容器を作るための包装ラミネート材であって、
該ラミネート材は、紙層、板紙層若しくは可撓性に富む熱可撓性プラスチック層である折り曲げ可能な芯層と、シリコン酸化物層であるバリア性の第1の層とを備え、
ることを特徴とする包装ラミネート材。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:バリア性の第1の層のシリコン酸化物層が、本件発明6では、「プラズマ励起化学蒸着法により形成されたもので、50Åを超えかつ500Å未満の厚みである」のに対し、甲第1号証に記載の発明では、「スパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて、厚み100〜3000Åのもの」である点、
相違点2:ラミネート材の第1の層のシリコン酸化物層が、本件発明6では、「包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるように形成され」るのに対し、甲第1号証に記載の発明では、最内側となるポリエチレン層が積層されている点。
しかしながら、上記両相違点は、上記相違点1が本件発明1における相違点1との比較でシリコン酸化物が具体的に特定されておらず、厚みの範囲が広い範囲になっている点で相違するだけであるから、上記両相違点は、すでに上記「6-2-1.(1)本件発明1について」の(a)において記載したとおりの理由により甲第1ないし第5号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
したがって、本件発明6は、甲第1ないし第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明6に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

(7)訂正後の本件発明7について
本件発明7は、本件発明1である液体食品を包装するための包装容器を形成するための包装用ラミネート材の発明である。
一方、甲第1号証には、「6-2-1.(1)本件発明1について」において記載したとおりの液体紙容器の発明が記載されており、摘示a3によれば、甲第1号証に記載のゲーベルトップ型の液体紙容器は一枚のブランクシートより形成されるものであることが記載されていることから、実質的に包装ラミネート材が記載されているといえる。
してみると、甲第1号証には、「外側よりPE(1)/紙(2)/ポリエステル(3)(以下、PETという)/SiO2薄膜層(4)/PE(1)の積層構成からなり、SiO2薄膜層としてはスパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて、厚み100〜3000Åとするものであり、また、バリヤー性無機物層として「SiO2」の外に「SiO」、「Si2O3」、「Si3O4」などの珪素酸化物を用いてもよい液体紙容器を作るための包装ラミネート材」の発明が記載されているものと認められる。
本件発明7と甲第1号証に記載の発明(以下、「後者」ということもある。)とを対比する。
摘示a3によれば、後者の「SiO2薄膜層」はバリアー性無機物層であり、本件発明7と同じシリコン酸化物層からなることから本件発明7と同じように芳香バリヤ性も内在するものと解することができ、また、PETフィルムを基材として蒸着して形成されるもので、「ポリエステル/SiO2薄膜層」は一体の積層体であるから、「ラミネート材」に対応するものであるといえる。さらに、摘示a1、a3の記載から、後者の液体紙容器は、「PE/紙/PET/SiO2薄膜層/PE」の複数の層からなる積層構成のブランクシートより形成され、折り曲げてゲーベルトップ型の容器を形成するものであって、「液体紙容器のブランクシート」は折り曲げ可能なものといえるとともに、後者の「液体紙容器のブランクシート」は、言うなれば、「包装ラミネート材」であるといえる。このことから、ブランクシートを構成する「ポリエステル」は折り曲げ可能であり、可撓性に富む熱可塑性プラスチック材の層であると解することができるとともに、液体紙容器の積層構造は、ラミネート材の内外側にPE層が配置されており、ゲーベルトップ型の容器を折り曲げ形成できることから、両外層のPEは、熱シール可能な熱可塑性プラスチック層であるといえる。
したがって、後者の「SiO2薄膜層」、「ポリエステル」、「PE」及び「ブランクシート」は、それぞれ、本件発明7の「シリコン酸化物層であるバリア性の第1の層」、「第1の層を担持する可撓性に富む熱可撓性プラスチック層からなる第2の層」、「熱シール可能な熱可塑性プラスチック層」及び「包装ラミネート材」に相当する。
よって、両者は、「液体食品を包装し、ガス及び芳香バリヤ特性を有する包装容器を作るための包装ラミネート材であって、
該ラミネート材は、複数の層からなり、
該複数の層の1の層が、シリコン酸化物であるバリア性の第1の層であり、
前記複数の層の他の層が、第1の層を担持する可撓性に富む熱可撓性プラスチック材からなる第2の層であり、
前記ラミネート材の外側の1の層が熱シール可能な熱可塑性プラスチック層であることを特徴とする包装ラミネート材。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:バリア性の第1の層のシリコン酸化物層が、本件発明7では、「プラズマ励起化学蒸着法により形成されたものである」のに対し、甲第1号証に記載の発明では、「スパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて、厚み100〜3000Åのもの」である点、
相違点2:ラミネート材の第1の層のシリコン酸化物層が、本件発明7では、「包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるように形成され」るのに対し、甲第1号証に記載の発明では、最内側となるポリエチレン層が積層されている点。
相違点3:ラミネート材が、本件発明7では「7.5%までの伸びに対して30[cc/m2・24hr・1.0気圧]以下の酸素透過率を有する」のに対し、甲第1号証に記載の発明では酸素透過率は伸びを考慮したものではなく、PET(12μ)/SiO2(1000Å)のもので、0.2[cc/m2・24hr・1.0気圧]である点。
しかしながら、上記相違点のうち相違点1、2についてみると、上記相違点1はすでに上記「6-2-1.(1)本件発明1において、本件発明1と甲第1号証に記載の発明とを対比した時の相違点1の「シリコン酸化物が具体的に特定されておらず、厚みについては規定していない」ものであり、相違点2については変わるところがない。
したがって、上記相違点のうち相違点2については、すでに上記「6-2-1.(1)本件発明1について」の(a)において記載した判断を変える必要を認められないから、相違点2は甲第1ないし第5号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
以上のとおりであるから、本件発明7は、相違点2が上記したとおり甲第1号証ないし第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することができない以上、この点において甲第1ないし第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明7に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

6-2-2.特許法第29条第1項第3号について
訂正前の請求項8に係る発明は、訂正後の本件発明6に対応する包装ラミネート材の発明である。
甲第3ないし第5号証には、摘示c1〜c3、摘示d1〜d4及びe1〜e3の記載によれば、甲第3号証には、製袋されるものとして、また、甲第4号証、甲第5号証には包装に使用されるものとして、それぞれ、ラミネート材であるQLF(R)フィルムが記載されると共に、QLF(R)フィルムはPETフイルム上にプラズマ励起化学蒸着法によりSiOx層を積層したものであることが記載され、また、甲第3号証には、蒸着源としてオルガノシロキサンを使用するものであることが記載され、蒸着厚みは600Å以下とすること、また、表1には400〜650Åで、酸素透過率が0.3〜0.6[cc/m2・24hr]あること、また、甲第4号証には、有機シリコン源としてテトラメチレンジシロキサンを用いたQLF(R)バリアコート膜厚が75Å〜650Åの範囲の各膜厚毎の酸素透過率〔OXTRAN(cc/100in2/day)〕が2.58〜0.03であること、さらに、甲第5号証には、食品包装への適用が記載されると共に、4〜13Pa(30〜100millitorr)の圧力範囲でテトラエチルジシロキサン、酸素そしてヘリウムのガス状混合物が利用されたQLFコーティングプロセスにより10nm(100Å)-30nm(300Å)の膜厚でのSiO2コーティングが製造され、12μmPETの酸素透過率を115から1cm3/m2/dayに改善するものであること、がそれぞれ記載されている。
本件発明6と甲第3ないし第5号証に記載の発明を対比すると、甲第3号証ないし甲第5号証には、有機シリコン源を用いてプラズマ励起化学蒸着法によりSiOx(xは1.7以上)層をPETフイルム上に積層したQLF(R)フィルムの包装ラミネート材の発明が記載されているものと認められるから、両者は、「食品を包装し、ガスバリヤ特性を有する包装容器を作るための包装ラミネート材であって、
該ラミネート材は、可撓性に富む熱可撓性プラスチック層である折り曲げ可能な芯層と、シリコン酸化物層であるバリア性の第1の層とを備え、
ることを特徴とする包装ラミネート材。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:バリア性の第1の層のシリコン酸化物層が、本件発明6では、「プラズマ励起化学蒸着法により形成される、50Åを超えかつ500Å未満の厚み」のものであるのに対し、甲第1号証に記載の発明では、「スパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて、厚み100〜3000Åのもの」である点、
相違点2:ラミネート材の第1の層のシリコン酸化物層が、本件発明6では、「包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるように形成され」るのに対し、甲第3ないし第5号証に記載の発明では、液体食品と直接接触するかどうかについて明示するところがない点。
しかしながら、相違点2については、すでに上記「6-2-1.(1)本件発明1についての(a)において記載したとおり、実質的な相違点である。
よって、本件発明6は、甲第3ないし第5号証に記載された発明ではないから、本件発明6に係る特許が、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるとはいえない。

6-2-2.特許法第29条の2について
本件発明6は、本件発明1である液体食品を包装するための包装容器を形成するための包装ラミネート材の発明である。
一方、甲第7号証の先願明細書には、摘示g1ないしg4によれば、蒸気障壁特性を有するシリコン酸化物基薄膜をPETフイルム上に沈積した物品に関する発明が開示され、該物品は医療応用における血清及び血液袋、酸素に極めて鋭敏な食品の包装のように、優れた蒸気及びガス障壁特性を有する不活性で、且つ柔軟な包装を必要とする場合に有用であることが記載され、また、揮発した有機シリコン化合物、酸素、及び不活性ガスを含むガス流を低圧下で導入し、プラズマ内でガス流の反応生成物であるシリコン酸化物の層を100乃至約400オングストロームの厚さで被膜したラミネート材が記載されている。そして、この物品において、揮発した有機シリコン化合物、酸素、及び不活性ガスを含むガス流を低圧下で導入し、プラズマ内でガス流の反応生成物であるシリコン酸化物の層が形成される方法は、プラズマ励起化学蒸着法に相当する。
よって、甲第7号証には、「柔軟な包装に用いるガスバリア性のラミネート材であって、柔軟なポリマ(ポリエチレン、ポリプロピレン及びPET)にプラズマ励起化学蒸着法により形成されたシリコン酸化物であり、所定の厚みが100Å乃至約400Åであるバリア性の層を形成した包装ラミネート材の発明(以下、「先願明細書に記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
そこで、本件発明6と先願明細書に記載の発明とを対比すると、
両者は、「ガスバリヤ特性を有する包装ラミネート材であって、
該ラミネート材は、可撓性に富む熱可撓性プラスチック層と、プラズマ励起化学蒸着法により形成されたシリコン酸化物であり、厚みが100Å乃至約400Åのシリコン酸化物層であるバリア性の第1の層とを備えることを特徴とする包装ラミネート材。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:包装ラミネート材が、本件発明6では「液体食品を包装する包装容器を作るためのものであり、紙層、板紙層若しくは可撓性に富む熱可塑性プラスチック層である折り曲げ可能な芯層を備え」るのに対し、先願明細書に記載の発明では「柔軟な包装に用いるラミネート材」と特定されているものである点。
相違点2:ラミネート材のシリコン酸化物層が、本件発明6では、「包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるように形成され」るのに対し、先願明細書に記載の発明では、プラスチック表面に形成されることのみ明示されているものの、内容物と直接接触するように内側に露出しているものかどうか触れるところがない点。
上記相違点1について検討するに、本件発明のラミネート材は折り曲げ可能な芯層と記載があるように、包装容器といっても製袋するための柔軟な包装材ではなく、折り曲げて容器形状に形成し、折り曲げ、特定の形状に加工された包装容器であるのに対し、先願明細書に記載の発明は、「柔軟な包装を必要とする場合に有用であると」の記載にあるように、さらに、例示として血清及び血液袋が挙げられているように包装袋のような製袋に用いるラミネート材に関するものと解されるから、相違点1は実質的な相違点といえる。
次に、相違点2について検討するに、相違点2に記載のとおり本件発明のラミネート材のシリコン酸化物層は包装される液体食品と直接接触するように包装容器の内側において露出するように形成されるものであるが、先願明細書に記載の発明のシリコン酸化物層は、包装される内容物は液体も包含されているものではあるが、内容物と直接接触するように露出するように形成されているとの記載がないばかりか、内容物と直接接触する包装ラミネート材自体が周知であったとの証拠もなく、先願明細書に記載の発明のラミネート材は医療用に用いられていることからみても、形成した蒸着層をむき出しのまま使用するとは考えられず、明示されているラミネート材自体は2層構造として把握されるものの、実際の包装ラミネート材としては、シリコン酸化物層が包装容器の内側において露出する状態で使用されるものとは解されないことから、相違点2は実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明6は先願明細書に記載の発明と同一であるとはいえない。
よって、本件発明6は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

7.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1ないし7に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1ないし7に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
気体および芳香バリア特性を備える包装ラミネート材
(57)【特許請求の範囲】
(1)液体食品を包装するための包装容器であって、
該包装容器を成形するように形状化された可撓性に富むラミネート材を有し、
該ラミネート材は、xが1.5から2.2の範囲にあるSiOxであり、真空中で気化された有機シリコン化合物と酸素の混合物からプラズマ励起化学蒸着法により形成された第1の層であって、50〜200Åの層厚を有する薄いシリコン酸化物層である第1の層と、該第1の層を直接に担持しかつ可撓性に富む熱可撓性プラスチック材からなる第2の層とを備え、前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出し、
前記ラミネート材は、さらに折り曲げ可能な厚手の芯層を有し、この芯層が紙層、板紙層もしくは可撓性に富む熱可塑性プラスチック層であり、そして
前記ラミネート材は、容器形成のための折り目線を有すると共に、その継ぎ目部を有し、該継ぎ目部間を接合してシール包装容器が形成される
ことを特徴とする包装容器。
(2)請求項1に記載された包装容器において、前記有機シリコン化合物が、ヘキサメチルジシロキサン又はテトラメチルジシロキサンであることを特徴とする包装容器。
(3)請求項1に記載された包装容器において、前記継ぎ目部間が超音波加熱により接合されていることを特徴とする包装容器。
(4)液体食品を包装するために予め形成された包装容器のブランクであって、
可撓性に富むラミネート材を有し、
該ラミネート材は、xが1.5から2.2の範囲にあるSiOxであり、プラズマ励起化学蒸着法により形成された第1の層と、
第1の層が担持される可撓性に富む熱可塑性プラスチック材からなる第2の層とを備え、前記第1の層が、包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるよう形成され、
前記ラミネート材は、その折り曲げを容易にするための折り目線を有し、前記第1の層は該折り目線で変形されており、前記ラミネート材は、傷み易い液体食品用シール包装容器を成形するために折り曲げられるとき該ラミネート材をシールする手段を包含する
ことを特徴とするブランク。
(5)請求項4に記載されたブランクにおいて、前記第1の層が50Åを超えかつ500Å未満の厚みを有することを特徴とするブランク。
(6)液体食品を包装し、良好なガスおよび芳香バリア特性を有する包装容器を作るための包装ラミネート材であって、
該ラミネート材は、紙層、板紙層若しくは可撓性に富む熱可塑性プラスチック層である折り曲げ可能な芯層と、プラズマ励起化学蒸着法により形成されたシリコン酸化物であり、50Åを超えかつ500Å未満の厚みを有するバリア性の第1の層とを備え、
前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出するよう形成される
ことを特徴とする包装ラミネート材。
(7)液体食品を包装し、良好なガスおよび芳香バリア特性を有する包装容器を作るための包装ラミネート材であって、
該ラミネート材は、複数の層からなり、
該複数の層の1の層が、プラズマ励起化学蒸着により形成されたシリコン酸化物であるバリア性の第1の層であり、前記第1の層が包装される液体食品と直接接触するように、前記包装容器の内側において露出されるよう形成され、
前記複数の層の他の層が、第1の層を担持する可撓性に富む熱可塑性プラスチック材からなる第2の層であり、
前記ラミネート材の外側の1の層が熱シール可能な熱可塑性プラスチック層であり、
前記ラミネート材が、7.5%までの伸びに対して30[cc/m2・24hr・1.0気圧]以下の酸素透過率を有することを特徴とする包装ラミネート材。
【発明の詳細な説明】
〈産業上の利用分野〉
本発明は包装ラミネート材に関するものであり、より具体的には食料品を包装するためのラミネート材にして改良されたバリア特性を備えたラミネート材に関するものである。
〈従来の技術〉
柔軟性に富んだ包装ラミネート材は多年にわたって食料品を包装するために用いられてきた。たとえば、牛乳はラミネート板紙にして両側にポリエチレンのコーティングを有するラミネート部材から作られたカートンにより包装されているが、この場合カートンの表面は互いに熱シールされて所望の形状のカートンが形成される。オレンジジュースのような幾つかの食品はカートンの壁を通しての酸素の貫通のためにそれらの栄養学的価値を失ってしまう。カートンへの酸素の侵入を減じて、ビタミンCのような栄養素の劣化を最小にするため、ラミネート材にはアルミニウムフォイル(箔)の一層を添加してやることが普通である。アルミニウムフォイルはバリア材料としては有効であるが、それを使用するという事は環境上の問題を誘起せしめる。アルミニウムフォイルにかわる実際的な代替物にしてすぐれた酸素、ガスおよび芳香バリア特性を備えつつ、しかも使用後に容易に廃棄可能なものを開発する種々の試みがなされてきた。
食品を包装するプロセスにおいて、カートンブランク(素材)は1つまたはそれ以上の折り曲げ線に沿って折り曲げることにより同カートンが適正な形状にされ、包装材からなる重なり合い部分が形成され、適当な接着剤を添加するかまたは熱可塑性層を互いに熱シーリングすることによりシール部を形成させることが可能である。ラミネート材に折り目をつけるという事はラミネート材に応力を誘起させるが同応力は漏洩を誘起せしめるか、または少なくともラミネート材を十分に弱化させ、その後の取扱い中にカートンの漏洩をもたらす可能性がある。
〈発明が解決しようとする課題〉
従来のバリアラミネート材の欠陥に鑑みて、本発明の1つの目的はすぐれたバリア特性を有する包装ラミネート材を提供することである。
本発明の別の目的は包装ラミネート材にして、可撓性にすぐれ、通常の包装機械を用いてパッケージへと容易に形成可能なラミネート材を提供することである。
別の目的は環境に害を与えること無く容易に廃棄可能な包装ラミネート材を提供することである。
〈課題を解決するための手段〉
これらの目的はラミネート材の基材の上に化学的プラズマ蒸着によりシリコン酸化物の層を添加したラミネート材によって達成される。堆積されるシリコン酸化物は一般組成がSiOxであらわされるものであり、xは1.5から2.2の間の範囲内にある。
プラズマ励起化学蒸着法(PECVD法)は既知の手法であり、同手法は本発明にかかり適用される時には、例えばテトラメチル・ジシロキサン(TMDSO)またはヘキサメチル・ジシロキサン(HMDSO)のような気化された有機シリコン化合物と、不活性ガス(例えばヘリウム)および酸素ガスの混合物が真空チャンバ内に送給され、そこでプラズマが点火されると、前記気化したシリコン化合物が酸素と反応し、関連するシリコン酸化物化合物が形成され、該化合物が真空チャンバ内の冷却された基板すなわち芯層へと堆積または化学的に結合される。
真空チャンバ内に送給されるガス混合物内の酸素の量を規制することにより、真空チャンバ内の化学反応をコントロールして、このようにして形成されたシリコン酸化物がSiOxなる化学式(ただしxは1.5より小さな値から2.5を大幅に上まわる値迄変化する)を占めるようにしてやることが可能である。本発明によれば、前記化学反応はxが1.5と2.2の間にくるようにコントロールされているが、この範囲のxにおいては形成されたシリコン酸化物化合物が酸素ガスおよび芳香バリア並びに包装ラミネート材にとって価値のある他の特性値に関して最適な特性を示すことが証明されている。
上記化学プラズマ蒸着プロセスのコントロールは、シリコン酸化物化合物が直接基板の表面上に形成され、その際の化学反応の収量が例えば45%のごとく高くなるように、かつまたかくして形成された基板または芯層上のシリコン酸化物層の緊密性がバリアの観点からして十分高くなり、シリコン酸化物層を極めて薄く作っても所望のバリア特性が失われないようにすることが出来るように行なわれている。したがって、シリコン酸化物層を包装容器の内側において露出し、包装された液体食品と直接接触させることができる。好ましい基板ないし基材はポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレン・テレフタレート(PET)のような可撓性に富んだ熱可塑性材料である。
PECVD法によって形成されたシリコン酸化物層は破壊する迄にかなりの伸びに耐えることが出来る。このことはシリコン酸化物層をラミネート材内に組込んで液体食品を封入包装する時には特に重要な特性である。典型的には、前記包装ラミネート材はパッケージを形成するための曲げ、折り返しを容易にするためラミネートの表面内に形成された折り曲げ線を備えている。破壊せずに変形出来るシリコン酸化物層の能力によりこれら折り曲げ線に沿っての漏洩は発生しない。プラズマ励起化学蒸着によって形成された薄膜のシリコン酸化物層は液体食品を封入包装するのに特に有用である。
〈好ましい実施例の説明〉
PECVD法を利用して基材上に薄膜を形成する種々のプロセスが知られている。米国特許第4,888,199号は制御条件下にあるプラズマを利用して基材の表面上に薄膜を堆積するプロセスを記述している。プラズマは囲まれた反応チャンバ内において形成されており、該チャンバ内には基材が配置され、薄膜がその表面上に堆積される。前記基材は金属、ガラスまたはある種のプラスチックスから形成させることが可能である。空気は高真空度が得られる迄チャンバからポンプで吸出される。例えば、ヘキサメチルジシロキサンのような有機シリコン化合物が酸素およびヘリウムとともにチャンバ内に導入され、かくしてシリコン分子および酸素分子が基材の表面上に堆積される。得られる膜は前記特許第4,888,199号によれば極めて硬質であり、ひっかき傷がつきにくく、光学的に透明であり、可撓性に富んだ基材に良好に付着する薄膜であるとされている。この特許の開示事項はその全容がここで組入れられている。米国特許第5,224,441号には改良されたPECVD法プロセスが記述されており、この特許もまたその全容が本発明に組入れられている。この特許に記載されたプロセスにおいては、シリコン酸化物が堆積される基材は約20℃の温度に保持されており、基材はポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリカーボネート樹脂から形成することが出来る。上記特許には、シリコン酸化物膜をして厚味が100Å(オングストローム)〜約400Å(0.0004mils乃至約0.0016mils)であり、基材は厚味が1.25×105Å〜2.5×105Å(約0.5乃至1mil)の食品包装用途のものであると記載されている。
牛乳およびジュースのような液体状食品は現在ラミネート化された包装材料から形成されたカートンによりパッケージされている。このパッケージは、ゲーブル(切妻)トップカートンまたはテトラブリクパッケージのような長方形パッケージの形態のものとすることが出来る。ゲーブルトップのカートンは予め切れ目を入れたブランクから形成されており、このブランクは充填機械へと供給され、該機械はブランクを折り曲げるとともに、折り目をシールしてカートンを形成し、同カートンをして液体状食品で充満し、同カートンのトップを閉じてシールする。長方形パッケージは包装材からなるロール材を徐々にチューブへと形成し、液体状食品で充満し、熱シーリングにより閉じることで形成してやることが出来る。両方の場合において、包装材料にはそれを予めえがかれた線に沿って折り曲げ易くするために折り曲げ線が提供されている。
ゲーブルトップのカートンを形成するための慣用ブランク2が第3図および第4図に示されている。ブランクは包装材料の連続ウェブから形成されており、単一のブランクは第3図内の寸法L部に対応している。折り曲げ線4は刻印加工または他の方法でカートンの内側表面となるべき表面に形成される。ラミネート化されたブランク2は紙または板紙6の芯層6と、典型的にはアルミニウム箔であるバリア層8とを有している。ブランク2はまた低密度ポリエチレン(LDPE)からなる内側製品接触層10とLDPEからなる外側層12(第4図)とを有している。折り曲げ線4は内側LDPE層10、バリア層8および芯層6内に凹部を誘起せしめる。ブランク2がカートンへと折り曲げられ、閉じられると、部分14(第3図)は121℃(250°F)から260℃(500°F)の間の温度で熱シールされ、内側および外側LDPE層が互いに接着される。
SiOxの薄肉コーティングはプラズマ励起化学蒸着法(PECVD法)によって熱可塑性基材上にコーティングされた時に有効な酸素バリアを提供するということが見出されている。このSiOxコーティングは慣用の化学蒸着法によって形成されるシリコン酸化物コーティングよりも高い延性を備えている。本発明に係るSiOxの層を含んだ包装ラミネート材はバリア層内にクラックや孔を生ずることなく、通常の包装機械上で折り曲げ、熱シールしてやることが可能である。
第1図に示すように、PECVD法で作成されるシリコン酸化物コーティングは該シリコン酸化物コーティング内にクラックが生じて漏洩を生じさせる迄に実質的な量の伸びに耐えることが出来る。第1図のデータを提供するために試験された特定のラミネート材はプラズマ励起化学蒸着法により堆積されたシリコン酸化物のラミネート材であり、平均厚味は200Åであった。基材は12μmの厚味を有するポリエステルのシートであった。第1図に示すように、これと実質的に同一の厚味を有し蒸着法で作成されたコーティングは実質的に酸素透過率を増大させることなく耐えられる伸び量はより小さくなっている。これはプラズマ励起化学蒸着法においてはコーティングと基材の間には化学結合が生じているのに対して、慣用の蒸着法においてはそれが生じていないためであると説明出来るように思われる。
薄肉のシリコン酸化物を作成することが望ましい。何故ならば、薄肉の範囲ではコーティングプロセスをより迅速に進めることが出来るからである。また、基材上のコーティングの厚味が大きいと、ラミネート材がカーリングを起し易く、これは後で製造をより困難にするからである。
第2図はラミネート材の酸素透過率とシリコン酸化物層の厚味との関係をグラフにあらわした図である。約50Å以下ではシリコン酸化物は十分に基材を被覆していないので酸素に対する実質的なバリアの作用を果していない。1000Åを超えると透過率が増大しているのは内部応力が形成された結果のためと考えられる。好ましくは、上記SiOx層は50Åから500Åの間の厚味を備えている。
プラズマ励起化学蒸着法により製造されたSiOxバリア層を液体状食品のための包装ラミネート材として利用するためにはある種の付加的層が含まれるべきである。
本発明の包装ラミネート材の1つの好ましい実施例が第5図に示されている。ラミネート材10は2つの予め製造されたラミネート材10aおよび10bを有しており、これらは接着剤からなる中間層11によって互いに永久的に結合される。第1のラミネート材10aは紙または板紙12からなる剛固ではあるが折り曲げ可能な芯層12と、熱シール可能なLDPEよりなる2つの外側層13および14とを有している。
第2のラミネート材10bは基材ないしキャリア層15を備えており、該層上には薄肉のSiOx層16がPECVD法によって堆積されている。前記層16は酸素ガスおよび芳香バリアとして作用しており、一段式がxを1.5〜2.2としてSiOxであらわされるシリコン酸化物からなっている。PECVD法によって基材またはキャリア層15上に堆積されるシリコン酸化物層16は50〜500Åの厚味を有しており、該厚味は包装ラミネート材10に所望の酸素ガスおよびバリア特性を付与している。基材またはキャリア層15はLDPE層13とともに液状食品のための包装を形成すべく121℃〜260℃の温度で熱シール可能な可撓性熱可塑性材料である。例えば、キャリア層15はLDPEから形成することが可能である。
包装ラミネート材10は第1のラミネート材10aと第2のラミネート材10bをしてこれらウェブ間に適用される接着剤で互いに接合し、完成された包装ラミネート材10を形成することにより作成される。
第6図は本発明に係る包装ラミネート材の別の実施例であって、折り目形成およびシーリングの際すぐれた酸素ガスおよび芳香バリア特性を示すラミネート材の実施例を示す。包装ラミネート材20は互いに中間の接着剤層21によって永久的に接合される第1のラミネートユニット20aおよび第2のラミネートユニット20bを有している。第1のラミネートユニット20aは紙または板紙からなる剛固ではあるが折り曲げ可撓能な層22と外側のLDPE層23および24を有している。
第2のラミネート材ユニット20bは基材またはキャリア層25を有しており、該層は例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、アモルファスポリエステル、2軸配向したポリエステルまたはポリプロピレンのような可撓性プラスチックからなっており、ラミネート材ユニット20aと対面する側上において、一段式がxを1.5〜2.2としてSiOxであらわされるシリコン酸化物からなる酸素ガスおよび芳香バリア層26を担持している。基材またはキャリア層25の他方の側は熱可塑性プラスチックスからなる外側層27を有しており、該層27はラミネート材20aの外側熱可塑性層23内の熱可塑性プラスチックスと121℃〜260℃の間の温度で熱シール可能であり、中間の接着剤層28の助けを借りて基材またはキャリア層25に接合される。
この実施例に係るラミネート材20においては、酸素ガスおよび芳香バリアとして作用するシリコン酸化物の層はPECVD法によって作成されており、50〜500Åの厚味、好ましくは100〜200Åの厚味を備えている。この厚味は、包装ラミネート材から作られる包装容器に所望の酸素ガスおよび芳香バリア特性を付与するのに十分な厚味である。
包装ラミネート材20は予め作成されたラミネート材ユニット20aのウェブと予め作成されたラミネート材ユニット20bのウェブをして、完成された包装ラミネート材20を形成するべくこれら2つのウェブ間に適用された接着剤層により互いに接合せしめることにより製造することが出来る。
第7図は折り曲げ形成およびシーリングの際すぐれた酸素ガスおよび芳香バリアを示す包装物を製造するための、本発明に係る包装ラミネート材の別の実施例を示す。この包装ラミネート材30は、互いに中間の接着剤層31によって永久的に接合される第1のラミネート材ユニット30aおよび第2のラミネート材ユニット30bを有している。第1のラミネート材ユニット30aは、紙または板紙からなる剛固ではあるが折り曲げ可能な芯層32と、熱可塑性プラスチックス33および34からなる外側の包囲層を有している。
第2のラミネート材ユニット30bは、プラスチックスからなる基材またはキャリア層35を有しており、該層はラミネート材ユニット30aから離れる方の側上において、一段式がxを1.5〜2.2としてSiOxであらわされるシリコン酸化物からなる酸素ガスおよび芳香バリアとして作用する層36を担持している。このシリコン酸化物層36はラミネート材ユニット30aの外側熱可塑性プラスチック層33内の熱可塑性プラスチックと熱シール可能な外側熱可塑性プラスチック層37によって覆われており、該層37はまた中間の接着剤層38を介してシリコン酸化物層36に接合されている。
包装ラミネート材30と第6図の包装ラミネート材20の異なる点は第2のラミネート材ユニット30bが第1のラミネート材ユニット30aにラミネート化される際シリコン酸化物層36が第1のラミネート材ユニット30aから離れるように対面しているという点である。しかしながら、包装ラミネート材20の場合と同様に、シリコン酸化物層36はプラズマ励起化学蒸着法によって製造されており、50〜500Åの厚味を有している。この厚味は包装ラミネート材から作成された包装容器にすぐれた酸素ガスおよび芳香バリア特性を付与するのに十分なものである。
第8図は折り曲げ作用および熱シーリングの際すぐれた酸素ガスおよび芳香バリア特性を示す包装物を製造するための本発明に係る包装ラミネート材の更に別の実施例を示している。包装ラミネート材40は中間接着剤層41によって互いに永久的に接合される第1のラミネート材ユニット40aと第2のラミネート材ユニット40bとを有している。
第1のラミネート材ユニット40aは、例えば発泡または伸延ポリエチレン、発泡または伸延ポリプロピレンまたは無機材充填ポリプロピレンのような熱シール可能なプラスチック材からなる剛固ではあるが折り曲げ可能な芯層42と、熱シール可能な熱可塑性プラスチックスにして前記芯層42に対して熱シーリングによって接合可撓能なプラスチックスからなる外側の包囲層43とを含んでいる。
第2のラミネート材ユニット40bは基材またはキャリア層44を有しており、該層は例えばポリエステルまたはポリプロピレンのような第1のラミネート材ユニット40aの外側熱可塑性プラスチック層43に熱シール可能な熱可塑性プラスチックからなるとともに、第1のラミネート材ユニット40aと対面する側上において層45を担持している。この層45は酸素ガスおよび芳香バリアとして作用しており、一般化学式がxを1.5〜2.2としてSiOxであらわされるシリコン酸化物からなっている。
この実施例のラミネート材40においては、酸素ガスおよび芳香バリアとして作用するシリコン酸化物の層45はプラズマ励起化学蒸着法によって製造されており、包装ラミネート材40から製造される包装容器にすぐれた酸素ガスおよび芳香バリア特性を付与するに十分な50〜500Åの厚味を有している。
第9図は紙または板紙の芯層を有していないバッグタイプのパッケージを製造するための本発明に係る包装ラミネート材50を図式的に例示している。包装ラミネート材50は第1の予め製造されたラミネート材ユニットまたは可撓性プラスチックフィルム50aと、互いに中間接着剤層51によって永久的に接合された第2の予め製造されたユニット50bとを有している。前記第1のラミネート材ユニットまたはプラスチックフィルム50aは通常の熱シーリング機械において121℃〜260℃の温度で熱シールすることの出来る例えばポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンのような柔軟性に富む熱シール可能な熱可塑性プラスチックの単一層からなっている。第2のラミネート材ユニット50bは基材またはキャリア層52を有しており、該層はそのラミネート材ユニット50aと対面する側において、一般化学式がxを1.5〜2.2としてSiOxとしてあらわされるシリコン酸化物からなり酸素ガスおよび芳香バリア層として作用している層53を担持している。基材またはキャリア層52は前記第1のラミネート材ユニット50a内の熱可塑性層に対して121℃〜260℃の温度で熱シール可能な可撓性熱可塑性プラスチックからなっている。例えば、キャリア層52はポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンから形成されることが可能である。
この実施例のラミネート材50においては、酸素ガスおよび芳香バリアとして作用する層53はプラズマ励起化学蒸着法によって製造されており、包装ラミネート材50から製造されたバッグパッケージに所望の酸素ガスおよび芳香バリア特性を付与する50〜500Åの厚味を有している。
包装ラミネート材50は第1のラミネート材ユニット50aの熱可撓性プラスチック層を第2のラミネート材ユニット50bへとこれら2つのユニット間に適用される接着剤層51を介して接合せしめることにより製造される。ラミネート材50は層50a内にかつバリア層53内に部分的に成形用折り曲げ線を含んでいる、前述のパッケージへと成形可能である。これらの線はラミネート材を予め定められた線に沿って折り曲げることを容易ならしめている。ラミネート材50の全ての層が可撓性に富んでいるので、このラミネート材は可撓性壁パッケージを製造するのに用いることが可能である。
第10図はすぐれた酸素ガスおよび芳香バリア特性を示す包装ラミネート材を製造するための、本発明に係る包装ラミネート材を示している。包装ラミネート材70は第1のラミネート材ユニットまたはプラスチックフィルム70aと、第2のユニットにして中間の接着剤層71によって互いに永久的に接合される第2のラミネート材ユニット70bとを有している。第1のラミネート材ユニット70aは例えば発泡または伸延ポリプロピレン、発泡または伸延ポリエステルまたは無機物充填ポリプロピレンのような可撓性に富んだかまたは折り曲げ可能な熱可塑性プラスチック材を有している。
第2のラミネート材ユニット70bは第1のラミネート材ユニット70a内の熱可塑性プラスチックと熱シール可能な熱可塑性プラスチックからなる基材またはキャリア層72を有している。第2のユニット70bの第1のラミネートユニット70aと対面する側は層73を担持しており、該層は一般的化学式がxを1.5〜2.2としてSiOxであらわされるシリコン酸化物からなり、酸素ガスおよび芳香バリアとして作用している。
シリコン酸化物層73はプラズマ励起化学蒸着法によって製造されており、包装ラミネート材70に所望の酸素ガスおよび芳香バリア特性を付与する50〜500Åの厚味を備えている。
前記包装ラミネート材70は第1のラミネート材ユニット70aと第2のラミネート材ユニット70bをしてそれらの間に適用される中間の接着剤層71を介して互いに接合せしめることによって製造される。
第11図はSiOx層がパッケージの内部の製品と直接接触している実施例を示している。この実施例においては、包装ラミネート材80はベース層81を含んでおり、該層は紙、発泡芯、PET、ポリアミド、ポリエチレンまたはポリプロピレンのような可撓性のある適当な材質のものとすることが出来る。ベース層81の外側はLDPE層82によって被覆されている。ベース層の内側において、LDPEの層83は第5図の層15および16に関して前述したごとく、SiOxの薄肉コーティング84を備えている。前記LDPE層83は適当な接着剤によってベース層に接合してやることが可能である。
SiOxコーティングまたは層84はラミネート材が折り曲げられ、熱シールされて容器を形成する時に同ラミネート材の内側に露出されるので、SiOx層84は容器の中身と直接接触することになる。ラミネート材が食品製品に対して用いられる時には、SiOx層84はこの目的のために許容出来る材質である。何故ならば同層は食品内容物に何らの有害な作用を及ぼさないからである。SiOx層84の厚味が小さいために、ラミネート材が慣用の包装機械において121℃〜260℃(250°F〜500°F)の熱シーリング温度で折り曲げられ、成形される時に外側層82と内側層83の間には強固な熱シール結合が形成される。包装ラミネート材80を用いて結合部を形成する別の方法は熱をSiOx層84中に伝達してやる必要無くLDPE層83の軟化を誘起せしめる超音波加熱を採用することである。
第11図の実施例に係る好ましい包装ラミネート材の一例として述べると、外側LDPE層は約15μm(ミクロン)の厚味を有し、内側LDPE層は約15μm(ミクロン)の厚味を有している。ベース層81が存在するならば同属は15μm〜200μm(ミクロン)の厚味を備えているべきである。SiOx層84は50〜500Åの厚味を備えているべきである。これらの厚味の層を有しているラミネート材は良好なバリア特性を有し、漏洩を生ずることなく熱シーリングによりパッケージに成形されることが可能である。
〈発明の効果〉
かくして、本発明によれば、例えば欧州特許第0,378,990号に示されるような従来技術に特有な種類の付随的問題点および欠点を生ずることなく、すぐれた酸素ガスおよび芳香バリア特性を示す、導入部で説明したタイプの包装ラミネート材が実現される。特に、プラズマ化学蒸着法によって製造されるシリコン酸化物を含んだ包装ラミネート材にして、該酸化物は50〜500Åとわずかな厚味しかなくとも、折り曲げ成形によりすぐれた酸素ガスおよび芳香バリア特性を有する包装容器の製造を可能としている包装ラミネート材が実現される。
本発明は特定のラミネート構造と関連して説明されてきたが、同発明は当然のことながらそのような構造にのみ限定されるものではない。付記された請求の範囲に規定された本発明の概念の精神および範囲から離脱することなく、基材またはキャリア層および芯層の両者に関してここに述べた以外の他の材質を選定することは可能であり、当業者にとっては自明のことである。例えば、ここに開示した発明概念の範囲内において、基材またはキャリア層のための材質として所望に応じ耐脂性の紙からなる層を採用することが可能である。
本発明のラミネート材は50Åのごとく小さな厚味でも有効であり、好ましくは200Åの厚味において有効なガスバリア層を備えている。薄肉コーティングの利点は主としてそれらの内部応力を低く出来ることに関連するすぐれた機械的特性に存する。このことは薄肉コーティングがこの明細書において説明したように、折り曲げにより成形される容器の場合には特に重要となってくるクラック発生に対する良好な抵抗を備えているということを意味している。そのような容器のコーナおよび折り曲げられたエッジは特に鋭敏な領域であり、より厚肉のコーティングを備えた材質を用いるとパッケージのこれらの部分においてクラックが生じ、その結果バリア特性が失われることになる。これと対比して、本明細書において開示したような薄肉コーティングは十分に柔軟性および伸延性に富んでいるので、材料を包装容器へと転換しても、最も露出する領域においてさえクラッキングまたは破損を生ずる危険が無い。薄肉コーティングの内部応力が低いということはまたこれらの材料がそらないという特性に反映されている。プラスチックフィルム上に厚肉コーティングを適用すると、以後のラミネート材製造プロセス中に種々の問題点を誘起せしめる可撓性がある。
最後に、本発明に係る包装ラミネート材はすぐれた酸素ガスおよび芳香バリア特性を有することに加えて、同ラミネート材はまたそれが非攻撃タイプのものであるという利点を有している。すなわち包装ラミネート材のシリコン酸化物層は果物ジュースのような特に貯蔵に敏感なパッケージの中味と直接接触しても、その芳香の中味や基本的オイルというものを、この種の中味ではかなり発生しがちであるが、「攻撃」するすなわち劣化させるということが無い。
【図面の簡単な説明】
第1図は通常のSiOxとポリエチレンのラミネート材並びに本発明のSiOxラミネート材に対する伸び率と酸素透過率の関係を示すグラフである。
第2図は本発明に係るSiOxバリア層厚味と酸素透過率の関係を示すグラフである。
第3図は、本発明を説明するための、折り曲げ線部を備えた包装ラミネート材の平面図である。
第4図は第3図の線4-4に沿って眺めたラミネート材の拡大された横断面図である。
第5図は本発明の第1の実施例に係る包装ラミネート材を図式的に例示する図である。
第6図は本発明の第2の実施例に係る包装ラミネート材を図式的に例示する図である。
第7図は本発明の第3の実施例に係る包装ラミネート材を図式的に例示する図である。
第8図は本発明の第4の実施例に係る包装ラミネート材を図式的に例示する図である。
第9図は本発明の第5の実施例に係る包装ラミネート材を図式的に例示する図である。
第10図は本発明の第6の実施例に係る包装ラミネート材を図式的に例示する図である。
第11図はSiOx層が直接製品と接触している実施例の包装ラミネート材を示す図である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2006-01-05 
出願番号 特願平7-501533
審決分類 P 1 651・ 113- YA (B32B)
P 1 651・ 16- YA (B32B)
P 1 651・ 121- YA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 鴨野 研一
石井 克彦
登録日 2000-07-28 
登録番号 特許第3094038号(P3094038)
権利者 テトラ パック(スイス) ソシエテ アノニム
発明の名称 気体および芳香バリア特性を備える包装ラミネート材  
代理人 米澤 明  
代理人 岩本 行夫  
代理人 菅井 英雄  
代理人 青木 健二  
代理人 浅村 皓  
代理人 韮澤 弘  
代理人 内田 亘彦  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 山本 貴和  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 山本 貴和  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 岩本 行夫  

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