ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A01M |
---|---|
管理番号 | 1134326 |
異議申立番号 | 異議2003-73143 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2003-08-05 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-16 |
確定日 | 2006-01-20 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3469575号「燻煙剤水容器」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3469575号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3469575号の請求項1ないし5に係る発明は、平成13年9月26日(優先権主張平成12年9月27日、平成13年2月28日)に出願した特許出願(特願2001-293701号)の一部を平成14年12月24日に新たな特許出願としたものであり、平成15年9月5日にその特許権の設定登録がなされ、その後、京谷勝彦及びアース製薬株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年11月30日に訂正請求がなされ、平成17年2月15日に特許異議申立人アース製薬株式会社より上申書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである(下線部が訂正個所である)。 特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器において、当該水容器の底面から突出した台座が設けられており、当該台座の高さが2.5mm以上であることを特徴とする燻煙発生装置の水容器。」を、 「水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器において、当該水容器の底面から突出した樹脂製の台座が設けられており、燻煙を発生させた際の発熱が床面に伝達するのを防止するために当該台座の高さが2.5mm以上であることを特徴とする燻煙発生装置の水容器。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている「台座」について、「樹脂製の台座」と特許明細書の段落【0023】の記載に基いて限定するとともに、「燻煙を発生させた際の発熱が床面に伝達するのを防止するために当該台座の高さが2.5mm以上である」と、同じく段落【0022】の記載に基いて限定する、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当しており、いずれも新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立てについての判断 (1)本件発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるので、本件の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明5」という)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認められる。 【請求項1】 水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器において、当該水容器の底面から突出した樹脂製の台座が設けられており、燻煙を発生させた際の発熱が床面に伝達するのを防止するために当該台座の高さが2.5mm以上であることを特徴とする燻煙発生装置の水容器。 【請求項2】 水容器が、容器本体下部の水秤量位置又はその近傍において、断面積の変化が不連続となる段差が設けられているものである請求項1に記載の水容器。 【請求項3】 水容器が、略角柱状の形状を有する請求項1又は2に記載の水容器。 【請求項4】 略角柱状の外縁周の一辺が、少なくとも18mm以上の直線部を有する請求項3に記載の水容器。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の水容器の内部に燻煙発生装置が収納されてなる水と接触して燻煙を発生する燻煙発生製品。 (2)当審における取り消しの理由 当審が平成16年9月22日付けで通知した取消しの理由の概要は以下のとおりである。 [I] 特許法第29条第2項違反について 本件発明1ないし5は、下記の引用例1ないし引用例7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。 記 引用例 1.アース商品案内書「PRODUCT GUIDE Earth‘98 アース商品のご案内」 1の1.株式会社ニッポンインターナショナルエージェンシー代表取締役 木谷騏巳郎 の証明書 1の2.アース商品の写真の証明書 1の3.凸版印刷株式会社パッケージ事業部関西事業部2本部2部1課 課長山口泰 の証明書 1の4.「アースレッド50g」用燻煙剤水容器の設計図 1の5.「アースレッド50gの床面との接触温度の試験報告書」 (上記引用例1並びに引用例1の1ないし1の5は、それぞれ 順に、特許異議申立人アース製薬株式会社が提出した甲第1 号証並びに甲第1号証の1ないし5である。) 2.特開2000-60405号公報 3.意匠登録第610204号公報 (上記引用例2ないし3はそれぞれ順に、特許異議申立人アース製薬株 式会社及び特許異議申立人京谷勝彦が提出した甲第2号証ないし3号 証である。) 4.「アースレッドOF」のパンフレット 4の1.薬務公報 昭和59年6月21日発行 4の2.アース製薬株式会社発行の昭和62年度医薬品殺虫剤価格表 (上記引用例4並びに引用例4の1ないし4の2は、それぞれ順に 特許異議申立人アース製薬株式会社が提出した甲第3号証の1な いし3である。) 5.意匠登録第968086号公報 6.意匠登録第981364号公報 (上記引用例5は、特許異議申立人アース製薬株式会社が提出した甲第 4号証、同京谷勝彦が提出した甲第5号証であり、上記引用例6は、 特許異議申立人アース製薬株式会社が提出した甲第5号証、同京谷勝 彦が提出した甲第4号証である。) 7.実願昭63-59735号(実開平1-167172号)の願書に添付 した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム (上記引用例7は、特許異議申立人京谷勝彦が提出した甲第1号証であ る。) [II] 特許法第36条第4項違反について 本件の明細書の記載は不明瞭であり、本件の特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (3) 特許法第29条第2項違反について (3-1) 引用発明 (3-1-1) 引用例の頒布性について 引用例2、3、5ないし7は、本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、引用例1及び引用例4の頒布性については以下のとおりである。 (3-1-1-1) 引用例1の頒布性について 引用例1(アース商品案内書「PRODUCT GUIDE Earth ‘98 アース商品のご案内」)の表紙には「‘98」と、その81頁(さらに79頁、80頁についても同様)の欄外右上には「〇印は‘97秋の新商品です。」と、それぞれ記載されている。これらの記載と、引用例1の1(株式会社ニッポンインターナショナルエージェンシー 代表取締役 木谷騏巳郎 の証明書)、及び引用例1の3(凸版印刷株式会社パッケージ事業部関西事業部2本部2部1課 課長 山口泰 の証明書)の記載内容とを総合すると、引用例1は、本件特許の出願前に頒布された刊行物であると推認することができる。 (3-1-1-2) 引用例4の頒布性について 引用例4は「アースレッドOF」のパンフレットであり、本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例4の1(薬務公報 昭和59年6月21日発行)における、「医薬品製造承認品目表」に「アースレッドOF」が掲載されており、また、引用例4の2(アース製薬株式会社発行の昭和62年度医薬品殺虫剤価格表)に「アースレッドOF」が掲載されている。さらに引用例4の4頁右側の「使用方法」の欄に写真とともに記載された「プラスチック水容器」は、同引用例4の4頁欄外右下に記載された「アース製薬」と同一人の出願に係る、本件特許の出願前に頒布された刊行物である意匠登録第610204号公報(昭和58年10月12日発行、引用例3)の、「加水発熱型蒸散器用収容容器」と近似している。これらの事項を総合すると、引用例4は、本件特許の出願前に頒布された刊行物であると推認することができる。 なお、特許権者は特許異議意見書(11頁17-22行)において、「引用例4の2の下欄には『2003年10月6日18時53分 アース製薬(株)赤穂 研究・開発』なる文字列が印字されており、『薬務公報』の写しでないことは明らか」(ただし、「引用例4の2」は「引用例4の1」の誤記と解される。)と主張するが、当審が職権により調査したところ、引用例4の1は、「薬務公報」(昭和59年6月21日発行)の真正な写しであることが確認されたので、特許権者の上記主張は採用することができない。 (3-1-2) 引用発明 引用例1ないし7には、それぞれ次の発明が記載されていると認められる(以下、順に「引用発明1」ないし「引用発明7」という。)。 (3-1-2-1) 引用発明1 引用例1(アース商品案内書「PRODUCT GUIDE Earth ‘98 アース商品のご案内」)の17頁中段には、「水を使う加熱蒸散システム」の一部破断図が記載されている。上記一部破断図には、外容器である「水容器」と内容器である「薬剤缶」の間に引き出し線が付されて「水(を入れる)」と記載されており、上記「薬剤缶」内部の外側には「発熱剤(酸化カルシウム)」が、同じく内部の中心側には「メトキサジアゾン…20%(オキサジアゾール系)」が収容されており、上記「水容器」は内部に上記「薬剤缶」を収納するとともに、該「水容器」の底部外面には脚部が形成されている。 また、74頁の下段には、「水と発熱剤の化学反応によって間接的に加熱する」、「加熱蒸散システム」が説明図とともに記載され、「殺虫薬剤」と「発熱剤」が「上下に分かれて」収容された容器(内容器)の全体が、別の容器(外容器)に収納され、「殺虫薬剤」から「煙」が「発生」している様子が見てとれる。 上記の事項より、引用例1には以下の発明(引用発明1)が記載されていると認められる。 「底部外面に脚部を形成した水容器に水を入れるとともに、該水容器の内部に薬剤缶を収納した、水と接触して煙を発生する加熱蒸散システム。」 (3-1-2-2) 引用発明2 引用例2(特開2000-60405号公報)には、以下の記載が認められる。 2-a.「【請求項1】 燻煙剤を燻煙するための装置であって、 i) 水が封入されている第1容器、 ii) 酸化カルシウムを含有する発熱剤が封入されている第2容器、 iii) 燻煙剤を収納している第3容器、および iv) 第1容器および第2容器の開封を容易にするための手段 を含むことを特徴とする前記の装置。 【請求項2】 第1容器と第2容器が分離した状態で設置されており、第2容器が第3容器の内部に設置されている請求項1記載の装置。 【請求項3】 第3容器が内側の容器および外側の容器を有する二重容器の構造をとっており、内側の容器の内部に燻煙剤が収納され、内側の容器と外側の容器との間の空間が断熱層を形成している請求項1〜3のいずれかに記載の装置。 【請求項4】 第3容器が上げ底の構造をとっている請求項4記載の装置。」(特許請求の範囲の請求項1ないし4) 2-b.「【請求項22】 第3容器が、紙、アルミニウム、およびポリエチレンからなる群より選択される材料で製造されている請求項1記載の装置。」(特許請求の範囲の請求項22) 2-c.「・・・図1において・・・3は二重容器(本発明における第3容器に相当する。)、・・・9は内容器、10は外容器・・・」(段落【0022】) 2-d.「外容器10は内カール部5を有する。内カール部5の高さは、5〜50mmであるとよい。外容器10が内カール部5を有することにより、装置がさらに底面から冷却されて、装置全体の温度上昇を抑えることができると同時に、装置の積み上げが可能となり、装置の製造を効率化することができる。・・・」(段落【0025】) (3-1-2-3) 引用発明3 引用例3(意匠登録第610204号公報)の「意匠に係る物品」の項には「加水発熱型蒸散器用収容容器」と、「説明」の項には「本物品は、水と共に加水発熱型蒸散器(水と接触すると発熱する物質を発熱源として蒸散用蒸剤を加熱蒸散させる形式の蒸散器)を収容する用に供せられるものである。本物品は全体が透明である。」と、それぞれ記載されている。 また、正面図、右側面図、A-A線断面図、B-B線断面図、使用状況を示す参考断面図によれば「本物品」の底部外面には脚部が形成されている。 さらに正面図と右側面図によれば、「本物品」の外側面には段部が形成されており、平面図、底面図、A-A線断面図、B-B線断面図、使用状況を示す参考断面図によれば、上記した外側面の段部は内側面の対応位置においても段部とされていることが見てとれるから、「本物品」である「加水発熱型蒸散器用収容容器」の側部には段部が形成されているといえる。 そして、上記の使用状況を示す参考断面図によれば、「本物品」の内部には「加水発熱型蒸散器」が「水」と共に載置され、該「加水発熱型蒸散器」の底部には「透孔」が設けられているとともに、内部外側には「加水発熱物質」が、同じく内部中心側には「蒸散用薬剤」が収容されている。 上記の事項より、引用例3には以下の発明(引用発明3)が記載されていると認められる。 「内部に加水発熱型蒸散器を水と共に載置し、底部外面には脚部が形成されるとともに、側部には段部が形成され、全体が透明とされた、水と接触すると発熱する物質を発熱源として蒸散用蒸剤を加熱蒸散させる、加水発熱型蒸散器用収容容器。」 (3-1-2-4) 引用発明4 引用例4(「アースレッドOF」のパンフレット)の1頁左上には「加熱蒸散殺虫剤」と、3頁右下の「用法用量」の欄には、「水容器に30g缶のとき40ml、50g缶のとき60mlの水を入れて本容器を浸して下さい。」と、それぞれ記載されている。 また4頁右側の「使用方法」の欄には、 「1 プラスチック水容器の底から約1cmの段(三角印)のところまで水を入れてください。 2 缶の赤いシール面を上にして水容器の水中に入れてください。 3 約1〜2分で蒸散がはじまります。」と、写真と共に記載されており、写真を参照すると、上記「プラスチック水容器」には脚状の台座が設けられている様子が見てとれる。 上記の事項より、引用例4には以下の発明(引用発明4)が記載されていると認められる。 「脚状の台座が設けられているプラスチック水容器の底から約1cmの段(三角印)のところまで水を入れ、薬剤缶を浸して蒸散を行う、加熱蒸散殺虫剤。」 (3-1-2-5) 引用発明5 引用例5(意匠登録第968086号公報)の「意匠に係る物品」の項には「燻蒸器用収納容器」と、「説明」の項には「本物品は、水と接触すると発熱する物質を加熱源として燻蒸用薬剤を燻蒸する形式の燻蒸器を水と共に収納する用に供せられる。」と、それぞれ記載されている。そして、正面図、平面図、底面図、A-A線断面図、使用状態の参考縦断面図より、「本物品」は角柱状を成しているとともに、角柱の角部は丸み(R)を有しており、「本物品」の内部には上記「燻蒸器」が「水と共に収納」されている様子が見てとれる。 (3-1-2-6) 引用発明6 引用例6(意匠登録第981364号公報)の「意匠に係る物品」の項には「加水発熱型蒸散器用収納容器」と、「説明」の項には「本物品は、水と共に加水発熱型蒸散器(水と接触すると発熱する物質を発熱源として蒸散用薬剤を加熱蒸散させる形式の蒸散器)を収容する用に供せられるものである。」と、それぞれ記載されている。 そして、2頁のA-A線断面図及び使用状況を示す参考断面図より、「本物品」の内部には「加水発熱型蒸散器」が「収容」されている様子が見てとれる。 (3-1-2-7) 引用発明7 引用例7(実願昭63-59735号(実開平1-167172号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)には、以下の記載が認められる。 7-a.「異なる酸化発熱条件を持つ物質にて層状に構成した発熱体2を、熱により大気中に発散する殺虫成分入りの外体1に収納した殺虫器具。」(実用新案登録請求の範囲) 7-b.「発熱体2は空気中の酸素と化学反応により発熱するが、温度変化を制御するために発熱成分を異なえて構成した層a、b、c等の複数の層で 構成する。その外側に熱により空気中に発散する殺虫剤を染み込ませた板状の外体1に収納する。この外体1は発熱体2の発熱を促進するために通気性のある物質にて構成することは言うまでもない。また台座3は発熱時に発熱体2の熱が異常に底辺に伝わるのを防ぐ為に設けたものである。(2頁13行-3頁2行) (3-2) 対比・判断 (理由1-引用発明1または引用発明3との対比・判断) (3-2-1) 本件発明1に対して 引用発明1は「水を使う加熱蒸散システム」に関する発明であり、「水容器」を備えているから、本件発明1を特定する、「水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器」の事項に対応する構成を備えている。また、引用発明1における上記「水容器」の底部外面には脚部が形成されており、該脚部は、本件発明1を特定する事項である「台座」に対応しているから、引用発明1は、本件発明1を特定する、「水容器の底面から突出した台座が設けられており」の事項に対応する構成を備えている。 また、引用発明3は、「加水発熱型蒸散器用収容容器」に関する発明であり、「収容容器」に水を入れるものであるから、同引用発明3は、本件発明1を特定する、「水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器」の事項に対応する構成を備えている。さらに引用発明3における上記「収容容器」は「全体が透明である」ことから樹脂製であるということができるとともに、「収容容器」の底部外面には脚部が形成されており、該脚部は、本件発明1を特定する事項である「台座」に対応しているから、引用発明3は、本件発明1を特定する、「水容器の底面から突出した樹脂製の台座が設けられており」の事項に対応する構成を備えている。 そこで本件発明1と引用発明1または引用発明3とを対比すると、両者は「水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器において、当該水容器の底面から突出した台座が設けられている燻煙発生装置の水容器」である点で少なくとも一致しており、さらに引用発明3については台座が樹脂製である点でも本件発明1と共通しており、 本件発明1では燻煙を発生させた際の発熱が床面に伝達するのを防止するために台座の高さが2.5mm以上であるのに対して、引用発明1または引用発明3では、台座の高さが2.5mm以上であるか不明である点で相違しており、また引用発明1における台座は樹脂製であるか明らかでない点で台座を樹脂製とした本件発明1と相違していると認められる。 上記の相違点について検討するに、熱により殺虫成分を空気中に発散または蒸散するようにした殺虫装置において、殺虫装置の熱が床面に伝達するのを防止するために、該殺虫装置本体に脚部または台座を設けることは周知慣用の技術手段である。一例をあげれば、引用発明2は「燻煙剤を燻煙するための装置」において、「燻煙剤を収納している第3容器」を「内容器9」及び「外容器10」より成る「二重容器」とし、「外容器10」は「高さ」が「5〜50mm」の「内カール部5」を有するように構成して、「装置がさらに底面から冷却されて、装置全体の温度上昇を抑えることができる」ようにしたものである。また引用発明7は「空気中の酸素と化合して発熱する物質」を用い、「この熱により外体1に含まれた殺虫成分を空気中に発散」する「殺虫器具」において、「発熱時に発熱体2の熱が異常に底辺に伝わるのを防ぐために」、上記「外体1」に「台座3」を設けたものである。すなわち、これらの各発明は、熱により殺虫成分を空気中に蒸散(発散)する殺虫装置において、装置を構成する外側の容器に「内カール部5」(引用発明2)または「台座」(引用発明7)を設けることにより、殺虫装置からの熱が床面に伝達するのを防止するものである。 そうすると、引用発明1または引用発明3において、熱により殺虫成分を空気中に蒸散(発散)する殺虫装置を構成する「水容器」(引用発明1)または「収容容器」(引用発明3)が底部外面に備える脚部(台座)は、該「水容器」(引用発明1)または「収容容器」(引用発明3)からの熱が床面に異常に伝わるのを防ぐ機能を本来備えているものであることは当業者にとって自明な事項であり、熱が床面に異常に伝わる要因、例えば、殺虫装置の発熱量等を考慮して脚部(台座)の高さを適宜に設定することは、当業者が通常行うことである。しかも本件発明1が台座の高さを特に2.5mm以上と限定したことによる格別顕著な効果は本件の明細書に記載されていないから、当該限定は単なる設計事項にすぎない。 なお、引用発明2は「第3容器」を「ポリエチレン」(摘記事項2-b)、すなわち樹脂製とするものであり、またこの種の水容器を樹脂製とすることは引用例4にも記載されているように周知技術であるから、引用発明1における台座を樹脂製とした点も単なる設計事項にすぎない。 そして、上記したように本件発明1が奏する効果も引用発明1または引用発明3並びに周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 したがって、本件発明1は、周知技術を参酌し、引用発明1または引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3-2-2) 本件発明2に対して 本件発明2は、「水容器が、容器本体下部の水秤量位置又はその近傍において、断面積の変化が不連続となる段差が設けられているものである」の発明特定事項を備えることにより、本件発明1をさらに限定したものであるところ、本件発明1は周知技術を参酌し、引用発明1または引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることは、「(3-2-1) 本件発明1に対して」に記載したとおりであるので、本件発明2がさらに備える上記発明特定事項について検討する。 引用発明4は「プラスチック水容器」を備えており、「プラスチック水容器の底から約1cmの段(三角印)のところまで水を入れて」使用するものであって、上記「段」は、一定量の水を秤量するための「段」であるとともに、断面積の変化が不連続となる「段」であるということができる。そして引用例4全体の記載からみて、引用発明4に係る「加熱蒸散殺虫剤」は、水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置であることが明らかであるから、同引用発明4は本件発明2がさらに備える上記発明特定事項を開示しているといえる。 そして、「水を使う加熱蒸散システム」の「水容器」である引用発明1に、同じく水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の「プラスチック水容器」に関する発明である、引用発明4が備える上記技術事項を適用して本件発明2の上記発明特定事項を得ることに格別顕著な技術的困難性はない。 また引用発明3は、「加水発熱型蒸散器用収容容器」に関する発明であって、「収容容器」の側部には段部が形成されており、該段部は、断面積の変化が不連続となる段部であるということができるから、同引用発明3は本件発明2の発明特定事項である、「水容器が、容器本体下部において、断面積の変化が不連続となる段差が設けられている」の事項に対応する構成を備えているといえるが、引用発明3における上記段部と水秤量位置との関係は明らかではない。しかしながら、上記したとおり、引用発明4は水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の「プラスチック水容器」に、水を秤量するための「段」を設けることを開示しているから、引用発明3における段部に引用発明4が備える上記技術事項を適用して該段部を水秤量位置又はその近傍に設けて、本件発明2の上記発明特定事項を得ることに格別顕著な技術的困難性はない。 そして本件発明2が奏する効果も引用発明1または引用発明3並びに引用発明4及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 したがって、本件発明2は、周知技術を参酌して、引用発明1または引用発明3並びに引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3-2-3) 本件発明3に対して 本件発明3は、「水容器が、略角柱状の形状を有する」の発明特定事項を備えることにより、本件発明1または本件発明2をさらに限定したものであるところ、本件発明1については「(3-2-1) 本件発明1に対して」において、また本件発明2については「(3-2-2) 本件発明2に対して」において、それぞれ検討したとおりであり、これらをまとめると、本件発明1または本件発明2は、周知技術を参酌して、引用発明1または引用発明3並びに引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。そこで、本件発明3がさらに備える上記発明特定事項について検討する。 引用発明5は、「燻蒸用薬剤を燻蒸する形式の燻蒸器を水と共に収納する用に供せられる」、「燻蒸器用収納容器」に関する発明であり、「燻蒸器用収納容器」は角柱状を成している。 そうすると、「水を使う加熱蒸散システム」の「水容器」である引用発明1または「加水発熱型蒸散器用収容容器」である引用発明3に、同じく「燻蒸器用収納容器」に関する発明である、引用発明5が備える上記技術事項を適用して本件発明3の上記発明特定事項を得ることに格別顕著な技術的困難性はない。 そして本件発明3が奏する効果も引用発明1または引用発明3並びに引用発明4、5及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 したがって、本件発明3は、周知技術を参酌して、引用発明1または引用発明3並びに引用発明4、5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3-2-4) 本件発明4に対して 本件発明4は、「略角柱状の外縁周の一辺が、少なくとも18mm以上の直線部を有する」の発明特定事項により本件発明3をさらに限定したものであるところ、本件発明3は、周知技術を参酌して、引用発明1または引用発明3に、引用発明5が備える、角柱状を成す「燻蒸器用収納容器」に関する技術的事項を適用することにより、当業者が容易になし得たものであることは「(3-2-3) 本件発明3に対して」に記載したとおりである。 ところで、引用発明5における「燻蒸器用収納容器」の内部には「燻蒸器」(本件発明4が間接的に引用する本件発明1の「燻煙発生装置」に相当する。)が「水と共に収納」されるものであり、該「燻蒸器」の内容量は、例えば引用例1(第74頁)に見られる如く多種の内容量のものがあり得るから、同引用発明5における、角柱状を成す「燻蒸器用収納容器」の直線部の長さは、「燻蒸器」の内容量に応じて当業者が適宜に設定しうる事項であり、しかも本件発明4が「略角柱状の外縁周の一辺が、少なくとも18mm以上の直線部を有する」こととした格別顕著な効果も認められない。 そうすると、引用発明1または引用発明3に、引用発明5が備える、角柱状を成す「燻蒸器用収納容器」に関する技術的事項を適用する際に角柱の直線部を少なくとも18mm以上の長さを有するように構成することは当業者であれば適宜なし得ることである。 そして、上記したように本件発明4が奏する効果も引用発明1または引用発明3並びに引用発明4、5及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 したがって、本件発明4は、周知技術を参酌して、引用発明1または引用発明3並びに引用発明4、5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3-2-5) 本件発明5に対して 本件発明5は、本件発明1ないし4のいずれかの「水容器の内部に燻煙発生装置が収納されてなる水と接触して燻煙を発生する燻煙発生製品」であるところ、本件発明1ないし本件発明4については 「(3-2-1) 本件発明1に対して」ないし「(3-2-4) 本件発明4に対して」において検討したとおりであり、これらをまとめると、本件発明1ないし本件発明4は、周知技術を参酌して、引用発明1または引用発明3並びに引用発明4、5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。そこで、本件発明5が備える上記の発明特定事項について検討する。 引用発明1は、「薬剤缶を収納した、水と接触して煙を発生する加熱蒸散システム」であり、実質上、本件発明5における「水と接触して燻煙を発生する燻煙発生製品」に相当するものであるから、同引用発明1は本件発明5が備える上記発明特定事項を開示している。 また、引用発明3は「内部に加水発熱型蒸散器を水と共に載置し、水と接触して蒸散用蒸剤を加熱蒸散させる、加水発熱型蒸散器用収容容器」であり、実質上、本件発明5における「水と接触して燻煙を発生する燻煙発生製品」に相当するものであるから、同引用発明1は本件発明5が備える上記発明特定事項を開示している。なお、引用発明3における上記「収容容器」は「加水発熱型蒸散器」の全体をその内部に収納するものではなく、「加水発熱型蒸散器」の一部が「収容容器」から更に上方に突出するものであるが、この種の燻煙発生製品において、水容器の内部に燻煙発生装置全体を収納することは、上記引用発明1以外にも、例えば引用発明5や引用発明6にも開示されている。すなわち、引用発明5や引用発明6は、「燻蒸器用収納容器」(引用発明5)や「加水発熱型蒸散器用収納容器」(引用発明6)の内部に、「燻蒸器」(引用発明5)や「蒸散器」(引用発明6)を収納したものである。 そして、本件発明5が奏する効果も引用発明1または引用発明3並びに引用発明4、5及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 したがって、本件発明5は、周知技術を参酌して、引用発明1または引用発明3並びに引用発明4、5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるからその特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3-3) 対比・判断 (理由2-引用発明4との対比・判断) (3-3-1) 本件発明1に対して 引用発明4は、「プラスチック水容器」に「水を入れ、薬剤缶を浸して蒸散を行う」ものであり、引用発明4は、水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の「プラスチック水容器」に関する発明であるということができ、同引用発明4において「プラスチック水容器」に設けられた「脚状の台座」は「プラスチック水容器」の底面から突出した樹脂製の台座であるといえる。 そこで、本件発明1と引用発明4とを対比すると、本件発明1では、燻煙を発生させた際の発熱が床面に伝達するのを防止するために台座の高さが2.5mm以上であるのに対して、引用発明4では、台座の高さが2.5mm以上であるか不明である点で両者は相違しており、その余の点では両者に差異は認められない。 上記の相違点について検討するに、「(3-2) 対比・判断 (理由1-引用発明1または引用発明3との対比・判断) 」「(3-2-1) 本件発明1に対して」に記載したように、熱により殺虫成分を空気中に発散または蒸散するようにした殺虫装置において、殺虫装置の熱が床面に伝達するのを防止するために、該殺虫装置本体に脚部または台座を設けることは、引用発明2や引用発明7に例示されるように周知慣用の技術手段である。 そうすると、引用発明4において、熱により殺虫成分を空気中に蒸散(発散)する殺虫装置を構成する「プラスチック水容器」が底部外面に備える「脚状の台座」は、「プラスチック水容器」からの熱が床面に異常に伝わるのを防ぐ機能を本来備えているものであることは当業者にとって自明な事項であり、熱が床面に異常に伝わる要因、例えば、殺虫装置の発熱量等を考慮して台座の高さを適宜に設定することは、当業者が通常行うことである。しかも本件発明1が台座の高さを特に2.5mm以上と限定したことによる格別顕著な効果は本件の明細書に記載されていないから、当該限定は単なる設計事項にすぎない。 そして、上記したように本件発明1が奏する効果も引用発明4及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 したがって、本件発明1は、周知技術を参酌し、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3-3-2) 本件発明2に対して 本件発明2は、「水容器が、容器本体下部の水秤量位置又はその近傍において、断面積の変化が不連続となる段差が設けられているものである」の発明特定事項を備えることにより、本件発明1をさらに限定したものであるところ、本件発明1は周知技術を参酌し、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることは、「(3-3-1) 本件発明1に対して」に記載したとおりであるので、本件発明2がさらに備える上記発明特定事項について検討する。 引用発明4は、「プラスチック水容器の底から約1cmの段(三角印)のところまで水を入れて」使用するものであって、上記「段」は、一定量の水を秤量するための「段」であるとともに、断面積の変化が不連続となる「段」であるということができる。 そうすると、引用発明4は本件発明2が備える上記発明特定事項を開示しており、本件発明2が奏する効果も引用発明4及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 したがって、本件発明2は、周知技術を参酌し、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3-3-3) 本件発明3に対して 本件発明3は、「水容器が、略角柱状の形状を有する」の発明特定事項により本件発明1または本件発明2をさらに限定したものであるところ、本件発明1については「(3-3-1) 本件発明1に対して」において、また本件発明2については「(3-3-2) 本件発明2に対して」において、それぞれ検討したとおり、周知技術を参酌し、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明3が備える上記発明特定事項について検討する。 引用発明5は、「燻蒸用薬剤を燻蒸する形式の燻蒸器を水と共に収納する用に供せられる」、「蒸散器用収納容器」に関する発明であり、該「蒸散器用収納容器」は角柱状を成しているから、同引用発明5は、本件発明3が備える上記発明特定事項を開示している。 そして、水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の「プラスチック水容器」に関する発明である引用発明4に、同じく「蒸散器用収納容器」に関する発明である、引用発明5が備える上記技術事項を適用して本件発明3の上記発明特定事項を得ることに格別顕著な技術的困難性はなく、本件発明3が奏する効果も引用発明4並びに引用発明5及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 したがって、本件発明3は、周知技術を参酌し、引用発明4及び引用発明5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3-3-4) 本件発明4に対して 本件発明4は、「略角柱状の外縁周の一辺が、少なくとも18mm以上の直線部を有する」の発明特定事項により本件発明3をさらに限定したものであるところ、「(3-3-3) 本件発明3に対して」に記載したとおり、本件発明3は、周知技術を参酌し、引用発明4に、引用発明5が備える、角柱状を成す「燻蒸器用収納容器」に関する技術的事項を適用することにより当業者が容易になし得たものである。 ところで「(3-2) 対比・判断 (理由1-引用発明1または引用発明3との対比・判断) 」「(3-2-4) 本件発明4に対して」に記載したように、引用発明5における「燻蒸器用収納容器」の内部には「燻蒸器」(本件発明4が間接的に引用する本件発明1の「燻煙発生装置」に相当する。)が「水と共に収納」されるものであり、該「燻蒸器」の内容量には多種のものがあり得るから、同引用発明5における、角柱状を成す「燻蒸器用収納容器」の直線部の長さは、「燻蒸器」の内容量に応じて当業者が適宜に設定しうる事項であり、しかも本件発明4が「略角柱状の外縁周の一辺が、少なくとも18mm以上の直線部を有する」こととした格別な効果も認められない。 そうすると、引用発明4に、引用発明5が備える、角柱状を成す「燻蒸器用収納容器」に関する技術的事項を適用する際に角柱の直線部を少なくとも18mm以上の長さを有するように構成することは当業者であれば適宜なし得ることである。 そして、上記したように本件発明4が奏する効果も引用発明4並びに引用発明5及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 したがって、本件発明4は、周知技術を参酌し、引用発明4及び引用発明5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3-3-5) 本件発明5に対して 本件発明5は、本件発明1ないし4のいずれかの「水容器の内部に燻煙発生装置が収納されてなる水と接触して燻煙を発生する燻煙発生製品」であるところ、本件発明1ないし本件発明4については 「(3-3-1) 本件発明1に対して」ないし「(3-3-4) 本件発明4に対して」において検討したとおりであり、これらをまとめると、本件発明1ないし本件発明4は、周知技術を参酌して、引用発明4及び引用発明5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。そこで、本件発明5が備える上記の発明特定事項について検討する。 引用発明4は「プラスチック水容器に水を入れ、薬剤缶を浸して蒸散を行う、加熱蒸散殺虫剤」であり、実質上、本件発明5における「水と接触して燻煙を発生する燻煙発生製品」に相当するものであるから、同引用発明4は本件発明5が備える上記発明特定事項を開示している。なお、引用発明4における上記「プラスチック水容器」は「薬剤缶」の全体をその内部に収納するものではなく、「薬剤缶」の一部が「プラスチック水容器」から更に上方に突出するものであるが、この種の燻煙発生製品において、水容器の内部に燻煙発生装置全体を収納することは、「(3-2) 対比・判断 (理由1-引用発明1または引用発明3を中心とした対比・判断) 」 「(3-2-5) 本件発明5に対して」に記載したように、引用発明1以外にも、例えば引用発明5や引用発明6にも開示されている。 そして、本件発明5が奏する効果も引用発明4並びに引用発明5及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。 したがって、本件発明5は、周知技術を参酌し、引用発明4及び引用発明5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3-4) 特許異議意見書における特許権者の主張について 特許権者は特許異議意見書において、本件発明1の「燻煙を発生させた際の発熱が床面に伝達するのを防止するために当該台座の高さが2.5mm以上であること」の発明特定事項は引用例に記載も示唆もされていない旨を主張するとともに、上記主張に関連して、「引用例2における内カール部5は、本件発明の水容器の台座に該当するものではない」こと、また、「引用例7に開示の事項は、火傷をしないように異常な加熱を防止するための工夫が開示されているだけであり、本件発明の燻煙発生装置における約300℃というような高温の発熱体の熱伝導を防止するための示唆や教示はなされていない」ことを主張して、「このことは、乙第1号証において本件の特許異議申立人が自ら述べていることからも明らか」であると、乙第1号証(特開2002-264972号公報)を提出している。 しかしながら、上記したように、熱により殺虫成分を空気中に発散または蒸散するようにした殺虫装置において、殺虫装置の熱が床面に伝達するのを防止するために、該殺虫装置本体に脚部または台座を設けることが周知慣用の技術手段であり、上記引用例2及び引用例7は、上記した周知慣用の技術手段を例示するものである。そして、本件発明1ないし5の各発明も、引用発明2も引用発明7も、熱により殺虫成分を空気中に発散または蒸散するようにした殺虫装置という共通の技術的概念に含まれる発明であって、上記した周知慣用の技術手段を本件発明1ないし5の特許性を判断する際に参酌することを阻害する要因は存在しない。 また、乙第1号証(特開2002-264972号公報)は本件の出願後に頒布された刊行物であり、乙第1号証が本件発明1ないし5の特許性の判断に何の影響を及ぼすものでもない。 したがって、特許権者の上記主張には理由がない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件発明1ないし5の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件についての他の取消理由について論じるまでもなく、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 燻煙剤水容器 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器において、当該水容器の底面から突出した樹脂製の台座が設けられており、燻煙を発生させた際の発熱が床面に伝達するのを防止するために当該台座の高さが2.5mm以上であることを特徴とする燻煙発生装置の水容器。 【請求項2】水容器が、容器本体下部の水秤量位置又はその近傍において、断面積の変化が不連続となる段差が設けられているものである請求項1に記載の水容器。 【請求項3】水容器が、略角柱状の形状を有する請求項1又は2に記載の水容器。 【請求項4】略角柱状の外縁周の一辺が、少なくとも18mm以上の直線部を有する請求項3に記載の水容器。 【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の水容器の内部に燻煙発生装置が収納されてなる水と接触して燻煙を発生する燻煙発生製品。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、殺虫剤等の熱揮散性薬剤と例えばニトロセルロースやアゾジカルボンアミド等のガス発生剤を含んでなる燻煙剤組成物を、水と接触して発熱する発熱物質の水和反応熱により加熱することによりガス発生剤を熱分解させ、熱揮散性薬剤を煙として大気中に放出させることによりゴキブリ、ダニ、蚊、蠅等の害虫を駆除せんとする燻煙発生装置用として用いられる、水を入れる水容器及び当該水容器を用いた燻煙発生製品に関する。 【0002】 【従来の技術】 燻煙剤組成物を、酸化カルシウム等の、水と接触して発熱する発熱物質の水和反応熱により加熱して、熱揮散性薬剤を煙として大気中に放出させる煤煙装置は、従来から広く用いられている。即ち、燻煙剤組成物と酸化カルシウムなどの発熱物質を隔壁を介して収納した燻煙発生装置を、使用時に所定量の水を入れた水容器内に静置することにより、しばらくして、水容器内の水が燻煙発生装置中の酸化カルシウムなどの発熱物質の収納部に浸入し、この際生じる水和反応による熱で燻煙剤組成物を加熱し、殺虫剤等の熱揮散性薬剤を大気中に放出させて害虫を防除しようとするものである。 【0003】 この種の燻煙発生装置を使用する場合には、水容器に入れる水の量を或る程度正確に計り取ることが必要である。水容器に入れられた水の量が、所定量より少ない場合には、酸化カルシウムなど発熱剤の水和反応が不十分となり、十分な燻煙が得られないし、また、所定量よりも水が過剰な場合には、発熱温度が充分に上昇することができず、やはり、十分な燻煙を得ることが困難となる。 このために従来は、水容器の容器本体に適切な水の量を表示する目線が入れられていたが、この種の燻煙発生装置を使用する場合の、水を入れる水容器への水の添加は、従来からコップ等を用いる方法がとられており、このような方法では必然的に水の量が不正確にならざるを得なかった。 【0004】 また、従来の燻煙発生製品は燻煙発生装置、水容器ともに円柱状であり、当該装置と水容器間のスペースが小さいことから、水容器に必要量の水を入れた後で燻煙装置を上方から挿入する際に、指が入りにくく、やむなく途中から落とさざるを得ないこともあった。このため、水の一部が撥ね飛び、適切な水量で水和反応がなされず、最悪の結果として十分発煙しなくなることもあった。このために指が充分入るような水容器にしようとすれば、水容器自体の直径が大きくなり、製品の運搬や保管のために広いスペースが必要とされることになり、直径を大きくすることも製品の性格上困難であった。 さらに、水を入れた水容器に燻煙発生装置を入れると、燻煙発生装置は約300℃程度の高温になり、水容器を直接床の上に置いて燻煙させた場合には、床が変質する可能性もあった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、以上のような従来製品の問題点を解決することを目的としている。 即ち、本発明の第一の目的は、簡便でかつ容易に燻煙発生に必要な水の量を正確に計り取れることのできる水容器、及びそれを用いた燻煙発生製品を提供することである。本発明の第二の目的は、円柱状である燻煙発生装置を指で持ったまま、水容器の底部に容易にかつ確実に設置できるコンパクトな水容器、及びそれを用いた燻煙発生製品を提供することである。本発明の第三の目的は、床が変質する恐れのない、安全に使用することができる水容器、及びそれを用いた燻煙発生製品を提供することである。 また、本発明の他の目的は、生産ラインにおける機械適性が良好であり、流通等において、商品の品質安定性が確保され、さらに水容器、上蓋並びに水容器胴体に装着されたフィルムが、燻煙時の発熱に対する耐熱性を有し、かつ家屋内材質に対して、熱変質などの影響を及ぼさないなどの、生産効率及び流通効率が良好で、安全性の高い水容器、及びそれを用いた燻煙発生製品を提供することである。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、前記問題点を解決するために、燻煙発生装置の水容器の形状、構造を鋭意検討してきたところ、水容器の断面の形状を略四角状にすることにより従来の円筒状の水容器とほぼ同じ大きさで安全かつ確実に燻煙発生装置を水容器に設置することができ、かつ水容器の外形の大きさが従来のものとほぼ同じ程度であることから、流通過程における運搬や保管スペースも従来の製品とほぼ同じ程度ですませることができることを見出した。また、水容器の容器本体下部の水秤量位置又はその近傍において、段差を設けることにより、意外にも簡便に且つ確実に水容器に入れる水の量を正確に計り取ることができることを見出した。さらに、水容器の底部の温度変化を入念に検討してきたところ、水容器の底部に2.5mm以上の樹脂製の台座を設けることにより、床面における温度を安全基準値以下にすることができることを見出した。 【0007】 即ち、本発明は、水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器において、容器本体下部の水秤量位置又はその近傍において、段差が設けられていることを特徴とする燻煙発生装置の水容器を提供するものであり、また、本発明は、水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器において、当該水容器の断面の形状が略四角状、好ましくは略四角状の外縁周の一辺が、少なくとも18mm以上であることを特徴とする燻煙発生装置の水容器を提供するものであり、さらに、本発明は、水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器において、底面から突出した台座、好ましくは樹脂製の台座が設けられており当該台座の高さが2.5mm以上であることを特徴とする燻煙発生装置の水容器を提供するものである。 また、本発明は、前記した本発明の水容器に適した水容器の上蓋、及び前記した本発明の水容器の内部に燻煙発生装置が収納されてなる水と接触して燻煙を発生する燻煙発生製品を提供するものである。 【0008】 より詳細には、本発明は、水と接触して燻煙を発生する燻煙発生装置の水容器において、当該水容器の底面から突出した台座が設けられており、当該台座の高さが2.5mm以上であることを特徴とする燻煙発生装置の水容器、そのための上蓋、及び前記した本発明の水容器の内部に燻煙発生装置が収納されてなる水と接触して燻煙を発生する燻煙発生製品に関する。 【0009】 水容器に入れる水の量を正確に計り取るためには、秤量の位置がわかりやすくかつ見やすいこと並びに秤量の誤差が小さくなることが好ましい。従来は水容器に目盛り線を入れることにより水を入れる位置を表示していた。水容器を目の位置まで持ち上げて水の量を正確に計量すればよいのであるが、この方法では操作が煩雑になるために多くの場合には水容器の上から水を入れる方法がとられてきた。しかし、この方法では容器の上から水を入れるために、目盛り線が見えにくく、往々にして水の量が不正確となり充分な燻煙発生効果を生じさせることができなかった。 本発明の水容器の第一の特徴点は、容器下部の水秤量位置又はその近傍において、段差を設けたことである。目盛り線のような線ではなく、容器に不連続な形状を付すことにより、水容器の上から見ても、秤量の位置が容器の形状の変化として目視できることから、簡便に且つ確実に水の量を正確に秤量することができることがわかった。 【0010】 本発明の水溶器における段差としては、上から見て水容器内壁の形状が不連続であることが分かるものであればよい。より具体的には水容器の断面積(S)が、容器の深さ(x)に対して不連続に、より好ましくは急激に変化するような段差である。例えば、図1に示されるように容器側壁に対してほぼ垂直な段差を挙げることができる。 【0011】 図1は、本発明の水容器の例の側面図である。水容器1は上部に開口部を有する容器であり、開口部の外縁9、上部側壁2、段差3、下部側壁4、底面5及び台座6からなり、容器内部は、段差3の部分から上の水容器上部8及び水容器下部7からなっている。水容器下部7には燻煙発生装置を安定に置くためのリブ10が設けられている。 図2は図1に示した水容器1の立面図である。この例では底面5に設けられたリブ10が8本示されている。段差3において水容器1の断面積が急激に小さくなっており、段差部分が水容器1の上部からも明瞭に見ることができる。 図1及び図2に示した例では段差3は水容器の側壁に対してほぼ垂直に設けられているが、本発明の段差はこの例のように急激な段差でなくてもよい。水容器の上方から見て断面積の変化を目視することができればよく、斜めの段差でもよいし、適当な半径の曲面を形成していてもよい。 【0012】 なお、リブ10は、燻煙発生装置を水容器に設置する際に、燻煙発生装置を安全かつ容易に水容器のほぼ中央部に設置されるように仕向けるガイドとしての機能も有している。このため、リブに直線状又は曲線状のガイド用の傾斜を設けた形状にするのが好ましい。また、リブの上面の面積を一定以上確保し、さらに、リブの角を取るなどの工夫をすることが好ましい。例えば、リブの幅を1〜5mmとし、角を0.5〜2Rの形状とするのが好ましい。 また、リブの数には特に制限はないが、4〜20本が好ましい。 さらに、水容器と燻煙発生装置の包装体との間(例えば、上・側面部又は底・側面部)に紙やプラスチックなどの緩衝材を設置することにより、流通過程における運搬時の製品や包装材の破損などを防止することができる。 【0013】 このような不連続な断面積の変化を設けることにより、意外にもこの水容器に上から水を入れてゆくと、容器内部に貯まった水の水面の面積の変化を明瞭に知ることができ、簡便な方法で正確に水の量を秤量することができることがわかった。従来の目盛り線による秤量では、水面の面積の変化ではなく、目盛りの位置しか判断材料が無く、正確な秤量は困難であったが、本発明の水容器によれば、段差を設けたことにより水面の面積が段差部分において急激に変化するために、極めて明瞭に水位を知ることができ、正確な水の秤量を可能としたのである。 即ち、60名のモニターに、水容器に段差を設けたことの効果を聞いたところ、秤量の目安になるなどの効果があると挙げられた好意的意見は73%を占めた。この結果を表1に示す。 【0014】 【表1】 ![]() 【0015】 本発明の段差は、断面積の変化が不連続となるものであればよく、極端に言えば水容器上部の断面積と水容器下部の断面積が異なるものであればよいが、水容器上部の断面積のほうが水容器下部の断面積よりも大きくなっているものが好ましい。とりわけ水容器の断面の形状が略四角状になった場合には、従来の円柱状の水容器に比べて断面積が大きくなるために、所定の水の量において十分な水深を得られにくくなったり、また水位の僅かな違いによる秤量誤差が大きくなるために、水容器下部の断面積は小さいほうが好ましい。 水容器下部の好ましい断面積としては、水容器上部の断面積の90%以下が好ましいが、これに限定されるものではない。より詳細には水容器上部の断面積の50%〜90%、好ましくは70%〜90%である。 【0016】 本発明の水容器には、前記した段差に対してさらに、従来のような目盛り線を設けてもよい。目盛り線は段差の直下又はその近辺に設けることが好ましい。目盛り線としては、黒などの水容器の材質と異なる色彩で施すのが好ましい。このような目盛り線は、水容器自体のエンボス加工やインクジェットプリンターによる印刷により水容器自体に設けることもできるし、水容器の外側のフィルムに印刷して固着させてもよい。 【0017】 また、本発明者らは、従来の円柱状である燻煙発生装置に対して、水容器を略角柱状とすることで、中に入れる燻煙発生装置との間にスペースを確保することにより、指が入り易くなり、その結果、燻煙発生装置を持ったまま水容器の底部に当該装置を設置することが可能となり、水が撥ね飛ぶ危険性が低減された燻煙発生装置の水容器を開発するに至った。 水容器の形状を略角柱状にすることにより燻煙発生装置の入れ易さについて、60名のモニターによる実験を行った。即ち、本発明の水容器と従来の円柱状の水容器を比較例として用いて、60名のモニターに燻煙発生装置の入れやすさを調査した。その結果を表2に示す。 【0018】 【表2】 ![]() 【0019】 この結果、本発明の水容器では入れやすいと回答したモニターが43%であったのに対して、比較例のものでは23%でしかなかった。また入れにくいと回答したモニターは比較例の円柱状のものでは3%いたが、本発明の略角柱状の水容器では0%であった。この結果水容器の形状を略角柱状にすることにより燻煙発生装置を極めて容易にいれることができ、燻煙発生装置を水容器に入れる際の水が撥ね飛ぶ危険性を顕著に低減できることがわかった。 本発明の水容器の容器本体は、その形状が略角柱状であることから、燻煙発生装置を水容器に入れやすくなるだけでなく、水容器を誤って転倒させても転がらず、また上蓋には燻煙発生装置の飛び出し防止となり得る内部リブを有するリングが設けられているので、水容器内部の燻煙発生装置が飛び出すこともない。したがって、より安全に燻煙発生装置を使用することができる。さらに、本発明の水容器の容器本体は、その形状を略四角柱状とすることにより、運送時や保管時又は小売店での陳列時において、無駄なスペースが少なくなり保管や陳列のスペースを有効に利用することができる。 【0020】 本発明の略四角柱状の水容器の大きさや形状については、特に制限はないが、断面の対角線の長さが、燻煙発生装置の直径とこれを支える指二本分の巾の和以上あればよい。また、深さは燻煙発生装置を収納するのに充分な深さがあれば足りる。本発明の略四角柱状の水容器は、燻煙発生装置を指で持ったまま燻煙発生装置を底面に設置するに充分な空間を有するので、従来の円柱状の水容器に比べてやや深い設計にしてもよい。 本発明の略四角柱状の水容器は、断面が略四角状で、対角線方向に前記した長さを確保することができ、正立、転倒時の安定性も高いものであれば、断面の形状に格別の制限はないが、その少なくとも一部に直線部分を有するものが好ましい。より好ましくは、四辺がそれぞれ直線部分を有する形状が挙げられる。また、曲線部分を有することは必ずしも必須ではないが、四隅が曲線になっているものが好ましい。直線部分の長さや曲線部分の半径にも特に制限はなく、正立、転倒時の安定性などを考慮して適宜設計することができる。 【0021】 本発明者らの詳細な研究によれば、略角柱状容器の外縁周の一面において少なくとも18mm以上の直線部を有することが好ましく、また、四隅の曲線部分としてはRを15mm以上にするのが好ましい。しかしながら、本発明の水容器がこれらのものに限定されるものではない。 本発明の水容器を前記のように設計することにより、蓋装着機やラベル機械の機械適性が向上し、また搬送工程を考慮して、略角柱状容器の外縁周の一面において少なくとも18mm以上の直線部を有するようにすることにより搬送時に容器同士のぶつかりによる容器の回転防止などの効果を奏することができる。 【0022】 本発明の水容器は、底面5の下に台座6を有するものが好ましい。台座6は、水容器を安定に設置するためだけでなく、燻煙を発生させた際の発熱が床面に伝達するのを防止するために設けられる。台座6の最下端、即ち床面に接触する部分の最高温度が80℃以下であることが求められているが、本発明者らの研究によれば、樹脂製の台座6の高さが2.5mm以上あれば、台座6の最下端、即ち床面に接触する部分の最高温度を60℃以下とすることができることがわかった。 このように、床材への輻射熱の影響を考慮すると、台座の高さは2.5mm以上が好ましく、3〜5mmが熱的影響と安定性を両立できることからより好ましい。また、台座6には空気の流通をよくするために適宜孔を開けたり、切れ目などを入れてもよい。 したがって、本発明の水容器は、その使用中あるいは使用後に床が変質する恐れがなく、燻煙発生装置を安全に使用することができる。 【0023】 本発明の水容器本体の材質としては、添加する水の量を簡便に且つ正確に秤量して入れられるので不透明な材質であっても良いが、耐熱性を有し、かつ、水の添加状態を外側から確認することのできる、透明または半透明の材質が好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(塩ビ)等の合成樹脂が挙げられるが、なかでもポリプロピレンが好ましい。水容器の耐熱性をさらに向上させる方法として、樹脂の重合度を調整したり、炭酸カルシウム、タルク等の無機鉱物質を配合したり、容器の肉厚を増加させるなどの方法を採用することもできる。 本発明の水容器の好ましい材質としては、0.45MPaにおける荷重たわみ温度が100℃以上、好ましくは122℃以上の樹脂が挙げられる。種々の荷重たわみ温度を有する樹脂を用いて水容器の耐熱性を実験した結果を次の表3に示す。 【0024】 【表3】 ![]() 【0025】 この結果から、0.45MPaにおける荷重たわみ温度が100℃未満では顕著な熱変形が発生するが、100℃以上では熱変形も少なくなることがわかる。しかし、熱変形を起こさないようにするためには、0.45MPaにおける荷重たわみ温度が122℃以上の樹脂を使用する必要があることがわかる。 したがって、本発明は、0.45MPaにおける荷重たわみ温度が100℃以上、好ましくは122℃以上の樹脂製の燻煙発生装置の水容器を提供するものでもある。 【0026】 本発明の水容器は、樹脂製などのものをそのまま使用することもできるが、フィルムなどで被覆して使用するのが好ましい。このようなフィルムとしては、耐熱性があり、印刷性が良好なものであればよいが、操作の簡便性から熱収縮性フィルムが好ましい。 従来の円筒状の水容器では、燻煙時の輻射熱が容器胴体に装着されたフィルムに対してほぼ一様となり、熱収縮のバランスが図られることから、燻煙時においても比較的フィルムは破れにくかったが、本発明の水容器のように略角柱状では輻射熱のかかり方が胴体中央部と角では差があるため、熱バランスが不均等となり充分な強度を有するものでないと破れやすくなる。そのため、ポリプロピレン、PET、塩ビ等の耐熱性の高い熱収縮フィルムを用いることが好ましく、中でも熱収縮性、焼却時の発生ガスの観点から、ポリオレフィン系のものがもっとも好ましい。ポリオレフィン系としては、直鎖状または環状のものやエチレン-プロピレン、あるいはエチレン-プロピレン-ブテン等の共重合体のものが挙げられる。また、環状ポリオレフィン系樹脂からなる熱収縮性フィルムは透明性、光沢に優れ、適度な腰を有することから商品性、機械適性の面からもいっそう好ましい。 【0027】 本発明の水容器に燻煙発生装置の包装体を収納した後、開口された水容器の上部をフィルム素材により密閉することにより燻煙発生製品とすることができる。本発明の燻煙発生製品は、必要に応じて密閉された水容器にさらに後記する上蓋を設けることもできる。 水容器の上部の開口部を密閉するための好ましいフィルム素材としては、その突刺強度として1700g以上(突刺先端0.5R、100mm/min)の物性を有するものが挙げられる。 水容器上部へのフィルム素材による密閉方法としては、例えば熱圧着によるピーラブル包装により行うことが出来る。また、密閉後における水容器内部の圧力調整の面から、フィルムや水容器の一部に適宜孔や切れ目などの窓部を設けてもよい。例えば、水容器の上端部に切れ目を設けることが挙げられる。この切れ目などの窓部の形状は任意のものでよく、水容器内部と外部の圧力調整が可能な大きさの面積を有するものであればよく、また、数も1個以上あればよく適宜決めることが出来る。設置位置も上端部に限定されるわけではなく、適宜決めることが出来る。好ましい窓部としては、上端部に幅0.1〜3.0mm、好ましくは0.5〜1.5mm、深さ0.5〜3.0mm好ましくは0.5〜1.5mm程度の切れ目を設ける方法が挙げられる。 【0028】 また、燻煙発生装置を密閉するためのフィルム素材としては、流通等において、商品の品質安定性が確保されること、また、燻煙発生装置の防湿を目的として、アルミラミネート包装を用いることが一般的であるが、水溶器の上部をフィルム素材で密閉することにより、燻煙発生装置のアルミラミネート包装を省略しても外的衝撃から製品を保護することができる。 【0029】 本発明の水容器は、これを単独で使用することもできるが、使用時における燻煙発生装置の飛び出しを防止するために上蓋を用いるのが好ましい。上蓋としては、発生した燻煙を放出することができる開口部を有するリング状のものが好ましい。リング状の上蓋は、燻煙時に発生するガスや輻射熱の影響を受けることから、やはり耐熱性を有することが求められる。内縁部形状は、円、多角形等いずれも可能であるが、燻煙時の転倒における燻煙発生装置の飛び出しを防止しつつ、できる限り開口部を大きくし、さらには開口上部のフィルム素材を保護する観点から、内縁部と外縁部はほぼ同様な形状とし、内縁部に燻煙発生装置の飛び出しを防止するためのリブを設置することが好ましい。また、内縁部の肉厚を大きくすることで、耐熱性を更に向上させることが可能である。 【0030】 本発明の上蓋の例を図3に示す。図3は本発明の上蓋の例の平面図である。上蓋20は、外縁部21と内縁部22を有するリング状のものであり、中央部に外縁部21とほぼ同じ形状の開口部25を有する。開口部25には燻煙発生装置の飛び出しを防止するためのリブ24が設けられている。この例では開口部25を大きく設計しているために、このままでは燻煙発生装置が通り抜けるでき使用時に燻煙発生装置が飛び出す可能性がある。このリブ24により水容器内部に収容された燻煙発生装置の飛び出しを防止することができる。 また、上蓋20には外縁部21とほぼ同じ形状をした溝23が設けられている。溝23は上蓋20の表面に凹凸を形成し、当該溝23に図1における台座6が収容可能に設計されている。したがって、上蓋20の上に水容器1を重ねた場合には、上段の水容器1の台座6が下段の上蓋20の溝23にかみ合い、安定に製品を重ねて置くことができるようになっている。 【0031】 上蓋の材質としては、ポリプロピレン、PET、塩ビ等の耐熱材料が挙げられ、さらに耐熱性を向上させるために、炭酸カルシウム、タルク等の無機鉱物質を配合させることもできる。 【0032】 本発明の水容器は、例えば、水と接触して発熱する発熱物質の収納部が燻煙剤組成物の収納部を囲むように成型されてなり、底部に通水用の開口部を有する底板を有し、発熱物質の水和反応熱により燻煙剤組成物収納部の底壁及び/又は側壁が加熱されて燻煙を発生する二重構造の燻煙発生装置等、自体公知の燻煙発生装置用の水容器としてまた、これと燻煙発生の原理を同じくする種々の燻煙発生装置用の水容器として幅広く効果的に使用しうる。 【0033】 本発明の水容器の内部に前記した燻煙発生装置を内包させてこれを適宜包装することにより、本発明の水容器と燻煙発生装置とからなる燻煙発生製品とすることができる。 本発明の水容器に使用される燻煙発生装置としては、発熱物質収納部に酸化カルシウムなどの水に接触して発熱する物質を有し、燻煙剤組成物として殺虫剤を含有するものが好ましい。本発明における殺虫剤としては、殺虫剤のみならず防虫、殺ダニ、殺菌、殺黴剤などの有害生物を防除又は駆除するものをいう。例えば、ペルメトリン、フェノトリン、ピレトリン、シフェノトリン、レスメトリン、プラレスリンなどのピレスロイド系殺虫剤、フェニトロチオン、フェンチオン、ダイアジノン、DDVPなどの有機リン系殺虫剤、メトキサジアゾン、プロポクスルなどのカーバメート系殺虫剤、トリアジンなどの殺菌剤などが挙げられる。 また、共力剤として、ピペロニルブトキサイド、S-421、サイネピリン500、MGK264、安息香酸ベンジル、チオシアノ酢酸イソボニル等が挙げられる。 また、燻煙剤用ガス発生剤としては、ニトロセルロース、硝酸アンモニウムを始めとして、アゾジカルボンアミドなどのアゾ系化合物等が挙げられる。該燻煙剤組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合することもできる。 したがって、本発明の好ましい燻煙発生製品としては殺虫剤を含有する燻煙剤組成物を有する燻煙発生装置が本発明の水容器に内包された殺虫剤製品をあげることができる。 【0034】 【実施例】 次に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0035】 実施例1 図1に示す略角柱状の形状し、水秤量位置に段差が設けられ、当該段差の位置に黒破線の目盛り線が印刷された本発明の水容器を用いて、水容器に水を入れる際の段差が設けられていることについての効果を、60名のモニターにより調査した。 比較例として、従来の円柱状(内径73mm×深さ77mm)の水容器で、水秤量位置に黒破線の目盛り線が印刷された水容器を用いた。 この結果を表1に示す。 この結果、「段差が有る方が秤量の目安になる」等の、挙げられた好意的意見は73%を占めた。 【0036】 実施例2 実施例1で用いた本発明の水容器、及び比較例の水容器を使用して、円柱状の燻煙発生装置(外径55mm×高さ65mm)の水容器への入れ易さを60名のモニターにより調査した。 結果を表2に示す。 この結果、本発明の水容器が入れやすいと回答したものが43%あり、比較例のものが入れやすいとした23%の約2倍であった。また、入れやすい及びやや入れやすいを合わせると、本発明の略角柱状の水容器では95%であったのに対して、比較例のものでは73%に過ぎなかった。 【0037】 実施例3 0.45MPaにおける荷重たわみ温度が表3の左欄に記載の温度である樹脂を用いて図1に示す本発明の水容器を製造した。 これらの各水容器に、水15mlを入れ、酸化カルシウムを39g、燻煙用組成物を11g充填した燻煙発生装置を燻煙させて、燻煙終了後の各水容器の状態を観察した。 結果を表3に示す。 この結果、0.45MPaにおける荷重たわみ温度が100℃未満では熱変形が著しいが、100℃以上であれば熱変形が少なく、さらに122℃以上であれば熱変形を起こさないことがわかった。 【0038】 【発明の効果】 本発明は、水容器に段差を設けることにより、簡便で確実にそして正確に所定量の水を水容器に入れることができる燻煙発生装置用の水容器を提供する。本発明の略角柱状の形状をした水容器は、従来の円柱状の水容器とほぼ同じ大きさであるにもかかわらず、燻煙発生装置を容易かつ確実に水容器の内部に設置することができ、燻煙発生装置を設置する際の水が撥ね飛ぶ危険性を低減することができる。さらに、外観が略角柱状であることから、保管または小売店での陳列時において、無駄なスペースが少なくなり有利であるばかりでなく、転倒しても転がることが無く安全である。さらに、本発明の水容器は底部に2.5mm以上の台座を設けることにより、水容器が床面に接する部分の最高温度を60℃以下とすることができ、床を変質する恐れもなく安全に使用することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 図1は、本発明の水容器の側面図(A-A断面図)を示す。 【図2】 図2は、本発明の水容器の平面図を示す。 【図3】 図3は、本発明の水容器の上蓋の平面図を示す。 【符号の説明】 1.水容器 2.上部側壁 3.段差 4.下部側壁 5.底面 6.台座 7.水容器下部 8.水容器上部 9.開口部の外縁 10.リブ L.外縁(直線部) 20.上蓋 21.外縁部 22.内縁部 23.溝 24.リブ 25.開口部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-12-05 |
出願番号 | 特願2002-373058(P2002-373058) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(A01M)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 吉田 佳代子 |
特許庁審判長 |
中村 和夫 |
特許庁審判官 |
白樫 泰子 渡部 葉子 |
登録日 | 2003-09-05 |
登録番号 | 特許第3469575号(P3469575) |
権利者 | ライオン株式会社 |
発明の名称 | 燻煙剤水容器 |
代理人 | 佐伯 憲生 |
代理人 | 佐伯 憲生 |
代理人 | 山本 貴和 |
代理人 | 岩本 行夫 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 浅村 肇 |