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審決分類 審判 訂正 特29条の2 訂正する A61M
審判 訂正 2項進歩性 訂正する A61M
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61M
管理番号 1135004
審判番号 訂正2005-39105  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-07 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-06-22 
確定日 2006-03-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3236623号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3236623号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1.手続の経緯
(1)本件訂正審判請求事件に係る特許第3236623号の請求項1〜12に係る発明についての出願は、平成7年7月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年7月28日、1995年5月31日、米国)を国際出願日とする特許出願であって、平成13年9月28日にそれらの発明について特許権の設定登録がなされた。
(2)平成14年7月30日に、テルモ株式会社より、請求項1〜12に係る発明についての特許に対して、無効審判(無効2002-35316号)が請求され、平成15年2月24日に訂正請求がされ、平成17年1月7日付けで、「訂正を認める。請求項1〜11に係る特許を無効とする。」との審決がなされ、当該審決の取消しを求める訴(平成17年(行ケ)第475号)が知的財産高等裁判所に提起された。
(3)平成17年6月22日に、本件訂正審判が請求され、平成17年8月17日付けで訂正拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成17年10月6日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2.平成17年10月6日付け手続補正の適否について
1.補正の内容
平成17年10月6日付け手続補正は、平成17年6月22日付けの審判請求書及び訂正明細書を補正しようとするものであるが、訂正明細書に対する補正の内容を、設定登録時の願書に添附した明細書又は図面(以下、「基準明細書」という。)、上記訂正明細書、及び、上記補正された訂正明細書(以下、「補正明細書」という。)の記載にその訂正箇所及び補正箇所に下線を付して対比させて示すと、以下のとおりである。

(1)補正事項1(基準明細書の請求項1の訂正に関する補正)
〈基準明細書〉
「模様形状を有する管より成るステントであって、ここでこの模様形状は:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様 ;
b.これも第一方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様:ここで前記奇数次元第一メアンダー模様は 前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、そして2本毎の偶数次元メアンダー模様の間にある;
c. 前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する 第二メアンダー模様:ここで前記 第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成る、 ステント。」

〈訂正明細書〉
「模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって、ここでこの模様形状は:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しない;
b.これも第一方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様:ここで前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより前記奇数次元第一メアンダー模様は閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記ステントの前記縦方向に沿って、前記偶数次元第一メアンダー模様と交互に配置され、また前記奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
c. 前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様:ここで前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして d.前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており、 e.前記複数の第二メアンダー模様のループが、開放していると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する ステント。」

〈補正明細書〉
「模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって、ここでこの模様形状は:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しない;
b.これも第一方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様:ここで前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより前記奇数次元第一メアンダー模様は閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記ステントの前記縦方向に沿って、前記偶数次元第一メアンダー模様と交互に配置され、また前記奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
c. 前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様:ここで前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして d.前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており、 e.前記複数の第二メアンダー模様のループが、開放していて拡張圧縮可能であると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する ステント。」

(2)補正事項(基準明細書の請求項5の訂正に関する補正)
〈基準明細書〉
「前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様がループを有し、そして前記偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様に接続され、各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間に1本の完全ループができている、請求項4記載のステント。」

〈訂正明細書〉
「前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様がループを有し、そして前記偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様に接続され、各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間に少なくとも1つの開放ループができている、請求項3記載のステント。」

〈補正明細書〉
「前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様がループを有し、そして前記偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様に接続され、各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間に一本の完全ループができており、この完全ループの中に少なくとも1つの開放ループができている、請求項3記載のステント。」

(3)補正事項(基準明細書の請求項6の訂正に関する補正)
〈基準明細書〉
「模様形状を有する管より成るステントであって、ここでこの模様形状が:
a.第一方向に広がる軸を有する 第一メアンダー模様 ;
b.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する 第二メアンダー模様:ここで 前記 第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成る、 ステント。」

〈訂正明細書〉
「模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって、ここでこの模様形状が:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、前記奇数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記偶数次元第一メアンダー模様は前記奇数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
b.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様:ここで前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元代一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており、そして前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして c.前記複数の第二メアンダー模様のループが、開放していると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する ステント。」

〈補正明細書〉
「模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって、ここでこの模様形状が:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、前記奇数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記偶数次元第一メアンダー模様は前記奇数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
b.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様:ここで前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元代一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており、そして前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして c.前記複数の第二メアンダー模様のループが、開放していて拡張圧縮可能であると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する ステント。」

2.補正の適否についての判断
(1)補正事項1及び3について
補正事項1及び3は、ともに、開放している「第二メアンダー模様のループ」に関して、「拡張圧縮可能である」とに事項を付加するものである。
ところで、開放しているループが拡張圧縮可能であることは自明であるから、補正事項1及び3は、第二メアンダー模様のループがもともと有していた機能を付加するものであって、補正前後の請求項の内容に実質上の差異はない。

(2)補正事項2について
補正事項2は、各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間にできている「少なくとも1つの開放ループ」に関して、「各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間に一本の完全ループができており、この完全ループの中に少なくとも1つの開放ループができている」との事項を付加するものである。
ところで、上記「完全ループ」が何を意味するのか、特許請求の範囲の記載のみでは直ちには明らかではない。そこで、基準明細書の発明の詳細な説明をみると、「完全ループ」に関して、次のとおり記載されている(特許公報第6欄21行〜29行を参照)。
「水平メアンダー模様には奇数次元及び偶数次元形態で施されていてもよい。水平メアンダー模様12eの直線区画22は鉛直メアンダー模様11eの3個毎の共有部材17と交差している。水平メアンダー模様12oの直線区画22は、交差している共有部材17と2個後方の共有部材15で始まって、鉛直メアンダー模様11eの3個毎の共有部材15と交差している。その結果、メアンダー模様12eと12oとの間に完全ループ14が、そしてメアンダー模様12oと12eとの間に完全ループ16ができる。」
上記記載及び図面における完全ループ14、16の記載からみて、本願発明でいう「完全ループ」は、偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様に接続された場合に、各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間の、偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様によりできているループを指すものと認められる。
そうすると、「偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様がループを有し、そして偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様に接続され」、しかも、「各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間に少なくとも1つの開放ループができている」場合に、各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間に一本の完全ループができており、この完全ループの中に少なくとも1つの開放ループができていることは、自明の事項である。
してみれば、補正事項2は、訂正明細書の請求項4の構成から自明な事項を追加したに過ぎないから、補正前後の請求項の内容に実質上の差異はない。

3.むすび
したがって、補正事項1〜3は、訂正審判請求の要旨を変更するものではない。また、審判請求書の補正に関する事項は、上記訂正明細書の補正に関する上記補正事項1〜3に対応するものであるから、同様の理由から、訂正審判請求の要旨を変更するものではない。

第3.訂正の適否について
1.訂正の内容
平成17年10月6日付け手続補正は、上記2.で述べたとおり、訂正審判請求の要旨を変更するものではないから、請求人が本件訂正審判請求で求める訂正の内容を、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。なお、審判請求書の「7.(3)訂正事項」には、下記の訂正事項H〜Lが記載されていないが、訂正明細書の記載から、訂正事項を以下のとおりに認定した。残余の訂正事項A〜G、α、βは、補正された審判請求書の「7.(3)訂正事項」に記載されたとおりである。

〈訂正事項A〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項1を、
「模様形状を有する管より成るステントであって、ここでこの模様形状は:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様 ;
b.これも第一方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様:ここで前記奇数次元第一メアンダー模様は 前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、そして2本毎の偶数次元メアンダー模様の間にある;
c. 前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する 第二メアンダー模様:ここで前記 第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成る、 ステント。」から、
「模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって、ここでこの模様形状は:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しない;
b.これも第一方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様:ここで前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより前記奇数次元第一メアンダー模様は閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記ステントの前記縦方向に沿って、前記偶数次元第一メアンダー模様と交互に配置され、また前記奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
c. 前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様:ここで前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして d.前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており、 e.前記複数の第二メアンダー模様のループが、開放していて拡張圧縮可能であると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する ステント。」と訂正する。

〈訂正事項B〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項2を、
「前記偶数次元第一メアンダー模様及び前記奇数次元第一メアンダー模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的となっており、そして前記第二メアンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的となっている、請求項1記載のステント。」から、
「前記偶数次元第一メアンダー模様及び前記奇数次元第一メアンダー模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的となっており、そして前記第二メアンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的となっており、そして前記偶数次元第一メアンダー模様の前記周期模様が正弦波からなり、そして前記奇数次元第一メアンダー模様の前記周期模様が正弦波からなる、請求項1記載のステント。」と訂正する。

〈訂正事項C〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項3を削除するとともに、請求項4〜請求項12を請求項3〜請求項11にそれぞれ繰り上げる。

〈訂正事項D〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項4を、
「前記第二メアンダー模様が偶数次元及び奇数次元メアンダー模様より成る、先の請求項のいずれか1項記載のステント。」から、
「前記第二メアンダー模様が偶数次元及び奇数次元メアンダー模様より成り、前記複数の第二メアンダー模様のループがU字状、コ字状又はV字状である、先の請求項のいずれか1項記載のステント。」と訂正する。

〈訂正事項E〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項5を、
「前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様がループを有し、そして前記偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様に接続され、各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間に1本の完全ループができている、請求項4記載のステント。」から、
「前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様がループを有し、そして前記偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様に接続され、各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間に一本の完全ループができており、この完全ループの中に少なくとも1つの開放ループができている、請求項3記載のステント。」と訂正する。

〈訂正事項F〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項6を、
「模様形状を有する管より成るステントであって、ここでこの模様形状が:
a.第一方向に広がる軸を有する第一メアンダー模様 ;
b.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する 第二メアンダー模様:ここで 前記第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成る、 ステント。」から、
「模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって、ここでこの模様形状が:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、前記奇数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記偶数次元第一メアンダー模様は前記奇数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
b.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様:ここで前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元代一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており、そして前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして c.前記複数の第二メアンダー模様のループが、開放していて拡張圧縮可能であると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する ステント。」と訂正する。

〈訂正事項G〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項7を、
「前記第一メアンダー模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的であり、そして前記第二メアンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的である、請求項6記載のステント。」から、
「前記第一メアンダー模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的であり、そして前記第二メアンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的であり、そして前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様の前記周期模様が正弦波からなる、請求項5記載のステント。」と訂正する。

〈訂正事項H〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項8を、
「前記第一及び第二方向が直交している、請求項1〜7のいずれか1項記載のステント。」から、
「前記第一及び第二方向が直交している、請求項1〜6のいずれか1項記載のステント。」と訂正する。

〈訂正事項I〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項9を、
「前記第一及び第二方向が直交していない、請求項1〜7のいずれか1項記載のステント。」から、
「前記第一及び第二方向が直交していない、請求項1〜6のいずれか1項記載のステント。」と訂正する。

〈訂正事項J〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項10を、
「前記第一及び第二メアンダー模様がワイヤーより成る、請求項1〜9のいずれか1項記載のステント。」から、
「前記第一及び第二メアンダー模様がワイヤーより成る、請求項1〜8のいずれか1項記載のステント。」と訂正する。

〈訂正事項K〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項11を、
「前記第一及び第二メアンダー模様が平らな金属より切断されたものである、請求項1〜9のいずれか1項記載のステント。」から、
「前記第一及び第二メアンダー模様が平らな金属より切断されたものである、請求項1〜8のいずれか1項記載のステント。」と訂正する。

〈訂正事項L〉
基準明細書の特許請求の範囲の請求項12を、
「前記ステントが、保護材料のプレーティング、医薬品の含浸及び材料でのカバーのうちのいずれかにより仕上げられたものである、請求項1〜11のいずれか1項記載のステント。」から、
「前記ステントが、保護材料のプレーティング、医薬品の含浸及び材料でのカバーのうちのいずれかにより仕上げられたものである、請求項1〜10のいずれか1項記載のステント。」と訂正する。

〈訂正事項α〉
基準明細書の第4頁12行〜13行(特許公報第6欄4行〜5行)の「ループ14は右に向って広がり、一方ループ16は左に向って広がる。」を「ループ14は右に向って開放し、一方ループ16は左に向って開放する。」と訂正ずる。

〈訂正事項β〉
本件特許明細書の第4頁19行〜20行(特許公報第6欄13行〜14行)の「ループ18は下方向に広がり、そしてループ20は上方向に広がる。」を「ループ18は下方向に開放し、そしてループ20は上方向に開放する。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否について
〈訂正事項A〉
訂正事項Aは、
(イ)基準明細書第2頁14行〜15行(公報第4欄21行〜23行)の記載に基づき、ステントを「管」から「縦方向に伸びる管より成る管」に限定し、
(ロ)基準明細書第4頁6行〜7行(公報第5欄46行〜48行)及び第4頁10行〜16行(公報第6欄2行〜9行)の記載に基づき、偶数次元第一メアンダー模様を、「前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しない」ものに限定し、
(ハ)基準明細書第4頁6行〜7行(公報第5欄46行〜48行)、第4頁10行〜16行(公報第6欄2行〜9行)、請求項1、第4頁22行〜25行(公報第6欄16行〜20行)及び図面の記載に基づき、奇数次元第一メアンダー模様を、「前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより前記奇数次元第一メアンダー模様は閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記ステントの前記縦方向に沿って、前記偶数次元第一メアンダー模様と交互に配置され、また前記奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている」に限定し、
(ニ)基準明細書第4頁4行〜5行(公報第5欄44行〜45行)の記載に基づき、第二メアンダー模様の数を「複数」に限定し、
(ホ)基準明細書第6頁3行〜9行(公報第7欄7行〜13行)及び図面の記載に基づき、偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様を、「前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されて」いるものに限定し、
(へ)基準明細書第4頁19行〜20行(公報第6欄13行〜14行)、第5頁16行〜19行(公報第6欄41行〜45行)及び図面の記載に基づき、第二メアンダー模様を、その「ループが、開放していて拡張圧縮可能であると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する」ものに限定するものである。
したがって、訂正事項Aは、基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。

〈訂正事項B〉
訂正事項Bは、基準明細書第4頁10行〜11行(公報第6欄2行〜3行)の記載に基づき、偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様を、その「周期模様が正弦波からな」るものに限定するものである。
したがって、訂正事項Bは、基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。

〈訂正事項C〉
訂正事項Cは、特許請求の範囲の請求項3を削除するとともに、当該請求項3の削除との整合を図るために、請求項4〜請求項12を請求項3〜請求項11にそれぞれ繰り上げるものである。
したがって、訂正事項Cは、基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明に該当し、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。

〈訂正事項D〉
訂正事項Dは、第1図及び第7図の記載に基づき、第二メアンダー模様のループの形状を「U字状、コ字状又はV字状」に限定するものである。
したがって、訂正事項Dは、基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。

〈訂正事項E〉
訂正事項Eは、基準明細書第4頁26行〜第5頁6行(後方第6欄21行〜29行)及び図面の記載に基づき、完全ループと開放ループとの関係を、「完全ループのループの中に少なくとも1つの開放ループができている」と限定するものである。
したがって、訂正事項Eは、基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。

〈訂正事項F〉
訂正事項Fは、訂正事項Aと実質上同一内容の訂正を図るものである。
したがって、訂正事項Fは、基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。

〈訂正事項G〉
訂正事項Gは、訂正事項Bと実質上同一内容の訂正を図るものである。
したがって、訂正事項Gは、基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。

〈訂正事項H〜L〉
訂正事項H〜Lは、訂正事項Cとの整合を図るものであるから、基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって、明りょうでない記載の釈明に該当し、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。

〈訂正事項α、β〉
訂正事項α、βは、基準明細書第4頁23行(特許公報第6欄17行〜18行)の「各左開放ループ16」、「右開放ループ14」との記載と整合を図るものであるから、基準明細書に記載した事項の範囲内のものであって、明りょうでない記載の釈明に該当し、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。

3.独立特許要件について
訂正事項A〜Gは、上述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後の請求項1〜11に係る発明(以下それぞれを、「訂正発明1」等という。)は、いわゆる独立特許要件を満たす必要がある。

(1)訂正発明
訂正発明1〜11は、手続補正書により補正された訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、訂正発明1及び訂正発明5は次のとおりのものである。

〈訂正発明1〉
「模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって、ここでこの模様形状は:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しない;
b.これも第一方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様:ここで前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより前記奇数次元第一メアンダー模様は閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記ステントの前記縦方向に沿って、前記偶数次元第一メアンダー模様と交互に配置され、また前記奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
c. 前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様:ここで前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして
d.前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており、
e.前記複数の第二メアンダー模様のループが、開放していて拡張圧縮可能であると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する
ステント。」

〈訂正発明5〉
「模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって、ここでこの模様形状が:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、前記奇数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記偶数次元第一メアンダー模様は前記奇数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
b.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様:ここで前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており、そして前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして
c.前記複数の第二メアンダー模様のループが、開放していて拡張圧縮可能であると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する
ステント。」

(2)関連無効審判請求における無効理由及び本件審判において通知された訂正拒絶の理由

(2-1)関連無効審判請求において無効審判請求人が主張した無効理由は、
(イ)本件発明1〜8、10〜12(訂正発明1〜7、9〜11)は、国際出願PCT/US95/06228の国際公開パンフレット(以下、「刊行物1」という。)に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定に違反し、
(ロ)本件発明1〜12(訂正発明1〜11)は、特開平1-299550号公報(以下、「刊行物2」という。)及び特開平3-151983号公報(以下、「刊行物3」という。)記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反している、というものである。

(2-2)本件訂正審判請求において通知された訂正拒絶の理由は、
(ロ’)訂正発明1〜3、5、6は、刊行物2、3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、
(ハ)訂正事項Eは、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正のいずれにも該当しない、というものである。
なお、(ハ)に係る訂正拒絶の理由は、上記第3.2〈訂正事項E〉の項で述べたように、理由がない。

(3)刊行物1〜3記載の発明
(i)刊行物1
刊行物1には、以下の事項が記載されている。なお、刊行物1のパテントファミリーである特表平10-500595号公報を刊行物1の翻訳文として使用する。
(イ)第14頁3行〜12行(翻訳文の特許請求の範囲の請求項1)
「1.組織支持装置であって、第1の部分と第2の部分とからなり、略管状に形成された収縮可能な自己拡張部材を備え、該第1の部分は弾性材料からなることと、該第2の部分は変形可能であり、該第1の部分より実質的に弾性が小さい材料からなることと、該部材は患者への挿入のための準備に際して、配置可能な直径まで収縮可能であることと、該第1の部分の弾性によって、配置当初の直径まで収縮されないとき該装置は自己拡張することと、永久的に組織を支持すべく、該部材を完全拡張時の直径まで放射方向に拡張させる外力を用いて、該第2の部分の変形可能性によって、前記装置が更に変形されるように、該部分は互い結合されていることとを備える組織支持装置。」
(ロ)第14頁23行〜24行(翻訳文の特許請求の範囲の請求項7)
「7.前記第1及び第2の部分は、ストランドである請求項1に記載の装置。」
(ハ)第14頁27行〜第15頁13行(翻訳文の特許請求の範囲の請求項9)
「9.ほぼ平常時の体温にて、超弾性を有するオーステナイト形状記憶合金部分と、マルテンサイト形状記憶合金部分とからなり、所定の製造時の直径を有する略管状本体を備えた永久自己拡張ステントであって、該超弾性オーステナイト合金部分は、体温より低い、マルテンサイトからオーステナイトへの遷移温度を有し、該マルテンサイト合金部分は、体温より実質的に高い、マルテンサイトからオーステナイトへの遷移温度を有することと、該オーステナイト合金部分が該遷移温度より低い温度でマルテンサイトに変態するとき、該ステントを所定の製造時の直径より小さい配置時の直径まで収縮させ、かつ、該超弾性オーステナイト合金部分の遷移温度より高い温度で、該オーステナイト合金部分がマルテンサイトからオーステナイトに戻るように変態するとき、該ステントをほぼ所定の製造時の直径まで自己拡張させるように、該2つの合金部分が協働するような該ステントを形成すべく、該マルテンサイト合金部分と該超弾性オーステナイト合金部分とが構成及び配置され、かつ互いに協働することと、該超弾性オーステナイト部分の形状記憶は、その形状記憶により、該ステントをより大きい直径に形成しようとする傾向にある一方、該マルテンサイト合金部分によってこれを規制されることと、該オーステナイト合金部分は、塑性変形を起こすことなく、外力によって該マルテンサイト部分と共に、自己拡張時の直径より大きい、拡大されたステント直径まで変形されることとを備えたステント。」
(ニ)第15頁18行〜24行(翻訳文の特許請求の範囲の請求項12〜14)
「12.前記第1及び第2の部分は、ストランドの形状を有する請求項9に記載の装置。
13.前記第1及び第2の部分は、長手方向に配置され、相互に連結されかつ交互に配置された複数のリング状に形成された請求項9に記載の装置。
14.複数のケーブル状ストランドを有し、各ストランドは複数の線材からなり、該線材のいくつかは第1の部分であり、その他は第2の部分である請求項9に記載の装置。」
(ホ)第1頁4行〜6行(翻訳文第8頁4行〜6行)
「本発明は、組織支持装置全般に関し、更に詳細には、血管内に配置するための血管ステントに関する。本発明の装置の主な特徴は、体内にて拡張可能であることにある。」
(ヘ)第2頁2行〜13行(翻訳文第9頁4行〜14行)
「本発明の組織支持装置は、全体がほぼ円筒状または管状であり、拡大のための放射状拡張を可能にするような構造を有する。本明細書では、しばしば、一般的な意味において、同装置を「ステント」と称する。・・・ 好ましくは、本発明の装置は金属、最も好ましくは、形状記憶合金により形成される。」
(ト)第3頁23行〜24行(翻訳文第10頁26行〜27行)
「図8〜図11は、本発明のステントに用いられ得るフラグメントにおいて、種々の拡張可能な形状(収縮時及び拡張時)を示す。」
(チ)第4頁7行〜9行(翻訳文第11頁10行〜12行)
「図1に示す実施形態において、ステント10は、網状の即ち相互に撚り合わせた金属ストランド12,14を備える。ストランド12は、例えば、バネ鋼であるエルジロイ(Elgiloy)等、弾性を有するバネ状金属から形成される。」
(リ)第7頁7行〜11行(翻訳文第14頁21行〜25行)
「例えば、図3に示すように、ステント30(端面図にて示す)を、層状構造に形成することが可能である。ステント30は、一般には中空円筒状または管状の本体からなるが、本体の放射方向への拡張を促進するため、図1,5,6及び図8-11に示すように、広範囲に及ぶ具体的な形状またはパターンに形成することが可能である。」
(ヌ)第12頁11行〜13行(翻訳文第20頁11行〜12行)
「図8〜図11は、本発明の装置に援用され得る種々の拡張可能な形状の例を示す(aは収縮時、bは拡張時)。」
(ル)第13頁11行〜18行(翻訳文第21頁17行〜24行)
「更に、1つ以上のストランドがプラスティック等の生物分解可能な材料、または吸収剤等の材料によって形成され得る。・・・ 先行技術において周知であるように、これらのステントのあらゆる部分に、放射線不透過性部分またはコーティングを設けることが可能である。」
(ヲ)図11aから、
「ステントを構成する管状物の長さ方向に直角な径上にあって且つ模様の中心を通る線を中心とし、スロットの連なった周期模様(以下、当該周期模様を、一つおきに「周期模様a」,「周期模様a’」という。)と、ステントを構成する管状物の長さ方向に平行で且つ模様の中心を通る線を中心とする周期模様(以下、当該周期模様を、一つおきに「周期模様b」、「周期模様b’」という。)とを有し、隣合う周期模様a間毎に周期模様bのループが存在するように接続されており、周期模様bは周期模様aとからみ合って概して均一な分布構造を形成していること、及び、平板より切断したものであること」が看取し得る。

これらの記載事項からみて、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「模様形状を有する管より成るステントであって、ここでこの模様形状は:
ステントを構成する管状物の長さ方向に直角な径上にあって、スロットの連なった周期模様a及び周期模様a’;ここで前記周期模様aは2本毎の周期模様a’の間にある;
ループを有し、ステントを構成する管状物の長さ方向に広がる周期模様b、b’:ここで周期模様b、b’は前記周期模様a及び周期模様a’とからみ合って概して均一な分布構造を形成し;
前記周期模様a,a’が前記周期模様b,b’に対し、当該周期模様aと当該周期模様a’との間毎に当該周期模様b,b’のループが存在するように接続されているステント、
上記ステントにおいて、合金の平板より切断されたもの、あるいは、相互に撚り合わせた金属ストランドより成るもの、及び、
コーティングされたものである、ステント。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

(ii)刊行物2
刊行物2には、以下の事項が記載されている。
(イ)第2頁左上欄4行〜同頁右上欄5行
「3.複数の薄肉管状部材、ここに、該管状部材の各々は第1端部、第2端部及び第1端部と第2端部の間に配置されている壁表面を有し、該壁表面は実質的に均一な厚さを有しておりそして該壁表面には複数のスロットが形成されており、該スロットは各管状部材の長手方向軸線に実質的に平行に配置されている;及び、
隣接管状部材間に配置されていて隣接管状部材を柔軟に接続する少なくとも1つのコネクタ部材を備えて成り;
各管状部材は、管腔を持った身体通路内への前記管状部材の管腔内送り込み可能とする第1の直径を有し;
前記管状部材は、該管状部材の内側から半径方向に外方に伸張させる力を加えられると第2の伸張しそして変形した直径を有し、該第2の直径は可変でありそして該管状部材に及ぼされる力の量に依存しており、それにより、該管状部材は身体通路の管腔を伸張させるように伸張及び変形することができる;
ことを特徴とする伸張可能な管腔内脈管移植片。」
(ロ)第7頁左下欄17行〜同頁右下欄2行
「好ましくは、管状部材71は最初は均一な肉厚を有する薄肉のステンレス鋼であり、多数のスロット82が管状部材71の壁表面に形成される。第1A図に示されるように、スロット82は管状部材71の長手方向の軸線に事実上平行に配置される。」
(ハ)第10頁右下欄7行〜12行
「更に第5図及び6図を参照すると、第1A図及び1B図に関連して先に記載したプロテーズ又は移植片70が示されており、そして移植片又はプロテーゼ70の管状部材71は管状の形状の部材71の壁表面74上に生物学的に不活性な又は生物学的に適合性のある被覆90が配置されている。」
(ニ)第11頁右上欄12行〜同頁右下欄3行
「第7図に示されているように、移植片又はプロテーゼ70’は、一般に、複数の、第1A図、第1B図及び第2図に示されたような移植片又はプロテーゼ70を含んで成る。好ましくは、各移植片又はプロテーゼの長さは、ほぼ1つのスロット82の長さである。しかしながら、各移植片70の長さは、第1A図に示されたように、2つのスロットの長さにほぼ等しくすることができる。隣接管状部材71間に又は隣接移植片又はプロテーゼ70間に配置されているのは、隣接管状部材71又は移植片もしくはプロテーゼ70を柔軟に接続するための少なくとも1つのコネクタ部材100である。コネクタ部材100は、好ましくは、前記したような、移植片70と同じ材料から形成され、そしてコネクタ部材100は、第7図に示された如く、隣接移植片70又は管状部材71かんで一体的に形成されてもよい。第8図に示された如く、移植片又はプロテーゼ70’の長手方向軸線に沿って、コネクタ部材100の断面形状は、細長い部材75の同じ均一な厚さを有するという点で同じである。もちろん、それに替わるものとして、コネクタ部材100の厚さは細長い部材75の厚さよりも小さくすることができることは、当業者には容易に明らかであろう。しかしながら、コネクタ部材100の外周表面101は、第8図に示された如く、移植片又はプロテーゼ70の壁表面74により形成された同じ面内にあることが好ましい。更に第7図乃至第10図を参照すると、コネクタ部材100は、隣接移植片又はプロテーゼ70の長手方向軸線に対して非平行な関係において配置されているのが好ましい。」
(ホ)第12頁左上欄7行〜同頁右上欄20行
「第9図を参照すると、プロテーゼ70’は、身体通路80内の所望の位置に送られつつあり、そして移植片又はプロテーゼ70’はカテーテル83上に配置されておりそして動脈の曲がり部のような身体通路80のまがった部分を通過しているときに、とるであろう形状において示されている。分かりやすくするために、カテーテル83は第9図には示されていない。というのは、このようなカテーテル83の柔軟性は当業界では周知されているからである。第9図に見られるように、隣接した管状部材又は移植片もしくはプロテーゼ70間に柔軟なコネクタ部材100を配置したので、移植片又はプロテーゼ70’は、移植片又はプロテーゼ70’の長手方向軸線に対して柔軟に曲がるか又は関節式に接合する(articulate)ことができて、身体通路80内に見出だされる湾曲部又は曲がり部を乗り越えることができる。第9図に見られるように、移植片又はプロテーゼ70’の長手方向軸線の回りに曲がるか又は関節状になるにつれて、管状部材71間の間隔は湾曲部又は曲がり部の外側103のまわりで増加又は伸張し、そしてこの間隔は、湾曲部又は曲がり部の内側104では減少又は圧縮される。同様に、湾曲部の外側103のに隣接したスパイラルコネクタ部材102は柔軟に且つ弾性的に伸張して、その点での間隔の伸張を可能とし、湾曲部り内側104に隣接したスパイラルコネクタ部材102は柔軟に且つ弾性的に圧縮して湾曲部り内側104での管状部材71間の間隔の減少を可能とする。コネクタ部材100は、移植片又はプロテーゼ70’の長手方向軸線の回りのいかなる方向においても隣接管状部材71の曲がり又は関節状になることを可能とすることを可能とすることに留意されるべきである。」
(ヘ)第12頁左下欄1行〜3行
「第10図を参照すると、移植片又はプロテーゼ70’は、第1B図に示され形状と同様な、伸張されそして変形された形状で示されている。」

これらの摘記事項及び図面の記載からみて、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。
「多数のスロット82が壁表面に形成された複数の管状部材71より成る管腔内脈管移植片70’であって、ここで多数のスロット82の模様形状は:
各管状部材71の径方向に広がる軸を有するスロット82の周期模様:ここで当該スロット82の周期模様は、前記各管状部材71の径方向の中心線分を中心とする周期模様からなる;
各管状部材71の長手方向に広がるスロット82及びコネクタ部材100からなる複数の周期模様:ここで前記各管状部材71の長手方向に広がる複数の周期模様は、前記各管状部材71の径方向に広がる周期模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして、
前記各管状部材71の径方向に広がる周期模様が前記各管状部材71の長手方向に広がる複数の周期模様に対し、当該各管状部材71の径方向に広がる周期模様間毎に当該各管状部材71の長手方向に広がる周期模様のコネクタ部材100が存在するように接続されており、
前記各管状部材71の長手方向に広がる複数の周期模様のコネクタ部材100が、前記管腔内脈管移植片70’の全周方向に亘って分散配置され、これにより前記管腔内脈管移植片70’の屈曲の際、該管腔内脈管移植片70’の屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記各管状部材71の長手方向に広がる周期模様のコネクタ部材100が存在する
管腔内脈管移植片70’。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)

(iii)刊行物3
刊行物3には、以下の事項が記載されている。
(イ)第1頁左下欄5行〜同頁右下欄11行
「(1)少なくとも2以上の金属性の管状ステント分節部と、当該ステント分節部同士を接合するための生体適応性材料よりなる柔軟なヒンジ部とを有することを特徴とする関節接合型ステント。・・・
(3)前記ヒンジ部は、らせん状のワイヤーであることを特徴とする請求項1に記載の関節接合型ステント。
(4)前記ヒンジ部は、放射線非透過性材料で作られているか、または被覆されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の関節接合型ステント。
(5)複数個のワイヤーの各端部を互いに溶着してなる少なくとも2以上の管状ステント分節部と、当該ワイヤーの一端部を延伸してなる当該ステント分節部相互間を接合するためのヒンジ部とを有することを特徴とする関節接合型ステント。・・・
(7)前記ヒンジ部は、らせん状に巻かれていることを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の関節接合型ステント。」
(ロ)第3頁左上欄1行〜10行
「ヒンジ部14は、全て屈曲部の外方に配置され、内方のステント分節部12の端部は、屈曲のため互いに接近している。このヒンジ部14の配置によって、該ヒンジ部14は2つの役割を果たしている。その第1は、ステント分節部12をつなぐ橋として屈曲部からみて外方の動脈壁を補強的に支える役割であり、その第2は、ヒンジ部14と反対側の複数のステント分節部12の端部を互いに近づける役割である。この第2の役割により、屈曲部内方の動脈壁は補強的に支えられることになる。」
(ハ)第3頁右上欄12行〜20行
「第3図において、関節接合型ステント18は、2つのランプフィラメントのようならせん形状のヒンジ部22によって順次接合された3つのステント分節部20によって構成されている。ヒンジ部22は隣り合ったステント分節部20のそれぞれ1つのワイヤー端部に溶着されている。ヒンジ部22をらせん形状とすることで、ヒンジ部の強度を維持しつつ、血管の屈曲に対する柔軟性を増すことができる。」
(ニ)図3から、
「各ステント分節部20はステントのメアンダー模様であること」が看取し得る。

これらの摘記事項及び図面の記載からみて、刊行物3には次の発明が記載されていると認められる。
「模様形状を有する管より成るステントであって、ここでこの模様形状は:
管の径方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様であるステント分節部:ここで当該偶数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しない;
これも径の管方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様であるステント分節部:ここで前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより前記奇数次元第一メアンダー模様は閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記ステントの前記縦方向に沿って、前記偶数次元第一メアンダー模様と交互に配置され、また前記奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
前記前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様のステント分節部を接続するらせん形状のヒンジ部22;
を含んで成り、そして
前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が、当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎にらせん形状のヒンジ部22が存在するように接続されているステント。」(以下、「刊行物3記載の発明」という。)

(4)特許法第29条の2違反について
訂正発明1及び5と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。
「前者は、偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しないのに対して、後者は、偶数次元第一メアンダー模様及び奇数次元第一メアンダー模様に対応する周期模様a及び周期模様a’が、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成する」点。
そして、訂正発明1及び5は、偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しないことで、屈曲性や拡張圧縮性の点で優れた作用効果を奏している。
したがって、訂正発明1、5はともに刊行物1記載の発明と同一ではない。

また、訂正発明2〜4は、訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正発明6は、訂正発明5を引用するものであり、訂正発明7〜11は、直接又は間接的に訂正発明1及び5を引用するものであるから、訂正発明2〜4、6〜11も刊行物1記載の発明と同一ではない。

(5)特許法第29条第2項違反について
(i)訂正発明1及び5と刊行物2記載の発明との対比
訂正発明1と刊行物2記載の発明とを対比すると、後者の「多数のスロット82が壁表面に形成された複数の管状部材71」が前者の「模様形状を有する管」に、後者の「管腔内脈管移植片70’」が前者の「ステント」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「各管状部材71の径方向に広がるスロット82の周期模様」と前者の「第一方向に広がる軸を有する偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様」とは、「第一方向に広がる軸を有する第一周期模様」の限りで、後者の「各管状部材71の長手方向に広がるスロット82及びコネクタ部材100からなる複数の周期模様」と前者の「前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様」とは、「前記第一方向とは異なる第二方向に広がる複数の第二周期模様」の限りで、それぞれ共通する。また、後者の「コネクタ部材100」と前者の「第二メアンダー模様のループ」とは、「第二周期模様のコネクタ部材」の限りで一致する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点1〉
「模様形状を有し管より成るステントであって、ここでこの模様形状は:
第一方向に広がる軸を有する第一周期模様:ここで当該第一周期模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなる;
前記第一方向とは異なる第二方向に広がる複数の第二周期模様:ここで前記複数の第二周期模様は前記第一周期模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして
前記第一周期模様が前記複数の第二周期模様に対し、当該第一周期模様間毎に当該第二周期模様のコネクタ部材が存在するように接続されており、
前記複数の第二周期模様のコネクタ部材が、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二周期模様のコネクタ部材が存在する
ステント」である点。
〈相違点1〉
前者は、ステントが縦方向に伸びるのに対して、後者は、ステントが縦方向に伸びることが明らかではない点。
〈相違点2〉
前者は、第一方向に広がる軸を有する第一周期模様が、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しない偶数次元第一メアンダー模様と、これも交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しない奇数次元第一メアンダー模様とからなり、前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記ステントの前記縦方向に沿って、前記偶数次元第一メアンダー模様と交互に配置され、また前記奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っているものであるのに対して、後者は、第一周期模様に関してそのように特定されていない点。
〈相違点3〉
前者は、第二周期模様が異なる第二方向に広がる軸を有するメアンダー模様であるのに対して、後者は、第二周期模様に関してそのように特定されていない点。
〈相違点4〉
前者は、第二周期模様のコネクタ部材が、開放して拡張圧縮可能であるループであるのに対して、後者は、第二周期模様のコネクタ部材がループではない点。

訂正発明5と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、下記一致点2で一致し、上記違点1、3、4、及び、上記相違点2と実質上同一の相違点で相違する。
〈一致点2〉
「模様形状を有し管より成るステントであって、ここでこの模様形状が:
第一方向に広がる軸を有する第一周期模様:ここで当該第一周期模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなる;
前記第一方向とは異なる第二方向に広がる複数の第二周期模様:ここで前記第一周期模様が前記複数の第二周期模様に対し、当該第一周期模様間毎に当該第二周期模様のコネクタ部材が存在するように接続されており、そして前記複数の第二周期模様は前記第一周期模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして
前記複数の第二周期模様のコネクタ部材が、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二周期模様のコネクタ部材が存在する
ステント」である点。

(ii)相違点等についての判断
上記相違点4について検討する。
(イ)刊行物3には、「模様形状を有する管より成るステントであって、偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が、当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎にらせん形状のヒンジ部22が存在するように接続されていること」が記載されている。そして、当該「らせん形状のヒンジ部22」は、その形状からみて、ループであって拡張可能であるというべきものであるが、訂正発明1及び5における第二メアンダー模様のループのような、「圧縮可能」であるとは認め得ない。
(ロ)また、刊行物3記載の「らせん形状のヒンジ部22」はステント軸方向の軸を有するらせん形状であるため(刊行物3の図3を参照)、ヒンジ部22はステント表面から径方向外側に突出する構造であると解される。一方、訂正発明1及び5における、偶数次元第一メアンダー模様と奇数次元第一メアンダー模様とを接続する開放ループは、上記らせん形状のような突出部を避け得る構造である。
(ハ)さらに、刊行物3の摘記事項(ロ)の「ヒンジ部14は、全て屈曲部の外方に配置され、内方のステント分節部12の端部は、屈曲のため互いに接近している。このヒンジ部14の配置によって、該ヒンジ部14は2つの役割を果たしている。その第1は、ステント分節部12をつなぐ橋として屈曲部からみて外方の動脈壁を補強的に支える役割であり、その第2は、ヒンジ部14と反対側の複数のステント分節部12の端部を互いに近づける役割である。この第2の役割により、屈曲部内方の動脈壁は補強的に支えられることになる。」との記載、及び、図1〜8からみて、らせん形状のヒンジ部22は、少なくとも屈曲部の内方には存在しないものである(仮に、屈曲部の内方にも図示されていないヒンジ部22が存在するならば、当該ヒンジ部22の存在により、ステント分節部の端部を互いに近づけるという第1の役割を果たせないことになる)。
そうすると、刊行物3記載の「らせん形状のヒンジ部22」が訂正発明1及び5の「偶数次元第一メアンダー模様と奇数次元第一メアンダー模様との間毎に存在し、前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様を接続する第二メアンダー模様のループ」に対応するものであるとしても、刊行物3記載の発明は、当該第二メアンダー模様のループが「ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに存在する」ことを排斥している。すなわち、刊行物2記載の発明の「ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに存在する」第二周期模様のコネクタ部材に刊行物3記載の発明の「らせん形状のヒンジ部22」を適用することを妨げる事情があるというべきである。
一方、訂正発明1及び5は、当該相違点4に係る構成を採ることにより、ステント全長に亘って均等にかつ滑らかに曲がりやすいという顕著な作用効果を奏していると認められる。
したがって、残余の相違点について検討するまでもなく、訂正発明1及び5、訂正発明1を直接ないしは間接的に引用する訂正発明2〜4、訂正発明5を引用する訂正発明6、並びに、訂正発明1及び5を直接ないしは間接的に引用する訂正発明7〜11は、刊行物2、3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。

(6)他の独立特許要件違反について
また、他に、訂正発明1〜11が、特許出願の際独立して特許を受けることができない、とする理由を発見しない。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本件審判請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
柔軟性拡張可能ステント
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって、ここでこの模様形状は:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成しない;
b.これも第一方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様:ここで前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより前記奇数次元第一メアンダー模様は閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記奇数次元第一メアンダー模様は、前記ステントの前記縦方向に沿って、前記偶数次元第一メアンダー模様と交互に配置され、また前記奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
c.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様:ここで前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして
d.前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており、
e.前記複数の第二メアンダー模様のループが、開放していて拡張圧縮可能であると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する
ステント。
【請求項2】前記偶数次元第一メアンダー模様及び前記奇数次元第一メアンダー模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的となっており、そして前記第二メアンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的となっており、そして前記偶数次元第一メアンダー模様の前記周期模様が正弦波からなり、そして前記奇数次元第一メアンダー模様の前記周期模様が正弦波からなる、請求項1記載のステント。
【請求項3】前記第二メアンダー模様が偶数次元及び奇数次元メアンダー模様より成り、前記複数の第二メアンダー模様のループがU字状、コ字状又はV字状である、先の請求項のいずれか1項記載のステント。
【請求項4】前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様がループを有し、そして前記偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様に接続され、各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の間に1本の完全ループができており、この完全ループの中に少なくとも1つの開放ループができている、請求項3記載のステント。
【請求項5】模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって、ここでこの模様形状が:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様は、前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり、前記周期模様は、交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し、これにより、前記偶数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、前記奇数次元第一メアンダー模様は、閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず、また前記偶数次元第一メアンダー模様は前記奇数次元第一メアンダー模様と180°の位相角でずれており、これにより、前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は、隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
b.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模様:ここで前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模様に対し、当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており、そして前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り、そして
c.前記複数の第二メアンダー模様のループが、開放していて拡張圧縮可能であると共に、前記ステントの全周方向に亘って分散配置され、これにより前記ステントの屈曲の際、該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二メアンダー模様のループが存在する
ステント。
【請求項6】前記第一メアンダー模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的であり、そして前記第二メアンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的であり、そして前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様の前記周期模様が正弦波からなる、請求項5記載のステント。
【請求項7】前記第一及び第二方向が直交している、請求項1〜6のいずれか1項記載のステント。
【請求項8】前記第一及び第二方向が直交していない、請求項1〜6のいずれか1項記載のステント。
【請求項9】前記第一及び第二メアンダー模様がワイヤーより成る、請求項1〜8のいずれか1項記載のステント。
【請求項10】前記第一及び第二メアンダー模様が平らな金属より切断されたものである、請求項1〜8のいずれか1項記載のステント。
【請求項11】前記ステントが、保護材料のプレーティング、医薬品の含浸及び材料でのカバーのうちのいずれかにより仕上げられたものである、請求項1〜10のいずれか1項記載のステント。
【発明の詳細な説明】
発明の分野
本発明は一般に生体に移植するためのステントに関する。
発明の背景
様々なステントが当業界において公知である。ここで、本願にとっては、「ステント」なる語は、血管、又は身体におけるその他の開口部を広げ、そして得られる管腔サイズを維持するために利用される身体適合性材料より成る器具を意味する。一般に、ステントは膨張式バルーンと一緒に身体の所望の位置にまで導入され、そしてそのバルーンが膨張すると、ステントは拡張し、これによってその開口部を広げる。ステントを拡張させるその他の機械的器具も利用される。
ワイヤーより成るステントの分野における典型的な特許はPinchukの米国特許第5,019,090号、Towerの同5,161,547号、Savinらの同4,950,227号、Fontaineの同5,314,472号、Wiktorの同4,886,062号及び同4,969,458号、並びにHillsteadの同4,856,516号である。切断ストック金属より成るステントは以下に記載されている:Palmazの米国特許第4,733,665号、Rosenbluthの同4,762,128号、Palmaz及びSchatzの同5,102,417号、Schatzの同5,195,984号、並びにMeadoxのWO 91 FR013820号。
Palmaz及びSchatzの米国特許第5,102,417号に記載のステントは柔軟性コネクターと共に接続された拡張可能管状移植片を有する。この移植片はその管の縦軸に平行に配置された複数のスロットより成る。柔軟可能なコネクターはらせん式コネクターである。管状移植片は比較的硬質であるため、ステントを湾曲した血管に通すときにそれが屈曲であるよう柔軟性コネクターが必要とされる。米国特許第5,102,417号のステントが拡張すると、移植片は放射状に拡張し、その結果縦方向で収縮する。しかしながら、同時に、らせん式コネクターはよじれる。このよじれ運動は血管にとっておそらく有害である。Schatzの米国特許第5,195,984号には、類似ではあるが、管状移植片の間に、管状移植片の縦軸に対して平行に一本の直線状のコネクターを有するステントが記載されている。この直線状の部材はよじれ運動を排除する。しかしながら、それは非常に強力なコネクターではない。
発明の概要
従い、本発明の目的は、柔軟性ステントであって、拡張の際に縦方向において最少限にて収縮するステントを提供することにある。
本発明のステントは、第一方向及び第二方向において広がる軸を有する第一及び第二メアンダー模様をもつ模様形態を有する管より成り、ここでこの第二メアンダー模様は第一メアンダー模様とからみ合っている。その第一及び第二方向は互いと直交し合ってよい。
本発明の一の態様に従うと、この第一メアンダー模様は偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とする。この偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様は互いと180°の位相角でずれており、そして奇数次元模様は2本の偶数次元模様の間である。第二メアンダー模様も偶数次元及び奇数次元模様より成ってよい。
更に、本発明の好適な態様に従うと、第二メアンダー模様は周期毎に2本のループを有し、そしてこの偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様は第二メアンダー模様の各ループの第一及び第二側部のそれぞれに接続している。
他方又は他に、この第二メアンダー模様は偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様より成る。この態様においては、この偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様は偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様に接続され、偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の各組の間に1本の完全ループがある。
従って、本発明は更に
ステントであって
a.少なくとも一の奇数次元及び偶数次元の交互の区画:ここでそれぞれは第一屈曲領域を有し、そしてここで前記奇数次元の区画は、その上の第一屈曲領域が前記偶数次元区画上の第一屈曲領域に隣接するように、前記偶数次元区画と位相角ずれしている;並びに
b.少なくとも1個の柔軟性コネクター:これは隣接し合う偶数次元及び奇数次元区画の第一屈曲領域を接続せしめる複数の柔軟性リンクを含んで成る;
を含んで成り、ここで各柔軟性リンクは少なくとも一の第二屈曲領域により接続された少なくとも2つの部分を有し、そして前記第一及び第二屈曲領域が第一角及び第二角であって、各々の二等分線が互いと交差する角を規定している、ステントを提供する。
また、本発明は、
隣接し合う連続セルのメッシュを含んで成るステントであって、各セルが:
閉じられたセルの中で互いと接続した偶数の数の一定の長さの交互となった第一及び第二ループを含んで成り、ここで各ループはその間に屈曲領域をもつ少なくとも2つの部分を有し、前記第一及び第二ループが第一角及び第二角であって、各々の二等分線が互いと交差する角を規定している、ステントを提供する。
更に、本発明の好適な態様に従うと、その第一及び第二メアンダー模様は平らな金属より成る。他方、それらはワイヤーから切り取ってもよい。更に、それらに任意に身体適合性材料を埋込む又はカバーを施してもよい。
図面の簡単な説明
本発明の図面と共に以下の詳細な説明から一層完全に理解及び認定できるであろう。
図1は本発明の第一の好適な態様に従って構築し、そして機能する模様付きステントの図示である。
図2は図1のステントの模様の図示である。
図3は屈曲位置における図1のステントの図示である。
図4は拡張状態の図1のステントの図示である。
図5A及び5Bは拡張による図1のステントの模様の変化の図示である。
図6は第二のステント模様の態様の図示である。
図7は第三のステント模様の態様の図示である。
図8は拡張状態の図7の模様の図示である。
好適な態様の詳細な説明
図1〜4に関し、本発明の原理に従って構築し、そして機能する第一のステントの態様を示す。図1はその拡張していない形状を示し、図2はステントの模様を示し、図3はその部分的に屈曲した位置を示し、そして図4はその拡張状態を示す。
本発明のステントは管であり、その側部には複数の2種類の直交メアンダー模様それぞれが設けられ、その模様は互いとからみ合っている。「メアンダー模様」なる語は本明細書では中心線分を中心とした周期模様を説明するために用い、そして「直交メアンダー模様」はその中心線分が互いと直交する模様同志をいう。
図1〜4のステントにおいて、2種類のメアンダー模様を11及び12と表示し、そしてそれらは図2で最もよくわかる。メアンダー模様11は鉛直中心線分9を有する鉛直正弦波である。メアンダー模様11は一周期毎に2本のループ14及び16を有し、ここでループ14は右に向って開放し、一方ループ16は左に向って開放する。ループ14と16は共有部材15と17を共有し、ここで部材15は一のループ14からその次のループ16へと接続され、そして部材15は一のループ16からその次のループ14へと接続されている。
メアンダー模様12は水平中心線分13を有する水平模様である。メアンダー模様12も18及び20と表示したループを有するが、周期のループ間には22と表示した長い直線区画がある。ループ18は下方向に開放し、そしてループ20は上方向に開放する。鉛直メアンダー模様11は偶数次元及び奇数次元(oとe)のバージョンで施されており、それらは互いと180°の位相角でずれている。即ち、メアンダー11oの各左開放ループ16はメアンダー11eの右開放ループ14と向い合い、そしてメアンダー11oの右開放ループはメアンダー11eの左開放ループと向い合っている。
水平メアンダー模様には奇数次元及び偶数次元形態で施されていてもよい。水平メアンダー模様12eの直線区画22は鉛直メアンダー模様11eの3個毎の共有部材17と交差している。水平メアンダー模様12oの直線区画22は、交差している共有部材17と2個後方の共有部材15で始まって、鉛直メアンダー模様11eの3個毎の共有部材15と交差している。その結果、メアンダー模様12eと12oとの間に完全ループ14が、そしてメアンダー模様12oと12eとの間に完全ループ16ができる。
図1にもどると、図2の模様は易変形性材料、例えば金属の管30に形成されている。2種類のメアンダー模様に基づき、図1のステントは、カテーテルバルーンの上にかぶせたとき、それは柔軟性であり、それ故屈曲した血管の中を容易に通り抜けることができる。図1のステントが屈曲している例を図3に示す。
図3において、ステントは矢印40で表示した方向で表示地点Aで屈曲し始めている。ステントが屈曲し始めると、Iと表示した区画は曲線の内側となり、そしてOと表示した区画は曲線の外側となる。曲線Iの内側は向い側の曲線Oの外側より短くなる。
屈曲の際、地点Aの右側にあるループ14〜20は内側と外側の曲線との間の長さの差を補うために形状変化する。例えば、曲線の内側付近のループ18i及び20iは、拡張する曲線の外側上のループ18o及び20oよりも互いと接近し合う。内側Iの近くのループ14i及び16iは圧縮され、一方曲線の外側Oの近くのループ14o及び16oは拡張する。
わかる通り、メアンダー模様11及び12は双方とも屈曲に関与する。示してはいないが、図1〜4のステントは任意の方向において、且つ同時に複数の方向において屈曲できることが理解されるであろう。
図4は拡張状態の図1のステントを図示する。ステントが拡張すると、メアンダー模様11及び12は双方とも拡張する(即ち、ループ14〜20は全て広がる)。わかる通り、拡張したステントは2タイプの閉じられた空間、即ちメアンダー模様12oと12eとの間の大空間42及びメアンダー模様12eと12oとの間の小空間44を有する。わかる通り、各大空間42はその左側に2本のループ14及びその右側に2本のループ16を有する。鉛直メアンダー模様11eと11oとの間の大空間(42aと表示)はその頂部及び底部にループ18を有し、一方鉛直メアンダー模様11oと11eとの間の大空間(42bと表示)はその頂部及び底部にループ20を有する。小空間44a及び44bも同様である。
直交メアンダー模様11及び12に基づき、図1のステントは拡張の際に有意に収縮しないことに注目すべきである。これは図5A及び5Bに詳しく示してある。このことについて説明する。図5Aは拡張の際の一本の鉛直メアンダー模様11の動きを示し、そして図5Bは拡張の際の一本の水平メアンダー模様12の動きを示す。もとの模様を実線で示し、そして拡張した模様を破線で示す。
図5Aの鉛直メアンダー模様11はそのループ14及び16が広がることによって拡張する。その結果、鉛直メアンダー模様11はループ当り2*h1の値で鉛直方向に増大する。しかしながら、それは2*d1の値で水平方向で収縮もする。同様に、図5Bの水平メアンダー模様12はそのループ18及び20が広がることにより拡張する。その結果、水平メアンダー模様12はループ当り2*d2の値で水平方向で成長する。しかしながら、それはh2の値で鉛直方向で収縮もする。即ち、鉛直メアンダー模様11の鉛直方向増大は、少なくともある程度、水平メアンダー模様12の鉛直方向収縮を補い、そしてその逆も真なりである。任意のステントの先端部分は部分的にしか補われず、それ故若干収縮しうる。
2種類の直交メアンダー模様11及び12並びにそれらが互いに付与し合う補完は図1の未拡張ステントに柔軟性を付与することが理解されるであろう。しかしながら、ステントが拡張すると、ループ14及び16のそれぞれの変化は得られるステントに硬質性を付与し、それ故ステントが血管を所望の内径に維持させることを可能にする。
本発明のステントは平らな金属から、それを図2の模様へとエッチングすることで製造できる。エッチングを施した材料を屈曲させて管30にする。他方、図2の模様は溶接又はよじったワイヤーから製造できる。
本発明のステントは金属及び/又はワイヤーから作れうることが明らかであろう。更に、それに保護材料をプレーティングする、医薬品を浸す、及び/又は空間42及び44を埋めることのできる材料でコーティングを施すことができる。
本発明は、2種類のメアンダー模様、直交型又はその他より成る模様をもって製造される全てのステントを包括するものと理解されるであろう。直交メアンダー模様を有するその他の典型的な模様をここで提供し、ここで図6は模式バージョンであり、そして図7は一層丸みを帯びたバージョンである。図8は拡張状態の図7の模様を示す。図6及び7の模様は図2に示すものと似ているが、ただしそれはより水平なメアンダー模様を有し、そしてそれらは図2に示しているような偶数次元及び奇数次元のものではなく、一種類のものである。
図6及び7の双方でわかる通り、2タイプの鉛直メアンダー模様11e及び11oは互いに対して180°の位相角でずれている。水平メアンダー模様12は鉛直メアンダー模様11eの全線分15に接続している。図8は拡張状態の図7の模様を示す。図8の拡張状態では偶数次元及び奇数次元水平メアンダー模様がないため、大空間及び小空間はない。その代わり、空間は全て同じサイズである。
本発明は記載の態様に限定されないことを当業者は理解するであろう。本発明は添付の請求の範囲によってのみ規定される。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2006-03-02 
出願番号 特願平8-505814
審決分類 P 1 41・ 16- Y (A61M)
P 1 41・ 121- Y (A61M)
P 1 41・ 856- Y (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大島 祥吾  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
菅澤 洋二
登録日 2001-09-28 
登録番号 特許第3236623号(P3236623)
発明の名称 柔軟性拡張可能ステント  
復代理人 主代 静義  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  
復代理人 新開 正史  
復代理人 主代 静義  
復代理人 伊藤 勝久  
復代理人 新開 正史  
復代理人 柱山 啓之  
代理人 阿部 和夫  
復代理人 柱山 啓之  
復代理人 伊藤 勝久  
代理人 谷 義一  

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