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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B65D
管理番号 1135006
審判番号 無効2005-80179  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-09 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-06-08 
確定日 2006-02-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3394728号発明「ケース」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3394728号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3394728号に係る発明についての出願は、平成11年6月21日に特許出願されたものであって、平成15年1月31日にその発明について特許の設定登録がなされた。
これに対し、平成17年6月8日に請求人株式会社ジャストコーポレーションより無効審判の請求がなされ、平成17年8月29日に被請求人より答弁書及び訂正請求書が提出されたものである。

II.訂正について
(1)訂正請求の内容
被請求人が請求する訂正の内容は、特許請求の範囲の請求項1の「並列係合溝とからなるケース」を「並列係合溝に差し込むスライダとからなり、このスライダを並列係合溝に差し込んだ状態においてケースと係合するスライダの係合手段をケース内に設けた盗難防止ケース」と訂正し、特許請求の範囲の請求項2を削除し、これに伴い、請求項3を請求項2に、請求項4を請求項3に、請求項5を請求項4に訂正することを求めるものである。

(2)訂正の可否に対する判断
上記訂正は、並列係合溝とからなるケースについて具体的な構造について限定するものであるから、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、平成17年8月29日付けの訂正は、特許法第134条第5項の規定によって準用する特許法126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.本件発明
本件特許請求の範囲は上記訂正によって訂正されたので、その請求項1ないし請求項4に係る発明は、明細書の請求項1ないし4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】側面に商品の出し入れ用の開口を有する箱体と、この箱体の下縁側に適宜のヒンジを介し前記開口を開閉するように設けた蓋体と、この蓋体と前記箱体とのそれぞれの側壁の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方に7字状に屈曲した屈曲壁によって設けた並列係合溝に差し込むスライダとからなり、このスライダを並列係合溝に差し込んだ状態においてケースと係合するスライダの係合手段をケース内に設けた盗難防止ケース。
【請求項2】側面に商品の出し入れ用の開口を有する箱体と、この箱体の下縁側に適宜のヒンジを介し前記開口を開閉するように設けた蓋体と、この蓋体と前記箱体とのそれぞれの側壁の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方に7字状に屈曲した屈曲壁によって設けた並列係合溝とからなるケースにおいて、前記係合溝に連結板を介し対向する両側板の上縁部を前記ケースの閉鎖状態維持の係合状態に、かつ抜き差し自在に差し込むケース用スライダ。
【請求項3】側面に商品の出し入れ用の開口を有する箱体と、この箱体の下縁側に適宜のヒンジを介して前記開口を開閉するように設けた蓋体と、この蓋体と前記箱体とのそれぞれの側壁の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方に7字状の屈曲した屈曲壁によって設けた並列係合溝とで構成したケースと、前記係合溝に連結板を介して対向する両側板の上縁部を前記ケースの閉鎖状態維持の係合状態に、かつ抜き差し自在に差し込んだスライダから成り、上記スライダと上記ケース或いは係合溝との対向面に前記スライダの差し込みにともない押し戻され、かつ差し込み終了にともない係合関係になるような係止手段を設けたことを特徴とするケース。
【請求項4】前記スライダの側板に盗難防止用のタグを設けたことを特徴とする請求項2に記載のケース用スライダ。」

IV.請求人及び被請求人の主張の概略
1.請求人の主張
請求人の主張は、以下の通りである。
(1)訂正前の本件特許請求項1の発明は、甲第3号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号により無効とすべきである。
(2)訂正前の本件特許請求項1及び2の発明は、甲第3号証及び5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号により無効とすべきである。
(3)訂正前の本件特許請求項1及び2の発明は、本件発明の趣旨に反した未完成発明であって、特許法第29条柱書きの規定に違反した発明であり、特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号により無効とすべきである。

〈証拠方法〉
甲第1号証 特許第3394728号登録原簿
甲第2号証 特許第3394728号公報
甲第3号証 米国特許第2472486号公報
甲第4号証 参考図(甲第3号証の第3図修正)
甲第5号証 実開平7-29692号公報(明細書全文)

2.被請求人の主張
これに対して、被請求人の主張は、以下の通りである。
(1)訂正された本件特許請求項1の発明は、甲第3号証に記載された発明と同一ではなく、甲第3号証及び5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
訂正前の本件特許請求項2の発明は、削除された。

V.当審の判断
1.請求人の主張(2)について
請求人は、訂正前の本件特許請求項1及び2の発明に対し無効を主張しているが、上記訂正によって訂正前の本件特許請求項2は削除されたので、訂正後の本件特許請求項1の発明(以下、「本件特許発明」という。)について検討する。
(1)甲第3及び5号証の記載事項
甲第3号証(米国特許第2472486号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、原文は英語であるが訳文で記載事項を示す。

a:「本発明は、ケース、箱又は同形状の容器、そして特に容器の嵌合部材に関するものである。」(甲第3号証公報1欄1〜3行)
b:「本発明の目的は、ある一つの簡単な動きによって嵌合位置に至り、かつ ある一つの簡単な動きによって嵌合位置から引き出すという手段により、容器本体に対して開放及び施錠が可能な蓋を有する容器を提供すること、及び容器の蓋と本体を同時に噛み合わせ、又蓋の開放を防止する為のスライドバーを提供することにある。」(甲第3号証公報1欄4〜13行)
c:「2つの突出部は、下方の突出部に対しては下方面から接し、上方の突出部に対しては上方面から接するスライドバーによって同時に嵌め合わされるように成っている。それ故、この2つの突出部によって、ケース本体4と蓋5とを挟み止め又は結合させることと成る。それらの面(以下、「挟持面」と言う)は、水平、長手方向に平行に形成される。スライドバーの接触面は、それに応じて平行に形成される為、該バーはこれらの面に沿ってスライド移動が可能である。突出部の断面及び対応するスライドバーの断面は、挟持面を形成する為の適宜の形状をしていればよい。」(甲第3号証公報2欄22〜37行)
d:「例えば、スライドバー10の断面形状はC字状をしているが、これは、ケース本体4及び蓋5の側面から連接する突出部8及び9によって形成される空間に適合するように成っている。突出部の内方突出部11及び12は、C字状断面の内部に差込まれる為、挟持面13及び14を形成する。」(甲第3号証公報2欄38〜44行)
e:Fig1及びFig3を参照すると、スライドバーと係合する突出部8、9は7字状をしている。(甲第3号証公報Fig1及び3)

甲第5号証(実開平7-29692号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
f:「【請求項1】外部から容易に取出せないように商品を収納すると共に、電波式、磁気式等の万引き防犯装置に適用される万引き防犯タグが取付けられる万引き防犯ケースであって、第1の端部をヒンジにより回動可能な連結され、該ヒンジを中心に開閉可能にされた一対のケース本体と、該一対のケース本体の第2の端部に装着され、前記一対のケース本体を閉じた状態に係止する係止部材と、該係止部材を係止状態にロックするロック部材であって、所定の工具を使用することによりロック状態を解除可能にされたロック部材とを具備し、前記係止部材の内側に、前記万引き防犯タグを取り付けたことを特徴とする万引き防犯ケース。
【請求項2】前記一対のケース本体の夫々の第2の端部には、一対の凸部が形成されていると共に、前記係止部材には、前記一対の凸部の双方に係合する一対の凹部が形成されており、前記一対の凸部と前記一対の凹部とを係合させることにより、前記係止部材が前記一対のケース本体に装着され、該一対のケース本体を閉じた状態に保持することを特徴とする請求項1記載の万引き防犯ケース。
【請求項3】前記一対の凸部は、前記一対のケース本体の長手方向に沿って延出しており、前記係止部材は、前記一対の凹部を前記一対の凸部の延出方向端部からスライド挿入することにより前記一対のケース本体に装着されることを特徴とする請求項2記載の万引き防犯ケース。
【請求項4】前記ロック部材は、前記係止部材の前記一対のケース本体に対するスライドを禁止することにより、前記係止部材を係止状態にロックすることを特徴とする請求項3記載の万引き防犯ケース。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1から4)

(対比判断)
本件特許発明と甲第5号証記載のものとを比較する。
甲第5号証に記載されたケースは、記載事項f及び図2によれば、「商品を収納すると共に、電波式、磁気式等の万引き防犯装置に適用される万引き防犯タグが取付けられる万引き防犯ケース」であって、「ヒンジを中心に開閉可能にされた一対のケース本体」であり、「一対のケース本体の夫々の第2の端部には、一対の凸部が形成されていると共に、前記係止部材には、前記一対の凸部の双方に係合する一対の凹部が形成されて」おり、「係止部材は、前記一対の凹部を前記一対の凸部の延出方向端部からスライド挿入することにより前記一対のケース本体に装着される」ものである。図2には、一対の凸部は並列して設けられている。
上記の事項を考慮して本件特許発明の用語を用いて表現すると、両者は
「側面に商品の出し入れ用の開口を有する箱体と、この箱体の下縁側に適宜のヒンジを介し前記開口を開閉するように設けた蓋体と、並列係合溝に差し込むスライダとからなり、このスライダを並列係合溝に差し込んだ状態においてケースと係合するスライダの係合手段をケース内に設けた盗難防止ケース。」
で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本件特許発明は、「蓋体と箱体とのそれぞれの側壁の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方に7字状に屈曲した屈曲壁によって設けた並列係合溝」を有しているのに対し、甲第5号証記載のものは、「蓋体と箱体のそれぞれの端部に凸部が形成された並列係合部」であって具体的な構造が異なっている点。
相違点2:本件特許発明は「スライダを並列係合溝に差し込んだ状態においてケースと係合するスライダの係合手段をケース内に設けた」のに対し、甲第5号証記載のものは、係止部材(スライダ)がケース本体に対してスライドしないように係止部材(スライダ)を係止状態にロックするものであるが、ロックするための具体的な構造が異なっている点。

上記各相違点について検討する。
[相違点1について]
甲第5号証に記載されているケースはスライダと係合する係合溝の構造が本件特許発明における構造とは異なっているが、甲第3号証には、蓋と本体とを有する容器において蓋と本体に設けられた突出部にスライドバー(本件特許発明におけるスライダ)を係合させることによって蓋の開放を防止することが記載されており、その突出部の形状はFig1及び3を参照すれば、蓋体と箱体から連なって外方に突出すると共に、延長を内方に7字状に屈曲した屈曲壁を構成しているものと認められる。
そして、両者ともケースの蓋の開放を防止するという同一の目的を達成するための構造であるから、甲第3号証に記載されているような内方に7字状に屈曲した屈曲壁の構造を、甲第5号証に記載されている万引き防犯ケースの係合溝の構造として適用することは、当業者が容易になし得ることであると認められる。
また、本件特許発明では、係合溝に係合するスライダが屈曲壁内部に挿入されるため、係合溝とスライダの係合部が表面に露出せず、箱体と蓋体内に隠れる構造となっているため、開放を阻止する部材すなわちスライダの構造が分かり難く万引きを躊躇させる効果があるものであるが、そのような効果は内方に7字状に屈曲した屈曲壁の構造を採用したことにより当然得られる効果であるにすぎない。
[相違点2について]
本件特許発明では、スライダを並列係合溝に差し込んだ状態においてケースと係合するスライダの係合手段をケース内に設けており、その目的は第3者によるスライダの引き抜きを防止するものであるが、甲第5号証にも、係止部材(スライダ)がケース本体に対してスライドしないように係止部材(スライダ)を係止状態にロックするというように、そのような課題は認識されているものである。
そして、係合手段をケース内に設けることは、例えば本件特許の審査段階における平成14年6月5日付け拒絶理由通知において引用した特開平10-218273号公報の段落【0025】及び図3〜8にも記載されているように周知の技術事項であって、スライダを並列係合溝に差し込んだ状態においてケースと係合するスライダの係合手段をケース内に設けることは当業者が容易になし得ることである。

VI.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1の特許発明は甲第3及び5号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、請求人の主張する他の理由について検討するまでもなく、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ケース
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】側面に商品の出し入れ用の開口を有する箱体と、この箱体の下縁側に適宜のヒンジを介し前記開口を開閉するように設けた蓋体と、この蓋体と前記箱体とのそれぞれの側壁の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方に7字状に屈曲した屈曲壁によって設けた並列係合溝に差し込むスライダとからなり、このスライダを並列係合溝に差し込んだ状態においてケースと係合するスライダの係止手段をケース内に設けた盗難防止ケース。
【請求項2】側面に商品の出し入れ用の開口を有する箱体と、この箱体の下縁側に適宜のヒンジを介し前記開口を開閉するように設けた蓋体と、この蓋体と前記箱体とのそれぞれの側壁の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方に7字状に屈曲した屈曲壁によって設けた並列係合溝とからなるケースにおいて、前記係合溝に連結板を介し対向する両側板の上縁部を前記ケースの閉鎖状態維持の係合状態に、かつ抜き差し自在に差し込むケース用スライダ。
【請求項3】側面に商品の出し入れ用の開口を有する箱体と、この箱体の下縁側に適宜のヒンジを介し前記開口を開閉するように設けた蓋体と、この蓋体と前記箱体とのそれぞれの側壁の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方に7字状に屈曲した屈曲壁によって設けた並列係合溝とで構成したケースと、前記係合溝に連結板を介し対向する両側板の上縁部を前記ケースの閉鎖状態維持の係合状態に、かつ抜き差し自在に差し込んだスライダとからなり、上記スライダと上記ケース或いは係合溝との対向面に前記スライダの差し込みにともない押し戻され、かつ差し込み終了にともない係合関係になるような係止手段を設けたことを特徴とするケース。
【請求項4】前記スライダの側板に盗難防止用のタグを設けたことを特徴とする請求項2に記載のケース用スライダ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、陳列や販売以外に貸し出しケースになると共に、収納商品の盗難を防止するケースや、ケースの開放阻止スライダ及びケースに対するスライダの係合関係解除具に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
例えば、レンタルショップでレンタル商品であるビデオテープやディスクなどの収納ケースを並べて陳列した際、ケースの収納商品の盗難防止機能、すなわちケースを開放して収納商品の抜き取りを防止する手段がないため、商品の不正な持ち出し(盗難)が発生する。
【0003】
また、上記の盗難を防止する手段として、店の出入口に磁気センサなどの検知手段を配置し、ケースや収納商品に磁気コイルなどのタグを取付けておくことが知られている。
【0004】
しかしながら、ケースはもとより商品にまでタグを取付けるので、タグの取付けに多大な手数がかかると共に、大幅なコストアップになる問題が発生した。
【0005】
さらに、タグの取付けてあるケースを販売ケースとした際、取付けてあるタグを回収しないかぎり損失の発生原因になる。勿論、商品にタグが取付けてあるので同様の問題が発生する。
【0006】
そこで、この発明の課題は、ケースに収納商品の盗難防止機能を付与し、また、ケースや商品にタグの取付けが不要になるようにしたことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明は、側面に商品の出し入れ用の開口を有する箱体と、この箱体の下縁側に適宜のヒンジを介し前記開口を開閉するように設けた蓋体と、この蓋体と前記箱体とのそれぞれの側壁の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方に7字状に屈曲した屈曲壁によって設けた並列係合溝とからなるケースを採用する。
【0008】
また前記係合溝或いは箱体と、蓋体のいずれかに差し込んだスライダの抜止め係止手段を設けた構成を採用する。
【0009】
さらに、側面に商品の出し入れ用の開口を有する箱体と、この箱体の下縁側に適宜のヒンジを介し前記開口を開閉するように設けた蓋体と、この蓋体と前記箱体とのそれぞれの側壁の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方に7字状に屈曲した屈曲壁によって設けた並列係合溝とからなるケースにおいて、前記係合溝に連結板を介し対向する両側板の上縁部を前記ケースの閉鎖状態維持の係合状態に、かつ抜き差し自在に差し込むケース用スライダを採用する。
【0010】
また前記スライダの側板に盗難防止用のタグを設けることもある。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を添付図面に基づき説明する。
【0012】
この発明の第1の実施形態のケースAは、図1及び図2に示すように、側面に商品の出し入れ用の開口1を有する箱体2と、この箱体2の下縁側にヒンジ3を介し開口1を開閉するように設けた蓋体4とで構成されている。
【0013】
上記の箱体2は、図示の場合側壁5と、この側壁5の各辺縁から連なって側壁5の裏面側に突出する周壁6とで構成され、蓋体4は、図示の場合側壁7と、この側壁7の下辺以外の辺縁から連なって側壁7の裏面方向に突出すると共に、周壁8とで構成され、ヒンジ3は、図示の場合側壁7の下辺と周壁6との連結部分にハーフカットにより設けたが、他のヒンジを用いることもあり、合成樹脂を素材とした成形などで設ける。勿論、周壁6、8などの一部に収納商品の抜き取りができない切欠きなどを設けることもある。
【0014】
また、箱体2と蓋体4との上縁(ヒンジ3に対向する辺側)には、側壁5、7の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方から下方に屈曲した7字状の屈曲壁10を形成して並列係合溝9、9が設けてある。
【0015】
上記のように構成すると、箱体2に例えばレンタルショップにあっては、レンタル商品を収納したのち、蓋体4によって開口1を閉鎖する。このとき、係合溝9、9は、図2に示すように並列状になる。
【0016】
この発明の(第1の実施形態のケースに用いる)第2の実施形態のスライダBは、図3に示すように、閉鎖状態におけるケースAの並列係合溝9、9に係合させて抜き差し自在に差し込むように構成されている。
【0017】
すると、並列係合溝9、9に係合状態に差し込んだスライダBによってケースAの開放を阻止するので、棚に陳列したケースAに収納してある商品の盗難を防止することができる。
【0018】
ただし、スライダBを引き抜くことによって並列係合溝9、9とスライダBとの係合関係が解除されて蓋体4の開放が可能になるが、陳列時のケースAからスライダBを引き抜くことは、不正感によりちゅうちょさせて盗難防止になる。
【0019】
上記のスライダBは、並列係合溝9、9に上縁部を嵌合して屈曲壁10、10の内側に嵌入する左右一対の側板11、11と、この両側板11の対向面上下縁間の中間を接続する連結板12とで構成(端面H形に)してある。
【0020】
なお、図示のようにストッパ13(図示の場合周壁8の設けたが、屈曲壁10に設けてもよい)にスライダBの差し込み先行端を当接させて定位置にスライダ8を停止させるようになっている。その際、ケースAを傾けてもスライダBが滑走して抜け落ちない接触抵抗があるようにしておくと望ましい。
【0021】
この発明の第3の実施形態では、図4から図6に示すように、第2の実施形態のスライダBと第1の実施形態のケースA或いは係合溝9との対向面には、スライダBの差し込みにともない押し戻され、スライダBの差し込み終了にともない係合関係になってスライダBの引き抜きを阻止する係止手段21が、また係止手段21を有する対向面間に係止手段21の係合解除具22の差し込み間隙23が設けてある。
【0022】
上記の係止手段21は、図示の場合周壁8とスライダB(スライダBの連結板12)との対向面一方に設けた凹入或いは貫通孔の係止部24と、他方にスライダBの差し込み時に突出力に抗して押し戻され(押し逃がされ)、スライダBの差し込み終了にともない合致する係止部24に自動的に嵌り込んで係合関係になると共に、スライダBの差し込み方向の反対方向のスライドを止める係止片25とで構成されている。
【0023】
なお、図示の場合ケースA側に係止部24を、スライダB側に係止片25を設けたが、限定されず逆にして設けることもでき、またスライダBや係合溝9の形状によって位置を変更することもでき、さらに、係止片25は、図示の場合連結板12にコ字状のスリット26を入れて、このスリット26の内側を係止部24側に突出させて設けると共に、スライダBと一体的に成形する合成樹脂のもつ弾力を利用して元の位置に復帰させるようにしたが、別部品を取付けて設ける以外に、図18に示すように、合成樹脂によるスライダBの成形の際に一体的に係止片25を設けることもできる。
【0024】
また、図示のように、係止片25に連結板12に対する連結部分から自由端に向け、かつ対向する係止部24側に突出度合いが徐々に大きくなるテーパー面部27を設けておくと、スライダBの差し込みがスムーズになると共に、スムーズに係止片25を押し戻すことができる。
【0025】
さらに、上記の間隙23は、図示の場合、連結板12と両側板11とで囲まれた空隙を利用した。
【0026】
上記のように構成すると、第2の実施形態のように、並列係合溝9に係合状態にスライダBを差し込んでケースAの開放を阻止する。
【0027】
その際スライダBの差し込みにともない周壁8に当接する係止片25を押し戻し、スライダBの差し込み終了にともない係止部24に係止片25の自由端が合致するので、周壁8による押し戻しの解除された係止片25が復帰(元の姿勢に)して、係止部24に係止片25の自由端が図6に示すように嵌り込み係合する。
【0028】
この係合関係によって第3者によるスライダ8の引き抜きが阻止されるので、ケースAを開放することができない。すなわち、ケースAに収納してある商品の盗難を防止することができる。
【0029】
なお、図示の場合、前後に二個の係止手段21を配置したが、数は自由に決定すればよい。
【0030】
上記係止手段21の係合関係を解除するための間隙23に差し込む係合解除具22は、図9、図10及び図11に示すように間隙23に差し込む板状体31と、この板状体31から連なって前方に突出すると共に、前方の係止片25を押し戻して係止部24から係止片25を脱出(係合関係解除のため)させる(図11に示すように)長尺片32と、手前の係止片25を押し戻して係止部24から係止片25を脱出(係合関係解除のため)させる(図11に示すように)短尺片33を並設して形成する。
【0031】
その際、長尺片32は、図10に示すようにスライダBから突出するガイド34によって前方の係止片25の下側センターに案内されるように長尺片32を屈曲させ、そして係止片25の一側縁から下向きに突出するガイド片35によって長尺片32の先を係止片25の下面センターに案内する。
【0032】
一方短尺片33は、先端を先細り状にして、係止片25の両側縁から下向きに突出する並列ガイド片36間に嵌入して係止片25の下面センターに案内する。
【0033】
ただし、係合解除具22は、上記の構成に限定されず、係止手段21が1個の場合、一枚の板状体を用いて行なう。
【0034】
なお、係止部24は、図示の貫通孔に限定されず、凹入部や図19、図20に示すように例えば周壁8の上面(間隙23を有する面)に突起を突出させて設けることもある。
【0035】
その際、係合解除具22の差し込み時に長尺片32及び短尺片33の差し込み先行端が衝突(突起に)しないように考慮しておく。
【0036】
図中37は係合解除具22の差し込みストッパである。
【0037】
この発明の第4の実施形態では、図12に示すようにスライダBの側板11に不正な持ち出し防止のタグ41が取付けてある。
【0038】
このタグ41は、周知のように磁気コイルなどで、店の出入口に配置した磁気センサーなどの検知手段で検知される。
【0039】
上記のタグ41は、図示の場合スライダBの側板11の外側面に凹入部42を設けて、この凹入部42に嵌め込むタグ41を接着剤などで固定したが、側板11の内側面に設けてもよい。
【0040】
勿論図21に示すように、並列係合溝9をケースAの辺縁全長に設けて、それに見合うようにスライダBも長くすると共に、スライダBの差し込み先行端側の長く延長した部分にタグ41を設ける(取付ける)こともある。
【0041】
上記のように構成すると、商品の販売やレンタルの際に店側にスライダBを残すので、大幅なコストアップになるケースや商品にタグを取付ける必要がない。
【0042】
そして、スライダBの回収ずみケースAは、販売や貸し出しに使用することができる。
【0043】
なお、図13に示すようにスライダBの差し込み先行端には、突き破り尖鋭部51が設けてある。
【0044】
上記の尖鋭部51は、図示のV字状以外に、図22に示すようにドライバーのプラス形状の尖鋭部51などにすることもある。
【0045】
要するに、図14に示すようにケースAを包装する熱収縮フィルムなどの包装フィルム52を尖鋭部51によって突き破って並列係合溝9にスライダBを差し込む。すると、フィルム52によってケースAが包装されていても包装ままケースAにスライダBを差し込むことができる。
【0046】
なお、図22及び図23に示すように並列係合溝9、9のスライダBの差し込み端部に欠除部71を設けておくと、尖鋭部51により突き破った包装フィルム52の破り端がスライダBにより押し込まれても、押し込んだ破り端が欠除部71内に逃げ込んでスライダBのスムーズな差し込みを阻害しない。
【0047】
この発明の第5の実施形態では、図9、図13、図15や図11、図16、図17に示すように、スライダBと差し込んだ解除具22との重なり面には、自動的に係合関係になる係合手段61が設けてある。
【0048】
上記の係合手段61は、図示の場合スライダBに凹部62を、解除具22に差し込み終了時凹部62に嵌り込み係合するように引き抜く方向に突出度合いの大きいテーパー突部63とを設け、図15に示す凹部62と突部63との噛み合いにより係合関係になり、解除具22を引き抜くと共にスライダBの引き抜かれるようにした(解除具22を若干持ち上げぎみにしながら)方式や、短尺片33の上面に設けた凹入段部65の角に、解除具22の差し込みにともない短尺片33によって上方に復帰力に抗して押し逃がされ、解除具22の差し込み終了にともない凹入段部65に合致すると共に、凹入段部65に嵌り込み係合する弾片66とで係合関係になり、解除具22と共に、スライダBを引き抜く方式がある。
【0049】
この発明の第6の実施形態では、図24及び図25に示すように、並列係合溝9、9間に所定の空隙73を設けておく。そして、この空隙73に差し込んだスライダBから突出する指先掛合部74を嵌入させる。
【0050】
勿論、空隙73は、スライダBの差し込みにともない指先掛合部74が空隙73内に嵌入し、そして空隙73を移動するので、全長にわたり、或いは必要な範囲設ける。
【0051】
すると、スライダB及び解除具22の差し込み終了後図24に示すように指先掛合部74に指先を押し当てると共に、押し当て状態を維持しながらスライダBの抜き取り方向に指先を移動(図24矢符方向に)させると、指先の押し当てによる加圧力でスライダBと共に解除具22が重なり合った状態で抜ける方向にスライドする。従って、スライダBと解除具22との第5の実施形態のような係合手段61が不要になる。
【0052】
なお、指先掛合部74の突出長さは、見苦しくない程度に突出させればよい。
【0053】
また、図26に示すようにスライダBの差し込みにともない係止手段21が係合関係になったとき、スライダBと周壁8との対向面一方の係止部75に弾片76が自動的に嵌り込み係合するようにして、スライダBの差し込み方向のスライドをストップさせると、ケースA側にストッパ13が不要になる。
【0054】
勿論、弾片76は、解除具22の差し込みにともない押し逃げされて、弾片76と係止部75との係合関係が解除されるようになっている。
【0055】
上記に係止部75及び弾片76は、前述の係止手段21と同様につき説明を省略する。
【0056】
【発明の効果】
この発明の係るケース及びスライダは、ケースを構成する箱体と蓋体とのそれぞれの側壁の上縁から連なって上方に突出すると共に、延長を内方に7字状に屈曲した屈曲壁によって並列係合溝を形成し、この並列係合溝に差し込むスライダの両側板の上縁部を上記ケースの閉鎖維持の係合状態にするので、スライダを介しケースの開放が阻止されてケースに収納してある商品の盗難を防止することができると共に、店側の解除具によってスライダとケースとの係止手段の係合関係を解除して、引き抜いたスライダを店側に残すため、ケースを販売或いは貸出しケースとして使用することができる。
【0057】
また、スライダの側板にタグを設けたので、ケースや商品の両方にタグを取付ける手間をなくすることができると共に、店側にタグ付スライダを残すため、ケース毎商品を貸し出し或いは販売などしても、タグの損失がない。
【0058】
すなわち、ケース毎にスライダが不要になるその理由はケースは品物を収納してメーカー側から出荷されるものであり、スライダは、販売店やレンタル店のみに備えるものである。従って店側に回収されたタグ付スライダは、再使用できて経費の節減になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態のケースを示す斜視図
【図2】ケースの縦断正面図
【図3】ケースとスライダの斜視図
【図4】第3の実施形態のスライダを示す斜視図
【図5】ケースとスライダの斜視図
【図6】スライダを差し込んだ縦断側面図
【図7】図6のX-X線に沿う断面図
【図8】図6のY-Y線に沿う断面図
【図9】同上に用いる解除具の斜視図
【図10】解除具の使用を示す横断平面図
【図11】同縦断側面図
【図12】第4の実施形態のスライダを示す斜視図
【図13】スライダを示す斜視図
【図14】同上の使用状態を示す斜視図
【図15】第5の実施形態の要部を示す縦断側面図
【図16】解除具の斜視図
【図17】スライダの縦断側面図
【図18】他のスライダを示す斜視図
【図19】係止部の他の例を示す下面図
【図20】同上の縦断側面図
【図21】スライダと係合溝との他の例を示す斜視図
【図22】スライダの他の例を示す斜視図
【図23】同上の要部を示す縦断側面図
【図24】第6の実施形態の縦断側面図
【図25】同上の縦断正面図
【図26】スライダの停止位置決めを示す縦断側面図
【符号の説明】
A ケース
B スライダ
1 開口
2 箱体
3 ヒンジ
4 蓋体
9 係合溝
11 側板
12 連結板
21 係止手段
22 解除具
23 間隙
24 係止部
25 係止片
26 スリット
27 テーパー面部
31 板状体
32 長尺片
33 短尺片
34 ガイド
35 ガイド片
36 ガイド片
37 ストッパ
41 タグ
42 凹入部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-12-21 
結審通知日 2006-01-04 
審決日 2006-01-17 
出願番号 特願平11-212589
審決分類 P 1 123・ 121- ZA (B65D)
最終処分 成立  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
種子 浩明
登録日 2003-01-31 
登録番号 特許第3394728号(P3394728)
発明の名称 ケース  
代理人 鳥居 和久  
代理人 安原 正之  
代理人 東尾 正博  
代理人 佐藤 治隆  
代理人 鷹見 雅和  
代理人 平崎 彦治  
代理人 鳥居 和久  
代理人 東尾 正博  
代理人 鎌田 文二  
代理人 小林 郁夫  
代理人 鎌田 文二  

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