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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1135027
審判番号 不服2002-7806  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-02 
確定日 2006-04-13 
事件の表示 特願2000-135783「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月16日出願公開、特開2001-320181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年5月9日の出願であって、本願の請求項1〜3に係る発明は、平成17年12月27日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める(請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】回路基板と、この回路基板を覆うシールド板と、内部にこれらが積層されて収納される筐体とを備えた電子機器であって、
前記筐体は、凹部を有する2つの筐体部材を組み合わせて構成され、
いずれか一方の筐体部材には、前記回路基板、前記シールド板、および他方の筐体部材を固定する固定部材を挿入する挿入孔が形成され、
いずれか他方の筐体部材には、前記回路基板および前記シールド板を前記一方の筐体部材側に押さえつける押さえ部材が設けられ、
前記回路基板には、基板面に接地パターンが形成されるとともに、前記シールド板は、この接地パターンと当接することで電気的導通が確保され、
前記押さえ部材は、前記シールド板および接地パターンに応じた位置に設けられ、
前記シールド板は、前記回路基板に実装された回路素子の上方を覆う平板状部、および側方を覆うリブ状部を備え、その側面部分には、前記接地パターンに応じた位置に切り起こし片が複数形成され、
これらの切り起こし片は、それぞれ互い違いに上下方向の切り起こし角度が異なっていて、前記2つの筐体部材が組み合わせられると、前記押さえ部材は、上側の切り起こし片を押さえ、下側の切り起こし片により電気的導通が確保されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】請求項1に記載の電子機器において、
前記他方の筐体部材には、前記一方の筐体部材の挿入孔の位置に応じて設けられ、前記固定部材が結合する結合部材を備えた第2の押さえ部材が設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】請求項1または請求項2に記載の電子機器において、
前記接地パターンは、前記回路基板の周縁に形成されていることを特徴とする電子機器。」

2.引用刊行物およびその記載事項
これに対して、当審における平成17年10月25日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2000-101278号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「シールドケースおよび電子機器」に関して、図1〜13とともに次のような記載がある。
A)「【0002】
【従来の技術】図11および図12に示す如く、携帯電話機等の電子機器Aには、高周波遮蔽を目的としたシールドケースSが組み込まれている。
【0003】シールドケースSは、図11に示す如く、天板Stと側板Ss,Ss…とを有し、下方の解放された箱形状を呈しており、各側板Ssの解放縁部にはフランジSfが形成されている。
【0004】一方、基板Bは、その表面に高周波遮蔽を必要とする部品および回路パターンを囲んで接地パターンBgが形成されており、図12に示す如く、ケーシングCの下ケースClに取付けられている。
【0005】シールドケースSは、基板Bの所定位置に被せられ、下ケースClに組付けられた上ケースCuのリブCrで、フランジSfの要所を押圧することにより、接地パターンBgにフランジSfを接触させた状態で基板Bに設置されている。」
B)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、実施例を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。図1および図2に示す如く、本発明に関わる電子機器1は、互いに組付けられた上ケース2Uと下ケース2Lとから成るケーシング2の内部に、シールドケース10および基板20を収容設置して構成されている。
【0012】図1に示す如く、本発明に関わるシールドケース10は、方形状を呈する天板11と、該天板11の各辺から下方に展開する側板12,12…とを有し、その外観は下方の解放された四角い箱形状を呈している。
【0013】シールドケース10の各側板12には、天板11側から延びて解放縁部(下縁部)に臨む複数のスリット12s,12s…が形成され、これによって側板12は複数の側板片12p,12p…に分割されている。
【0014】また、各側板12の解放縁部、詳しくは個々の側板片12p,12p…の解放縁部には、外方に向けて展開するフランジ13,13…が形成されている。
【0015】一方、前記基板20の表面には、高周波遮蔽を必要とする部品および回路パターンを囲んで接地パターン21が形成されており、該接地パターン21はシールドケース10のフランジ13,13…に対応した四角い枠形状を呈している。
【0016】図2に示す如く、シールドケース10は、ケーシング2の下ケース2Lに取付けられた基板20の所定位置に被せられ、下ケース2Lに組付けられた上ケース2Uのリブ2rで、フランジ13,13…の要所を押圧されることにより、接地パターン21にフランジ13,13…を接触させた状態で、前記基板20に設置されている。」
C)「【0026】図7に示すシールドケース200は、各側板212における側板片212p,212p…の解放縁部に、それぞれ複数のフランジ213が形成されているとともに、外方に向けて弾性舌片214が湾曲形成されている。
【0027】上記構成によれば、弾性舌片214,214…の作用により、基板20の接地パターン21(図1参照)とシールドケース200との接触を更に確実なものとすることができる。
【0028】ここで、前記シールドケース200の構成は、フランジ13に換えてフランジ213および弾性舌片214を形成した以外、図1から図3に示したシールドケース10と同一なので、シールドケース10の要素と同一の作用を成す要素に対し、図1から図3の符号に200を加算した符号を附して説明を省略する。」

上記A)〜C)の記載と、図1,2,7とからみて、上記刊行物1の電子機器1は、基板20と、この基板20を覆うシールドケース10と、内部にこれらが積層されて収納されるケーシング2とを備えた電子機器であって、シールドケース10は、図1から明らかなように(図1において、接地パターン21で囲まれた部分に回路素子が実装されていることは当業者において自明である。)、基板20に実装された回路素子の上方を覆う平板状の天板11と、側方を覆う側板12とを備えるとともに、ケーシング2は、図2から明らかなように、凹部を有する2つのケーシング部材(上ケース2Uと下ケース2L)を組み合わせて構成され、上ケース2Uには、基板20とシールドケース10を下ケース2L側に押さえつけるリブ2rが設けられるとともに、基板20には、回路素子等(高周波遮蔽を必要とする部品および回路パターン)を囲んで基板面に接地パターン21が形成され、上記リブ2rは、これらシールドケース10および接地パターン21に応じた位置に設けられるとともに、シールドケース10は、この接地パターン21と当接することで電気的導通が確保されるものと認められる。
また、特に図7のシールドケース200は、その側面部分である各側板212の側板片212pの解放縁部に、該解放縁部を略90゜外方に切り起こしたフランジ213と、外下方に向けて湾曲した弾性舌片214とを、それぞれ互い違いに上下方向の位置が異なるように形成しており、これにより、接地パターン21とシールドケース200との接触が更に確実にされているものと認められる(図2のシールドケース10が、下ケース2Lに組付けられた上ケース2Uのリブ2rで、フランジ13の要所を押圧されるのと同様に、図7のシールドケース200が、上ケース2Uのリブ2rで、フランジ213の要所を押圧され、これにより、弾性舌片214の湾曲部分が、接地パターン21に確実に接触するように押圧されることは、当業者が容易に理解しうるところである。)。
したがって、上記刊行物1には、
「基板20と、この基板20を覆うシールドケース200と、内部にこれらが積層されて収納されるケーシング2とを備えた電子機器であって、
前記ケーシング2は、凹部を有する2つのケーシング部材である上ケース2Uと下ケース2Lを組み合わせて構成され、
上ケース2Uには、前記基板20および前記シールド板を下ケース2L側に押さえつけるリブ2rが設けられ、
前記基板20には、基板面に接地パターン21が形成されるとともに、前記シールドケース200は、この接地パターン21と当接することで電気的導通が確保され、
前記リブ2rは、前記シールドケース200および接地パターン21に応じた位置に設けられ、
前記シールドケース200は、前記基板20に実装された回路素子の上方を覆う平板状の天板211、および側方を覆う側板212を備え、その側面部分には、前記接地パターン21に応じた位置に外方に切り起こされたフランジ213と外下方に向けて湾曲した弾性舌片214が複数形成され、
これらのフランジ213と弾性舌片214は、それぞれ互い違いに上下方向の位置が異なっていて、前記2つのケーシング部材が組み合わせられると、前記リブ2rは、上側のフランジ213を押さえ、下側の弾性舌片214により電気的導通が確保される電子機器。」の発明(以下、「刊行物1の発明」という。)が記載されているものと認める。

同じく、当審における平成17年10月25日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された実願昭54-42780号(実開昭55-145100号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、「シールド板」に関して、第1〜3図とともに次のような記載がある。
D)「本実施例によるシールド板(1)は、例えばアルミ箔等からなる導体薄板(2)と塩化ビニル等からなる絶縁体薄膜(3)とを互いに貼り合わせて形成されており、・・・シールド板(1)の縁部には、あらかじめ所定の位置に突起部(4)が一体に設けられており、・・・突起部(4)は、折り返したときにプリント基板(7)のアースパターン(8)と対向するようにこのシールド板(1)は配されており、この突起部(4)の導体面がアースパターン(8)と直接接触することによつて、シールド板(1)の導体部分(2)全体がアースされる。・・・外筺(6)と内部のメカシヤーシ(14)とはネジ(9)等によって連結されるが、その際、シールド板(1)の折返し部(4)とプリント基板(7)のアースパターン(8)とを第1図に示すように外筺(6)とメカシヤーシ(14)との間に挟み込んで共締めすることによつて、プリント基板(7)を固定するとともに、折返し部(4)の導体表面とアースパターン(8)との接触を確実ならしめている。
本実施例においては、突起部(4)を絶縁面(3)側に折り返すことによつて導体(2)とアースパターン(8)との接触を図つているので、折り返し部(4)の弾性が効果的に作用して、その接触を確実かつ容易なものとしている。」(第3頁15行〜第5頁5行)

上記D)の記載と第1図とからみて、上記刊行物2には
「外筺(6)〔筐体部材〕と、メカシヤーシ(14)で構成される2つの枠部材の間にプリント基板(7)〔回路基板〕とシールド板(1)を挟み込んで固定するものにおいて、外筺(6)に、プリント基板(7)、シールド板(1)、およびメカシヤーシ(14)を固定するネジ(9)〔固定部材〕を挿入する挿入孔を形成し、該ネジ(9)〔固定部材〕により、これらプリント基板(7)〔回路基板〕、シールド板(1)、およびメカシヤーシ(14)を同時に固定する発明」(但し、〔〕内は本願発明の対応部材を示す。)が記載されているものと認める。

3.本願発明と上記刊行物1の発明との対比
本願発明と上記刊行物1の発明とを対比すれば、上記刊行物1の発明の「基板20」、「シールドケース200」、「ケーシング2」、「上ケース2U」、「下ケース2L」、「リブ2r」、「接地パターン21」、「天板211」、「側板212」は、それぞれ本願発明の「回路基板」、「シールド板」、「筐体」、「他方の筐体部材」、「一方の筐体部材」、「押さえ部材」、「接地パターン」、「平板状部」、「リブ状部」に相当しているから、本願発明と上記刊行物1の発明は、
「回路基板と、この回路基板を覆うシールド板と、内部にこれらが積層されて収納される筐体とを備えた電子機器であって、
前記筐体は、凹部を有する2つの筐体部材を組み合わせて構成され、
他方の筐体部材には、前記回路基板および前記シールド板を一方の筐体部材側に押さえつける押さえ部材が設けられ、
前記回路基板には、基板面に接地パターンが形成されるとともに、前記シールド板は、この接地パターンと当接することで電気的導通が確保され、
前記押さえ部材は、前記シールド板および接地パターンに応じた位置に設けられ、
前記シールド板は、前記回路基板に実装された回路素子の上方を覆う平板状部、および側方を覆うリブ状部を備えている電子機器。」
で一致し、以下の<相違点>で相違しているものと認める。
<相違点>
1)本願発明では、一方の筐体部材に、回路基板、シールド板、および他方の筐体部材を固定する固定部材を挿入する挿入孔が形成されているのに対し、刊行物1の発明では、一方の筐体部材である下ケース2Lに、回路基板である基板20、シールド板であるシールドケース10、および他方の筐体部材である上ケース2Uを固定する固定部材を挿入するための挿入孔が形成されているか否かについては言及されていない点。
2)本願発明の、シールド板の側面部分には、接地パターンに応じた位置に切り起こし片が複数形成され、これらの切り起こし片は、それぞれ互い違いに上下方向の切り起こし角度が異なっていて、2つの筐体部材が組み合わせられると、押さえ部材は、上側の切り起こし片を押さえ、下側の切り起こし片により電気的導通が確保されるようになっているのに対し、刊行物1の発明の、シールド板であるシールドケース200の側面部分には、接地パターン21に応じた位置に外方に切り起こされたフランジ213と外下方に向けて湾曲した弾性舌片214が複数形成され、これらのフランジ213と弾性舌片214は、それぞれ互い違いに上下方向の位置が異なっていて、2つの筐体部材である上ケース2Uと下ケース2Lが組み合わせられると、押さえ部材であるリブ2rは、上側のフランジ213を押さえ、下側の弾性舌片214により電気的導通が確保されるようにはなっているものの、下側の弾性舌片214は、外下方に向けて湾曲形成されたものであって、上側の外方に切り起こされたフランジ213に対して、互い違いに上下方向の切り起こし角度が異なるように形成された切り起こし片として形成されたものではない点。

4.相違点の検討
(1)相違点1)に関して
刊行物2には、筐体部材と、メカシヤーシで構成される2つの枠部材の間に回路基板とシールド板を挟み込んで固定するものにおいて、筐体部材に、回路基板、シールド板、およびメカシヤーシを固定する固定部材を挿入する挿入孔を形成し、該固定部材により、これら回路基板、シールド板、およびメカシヤーシを同時に固定する発明が記載されており、この発明を、メカシヤーシを他方の筐体部材として刊行物1の発明に適用することは、刊行物2の発明のメカシヤーシが筐体部材同様の枠部材であることから、当業者が何の困難性もなくなし得たことといえる。しかも、刊行物1の発明の基板20(回路基板)とシールドケース10(シールド板)は、上ケース2U(他方の筐体部材)に設けられたリブ2r(押さえ部材)により、確実に接触するように押圧されるのであるから、下ケース2L(一方の筐体部材)から固定部材を挿入して上ケース2U(他方の筐体部材)を固定すれば、それだけでも、基板20(回路基板)とシールドケース10(シールド板)を同時に固定できることは、当業者が容易に想到し得るところである。
してみれば、刊行物1の発明で、一方の筐体部材である下ケース2Lと、他方の筐体部材である上ケース2Uとの間に、回路基板である基板20とシールド板であるシールドケース10を挟み込んで固定するのに、一方の筐体部材である下ケース2Lに、回路基板である基板20、シールド板であるシールドケース10、および他方の筐体部材である上ケース2Uを固定する固定部材を挿入するための挿入孔を形成し、該固定部材によりこれら回路基板ある基板20、シールド板であるシールドケース10、および他方の筐体部材である上ケース2Uを同時に固定するようにすることは、刊行物1の発明に刊行物2の発明を適用することにより当業者が容易に行うことができたものである(基板20とシールドケース10は、組立時にもリブ2rにより確実に押圧されるから、組立時に電子機器を反転させて固定部材による固定を行うことは、刊行物1の発明でも可能である。また、固定部材挿入用の孔を下側の筐体部材のみに設けて、上側の筐体部材に固定部材が露出しないようにする如きは、当業者が必要に応じて適宜採用する設計事項である。)。
(2)相違点2)に関して
当審における平成17年10月25日付けで通知した拒絶の理由のなお書きでも指摘したように、電極パターンとの接触を確実にするための弾性舌片を、切り起こし片として形成することは、例えば特開平10-294585号公報にみられるように周知技術であるから、刊行物1の発明における弾性舌片214を、外下方に向けて湾曲形成する代わりに切り起こし片として形成することは、刊行物1の発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に行い得たものである。そして、刊行物1の発明における弾性舌片214は、リブ2rによるフランジ213の押圧時、接地パターン21と当接していなければならないのであるから、これをフランジ213に対して、互い違いに上下方向の切り起こし角度が異なるように形成することは当業者が当然に行う設計事項といえる。
してみれば、刊行物1の発明で、弾性舌片214を切り起こし片として形成し、これをフランジ213に対して、互い違いに上下方向の切り起こし角度が異なるように形成することは、刊行物1の発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に行い得たものである。

そして、本願発明が奏する作用効果は、上記刊行物1,2に記載された発明と上記周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
したがって、本願発明は、上記刊行物1,2に記載された発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上詳述したとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1,2に記載された発明と上記周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような進歩性を有しない発明を包含する本願は、本願の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-10 
結審通知日 2006-02-14 
審決日 2006-02-27 
出願番号 特願2000-135783(P2000-135783)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深澤 幹朗  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 見目 省二
ぬで島 慎二
発明の名称 電子機器  
代理人 中山 寛二  
代理人 木下 實三  
代理人 石崎 剛  

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