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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03C
管理番号 1135078
審判番号 不服2003-20581  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-23 
確定日 2006-04-13 
事件の表示 平成6年特許願第177188号「ハロゲン化銀カラー写真感光材料及びそれを用いて作成した写真カード」拒絶査定不服審判事件〔平成8年2月16日出願公開、特開平8-44010〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年7月28日の出願であって、その請求項1ないし11に係る発明は、平成15年11月25日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載されたとおりのものであり、請求項1に係る発明は次のとおりのものと認める。
「支持体上に、シアン色素形成カプラー含有感光性乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有感光性乳剤層、イエロー色素形成カプラー含有感光性乳剤層および非感光性層を少なくとも一層ずつ有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、支持体の厚みが150μm以下であり、全ての感光性乳剤層に対して支持体よりも遠い位置に少なくとも一層の非感光性層が塗設されており、かつ該非感光性層中に非球状微粒子粉末をその層の全組成物に対して25重量%以上含有し、かつ発色現像液の現像液が下記一般式[I]または[II]で表わされる界面活性剤を含有する現像液で現像処理されることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。


式中A2 は1価の有機基、BおよびCはエチレンオキシド、プロピレンオキシドもしくは-(CH2 )n1-(CH(OH))m1-(CH2 )l1-O-を表わす。ただしn1 、m1 およびl1 はそれぞれ0、1、2または3である。mおよびnはそれぞれ0から100の整数を表す。X1は水素原子、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。


式中R1 は水素原子、脂肪族基、アシル基を表わし、R2 は水素原子、脂肪族基を表わす。E1 はエチレンオキシド、E2 はプロピレンオキシド、E3 はエチレンオキシドを表わし、Xはカルボキシル基、-O-、-N(R3 )-を表わす。R3 は脂肪族基、水素原子または-(E1 )l2-(E2 )m2-(E3 )n2-R4を表わし、R4 は水素原子、脂肪族基を表わす。l1、l2、m1、m2、n1、n2、は各々0から100の整数を表わす。」(以下、「本願請求項1に係る発明」という。)

2.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、刊行物1、刊行物2及び刊行物3には下記の事項がそれぞれ記載されている。
(刊行物1:特開平6-75331号公報の記載事項)
(1a)「【請求項1】支持体上に、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層およびそれらのいずれの乳剤層に対しても支持体から遠い側に位置する少なくとも一層の非感光性親水性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該非感光性親水性層が、非球状微粒子粉末の分散物をその層の全組成物に対し25重量%以上含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。」
(1b)「【0003】・・・本発明の目的は現像処理後の調子再現性に優れ、観察光源位置依存性が少なく、さらに迅速処理性に富み、かつ絵柄の重厚感にも優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。」
(1c)「【0039】・・・支持体は、特開平3-156439号明細書の実施例に示された方法で作成したポリエチレン両面ラミネート紙支持体で・・・多層カラー印画紙・・・を作成した。」

(刊行物2:特開平5-188521号公報の記載事項)
(2a)「【請求項1】支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層が塗設されるハロゲン化銀写真感光材料において、該支持体の厚さが100μm以上200μm以下であり、該ハロゲン化銀写真感光材料の感光性ハロゲン化銀乳剤層が塗設される側に下記一般式〔I〕で表される化合物が少なくとも1種含有されその塗設量がハロゲン化銀写真感光材料の1m2あたり、10mg以上200mg以下であることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。(一般式[I]省略)」
(2b)「【0003】上記白色不透明支持体としては、・・・これらの支持体はいわゆる薄手および厚手の両者が知られている。【0004】特に薄手支持体を用いたハロゲン化銀写真感光材料の場合、それにより得たプリント写真を一般の市販されている郵便用はがきに貼り付けた後、ポストカードとして使用される事があり、特に近年においてはその需要が高まっている。」
(2c)「【0009】例えば、ポストカードとして利用する以上、その写真の表面にもユーザーが何らかの文字を記入したり・・・そのようなことに対する適性(以下筆記性ということもある)が必要となる。」
(2d)「【0100】また支持体の厚さが95μm〜230μmになる様にした以外は以上の方法と同様な方法で写真印画紙用支持体を製造した。
【0101】この時、支持体の厚さと、支持体の記号の関係は以下の通りである。
【0102】支持体記号 支持体の厚さ
A 230μm
B 160μm
C 140μm
D 95μm」

(刊行物3:特開平3-240054号公報)
(3a)「水溶性界面活性剤及び塩化物として4.0×10-2モル/l以上含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。」(特許請求の範囲請求項1)
(3b)「本発明に好ましく用いられる界面活性剤としては、下記一般式[I]〜[X]・・・


式中、A2 は1価の有機基、・・・B又はCはエチレンオキシド又はプロピレンオキシド又は-(CH2 )n1-(CH(OH))m1-(CH2 )l1-O-を表わす(但し、n1 、m1 及びl1 はそれぞれ0、1、2又は3である)。m及びnはそれぞれ0〜100の整数を表す。X1は水素原子又はアルキル基、アラルキル基、アリール基であり・・・


式中、R1 は水素原子、脂肪族基、アシル基を表わし、R2 は水素原子、脂肪族基を表わす。E1 はエチレンオキシド、E2 はプロピレンオキシド、E3 はエチレンオキシドを表わし、Xはカルボキシル基、-O-、-N(R3 )-基で、R3 は脂肪族基、水素原子又は・・・-(E1 )l2-(E2 )m2-(E3 )n2-R4を表わし、R4 は水素原子又は脂肪族基を表わす。l1、l2、m1、m2、n1、n2、は各々0〜100の整数を表わす。」(第5頁左上欄第14行目〜右下欄第7行目)
(3c)「表5より明らかな様にタンク中の塩化物濃度が4.0×10-2モル/l以上である場合、本発明の界面活性剤を用いたときのハイライト部の階調変動が小さくなっており、しかも析出物や汚れ、未露光部のステインも大巾に改良されていることがわかる。」(第41頁左上欄第1行目〜第8行目)
(3d)表5には、界面活性剤I-5、I-33、I-36、I-37を含有したものは、未露光部のステインが少ないことが示されている。(第40頁右下欄)

3.対比
上記摘記事項からみて、刊行物1には、「支持体上に、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層およびそれらのいずれの乳剤層に対しても支持体から遠い側に位置する少なくとも一層の非感光性親水性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、非感光性親水性層が、非球状微粒子粉末の分散物をその層の全組成物に対し25重量%以上含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料。」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているところ、本願発明1と刊行物1発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層」「マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層」「イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層」は、本願発明1の「シアン色素形成カプラー含有感光性乳剤層」「マゼンタ色素形成カプラー含有感光性乳剤層」「イエロー色素形成カプラー含有感光性乳剤層」にそれぞれ相当する。
(イ)刊行物1発明の「非球状微粒子粉末の分散物をその層の全組成物に対し25重量%以上含有する」も、本願発明1の「非球状微粒子粉末をその層の全組成物に対し25重量%以上含有する」も、非感光性層中に非球状微粒子粉末が非感光性層中に分散状態で存在しているものであり、実質的に相違はない。
したがって、本願発明1と刊行物1発明との間には、下記のような一致点及び相違点がある。

(一致点)
支持体上に、シアン色素形成カプラー含有感光性乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有感光性乳剤層、イエロー色素形成カプラー含有感光性乳剤層および非感光性層を少なくとも一層ずつ有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、全ての感光性乳剤層に対して支持体よりも遠い位置に少なくとも一層の非感光性層が塗設されており、かつ非感光性層中に非球状微粒子粉末をその層の全組成物に対して25重量%以上含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料である点。
(相違点1)本願発明1では、支持体の厚みが150μm以下であるのに対して、刊行物1には、支持体が、特開平3-156439号明細書の実施例に示された方法で作成したポリエチレン両面ラミネート紙支持体であることが記載されており、同公報の実施例によると、厚み約180μmの白色原紙の表面に30μmのポリエチレン樹脂層を、裏面に20μmのポリエチレン樹脂層をコーティングした支持体、つまり、厚みが230μmの支持体である点。
(相違点2)本願発明1は、発色現像液の現像液が上記一般式[I]または[II](一般式省略)で表わされる界面活性剤を含有する現像液で現像処理されるのに対して、刊行物1には、特定の界面活性剤を含有した発色現像液で処理することについて記載されていない点。

4.判断
(相違点1について)
刊行物2には、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体は、薄手および厚手の両者が知られており、特に薄手支持体を用いた場合、それにより得たプリント写真を一般の市販されている郵便用はがきに貼り付けた後、ポストカードとして使用され、特に近年にはその需要が高まっていることが記載されているように((2b)参照)、ハロゲン化銀写真感光材料を薄手の支持体で作成し、その用途として、はがきに貼り付け、ポストカード、つまり写真カードとすることは、本願出願前の公知技術であったといえる。そして、刊行物2では、薄手の支持体の厚さを、100μm以上200μm以下と規定し、具体的には、160μmと140μmの例が記載されている。
一方、本願発明1では、支持体の厚みを150μm以下と規定するものであるが、具体的な実施例では、140μmのもののみが記載されており、これは、刊行物2に記載された支持体の厚みの範囲に入るものである。
そうしてみると、刊行物1発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料を、写真カードとするために、支持体を薄手のもので構成し、その厚みを150μm以下とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。

(相違点2について)
刊行物3に、発色現像液に含有するものとして記載された、一般式[I]及び一般式[II]の界面活性剤は、本願発明1の一般式[I]及び一般式[II]の界面活性剤にそれぞれ該当している。そして、刊行物3には、上記界面活性剤と0.04モル/l以上の塩化物を併用することで、析出物や、未露光部のステインを少なくする等の効果が奏されることが記載されている。
一方、本願明細書に実施例2として記載された発色現像液をみると、処理液I、II、IIIはいずれも、塩化カリウムを1000ml中6.5g含有しており、これをモル濃度に換算すると、約0.09モル/lとなる。本願発明1は、塩化物濃度については規定していないものの、具体例は、特定の界面活性剤を含有するだけでなく、刊行物3に記載された塩化物濃度の範囲に入る量の塩化物も含有したものである。
そうしてみると、刊行物1発明において、画質の向上のために、刊行物3記載の発色現像液で現像するものとすることは当業者が容易になし得たものといえる。

(本願発明の効果について)
(ア)白地の高い白色度については、刊行物3に、未露光部のステインが大巾に改良されることが記載されていることから、予測し得たものである。
(イ)筆記性については、本願明細書の表11をみると、非球状微粒子粉体を所定量以上含有した試料は、筆記性の評価が良いことがわかる。そして、刊行物1発明では、本願発明と同様に、支持体から遠い側に位置する層に本願発明と同じ量の非球状微粒子粉体が含有されていること、さらに、ポストカードでは筆記性が求められることが刊行物2に記載されていることから、刊行物1記載の感光材料の支持体を写真カードに適するように薄手として、その筆記性を確認したにすぎない。
(ウ)集積性については、本願明細書の表9、表10、表11をみると、非球状微粒子粉体を所定量以上含有した試料は、支持体が厚いもの薄いものも集積性の評価が良いことがわかる。そして、刊行物1発明では、本願発明と同様に、支持体から遠い側に位置する層に非球状微粒子粉体が含有されていることから、刊行物1記載の感光材料の支持体を写真カードに適するように薄手として、その集積性を確認したにすぎない。
(エ)感触については、本願明細書には、処理済みの感光材料を官製葉書に貼り付けて、官能評価したものであるが、厚手の感光材料を貼り付ければ、官製葉書に比べ厚ぼったく感触が悪くなることは、心理上明らかといえ、薄手の支持体を用いたことにより、感触の官能評価が良くなることは予測し得たものといえる。

(請求人の主張について)
請求人は、審判請求の理由で比較実験を示し、本願発明の界面活性剤を用いた場合、白地Y濃度、集積性、筆記性等の評価が、140μmの支持体を用いたものの方が、160μmのものを用いたものより、良くなることを主張している。
しかしながら、本願明細書に記載された、本願発明の界面活性剤を用い、白地Y濃度、集積性、筆記性等の評価をした実施例2は、支持体の厚みが140μmのものについての実施例であり、本願発明の範囲を超えた厚みの支持体については記載されていない。
そして、請求人が比較実験で示した、白地Y濃度が本願発明の界面活性剤を使用した場合、支持体の厚みが薄い方が良い結果となることは、予想外の効果であり、仮にこの比較実験データが正しいものだとすると、この効果は出願当初の明細書には記載されていないものであるから、参酌することはできない。また、同じく比較実験で示された集積性及び筆記性についても、同様の理由で参酌することはできない。なお、絵柄の重厚感は、本願明細書に記載されていない効果であるが、一応検討すると、刊行物1の記載から予測し得たものといえる。

5.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物1、2及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2ないし11に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-08 
結審通知日 2006-02-14 
審決日 2006-02-28 
出願番号 特願平6-177188
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 磯貝 香苗  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 秋月 美紀子
阿久津 弘
発明の名称 ハロゲン化銀カラー写真感光材料及びそれを用いて作成した写真カード  
代理人 飯田 敏三  

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