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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1135211
審判番号 不服2004-19804  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-24 
確定日 2006-04-13 
事件の表示 特願2002-148185「空気調和装置および空気調和装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月28日出願公開、特開2003-336889〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成14年 5月22日の出願であって、平成16年 8月18日付けで拒絶査定がなされ(平成16年 8月24日発送)、これに対し、同年 9月24日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成16年 7月29日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次の事項により特定されるものである(以下、「本願発明」という。)。
「インバータ制御される圧縮機を備える空気調和装置の制御方法であって、前記インバータ制御における周波数変化のパターンに、50Hzを抜かして段階的に設定された第1パターン、および60Hzを抜かして段階的に設定された第2パターンの2つを用意しておき、前記空気調和装置に無通電の状態から電力供給を開始したときに、供給された電気の商用周波数を自動的に検知する商用周波数検出部によって、前記空気調和装置に供給される商用周波数が50Hzまたは60Hzのいずれであるかを検出し、該商用周波数が50Hzであれば前記周波数変化のパターンに前記第1パターンを選択し、前記商用周波数が60Hzであれば前記周波数変化のパターンに前記第2パターンを選択することを特徴とする空気調和装置の制御方法。」

3.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-231700号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「リモコン装置等により設定された設定温度と、室温センサ等で検出した室内温度とを比較し、その差およびまたは室温変化に応じて、室内機より周波数コードを室外機に送り、室外側制御部にて周波数コードをメモリに記憶された運転周波数対照表により運転周波数に変換し圧縮機をインバータ制御してなる空気調和機の制御装置において、上記運転周波数対照表を商用電源周波数の50Hz用と60Hz用に別々に設定し、空気調和機の運転開始時に商用電源の周波数を判別し、所定の運転周波数対照表を選択するようにしてなることを特徴とする空気調和機の制御装置。」(特許請求の範囲【請求項1】)
ロ.「【従来の技術】・・・(中略)・・・。室内機制御部から図4に一例を示すように、0からFまでの16ケの周波数コードに対応した4ビットシリアルの運転周波数指令が室外機制御部へ送られ、室外機制御部にて予じめ記憶された運転周波数対照表により圧縮機の運転周波数に変換し、インバータ制御回路により圧縮機をインバータ制御している。運転周波数対照表には、50Hz/60Hz共用として運転周波数が設定されており、圧縮機の運転周波数が商用電源周波数の近傍またはその逓倍周波数の近傍に設定されると、電源周波数に同期して誤動作する場合があり、商用電源周波数の近傍またはその逓倍周波数の近傍(50Hz電源の場合49〜51Hz、99〜101 Hz、60Hz電源の場合59〜61Hz、119 〜121 Hz)を避けた周波数を設定して対応している。このため、商用電源周波数の近傍またはその逓倍周波数の領域において運転周波数が不連続に変わることになり、圧縮機の運転性能を充分に発揮することができなかった。」(段落【0002】)
ハ.「【実施例】本発明の実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の構成を示すブロック図で、室内機本体またはリモコン装置により設定された設定温度が設定入力回路1により室内側制御部2に入力され、室温センサ3の検出した室内温度と比較し、設定温度との差および室温変化状態に応じて、室外機に所定の周波数コードを送出し、室外側制御部4にて周波数コードを予じめ記憶された運転周波数対照表により運転周波数に変換し波形生成して、インバータ制御回路5により圧縮機6をインバータ制御している。空気調和機の運転開始時に、商用電源7の周波数を電源周波数パルス生成回路8によりパルス化して室外側制御部4に割り込み入力して、50Hzまたは60Hz電源であるかを判別し、予じめ記憶された運転周波数対照表を選択し、所定の運転周波数対照表により運転周波数に変換するようにしている。図2は本発明の詳細を示すフローチャートで、運転開始と同時に電源周波数パルス生成回路8により電源周波数をパルス化して室外側制御部4に送り(21)、電源周波数が50Hzかまたは60Hzかを判別し(22)、50Hzの時は50Hz用運転周波数対照表を(23)、60Hzの時は60Hz用運転周波数対照表を選択し(24)、室内側制御部2から送られた周波数コードにより圧縮機6の運転周波数を設定するようにしている(25)。図3は本発明の運転周波数対照表の一例を示し、暖房運転時の50Hz時および60Hz時の周波数コードに対する運転周波数を例示し、50Hz時には60Hzおよびその逓倍周波数の近傍を、60Hz時には50Hzおよびその逓倍周波数の近傍をそれぞれ有効に利用することにより、周波数コードによる運転周波数の切換えを比較的均等にし、圧縮機6の運転性能を向上することができる。」(段落【0006】、【0007】)
ニ.「【発明の効果】以上のように本発明においては、商用電源の電源周波数に応じて周波数コードの運転周波数対照表を選択することにより、周波数コードによる運転周波数の切換えを比較的均等にすることができ、圧縮機の運転性能の向上を図ることができる。」(段落【0008】)

以上の記載によれば、引用例には、インバータ制御される圧縮機を備える空気調和機の制御方法であって、前記インバータ制御における運転周波数の変化について、商用電源周波数の近傍を避けた50Hz用及び60Hz用の所定の運転周波数対照表を用意しておき、前記空気調和機の運転開始時に、商用電源の周波数を、電源周波数パルス生成回路によりパルス化して室外側制御部に入力し、該周波数が、50Hzか60Hzかを判別し、50Hzであれば50Hz用の、60Hzであれば60Hz用の運転周波数対照表を選択することを特徴とする空気調和機の制御方法(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。

4.対比・判断
本願発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「商用電源周波数の近傍を避けた」は本願発明の「50Hzを抜かして」および「60Hzを抜かして」に相当し、以下同様に「所定の」は「設定された」に、「50Hz用運転周波数対照表」は「第1パターン」に、「60Hz用運転周波数対照表」は「第2パターン」に、「電源周波数パルス生成回路」は「商用周波数検出部」に、「空気調和機」は「空気調和装置」に、それぞれ相当する。
そして、引用例発明において、図3の記載からみて、運転周波数対照表の運転周波数は、段階的に設定されているものと考えられる。
また、引用例発明において、電源周波数パルス生成回路は、「運転開始と同時に・・・送り」(「3.ハ」参照。)との記載からみて、電源周波数を、自動的に運転制御部に送っているものと考えられる。
したがって、両者は、
インバータ制御される圧縮機を備える空気調和装置の制御方法であって、前記インバータ制御における周波数変化のパターンに、50Hzを抜かして段階的に設定された第1パターン、および60Hzを抜かして段階的に設定された第2パターンの2つを用意しておき、供給された電気の商用周波数を自動的に検知する商用周波数検出部によって、前記空気調和装置に供給される商用周波数が50Hzまたは60Hzのいずれであるかを検出し、該商用周波数が50Hzであれば前記周波数変化のパターンに前記第1パターンを選択し、前記商用周波数が60Hzであれば前記周波数変化のパターンに前記第2パターンを選択することを特徴とする空気調和装置の制御方法
の点で一致し、
次の点で相違している。
[相違点]
本願発明では、商用周波数を検出するときを、空気調和装置に無通電の状態から電力供給を開始したときとしているのに対し、引用例発明では、空気調和機の運転開始時としている点。
そこで、上記相違点について検討する。
空気調和機の運転を開始する時として、無通電の状態から電力供給を開始する時も含み得るものと考えられる。
一方、請求人の主張するように、「無通電の状態から電力供給を開始」するときが、当該装置と電源とが接続されたとき、すなわち、運転開始以前を意味し、運転開始前に、商用周波数を検出するという場合も考えられる(審判請求書第3頁第15〜19行)。
しかしながら、「無通電の状態から電力供給を開始」するときを、仮に、上記のようなものと解釈したとしても、引用例発明において、このように周波数を検出し、パターンを選択するという動作を運転開始前に行うこととすることは、制御の回数を減らすために、必要に応じて、当業者であれば、容易に想到し得たことである。
また、本願発明の奏する作用効果をみても、引用例発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-08 
結審通知日 2006-02-14 
審決日 2006-02-27 
出願番号 特願2002-148185(P2002-148185)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荘司 英史  
特許庁審判長 小椋 正幸
特許庁審判官 今井 義男
岡本 昌直
発明の名称 空気調和装置および空気調和装置の制御方法  
代理人 藤田 考晴  

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