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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1135260
審判番号 不服2003-7423  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-30 
確定日 2006-04-21 
事件の表示 平成11年特許願第167082号「インターネットの技術を用いたネットワーク上の情報収集システム、情報収集方法および情報収集方法を記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月26日出願公開、特開2000-357141〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年6月14日の出願であって、平成15年3月20日付で拒絶査定がなされ(発送日同年4月1日)、これに対し、同年4月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月30日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年5月30日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月30日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)平成15年5月30日付の手続補正書により補正された本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項5は、
「情報提供者のサーバと、前記情報提供者のサーバを閲覧するクライアントと、情報収集者のサーバとが接続されるインターネットの技術を用いたネットワーク上の情報収集方法であって、
前記情報提供者が提供する情報の中に、スクリプトで作成され、クライアントで実行される、所定の情報収集命令を挿入するステップと、
前記クライアントが、前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、前記クライアントの閲覧情報を前記情報収集サーバで収集するステップと、
前記収集したデータを前記情報収集者のサーバで蓄積するステップとを含み、
前記クライアントの閲覧情報をサーバで収集するステップは、前記クライアントが前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、情報を前記クライアントから収集する情報収集プログラムを、前記情報収集者のサーバで実行するよう、前記クライアントの閲覧プログラムが前記情報収集サーバのサーバプログラムに指示するステップを含む、インターネットの技術を用いたネットワーク上の情報収集方法。」と補正された。

上記補正は,請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である「クライアントの閲覧情報を前記情報収集サーバで収集するステップ」について「前記クライアントが前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、情報を前記クライアントから収集する情報収集プログラムを、前記情報収集者のサーバで実行するよう、前記クライアントの閲覧プログラムが前記情報収集サーバのサーバプログラムに指示するステップを含む」との限定を付加するものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項5に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-207838号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)(公報第3頁第3欄5〜45行)
「【従来の技術】
対話型ハイパーテキスト情報参照システムは、例えば、ネットワーク間のネットワークとしてのインターネットなどの広域分散環境下での商品販売,輸入代行等のサービスの提供、又は、閉じたネットワークとしてのイントラネットにおける共有資源の提供等に利用されている。
【0003】インターネット等を用いて各種サービス(以下「対象物」という)を提供する場合、各対象物の参照回数の累計を示す統計データは、その対象物の提供を継続するか否かを判断する上で重要である。このため、図10に示すように、各対象物毎(図においては対象物A,B,C毎)に提供開始時点から現時点までの参照回数の累計を計数するカウンタが設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、インターネット等においては、図10に示すように、ある対象物から他の対象物への参照を可能にすべく、各対象物間の関係を関連付けるリンク(A->B,A->C,B->C)が張られているのが一般的である。従って、特定の対象物の提供を継続するか否かを判断する他に、目的とする対象物がどの対象物から参照されたのか、或いは、どの対象物からの参照回数が多いかといった統計データに基づいて、対象物間に張られたリンクを継続するか否かを判断することが重要となってくる。
【0005】具体的な一例を挙げると、電子商店街において複数の商品情報を複数の宣伝媒体に掲載する場合、各商品毎にどの宣伝媒体が最も宣伝効果が高いかを知ることができれば、宣伝効果の高い宣伝媒体の利用度を上げるための対策を施したり、また、宣伝効果の低い宣伝媒体への掲載を中止するなどの意思決定に資することができる。
【0006】しかしながら、従来の対話型ハイパーテキスト情報参照システムにおいては、各対象物毎にしか利用回数を計数していなかったため、どの宣伝媒体の宣伝効果が最も高いかを判断することができず、販売戦略等を決定する上で必ずしも十分ではなかった。そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、対話型ハイパーテキスト情報参照システムにおいて、参照されたハイパーテキスト情報の参照回数を詳細に計数することで、販売戦略等を決定する上で有益な情報を提供することを目的とする。」(「->」という記載は、公報では、右向きの矢印文字で表記されている。)

(イ)(公報第5頁第7欄37行〜第9頁第9欄7行)
「図1は、本発明に係る情報参照回数計数装置を、WWWサーバ(World Wide Webサーバ)及びクライアント側のブラウザから構成されるインターネット上で実現した一実施例のシステム構成を示している。ここで、WWWサーバー及びクライアントは、少なくともCPUとメモリとを備え、メモリ上のプログラムを実行する計算機である。
【0025】WWWサーバ1で提供される対象物A〜Fは、Hyper Text Markup Languageで記述された文書(以下「HTML文書」という)であり、他の対象物への参照を可能にすべく各対象物間の関係を関連付けるリンク(A->C,A->D,B->D,C->E,D->E,D->F)が張られている。なお、対象物A〜Fを示すHTML文書は、例えば、WWWサーバ1を構成するハードディスク等の補助記憶装置2に記録されており、サーバソフト3を介して参照,更新等が行われる。
【0026】また、WWWサーバ1には、現在の日付及び時刻を計測する時刻計測手段4と、対象物が参照された時刻,参照者及び参照経路(例えば、A→C)を記録するアクセスログ記録手段5と、各リンク毎に対象物の参照回数の累計を計数する参照回数計数手段6と、が設けられている。アクセスログ記録手段5は、例えば、WWWサーバ1を構成する図示しないRAM等のメモリ、或いは、ハードディスク等の補助記憶装置上に構築することができる。
【0027】一方、クライアント7側のブラウザ8には、参照者名(クライアント名),現在表示している対象物を識別する名前及び次に参照する対象物(即ち、参照される対象物)を識別する名前等を表わす参照情報を、参照回数計数手段6に通知する参照情報通知手段9(参照経路通知手段)が付加されている。参照情報通知手段9は、例えば、Java(商標名)アプレット,ActiveXコントロール,HTML文書に組み込まれたフォーム等のプログラムによって構築することができる。
【0028】ここで、WWWサーバ1を構成する参照回数計数手段6は、図2に示すように、計数条件(詳細は後述する)を設定する計数条件設定部10と、設定された計数条件及び参照情報通知手段9から通知された参照情報に基づき計数対象を判断する計数対象判断部11と、通知された参照情報に基づき関連(リンク)を判断する関連判断部12と、計数対象及び関連に基づき対象物の参照回数の累計を更新するデータ更新部13と、各関連毎に創設時からの参照回数の累計14a及び計数時間毎の最新の参照回数を所定数記録する配列14bからなる参照回数記憶部14と、を含んで構成されている。
【0029】計数条件として計数条件設定部10には、WWWサーバ1全体に対して、所定の計数時間を指定する計数時間L及び各計数時間毎に計数した参照回数をいくつ記録するかを指定する要素数N等が設定される。従って、参照回数記録部14の配列14bは、N個の要素を有する配列となる。また、計数対象判断部11は、参照情報及び計数条件に基づいて参照回数記憶部14の配列14bの何番目の要素をインクリメントするかを判断し、関連判断部12は、参照情報に基づいて計数対象となる関連を判断する。なお、計数時間L及び要素数Nは、WWWサーバ1全体の共通データとしてだけではなく、例えば、各対象物毎に設定しても良いし、また、各リンク毎に設定しても良い。
【0030】そして、サーバソフト3とブラウザ8とは、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)と呼ばれる通信プロトコルを介して接続されており、サーバソフト3は、ブラウザ8から送られてくるUniform Resource Locator(インターネット上の情報源にアクセスするときに使用するプロトコルと情報の所在場所を指定する記述方法。以下「URL」という)に応答して、ブラウザ8にHTML文書を転送する。また、ブラウザ8に付加された参照情報通知手段9は、対象物の参照が行われると、参照情報を参照回数計数手段6に通知し、この参照情報を受け取った参照回数計数手段6が、各関連毎に参照回数のインクリメント等を行う。」(「->」という記載は、公報では、右向きの矢印文字で表記されている。)

(ウ)(公報第6頁第9欄27〜第10欄16行)
「図4の処理流れ図を参照しつつ、HTML文書の参照回数の計数処理の概要を説明する。この流れ図では、ブラウザ8において対象物foo1.html から対象物foo2.html を参照したときの処理が示されている。
【0034】クライアント7側のブラウザ(hoge)8からWWWサーバ1側のサーバソフト3に対して、参照しようとするHTML文書を指定するURL(http://www.hoge.com/foo1.html )が送付される(処理1)。サーバソフト3は送付されたURLに対して、HTML文書を蓄積しているデータベース等の補助記憶装置2から参照しようとするHTML文書を検索し、この検索結果(foo1.hmlt )10及びブラウザ8の参照情報を参照回数計数手段6に自動的に送付するJavaアプレット等の参照情報通知手段(sendinfo.class)9をブラウザ8に返送する(処理2)。検索結果10及び参照情報通知手段9を返送されたブラウザ8は、検索結果たるHTML文書10を表示すると共に、表示されたHTML文書10に参照情報通知手段9を付加する。なお、参照情報通知手段9は、Javaアプレットに限らず、例えば、返送されたHTML文書10に組み込まれたフォーム,ActiveXコントロール,ブラウザ8に前もって組み込まれたアプリケーションプログラム等であっても良い。
【0035】ブラウザ8において表示されているHTML文書(foo1.hmlt )から関連するHTML文書(foo2.html )の参照が行われると、参照情報通知手段9は、参照者名(hoge),参照元(foo1.html )及び参照先(foo2.html )を少なくとも含む参照情報を、WWWサーバ1側の参照回数計数手段6に送付する(処理3)。参照情報を受け取った参照回数計数手段6は、HTML文書の参照回数の計数処理を行った後、参照情報通知手段9に計数終了通知を返送する(処理4)。
【0036】そして、ブラウザ8からサーバソフト3に対して、新たに参照しようとするHTML文書(foo2.html )を指定するURL(http://www.hoge.com/fool2.html)が送付され(処理5)、サーバソフト3からブラウザ8に対して、検索結果(fool2.thml)及び参照情報送付手段(sendinfo.class)が返送される(処理6)。その後は、前述した処理が繰り返される。」(ここで、処理1乃至処理6の1〜6の数字は、公報では丸の中に数字が記載されている。)

以上の引用例1の記載によれば、引用例1には以下の事項を含む発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

(a) 引用例1の上記(ア)及び(イ)の記載及び図1から、HTML文書を提供し、HTML文書の参照情報をアクセスログとして記録しているWWWサーバと、当該WWWサーバの提供するHTML文書を参照するクライアントとが接続されるインターネット上で実現したシステム上で、参照情報をアクセスログとして記録する方法が開示されていると認められる。

(b)引用例1の上記(イ)の「【0025】WWWサーバ1で提供される対象物A〜Fは、Hyper Text Markup Languageで記述された文書(以下「HTML文書」という)であり、他の対象物への参照を可能にすべく各対象物間の関係を関連付けるリンク(A->C,A->D,B->D,C->E,D->E,D->F)が張られている。なお、対象物A〜Fを示すHTML文書は、例えば、WWWサーバ1を構成するハードディスク等の補助記憶装置2に記録されており、サーバソフト3を介して参照,更新等が行われる。」という記載、及び、「【0027】一方、クライアント7側のブラウザ8には、参照者名(クライアント名),現在表示している対象物を識別する名前及び次に参照する対象物(即ち、参照される対象物)を識別する名前等を表わす参照情報を、参照回数計数手段6に通知する参照情報通知手段9(参照経路通知手段)が付加されている。参照情報通知手段9は、例えば、Java(商標名)アプレット,ActiveXコントロール,HTML文書に組み込まれたフォーム等のプログラムによって構築することができる。」という記載から、引用例1発明は、WWWサーバが提供するHTML文書の中に、フォーム等のプログラムによって作成され、クライアントで実行される、参照情報通知手段を組み入れているものと認められる。

(c)引用例1の上記(イ)の「HTML文書は、例えば、WWWサーバ1を構成するハードディスク等の補助記憶装置2に記録されており、サーバソフト3を介して参照,更新等が行われる。
【0026】また、WWWサーバ1には、現在の日付及び時刻を計測する時刻計測手段4と、対象物が参照された時刻,参照者及び参照経路(例えば、A->)を記録するアクセスログ記録手段5と、各リンク毎に対象物の参照回数の累計を計数する参照回数計数手段6と、が設けられている。アクセスログ記録手段5は、例えば、WWWサーバ1を構成する図示しないRAM等のメモリ、或いは、ハードディスク等の補助記憶装置上に構築することができる。」という記載、及び、上記(ウ)の「【0035】ブラウザ8において表示されているHTML文書(foo1.hmlt )から関連するHTML文書(foo2.html )の参照が行われると、参照情報通知手段9は、参照者名(hoge),参照元(foo1.html )及び参照先(foo2.html )を少なくとも含む参照情報を、WWWサーバ1側の参照回数計数手段6に送付する(処理3)。」という記載から、引用例1発明は、クライアント側のブラウザにおいて、WWWサーバのサーバソフトを介してHTML文書の参照を行うと、参照情報通知手段は、クライアント側の参照情報をWWWサーバで記録させるために送付しているものと認められる。

(d)引用例1の上記(イ)の「【0026】また、WWWサーバ1には、現在の日付及び時刻を計測する時刻計測手段4と、対象物が参照された時刻,参照者及び参照経路(例えば、A->)を記録するアクセスログ記録手段5と、各リンク毎に対象物の参照回数の累計を計数する参照回数計数手段6と、が設けられている。アクセスログ記録手段5は、例えば、WWWサーバ1を構成する図示しないRAM等のメモリ、或いは、ハードディスク等の補助記憶装置上に構築することができる。
【0027】一方、クライアント7側のブラウザ8には、参照者名(クライアント名),現在表示している対象物を識別する名前及び次に参照する対象物(即ち、参照される対象物)を識別する名前等を表わす参照情報を、参照回数計数手段6に通知する参照情報通知手段9(参照経路通知手段)が付加されている。」という記載から、引用例1発明は、参照情報通知手段が送付した参照情報をWWWサーバのアクセスログ記録手段に記録しているものと認められる。

したがって、引用例1発明は、HTML文書を提供し、HTML文書の参照情報をアクセスログとして記録しているWWWサーバと、当該WWWサーバの提供するHTML文書を参照するクライアントとが接続されるインターネット上で実現したシステム上で、参照情報をアクセスログとして記録する方法であって、
WWWサーバが提供するHTML文書の中に、フォーム等のプログラムによって作成され、クライアントで実行される、参照情報通知手段を組み入れ、
クライアント側のブラウザにおいて、WWWサーバのサーバソフトを介してHTML文書の参照を行うと、参照情報通知手段は、クライアント側の参照情報をWWWサーバで記録させるために送付し、
参照情報通知手段が送付した参照情報をWWWサーバのアクセスログ記録手段に記録する、
インターネット上で実現したシステム上の参照情報をアクセスログとして記録する方法であると認められる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを対比する。

(A)本願補正発明でいう「情報提供者のサーバ」は、本願明細書記載の実施例の「情報提供者6は、インターネット5に接続されており、情報収集者8から提供される情報収集指示スクリプトが挿入された情報提供者の提供するホームページや電子メールなどのインターネット上のドキュメント11と、必要に応じて後に説明する情報閲覧者の付加情報ストアする情報閲覧者の付加情報ストア12とを保持するサーバ10を含む。そのため、インターネット5上でホームページや電子メールなどのインターネット上のドキュメントを、情報閲覧者の要求に応じて情報を提供するか、または情報提供者の要求において情報を配信することが可能となっている。」(明細書の段落0030)等の記載から、基本的に、インターネット上でホームページや電子メールなどのインターネット上のドキュメントを、情報閲覧者の要求に応じて情報を提供するか、または情報提供者の要求において情報を配信することが可能なサーバであることは明らかであるから、引用例1発明の「HTML文書を提供し」「ているWWWサーバ」は、本願補正発明の「情報提供者のサーバ」に対応するといえる。また、引用例1発明の「WWWサーバの提供するHTML文書を参照するクライアント」は、本願補正発明の「情報提供者のサーバを閲覧するクライアント」に相当している。さらに、本願補正発明の「情報収集者のサーバ」及び「情報収集方法」は、本願明細書記載の実施例の「情報収集者8のサーバ30は、情報閲覧者7が閲覧した情報提供者6のホームページのURL、そのホームページを閲覧する前に見ていたホームページのURL、閲覧のために利用した閲覧プログラムの種別とクライアントの種別、過去の閲覧の有無と回数および時間と情報閲覧者7がアクセスに使ったIPアドレスの閲覧情報を獲得して保存する情報閲覧者の基本情報ストア36を有するコンピュータである。」(明細書の段落0032)等の記載から、それぞれ、基本的に、情報閲覧者の閲覧情報を収集(獲得して保持)することが可能なサーバ、及び、情報閲覧者の閲覧情報を収集(獲得して保持)する方法であることは明らかであるから、引用例1発明の「HTML文書の参照情報をアクセスログとして記録しているWWWサーバ」及び「参照情報をアクセスログとして記録する方法」は、本願補正発明の「情報収集者のサーバ」及び「情報収集方法」に、それぞれ、対応しているといえる。
したがって、引用例1発明も、本願補正発明と同様に、情報提供者のサーバと、前記情報提供者のサーバを閲覧するクライアントと、情報収集者のサーバとが接続されるインターネットの技術を用いたネットワーク上の情報収集方法であるといえる。しかし、本願補正発明では、「情報提供者のサーバ」と「情報収集者のサーバ」とが別個のサーバであるのに対し、引用例1発明では、同一のWWWサーバが両者の機能を兼ね備えている点で相違している。

(B)引用例1発明の「WWWサーバが提供するHTML文書」は、本願補正発明の「情報提供者が提供する情報」に相当している。また、本願補正発明でいう「スクリプト」はプログラムの一種であるから、引用例1発明でいう「フォーム等のプログラム」は、本願補正発明でいう「スクリプト」に対応するといえる。また、引用例1発明の「参照情報」は、本願補正発明の「所定の情報」(閲覧情報)に相当している。さらに、上述(A)と同様に本願明細書の実施例の記載から、本願補正発明の「所定の情報収集命令」は、閲覧情報を獲得して保持する命令であることは明らかであり、閲覧情報を保持させるために処理する命令であるといえる。引用例1発明の「参照情報通知手段」は、参照情報(閲覧情報)をWWWサーバで記録させるために通知するプログラム命令であるから、本願補正発明と同様に、閲覧情報を保持させるために処理する命令であるといえ、「参照情報通知手段を組み入れ」は「所定の情報収集命令を挿入するステップ」に対応しているといえる。
したがって、引用例1発明と、本願補正発明とは、情報提供者が提供する情報の中に、プログラムで作成され、クライアントで実行される、閲覧情報を保持させるために処理する命令を挿入するステップを備えている点で共通する。
しかし、本願補正発明の「命令」は、スクリプトで作成されているのに対し、引用例1発明の「命令」は、フォーム等のプログラムで作成されている点で相違し、さらに、「命令」が指示する処理の内容も、本願補正発明では、閲覧情報の収集(獲得して保持する)処理であると認められるところ、引用例1発明では、閲覧情報の通知処理である点で相違している。

(C)引用例1発明の「クライアント側のブラウザにおいて、WWWサーバのサーバソフトを介してHTML文書の参照を行うと、」は、本願補正発明の「前記クライアントが、前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、」に相当し、上述(B)と同様に本願明細書の実施例の記載から、引用例1発明の(提供するHTML文書の中に組み入れられた)「参照情報通知手段」は、本願補正発明の(提供された情報の中に)「挿入された命令」に対応している。さらに、引用例1発明の「クライアント側の参照情報」は、本願補正発明の「クライアントの閲覧情報」に相当している。また、上述(B)と同様に本願明細書の実施例の記載から、本願補正発明の「クライアントの閲覧情報を前記情報収集サーバで収集するステップ」はクライアントの閲覧情報を前記情報収集サーバで獲得して保持するステップであることは明らかであり、閲覧情報を情報収集サーバで保持させるために処理するステップであるといえ、引用例1発明の「クライアント側の参照情報をWWWサーバに送付し」も、本願補正発明と同様に、閲覧情報を情報収集サーバで保持させるために処理するステップであるといえるから、引用例1発明の「クライアント側の参照情報をWWWサーバに送付し」は、本願補正発明の「クライアントの閲覧情報を前記情報収集サーバで収集するステップ」に対応する。
したがって、引用例1発明と、本願補正発明とは、前記クライアントが、前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、前記クライアントの閲覧情報を前記情報収集サーバで保持させるために処理するステップを備えている点で共通する。
しかし、本願補正発明の「挿入された命令」が指示し「情報収集サーバで保持させるために処理するステップ」で行う処理の内容が、本願補正発明では、閲覧情報を獲得して保持する処理であると認められるところ、引用例1発明では、閲覧情報の通知処理である点で相違している。

(D)本願補正発明の「前記収集したデータ」は、「クライアントの閲覧情報」を指しているから、引用例1発明の「参照情報」、「WWWサーバのアクセスログ記録手段に記録する」は、本願補正発明の「前記収集したデータ」、「前記情報収集者のサーバで蓄積するステップ」に、それぞれ相当する。
したがって、引用例1発明も、本願補正発明と同様に、閲覧情報を前記情報収集者のサーバで蓄積するステップを備えていると言える。

(E)本願補正発明の「クライアントの閲覧情報をサーバで収集するステップ」(クライアントの閲覧情報をサーバで保持させるために処理するステップ)は、「前記クライアントが前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、情報を前記クライアントから収集する情報収集プログラムを、前記情報収集者のサーバで実行するよう、前記クライアントの閲覧プログラムが前記情報収集サーバのサーバプログラムに指示するステップを含む」のに対し、引用例1発明での「クライアントの閲覧情報をサーバで保持させるために処理するステップ」は、前記クライアントが前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、閲覧情報をサーバで記録させるために送付している点で相違する。

したがって、両者は、「情報提供者のサーバと、前記情報提供者のサーバを閲覧するクライアントと、情報収集者のサーバとが接続されるインターネットの技術を用いたネットワーク上の情報収集方法であって、
情報提供者が提供する情報の中に、プログラムで作成され、クライアントで実行される、閲覧情報を保持させるための処理を指示する命令を挿入するステップと、
前記クライアントが、前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、前記クライアントの閲覧情報を前記情報収集サーバに保持させるために処理させるステップと、
前記閲覧情報を前記情報収集者のサーバで蓄積するステップとを含む、インターネットの技術を用いたネットワーク上の情報収集方法。」の点で一致し、以下の点で一応相違している。

[相違点1]本願補正発明では、「情報提供者のサーバ」と「情報収集者のサーバ」とが別個のサーバであるのに対し、引用例1発明では、同一のWWWサーバが両者の機能を兼ね備えている点。

[相違点2]上記「閲覧情報を保持させるための処理を指示する命令」が、本願補正発明では、スクリプトで作成されているのに対し、引用例1発明では、フォーム等のプログラムで作成されている点。

[相違点3]上記「閲覧情報を保持させるための処理を指示する命令」が、本願補正発明では、所定の情報(閲覧情報の)収集(獲得して保持する処理を指示する)命令であるのに対し、引用例1発明では、閲覧情報の通知処理を指示する命令である点。

[相違点4]上記「クライアントの閲覧情報をサーバで保持させるために処理するステップ」が、本願補正発明では、「前記クライアントが前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、情報を前記クライアントから収集する情報収集プログラムを、前記情報収集者のサーバで実行するよう、前記クライアントの閲覧プログラムが前記情報収集サーバのサーバプログラムに指示するステップを含む」のに対し、引用例1発明では、前記クライアントが前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、閲覧情報をサーバに送付している点。

(4)判断
[相違点1]について
インターネットシステムにおける閲覧情報の収集記録技術の分野において、閲覧情報の収集記録を、閲覧対象となるHTML文書を提供するサーバとは別個のWWWサーバで行う技術は、本願出願前に周知の技術に過ぎない(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-282275号公報及び国際公開第98/43380号パンフレット等を参照されたい。)から、引用例1発明において当該構成を採用することは、当業者が設計上適宜なし得た程度の事項に過ぎない。

[相違点2]について
インターネットシステムにおけるHTML文書等の閲覧情報提供技術の分野において、HTML文書に組み込まれるフォームの値や、フォーム自体を、JAVAスクリプトのようなスクリプトをHTML文書に挿入することで作成する技術は、本願出願前に周知の技術に過ぎない(例えば、特開平10-254803号公報や、坂内 唯一、Webを楽しくさせる!ホームページマジシャン養成講座3、誰でも簡単、JAVAスクリプトを使ってみよう、INTERNET Surfer、エーアイ出版株式会社、1996.08.01、Vol.1,No.3,pp.86-89.等を参照されたい。)から、引用例1発明において、フォームのプログラムを挿入する構成に代えて、HTML文書にJAVAスクリプトを挿入し、フォームの値やフォーム自体をHTML文書に挿入されたJAVAスクリプトで生成すると構成することは、当業者が設計上適宜なし得た程度の事項に過ぎない。

[相違点3]について
本願補正発明の所定の情報(閲覧情報の)収集命令について、本願明細書の実施例の「情報収集者8から提供される情報収集指示スクリプトが、予め情報提供者6のサーバ10に記憶されるホームページや電子メールなどのインターネット5上のドキュメントに挿入される。この情報収集指示スクリプトには、情報収集者のサーバ30に格納される情報収集プログラム32を起動するステップと、情報提供者6ごとの固有の識別子および閲覧情報の一部を含むパラメータと、このパラメータを情報収集者8のサーバ30に格納される情報収集プログラム32に引き渡すステップと、情報収集者8で動作する情報収集プログラム32の実行結果を画像として表示するステップが記憶されている。」(段落0038)との記載や図2のS23等の記載によれば、情報収集指示スクリプトは、情報収集者のサーバ30に格納される情報収集プログラム32を起動するステップと閲覧情報の一部を含むパラメータを情報収集者8のサーバ30に格納される情報収集プログラム32に引き渡すステップを備えていることが明らかである。そうすると、本願補正発明でいう「収集命令」とは、サーバの情報収集プログラムを起動して、閲覧情報の一部を含むパラメータを情報収集プログラムに引き渡す処理を指示する命令をいうものと認められる。
ここで、インターネットシステムにおけるHTML文書等の閲覧情報提供技術の分野において、HTML文書に組み込まれるフォームのデータをサーバ側に送信する際に、サーバ側でフォームのデータを受け取り処理するCGIプログラムを起動する指示命令をフォーム内に含む構成(具体的には、FORMタグ内のACTION属性で、ACTION=/cgi-bin/processorscriptというように、フォームを処理するためのCGIスクリプトを起動する。)は、周知の技術に過ぎない(例えば、リメイ ローラ著、続・HTML入門 新機能、CGI,Webの進化、株式会社プレンティスホール出版、1995.12.15、第1版、pp.171-173.を参照されたい。)。
よって、引用例1発明においてフォームのデータをサーバ側に送信する際に、サーバ側でフォームのデータを受け取り処理するCGIスクリプトを起動させ、閲覧情報を受け取らせる指示命令をフォーム内に含む構成を採用することは、当業者が設計上適宜なし得た程度の事項に過ぎない。
したがって、本願補正発明が相違点4において格別のものであるとすることはできない。

[相違点4]について
上記相違点3についてで検討したように、インターネットシステムにおけるHTML文書等の閲覧情報提供技術の分野において、HTML文書に組み込まれるフォームのデータをサーバ側に送信する際に、サーバ側でフォームのデータを受け取り処理するCGIスクリプトを起動する指示命令をフォーム内に含む構成は、周知の技術に過ぎないから、引用例1発明の「クライアントの閲覧情報をサーバでを保持させるために処理するステップ」において当該周知の技術を採用して、情報を前記クライアントから受け取り記録する情報処理プログラムを、前記情報収集者のサーバで実行するよう、前記クライアントの閲覧プログラムが前記情報収集サーバのサーバプログラムに指示するステップを含む構成とすることは、当業者が設計上適宜なし得た程度の事項に過ぎない。

また、本願補正発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って、当然に予測される程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年5月30日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年11月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「情報提供者のサーバと、前記情報提供者のサーバを閲覧するクライアントと、情報収集者のサーバとが接続されるインターネットの技術を用いたネットワーク上の情報収集方法であって、
前記情報提供者が提供する情報の中に、スクリプトで作成され、クライアントで実行される、所定の情報収集命令を挿入するステップと、
前記クライアントが、前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、前記クライアントの閲覧情報を前記情報収集サーバで収集するステップと、
前記収集したデータを前記情報収集者のサーバで蓄積するステップとを含む、
インターネットの技術を用いたネットワーク上の情報収集方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「クライアントの閲覧情報を前記情報収集サーバで収集するステップ」の限定事項である「前記クライアントが前記情報提供者のサーバにアクセスして情報を閲覧したとき、前記挿入された命令に従って、情報を前記クライアントから収集する情報収集プログラムを、前記情報収集者のサーバで実行するよう、前記クライアントの閲覧プログラムが前記情報収集サーバのサーバプログラムに指示するステップを含む」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項を省いた本願発明も同様の理由により、引用例1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-15 
結審通知日 2006-02-21 
審決日 2006-03-06 
出願番号 特願平11-167082
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺谷 大亮須藤 竜也竹井 文雄  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 植松 伸二
野崎 大進
発明の名称 インターネットの技術を用いたネットワーク上の情報収集システム、情報収集方法および情報収集方法を記録した記録媒体  
代理人 野田 久登  
代理人 森田 俊雄  
代理人 酒井 將行  
代理人 堀井 豊  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  

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