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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03B |
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管理番号 | 1135263 |
審判番号 | 不服2003-9273 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-05-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-05-22 |
確定日 | 2006-04-21 |
事件の表示 | 平成11年特許願第305404号「電圧制御発振器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月11日出願公開、特開2001-127554〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成11年10月27日の出願であって、「電圧制御発振器」に関するものであり、平成14年12月25日付で拒絶理由が通知され、平成15年3月10日に手続補正書が提出され、平成15年4月16日付で拒絶査定がなされたところ、これに対して平成15年5月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年6月23日に手続補正書が提出されたものである。 2.補正却下の決定 平成15年6月23日に提出された手続補正書による補正の却下の決定 (1)[補正却下の決定の結論] 平成15年6月23日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 (2)[補正却下の決定の理由] (a)補正の内容 本件補正によると、その特許請求の範囲の請求項1は、 「マイクロ波帯域の周波数の信号を出力する電圧制御発振手段(VCO)及び固定周波数発振手段(OSC)と、前記VCOの出力信号と前記OSCの出力信号とを入力し混合して入力信号の和周波数波、及び差周波数波を出力する周波数混合手段(ミキサー)と、前記ミキサーの出力信号を入力し和周波数波、及び差周波数波のうち必要な1波を選択し出力する周波数選択手段とを有し、前記OSCの出力信号の周波数は前記VCOの出力信号の周波数に比べて少なくとも数倍以上であること、及び前記VCOの出力信号の位相雑音が、前記OSCの出力信号の位相雑音より低くなるように、前記VCOの出力信号の周波数の範囲を設定していることを特徴とする電圧制御発振器。」と補正されている。 上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「マイクロ波帯域の周波数の信号を出力する電圧制御発振手段(VCO)」について、「前記VCOの出力信号の位相雑音が、前記OSCの出力信号の位相雑音より低くなるように、前記VCOの出力信号の周波数の範囲を設定している」との限定を付加するものであり、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)否かについて検討する。 (b)引用例 (b)-1 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-150422号公報(以下、「引用例1」という。)には、図とともに、以下のような記載がある。 (イ)「【発明の属する技術分野】この発明は、例えばテレビ受像機やオーディオシステム等の出力オーディオ信号の送受信を行う際に適用して好適な信号発生回路、並びにそれを使用した送信機、受信機および送受信機に関する。詳しくは、振動子を使用した発振回路の出力信号を逓倍して得た第1の周波数の信号と第2の周波数の信号とを混合して第3の周波数の信号を得ることによって、周波数を可変でき、かつ周波数安定度の良好な信号を得ようとした信号発生回路等に係るものである。」(段落【0001】第2頁第2欄第36行〜第44行) (ロ)「【課題を解決するための手段】この発明に係る信号発生回路は、第1の周波数の信号を出力する第1の信号出力手段と、第2の周波数の信号を出力する第2の信号出力手段と、第1の周波数の信号と第2の周波数の信号とを混合して第3の周波数の信号を得る周波数変換手段とを備える信号発生回路であって、第1の信号出力手段は、振動子を使用した発振回路と、この発振回路の出力信号を逓倍して第1の周波数の信号を得る逓倍回路とを有してなるものである。 【0016】第1の周波数の信号は、水晶、セラミック、SAW(surface acoustic wave)等の振動子を使用した発振回路の出力信号を逓倍回路で逓倍することで得られる。この第1の周波数の信号と第2の周波数の信号とが混合されて第3の周波数の信号が得られる。 【0017】ここで、第1の周波数の信号は振動子を使用した発振回路の出力信号を逓倍して得られたものであり、その周波数は安定している。そのため、第2の周波数が第1の周波数より低い周波数であるときは、第2の周波数の信号の周波数安定度が低くても、第3の周波数の信号としては周波数安定度の高いものを得ることが可能となる。また、第2の信号出力手段を周波数可変型の発振回路で構成することで、第3の周波数を変化させることが可能となる。周波数可変型の発振回路としては、CR発振回路、LC発振回路、PLL回路等がある。」(段落【0015】〜【0017】第4頁第5欄第3行〜第26行) (ハ)「【0043】以上説明したように、本実施の形態によれば、FM変調回路12は水晶振動子17を使用した発振回路16で構成される搬送波信号発生部を持つものである。そのため、送信時には、発振回路16より出力される1200MHz帯のFM変調信号、従って逓倍回路13より出力される2400MHz帯のFM変調信号の周波数は安定している。そして、PLL回路14より出力される周波数信号は10〜20MHzの間で変化するものであって、逓倍回路13より出力される2400MHz帯のFM変調信号に比べてかなり低い周波数であることから、この周波数信号の周波数安定度が低くても、バンドパスフィルタ23で取り出され、受信側に送信される2400MHz帯のFM変調信号の周波数安定度は高いものとなる利益がある。しかも、制御信号CLに基づいて、PLL回路14より出力される周波数信号の周波数を変化させることで、送信信号としての2400MHz帯のFM変調信号の搬送波周波数を調整することができる。 【0044】また、受信時には、発振回路16より出力される1200MHz帯の搬送波信号、従って逓倍回路13より出力される2400MHz帯の周波数信号の周波数は安定している。そして、PLL回路14より出力される周波数信号は(10+10.7)〜(20+10.7)MHzの間で変化するものであって、逓倍回路13より出力される2400MHz帯の周波数信号に比べてかなり低い周波数であることから、この周波数信号の周波数安定度が低くても、バンドパスフィルタ23で取り出される2400MHzの周波数信号の周波数安定度は高いものとなる。そのため、受信された高周波信号をその周波数信号を使用して中間周波信号に良好に変換することができる。しかも、制御信号CLに基づいて、PLL回路14より出力される周波数信号の周波数を変化させることで、バンドパスフィルタ23より出力される周波数変換用の周波数信号の周波数を、受信された高周波信号の搬送波周波数に対応させて変化させることができ、受信された高周波信号を中間周波信号に容易に変換できるようになる。 【0045】なお、上述実施の形態においては、オーディオ信号をFM変調して伝送するものを示したが、変調形式はこれに限定されず、例えばオーディオ信号をAM変調して伝送するものにもこの発明を適用できる。また、上述実施の形態における周波数値は一例であって、これに限定されるものないことは勿論である。また、上述実施の形態においては、周波数可変型の発振回路としてPLL回路14を使用したものであるが、単純なCR発振回路やLC発振回路等を使用してもよい。 【0046】 【発明の効果】この発明に係る信号発生回路によれば、振動子を使用した発振回路の出力信号を逓倍して得た第1の周波数の信号と第2の周波数の信号とを混合して第3の周波数の信号を得るものである。第1の周波数の信号は周波数安定度がよいことから、第2の周波数が第1の周波数より低いときは、第2の周波数の信号の周波数安定度が低くても、第3の周波数の信号として周波数安定度の高いものを得ることができる。また、第2の周波数の信号を周波数可変型の発振回路で得ることで、第3の周波数を容易に変化させることができる。」(段落【0043】〜【0046】第6頁第10欄第24行〜第7頁第11欄第30行) 以上の記載によれば、この引用例1には以下のような発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が開示されていると認められる。 「振動子を使用した発振回路と、この発振回路の出力信号を逓倍して第1の周波数の信号を得る逓倍回路とを有してなる第1の信号出力手段、及び、周波数可変型の発振回路で構成され第2の周波数の信号を出力する第2の信号出力手段と、前記第1の周波数の信号と前記第2の周波数の信号とを混合して第3の周波数の信号を得る周波数変換手段と、前記周波数変換手段の第3の周波数の信号から必要な周波数の信号を選択し出力するバンドパスフィルタとを有し、前記第1の信号出力手段の出力する第1の周波数の信号は、周波数安定度の高い信号であり、前記第2の信号出力手段から出力される第2の周波数の信号が周波数安定度の低い信号であっても、前記第2の信号出力手段より出力される第2の周波数の信号は、前記第1の信号出力手段より出力される第1の周波数の信号(例えば、2400MHz帯)に比べてかなり低い周波数(例えば、10〜20MHzの間で変化するもの)であることから、第3の周波数の信号として周波数安定度は高いものを得ることができ、第2の周波数の信号を周波数可変型の発振回路で得ることで、第3の周波数を容易に変化させることができる周波数可変可能な信号発生回路。」 (b)-2 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-139525号公報(以下、「引用例2」という。)には、図1とともに、以下のような記載がある。 「【実施例】以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。図1はこの発明の一実施例を示す電圧制御型SAW発振器のブロック図である。同図において、1はSAWレゾネータ2および3を同一のパッケージに内蔵(封入)した一体型SAWレゾネータ、4はSAWレゾネータ2を発振素子とし周波数f1の発振出力を出力する2端子型の周波数固定型SAW発振回路、5はSAWレゾネータ3を発振素子とし周波数f2の発振出力を出力する2端子型の周波数可変型(電圧可変型)SAW発振回路、6は周波数固定型SAW発振回路4および周波数可変型SAW発振回路5の出力を入力とし入力周波数(f1,f2)同士の和と差の結合成分信号を出力する周波数変換回路、7はこの周波数変換回路6の出力する結合成分信号から差周波数成分「f2-f1」を抽出する低域濾波器である。 【0009】この電圧制御型SAW発振器において、周波数可変型SAW発振回路5の出力する発振出力の周波数f2は、制御入力端子8より与えられる制御電圧の変化に従い変化する。このため、出力周波数として出力端子9より出力される差周波数成分「f2-f1」も、制御電圧の変化に応じて変化することになる。SAWレゾネータ2を発振素子とする周波数固定型SAW発振回路4およびSAWレゾネータ3を発振素子とする周波数可変型SAW発振回路5は、その周波数安定度がLC発振器に比して良好であり、水晶発振回路にほゞ匹敵する周波数安定度で周波数f1およびf2の発振出力を出力する。 【0010】このため、出力端子9より出力される差周波数成分「f2-f1」の周波数安定度も良好となり、低ジッタの出力周波数が得られる。また、f2に対する周波数可変幅が、f1により周波数変換されているため、「f2-f1」の周波数帯でみると、相対可変範囲が広くとれる。また、出力周波数を差周波数成分「f2-f1」として得ることにより、すなわち「差演算」を行うことにより、周波数固定型SAW発振回路4および周波数可変型SAW発振回路5の出力に生ずる変動分がキャンセルされる。また、SAWレゾネータ2および3を同一のパッケージに封じ込めているので、温度条件や経時条件が等しくなり、温度変動や経時変動に対しても、差周波数成分「f2-f1」の周波数安定度が良好となる。」(段落【0008】〜【0010】第2頁第2欄第46行〜第3頁第3欄第36行) (b)-3 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-102342号公報(以下、「引用例3」という。)には、図1とともに、以下のような記載がある。 「【従来の技術】公知のレーダー・システムにおいては、LO信号は、図1に示すように、マイクロ波基準信号と周波数シンセサイザ信号とを加算することによって発生される。マイクロ波基準の機能は、粗い周波数ステップで広帯域Xバンド信号を発生することである。その高い出力周波数の故に、マイクロ波基準は雑音性能を設定する。周波数シンセサイザは、細かい周波数ステップ(5〜10MHz)で2GHzよりも小さい周波数領域において狭帯域信号を発生する。つまり、2つの信号の加算(混合)は、細かい周波数ステップで広帯域マイクロ波信号を発生する。マイクロ波基準は広帯域低雑音信号発生器の最も決定的な要素である。なぜなら、マイクロ波基準は全レーダー信号帯域幅と周波数安定性とを設定するからである。送信ドライブ(TD)信号は一定の周波数オフセット(TDオフセット)を局部発振器受信機(LO)に加えることによって発生される。10%よりも小さい帯域幅の従来のレーダー・システムにあっては、図1の手法は優れた特性を提供する。」(段落【0002】第2頁第2欄第47行〜第3頁第3欄第14行) (c)対 比 そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「第1の信号出力手段」及び「バンドパスフィルタ」は、本願補正発明の「固定周波数発振手段OSC」及び「周波数選択手段」に相当するものであり、引用例1記載の発明の「周波数変換手段」は、第1の周波数の信号と第2の周波数の信号とを混合して、その和周波数波、及びその差周波数波を出力することは明らかであり、本願補正発明の「入力信号の和周波数波、及び差周波数波を出力する周波数混合手段(ミキサー)」に相当する。 また、引用例1記載の発明の「第2の信号出力手段」と本願補正発明の「電圧制御発振手段VCO」は、周波数可変型の発振手段である点で一致し、引用例1記載の発明の「周波数可変可能な信号発生回路」と本願補正発明の「電圧制御発振器」は周波数可変可能な信号発生器である点で一致するものと認められる。 さらに、引用例1記載の発明は、第2の周波数の信号が、例えば、10〜20MHzの間で変化するものであって、前記第1の信号出力手段より出力される2400MHz帯の第1の周波数の信号に比べてかなり低い周波数であるから、第1の信号出力手段の出力信号の周波数は第2の信号出力手段の出力信号の周波数に比べて少なくとも数倍以上であると認められる。 そうすると、両者は、 「周波数可変型の発振手段及び固定周波数発振手段(OSC)と、前記周波数可変型の発振手段の出力信号と前記OSCの出力信号とを入力し混合して入力信号の和周波数波、及び差周波数波を出力する周波数混合手段(ミキサー)と、前記ミキサーの出力信号を入力し和周波数波、及び差周波数波のうち必要な1波を選択し出力する周波数選択手段とを有し、前記OSCの出力信号の周波数は前記周波数可変型の発振手段の出力信号の周波数に比べて少なくとも数倍以上である周波数可変可能な信号発生器。」 で一致するものであり、次の点で相違している。 (1)本願補正発明は、「電圧制御発振器」であって、周波数可変型の発振手段が「電圧制御発振手段VCO」であり、前記VCOの出力信号の位相雑音が、前記OSCの出力信号の位相雑音より低くなるように、前記VCOの出力信号の周波数の範囲を設定していることを特徴とするのに対し、引用例1記載の発明は、「信号発生回路」であって、周波数可変型の発振手段として「電圧制御発振手段VCO」を用いることが明らかではなく、周波数可変型の発振手段の周波数の範囲が上記のように設定されているか不明な点。 (2)本願補正発明は、マイクロ波帯域の周波数の信号を出力する電圧制御発振手段(VCO)及び固定周波数発振手段(OSC)であるのに対し、引用例1記載の発明では、周波数可変型の発振手段及び固定周波数発振手段(OSC)が、例えば、10〜20MHz及び2400MHz帯の周波数の信号を出力する点。 (d)当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 相違点(1)について 引用例2には、周波数固定型SAW発振回路4および周波数可変型(電圧可変型)SAW発振回路5の出力を入力とし入力周波数(f1,f2)同士の和と差の結合成分信号を出力する周波数変換回路、この周波数変換回路6の出力する結合成分信号から差周波数成分「f2-f1」を抽出する低域濾波器7で構成された電圧制御型SAW発振器において、f2に対する周波数可変幅が、f1により周波数変換されているため、「f2-f1」の周波数帯でみると、相対可変範囲が広くとれることが記載されている。 引用例1には、「実施の形態においては、周波数可変型の発振回路としてPLL回路14を使用したものであるが、単純なCR発振回路やLC発振回路等を使用してもよい。」ことが記載されており、引用例1記載の発明において、周波数可変型の発振手段を上記引用例2記載のように電圧可変型発振手段(「電圧制御発振手段VCO」に相当する。)とすることは、当業者ならば必要に応じて適宜なし得る設計事項であり、そのようにすれば「信号発生回路」が「電圧制御発振器」といえることは明らかである。 そして、電圧制御発振手段において、出力信号の周波数の範囲を広くすると、位相雑音が大きくなり、周波数の範囲を許容される位相雑音より小さくすることは、本出願前周知である(特開平5-211409号公報段落【0009】の記載参照)。 さらに、上記引用例2の記載によれば、周波数固定型発振回路と電圧可変型発振回路とを有する電圧制御型発振器において、周波数固定型発振回路と電圧可変型発振回路の両方とも周波数安定度の良好なものを用いており、位相雑音の大きさが、周波数安定度を示す尺度であることは技術常識であるから、引用例1記載の発明において、周波数可変型の発振手段として電圧制御発振手段を用いる際、電圧制御発振手段の出力信号の位相雑音が、固定周波数発振手段の出力信号の位相雑音と同等に低くなるようにすることは、容易に想到し得る事項である。 そうすると、電圧制御発振手段の出力信号の位相雑音と固定周波数発振手段の出力信号の位相雑音のどちらをより低くなるように設定するかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計事項にすぎず、電圧制御発振手段の出力信号の位相雑音が、固定周波数発振手段の出力信号の位相雑音電圧制御発振手段の出力信号の位相雑音より低くなるように、電圧制御発振手段の出力信号の周波数の範囲を設定するようにすることは格別な発明力を要するものとは認められない。 相違点(2)について 引用例3には、マイクロ波基準信号(8〜9GHz)に周波数シンセサイザ信号(細かい周波数ステップ(5〜10MHz)で2GHzより小さい)を混合することにより、細かい周波数ステップで広帯域マイクロ波信号を発生する周波数可変可能な信号発生回路が記載されており、引用例1記載の発明の「周波数可変可能な信号発生回路」をマイクロ波帯域の周波数の信号を発生するものとし、その際、周波数可変型発振手段及び固定周波数発振手段として、マイクロ波帯域の周波数の信号を出力するものを採用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項である。 結局、上記の相違点は、格別なものではなく、また、前記相違点により奏される効果は当業者であれば引用例1〜3記載の発明及び周知技術から予想できる範囲内のものである。 (e)まとめ そうすると、本願補正発明は、引用例1〜3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、平成15年6月23日に提出された手続補正書による補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明 上記のとおり、上記本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年3月10日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「マイクロ波帯域の周波数の信号を出力する電圧制御発振手段(VCO)及び固定周波数発振手段(OSC)と、前記VCOの出力信号と前記OSCの出力信号とを入力し混合して入力信号の和周波数波、及び差周波数波を出力する周波数混合手段(ミキサー)と、前記ミキサーの出力信号を入力し和周波数波、及び差周波数波のうち必要な1波を選択し出力する周波数選択手段とを有し、前記OSCの出力信号の周波数は前記VCOの出力信号の周波数に比べて少なくとも数倍以上であることを特徴とする電圧制御発振器。」 そして、本願発明は、前記2で検討した本願補正発明から「前記VCOの出力信号の位相雑音が、前記OSCの出力信号の位相雑音より低くなるように、前記VCOの出力信号の周波数の範囲を設定している」の構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が前記2に記載したとおり、引用例1〜3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1〜3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1〜3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-16 |
結審通知日 | 2006-02-21 |
審決日 | 2006-03-10 |
出願番号 | 特願平11-305404 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H03B)
P 1 8・ 575- Z (H03B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 東 昌秋、畑中 博幸、小林 正明 |
特許庁審判長 |
大日方 和幸 |
特許庁審判官 |
和田 志郎 山崎 慎一 |
発明の名称 | 電圧制御発振器 |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 工藤 雅司 |
代理人 | 机 昌彦 |