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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1135315
審判番号 不服2004-3780  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-26 
確定日 2006-04-19 
事件の表示 特願2001-116686「数値制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月25日出願公開、特開2002-312009〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願は、平成13年4月16日の特許出願であって、平成15年8月14日付けで拒絶の理由が通知され、平成15年11月10日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成15年12月25日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、平成16年2月26日に本件審判の請求がなされ、平成16年3月23日に補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本件出願の請求項1に係る発明は、平成16年3月23日に補正された明細書の特許請求範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。(以下、「本願発明」という。)
「工具と被加工物とを相対的に直線的に移動させる直線軸と、工具と被加工物とを相対的に回転移動させる回転軸とを備える工作機械に対する加工プログラムを加工形状データに基づいて自動的に作成する数値制御装置において、
予め与えられた加工形状データに従った加工が前記直線軸の移動限界内で可能か否かを前記直線軸の移動限界を表すデータに基づいて判断する判定手段を備え、
少なくとも前記移動限界外の加工形状については加工形状を180度回転させた加工形状データに基づいて加工プログラムを作成し、この加工形状を回転させて作成した加工プログラムの前に前記回転軸を180度回転させる指令をプログラムして加工プログラムを自動的に作成することを特徴とする数値制御装置。」

3.刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平5-204431号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下のとおり記載されている。

ア.段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は工作機械を制御する数値制御装置の自動プログラム作成装置に係り、特に予め選択された切削軸の可動範囲を越える加工データが入力された場合には、切削可能な他の切削軸に自動的に変更され、この変更された切削軸についての加工プログラムが出力されて切削制御が行われる、数値制御装置における切削軸の自動変更機能付き自動プログラム作成装置に関する。」
イ.段落【0002】〜【0003】
「【従来の技術】複数の切削軸を有するNC工作機械において、X軸,Y軸,XC軸の、いずれかの切削軸にて切削が行われる場合、XC軸による切削、いわゆる極座標形式の切削ではC軸によってワークを回転させて切削を行うので切削軸のストローク不足による切削不能の事態は生じない。しかしながら、この場合には二軸制御となり、演算が複雑となって時間もかかり、また、X軸またはY軸の一軸制御による切削よりも加工精度が低下する。したがって、一軸によって切削可能なものについては一軸にて切削が行われる。しかしながら、この一軸による切削において、予め選択された切削軸につき、この選択された切削軸の可動範囲、即ち切削軸のストローク範囲を越える加工データが入力されることがある。例えば、図3の各図は、端面円形のワーク20に長楕円の溝21の切削を行う場合を、切削の位置がそれぞれ異なる例をあげて示したものであるが、図3(a)において、実線22,23,24は、後述するこの発明の一実施例におけるX軸とY軸それぞれの切削軸が切削のために移動可能な範囲、即ちストローク限界を示す線であり、この例によれば、Y軸方向においては中心線より左右それぞれに+50mmの線22と-50mmの線23、X軸方向においては中心線より下方-20mmの線24の各線に囲繞されたハッチング部分が切削軸のストローク範囲となっている。上方即ちX軸のプラス側への切削軸のストロークは、ほぼ当該工作機械の機械的限界位置に及び、切削不能の事態は特に生じないのが一般的であり、本実施例においてもそのようになっている。
以上のように、予め選択された切削軸のストローク範囲を越える切削を指定される場合がある。しかしながら、自動プログラム作成手段がパラメータや加工形状データに基づいて加工プログラムを作成するときに、加工形状と切削軸のストロークとの関係、即ち、選択された切削軸のストロークが、切削すべき加工形状の総ての領域に及んで切削可能であるか否かについては特に判断せずに加工プログラムが作成されているのが現状である。したがってこの場合、切削軸のストロークと加工形状との関係については、作成された加工プログラムのリストを担当者が目視にて確認したり、あるいは、当該加工プログラムによる実機確認、即ち、当該出力された加工プログラムを数値制御装置で実行し、工作機械を実際に稼働させて切削軸のストローク確認作業を行っている。そして、ここで切削軸のストローク範囲を超える加工形状のデータ入力があった場合にはプログラムの修正が行われ、最終的に実行可能な加工プログラムが作成されている。」
エ.段落【0007】
「【実施例】本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の装置構成を示す図である。図において、Aは対話式にてデータの入力が行われ、切削のための加工プログラムが出力される前記自動プログラム作成手段としての自動プログラム作成装置の装置構成図,Bは切削を制御する前記制御部であり、自動プログラム作成装置Aによって作成された加工プログラムに基づいてNC工作機械を制御する数値制御装置の全体構成図である。これらのうち、自動プログラム作成装置Aにおいて、1は中央処理装置(CPU1)であり、1aはそのメインバスである。2は対話式にてデータの入力が行われるシステムのシステムプログラムが記憶,格納されるシステムプログラムメモリとしてのROM,3は自動プログラム作成手段のために各種設定されるパラメータや、各切削軸の可動範囲を含む加工のためのデータが記憶,格納されるパラメータ,データ格納手段としてのRAM,4は表示手段であるCRTの画面と対話しながら加工プログラムを作成してゆく対話型加工プログラム編集手段(以下加工プログラム編集手段と称する),5は加工プログラム編集手段4がプログラム編集のための作業領域として一時的にデータを格納する作業用メモリとしてのRAMである。6はストロークチェック手段であり、後述する切削軸選択手段としてのキーボード12より、X軸およびY軸のいずれか、あるいは極座標であるXC軸のいずれかの切削軸が選択のために入力された場合に、前記パラメータ,データ格納手段としてのRAM3に格納されたパラメータおよび加工データに基づいて当該選択された切削軸の切削時におけるストローク量を演算し、この演算によって得られたストローク量が当該のX軸またはY軸の可動範囲内か否かのストロークチェックを行う。・・・。」
オ.段落【0016】
「図7は端面穴の切削を行う場合であり、この場合は切削時における切削軸の移動は穴の切込方向、即ちZ軸方向のみで、切削位置に工具を移動させて位置決めを行う場合における位置決め軸のストロークチェックを行うものである。先ず、切削位置への位置決めはXY軸で行われるか否かが判断される(ステップ7-1)。ここで位置決めがX軸とY軸で行われるものでない場合には、XC軸による位置決めが選択され(ステップ7-2)、このXC軸に関する位置決めのためのカッターパスが作成されて終了となる。位置決めがX軸とY軸で行われる場合には、先ず、Y軸の位置決めストローク量が演算され、演算されたストローク量についてストロークチェックが行われる(ステップ7-3)。このY軸がストロークオーバーと判断されると(ステップ7-3)、XY軸での位置決めは不能としてXC軸が選択されて(ステップ7-4)、このXC軸についてのカッターパスが作成されて終了となる。Y軸がストロークオーバーでなければ、次にX軸について位置決めストローク量が演算され、演算されたストローク量についてストロークチェックが行われ(ステップ7-5)、X軸がストロークオーバーでなければ、位置決め軸にXY軸が選択され(ステップ7-6)、このXY軸による位置決めのためのカッターパスが作成されて終了となる。X軸がストロークオーバーと判断されると、C軸を180°回転させた位置において、位置決め軸としてXY軸が選択され、位置決めのためのカッターパスが作成される(ステップ7-7)。即ち、前記のようにワーク上方への切削軸のストロークは、ほぼ当該工作機械の機械的限界位置におよんで切削不能という事態は生じないのが一般であり、X軸のストロークオーバーの場合にはC軸を180°回転させてX軸の位置決め位置がワーク上方に位置するようにすればよい。このように、C軸を180°回転させた位置において位置決め軸としてXY軸が選択され、このXY軸について位置決めのためのカッターパスが作成されて終了となる。」
また、端面穴の切削位置を180度回転させた端面穴の切削を行う加工データに基づいてカッターパスを作成した場合、ワークの加工が、ワークを180度回転させた後、端面穴の切削位置を180度回転させた位置に端面穴の切削を行うことは自明のことである。そして、そのワークの加工の指令は、ワークを180度回転させる指令後に、端面穴の切削位置を180度回転させた端面穴の切削を行う加工データに基づいて作成したカッターパスによる指令を行うことは明らかである。

以上のとおりであるので、刊行物には、次の発明が記載されているものと認める。(以下、「刊行物記載の発明」という。)
「工具とワークとを相対的に直線的に移動させるX軸と、工具とワークとを相対的に回転移動させるC軸とを備える工作機械に対するカッターパスを端面穴の切削を行う加工データに基づいて自動的に作成する数値制御装置において、
予め与えられた端面穴の切削を行う加工データに従った加工が前記X軸の可動範囲内か否か判断するストロークチェックを行うストロークチェック手段を備え、
前記X軸がストロークオーバーの端面穴の切削位置については端面穴の切削位置を180度回転させた端面穴の切削を行う加工データに基づいてカッターパスを作成し、この端面穴の切削位置を回転させて作成したカッターパスの前に前記C軸を180度回転させる指令をプログラムしてカッターパスを自動的に作成することを特徴とする数値制御装置。」

4.対比
本願発明と刊行物記載の発明とを対比するに、後者の「ワーク」は前者の「被加工物」に相当し、後者の「X軸」は前者の「直線軸」に相当し、後者の「C軸」は前者の「回転軸」に相当し、後者の「カッターパス」は前者の「加工プログラム」に相当し、後者の「端面穴の切削を行う加工データ」は、加工位置を指定されて切削される穴も加工形状の1つであることは明らかであるので、前者の「加工形状データ」に相当し、後者の「X軸の可動範囲内か否か判断するストロークチェックを行うストロークチェック手段」は前者の「直線軸の移動限界内で可能か否かを前記直線軸の移動限界を表すデータに基づいて判断する判定手段」に相当し、後者の「X軸がストロークオーバー」は前者の「移動限界外」に相当し、後者の「端面穴の切削位置」は前者の「加工形状」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物記載の発明とは、構成要素の全てで一致し、相違点を有しない。
ゆえに、本願発明は刊行物記載の発明である。

ところで、請求人は、平成16年3月23日付け手続補正書(方式)等において、本願発明が、「加工形状が直線軸の移動範囲内外に渡るもの」である旨主張するが、本主張は、特許請求の範囲に基づかない主張であり、採用することはできない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。

なお、原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1〜4に係る発明は、刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであるが、審判請求書等において、請求人は、上記刊行物記載の発明と本願発明とを対比、検討しているから、特許法第29条第1項第3号の同一性を含めて検討していることは明らかである。したがって、特許法第29条第1項第3号の拒絶理由を改めて通知する必要を認めない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-15 
結審通知日 2006-02-21 
審決日 2006-03-06 
出願番号 特願2001-116686(P2001-116686)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木 誠  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 佐々木 正章
鈴木 孝幸
発明の名称 数値制御装置  
代理人 竹本 松司  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 湯田 浩一  
代理人 魚住 高博  

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