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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K |
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管理番号 | 1135419 |
審判番号 | 不服2005-15903 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-07-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-08-18 |
確定日 | 2006-04-26 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第349700号「非接触ICカード通信システムにおける応答器」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月21日出願公開、特開平10-187916〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.出願の経緯 本願は、平成8年12月27日に出願されたものであって、平成17年7月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年8月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年9月16日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成17年9月16日付けの手続補正についての補正却下の決定 (補正の内容) 請求人は、平成17年9月16日付けで手続補正書(以下、本件手続補正書という。)を提出し、特許請求の範囲の構成要件を限定的に減縮して、次のとおりとしている。 「 【請求項1】 質問器との間で電磁波により通信を行う応答器において、 (a)質問器からの電磁波を受けるアンテナを含む共振回路であって、スイッチ手段によって共振周波数が切換可能である共振回路と、 (b1)共振回路のスイッチ手段を順次切り換えるとともに、各切換態様における共振回路にあらわれる電圧または電流を得て、所望の電圧または電流が得られるスイッチ手段の好適切換態様を得る判定手段と、(b2)判定手段によって得られた好適切換態様を記憶する切換態様記憶手段と、を有し、所望の出力信号が得られるように前記スイッチ手段の切換態様を固定する手段と、 を備えた非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 当該応答器は、質問器から受信した電磁波を電力源とするように構成されており、 前記判定手段は、 (b11)共振回路にあらわれる電圧の変動に拘わらず一定の基準電圧を得る基準電圧発生手段と、 (b12)基準電圧発生手段からの基準電圧を基準として、各切換態様における共振回路の出力値を段階的に計測する出力値計測手段と、 (b13)出力値計測手段によって得られた出力値に基づいて、最も大きな出力値に対応する切換態様を好適切換態様とし、最も大きな出力値が複数ある場合に中心の切換態様を好適切換態様として選択し、好適切換態様を決定する態様決定手段、 を備えていることを特徴とする非接触ICカード通信システムにおける応答器。 【請求項2】 請求項1の非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記スイッチ手段を複数のトランジスタによって構成し、 前記各トランジスタが、前記判定手段によって得られた何れのトランジスタをオンにするかを記憶する切換態様記憶手段と、前記スイッチ手段とを共用するように構成したこと、 を特徴とするもの。 【請求項3】 請求項1または請求項2の非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 共振回路からの出力である高周波搬送波を、整流回路により整流し、レギュレータにより安定化することにより電源を供給する、 ことを特徴とするもの。 【請求項4】 請求項1〜請求項3のいずれかの非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記判定手段は、実際の使用時において、切換態様を順次切り換えるごとに出力値を得て、所定のしきい値を越える出力値が得られると、当該切換態様を好適切換態様とすることを特徴とするもの。 【請求項5】 請求項1〜請求項4のいずれかの非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記共振回路は、アンテナに対して接続するコンデンサの容量を、スイッチ手段によって選択可能に構成したこと、 を特徴とするもの。 【請求項6】 請求項1〜請求項4のいずれかの非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記共振回路は、コンデンサに接続するアンテナのインダクタンスを、スイッチ手段によって選択可能に構成した、 ことを特徴とするもの。 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかの非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記共振回路は少なくとも動作電力供給のために用いるものであることを特徴とするもの。 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかの非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記共振回路は少なくとも情報通信のために用いるものである、 ことを特徴とするもの。 【請求項9】 請求項1〜3、請求項5〜8のいずれかの非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記判定手段による好適切換態様の判定は、当該応答器製造時に行われるものである、 ことを特徴とするもの。 【請求項10】 請求項1〜3、請求項5〜8のいずれかの非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記判定手段による好適切換態様の判定は、所定時期ごとに行われるものである、 ことを特徴とするもの。 【請求項11】 請求項10の非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記所定時期は、前回判定の日時から所定の日時を経過した時点である、 ことを特徴とするもの。 【請求項12】 請求項10の非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記所定時期は、当該応答器の所定の使用回数ごとに決定される、 ことを特徴とするもの。 【請求項13】 請求項1〜12のいずれかの非接触ICカード通信システムにおける応答器において、 前記共振回路および前記スイッチ手段の切換態様を固定する手段を集積回路チップとして構成した、 ことを特徴とするもの。 【請求項14】 質問器からの電磁波を受け、これを電力源として使用して動作可能となる自己電源不要型装置に用いうる集積回路チップであって、 質問器からの電磁波を受けるアンテナを含む共振回路であって、スイッチ手段によって共振周波数が切換可能である共振回路と、 前記共振回路のスイッチ手段を順次切り換え、各切換態様における前記共振回路の出力を段階的に得て、最も大きな出力値が複数ある場合に中心の切換態様を好適切換態様として選択することにより、所望の出力が得られるスイッチ手段の好適切換態様を得る判定手段と、 判定手段によって得られた好適切換態様を記憶する切換態様記憶手段と、 を備えたことを特徴とする集積回路チップ。 【請求項15】 質問器からの電磁波を受け、これを電力源として使用し、質問器との間で電磁波により通信を行う非接触ICカードにおいて、 (a)質問器からの電磁波を受けるアンテナとコンデンサとを含む共振回路であって、当該共振回路を実質的に構成するアンテナのインダクタンスとコンデンサのキャパシタンスを複数のトランジスタのオン・オフによって選択可能に構成された共振回路と、 (b)共振回路にあらわれる電圧の変動に拘わらず一定の基準電圧を得る基準電圧発生手段と、 (c)共振回路の各トランジスタのオン・オフを順次切り換える順次切換手段、 (d)基準電圧発生手段からの基準電圧を基準として、順次切換手段によるトランジスタの各切換態様における共振回路の出力値を段階的に計測する出力値計測手段と、 (e)出力値計測手段によって得られた出力値を、各切換態様に対応づけて、それぞれ記憶する出力値記憶手段と、 (f)出力値記憶手段に記憶された各切換態様の出力のうち、最も大きい出力値に対応する切換態様を好適切換態様として決定し、最も大きな出力値が複数ある場合に中心の切換態様を好適切換態様として選択する態様決定手段と、 (g)態様決定手段によって得られた好適切換態様を記憶する切換態様記憶手段と、 (h)当該切換態様記憶手段に記憶された好適切換態様にしたがって、共振回路のトランジスタのオン・オフを制御する切換手段と、 を備えていることを特徴とする非接触ICカード。 【請求項16】 電磁波を共振回路によって受信し、電力源とする自己電源不要型装置において、 切換信号によって共振周波数を変更可能とした共振回路の当該共振周波数を順次変更し、 受信した電磁波に基づいて得られた電圧を受けて、当該電圧の変動に拘わらず一定の基準電圧を得る基準電圧発生源を設け、 順次変更される各共振周波数に対応した共振回路の各出力を、基準電圧を基準として段階的に比較し、最も大きい出力値の得られた共振周波数となるよう切換信号を共振回路に与え、効率よく電力を得るようにし、 最も大きな出力値が複数ある場合に中心の切換態様を好適切換態様として選択し、当該好適共振周波数を共振回路に与える、 ことを特徴とする自己電源不要型装置。 【請求項17】 電磁波を共振回路によって受信し、電力源とする自己電源不要型装置の自動調整方法において、 切換信号によって共振周波数を変更可能とした共振回路の当該共振周波数を順次変更し、 受信した電磁波に基づいて得られた電圧を受けて、当該電圧の変動に拘わらず一定の電圧を得る基準電圧発生源の出力を基準電圧とし、 順次変更される各共振周波数に対応した共振回路の各出力を、基準電圧を基準として段階的に比較し、最も大きい出力値の得られた共振周波数となるよう切換信号を共振回路に与え、効率よく電力を得るようにし、 最も大きな出力値が複数ある場合に中心の切換態様を好適切換態様として選択し、当該好適共振周波数を共振回路に与える、 ことを特徴とする自己電源不要型装置の調整方法。」 (補正の適否の検討) 限定的減縮がなされた補正後の請求項17に係る発明(以下、補正発明という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるか否かについて検討する。 原審において引用された国際公開第96/13792号パンフレット(以下、刊行物1という。)には、エネルギ及びデータの無接触伝送システムにおける共振周波数の調整方法に関する発明が記載されており、次のことが記載されている。 (i)一次回路から無線伝送されてくるエネルギ及び信号を受信するためのアンテナが二次回路に設けられており、アンテナはコイル及びコンデンサからなる共振回路を構成している。 (ii)二次回路は無線伝送されてくるエネルギを整流し、平滑化して集積回路の電源として与える。 (iii)トランジスタ8〜10を順次切換え二次回路の共振回路の周波数を自動調整している。 (iv)二次回路には評価ユニットが設けられており、順次変更された共振周波数に対応した共振回路の各出力から、好適な周波数を選択し、その周波数になるようトランジスタ8〜9のいずれかを選択する。 上記(i)〜(iv)の内容から、上記刊行物1には次の発明が記載されているといえる。 電磁波を共振回路によって受信し、電力源とする自己電源不要型装置の自動調整方法において、 切換信号によって共振周波数を変更可能とした共振回路の当該共振周波数を順次変更し、 受信した電磁波に基づいて得られた電圧を受けて、当該電圧の変動に拘わらず一定の電圧を得え、その電圧を評価ユニットを含む集積回路に与えるようにし、 順次変更される各共振周波数に対応した共振回路の各出力に基づき評価ユニットにおいて好適な周波数を選択し、その好適な周波数になるように共振回路を設定する、 ことを特徴とする自己電源不要型装置の調整方法。」 本件補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、次の点で相違し、その余では一致する。 本件補正発明が、基準電圧発生源の出力を基準電圧とし、順次変更される各共振周波数に対応した共振回路の各出力を、基準電圧を基準として段階的に比較し、最も大きい出力値の得られた共振周波数となるよう切換信号を共振回路に与え、効率よく電力を得るようにし、最も大きな出力値が複数ある場合に中心の切換態様を好適切換態様として選択するとしているのに対し、上記刊行物1にはその点についての記載がない点 しかるに、集積回路において、信号を処理するために、アナログ信号をディジタル信号に変換することはごく普通に行われていることであり、その際、基準信号を基準として段階的に比較するA/D変換器を用いるといったことは本件出願前普通に知られてことであるから、上記刊行物1記載の集積回路において、基準電圧発生源の出力を基準電圧とし、順次変更される各共振周波数に対応した共振回路の各出力を、基準電圧を基準として段階的に比較するようにすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 また、最も大きな出力値が1つしかない場合に、その出力値を与える周波数になるように共振回路を設定するとすることは当業者が普通に考えることであり、また、最も大きな出力値が複数ある場合にはそのいずれの出力値を与える共振周波数を用いても、受信動作上問題はなく(本件明細書の【0067】には所定のしきい値を超えた時点の共振周波数を用いてもよいと記載されているように、中心である必要性はない。)、本件補正発明のように複数のうちの中心(なお、複数というのが3つの場合は中心があるが、2つの場合、4つの場合等には中心というものがない)の出力値を与える共振周波数になるように共振回路を設定かは、当業者が適宜なす選択事項にすぎない。 (結論) よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであって、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、本件手続補正書による補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下する。 3.本件発明について (本件発明の内容) 本件手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至18に係る各発明は、平成17年3月25日付けの手続補正書により補正された明細書、図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至18に記載されたとおりのものであるところ、請求項18に係る発明(以下、本件発明という。)は次のとおりのものである。 「電磁波を共振回路によって受信し、電力源とする自己電源不要型装置の自動調整方法において、 切換信号によって共振周波数を変更可能とした共振回路の当該共振周波数を順次変更し、 受信した電磁波に基づいて得られた電圧を受けて、当該電圧の変動に拘わらず一定の電圧を得る基準電圧発生源の出力を基準電圧とし、 順次変更される各共振周波数に対応した共振回路の各出力を、基準電圧を基準として比較し、最も大きい出力値の得られた共振周波数となるよう切換信号を共振回路に与え、効率よく電力を得るようにした、 ことを特徴とする自己電源不要型装置の調整方法。」 (検討) 本件発明は、本件補正発明から「段階的に」、「最も大きな出力値が複数ある場合に中心の切換態様を好適切換態様として選択し、当該好適共振周波数を共振回路に与える」との要件を除いたものであるから、その要件を除き、上記2.の(補正の適否の検討)において検討したと同様である。 (まとめ) したがって、本件発明は、上記刊行物1記載の発明に基づき、周知技術を参酌して、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-22 |
結審通知日 | 2006-02-27 |
審決日 | 2006-03-10 |
出願番号 | 特願平8-349700 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村田 充裕、丹治 彰 |
特許庁審判長 |
川名 幹夫 |
特許庁審判官 |
堀江 義隆 橋本 正弘 |
発明の名称 | 非接触ICカード通信システムにおける応答器 |
代理人 | 松下 正 |
代理人 | 古谷 栄男 |