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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1135440
審判番号 不服2003-272  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-06 
確定日 2006-04-26 
事件の表示 平成11年特許願第184397号「中古部品流通促進システム及び中古部品流通促進方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月19日出願公開、特開2001- 14413〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成11年6月29日の出願であって、平成14年11月26日に拒絶査定がなされ、これに対して平成15年1月6日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされるとともに、同年2月5日に手続き補正がなされたものである。

第2 平成15年2月5日付けの手続補正の補正の却下の決定について
[補正却下の決定の結論]
平成15年2月5日付けの手続補正を却下する。
[理由]
平成15年2月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、「【請求項1】中古車供給者と、中古車需要者と、中古部品利用者との間で中古部品の流通を促進する中古部品流通促進システムであって、ネットワーク上に、メインサーバと、中古車供給者側端末と、中古車需要者側端末と、中古部品利用者側端末とを接続し、前記メインサーバは、中古車供給者側端末から送信された中古車在庫データを格納する第1記憶手段と、各種車両に対応する部品リストを含む車両詳細データを格納する第2記憶手段と、中古車需要者側端末から送信された中古部品データを格納する第3記憶手段と、に接続し、第1記憶手段に格納された中古車在庫データに対応する第2記憶手段内の車両詳細データに基づき前記中古車在庫データの欠落情報を補完して前記中古車需要者側端末に送信し、前記第3記憶手段内の中古部品データを前記中古部品利用者側端末に送信することを特徴とする中古部品流通促進システム。」と補正された。
上記補正は、「中古部品流通促進システム」を、「中古車供給者と、中古車需要者と、中古部品利用者との間で中古部品の流通を促進する中古部品流通促進システム」と限定し、「第1記憶手段に格納された中古車在庫データに対応する第2記憶手段内の車両詳細データに基づき前記中古車在庫データを補完し」を、「第1記憶手段に格納された中古車在庫データに対応する第2記憶手段内の車両詳細データに基づき前記中古車在庫データの欠落情報を補完して前記中古車需要者側端末に送信し」と限定したものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。
1.引用例
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された高橋信頼,ビッグウェーブ:業者間で在庫情報を共有し部品流通機構をゼロから創生,日経コンピュータ,日経BP社,1991年7月15日,No.258,pp.136-144(以下、「刊行物1」という。)には、
ア 「新車、中古車、そしてスクラップというのが車のたどる道だと信じ込んではいけない。廃車処分になって解体業者に渡された車は、必ずしもすべてスクラップにされるわけではないからだ。まだ使える部品が選別され、それらは修理用のパーツとして再び利用されるのである。中古部品、あるいは解体部品と呼ばれる。・・・同社の事業を支えるのが、全国共通の部品データベースをもとに業者間で部品を流通させるためのネットワーク「ビッグネッツ」だ。」(137頁左欄1行〜19行)、
イ 「ビッグネッツを利用した部品の業者間の仕組みを図2にまとめた。各メンバーは、自社の在庫の中から流通対象にしたい部品をセンター・データベースに登録する。メンバーは顧客から依頼を受けたとき、手持ち在庫の中に部品がなければセンターのデータベースを検索する。図2で、A社の登録した部品がB社の顧客の要望に沿うものであったとしよう。B社はその部品を「予約」する。すると、センターからA社に対して部品が予約されたことを告げる電子メールが送られる。このあとA社とB社はファクシミリもしくは電話で最終的な詰めを行い、商談が成立したらA社は売り上げ処理を行う。センターの部品登録は抹消される。B社にはA社からの納品書(図3)が電子メールで送られ、A社の端末からは売り上げ伝票が出力される。ここでA社は、B社もしくはB社の顧客に部品を発送する。メンバー間の取引はセンターに記録され、月末に生産される。つまりビックネッツは、「売ります」情報の予約機能付き電子掲示板を中心に構成されている。」(139頁中欄5行〜140頁中欄7行)、
ウ 「部品の登録や検索に際して車両や部品などのコードをいちいち入力しなければならなかったという問題点は、ガイダンス機能で解決した(写真1)。例えばある年式の特定車種のエンジンを検索したいがコードがわからない場合、車種と年式を入力してファンクション・キーを押せば、ガイダンスのウインドウが開く。その中で該当する部品をカーソルを使って選べばよい。入力が簡単になるだけでなく、コードを覚えている必要もない。・・・データベースはセンターとローカルの両方に置かれるわけだが、基本的な項目は両者で共通だ(表2)。」(141頁中欄4行〜右欄8行)、
エ 「分解処理は、部品登録を容易にするためのものだ。1台の車を解体して発生する部品を登録するのだから、車を指定すればそこから発生する部品を個別に入力しなくても一括登録できるよう工夫したのである。アセンブル産業における「部品展開」の要領だ。最初に車の車種と年式を登録すると、発生するはずの部品の一覧が表示される(写真3)。解体作業の示した作業指示書を出力することもできる。作業指示書に従って解体作業を進め、使用可能な部品を選別する。その後、画面に表示された部品リストから使用可能な部品だけを選択すれば、個々の部品をいちいち入力しなくとも登録は完了する。」(142頁左欄12行〜28行)が記載されている。
これらの記載ア〜エ及び図面図1〜4,写真1〜3によれば、刊行物1には、業者間で中古部品を流通させるためのネットワークシステムであって、ネットワーク上に、センターと、業者端末(メンバーA社(売り手))と、業者端末(メンバーB社(買い手))とを接続し、前記センターは業者端末(メンバーA社(売り手))から登録された中古部品データを格納するデータベースと、ガイダンス機能と、一括登録機能とを備え、業者端末(メンバーB社(買い手))が前記データベースを検索することを特徴とするネットワークシステムの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

2.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「業者間で中古部品を流通させるためのネットワークシステム」は構成する者の範囲を除き(下記相違点1の中で指摘)、中古品の流通を促進するためのものと認められるから、本願補正発明の「中古部品の流通を促進する中古部品流通促進システム」に相当する。
引用発明の「業者端末(メンバーB社(買い手))」は中古部品を買う側であるから、本願補正発明の、「中古部品利用者側端末」に相当し、引用発明の「業者端末(メンバーA社(売り手))から登録された中古部品データを格納するデータベース」は、一般にデータベースは記憶手段に構築されるから、本願補正発明の「端末から送信された中古部品データを格納する第3記憶手段」に相当する。
引用発明の「業者端末(メンバーB社(買い手))が前記データベースを検索する」は、一般に、端末により記憶手段であるデータベースを検索した検索結果はその検索した端末に送信する構成をとるものであるから、本願補正発明の「前記第3記憶手段内の中古部品データを前記中古部品利用者側端末に送信する」に相当する構成を備えているといえる。
したがって、本願補正発明と引用発明は、「中古部品の流通を促進する中古部品流通促進システムであって、ネットワーク上に、中古部品利用者側端末を接続し、中古部品データを格納する第3記憶手段を備え、前記第3記憶手段内の中古部品データを前記中古部品利用者側端末に送信することを特徴とする中古部品流通促進システム。」の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本願補正発明は、中古車供給者と、中古車需要者と、中古部品利用者との間で中古部品の流通を促進する中古部品流通促進システムであり、ネットワーク上に、メインサーバと、中古車供給者側端末と、中古車需要者側端末とを接続し、前記メインサーバは、中古車供給者側端末から送信された中古車在庫データを格納する第1記憶手段に接続している構成であるのに対して、引用発明では、業者間で中古部品を流通させるためのネットワークシステムであるが、メインサーバ、中古車供給者側端末、中古車需要者側端末及び第1記憶手段については記載がない点。
そして、第3記憶手段に格納されるのは、本願補正発明では、中古車需要者側端末から送信された中古部品データであるのに対し、引用発明では、メンバーA社(売り手)の端末から登録された中古部品データである点
相違点2
本願補正発明は、各種車両に対応する部品リストを含む車両詳細データを格納する第2記憶手段を備え、第1記憶手段に格納された中古車在庫データに対応する第2記憶手段内の車両詳細データに基づき前記中古車在庫データの欠落情報を補完して前記中古車需要者側端末に送信するものであるのに対して、引用発明は、ガイダンス機能と、一括登録機能とを備えるが、「第2記憶手段」、「中古車在庫データの欠落情報を補完」についての記載がない点。

3.判断
以下、相違点1〜2について検討する。
相違点1について
引用発明における業者(メンバーA社(売り手))は、業者間で中古部品の供給を行っている解体業者であり、解体業者は、廃車処分になった中古車の需要者であって、中古車供給者から、中古車の供給を受け、解体して、中古部品を供給する者であることは周知な事実(例:特開平6-171477号公報、「廃車場16」は解体を行う解体業者)であるから、中古部品の流通に関係する中古車供給者と、中古車需要者と、中古部品供給者と、中古部品利用者のうち、中古車需要者と、中古部品供給者とを兼ね備えた者であるといえる。
また、電子商取引の技術分野において、ネットワーク上に、メインサーバと、供給者側端末と、需要者側端末とを接続し、前記メインサーバは、供給者側端末から送信された在庫データを格納する記憶手段に接続している構成は、常套手段である。
そして、中古車を電子商取引の対象とするシステムは周知な技術事項(特開平9-44563号公報、特開平9-6871号公報、)であり、引用発明は中古部品を電子商取引の対象とするシステムといえ、当業者が、両システムを組み合わせることは、上記中古部品の流通に関係する中古車供給者と、中古車需要者と、中古部品供給者と、中古部品利用者の関係から、自然であるといえ、これを困難とする理由は見い出せない。
更に、上記両システムを組み合わせる際、上述したように、引用発明における業者(メンバーA社(売り手))は、中古車需要者と、中古部品供給者とを兼ね備えた者であるといえること、端末に複数の機能を持たせることは慣用手段にすぎないことから、中古車需要者側端末に中古部品供給者側端末の機能を兼用させ、第3記憶手段に、中古車需要者側端末から送信された中古部品データを格納させることは、当業者が容易になし得たことである。
してみると、引用発明に上記周知な技術事項を組み合わせるとともに、上記常套手段、上記慣用手段を採用して、中古車供給者と、中古車需要者と、中古部品利用者との間で中古部品の流通を促進する中古部品流通促進システムを構築し、ネットワーク上に、メインサーバと、中古車供給者側端末と、中古車需要者側端末とを接続し、前記メインサーバは、中古車供給者側端末から送信された中古車在庫データを格納する第1記憶手段に接続している構成とし、第3記憶手段に格納されるのは、中古車需要者側端末から送信された中古部品データとすることは、当業者が、容易に想到し得たことである。
相違点2について
引用発明は、ガイダンス機能と、一括登録機能を備えるものであるが、一般に、ガイダンス、一括登録を行うためには、それに対応したデータベースを利用する必要があり、引用発明の場合は、ガイダンス機能の例としてある年式の特定車種のエンジンを車種と年式を入力して表示した部品の中から選ぶことが記載され、一括登録機能として、車種と年式を登録すると、派生するはずの部品の一覧が表示されることが記載されているから、各種車両に対応する部品リストを含む車両データを格納するデータベースの利用が、示唆されているといえる。
そして、データベースとして各種車両に対応する部品リストを含む車両データを格納する記憶手段は周知であり(特開平8-185410号公報、特開平6-166411号公報、特開平2-16677号公報)、また、各システムで車両詳細データを格納するデータベースを利用することも周知な技術事項(特開平11-133859号公報、特開平10-177593号公報、特開平6-171477号公報)である。
そうすると、引用発明に、上記周知な技術事項を採用して、各種車両に対応する部品リストを含む車両詳細データを格納する第2記憶手段を備える構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、一般に、入力されたデータが不完全、不揃いの場合、これを低減したり、これを検知し、その修正を行うことは、コンピュータシステムにおいて、当然の課題となっており、この課題を解決する構成として、システム内に既存の利用可能なデータがある場合、これを用いてデータの修正・欠落情報の補完を行うことは、常套手段であるところ、中古車を電子商取引の対象とするシステムにおいても、中古車在庫データに不完全さ、不揃いの課題があることは明らかであり、データの修正・欠落情報の補完は当業者が必要とする任意にタイミングで行いえるものであり、上記車両詳細データは既存の利用可能なデータといえるから、引用発明において、各種車両に対応する部品リストを含む車両詳細データを格納する第2記憶手段を備える構成とする際、上記常套手段を採用して、第1記憶手段に格納された中古車在庫データに対応する第2記憶手段内の車両詳細データに基づき前記中古車在庫データの欠落情報を補完して前記中古車需要者側端末に送信することは、当業者が容易に想到することができたものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成15年2月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】ネットワーク上に、メインサーバと、中古車供給者側端末と、中古車需要者側端末と、中古部品利用者側端末とを接続し、前記メインサーバは、中古車供給者側端末から送信された中古車在庫データを格納する第1記憶手段と、各種車両に対応する部品リストを含む車両詳細データを格納する第2記憶手段と、中古車需用者側端末から送信された中古部品データを格納する第3記憶手段と、に接続し、第1記憶手段に格納された中古車在庫データに対応する第2記憶手段内の車両詳細データに基づき前記中古車在庫データを補完し、前記第3記憶手段内の中古部品データを前記中古部品利用者側端末に送信することを特徴とする中古部品流通促進システム。」
1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその記載事項は、前記「第2 1.」に記載したとおりである。
2.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2 2.」、「第2 3.」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
3.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-10 
結審通知日 2006-01-10 
審決日 2006-03-07 
出願番号 特願平11-184397
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼田 耕一  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 鈴木 明
大野 弘
発明の名称 中古部品流通促進システム及び中古部品流通促進方法  

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